説明

光学式反射型情報読み取りセンサおよび電子機器

【課題】小型化、高精度化が可能で生産性の良い光学式反射型情報読み取りセンサおよびそのような光学式反射型情報読み取りセンサを搭載した電子機器を提供する。
【解決手段】光学式反射型情報読み取りセンサ1は、情報読み取り用の光を発光する発光素子部2と、発光素子部2が発光した光を照射光LBeとして光学式反射型情報読み取りセンサ1の外部に配置された被検出物5の被検出情報面5sに照射する発光レンズ部3と、被検出情報面5sに照射された光の反射光としての拡散反射光LBdを結像させる受光レンズ部8と、結像された拡散反射光LBdを受光する受光素子部7とを1つの筐体9に収納してあり、被検出情報面5sに表されたバーコードなどの被検出情報としての被検出情報パターン5pを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコードなどの被検出情報を示す被検出情報面に光を照射してその反射光を検出することにより被検出情報を検出する光学式反射型情報読み取りセンサおよびそのような光学式反射型情報読み取りセンサを搭載した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、バーコード読み取りを目的としたセンサ(光学式情報読み取りセンサ)が知られている。従来のセンサは、ほとんどが一次元バーコード読み取り用であり、二次元バーコード読み取りにはCCDなどの二次元構造を有したイメージセンサを用いるのが一般的である。したがって、CCDなどの固体撮像素子を利用した場合にはカメラ撮影に近く、レンズ構成なども複雑になり高価な部品となってしまう。また、光の入らないところでは対象物を検出することができないために、プリンタなどの内部の暗い場所における検出はできない。
【0003】
また、従来のバーコードセンサ(例えば、特許文献1参照。)には複数の部品が個別に実装されており、この個別実装の位置バラつきが原因でバーコード読み取り精度が低下してしまうという問題がある。この問題を解決するために、バーコード自身のデータ情報以外に読み取り精度向上のために位置決め情報を持ったデータを加えた形状とすることが提案されている。しかしながら、バーコードに本来のデータ情報以外の内容を追加することはバーコードの大型化、バーコードセンサの大型化につながってしまう。また、この方式では二次元バーコードへの適用は困難である。
【特許文献1】特開平8−240750号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のバーコードセンサは複数の発光部品や受光部品、レンズ、周辺回路を別々に組み立てて一つの製品(バーコードセンサ)としており、バーコードセンサ自身が大きくなってしまうことと併せて実装誤差による特性変化などが大きいといった問題がある。バーコードセンサが大型であるために、電子機器の内部にバーコードセンサを用いた様々なバーコード読み取り機能を導入しようとしても困難である。また、小型CCDイメージセンサを用いた二次元バーコード読み取り装置の場合は、小型化は可能でも非常に高価な装置となってしまうという問題がある。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、情報読み取り用の光を発光する発光素子部と、被検出情報を表す被検出情報面に照射光を照射する発光レンズ部と、被検出情報面からの反射光を結像させる受光レンズ部と、結像された反射光を受光する受光素子部とを1つの筐体に収納することにより、小型化、高精度化が可能で生産性の良い光学式反射型情報読み取りセンサを提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、被検出情報面からの拡散反射光を受光することから、被検出情報面の状態に影響されない光学式反射型情報読み取りセンサを提供することを他の目的とする。
【0007】
また、本発明は、発光レンズ部としてトロイダルレンズを用いることから、被検出情報の1列情報を一括して読み取ることが可能となる光学式反射型情報読み取りセンサを提供することを他の目的とする。
【0008】
また、本発明は、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサを搭載した電子機器とすることにより、被検出情報の検出精度が高い電子機器を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサは、情報読み取り用の光を発光する発光素子部と、被検出情報を表す被検出情報面に前記発光素子が発光した光を照射光として照射する発光レンズ部と、前記被検出情報面に照射された光の反射光を結像させる受光レンズ部と、結像された反射光を受光する受光素子部とを備える光学式反射型情報読み取りセンサであって、前記発光素子部、前記発光レンズ部、前記受光レンズ部、および前記受光素子部を一つの筐体に収納してあることを特徴とする。
【0010】
この構成により、1次元情報または2次元情報としての被検出情報を高精度に読み取ることができる光学式反射型情報読み取りセンサとなる。
【0011】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記反射光は、拡散反射光であることを特徴とする。
【0012】
この構成により、鏡面反射光を用いずに反射光を検出できることから、被検出情報面の表面状態に大きな影響を受けずに被検出情報を安定して検出することが可能となる。
【0013】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記照射光は、前記被検出情報面の垂直方向に対して10度ないし45度の傾斜角を有することを特徴とする。
【0014】
この構成により、拡散反射光を確実に発生させ検出精度を向上させることが可能となり、信頼性の高い光学式反射型情報読み取りセンサとすることができる。
【0015】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記受光素子部は、前記被検出情報面と平行な位置に受光面を配置してあることを特徴とする。
【0016】
この構成により、拡散反射光を正確に検出することが可能となり、高精度の光学式反射型情報読み取りセンサとすることが可能となる。
【0017】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記受光素子部は、1次元受光素子アレイを備えることを特徴とする。
【0018】
この構成により、容易かつ精度良く1次元の被検出情報を検出することが可能となる。
【0019】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記発光素子部および前記受光素子部を走査させることにより、または前記被検出情報面を走査させることにより、2次元の被検出情報を読み取る構成としてあることを特徴とする。
【0020】
この構成により、容易かつ精度良く2次元の被検出情報を検出することが可能となる。
【0021】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記発光レンズ部は、前記被検出情報が有する1列情報の全てに前記照射光を照射するトロイダルレンズとしてあることを特徴とする。
【0022】
この構成により、被検出情報の1列情報の全てに照射光を照射することから、被検出情報の1列情報を一括して読み取ることが可能となる。
【0023】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記トロイダルレンズは、前記1列情報の中央部と端部との中間に対応させて焦点距離を設定してあることを特徴とする。
【0024】
この構成により、1列情報への照射光を均一化させることが可能となり、高精度での情報読み取りが可能となる。
【0025】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記トロイダルレンズは、前記1列情報の中央部に対応するレンズ中央部の幅を前記1列情報の端部に対応するレンズ端部の幅より小さくしてあることを特徴とする。
【0026】
この構成により、レンズ中央部を通る照射光はレンズ端部を通る照射光より光量が少なくなることから、1列情報に照射される照射光の強度を均一化し、被検出情報面での光強度を均等にすることが可能となる。
【0027】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記照射光は、前記1列情報の列方向と交差する行方向での前記被検出情報の単位長と同程度の幅を有する構成としてあることを特徴とする。
【0028】
この構成により、被検出情報の1列情報の読み取りを確実に行なうことが可能となる。
【0029】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記発光素子部と前記発光レンズ部との間の距離と前記発光レンズ部と前記被検出情報面との間の距離との比に対して、前記受光素子部と前記受光レンズ部との間の距離と前記受光レンズ部と前記被検出情報面との間の距離との比は近似してあることを特徴とする。
【0030】
この構成により、発光素子部または受光素子部の位置ズレによる影響を受けにくい高精度の光学式反射型情報読み取りセンサとなる。
【0031】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記発光素子部および前記受光素子部は、単一のリードフレームを適用してボンディング接続され、それぞれ1次樹脂封止部により個別に樹脂封止され、前記1次樹脂封止部相互間を2次樹脂封止部による樹脂封止により遮光してあることを特徴とする。
【0032】
この構成により、発光素子および受光素子の位置精度を上げることが可能となり、また、それぞれ相互に影響を受けない独立した光学系とすることが可能となることから、被検出情報を高精度で検出することが可能な光学式反射型情報読み取りセンサとすることができる。
【0033】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記2次樹脂封止部は、前記照射光および前記反射光を透過させる透光部を有することを特徴とする。
【0034】
この構成により、周囲からのノイズ光を排除することが可能となり、高精度で被検出情報を検出することが可能となる。
【0035】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記透光部は、スリット形状としてあることを特徴とする。
【0036】
この構成により、迷光を確実に排除することが可能となり、高精度で被検出情報を検出することが可能となる。
【0037】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサでは、前記受光素子部はCMOSイメージセンサ、前記発光素子部はLEDで構成してあることを特徴とする。
【0038】
この構成により、容易かつ安価に生産可能な光学式反射型情報読み取りセンサとすることができる。
【0039】
また、本発明に係る電子機器は、光学式反射型情報読み取りセンサを搭載した電子機器であって、前記光学式反射型情報読み取りセンサは、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサであることを特徴とする。
【0040】
この構成により、被検出情報の検出精度を向上させた光学式反射型情報読み取りセンサを搭載した電子機器とすることが可能となり、被検出情報の活用度が高く信頼性の高い電子機器とすることができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサによれば、構成部材を1つの筐体に収納することから、小型化および高精度化が可能で、生産性が高いという効果を奏する。
【0042】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサによれば、拡散反射光を検出することから、被検出情報面の状態に影響されないという効果を奏する。
【0043】
また、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサによれば、発光レンズ部としてトロイダルレンズを用いることから、被検出情報の1列情報を一括して読み取ることが可能となるという効果を奏する。
【0044】
また、本発明に係る電子機器によれば、本発明に係る光学式反射型情報読み取りセンサを搭載することから、被検出情報の検出精度が高いという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0046】
<実施の形態1>
本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサの構造および情報読み取りの原理を図1、図2に基づいて説明する。
【0047】
図1は、本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサの構造の概略を側面から透視的に見た状態を示す透視側面図である。
【0048】
本実施の形態に係る光学式反射型情報読み取りセンサ1は、情報読み取り用の光を発光する発光素子部2と、発光素子部2が発光した光を照射光LBeとして光学式反射型情報読み取りセンサ1の外部に配置された被検出物5の被検出情報面5sに照射する発光レンズ部3と、被検出情報面5sに照射された光の反射光としての拡散反射光LBdを結像させる受光レンズ部8と、結像された拡散反射光LBdを受光する受光素子部7とを備える。
【0049】
発光素子部2、発光レンズ部3、受光素子部7、受光レンズ部8は、1つの筐体9に収納してある。要部を1つの筐体9にまとめて収納、配置してあることから、小型化が可能となり、また要部相互間の位置合わせ精度を向上させることが可能となる。つまり、この構成とすることにより、被検出情報面5sに表されたバーコードなどの被検出情報(1次元情報または2次元情報)としての被検出情報パターン5p(図2参照)を高精度に読み取ることが可能な光学式反射型情報読み取りセンサ1とすることができる。
【0050】
発光素子部2は、LED(発光ダイオード)により構成してある。また、受光素子部7は、イメージセンサにより構成してある。イメージセンサとしては、特にCMOSイメージセンサが検出精度、生産性、およびコストの観点から好ましい。
【0051】
発光レンズ部3は、発光素子部2の前面に配置されて発光素子部2から発光された光を絞って照射光LBeに変換する。照射光LBeは、被検出情報面5sで入射角と等しい反射角で反射する鏡面反射光LBrと、被検出情報面5sの垂直方向へ拡散する拡散反射光LBdとを構成する。
【0052】
受光レンズ部8は、受光素子部7の前面に配置されて被検出情報面5sで反射された拡散反射光LBdを受光素子部7に結像する。鏡面反射光LBrは、被検出情報面5s(被検出物5)の材質や表面形状による影響を大きく受ける。本実施の形態では、鏡面反射光LBrを用いずに反射光(拡散反射光LBd)を検出することから、被検出情報面5sの表面状態に大きな影響を受けずに被検出情報5pを安定して検出することが可能となる。
【0053】
なお、鏡面反射光LBrを排除した状態で拡散反射光LBdを受光素子部7に結像するために、発光素子部2および発光レンズ部3の配置を調整する。つまり、照射光LBeは、被検出情報面5sの垂直方向に対して10度ないし45度の傾斜角θを有するように構成してある。この構成により、拡散反射光LBdを確実に発生させて検出精度を向上させることが可能となり、信頼性の高い光学式反射型情報読み取りセンサ1とすることができる。
【0054】
また、受光素子部7の受光面は、被検出情報面5sと平行な位置に配置してある。この構成により、拡散反射光LBdを正確に検出することが可能となり、高精度の光学式反射型情報読み取りセンサ1とすることができる。
【0055】
なお、発光レンズ部3の形状をトロイダルレンズとすることにより、被検出情報面5sに照射される照射光LBeは、図上での座標Z方向への広がりを有する帯状のスポットビーム形状とすることが可能となる。また、座標X方向、Y方向においては、上述したとおり照射光LBe、拡散反射光LBdとして適宜の方向性を有するように構成することができる。なお、照射光LBeの座標Z方向への広がり(帯状の長さ方向)は、被検出情報面5s(被検出情報)が有する1列情報の全てに照射光LBeが照射されるように構成してある(図2参照。)。
【0056】
したがって、発光レンズ部3の形状をトロイダルレンズとすることにより、発光素子部2を少ない個数(例えば1個)のLEDで構成しても、被検出情報面5sの1列情報の全てに照射光LBeを照射することが可能となる。つまり、発光素子部2を小型化することが可能となる。発光素子部2からの光を1列情報の全てに照射するように発光素子部2を動かす機構を必要としないので、小型化が可能となり、生産性を向上させて安価に製造することが可能となる。
【0057】
また、受光素子部7および受光レンズ部8を発光素子部2および発光レンズ部3と一体にすることから、さらに小型化、高精度化を図ることが可能となる。
【0058】
図2は、本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサの読み取り領域と被検出情報パターンとの関係を示す説明図である。
【0059】
被検出情報面5sの表面には被検出情報としての被検出情報パターン5pが2次元情報(例えば、X方向およびZ方向)として形成してある。照射光LBeは、上述したとおり座標Z方向へ広がりを有する帯状のスポットビーム形状として構成され、被検出情報が有する1列情報の全てに照射光LBeが照射されるように構成してあることから、被検出情報面5sの表面に照射された照射光LBeは、1列情報の全てに対応するように検出照射光領域SAを構成する。
【0060】
したがって、1列情報の全てに対応する帯状の検出照射光領域SAからの拡散反射光LBdを受光素子部7で検出することが可能となる。また、X方向への広がり(帯状での帯幅方向)を抑制していることから、被検出情報面5sで隣接する他の1列情報への影響を低減することが可能となり、1列情報の読み取りを高精度で確実に行なうことが可能となる。つまり、照射光LBeは、1列情報の列方向と交差する行方向(帯幅方向)での被検出情報の単位長Wuと同程度の幅Wdを有する構成としてある。なお、被検出情報の単位長Wuと照射光LBeの行方向での幅Wdは、異ならせて図示してあるが、1列情報が読み取り可能であれば同一でも良く、また、どのような値であっても良い。
【0061】
受光素子部7、受光レンズ部8は、検出照射光領域SAからの拡散反射光LBdを確実に受光して検出できるように、検出照射光領域SAに対応する受光が可能な1次元受光素子アレイで構成することが好ましい。この構成により、容易かつ精度良く1次元の被検出情報(1列情報の全て)を一括して検出でき、さらには2次元の被検出情報を検出することができる(図3、図4参照。)。
【0062】
本実施の形態に係る光学式反射型情報読み取りセンサによる2次元情報の読み取り態様を図3、図4に基づいて説明する。
【0063】
図3は、本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサによる2次元情報の読み取りの概略を説明する説明図である。図4は、本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサの読み取り領域と被検出情報パターンとの関係を示す説明図である。
【0064】
基本的には、図1に示した構成と同様であるので、詳細な説明は適宜省略する。図1で示したとおり、照射光LBeは被検出情報の1列情報の全てに照射され検出照射光領域SAを構成する。したがって、発光素子部2および受光素子部7を走査方向SDeで走査させることにより、2次元情報として構成してある被検出情報面5sの被検出情報パターン5pを検出することが可能となる。なお、このとき、被検出情報面5sは固定してある。つまり、光学式反射型情報読み取りセンサ1を走査させることにより、2次元情報としての被検出情報(被検出情報パターン5p)を検出することが可能となる。
【0065】
また、光学式反射型情報読み取りセンサ1を固定しておき、被検出物5(被検出情報面5s)を走査方向SDsで走査させることによっても、2次元情報として構成してある被検出情報面5sの被検出情報パターン5pを検出することが可能となる。
【0066】
このような走査機構を採用した構成とすることにより、容易かつ精度良く2次元情報を検出することが可能となる。
【0067】
本実施の形態に係る光学式反射型情報読み取りセンサに適用して有効なトロイダルレンズの実施例を図5ないし図8に基づいて説明する。
【0068】
図5は、本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサを適用した場合、被検出情報が有する1列情報の全てに照射光が照射される状態を説明する説明図である。図6は、図5に示した被検出情報が有する1列情報の列方向と交差する行方向で照射光が照射される状態を説明する説明図である。
【0069】
基本的には、図1、図3に示した構成と同様である。Z方向が、被検出情報の1列情報の方向となっている。したがって、発光素子部2が発光した光はトロイダルレンズ3tを通過して被検出情報面5sに照射光LBeとして照射され、帯状の検出照射光領域SA(図2、図4参照。)を構成する。つまり、図5では、左右方向が帯状の長さ方向に対応している。また、図6では、左右方向が帯状の幅方向に対応している。
【0070】
検出照射光領域SAは被検出情報の1列情報をムラなく検出するために均一な光強度を有する帯状であることが望ましい。したがって、トロイダルレンズ3tのレンズ形状を最適化する必要がある。例えば、レンズ焦点距離をレンズ中心部での距離Lfaとすれば検出照射光領域SAは中心部が細く、両端が太い形状となり、正常な形をした帯状を得ることができない。また、レンズ端部に対応する距離Lfcをレンズ焦点距離とすれば検出照射光領域SAの両端が細くなり、中心部分が太くなってしまう。
【0071】
したがって、距離Lfaと距離Lfcの平均値に対応する距離Lfbをレンズ焦点距離としてトロイダルレンズ3tのレンズ形状を決定する。つまり、被検出情報の1列情報の中央部と端部との中間に対応させて焦点距離を設定する。
【0072】
この構成により、検出照射光領域SAの太さ(帯状の幅方向)の均一性を向上させることができる。
【0073】
なお、距離Lfbを基準としてレンズ形状を設計するが、適宜の幅を有する帯状としておくことにより、光学式反射型情報読み取りセンサ1(発光素子部2、受光素子部7など)の位置ズレによる検出精度への影響を低減することが可能となる。つまり、図6で示す検出照射光領域SAは、被検出情報の行方向での単位長Wu(図2参照。)と同程度の幅Wd(図2参照。)を有する構成としてある。この構成により、1列情報の読み取りを確実に行なうことが可能となる。
【0074】
図7は、本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサでの照射光および拡散反射光の関係を説明する説明図であり、(A)は照射光の状態を、(B)は拡散反射光の状態を示す概略側面図である。
【0075】
被検出情報面5sが有する被検出情報の1列情報の列方向で中央部付近と両端における検出ムラを低減するためには、中央部に対応する位置の照射光LBeaの強度と両端部に対応する位置の照射光LBebの強度とを調整して、受光素子部7(1次元受光素子アレイ7a)に届く拡散反射光LBda(照射光LBeaに対する反射光)、LBdb(照射光LBebに対する反射光)が1列情報の列方向で均等な強度を持つように構成することが好ましい。図7について説明した特性を実現するトロイダルレンズ3tの構造を図8に示す。
【0076】
図8は、本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサに適用するトロイダルレンズの実施例を示す説明図であり、(A)はトロイダルレンズを凸部側から見た状態での平面図、(B)は(A)での矢符B方向から見た側面図、(C)は(A)での矢符C方向から見た正面図である。
【0077】
発光素子部2から発光された照射光LBeaと照射光LBebの被検出情報面5sに対する角度、拡散反射光LBdaと拡散反射光LBdbの1次元受光素子アレイ7aに対する入射角度から、照射光LBeaは照射光LBebに比較して強度(光強度)を小さくする必要がある(図7参照。)。
【0078】
したがって、1列情報の中央部に対応するレンズ中央部3taの幅を1列情報の端部に対応するレンズ端部3tbの幅より小さくしてある。この構成により、レンズ中央部3taを通る照射光LBeaは、レンズ端部3tbを通る照射光LBebより相対的に小さくすることが可能となり、照射光LBeaと照射光LBebとの強度を均等化することができ、1次元受光素子アレイ7aの受光面での光強度の分布を均等化することができる。
【0079】
図9は、本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサでの発光素子部/受光素子部による位置ズレの影響を低減する実装構造を説明する説明図である。
【0080】
基本的には、図1に示した構成と同様であるので、詳細な説明は適宜省略する。
【0081】
例えば、発光素子部2がXs(mm)位置ズレした場合、被検出情報面5s上のスポット位置ズレはXs・(発光レンズ部・被検出情報面間距離Leb)/(発光素子部・発光レンズ部間距離Lea)(mm)となる。さらにこのスポット位置ズレは、受光素子部7上で、Xs・〔(発光レンズ部・被検出情報面間距離Leb)/(発光素子部・発光レンズ部間距離Lea)〕・〔(受光素子部・受光レンズ部間距離Lda)/(受光レンズ部・被検出面間距離Ldb)〕(mm)となる。
【0082】
受光素子部7上でのスポット位置ズレを小さくするためには、被検出情報面5s上のスポット位置ズレが拡大されないことが必要である。つまり、〔(発光レンズ部・被検出情報面間距離Leb)/(発光素子部・発光レンズ部間距離Lea)〕・〔(受光素子部・受光レンズ部間距離Lda)/(受光レンズ部・被検出面間距離Ldb)〕=1であること、あるいは1に近い値であることが必要となる。
【0083】
したがって、発光素子部・発光レンズ部間距離Lea:発光レンズ部・被検出情報面間距離Leb=受光素子部・受光レンズ部間距離Lda:受光レンズ部・被検出面間距離Ldbとしてあること、あるいは略近い値としてあることが好ましい。つまり、発光素子部2と発光レンズ部3との間の距離Leaと発光レンズ部3と被検出情報面5sとの間の距離Lebとの比に対して、受光素子部7と受光レンズ部7との間の距離Ldaと受光レンズ部7と被検出情報面5sとの間の距離Ldbとの比は近似させてある。
【0084】
上述した位置関係となるように発光素子部2、発光レンズ部3、受光素子部7、受光レンズ部8相互間の距離を確定することにより、発光素子部2、受光素子部7の位置ズレによる影響を受けにくい高精度の光学式反射型情報読み取りセンサ1とすることができる。
【0085】
また、発光素子部2と受光素子部7とを1つのパッケージに実装した構造とすることにより、発光素子部2の位置ズレと受光素子部7の位置ズレを同程度とすることが可能となり、上述した位置関係がある場合は、位置ズレが相殺され位置ズレの影響を打ち消すことができる。
【0086】
つまり、単一のリードフレーム10を適用して、発光素子部2および受光素子部7を搭載(ボンディング接続)し、発光素子部2および受光素子部7それぞれを1次樹脂封止部11e(発光素子部2に対応)、11d(受光素子部7に対応)により分割した状態で個別に樹脂封止する。なお、発光素子部2および受光素子部7は、相互の電気的影響を排除するために異なるリードピンに載置され、適宜相互に絶縁してあることが好ましい。なお、同図では、単一のリードフレーム10であることを明示するために単一の板状体を図示しているが、実際にはリードフレーム10上に形成された互いに異なるリードピンに接続されている。
【0087】
また、発光素子部2からの光は、直接受光素子部7へ届くことのないようにする必要がある。したがって、1次樹脂封止部11eと、1次樹脂封止部11dとの間および1次樹脂封止部11e、11dの周囲に、遮光性の2次樹脂封止部12を形成して樹脂封止する。つまり、発光素子部2および受光素子部7は、それぞれ独立した光学系とすることができることから、被検出情報を高精度で検出することができる光学式反射型情報読み取りセンサ1となる。なお、照射光LBeおよび拡散反射光LBdの光路には、照射光LBeおよび拡散反射光LBdを透過させる適宜の透光部12wが形成してある。
【0088】
透光部12wは、2次樹脂封止部12の封止樹脂を配置しないでスリット形状とすることにより、迷光(ノイズ光)を排除することが可能となり、高精度で信頼性の高い光学式反射型情報読み取りセンサ1とすることが可能となる。また、発光素子部2の前面部、受光素子部7の前面部にスリット形状の透光部12を構成することから、発光レンズ部3および受光レンズ部8による収差を減少させて、より精度の高い検出を行なうことができる。
【0089】
<実施の形態2>
本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサ1を例えばプリンタなどの電子機器(不図示)に内蔵、搭載し、例えばインクタンクに付与されたバーコードなどの被検出情報を高精度に検出する構成とすることにより、インクタンクの種類を読み取らせてインクタンクの設定ミスなどを防止することが可能となる。つまり、実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサ1を電子機器に搭載することにより、被検出情報の活用度が高く、信頼性を向上させた電子機器とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサの構造の概略を側面から透視的に見た状態を示す透視側面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサの読み取り領域と被検出情報パターンとの関係を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサによる2次元情報の読み取りの概略を説明する説明図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサの読み取り領域と被検出情報パターンとの関係を示す説明図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサを適用した場合、被検出情報が有する1列情報の全てに照射光が照射される状態を説明する説明図である。
【図6】図5に示した被検出情報が有する1列情報の列方向と交差する行方向で照射光が照射される状態を説明する説明図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサでの照射光および拡散反射光の関係を説明する説明図であり、(A)は照射光の状態を、(B)は拡散反射光の状態を示す概略側面図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサに適用するトロイダルレンズの実施例を示す説明図であり、(A)はトロイダルレンズを凸部側から見た状態での平面図、(B)は(A)での矢符B方向から見た側面図、(C)は(A)での矢符C方向から見た正面図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る光学式反射型情報読み取りセンサでの発光素子部/受光素子部による位置ズレの影響を低減する実装構造を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0091】
1 光学式反射反射型情報読み取りセンサ
2 発光素子部
3 発光レンズ部
3t トロイダルレンズ
3ta レンズ中央部
3tb レンズ端部
5 被検出物
5s 被検出情報面
5p 被検出情報パターン
7 受光素子部
8 受光レンズ部
9 筐体
11 1次樹脂封止部
12 2次樹脂封止部
12w 透光部
LBe、LBea、LBeb 照射光
LBd、LBda、LBdb 拡散反射光
LBr 鏡面反射光
Lea 発光素子部・発光レンズ部間距離
Leb 発光レンズ部・被検出情報面間距離
Lda 受光素子部・受光レンズ部間距離
Ldb 受光レンズ部・被検出情報面間距離
SDe、SDs 走査方向
SA 検出照射光領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報読み取り用の光を発光する発光素子部と、被検出情報を表す被検出情報面に前記発光素子が発光した光を照射光として照射する発光レンズ部と、前記被検出情報面に照射された光の反射光を結像させる受光レンズ部と、結像された反射光を受光する受光素子部とを備える光学式反射型情報読み取りセンサであって、
前記発光素子部、前記発光レンズ部、前記受光レンズ部、および前記受光素子部を一つの筐体に収納してあることを特徴とする光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項2】
前記反射光は、拡散反射光であることを特徴とする請求項1に記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項3】
前記照射光は、前記被検出情報面の垂直方向に対して10度ないし45度の傾斜角を有することを特徴とする請求項2に記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項4】
前記受光素子部は、前記被検出情報面と平行な位置に受光面を配置してあることを特徴とする請求項3に記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項5】
前記受光素子部は、1次元受光素子アレイを備えることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項6】
前記発光素子部および前記受光素子部を走査させることにより、または前記被検出情報面を走査させることにより、2次元の被検出情報を読み取る構成としてあることを特徴とする請求項5に記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項7】
前記発光レンズ部は、前記被検出情報が有する1列情報の全てに前記照射光を照射するトロイダルレンズとしてあることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一つに記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項8】
前記トロイダルレンズは、前記1列情報の中央部と端部との中間に対応させて焦点距離を設定してあることを特徴とする請求項7に記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項9】
前記トロイダルレンズは、前記1列情報の中央部に対応するレンズ中央部の幅を前記1列情報の端部に対応するレンズ端部の幅より小さくしてあることを特徴とする請求項7または請求項8に記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項10】
前記照射光は、前記1列情報の列方向と交差する行方向での前記被検出情報の単位長と同程度の幅を有する構成としてあることを特徴とする請求項7ないし請求項9のいずれか一つに記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項11】
前記発光素子部と前記発光レンズ部との間の距離と前記発光レンズ部と前記被検出情報面との間の距離との比に対して、前記受光素子部と前記受光レンズ部との間の距離と前記受光レンズ部と前記被検出情報面との間の距離との比は近似してあることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか一つに記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項12】
前記発光素子部および前記受光素子部は、単一のリードフレームを適用してボンディング接続され、それぞれ1次樹脂封止部により個別に樹脂封止され、前記1次樹脂封止部相互間を2次樹脂封止部による樹脂封止により遮光してあることを特徴とする請求項1ないし請求項11のいずれか一つに記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項13】
前記2次樹脂封止部は、前記照射光および前記反射光を透過させる透光部を有することを特徴とする請求項12に記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項14】
前記透光部は、スリット形状としてあることを特徴とする請求項13に記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項15】
前記受光素子部はCMOSイメージセンサ、前記発光素子部はLEDで構成してあることを特徴とする請求項1ないし請求項14のいずれか一つに記載の光学式反射型情報読み取りセンサ。
【請求項16】
光学式反射型情報読み取りセンサを搭載した電子機器であって、前記光学式反射型情報読み取りセンサは、請求項1ないし請求項15のいずれか一つに記載の光学式反射型情報読み取りセンサであることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−310806(P2007−310806A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−141656(P2006−141656)
【出願日】平成18年5月22日(2006.5.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】