説明

光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置

【課題】部品コストと組立コストを低減できて緩衝用ゲル剤の充填硬化作業も効率良く行える「光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置」を提供する。
【解決手段】対物レンズ駆動機構であるレンズアクチュエータ4は、板金製の一体部品で磁気回路が設けられたベース部材6と、対物レンズ8を保持しているレンズホルダ7と、一端部がレンズホルダ7を弾性的に支持している複数本のワイヤ9と、両側端部に各ワイヤ9の他端部が接続された横長形状の背面基板11とを備えている。ベース部材6には、背面基板11の中央部を固定する第1折曲片61と、ワイヤ9を挿通して緩衝用ゲル剤12が充填される透孔62aを有する第2折曲片62と、背面基板11の側端部に近接して対向する第3折曲片63と、ワイヤ9の固定端部の上方に配置される第4折曲片64と、レンズホルダ7の上方に配置される第5折曲片65とが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DVDやCD等のディスク状記録媒体に対して情報を記録/再生する光学式ピックアップに係り、特に、対物レンズを保持するレンズホルダが複数本のワイヤによって弾性的に支持されている光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置では、対物レンズを保持するレンズホルダが複数本(4本または6本)の導電性のワイヤによって弾性的に支持されており、各ワイヤの固定端側は背面基板に半田付けされている。従来の一般的な対物レンズ駆動装置においては、樹脂成形品である支持部材に設けられた空所に各ワイヤの固定端近傍が挿通されており、この空所に緩衝用ゲル剤が充填されている。背面基板は支持部材の背面側に固定されており、この支持部材は磁性体からなるベース部材に担持されている。ベース部材には磁気回路が設けられており、このベース部材のヨーク部にマグネットが密着固定されている。対物レンズはディスク状記録媒体(以下「ディスク」と略称)の信号記録面と対向する位置に配置され、ディスクに対して情報の記録や再生が行われる際には、光学式ピックアップの光源(半導体レーザ)から出射された光ビームを対物レンズで収束させてディスクの信号記録面に照射する。
【0003】
なお、対物レンズ駆動装置のレンズホルダには、磁気回路の磁束を横切るフォーカスコイルとトラッキングコイルが取着されており、これらのコイルがワイヤの一端部(自由端部)に接続されていると共に、ワイヤの他端部(固定端部)が背面基板に接続されている。そして、この背面基板がフレキシブル配線基板を介して外部駆動回路に接続されるため、所定のワイヤを介してフォーカスコイルに通電することにより、対物レンズの光軸に沿った方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダを駆動することができ、これにより対物レンズのフォーカス補正が可能となる。同様に、別のワイヤを介してトラッキングコイルに通電することにより、対物レンズの光軸と直交する方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダを駆動することができ、これにより対物レンズのトラッキング補正が可能となる。また、このようにしてレンズホルダの姿勢が制御されることから、レンズホルダを支持する各ワイヤを自由に弾性変形させることはできないが、支持部材の空所に充填された緩衝用ゲル剤が該空所内のワイヤに対してダンパー効果を及ぼすため、各ワイヤはレンズホルダの動きを阻害しないように弾性変形することができる。
【0004】
ところで、上記のごとく構成された対物レンズ駆動装置では、樹脂成形品である支持部材をベース部材に取り付け、この支持部材の空所にワイヤを挿通して緩衝用ゲル剤を充填させているが、この支持部材を省略して対物レンズ駆動装置の低コスト化を図ることも可能である。つまり、予めベース部材に支持部材の空所と同様の機能を果たす空所や、背面基板を固定可能な取付面等が形成されていれば、支持部材が不要となって部品コストと組立コストを低減することが可能になる。
【0005】
そこで従来より、対物レンズ駆動装置のベース部材を磁性材料からなる板金製の一体部品とし、このベース部材に、背面基板の長手方向の中央部が接着固定される立壁部を設けると共に、背面基板の両側端部に対向する一対の空所を設けるという構成の光学式ピックアップが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このものは、ベース部材の立壁部が一対の空所に挟まれて起立しており、各空所はベース部材の凹状折曲部に包囲された形状に形成されている。そして、各空所にワイヤが複数本ずつ挿通されていると共に、各空所に緩衝用ゲル剤が充填されてワイヤに対するダンピングが行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−217863号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された従来の対物レンズ駆動装置では、ベース部材に設けられたワイヤの挿通部が金属板を折曲加工して形成された比較的大きな空所であるため、この空所内に緩衝用ゲル剤を充填させる作業が面倒であり、ゲル剤の基準面(ワイヤ自由端側の端面)の位置もばらつきやすいという問題があった。すなわち、比較的大きな空所は金属板を折曲加工して所望形状に形成することは容易であるが、ゾル状態の未硬化のゲル剤を空所に注入すると他所へ流動しやすいため、注入作業に細心の注意が必要で時間を要してしまい、かつ、硬化後のゲル剤の基準面の位置がばらつきやすいため各ワイヤの有効長の精度も悪くなってしまう。また、空所に注入した未硬化のゲル剤はUV(紫外線)光を照射することによって硬化させるが、空所の一方の開口端が背面基板に覆われたような状態になっているため、この開口端側においてUV光が効果的に照射されなくなり、よって空所内の未硬化のゲル剤を短時間で硬化させることも困難であった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、部品コストと組立コストを低減できて緩衝用ゲル剤の充填硬化作業も効率良く行える光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明は、マグネットを含む磁気回路が設けられたベース部材と、ディスク状記録媒体に光ビームを照射する対物レンズが保持されたレンズホルダと、このレンズホルダを弾性的に支持する複数本の導電性のワイヤと、これらワイヤの固定端側に接続された横長形状の背面基板とを備えた光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置において、前記ベース部材が金属板を折曲加工した一体部品からなり、このベース部材に、前記背面基板の長手方向の中央部を支持する第1折曲片と、前記背面基板の側端部に所定間隔を存して対向する第2折曲片と、これら背面基板の側端部と第2折曲片との間に位置する第3折曲片とが設けられると共に、前記第2折曲片に前記ワイヤを挿通させる透孔が形成されており、この透孔内に緩衝用ゲル剤が充填されている構成とした。
【0010】
このように金属板を折曲加工した一体部品のベース部材に、背面基板を支持する第1折曲片と、透孔を有する第2折曲片とが設けられ、この透孔にワイヤを挿通して緩衝用ゲル剤が充填されるようにすると、支持部材を別途用意する必要がなくなるため部品コストと組立コストを低減できる。また、第2折曲片の透孔に注入した未硬化のゲル剤は、表面張力を利用して透孔に容易に充填させることができ、透孔内におけるゲル剤の基準面の位置も安定させやすい。しかも、第2折曲片の透孔は背面基板と所定間隔を存して対向しており、透孔の背面基板側の開口端にも広いスペースが確保されることから、ゾル状態のゲル剤にUV光を照射して硬化させる作業を効率良く円滑に行える。また、ベース部材に設けられた第3折曲片によって、背面基板の側端部が第2折曲片側へ過度に撓まないように規制できるため、光学式ピックアップの組立時に作業者が背面基板の自由端側を意図せずに押し込んでしまっても、背面基板の過度の変形(塑性変形)を防止することができる。
【0011】
上記の構成において、ベース部材に第3折曲片の上方に突出する第4折曲片が設けられており、この第4折曲片の下方空間に背面基板の側端部と透孔間に延在するワイヤが位置していると、光学式ピックアップの組立時に作業者がワイヤの固定端側に触れにくくなるため、ワイヤの固定端側を不用意に塑性変形させてしまう虞がなくなる。
【0012】
また、上記の構成において、ベース部材にレンズホルダの上方に位置する第5折曲片が設けられており、この第5折曲片によってレンズホルダの過度の上昇が規制されるようにすると、光学式ピックアップに振動や衝撃が加わってもレンズホルダの姿勢が崩れないため所要の耐久性を確保できると共に、レンズホルダを位置規制するためのカバー部材を別途用意する必要がなくなるため部品コストと組立コストを低減できる。この場合において、ベース部材に設けられたヨーク部にマグネットが密着固定されると共に、このヨーク部から第5折曲片が延設されていると、ヨーク体積を増加させて磁気回路の磁気効率が高まるため好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明による光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置は、金属板を折曲加工した一体部品のベース部材に、背面基板を支持する第1折曲片と、ワイヤを挿通して緩衝用ゲル剤が充填される透孔を有する第2折曲片とが設けられており、支持部材を別途用意する必要がないため、部品コストと組立コストを低減できて装置全体の低コスト化に有利である。また、第2折曲片の透孔に未硬化のゲル剤を注入したうえでUV光を照射して硬化させるという緩衝用ゲル剤の充填硬化作業が効率良く行えると共に、該透孔内における緩衝用ゲル剤の基準面(ワイヤ自由端側の端面)の位置がばらつかないため、ワイヤの有効長の精度が高めやすい。さらに、ベース部材に設けた第3折曲片によって、背面基板の側端部が第2折曲片側へ過度に撓まないように規制できるため、光学式ピックアップの組立時に作業者が背面基板の自由端側を意図せずに押し込んでしまっても、背面基板が過度に撓んで塑性変形してしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態例に係る光学式ピックアップの斜視図である。
【図2】該光学式ピックアップを図1の奥側から見た斜視図である。
【図3】該光学式ピックアップの平面図である。
【図4】該光学式ピックアップの側面図である。
【図5】該光学式ピックアップの底面図である。
【図6】該光学式ピックアップの分解斜視図である。
【図7】該光学式ピックアップに備えられるシャーシの平面図である。
【図8】該光学式ピックアップの内部構造を示す斜視図である。
【図9】図8に対応する側面図である。
【図10】図8の右側方から見た外観図である。
【図11】図8に対応する背面図である。
【図12】図10と図11に対応する要部斜視図である。
【図13】該光学式ピックアップに備えられるレンズアクチュエータの斜視図である。
【図14】該レンズアクチュエータの平面図である。
【図15】該レンズアクチュエータの側面図である。
【図16】該レンズアクチュエータの背面図である。
【図17】該レンズアクチュエータの分解斜視図である。
【図18】該レンズアクチュエータの構成要素であるベース部材の斜視図である。
【図19】該ベース部材の平面図である。
【図20】該ベース部材の右側面図である。
【図21】該ベース部材の左側面図である。
【図22】該ベース部材の背面図である。
【図23】該ベース部材の展開図である。
【図24】図23に対応する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1〜図6は本発明の実施形態例に係る光学式ピックアップの全体を示している。
【0016】
これらの図に示す光学式ピックアップ1は、樹脂成形品であるシャーシ2と、このシャーシ2に担持された受発光ユニット3やレンズアクチュエータ4や反射ミラー17(図6参照)等と、シャーシ2から導出されて外部回路に接続されるFPC(フレキシブル配線基板)5とによって概略構成されている。対物レンズ駆動機構であるレンズアクチュエータ4は、マグネット10を含む磁気回路が設けられたベース部材6と、対物レンズ8を保持するレンズホルダ7と、一端部(自由端部)がレンズホルダ7を弾性的に支持している4本の導電性のワイヤ9と、各ワイヤ9の他端部(固定端部)が半田付けされた横長形状の背面基板11とを備えている。また、FPC5はシャーシ2外に導出された長尺で幅広な主部50を有しており、この主部50がシャーシ2内で第1帯状部51と第2帯状部52とに分岐されている。これら両帯状部51,52のうち、第1帯状部51は背面基板11に接続され、第2帯状部52は受発光ユニット3に接続されている。
【0017】
なお、受発光ユニット3には光源(半導体レーザ)と光検出器が一体的に設けられている。また、反射ミラー17等の光学手段は、受発光ユニット3と対物レンズ8間の光路中に配設されている。
【0018】
シャーシ2は、図示せぬガイド主軸が挿通される第1ガイド部21と、図示せぬガイド副軸に弾接状態で係合する第2ガイド部22とを有しており、これらガイド主軸とガイド副軸に案内されながらディスクの半径方向へ移送されるようになっている。このシャーシ2内には、第1ガイド部21が突設されている一方側の端部にレンズアクチュエータ4の背面基板11が設置され、第2ガイド部22が突設されている他方側の端部に受発光ユニット3が設置されている。また、シャーシ2の他方側の端部には金属薄板からなる押え板15が取着されており、この押え板15を受発光ユニット3に圧接させることによって、受発光ユニット3に対する放熱効果が高められている。なお、図8〜図12は、光学式ピックアップ1からシャーシ2や押え板15を省略した状態の外観図である。
【0019】
図7の平面図に示すように、シャーシ2には上部を開放する収納空間23が設けられており、この収納空間23に組み込まれたレンズアクチュエータ4のベース部材6がシャーシ2にねじ止め固定されている。また、シャーシ2の内底部には収納空間23の一隅に沿って平面視L字状に延びる溝部24が設けられており、図9の2点鎖線で示すように、この溝部24にFPC5の第1帯状部51の下端部を挿入(収容)することによって、組立時に懸念される第1帯状部51の組み付け不良が回避されるようになっている。溝部24の一端側はシャーシ2の一側壁(外壁部)25に沿って延びており、この一側壁25は溝部24の近傍においてFPC5の第1帯状部51を露出させうる高さ寸法に設定されている(図4参照)。
【0020】
図13〜図17はレンズアクチュエータ4を示しており、図18〜図22はレンズアクチュエータ4の構成要素であるベース部材6を示している。ベース部材6は磁性材料からなる板金製の一体部品であり、図23と図24に示す展開形状の金属板16を折曲加工して形成される。このベース部材6には、レンズホルダ7を配置させるホルダ収納部6aが画成されていると共に、2本の調整ねじ13(図1〜図6参照)を用いてシャーシ2に固定される一対の取付片60と、背面基板11の長手方向の中央部を接着固定する第1折曲片61と、ワイヤ9を挿通させる透孔62aを有する一対の第2折曲片62とが設けられている。また、このベース部材6には、一対の第2折曲片62の近傍にそれぞれ第3折曲片63と第4折曲片64が設けられていると共に、ホルダ収納部6aの上方の四隅に第5折曲片65が設けられている。なお、図23と図24の展開図において、図18〜図22と対応する部分には括弧付きで同一符号を付してある。
【0021】
ベース部材6の第1折曲片61と第2折曲片62および第3折曲片63は上向きに折曲された起立片であり、取付片60と第4折曲片64および第5折曲片65は横向きに折曲された突出片である。そして、一対の取付片60に螺着した各調整ねじ13を適宜回転すことにより、シャーシ2に対するベース部材6の姿勢が変化して対物レンズ8の光軸の傾き調整(スキュー調整)を行えるようになっている。
【0022】
一対の第2折曲片62にはそれぞれ上下一対の透孔62aが形成されており、図12と図13に示すように、各透孔62a内にはワイヤ9を挿通した状態で緩衝用ゲル剤12が充填される(図1や図2、図8、図10等では緩衝用ゲル剤12を図示省略)。具体的には、未硬化のゲル剤を透孔62aに注入して充填させた後、このゲル剤にUV光を照射して硬化させるという充填硬化作業を行って緩衝用ゲル剤12となしている。そして、この緩衝用ゲル剤12が透孔62a内のワイヤ9に対してダンパー効果を及ぼすため、レンズホルダ7の動きを阻害しないように各ワイヤ9を弾性変形させることができる。なお、背面基板11の長手方向の中央部を第1折曲片61に固定すると、この背面基板11の両側端部(長手方向の両端部)がそれぞれ第2折曲片62と所定間隔を存して対向するようになっているため、ワイヤ9の固定端部に近接し過ぎない箇所で効果的にダンピングを行うことができる。また、緩衝用ゲル剤12の充填硬化作業を行なう場合に、ゾル状態のゲル剤をその表面張力を利用して透孔62a内に容易に充填させることができると共に、このゲル剤の透孔62a内における基準面の位置も安定させることができ、しかも、透孔62aと背面基板11との間のスペースを有効利用してUV光を効率良く照射させることができる。
【0023】
一対の第3折曲片63は透孔62aに挿通されたワイヤ9と干渉しない位置で第2折曲片62と対向しており、ベース部材6を側方から見ると、第3折曲片63は第2折曲片62と背面基板11の側端部との間に立設されている。したがって、背面基板11の長手方向の中央部を第1折曲片61に固定すると、この背面基板11の両側端部がそれぞれ第3折曲片63に近接して対向することになり、背面基板11の側端部が第2折曲片62側へ押し撓められたとても、該側端部がすぐに第3折曲片63に当接して位置規制されるようになっている。つまり、これら一対の第3折曲片63は、背面基板11の両側端部(自由端)がワイヤ9のスラスト方向(軸線方向)へ過度に撓まないように規制するためのものである。
【0024】
一対の第4折曲片64は第2折曲片62の上部から近傍の第3折曲片63を覆うように横向きに延びており、第2折曲片62と背面基板11との間に延在するワイヤ9は各第4折曲片64の下方空間内に位置している。つまり、各ワイヤ9の固定端側が第2折曲片62と背面基板11との間の空所に遮蔽されることなく露出していると、組立作業時などに誤ってワイヤ9を塑性変形させてしまう危険性があるため、これら第4折曲片64によってワイヤ9を保護している。
【0025】
ベース部材6にはホルダ収納部6aを挟んで対向する一対のヨーク部6bが立設されており、各ヨーク部6bの上部から線対称な位置関係で2片ずつ、計4片の第5折曲片65が横向きに延びている。これら第5折曲片65は、光学式ピックアップ1に振動や衝撃が加わってもレンズホルダ7が過度に上昇しないように規制するためのものである。また、各ヨーク部6bの対向面にはそれぞれマグネット10が密着固定されており、このようなヨーク部6bから第5折曲片65が延設されているため、各第5折曲片65は磁気回路のヨーク体積の増大化にも寄与している。
【0026】
対物レンズ8はレンズホルダ7の中央部に保持されており、ディスクに対する情報の記録や再生が行われる際に、受発光ユニット3の光源(半導体レーザ)から出射された光ビームが反射ミラー17等の光学手段を経て対物レンズ8に入射された後、この対物レンズ8で収束されてディスクの信号記録面に照射されるようになっている。また、ディスクの信号記録面で反射された戻り光は、対物レンズ8へ入射された後、前記光学手段を経て受発光ユニット3の光検出器で光電変換されて電気信号が取り出される。
【0027】
レンズホルダ7には磁気回路の磁束を横切るコイル(フォーカスコイルとトラッキングコイル)14が取着されており、これらのコイル14がワイヤ9の一端部(自由端部)に接続されていると共に、ワイヤ9の他端部(固定端部)が背面基板11に接続されている。そして、この背面基板11がFPC5を介して外部駆動回路に接続されるため、所定のワイヤ9を介してフォーカスコイルに通電することにより、対物レンズ8の光軸に沿った方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダ7を駆動することができ、これにより対物レンズ8のフォーカス補正が可能となる。同様に、別のワイヤ9を介してトラッキングコイルに通電することにより、対物レンズ8の光軸と直交する方向に電磁力を発生させてその方向へレンズホルダ7を駆動することができ、これにより対物レンズ8のトラッキング補正が可能となる。なお、前述したように、透孔62a内のワイヤ9に対して緩衝用ゲル剤12がダンパー効果を及ぼすため、レンズホルダ7を弾性的に支持している各ワイヤ9は、通電時にレンズホルダ7の動きを阻害しないように弾性変形できる。また、透孔62aのトータル数は使用するワイヤ9の本数に対応しており、本実施形態例では4本のワイヤ9に対応して計4つの透孔62aが形成されているが、ワイヤ9を6本配設する構成の場合は、各第2折曲片62にそれぞれ3つの透孔62a(計6つ)を形成すれば良い。
【0028】
背面基板11の長手方向の中央部はベース部材6の第1折曲片61に接着固定され、該中央部にFPC5の第1帯状部51が半田付けされている。ただし、背面基板11には第1折曲片61に接着されずにベース部材6の下方へ突出する突出部11aが形成されており、この突出部11aを含む背面基板11の中央部がFPC5との接続箇所となっている。また、背面基板11の両側端部(長手方向の両端部)にはワイヤ9が半田付けされており、これら両側端部はワイヤ9のスラスト方向の動きを阻害しないように撓み変形可能な自由端部となっている。なお、前述したように、背面基板11の両側端部は、透孔62aを有する第2折曲片62と所定間隔を存して対向していると共に、位置規制用の第3折曲片63と近接して対向している。
【0029】
次に、FPC5の構成について詳しく説明する。FPC5の長尺で幅広な主部50はシャーシ2の外方へ導出されており、この主部50の先端部分がセット側の外部回路(外部駆動回路や信号処理回路等)とコネクタ接続される部位となる。主部50は第1帯状部51と第2帯状部52とに分岐しており、そのうち第1帯状部51は、シャーシ2内でベース部材6の一側面6cに沿って引き回されて略直角に折り曲げられた後、背面基板11の自由端側の下方から突出部11aを経て中央部に接続されている。一方、第2帯状部52はシャーシ2の上面に沿って引き回された後、下方へ折り曲げられて受発光ユニット3に接続されているが、図8に示すように、この第2帯状部52は受発光ユニット3と一緒にシャーシ2に組み付けられて半固定状態となっている。
【0030】
図8〜図12に示すように、FPC5の第1帯状部51は、背面基板11との接続箇所である突出部11aから該背面基板11の下方を通って側端部へ延伸する先部51aと、この先部51aに連続して略直角に折り曲げられた曲げ部51bと、この曲げ部51bからベース部材6の一側面6cに沿って斜め上方へ延伸する傾斜部51cとを有しており、傾斜部51cから曲げ部51bの逆側へ延伸する部分を第2帯状部52に連続させている。この第1帯状部51は、先部51aを背面基板11の中央部に半田付けした状態で、レンズアクチュエータ4と一緒にシャーシ2内へ組み込まれる。その際、第1帯状部51の傾斜部51cはベース部材6の一側面6cとシャーシ2の一側壁25との間の空隙に配置されるが、こうしてシャーシ2内に第1帯状部51を組み付けると、傾斜部51cの上端部分がシャーシ2の一側壁25よりも上方に位置して光学式ピックアップ1の側方に露出するようになっている(図4参照)。
【0031】
この光学式ピックアップ1では、対物レンズ8をフォーカス方向やトラッキング方向へ駆動(フォーカス補正やトラッキング補正)するための制御信号がFPC5の第1帯状部51を介してワイヤ9に供給されるようになっている。また、FPC5の第2帯状部52を介して受発光ユニット3に電源信号や制御信号が供給されると共に、光検出器が検出した信号(電気信号)が第2帯状部52を介してセット側の信号処理回路へ送出されるようになっている。
【0032】
次に、レンズアクチュエータ4をシャーシ2内へ組み込む作業について説明する。この場合、FPC5は予め第1帯状部51の先端部分を背面基板11の中央部に接続しておくと共に、第2帯状部52を受発光ユニット3に接続してシャーシ2に組み付けておき、この状態でレンズアクチュエータ4を第1帯状部51と一緒にシャーシ2内の所定位置に組み込む。すなわち、レンズアクチュエータ4のベース部材6をシャーシ2の収納空間23に組み付けると共に、FPC5の第1帯状部51をシャーシ2の内壁面に沿わせて組み付け、しかる後、一対の取付片60に調整ねじ13を螺着してベース部材6をシャーシ2に固定する。
【0033】
より詳しく説明すると、レンズアクチュエータ4をシャーシ2内へ組み込む際には、ベース部材6を収納空間23に位置合わせして搭載すると共に、FPC5の第1帯状部51をベース部材6の一側面6cに巻き掛けるようにしてシャーシ2内へ組み付ける。この第1帯状部51は、第2帯状部52に近い基端側はシャーシ2に拘束されているが、基端側と先端側の途中に位置する曲げ部51b付近(曲げ部51bとその隣接箇所)は自由に動きやすい変位容易部位なので、この変位容易部位を収納空間23の一隅に沿って延びる溝部24に挿入することにより、組み込み作業時における該変位容易部位の勝手な動き(ふらつき)を規制するようにしている。なお、第1帯状部51の変位容易部位と背面基板11の突出部11aはベース部材6の底面から下方へ突出しているが、ベース部材6を収納空間23に搭載したときに、これら変位容易部位と突出部11aの下端部分を溝部24に挿入することによって、第1帯状部51の変位容易部位がベース部材6の下面とシャーシ2の内底面との間に挟まれないようになっている。つまり、溝部24は第1帯状部51と突出部11aの下端部を収容する逃げスペースとして機能するため、ベース部材6を収納空間23に搭載した後も、第1帯状部51の変位容易部位は背面基板11の側端部と重なることなく非接触で対向した状態を維持することになる。また、この組み込み作業時に第1帯状部51の傾斜部51cはベース部材6の一側面6cとシャーシ2の一側壁25との間に挟まれて位置規制されるが、前述したように、傾斜部51cの上端部分はシャーシ2の一側壁25よりも高い位置に配置される。
【0034】
このようにFPC5の第1帯状部51の変位容易部位(曲げ部51bとその隣接箇所)を位置規制してふらつきを抑制しつつ、レンズアクチュエータ4と一緒に第1帯状部51をシャーシ2内へ組み込むと、第1帯状部51の変位容易部位がベース部材6の下方へ潜り込む可能性が低くなるため、第1帯状部51がベース部材6とシャーシ2の内底部との間に挟持されてしまうという組み付け不良を回避しやすくなる。なお、第1帯状部51の変位容易部位がベース部材6の下方へ万一潜り込んでしまった場合には、傾斜部51cの上端部分が所定位置に露出しなくなることで、第1帯状部51の組み付け不良が瞬時に判明されるため、このような場合は組み込み作業を速やかにやり直すことができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態例に係る光学式ピックアップ1では、金属板を折曲加工した一体部品のベース部材6を用いてレンズアクチュエータ4が構成されており、このベース部材6に、背面基板11を固定する第1折曲片61と、透孔62aを有する第2折曲片62とが設けられ、この透孔62aにワイヤ9を挿通した状態で緩衝用ゲル剤12が充填されている。つまり、このレンズアクチュエータ4は、背面基板11を支持するためにベース部材6と別体の支持部材を付設する必要がないため、その分、部品コストと組立コストを低減できて低コスト化に有利である。
【0036】
そして、前述したように、第2折曲片62の透孔62aに注入した未硬化のゲル剤は、表面張力を利用して透孔62aに容易に充填させることができ、かつ、透孔62a内におけるゲル剤の基準面の位置も安定させやすくなり、しかも、透孔62aの背面基板11側の開口端に広いスペースが確保されることから、ゾル状態のゲル剤にUV光を効率良く照射させることができる。それゆえ、レンズアクチュエータ4を組み立てる際に、透孔62a内に未硬化のゲル剤を注入・硬化するという緩衝用ゲル剤12の充填硬化作業を効率良く行えると共に、この緩衝用ゲル剤12の基準面の位置がばらつかないためワイヤ9の有効長の精度を高めやすくなる。
【0037】
また、このレンズアクチュエータ4は、ベース部材6に設けた第3折曲片63によって、背面基板11の側端部が第2折曲片62側へ過度に撓まないように規制できるため、光学式ピックアップ1の組立時に作業者が背面基板11の自由端側(側端部)を意図せずに押し込んでしまっても、背面基板11が過度に撓んで塑性変形してしまうことを防止できる。
【0038】
また、このレンズアクチュエータ4は、ベース部材3に第3折曲片63の上方で横向きに突出する第4折曲片64を設け、この第4折曲片64の下方空間に背面基板11の側端部と第2折曲片62の透孔62aとの間に延在するワイヤ9を配置させているため、光学式ピックアップ1の組立時に作業者がワイヤ9の固定端側に触れにくくなり、ワイヤ9の固定端側が不用意に塑性変形してしまう虞がなくなる。
【0039】
また、このレンズアクチュエータ4は、ベース部材6に設けた複数の第5折曲片65がレンズホルダ4の過度な上昇を規制しているため、光学式ピックアップ1に振動や衝撃が加わっても、レンズホルダ4の姿勢が崩れないようになっている。すなわち、これらの第5折曲片65によって光学式ピックアップ1に所要の耐久性が確保されており、かつ、レンズホルダ4を位置規制するためのカバー部材を別途用意する必要がないため、部品コストと組立コストを低減することができる。しかも、これらの第5折曲片65は、マグネット10が密着固定されているヨーク部6bから延設されているため、ヨーク体積が増加して磁気回路の磁気効率も高まっている。
【符号の説明】
【0040】
1 光学式ピックアップ
2 シャーシ
3 受発光ユニット
4 レンズアクチュエータ(対物レンズ駆動機構)
5 FPC(フレキシブル配線基板)
6 ベース部材
6b ヨーク部
7 レンズホルダ
8 対物レンズ
9 ワイヤ
10 マグネット
11 背面基板
11a 突出部
12 緩衝用ゲル剤
13 調整ねじ
14 コイル
15 押え板
23 収納空間
60 取付片
61 第1折曲片
62 第2折曲片
62a 透孔
63 第3折曲片
64 第4折曲片
65 第5折曲片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットを含む磁気回路が設けられたベース部材と、ディスク状記録媒体に光ビームを照射する対物レンズが保持されたレンズホルダと、このレンズホルダを弾性的に支持する複数本の導電性のワイヤと、これらワイヤの固定端側に接続された横長形状の背面基板とを備えた光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置において、
前記ベース部材が金属板を折曲加工した一体部品からなり、このベース部材に、前記背面基板の長手方向の中央部を支持する第1折曲片と、前記背面基板の側端部に所定間隔を存して対向する第2折曲片と、これら背面基板の側端部と第2折曲片との間に位置する第3折曲片とが設けられると共に、前記第2折曲片に前記ワイヤを挿通させる透孔が形成されており、この透孔内に緩衝用ゲル剤が充填されていることを特徴とする光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記ベース部材に前記第3折曲片の上方に突出する第4折曲片が設けられており、この第4折曲片の下方空間に前記背面基板の側端部と前記透孔間に延在する前記ワイヤが位置していることを特徴とする光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記ベース部材に前記レンズホルダの上方に位置する第5折曲片が設けられており、この第5折曲片によって前記レンズホルダの過度の上昇が規制されることを特徴とする光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記ベース部材に設けられたヨーク部に前記マグネットが密着固定されると共に、このヨーク部から前記第5折曲片が延設されていることを特徴とする光学式ピックアップの対物レンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−114719(P2013−114719A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260741(P2011−260741)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】