説明

光学式分析計

【課題】測定セル内の試料液に光源から光を照射し、試料液を透過した光を測定センサにより検出して試料液の分析を行う光学式分析計において、光学系の検査を短時間で簡易かつ正確に行う。
【解決手段】光源14の出射光の光量が予め設定した所定の設定光量となるように光源に電圧を加える電源24と、光源からの直接光を検出する参照センサ28と、電源及び参照センサと電気的に接続された電圧制御回路30とを設ける。そして、光学系の検査を行うに当たり、電圧制御回路の制御により、光源の出射光の光量が上記設定光量より所定量変化するように、電源から光源に加える電圧を変化させるとともに、試料液として純水を用い、測定セルを透過した光を測定センサにより検出し、電源から光源に加える電圧を変化させることにより変化させようとした光量の変化量と、測定センサにより検出した光量の変化量とを比較し、両変化量が等しければ光学系は正常であると判定し、両変化量が等しくなければ光学系に異常があると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定セル内の試料液に光源から光を照射し、試料液を透過した光を測定センサにより検出して試料液の分析を行う光学式分析計に関し、さらに詳述すると、光学系の検査を短時間で簡易かつ正確に行うことができる光学式分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図2に示すように、測定セル50内の試料液52に光源(水銀ランプ)54から光(波長約254nmの紫外光)56を照射し、試料液52を透過した光58を測定センサ(受光素子)60で検出するとともに、測定センサ60と電気的に接続された演算部62において、測定セル50からの信号に基づいて試料液52中の有機汚濁物質濃度を求める光学式分析計が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
上述した光学式分析計においては、定期的あるいは必要に応じて、光源、測定セル、測定センサを含む光学系の検査を行う必要がある。この場合、上記光学系の検査方法としては、測定セル内に標準液を注入して、上記標準液の測定を行う方法がある。この場合、標準液としては、蒸留水などのゼロ液や、フタル酸水素カリウム標準液などのスパン液を用いる。
【0004】
また、上記光学系の簡易な検査方法として、光源から測定センサに至る光路に特定の吸光度を有する光学フィルタを配置し、光学フィルタを配置しないときの測定センサの信号と、光学フィルタを配置したときの測定センサの信号とを比較して検査を行う方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−85708号公報
【特許文献2】特開2009−85709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前述した光学フィルタを用いて光学系の検査を行う方法は、次のような問題を有するものであった。
(1)前記光学フィルタを用いる検査方法では、光学フィルタを光路に配置しないときの透過率を100%とするとともに、光学フィルタを光路に配置したときに光源の光量を変化させて透過率を適当に変化させることで(例えば50%)、吸光度のデータを得ている。しかし、図2の光学式分析計では、定電圧安定化電源で水銀ランプを点灯させているので、ランプに印加される電圧あるいは電流が常に一定になるように駆動され、そのため出力される光量は上記電圧あるいは電流と必ずしも比例しない。さらに、定電圧安定化電源による水銀ランプの駆動初期にはランプ光量が不安定であるため、ランプ点灯後の光量安定に時間がかかり、そのため検査に長時間を要し、検査を簡易に行うことが難しかった。
(2)前記光学フィルタを用いる検査方法では、紫外光の照射や湿度によって、光学フィルタの光学ガラス、金属膜、誘電体多層膜などの劣化が起こることにより、光学フィルタの吸光度が経時変化することがあり、そのため検査を正確に行うことができない可能性があった。
【0007】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、光学系の検査を短時間で簡易かつ正確に行うことができる光学式分析計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記目的を達成するために種々検討を行った結果、光源からの直接光(測定セルを透過しない光)を参照センサで検出し、その信号を電圧制御回路に送るとともに、上記電圧制御回路において、光源の電源電圧値と参照センサからの信号値とを比較し、光源の出射光の光量が常時一定になるように光源の電源電圧値をコントロールした場合、光学系の検査時に光源に加える電圧を変化させると、光源の出射光の光量を直ちに変化させることができ、そのため光学系の検査を短時間で簡易かつ正確に行うことができることを見出した。
【0009】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、
測定セル内の試料液に光源から光を照射し、試料液を透過した光を測定センサにより検出して試料液の分析を行う光学式分析計において、
前記光源の出射光の光量が予め設定した所定の設定光量となるように前記光源に電圧を加える電源と、
前記光源からの直接光を検出する参照センサと、
前記電源及び前記参照センサと電気的に接続され、前記設定光量と前記参照センサにより検出した光の光量とが等しくなるように、前記電源から前記光源に加える電圧を制御する電圧制御回路とを具備し、
前記光源、測定セル及び測定センサを含む光学系の検査を行うに当たり、前記電圧制御回路により、光源の出射光の光量が前記設定光量より所定量変化するように、前記電源から光源に加える電圧を変化させるとともに、測定セルを透過した光を前記測定センサにより検出し、電源から光源に加える電圧を変化させることにより変化させようとした光量の変化量と、前記測定センサにより検出した光量の変化量とを比較し、両変化量が等しければ光学系は正常であると判定し、両変化量が等しくなければ光学系に異常があると判定することを特徴とする光学式分析計を提供する。
【0010】
本発明の光学式分析計は、光源の点灯開始直後から測定を行うことができるように、常に光量が安定化されている。そのため、例えば、光源の設定電圧値を適宜に減少させて、光源の出射光の光量を適当に減衰させることにより、光学系の受光感度を検査することができる。このような機能が得られるのは、光源からの直接光を参照光としてフィードバック制御に用いることで、短時間で光源の光量を安定化させることができることと、電圧制御回路により光源の設定電圧値を変化させることで、前述した光学フィルタの挿入に相当するように光源の光量を電気的に減衰させることができることによる。
【0011】
本発明の光学式分析計は、例えば、有機汚濁モニタ、多波長吸光度測定方式の水質分析計などとして構成することができる。また、本発明の光学式分析計は、測定セルを溶液中に浸漬して測定を行う光学式分析計として構成することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光学式分析計は、光源、測定セル及び測定センサを含む光学系の検査を短時間で簡易かつ正確に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る光学式分析計の一実施形態を示す概念図である。
【図2】従来の光学式分析計の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。図1は本発明に係る光学式分析計の一実施形態を示す概念図である。
【0015】
本例の光学式分析計は、図2に示した光学式分析計と同様に、測定セル10内の試料液12に光源(水銀ランプ)14から光(波長約254nmの紫外光)16を照射し、試料液12を透過した光18を測定センサ(受光素子)20で検出するとともに、測定センサ20と電気的に接続された演算部22において、測定セル20からの信号に基づいて試料液12中の有機汚濁物質濃度を求めるものである。
【0016】
また、本例の光学式分析計は、光源14の出射光16の光量が予め設定した所定の設定光量となるように光源14に電圧を加える電源24と、光源14からの直接光(測定セル10を透過しない光)26を検出する参照センサ28と、電源24及び参照センサ28と電気的に接続された電圧制御回路30とを具備する。電圧制御回路30は、上記設定光量と参照センサ28により検出した光の光量とが等しくなるように、電源24から光源14に加える電圧を制御するものであり、比較器32を内在しており、さらに比較器32には可変基準電圧源34が接続されている。可変基準電圧源34は、上記設定光量になるように設定された電圧値を発生し、任意の電圧値が設定できるようになっている。より具体的には、比較器32で参照センサ28からの信号値(光量)と上記設定光量(設定光量に対応する可変基準電圧源34が発生する電圧値)とを比較して、その比較結果に基づいて電源24による電圧値を制御する。
【0017】
本例の光学式分析計において、光源14、測定セル10及び測定センサ20を含む光学系の検査は、例えば次のように行う。まず、電圧制御回路30の制御により、光源14の出射光の光量が前記設定光量より所定量減衰するように、電源24から光源14に加える電圧を減少させる。そして、試料液として純水を用い、測定セル10を透過した光18を測定センサ20により検出し、電源24から光源14に加える電圧を(可変基準電圧源34の設定電圧値を下げることによって)減少させることにより減衰させようとした光量の減衰量(従来の光学フィルタの挿入による減衰量に相当)と、測定センサ20により検出した光量の減衰量とを比較し、両減衰量が等しければ光学系は正常であると判定し、両減衰量が等しくなければ光学系に異常があると判定する。異常があると判定した場合は、どこに異常があるかを調べればよい。したがって、本例の光学式分析計によれば、光学系の検査を短時間で簡易かつ正確に行うことができる。
【0018】
本発明の光学式分析計は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。
【符号の説明】
【0019】
10 測定セル
12 試料液
14 光源
16 出射光
18 透過光
20 測定センサ
22 演算部
24 電源
26 直接光
28 参照センサ
30 電圧制御回路
32 比較器
34 可変基準電圧源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定セル内の試料液に光源から光を照射し、試料液を透過した光を測定センサにより検出して試料液の分析を行う光学式分析計において、
前記光源の出射光の光量が予め設定した所定の設定光量となるように前記光源に電圧を加える電源と、
前記光源からの直接光を検出する参照センサと、
前記電源及び前記参照センサと電気的に接続され、前記設定光量と前記参照センサにより検出した光の光量とが等しくなるように、前記電源から前記光源に加える電圧を制御する電圧制御回路とを具備し、
前記光源、測定セル及び測定センサを含む光学系の検査を行うに当たり、前記電圧制御回路の制御により、光源の出射光の光量が前記設定光量より所定量変化するように、前記電源から光源に加える電圧を変化させるとともに、測定セルを透過した光を前記測定センサにより検出し、電源から光源に加える電圧を変化させることにより変化させようとした光量の変化量と、前記測定センサにより検出した光量の変化量とを比較し、両変化量が等しければ光学系は正常であると判定し、両変化量が等しくなければ光学系に異常があると判定することを特徴とする光学式分析計。
【請求項2】
電圧制御回路の制御により、光源の出射光の光量が前記設定光量より所定量減衰するように、電源から光源に加える電圧を減少させるとともに、測定セルを透過した光を測定センサにより検出し、電源から光源に加える電圧を減少させることにより減衰させようとした光量の減衰量と、測定センサにより検出した光量の減衰量とを比較し、両減衰量が等しければ光学系は正常であると判定し、両減衰量が等しくなければ光学系に異常があると判定する請求項1に記載の光学式分析計。
【請求項3】
光源として波長約254nmの紫外光を発する水銀ランプを用い、試料液中の有機汚濁物質濃度を測定する請求項1又は2に記載の光学式分析計。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−58105(P2012−58105A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202215(P2010−202215)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】