説明

光学式マウス

光学式マウスのさまざまな実施形態が、開示される。一実施形態は、可視光スペクトルの青色領域内または近くの波長を有する光を追跡表面の方へ追跡表面に対して斜角で放出するように構成される光源と、追跡表面からの光の非鏡面反射を検出するように位置付けられる画像センサーと、光源によって放出される可視光スペクトルの青色領域内または近くの波長で画像センサー上に追跡表面の合焦画像を形成するように構成される1つまたは複数のレンズとを含む。さらに、光学式マウスは、画像センサーから画像データを受け取り、画像データ内の追跡特徴を特定するように構成されるコントローラーを含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
光学式コンピューター用マウスは、下にある追跡表面に対するマウスの移動を検出して、ユーザーにコンピューティングデバイスのディスプレー上で仮想ポインターの位置を操作させるために光源および画像センサーを使用する。2つの一般的な種類の光学式マウス構成が、現在は使用されており、斜め構成および鏡面構成である。これらの構成の各々は、光を下にある追跡表面上に向けるための光源および追跡表面の画像を取得するための画像センサーを利用する。移動は、表面の一連の画像を取得し、コントローラーを介して画像内の特定される1つまたは複数の表面特徴の位置(複数可)の変化を追跡することによって追跡される。
【0002】
斜め光学式マウスは、光を追跡表面の方へ追跡表面に対して斜角で向け、追跡表面で散乱される光は、追跡表面にほぼ垂直に位置付けられる画像検出器によって検出される。表面画像のコントラストは、表面高さ変動によって生成される影によって増強され、表面上の追跡特徴が区別されることを可能にする。斜め光学式マウスは、紙およびマニラ封筒などの粗い表面上では、適切な画像センサー性能にとって十分なこれらの表面からの光の非鏡面散乱があるので、うまく機能する傾向がある。しかしながら、斜め光学式マウスは、ホワイトボード、光沢セラミックタイル、大理石、研磨/塗装金属、その他などの光沢のある表面上では、入射光の大部分は、鏡面反射角で反射され、わずかな光しか検出器に到達しないので、同様にうまく機能しない可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
従って、広い一組の表面上でうまく追跡するように構成される光学式マウスの実施形態が、本明細書で述べられる。開示される一実施形態では、光学式マウスは、可視光スペクトルの青色領域内または近くの波長を有する光を追跡表面の方へ追跡表面に対して斜角で放出するように構成される光源と、追跡表面からの光の非鏡面反射を検出するように位置付けられる画像センサーと、光源によって放出される可視光スペクトルの青色領域内または近くの波長で画像センサー上に追跡表面の合焦画像を形成するように構成される1つまたは複数のレンズとを含む。さらに、光学式マウスは、画像センサーから画像データを受け取り、画像データ内の追跡特徴を特定するように構成されるコントローラーを含む。
【0004】
この概要は、以下の「発明を実施するための形態」でさらに述べられる概念の選択を簡易形式で紹介するために提供される。この概要は、特許請求される主題の重要な特徴または必須の特徴を特定することを意図されず、特許請求される主題の範囲を限定するために使用されることもまた意図されない。さらに、特許請求される主題は、この開示の任意の部分で言及される任意のまたはすべての不都合を解決する実装形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】光学式マウスの実施形態を示す図である。
【図2】図1のマウスのための光学的構成の実施形態を示す図である。
【図3】透明誘電体スラブに入射する光の反射および透過を例示する概略図を示す図である。
【図4】誘電体スラブの一群として追跡表面の図式モデルを示す図である。
【図5】金属表面に入射する光ビーム(beam of light)の侵入深さを例示する図である。
【図6】光学的光沢剤を含むおよび含まない白色紙の反射率の比較のグラフを示す図である。
【図7】波長の関数としてポリカーボネートの屈折率の変化のグラフ表示を示す図である。
【図8】赤色光マウスに対するおよび赤色光マウスを青色光源で改造するさまざまなシナリオに対する変調伝達関数の比較を示す図である。
【図9】赤色光に対して最適化された光学系の配置図を示す図である。
【図10】青色光源で使用される赤色光に対して最適化された光学系の配置図を示す図である。
【図11】画像センサー上に青色光画像を合焦するように変更された赤色光光学系の配置図を示す図である。
【図12】青色光に対して最適化された光学系の配置図を示す図である。
【図13】追跡表面にわたって光学式マウスの動作を追跡する方法を描写するプロセスの流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
図1は、光学式マウス100の実施形態を示し、図2は、光学式マウス100のための光学的構成200の実施形態を例示する。光学的構成200は、光ビーム204が位置210で追跡表面に入射するように、光ビーム204を追跡表面206の方へ放出するように構成される光源202を含む。光ビーム204は、追跡表面206の平面に関して入射角θを有する。光学的構成200はさらに、光ビーム204をコリメート(collimate)するために光源202と追跡表面206との間に配置されるコリメートレンズ211を含んでもよい。図1は、携帯用マウスを描写するが、描写される構成は、任意の他の適切なマウスで使用されてもよいことが理解されよう。
【0007】
光源202は、可視スペクトルの青色領域内または近くの光を放出するように構成される。術語「可視スペクトルの青色領域内または近く」、ならびに「青色」、「青色光」、「青色光源」、および本明細書で使用されるような同様のものは、可視光スペクトルの青色領域内または近くに、例えば、400nm〜490nmの範囲に1つまたは複数の輝線または発光帯を含む光を述べる。これらの術語はまた、以下でより詳細に述べられるように、青色光に敏感な光学的光沢剤の利点を活性化できるまたはさもなければ享受できる、近UVから近緑色範囲内の光も述べる。
【0008】
さまざまな実施形態では、光源202は、インコヒーレント光またはコヒーレント光を出力するように構成されてもよく、1つまたは複数のレーザー、LED、OLED(有機発光デバイス)、狭帯域幅LED、または任意の他の適切な発光デバイスを利用してもよい。さらに、光源202は、外見は青色である光を放出するように構成されてもよく、または観察者には青色以外の外見を有する光を放出するように構成されてもよい。例えば、白色LED光源は、ユーザーには白色のように見える光を生成するために、他の色のLEDと組み合わせるか、セリウムドープのイットリウムアルミニウムガーネットなどのシンチレーターもしくはリン光体と組み合わせるか、または他の波長の光を放出する他の構造体と組み合わせて、青色LEDダイ(例えば、InGaNを含む)を利用してもよい。さらに別の実施形態では、光源202は、青色光を通す帯域通過フィルターと組み合わせて一般的な広帯域光源を含む。そのような光源は、これらの構造体から放出される光の中に青色波長が存在するため、本明細書で使用されるような「青色光」および「青色光源」の意味の範囲に入る。
【0009】
図2を続けると、入射光ビーム204のいくらかの部分は、212で表示されるように、追跡表面206から反射し、レンズ214によって画像センサー216上に撮像される。図2で示されるように、光源202は、入射光ビームが追跡表面に対して斜角を有するように位置付けされ、画像センサー216は、入射光ビーム204の非鏡面反射206を検出するように位置付けられる。追跡表面に対して斜角を持つ状態で入射光ビーム204を使用することは、入射光ビーム204の追跡表面特徴との相互作用によって形成される影が追跡特徴として検出されることを可能にする。以下で述べられるように、斜め光学的構成とともに青色光源を使用することは、いろいろな追跡表面上での性能を改善するのに役立つ、斜め光学式マウスで他の色の光を使用することに優る利点を提供することができる。
【0010】
図2を続けると、画像センサー216は、画像データをコントローラー218に提供するように構成される。コントローラー218は、画像センサー216から画像データの複数の時系列フレームを取得し、追跡表面206の複数の時系列画像内で1つまたは複数の追跡特徴の位置を決めるために画像データを処理し、光学式マウス100の動作を追跡するために追跡表面の複数の時系列画像の位置(複数可)の変化を追跡するように構成される。表面特徴の位置決めおよび追跡は、任意の適切な仕方で行われてもよく、本明細書ではさらに詳細には述べられない。
【0011】
入射光ビーム204は、追跡表面206に対して任意の適切な角度を有するように構成されてもよい。一般に、斜め光学的構成では、入射光ビーム204は、追跡表面垂線に関して比較的浅い角度を有するように構成される。適切な角度の例は、追跡表面の平面に対して0度から45度の範囲の角度を含むが、限定はされない。この角度範囲が、例の目的のために説明され、この範囲の外側の他の適切な角度が、使用されてもよいことは理解されよう。
【0012】
画像センサー216は、追跡表面垂線に対して任意の適切な角度で光を検出するように構成されてもよい。一般に、反射光の強度は、画像センサー216が鏡面反射角により近く位置付けられるほど増加する可能性がある。追跡表面平面に対して上で特定される範囲内の角度でビームを放出する光源に対して、適切な検出器角度は、追跡表面垂線から0度から+/−10度の角度を含むが、限定はされない。
【0013】
上で述べられるように、可視スペクトルの青色領域内または近くの光を放出する光源の使用は、LEDおよびレーザーマウスで普通使用される赤色および赤外光源に優る予期しない利点を提供することができる。これらの利点は、青色光源に優先して赤色および赤外光源の選択をもたらした他の要因のために理解されなかった可能性がある。例えば、現在利用できる青色光源は、現在利用できる赤色および赤外光源よりもより高い電力消費率およびより高いコストを有する可能性があり、それによって光学式マウスでの光源として青色光を選択することから遠ざかることになる。しかしながら、以下で述べられるように、青色光は、より長い波長の光と比較して、より良好なコントラスト、より高い反射強度、より低い侵入深さ、その他などのさまざまな利点を提供する。
【0014】
本明細書で定義されるような青色光によって提供される利点は少なくとも部分的に、赤色または赤外光と比較される、青色光と反射面との物理的相互作用の性質から生じる。例えば、青色光は、赤色および赤外光よりも誘電体表面からのより高い反射強度を有する。図3は、厚さdを有し、屈折率nを有する、可視光に対して透明な材料でできている誘電体スラブ304からの入射光ビーム302の反射を例示する。例示されるように、入射光ビーム302の一部分は、スラブの前面306で反射され、光の一部分は、スラブ304の内部を通り抜けて透過される。透過光は、スラブの背面308に出会い、ここで光の一部分は、背面308を通り抜けて透過され、一部分は、前面306の方へ反射されて戻る。前面に入射する光は、再び部分的に反射され、部分的に透過され、などである。
【0015】
入射光ビーム302内の光は、真空波長λを有する。スラブ304の前面306における、rによって表示されるような、反射係数または振幅、およびtによって表示されるような、透過係数または振幅は、次の通りである。
【0016】
【数1】

【0017】
【数2】

【0018】
スラブの背面308においては、r’によって表示されるような、対応する反射係数、およびt’によって表示されるような、透過係数は、次の通りである。
【0019】
【数3】

【0020】
【数4】

【0021】
反射および透過係数または振幅は、スラブ304の屈折率にだけ依存することに留意されたい。入射光ビームが、表面垂線に関してある角度で表面に突き当たるとき、振幅方程式はまた、フレネル方程式(Fresnel Equations)に従って、角度の関数でもある。
【0022】
スラブ304の屈折率がスラブ304を取り囲む空気と異なることによって誘発される位相シフトφは、次の通りに与えられる。
【0023】
【数5】

【0024】
透過位相シフトを考慮に入れ、すべての部分的な反射および透過の振幅を合計すると、スラブの全体の反射および透過係数または振幅に対して次の表式をもたらす。
【0025】
【数6】

【0026】
【数7】

【0027】
【数8】

【0028】
【数9】

【0029】
小さなスラブ厚さdの極限では、反射振幅方程式は、より簡単な形に縮減する。
【0030】
【数10】

【0031】
この極限では、反射光場は、入射光場よりも位相が90度だけ進み、その振幅は、1/λおよび誘電体の分極率係数(n−1)の両方に比例する。反射光の強度は、振幅の二乗に比例するので、散乱振幅の1/λ依存性は、薄い誘電体スラブからの反射光の強度が1/λに比例することを表す。それ故に、反射光の強度は、光のより長い波長に対してよりもより短い波長に対してより高い。
【0032】
光学式マウスの観点から、図4を参照すると、および図3を参照して上で述べられるように、追跡表面は、各々が表面の局所高さおよび傾斜に従って方向付けられる誘電体スラブ500の形で多数の反射要素を含むとしてモデル化されてもよい。これらの誘電体スラブの各々は、入射光を反射し、ある時には反射光は、撮像レンズの開口数内にあり、従ってレンズによって獲得され、他の時には光は、レンズによって獲得されず、検出器に暗い追跡特徴をもたらす。470nmの青色での動作は、850nmの波長を有する赤外光より850/470≒3.3の量だけ上回って、および630nmの波長を有する赤色光より630/470≒1.8の倍数だけ上回って、明るい特徴での反射光の強度の増強をもたらす。検出器上の明るい特徴は、それらが対応する赤色または赤外画像内で見えるよりも明るいので、これは、検出器における青色光画像でのコントラスト改善をもたらす。これらのより高いコントラスト画像は、より低い光源強度を使って追跡特徴の容認できる特定およびより強固な追跡を可能にし、従って、また電力消費も低減し、電池寿命を増しながら、いろいろな表面上で赤外または赤色光マウスと比べて追跡性能を改善することができる。
【0033】
図5は、青色光の侵入深さが赤色または赤外光よりも小さいということで、光学式マウスで赤色または赤外光に優先して青色光を使用することの別の利点を例示する。一般に、表面に入射する放射の電場は、ある程度まで表面に侵入する。図5は、深さの関数として金属スラブ内の電場の振幅の簡単な説明図を示す。例示されるように、入射光ビームの電場は、波長に比例する特性e倍距離を伴って金属内へ指数関数的に減衰する。この波長依存性を所与とすると、赤外光は、金属材料内へ青色光よりも1.8倍遠くへ延びることができる。短い侵入深さはまた、青色光が非金属、誘電体表面に入射するときも同様に生じ、正確な侵入深さは、材料特性に依存する。
【0034】
赤色および赤外光と比較して青色光のより小さい侵入深さは、いくつかの理由のため光学式ナビゲーション応用の観点から有利であることもある。最初に、追跡特徴を追跡するためにコントローラーによって使用される画像相関法は、下にあるナビゲーション表面と一対一対応にある画像を必要とすることもある。表面内部の異なる深さからの反射光は、相関計算を混乱させる可能性がある。さらに、材料内へ漏えいする光は、より少ない反射光が画像検出器に到達する結果をもたらす。
【0035】
加えて、青色光のより小さい侵入深さは、画像センサーにおいて隣接画素と近隣接画素との間のより少ないクロストークおよびより高い変調伝達関数(MTF)をもたらすことができるので望ましい。これらの効果を理解するために、シリコンCMOS検出器に入射する長波長赤外光子と短波長青色光子との間の差を考慮されたい。半導体での光子の吸収は、波長依存である。吸収は、短波長光に対しては高いが、長波長に対してはバンドギャップエネルギーが近づけられるので減少する。より少ない吸収では、長波長光子は、半導体内でより遠くまで進み、材料内部で生成される対応する電荷は、収集されるためには短波長青色光子によって生成される対応する電荷よりも遠くまで進まなければならない。より大きな走行距離では、長波長光からの電荷担体は、材料内で青色光子を超えて拡散し、広がることができる。それ故に、1つの画素内で生成される電荷は、隣接画素内にスプリアス信号を誘発する可能性があり、結果的に電気光学系でクロストークおよびMTFの低下をもたらす。
【0036】
他の光源に優先して青色光を使用することのさらに別の利点として、青色光は、赤外または赤色光よりも小さな追跡特徴を解像することができる。一般に、光学撮像系が解像できる最小特徴は、回折によって制限される。レイリー(Rayleigh)の基準は、同じ寸法の隣接物体と区別できる表面特徴の寸法dは、関係式
【0037】
【数11】

【0038】
によって与えられ、但しλは、入射光の波長であり、NAは、撮像系の開口数であると述べる。dとλとの間の比例は、より小さな表面特徴が、より長い波長の光でよりも青色光で解像可能であることを示す。例えば、f/l光学部品を持つ、λ=470nmで動作する青色マウスは、約2λ≒940nmの寸法までの特徴を撮像することができる。850nmで動作する赤外VCSEL(垂直共振器面発光レーザー)については、撮像できる最小特徴寸法は、1.7μmまで増加する。従って、青色光の使用は、より小さな追跡特徴が適切な画像センサーおよび光学部品で撮像されることを可能にできる。
【0039】
青色光はまた、さまざまな特定の表面で他の波長の光よりも高い反射率を有することもできる。例えば、図6は、可視スペクトルにわたって光学的光沢剤を含むおよび含まない白色紙の反射率のグラフを示す。「光学的光沢剤」は、紙が白色および「きれい」に見えるようにするために多くの種類の紙に添加される蛍光染料である。図6は、光学的光沢剤を含む白色紙が、スペクトルのある他の領域内でよりも可視光スペクトルの青色領域内および近くで比較的より多く反射することを示す。従って、マウス光源として可視光スペクトルの青色領域内または近くの光を使用することは、光学的光沢剤を含む表面、ならびに他のそのような蛍光性または反射強化性追跡表面上で使用されるとき、相乗効果をもたらすことができ、それによって他の表面上でよりもそのような表面上でさらにより大きくマウス性能を改善する。
【0040】
そのような効果は、さまざまな使用シナリオで利点を提供できる。例えば、携帯用マウスにとっての共通使用環境は、会議室である。多くの会議室テーブルは、ガラスでできており、それは一般に、光学式マウス性能にとって貧弱な表面である。ガラスなどの透明表面上でのマウス性能を改善するために、ユーザーは、一時しのぎのマウスパッドとして使用するために透明表面の上に一枚の紙を置くこともある。従って、紙が光学的光沢剤を含む場合には、マウス性能での相乗効果が、他の表面の使用と比較して実現される可能性があり、電力消費の低減、従って電池動作マウスのためにより良好な電池寿命を可能にする。
【0041】
性能での同様の相乗効果は、可視スペクトルの青色部分内または近くの光にさらされるとき、より大きな反射率、蛍光性またはリン光性発光、その他などの輝度増強特性を有するように他の表面を処理するまたは準備することによって達成されてもよい。例えば、マウスパッドまたはマウス追跡使用のための他の専用表面は、青色範囲で高い反射率を持つ材料、および/または入射光を吸収して、青色範囲で蛍光を発するもしくはリン光を発する材料などの輝度エンハンサーを含んでもよい。青色光マウスで使用されるとき、そのような材料は、そのような反射性または蛍光性表面を持たない表面よりも大きなコントラストを提供することができ、それによって良好な追跡性能、低電力消費、その他をもたらすことができる。
【0042】
斜めレーザーマウスの場合には、青色コヒーレント光の使用は、スペックル寸法に関して赤色または赤外コヒーレント光の使用に優る利点を提供することができる。スペックル寸法は、波長に比例するので、青色コヒーレント光は、赤色または赤外レーザー光源のどちらよりも小さなスペックルを生成する。いくつかのレーザーマウス実施形態では、スペックルは、有害なノイズ源となる可能性があり、追跡性能を低下させる可能性もあるので、最小限のスペックルを有することが望ましい。青色レーザーは、比較的小さなスペックル寸法を有し、それ故に赤色または赤外レーザーの場合よりも多くの青色スペックルが、所与の画素の面積を占めることになる。これは、画像内のスペックルノイズを平均化して取り除くことを容易にすることができ、結果的により良好な追跡をもたらす。
【0043】
青色光源を使用することの利点は、青色光源を使っての赤色光マウスの単なる転換または改造によっては完全に実現されない可能性がある。例えば、図7は、波長の関数として例となるレンズ材料(ポリカーボネート)の屈折率のプロットを示す。この図から、屈折率は、光の波長に反比例することが分かる。従って、屈折率は、赤色光に対してよりも青色光に対しての方がより高い。ポリカーボネート以外の材料の屈折率は、ポリカーボネートとは異なる程度に波長とともに変化する可能性があるが、同様の反比例性を有する。この特性の結果として、青色光画像は、赤色画像とは異なる点にレンズによって合焦される。従って、焦点深度などの光学系パラメータに応じて、そのような差は、実質的な画像ぼけを引き起こし、従って貧弱な移動追跡をもたらす可能性がある。
【0044】
他の有害な効果は、光のこの特性から同様に生じる可能性がある。例えば、画像コントラストは、赤色光のために構成されたマウスで青色光源を使用することによって減らされる可能性がある。図8は、最適光源波長において630nmの波長を有する赤色光での使用のために最適化された光学系に対する変調伝達関数800、およびまた2つの異なる青色光源改造シナリオのもとでの変調伝達関数の比較を示す。最初に、802において、図8は、470nmの波長を有する青色光を用いるが、さらなる調節はない状態で使用される赤色光光学系に対する変調伝達関数を示す。次に、804において、図8は、470nm青色光を用いて使用され、赤色光画像よりもむしろ青色光画像が、画像センサー上に合焦されるように調節された系を有する赤色光光学系に対する変調伝達関数を示す。図示されるように、変調伝達関数は、赤色光の使用と比較して赤色光光学系への青色光源の単なる置換に対して実質的により低く、さまざまな空間周波数においてゼロに近づく。結果として、青色光が赤色光マウスに置換されるとき、多くのコントラストが、失われる。これは、容認できない性能低下をもたらす可能性がある。同様に、赤色光光学式マウスの画像センサー上に青色光画像を合焦するための光学系の調節でさえ、804において示されるように、なおコントラストの低下をもたらす可能性がある。
【0045】
コントラストに加えて他の特性が、赤色光光学系を青色光源で改造することによって影響を受ける可能性もある。例えば、そのような改造は、画像センサー上に合焦される画像の倍率を変える可能性があり、また光学収差を導入する可能性もある。倍率は、マウスによって追跡可能な解像度(1インチ当たりのドット)ならびに最大速度および加速度を決定するので、光学式マウスでの性能に影響を及ぼす。これらの概念は、図9〜11で定性的に例示される。最初に、図9は、630nmの波長を有する赤色光および画像センサー上に画像を縮小し、合焦するように構成される両凸レンズ906を使用する赤色光光学系での画像センサー904(画像面に置かれる)上への追跡表面902(対物面に置かれる)からの画像の合焦を示す。追跡表面からレンズの第1の表面908までの距離は、10.6mmであり、第2のレンズ表面910から画像センサーまでの距離は、6.6mmである。さらに、第1のレンズ表面の曲率半径は、4.0mmであり、第2のレンズ表面の曲率半径は、−6.0mmである。画像倍率は、−0.6(−6.6mm/10.6mm)である。例示されるように、赤色光最適化光学系での赤色光の使用は、所望の倍率で画像面上に「F」画像を忠実に再現する。両凸レンズ906は、1つまたは複数の実際のレンズ、ならびにレンズ系内に含まれる他の光学素子を表してもよいことが理解されよう。
【0046】
次に、図10は、470nmの波長を有する青色光で照射される同じ光学系を示す。図から分かるように、この波長でのより高い屈折率に起因して、画像は、画像センサー904上で合焦されない。これは、「F」が画像センサー904上にぼやけたスポットとして現れる原因になり、それは、マウスによる貧弱な移動追跡をもたらす可能性がある。
【0047】
図11は、470nm青色光で照射されるが、画像センサー906が第2のレンズ表面910から6.1mmの距離まで動かされて、画像センサー上に青色光画像を合焦する状態の同じ光学系を示す。これは合焦画像をもたらすが、マウスの倍率は、0.58(−6.1mm/10.6mm)まで約8%だけ減少した。これは、マウスの解像度(dpi、または「1インチ当たりのドット」)の低下、および追跡性能の悪化の可能性をもたらす。
【0048】
次に、図12は、画像センサー上に青色光画像を合焦するように構成された光学系を示す。図9〜10で示される赤色光光学系と比較して、両凸レンズの曲率半径、ならびに画像センサーから第2のレンズ表面までの距離は、赤色光光学系と同じ倍率および全長を維持するように、470nm光に対して最適化される。図示されるように、追跡表面1202(対物面)から第1のレンズ1204表面までの距離は、10.5mmであり、第2のレンズ表面1206から画像面1208までの距離は、6.7mmである。さらに、第1および第2のレンズ表面の曲率半径は、それぞれ4.3mmおよび−6.1mmである。これらの寸法により、画像検出器1208上に鮮明な青色光画像を合焦しながら、上の図9で示される赤色光光学系と比較して同じ倍率および全長が、維持される。
【0049】
これらの図で例示されるように、単に画像センサーの位置を青色光画像面に変えるだけでは、青色光で使用されるとき赤色光光学系の倍率、コントラストおよび他の画像特性を維持しない。それどころか、レンズ形状およびさまざまな光学素子間の距離もまた、所望の性能特性に影響を及ぼす。図9〜12で示される特定の寸法および距離は、例の目的のために示されており、青色光光学系は、図示される以外の任意の適切な構成を有してもよいことが理解されよう。
【0050】
上で述べられる物理的特性を考慮すると、青色光の使用は、光学式マウスで赤色光または赤外光の使用に優るさまざまな利点を提供できる。例えば、赤色または赤外光と比較して青色光のより高い反射率およびより低い侵入深さは、より低い強度の光源の使用を可能にでき、それによって電池寿命を増加させる可能性がある。これは、添加輝度エンハンサーを含む白色紙上でマウスを操作するとき、輝度エンハンサーの蛍光強度が可視スペクトルの青色領域内で強い可能性があるので、特に有利である可能性がある。さらに、光学的に等価な(すなわち、レンズ、f値、画像センサー、その他)光源からの赤色光と比較して青色光のより短いコヒーレンス長およびより小さい回折限界は、より長い画像特徴相関長およびより微細な表面特徴の両方が解像されることを可能にでき、従って青色光マウスがより幅広い種類の表面上で使用されることを可能にできる。青色光学式マウスのための追跡表面として使用されてもよい表面の例は、紙表面、織物表面、セラミック、大理石、木材、金属、花こう岩、タイル、ステンレス鋼、ならびにベルベル(Berber)および深い毛あしを含むカーペットを含むが、限定はされない。
【0051】
さらに、いくつかの実施形態では、特に可視スペクトルの青色領域で高感度(すなわち、量子収量)を有するように構成される、CMOSセンサーなどの画像センサーは、青色光源と組み合わせて使用されてもよい。これは、低パワー光源の使用さえ可能にでき、従って電池寿命をさらに増加させるのに役立つことができる。
【0052】
図を続けると、図13は、表面にわたって光学式マウスの移動を追跡する方法1300の実施形態を描写するプロセスの流れを示す。方法1300は、1302において、本明細書で定義されるような青色光源から放出される入射光ビームを追跡表面の方へ追跡表面に対して斜角で向けるステップと、1303において、光源から放出される青色波長で画像センサー上に追跡表面の合焦画像を形成するステップと、次いで、1304において、表面の画像を検出するように構成される画像センサーを介して追跡表面の複数の時系列画像を検出するステップとを含む。次に、方法1300は、1306において、追跡表面の複数の時系列画像内で追跡特徴の位置を決めるステップ、および次いで、1308において、複数の画像内の追跡特徴の位置の変化を追跡するステップを含む。(x、y)信号は次いで、ディスプレー画面上でカーソルまたは他の表示物の位置を決める際にコンピューティングデバイスによる使用のために光学式マウスによってコンピューティングデバイスに提供されてもよい。
【0053】
本明細書で述べられる構成および/または手法は、本来は例となるものであり、これらの特定の実施形態または例は、多くの変形形態が可能であるので、限定する意味で考えられるべきでないことが理解されよう。本開示の主題は、さまざまなプロセス、システムおよび構成のすべての新規なおよび自明でない組合せおよび副組合せ、ならびに他の特徴、機能、活動、および/または本明細書で開示される特性、ならびにそれらの任意のおよびすべての等価なものを含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光スペクトルの青色領域内または近くの波長を有する光を追跡表面(206)の方へ前記追跡表面(206)に対して斜角で放出するように構成される光源(202)と、
前記追跡表面(206)からの前記光の非鏡面反射を検出するように位置付けられる画像センサー(216)と、
前記光源(202)によって放出される前記可視光スペクトルの前記青色領域内または近くの波長で前記画像センサー(216)上に前記追跡表面(206)の合焦画像を形成するように構成される1つまたは複数のレンズ(214)と、
前記画像センサー(216)から画像データを受け取り、前記画像データ内の追跡特徴を特定するように構成されるコントローラー(218)とを含む、光学式マウス(100)。
【請求項2】
前記光源は、400nmから490nmの範囲内の波長を含む光を放出するように構成される、請求項1に記載の光学式マウス。
【請求項3】
前記光源は、蛍光またはリン光が前記追跡表面内の輝度エンハンサーによって放出される原因になる波長の光を放出するように構成される、請求項1に記載の光学式マウス。
【請求項4】
前記光源は、追跡表面垂線に関して0度と45度との間の角度を有する光ビームを形成するように構成される、請求項3に記載の光学式マウス。
【請求項5】
前記画像センサーは、追跡表面垂線に関して+/−10度の範囲の光を検出するように位置付けられる、請求項1に記載の光学式マウス。
【請求項6】
前記光学式マウスは、携帯用マウスである、請求項1に記載の光学式マウス。
【請求項7】
前記光源は、青色光を放出するように構成される発光ダイオードを含む、請求項1に記載の光学式マウス。
【請求項8】
前記光源は、白色光を放出するように構成される発光ダイオードを含む、請求項1に記載の光学式マウス。
【請求項9】
前記検出器は、青色光に対して高感度を有するように構成されるCMOS画像センサーである、請求項1に記載の光学式マウス。
【請求項10】
400nm〜490nm間の波長を有する光を追跡表面(206)の方へ前記追跡表面(206)の平面に対して0度と45度との間の角度で放出するように構成される光源(202)と、
追跡表面垂線に対して−10度と10度との間の角度で位置付けられる画像センサー(216)と、
前記光源(202)によって放出される前記光の前記波長で前記画像センサー(216)上に前記追跡表面(206)の合焦画像を形成するように構成される1つまたは複数のレンズ(214)と、
前記画像センサー(216)から画像データを受け取り、前記画像データ内の追跡特徴を特定するように構成されるコントローラー(218)とを含む、光学式マウス(100)。
【請求項11】
前記画像センサーは、前記光源によって放出される前記波長の光に対して高感度を有するように構成されるCMOS画像センサーである、請求項10に記載の光学式マウス。
【請求項12】
前記光学式マウスは、携帯用マウスである、請求項10に記載の光学式マウス。
【請求項13】
前記光源は、白色光および青色光の1つを放出するように構成される発光ダイオードを含む、請求項10に記載の光学式マウス。
【請求項14】
前記光源は、レーザーを含む、請求項10に記載の光学式マウス。
【請求項15】
前記光源は、広帯域光源および帯域通過フィルターを含む、請求項10に記載の光学式マウス。
【請求項16】
可視光スペクトルの青色領域内または近くの波長を有する入射光ビームを追跡表面の方へ前記追跡表面に対して斜角で向けるステップ(1302)と、
前記追跡表面からの前記光の非鏡面反射を検出するように位置付けられる画像センサー上に前記追跡表面の合焦画像を形成するステップ(1304)と、
前記追跡表面の複数の時系列画像を獲得するステップ(1306)と、
前記追跡表面の前記複数の時系列画像内で追跡特徴の位置を決めるステップ(1308)と、
前記追跡表面の前記複数の時系列画像にわたって前記追跡特徴の位置の変化を追跡するステップ(1310)とを含む、光学式マウスの動作を追跡する方法(1300)。
【請求項17】
入射光ビームを追跡表面の方へ向けるステップは、前記入射光ビームを、輝度エンハンサーを含む追跡表面の方へ向けるステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
入射光ビームを前記追跡表面の方へ向けるステップは、400nmから490nmの範囲の波長を持つ入射光ビームを向けるステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記追跡表面の複数の時系列画像を検出するステップは、追跡表面垂線から−10度と10度との間の範囲の角度で前記表面から反射される光を検出するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記入射光ビームを前記追跡表面の方へ向けるステップは、前記入射光ビームを前記追跡表面の方へ前記追跡表面の平面に対して0度から45度の範囲の角度で向けるステップを含む、請求項16に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2011−508313(P2011−508313A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539568(P2010−539568)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【国際出願番号】PCT/US2008/083946
【国際公開番号】WO2009/085437
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(506076606)アバゴ・テクノロジーズ・ジェネラル・アイピー(シンガポール)プライベート・リミテッド (129)
【Fターム(参考)】