説明

光学式変位計とそれを用いた粘性液体の塗布断面積の測定方法、光学変位計の測定プログラムおよびコンピュータで読み取り可能な記録媒体。

【課題】粘性液体の塗布断面積を光学式変位計で測定する際に、盛り上がり部分の斜面付近で変位データが正確に得られない場合や盛り上がり部分の幅が正確に求められない場合でも、その形状に適した算出方法で比較的正確な塗布断面積を測定できるようにする。
【解決手段】光学式変位計は、対物レンズ15を光軸方向に振動させると共にその位置を検出し、受光量が最大となるときの対物レンズ15の位置情報から測定対象物16の表面の変位を測定する。対物レンズ15の光軸と測定対象物16とを相対的に所定量ずつ移動させながら取得した測定対象物16の表面の変位データと受光量データとを記憶する。塗布形状の両端を検出するためのしきい値を用いて、その形状に適した断面積計算方法を選択する判定部44を備えており、断面形状に応じた計算方法で塗布断面積を測定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物に光を投射し、その反射光を受光して測定対象物の表面の変位を測定する光学式変位計と、それを用いてシール剤等の粘性液体の塗布量を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学式変位計として、特許文献1に記載されているような合焦点検出型非接触変位計が実用化されている。この光学式変位計は、レーザ光を用いて測定対象物の表面の高さの変化(変位)をミクロンオーダで測定することができる。以下に、その構成を簡単に説明する。
【0003】
図1は、従来の光学式変位計の構成を示すブロック図である。レーザパワー制御回路11で駆動されるレーザダイオード12から出射したレーザ光は、ビームスプリッタ13、コリメータレンズ14、及び対物レンズ15を順次通過し、測定対象物16に投射される。測定対象物16からの反射光は、対物レンズ15及びコリメータレンズ14を通ってビームスプリッタ13で反射し、光絞り部17のピンホール17aを通ってフォトダイオード18に入射する。フォトダイオード18が光電変換して得られた受光量に対応する電気信号は、増幅器19で増幅された後に演算部20へ入力される。
【0004】
対物レンズ15は、U字状の音叉21に取り付けられ、音叉21が振動すると対物レンズ15が光軸方向に振動するようになっている。音叉21は、音叉振幅制御回路25によって励磁されるソレノイド24によって一定の周波数及び振幅(例えば800Hz,±0.3mm)で振動させられる。音叉21の先端部側方には音叉振幅検出器22が配置され、その検出信号(正弦波信号)が増幅器23を通って演算部20にフィードバックされている。
【0005】
音叉振幅制御回路25によってソレノイド24が励磁され、音叉21の振動によって対物レンズ15が光軸方向に振動すると、レーザダイオード12からビームスプリッタ13、コリメータレンズ14、及び対物レンズ15を通って測定対象物16に投射されるレーザ光の集束点(すなわち対物レンズ15の焦点)が光軸方向に振動する。その結果、測定対象物16の表面で反射し、対物レンズ15及びコリメータレンズ14を通り、ビームスプリッタ13で反射し、光絞り部17のピンホール17aを通ってフォトダイオード18に入射するレーザ光の光量が変化する。
【0006】
つまり、測定対象物16に投射されるレーザ光の集束点が測定対象物16の表面にあるとき(合焦点状態)に、その反射光のうち光絞り部17に到達した光のほとんどがピンホール17aを通過し、フォトダイオード18に入射するレーザ光の受光量が最も多くなる。これに対して、レーザ光の集束点が測定対象物16の表面からずれると、光絞り部17に到達した反射光の一部のみがピンホール17aを通過し残りはカットされる。その結果、フォトダイオード18の受光量が急激に減少する。
【0007】
したがって、演算部20において、フォトダイオード18の受光量が最大になるときの音叉振幅検出器22からの正弦波信号から、対物レンズ15の位置信号を得、この位置信号を距離変換部26で距離に変換することにより、測定対象物16の表面の変位を得ることができる。なお、演算部20の具体的な回路構成とその動作については特許文献1に詳しく開示されている。
【0008】
上記のような光学式変位計を用いた測定の一例として、ガラス基板等に塗布されたシール剤のような粘性液体の塗布断面積の測定を挙げることができる。例えば液晶表示器の製造工程において、スペーサを介して所定の間隔で平行に対向する2枚のガラス基板の周囲をシール剤で封止する必要がある。一方のガラス板の周辺部に沿ってシール剤を塗布した後に、他方のガラス板を重ねて押さえることにより、2枚のガラス基板がスペーサの大きさで決まる間隔を隔てて周辺部で固定され、封止される。
【0009】
この際、シール剤の塗布量が少なすぎると封止(密封)が不完全になるおそれがあり、多すぎると余分なシール剤が2枚のガラス基板の周辺部からはみ出すことがある。そこで、シール剤の塗布量、すなわち塗布断面積を厳密に管理する必要があり、その管理のために塗布断面積の測定が行われる。このような粘性液体の塗布断面積の測定方法の従来例として特許文献2に開示された方法がある。この測定方法では、撮像手段で得られた画像の処理によって塗布断面の輪郭(高さの分布)を求め、積分処理によって断面積を求めている。
【0010】
特許文献1に記載されているような光学式変位計を用いて粘性液体の塗布断面積の測定を行う場合は、光学式変位計から得られる変位(表面高さ)の分布を求めることにより、同様にしてシール剤の塗布断面積を求めることができる。つまり、図2に示すようにガラス基板30の上にシール剤31が直線状に塗布されているとすれば、シール剤31の塗布方向D1に略垂直な方向(幅方向)D2に光軸を移動させながら変位(表面高さ)の分布を求めればよい。光軸をD2方向に移動させる手段は図1に示されていないが、例えば公知のX−Yテーブルを用いて、測定対象物16(ガラス基板30及びシール剤31)を光軸に対して移動させればよい。あるいは、測定対象物16の載置台は固定して、対物レンズ15を水平方向に移動させる機構を設けてもよい。対物レンズ15を水平方向に移動させることにより、直線状に塗布されたシール剤31を横切る方向(幅方向)に光軸を高速移動させることができる。
【0011】
このようにして求めた高さ分布のグラフの一例を図3に示す。図3において、黒色の太線のグラフ33が高さ分布を示しており、これに重ねて示された灰色のグラフ34は受光量の分布である。このような高さ分布のグラフ33を得ることができれば、その盛り上がり部分の面積、すなわち塗布断面積を積分演算によって求めることは容易である。例えば、盛り上がり部分の幅W(図示の例では360μm程度)を移動量などのサンプリングごとに分割し(単位幅ΔW)、各サンプリング点における変位(高さ)データとΔWとの積を加算すれば塗布断面積が得られる。
【特許文献1】特許第3300803号
【特許文献2】特開2003−28616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら実際には、図3に示したような比較的きれいな高さ分布のグラフ33が得られるとは限らず図4に示すように、高さ分布のグラフ35の盛り上がり部分の斜面、すなわち立ち上がり35a及び立下り35bの部分で測定値の変動が大きくなり(不正確になり)、グラフが乱れる現象が起こりやすいことが分かっている。この現象は、液体(シール剤)の粘土が高く、盛り上がり部分の斜面の傾きが大きいほど顕著に発生する。これは、図4aのステップ#301から#304にしめすようにシール材に対してレーザー光を照射しながら測定器を右方向に移動させていくと、35aおよび35bの部分のように斜面の傾きが大きい箇所で、レーザー光が測定器方向以外に反射してしまいフォトダイオード18に至る光量が少なくなる。これが図4の受光量の分布を示すグラフ36の36a及び36bでの受光量が不十分になることの一因であると考えられる。
【0013】
このように、高さ分布のグラフ35の盛り上がり部分の斜面では、測定器のフォトダイオード18に戻る光量が少なくなるので、変位データが正確には求められない。したがって変位データの変動が激しくなり誤差を多く含んでしまう。この場合には、従来技術のような積分(各サンプリング点における変位データとΔWとの積の加算)演算によって塗布断面積を求めた場合の誤差も非常に大きくなり、測定値としての使用に耐えない。そこで、シール剤のような粘性液体を基板に直線状に塗布した場合、その盛り上がり部分の断面は一般に、図4bにしめしたような中央部が高い放物線のような形状になるので、斜面の部分の不正確な変位(高さ)データを使用しないで、図4にしめした中央部(ピーク)の変位(高さH)データと盛り上がり部分の幅Wとから近似的に塗布断面積を求めるようにすれば、ほぼ正確な塗布断面積を安定的に得ることができる。つまり変位データの得られない35aおよび35bの部分で図4cの35eおよび35fにしめされる破線のように、そこが放物線であるかごとく近似して求めるという手法である。
【0014】
例えば、断面形状が一般式Y=−X*X+Hでしめされるような放物線で近似される場合には、図4bでしめしたようにX=−1/2WからX=1/2まで、放物線を定積分すればよい。ここで、その盛り上がり部の幅Wは変位データからではなく、受光量データから求められる。これは基板表面が露出している部分と粘性液体が塗布された部分との境界で受光量が36c、36dのように急激に変化するので、受光量データから両側の境界を検出し、両者間の幅を求めることが容易であるからである。
【0015】
発明者は図4のように変位データ変動が激しい場合には上記のような解決方法にて塗布断面積をほぼ正確に求められ、また単純な近似式を用いているので計算時間が短縮できるなどの知見を得た。しかしながら実際には、図5にしめすように盛り上がり部の盛り上がり方が急峻ではなく、なだらかな場合には、受光量データの変化が小さく両側の境界を検出することが困難となり、その得られた幅の検出誤差も大きくなる。具体的には、変位データの立ち上がり部37aおよび立下り部37bの部分で測定値の変動が小さく、さらに受光量データの変動部38aおよび38bでもその変動が小さいので、両端を検出することが困難となる。さらにシール形状がなだらかな場合は、その頂点39がつぶれ、放物線状から外れた形状になりやすいため、上記の塗布断面積算出方法で求めたとしても誤差が大きくなる。
【0016】
本発明は、上記のような課題に鑑み、シール剤のような粘性液体の塗布断面積を光学式変位計で測定する際に、その断面形状にあわせて塗布断面積の算出方法を切り替え、より誤差の少ない塗布断面積を選択し測定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明による光学式変位計の第1の構成は、対物レンズで集束した光を測定対象物に投射し、前記測定対象物からの反射光を前記対物レンズ及びピンホールを通して受光し、前記対物レンズを光軸方向に振動させることによりその位置を検出し、受光量が最大となるときの前記対物レンズの位置情報から前記測定対象物の表面の変位を測定する光学式変位計であって、前記対物レンズの光軸と前記測定対象物とを相対的に所定移動量ずつ移動させながら取得した測定対象物の表面の変位データを記憶する変位データ記憶部と、前記変位データと対応させて取得した受光量データを記憶する受光量データ記憶部と、前記変位データによって規定される盛り上がり部分の両端を検出するためのしきい値を設定するしきい値設定部と、前記受光量データのうち前記しきい値により弁別される交点が前記移動方向に対して少なくとも2箇所存在するかの有無を判定する判定部と、前記判定部の結果が有である場合には、前記変位データより前記盛り上がり部分の最大値に対応する高さを算出し、前記受光量データより盛り上がり部分の幅を算出し、該高さと幅から前記盛り上がり部分の断面積を算出する第1の断面積算出部と、前記判定部の結果が無である場合には、前記所定移動量と前記変位データより前記盛り上がり部分の断面積を積分算出する第2の断面積算出部と、前記変位データによって規定される盛り上がり部分の前記第1または第2の断面積算出部で算出された断面積を表示する表示部とを備えていることを特徴とする
【0018】
本発明による光学式変位計の第2の構成は、第1の構成と同様の光学式変位計において、前記表示部は、さらに前記変位データによって規定される盛り上がり部分を含む測定対象物の表面の断面輪郭と、前記判定部の判定結果が有の場合には前記第1の断面積算出部で算出された断面積とを表示し、前記判定部の判定結果が無の場合には前記第2の断面積算出部で算出された断面積とを表示する表示部であることを特徴とする。
【0019】
本発明による光学式変位計の第3の構成は、第1もしくは第2の構成と同様の光学式変位計において、前記第1の断面積算出部は、算出された前記盛り上がり部分の高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えて得られた値を前記断面積として算出し、前記断面積算出部に対して前記係数及び前記オフセットを設定する係数・オフセット設定部を更に備えていることを特徴とする。
【0020】
本発明による光学式変位計の第4の構成は、第3の構成と同様の光学式変位計において、前記係数・オフセット設定部は、前記第1の断面算出部で求められた盛り上がり部分の高さ及び幅と、別の手段で測定され入力された前記盛り上がり部分の断面積の真値とのセット2組から前記係数及び前記オフセットを算出し設定することを特徴とする。
【0021】
また、本発明による光学式変位計を用いた粘性液体の塗布断面積の測定方法の第1の構成は、対物レンズで集束した光を測定対象物に投射し、前記測定対象物からの反射光を前記対物レンズ及びピンホールを通して受光し、前記対物レンズを光軸方向に振動させることによりその位置を検出し、受光量が最大となるときの前記対物レンズの位置情報から前記測定対象物の表面の変位を測定する光学式変位計を用いて、基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する方法であって、(a)前記粘性液体の塗布方向に直角または斜めの方向に前記対物レンズの光軸を相対的に移動させながら前記粘性液体が塗布された盛り上がり部分の表面の変位データ及び受光量データを取得して記憶するステップと、(b)前記変位データと対応させて受光量データを取得して記憶するステップと、(c)前記変位データによって規定される盛り上がり部分の両端を検出するためのしきい値を設定するステップと、(d)前記受光量データのうち前記しきい値により弁別される交点が前記移動方向に対して少なくとも2箇所存在するかの有無を判定するステップと、(e)前記判定部の結果が有である場合には、前記変位データより前記盛り上がり部分の最大値に対応する高さを算出し、前記受光量データより盛り上がり部分の幅を算出し、該高さと幅から前記盛り上がり部分の断面積を算出するステップと、(f)前記判定部の結果が無である場合には、前記所定移動量と前記変位データより前記盛り上がり部分の断面積を積分算出するステップと、(g)前記変位データによって規定される盛り上がり部分の前記第1または第2の断面積算出部で算出された断面積を表示するステップとを実行することを特徴とする。
【0022】
本発明による光学式変位計を用いた粘性液体の塗布断面積の測定方法の第2の構成は、第1の構成と同様の測定方法において、前記ステップ(g)において、さらに前記変位データによって規定される盛り上がり部分を含む測定対象物の表面の断面輪郭と、前記判定部の判定結果が有の場合には前記ステップ(e)で算出された断面積とを表示し、前記判定部の判定結果が無の場合には前記ステップ(f)で算出された断面積とを表示するステップを実行することを特徴とする。
【0023】
本発明による光学式変位計を用いた粘性液体の塗布断面積の測定方法の第3の構成は、第1または第2の構成と同様の測定方法において、前記ステップ(e)において、前記盛り上がり部分の高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えて得られた値を前記断面積として算出することを特徴とする。
【0024】
本発明による光学式変位計を用いた粘性液体の塗布断面積の測定方法の第4の構成は、第3の構成と同様の測定方法において、前記ステップ(e)において求められた盛り上がり部分の高さ及び幅と、別の手段で測定され入力された前記盛り上がり部分の断面積の真値とのセット2組から前記係数及び前記オフセットを算出し設定するステップを前記ステップ(e)の断面積を算出する前に実行することを特徴とする。
【0025】
本発明による光学式変位計の測定プログラムの第1の構成は、対物レンズで集束した光を測定対象物に投射し、前記測定対象物からの反射光を前記対物レンズ及びピンホールを通して受光し、前記対物レンズを光軸方向に振動させることによりその位置を検出し、受光量が最大となるときの前記対物レンズの位置情報から前記測定対象物の表面の変位を測定する光学式変位計を用いて、基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する測定プログラムであって、コンピュータに、前記粘性液体の塗布方向に直角または斜めの方向に前記対物レンズの光軸を相対的に移動させながら前記粘性液体が塗布された盛り上がり部分の表面の変位データ及び受光量データを取得して記憶する機能と、前記変位データと対応させて受光量データを取得する記憶する機能と、前記変位データによって規定される盛り上がり部分の両端を検出するためのしきい値を設定する機能と、前記受光量データのうち前記しきい値により弁別される交点が前記移動方向に対して2箇所存在するかの有無を判定する機能と、前記判定部の結果が有である場合には、前記変位データより前記盛り上がり部分の最大値に対応する高さを算出し、前記受光量データより盛り上がり部分の幅を算出し、該高さと幅から前記盛り上がり部分の断面積を算出する第1の断面積算出機能と、前記判定部の結果が無である場合には、前記所定移動量と前記変位データより前記盛り上がり部分の断面積を算出する第2の断面積算出機能と、前記変位データによって規定される盛り上がり部分の前記第1または第2の断面積算出部で算出された断面積を表示する表示機能とを実行することを特徴とする。
【0026】
本発明による光学式変位計の測定プログラムの第2の構成は、第1の構成と同様の測定プログラムにおいてさらに、コンピュータに、前記表示機能において、前記変位データによって規定される盛り上がり部分を含む測定対象物の表面の断面輪郭と、前記判定部の判定結果が有の場合には前記第1の断面積算出機能で算出された断面積とを表示し、前記判定部の判定結果が無の場合には前記第2の断面積算出機能で算出された断面積とを表示することを特徴とする。
【0027】
本発明による光学式変位計の測定プログラムの第3の構成は、第1または第2の構成と同様の測定プログラムにおいてさらに、コンピュータに前記第1の算出機能において、前記盛り上がり部分の高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えて得られた値を前記断面積として算出することを特徴とする。
【0028】
本発明による光学式変位計の測定プログラムの第4の構成は、第3の構成と同様の測定プログラムにおいてさらに、コンピュータに前記第1の算出機能において求められた盛り上がり部分の高さ及び幅と、別の手段で測定され入力された前記盛り上がり部分の断面積の真値とのセット2組から前記係数及び前記オフセットを算出し設定する機能を前記第1の算出機能の前に実行することを特徴とする。
【0029】
また、本発明の光学式変形の測定プログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体は、前記第1から第4の光学式変形の測定プログラムの操作プログラムを記録していることを特徴としている。
【0030】
記録媒体には、CD−ROM、CD−R、CD−RWやフレキシブルディスク、磁気テープ、MO、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等の磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリその他のプログラムを格納可能な媒体が含まれる。
【発明の効果】
【0031】
本発明の光学式変位計の第1の構成によれば、シール剤のような粘性液体の塗布断面積を光学式変位計で測定する際に、その盛り上がり部分の両端を検出するためのしきい値と受光量データを比較し、そのしきい値との交点が2箇所以上存在するかの有無によって、断面積の算出方法を自動選択することにより、その塗布断面の形状に適した算出方法で断面積を求めることができる。シール剤のような粘性液体を基板に直線状に塗布した場合、その盛り上がり部分の断面は一般に、中央部が高い放物線のような形状になる。この場合は盛り上がり部分の斜面部分は不正確な変位(高さ)データとなり、このデータからは盛り上がり部分の幅を求めることが困難であるが、基板表面が露出している部分と粘性液体が塗布された部分との境界で受光量が急激に変化するので、受光量データから両側の境界を検出し、両者間の幅を求められる。その結果、盛り上がり部分の高さと幅とに基づいて近似計算を行い、塗布断面積を求めることができる。また盛り上がり部分の形状が、中央部と両端部の高さにあまり差がなく、なだらかな傾斜である場合には、受光量データから幅を求めるのは困難となる。この場合は、所定移動量と変位データとから塗布断面積を求めるようにすれば塗布断面積を安定的に得ることができる。
【0032】
このようにして、本発明の光学式変位計は、計測対象物である粘性液体の塗布断面形状にあわせて最適な塗布断面積算出方法を自動選択するので、ユーザに対して余計な負担を強いることなく、塗布断面積を提供することができる。従来は、塗布断面積の算出方法はユーザが経験則により固定的に定めていた。しかし、本発明では、上記断面積算出方法を切り替えを、受光量データがしきい値により弁別される交点が少なくとも2箇所以上存在するかの有無で判断することにより自動的に行うことによって、断面形状に合わせた算出が実現されることを可能とした。このため、光学変位計の操作に不慣れで経験の少ないユーザに対しても、常に測定対象物の塗布断面形状に適した算出方法を自動的に選択するので、断面積計測結果を提供することができる。また更に判定部において交点が2箇所以上存在した場合には、盛り上がり部分の幅が求められ、その際に簡単な近似式から断面積を算出するので、処理時間を短縮することができる。
【0033】
つまり本発明の光学式変位計の第1の構成によれば、シール剤のような粘性液体の塗布断面積を光学式変位計で測定する際に、判定部により受光量としきい値との交点が2箇所以上存在する場合には、簡単な近似式により算出することによって、存在しない場合には、所定移動量と変位データから算出することによって断面積を算出することが可能となり、これらの選択を自動的におこなうことによってユーザに対する負担を軽減することができるという効果を得ることができる。
【0034】
また、本発明の光学式変位計の第2の構成によれば、測定対象物の表面の断面輪郭と判定部により選択された断面積算出部で算出された断面積を表示するので、ユーザが測定対象物の断面形状と同時にその断面積を認識できる。つまり測定対象物の断面形状と断面積の関係を認識しやすい光学式変位計を提供することができる。
【0035】
また、本発明の光学式変位計の第3の構成によれば、高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えて得られた値を断面積として算出するので、塗布断面積をさらに高速で正確に求めることができる光学式変位計を提供できる。盛り上がり部分の高さと幅とに基づいて塗布断面積を求める別の方法として、例えば頂点と両側の境界点を通る放物線(二次曲線)の方程式を求め、その放物線と基板表面に対応する直線とで囲まれた部分の面積を積分計算により求めることも可能である。しかしながら、この場合は、放物線の方程式を別途求める必要があるので処理時間が長くなる。処理能力の低いマイクロプロセッサでは、そのような処理の負担が無視できなくなると共に処理に時間が掛かる。これに対して本発明の第2の構成では、高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えるといった簡単な処理で塗布断面積を求めることができるので処理時間が短く、早く処理が完了する。
【0036】
更に、本発明の光学式変位計の第4の構成によれば、別の手段で測定した盛り上がり部分の断面積の真値と、それぞれに対応して求められた盛り上がり部分の高さ及び幅の計2組のデータから係数及びオフセットを算出し設定することができる光学式変位計を提供することができる。別の手段として、例えば、粘性液体が液晶パネルのシール剤の場合は、2枚のガラス基板の間に塗布されたシール剤がスペーサによって規定された厚みまで押し潰されたときに、そのシール剤の幅と2枚のガラス基板の間隔との積として断面積を容易に求めることができる。あるいは、2枚のガラス基板を重ね合わせる前に、一方のガラス基板の上に塗布されたシール剤の盛り上がり部分の断面積を別の測定器を用いて測定してもよい。
【0037】
次に、本発明の光学式変位計を用いて基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する方法、そのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体の第1の構成によれば、シール剤のような粘性液体の塗布断面積を光学式変位計で測定する際に、その盛り上がり部分の両端を検出するためのしきい値と受光量データを比較し、そのしきい値との交点が2箇所以上存在するかの有無によって、断面積の算出方法を選択することにより、その塗布断面の形状に適した算出方法で断面積を正確に求めることができる。前述したように、シール剤のような粘性液体を基板に直線状に塗布した場合、その盛り上がり部分の断面は一般に、中央部が高い放物線のような形状になる。この場合は盛り上がり部分の斜面部分は不正確な変位(高さ)データとなり、このデータからは盛り上がり部分の幅を正確に求めることが困難であるが、基板表面が露出している部分と粘性液体が塗布された部分との境界で受光量が急激に変化するので、受光量データから両側の境界を検出し、両者間の幅を求められる。その結果、盛り上がり部分の高さと幅とに基づいて近似計算を行い、塗布断面積をほぼ正確に求めることができる。また盛り上がり部分の形状が、中央部と両端部の高さにあまり差がなく、なだらかな傾斜である場合には、受光量データから幅を求めるのは困難となる。この場合は、所定移動量と変位データとから塗布断面積を求めるようにすれば、ほぼ正確な塗布断面積を安定的に得ることができる。
【0038】
このようにして、本発明の光学式変位計を用いて基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する方法、そのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体の第1の構成では、計測対象物である粘性液体の塗布断面形状にあわせて最適な塗布断面積算出方法を選択するので、精度の高い塗布断面積を提供することができる。また更に判定部において交点が2箇所以上存在した場合には、盛り上がり部分の幅が求められ、その際に簡単な近似式から断面積を算出するので、処理時間を短縮することができる。
【0039】
つまり本発明の光学式変位計を用いて基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する方法、そのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体の第1の構成では、シール剤のような粘性液体の塗布断面積を光学式変位計で測定する際に、判定部により受光量としきい値との交点が2箇所以上存在する場合には、簡単な近似式により算出することによって高速な処理が可能となり、存在しない場合には、所定移動量と変位データから算出することによってより正確な断面積を算出することが可能となるという効果を得ることができる。
【0040】
また、本発明の光学式変位計を用いて基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する方法、そのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体の第2の構成によれば、測定対象物の表面の断面輪郭と判定部により選択された断面積算でのステップで算出された断面積を表示するので、ユーザが測定対象物の断面形状と同時にその断面積を認識できる。つまり測定対象物の断面形状と断面積の関係を認識しやすい測定方法を提供することができる。
【0041】
また、本発明の光学式変位計を用いて基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する方法、そのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体の第3の構成によれば、高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えて得られた値を断面積として算出するので、塗布断面積をさらに高速で正確に求めることができる。盛り上がり部分の高さと幅とに基づいて塗布断面積を求める別の方法として、例えば頂点と両側の境界点を通る放物線(二次曲線)の方程式を求め、その放物線と基板表面に対応する直線とで囲まれた部分の面積を積分計算により求めることも可能である。しかしながら、この場合は、放物線の方程式を別途求める必要があるので処理時間が長くなる。処理能力の低いマイクロプロセッサでは、そのような処理の負担が無視できなくなると共に処理に時間が掛かる。これに対して本発明の第2の構成では、高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えるといった簡単な処理で塗布断面積を求めることができるので処理時間が短く、早く処理が完了する。
【0042】
更に、本発明の光学式変位計を用いて基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する方法、そのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体の第4の構成によれば、別の手段で測定した盛り上がり部分の断面積の真値と、それぞれに対応して求められた盛り上がり部分の高さ及び幅の計2組のデータから係数及びオフセットを算出し設定することができる。別の手段として、前述したような方法をとっても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例について説明する。
【0044】
図6は、本発明の実施例1に係る光学式変位計の構成を示すブロック図である。この光学式変位計は、変位測定部10、変位データ記憶部41、受光量データ記憶部42、しきい値設定部43、判定部44、第1断面積算出部45、第2断面積算出部46、表示部47、係数・オフセット設定部48を備えている。
【0045】
変位測定部10は、図1を参照して説明した従来の光学式変位計と同じ構成であり、変位測定部10の各構成要素の参照番号は図1と同じ番号を付している。従来例の説明で述べた各構成要素の詳細な動作についての重複説明をできるだけ避けながら、動作の概略について以下に説明する。
【0046】
レーザパワー制御回路11で駆動されるレーザダイオード12から出射したレーザ光がビームスプリッタ13及びコリメータレンズ14を通過した後、対物レンズ15で集束されて測定対象物16に投射される。測定対象物16からの反射光は対物レンズ15及びコリメータレンズ14を通ってビームスプリッタ13で反射し(光路を曲げられ)、光絞り部17のピンホール17aを通ってフォトダイオード18で受光される。フォトダイオード18の受光量に対応する電気信号は増幅器19で増幅された後に演算部20へ入力される。
【0047】
対物レンズ15は、音叉振幅制御回路25によって励磁されるソレノイド24によって一定の周波数及び振幅(例えば800Hz,±0.3mm)で光軸方向に振動させられる。その振動位置は、音叉振幅検出器22によって検出される。つまり、音叉振幅検出器22から出力される正弦波信号が増幅器23を通って演算部20に入力されている。演算部20は、フォトダイオード18の受光量が最大になるときの音叉振幅検出器22からの正弦波信号から、対物レンズ15の位置情報を得る。そして、この位置情報が距離変換部26で距離に変換されることにより、測定対象物16の表面の変位が得られる。
【0048】
より具体的には、演算部20内に設定される振幅の基準点と音叉振幅検出器22から出力される正弦波信号により、演算部20によって、この正弦波と振幅基準点とが交差するゼロクロス点を見つける。これによって正弦波の位相を検出し、フォトダイオード18の受光量が最大となる、つまり焦点が合っている時の音叉振幅検出器22からの正弦波信号から、上記ゼロクロス点からの変位を測定している。
【0049】
図2に示したように、ガラス基板30の上に直線状に塗布されたシール剤(粘性液体)31の塗布断面積を測定する際の動作について、図7のフローチャートに沿って説明する。図7は、光学式変位計を用いて粘性液体の塗布断面積を測定する処理の概略を示すフローチャートである。
【0050】
ステップ#11において、対物レンズ15の光軸と測定対象物16とを相対的に所定量ずつ移動させながら(スキャンしながら)測定対象物16の表面の変位データを取得する。つまり、図2において、シール剤31の塗布方向D1に略垂直な方向(幅方向)D2に光軸を移動させながら変位データY[i]、受光量データL[i]を取得する。所得された変位データY[i]は、変位データ記憶部41に記憶され、受光量データL[i]は、受光量データ記憶部42に記憶される。この際、幅方向位置X[i]も取得され記憶される。対物レンズ15の光軸と測定対象物16とを相対的に所定量ずつ移動させる手段として、測定対象物16が載置されるテーブルを所定ピッチで移動させてもよいし、逆に光学式変位計のヘッド部を所定ピッチで移動させてもよい。
【0051】
次のステップ#12において、受光量データに対するしきい値Lthを設定する。この設定手段としては、ユーザが手動で設定しても良いし、変位計が受光量データに基づいて自動で設定しても良い。また変位計が自動で設定した場合でも、その後にユーザにより調整されても良い。さらにガラス基板状での受光量を記憶し、その記憶された受光量を基準として一定の割合に対してしきい値を引くようなしきい値自動化を行っても良い。また実際の受光量データを表示部で観察しながらしきい値を設定できるような機能にしても良い。これらの処理は、しきい値設定手段43にて実行される。
【0052】
次のステップ#13において、設定されたしきい値Lthと受光量データL[i]と比較し、図4のようにしきい値Lthにより弁別される点が36c、36dのように2箇所以上存在するかの有無を判定する。このしきい値による判定は、受光量データL[i]を用いて算出されたものとの比較で行えばよいので、L[i]の微分値との比較でも良い。この場合も、しきい値Lthとの交点が2箇所以上存在するかを判定する。この処理は、判定部44によって行われる。
【0053】
ステップ#13において、判定結果が「有」であった場合には、ステップ#14に進み、幅方向位置X[i]及び受光量データL[i]からシール剤による盛り上がり部分の幅Wが算出される。続くステップ#15において、変位データY[i]からシール剤による盛り上がり部分の最大値に対応する高さHを算出する。この算出処理の詳細については後述する。実際には、後述するように#13と#14は同じステップで行われた方が効率が良い。
【0054】
次のステップ#16において、算出されたH及び幅Wから断面積(シール剤31の塗布断面積)を算出する処理を行う。上記ステップ#14、#15、#16は第1の断面積算出部45が実行する。
【0055】
この算出方法は、高さHと幅Wとの積に所定の係数Kを乗じ、さらにオフセット(ゼロを含む)Cを加えることによって断面積Sを求める。すなわち、S=H×W×K+Cなる演算によって断面積Sを求める。仮にオフセットC=0とした場合、係数K=1は断面形状が長方形であることを意味し、係数K=0.5は断面形状が長方形であることを意味する。したがって、実際の塗布断面形状の場合は、0.5<K<1となる。ここでオフセットとは、実際の塗布断面形状が図7aのように、放物線状の形状と長方形の形状49cとが重なったような形なった場合など、断面形状が放物線状から離れた形状になった場合にその断面積部分を補ったり、逆に取り除いたりする際に必要となる。
【0056】
これらの係数K及びオフセットCは、係数・オフセット設定部48によって設定される。係数・オフセット設定部48は、2組の高さH、幅W、及び断面積Sの真値から係数K及びオフセットCを求める。すなわち、2組の式S1=H1×W1×K+C、及び、S2=H2×W2×K+CからK=(S1−S2)/(H1×W1−H2×W2)が求まり、更に、C=S1−H1×W1×Kが求まる。
【0057】
この際、断面積Sの真値については別の手段で測定して係数・オフセット設定部48に入力する必要がある。液晶パネルのシール剤の場合は、2枚のガラス基板の間に塗布されたシール剤がスペーサによって規定された厚みまで押し潰されたときに、そのシール剤の幅と2枚のガラス基板の間隔との積として断面積を簡易的に求めることができるので、これを断面積の真値として入力すればよい。但し、この方法に限らず、別の測定器を用いて測定した断面積の真値を入力してもよい。あるいは、係数K及びオフセットCの値を直接入力して設定するようにしてもよい。
【0058】
図7のフローチャートに戻り、ステップ#13において、判定結果が「無」であった場合には、ステップ#17に進む。この場合には、図8のようにガラス基板に塗布されたシール材の断面形状は表面部49aのように放物線形状から頂点がつぶれた形であることが多い。この表面部49aと基板表面に対応する直線49bとで囲まれた部分の断面積Sを求める。まず幅方向位置X[i]から単位幅ΔWを求め、それぞれに対応する変位データY[i]から分割された各長方形50の面積(ΔW×変位Y[i])を求める。そして、それらを加算する演算(積分演算)することによって断面積Sを求める。この処理は、第2の断面積算出部46が実行する。
【0059】
最後のステップ#18において、表示部47による表示又は外部出力が実行される。図9に表示部48による表示例を模式的に示す。上記のようにして求められた盛り上がり部分の断面積(シール剤の塗布断面積)が画面左上の表示枠51に表示され、その高さと幅も表示枠52、53に表示される。幅が求められなかった場合には、幅の表示はされない。また現在使用されている計算方法も表示枠55に表示される。A−Modeとは、判定部による判定結果が有のときに選択されるモードであり、前述した第1断面積算出部45により塗布断面形状の幅と高さからその断面積を求める計測方法のことである。第2断面積算出部46により断面積が算出された場合には、B−Modeと表示される。
【0060】
またさらに受光量データに対するしきい値が表示枠54aに表示され、そのラインもしきい値ライン54bとして表示される。さらに測定の対象となった断面の変位データ(高さ)のグラフが画面中央部の表示枠55に表示される。この表示枠55には、受光量(光量)のグラフも表示されている。なお、この図では高さ及び光量のグラフを簡素化して描いているが、実際には前述の図3又は図4、図5に示したようなグラフになる。外部出力は、断面積と高さ及び光量のグラフの表示内容をアナログ信号として出力することができる。あるいは、シリアルインターフェイス等を介して接続されたパーソナルコンピュータにディジタル信号として出力することができる。
【0061】
次に、判定部が実行する判定処理と第1の断面積算出部が実行する幅および高さを求める処理について図10から図13を参照しながら説明を加える。図10及び図11は、光学式変位計において、判定部が実行する判定処理と断面積の算出に使用される幅を求める処理のフローチャートである。本実施例では、判定部が用いるしきい値をさらに幅を求める処理でも用いているので、判定部が実行する判定処理は、幅を求める処理と同時に行う方が、効率が良いと考えられる。そこで本実施例では、判定処理と幅算出処理を同時に行っているが、判定部が用いるしきい値と幅を求めるしきい値が異なる場合や幅算出処理においてしきい値を用いない場合、判定処理や幅算出処理において複数の異なるしきい値を用いる場合などは、それそれの処理を個々に行っても良い。図12は、受光量データからしきい値により弁別される点を求め、盛り上がり部分の幅を求める処理の原理を示す図である。図13は、断面積の算出に使用される高さを求める処理のフローチャートである。
【0062】
図10のフローチャートにおいて、ステップ#111からステップ#118までは、受光量データとしきい値との交点の左端および盛り上がり部分の左端を検出する処理である。本実施例においては、しきい値との交点の左端と盛り上がり部分の左端とは同位置のものとして扱うこととする。ステップ#111での交点カウントCountおよび変数iを最小値0に初期化すると共に、しきい値Lthを設定する。本実施例では、盛り上がり部分より左側の基板面における受光量L[0]からしきい値の差分ΔLthを減じた値を受光量のしきい値Lthとする。次のステップ#112で変数iをインクリメントし、ステップ#113で変数iが最大値Nに至っていないかの判定を行う。最大値Nとは、受光量データの右端での変数iの値である。ここで最大値Nに至っていた場合には、しきい値との交点が無い、つまり受光量のしきい値Lthを下回る点が無かったとして終了する。至ってない場合には、ステップ#114で幅方向にΔXだけ移動した後、ステップ#115で受光量データL[i]を取得する。
【0063】
次のステップ#116でL[i]としきい値Lthとを比較し、L[i]がLth以上であればステップ#117に戻る。L[i]がLthより小さくなるまでステップ#112からステップ#116の処理が繰り返され、L[i]がLthより小さくなった時点で、交点カウントCountがインクリメントされ、そのときの幅方向位置X[i]が左端位置Xleftに代入される(ステップ#117)。
【0064】
ステップ#118からステップ#124までは、受光量データとしきい値との交点の右端および盛り上がり部分の右端を検出する処理である。前述したとおり本実施例においては、しきい値との交点の左端と盛り上がり部分の左端とは同位置のものとして扱うこととする。ステップ#118で変数iを最大値Nに初期化すると共に、しきい値Lthを設定する。本実施例では、盛り上がり部分より右側の基板面における受光量L[N]からしきい値の差分ΔLthを減じた値をしきい値Lthとする。次のステップ#119で変数iをデクリメントし、ステップ#120で幅方向に−ΔXだけ移動した後、ステップ#121で受光量データL[i]を取得する。
【0065】
次のステップ#122でL[i]としきい値Lthとを比較し、L[i]がLth以上であればステップ#119に戻る。L[i]がLthより小さくなるまでステップ#119からステップ#122の処理が繰り返され、L[i]がLthより小さくなった時点で、交点カウントCountがインクリメントされ、そのときの幅方向位置X[i]が右端位置Xrightに代入される(ステップ#123)。
【0066】
次のステップ#124において、交点カウントCountが少なくとも2以上であるかが判断される。本実施例では、基本的に2以外の数値になることは無いが、しきい値との交点がノイズ等の影響で3点以上あった場合は、前後の受光量データの変化を見ることによって対応しても良いし、受光データの微分値による判定を行っても良い。またそれらの組み合わせであっても良い。2以上であった場合には、ステップ#125に進み、第1断面積計算部を選択し、上記のようにして求めた右端位置Xrightと左端位置Xleftとの差を求め、これを幅Wとする。2未満であった場合には、第2断面積計算部を選択する。
【0067】
図13のフローチャートにおけるステップ#201からステップ#208までは高さHを求める処理である。ステップ#201での変数i及びYmaxの初期化処理に続いて、ステップ#202で幅方向のスキャン開始点における変位データY[0]を取得し、基板高さとして記憶する。なお、1点のみの変位データを基板高さとするのではなく、盛り上がり部分以外の複数点における変位データY[i](i=0,1,2,…)の平均値を求めて基板高さとしてもよい。
【0068】
ステップ#203で変数iをインクリメントし、ステップ#204で幅方向にΔXだけ移動した後、ステップ#205で変位データY[i]を取得する。次のステップ#206で変位データY[i]と変数Ymaxとを比較し、Y[i]がYmaxより大きい場合は、続くステップ#207でY[i]をYmaxに代入する。Y[i]がYmax以下である場合は、そのままステップ#208へ移行する。
【0069】
ステップ#208ではiがあらかじめ定めた最大値Nより小さいか(スキャン終了点に達していないか)否かをチェックし、小さければステップ#203に戻る。iがNに達するまで(スキャン終了点に達するまで)ステップ#203からステップ#208の処理が繰り返され、Nに達した時点では変数YmaxにはY[i]の最大値が記憶されていることになる。次のステップ#209で最大値Ymaxから基板高さY[0]を減ずることにより、高さHを得る。
【0070】
以上、本発明の実施例を適宜変形例に言及しながら説明したが、本発明の光学式変位計およびその計測方法、そのプログラム、そのプログラムを記憶した記憶媒体の第1の構成によれば、シール剤のような粘性液体の塗布断面積を光学式変位計で測定する際に、その盛り上がり部分の両端を検出するためのしきい値と受光量データを比較し、そのしきい値との交点が2箇所以上存在するかの有無によって、断面積の算出方法を自動選択することにより、その塗布断面の形状に適した算出方法で断面積を求めることができる。
【0071】
このようにしてユーザに対して余計な負担を強いることなく塗布断面積を提供することができる。このため光学変位計の操作に不慣れで経験の少ないユーザに対しても、常に測定対象物の塗布断面形状に適した算出方法を自動的に選択するので、正確な断面積計測結果を提供することができる。
【0072】
つまり本発明の光学式変位計を用いて基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する方法、そのプログラムおよびそのプログラムを記録したコンピュータが読み取り可能な記録媒体では、シール剤のような粘性液体の塗布断面積を光学式変位計で測定する際に、判定部により受光量としきい値との交点が2箇所以上存在する場合には、簡単な近似式により算出することによって高速な処理が可能となり、存在しない場合には、所定移動量と変位データから算出することによってより正確な断面積を算出することが可能となり、それらを自動で選択するのユーザに対する負担を軽減することができるという作用効果を発することが可能となる。
【0073】
さらにその測定対象物の表面の断面輪郭と断面積を表示することによって、測定対象物の断面形状と断面積の関係を認識しやすいという効果も発揮される。
【0074】
高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えて得られた値を断面積として算出するので、塗布断面積をさらに高速で正確に求めることができる。
【0075】
別の手段で測定した盛り上がり部分の断面積の真値と、それぞれに対応して求められた盛り上がり部分の高さ及び幅の計2組のデータから係数及びオフセットを算出し設定することができる。これにより前述した近似式の信頼性を高めることができる。
【0076】
本発明はこれらの実施例及び変形例を更に改変した形態で実施してもよい。また、上記実施例では音叉の振動によって対物レンズを光軸方向に振動させているが、圧電素子のような他の公知手段を用いて対物レンズを光軸方向に振動させてもよいことを付言しておく。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】従来の光学式変位計の構成を示すブロック図である。
【図2】光学式変位計による測定の一例を示す図である。
【図3】図2の測定結果の第1の例を示すグラフである。
【図4】図2の測定結果の第2の例を示すグラフである。
【図4a】レーザー光に対する反射光の方向を示す図である。
【図4b】断面積計算方法の1例を示す図である。
【図4c】断面形状を近似する概念を示す図である。
【図5】図2の測定結果の第3の例を示すグラフである。
【図6】本発明に係る光学式変位計の構成を示すブロック図である。
【図7】光学式変位計を用いて粘性液体の塗布断面積を測定する処理の概略を示すフローチャートである。
【図7a】オフセットの必要性を示す図である。
【図8】第2の断面積算出の方法を示す図である。
【図9】表示部による表示例を模式的に示す図である。
【図10】光学式変位計において判定部のおける判定処理と第1の断面積の算出に使用される幅を求める処理のフローチャートの前半部である。
【図11】光学式変位計において判定部のおける判定処理と第1の断面積の算出に使用される幅を求める処理のフローチャートの後半部である。
【図12】受光量データからしきい値との交点を求める処理と盛り上がり部分の幅を求める処理の原理をしめす図である。
【図13】光学式変位計において第1の断面積の算出に使用される高さを求める処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
15 対物レンズ
16 測定対象物
17a ピンホール
41 変位データ記憶部
42 受光量データ記憶部
43 しきい値算出部
44 判定部
45 第1断面積算出部
46 第2断面積算出部
47 表示部
48 係数・オフセット設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズで集束した光を測定対象物に投射し、前記測定対象物からの反射光を前記対物レンズ及びピンホールを通して受光し、前記対物レンズを光軸方向に振動させることによりその位置を検出し、受光量が最大となるときの前記対物レンズの位置情報から前記測定対象物の表面の変位を測定する光学式変位計であって、
前記対物レンズの光軸と前記測定対象物とを相対的に所定移動量ずつ移動させながら取得した測定対象物の表面の変位データを記憶する変位データ記憶部と、
前記変位データと対応させて取得した受光量データを記憶する受光量データ記憶部と、
前記変位データによって規定される盛り上がり部分の両端を検出するためのしきい値を設定するしきい値設定部と、
前記受光量データのうち前記しきい値により弁別される交点が前記移動方向に対して少なくとも2箇所存在するかの有無を判定する判定部と、
前記判定部の結果が有である場合には、前記変位データより前記盛り上がり部分の最大値に対応する高さを算出し、前記受光量データより盛り上がり部分の幅を算出し、該高さと幅から前記盛り上がり部分の断面積を算出する第1の断面積算出部と、
前記判定部の結果が無である場合には、前記所定移動量と前記変位データより前記盛り上がり部分の断面積を積分算出する第2の断面積算出部と、
前記変位データによって規定される盛り上がり部分の前記第1または第2の断面積算出部で算出された断面積を表示する表示部と
を備えていることを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
前記表示部は、さらに前記変位データによって規定される盛り上がり部分を含む測定対象物の表面の断面輪郭と、前記判定部の判定結果が有の場合には前記第1の断面積算出部で算出された断面積とを表示し、前記判定部の判定結果が無の場合には前記第2の断面積算出部で算出された断面積とを表示する表示部であることを特徴とする
請求項1記載の光学式変位計。
【請求項3】
前記第1の断面積算出部は、算出された前記盛り上がり部分の高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えて得られた値を前記断面積として算出し、前記断面積算出部に対して前記係数及び前記オフセットを設定する係数・オフセット設定部を更に備えていることを特徴とする
請求項1または2記載の光学式変位計。
【請求項4】
前記係数・オフセット設定部は、前記第1の断面算出部で求められた盛り上がり部分の高さ及び幅と、別の手段で測定され入力された前記盛り上がり部分の断面積の真値とのセット2組から前記係数及び前記オフセットを算出し設定することを特徴とする
請求項3記載の光学式変位計。
【請求項5】
対物レンズで集束した光を測定対象物に投射し、前記測定対象物からの反射光を前記対物レンズ及びピンホールを通して受光し、前記対物レンズを光軸方向に振動させることによりその位置を検出し、受光量が最大となるときの前記対物レンズの位置情報から前記測定対象物の表面の変位を測定する光学式変位計を用いて、基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する方法であって、
(a)前記粘性液体の塗布方向に直角または斜めの方向に前記対物レンズの光軸を相対的に移動させながら前記粘性液体が塗布された盛り上がり部分の表面の変位データ及び受光量データを取得して記憶するステップと、
(b)前記変位データと対応させて受光量データを取得して記憶するステップと、
(c)前記変位データによって規定される盛り上がり部分の両端を検出するためのしきい値を設定するステップと、
(d)前記受光量データのうち前記しきい値により弁別される交点が前記移動方向に対して少なくとも2箇所存在するかの有無を判定するステップと、
(e)前記判定部の結果が有である場合には、前記変位データより前記盛り上がり部分の最大値に対応する高さを算出し、前記受光量データより盛り上がり部分の幅を算出し、該高さと幅から前記盛り上がり部分の断面積を算出するステップと、
(f)前記判定部の結果が無である場合には、前記所定移動量と前記変位データより前記盛り上がり部分の断面積を積分算出するステップと、
(g)前記変位データによって規定される盛り上がり部分の前記第1または第2の断面積算出部で算出された断面積を表示するステップと
を実行することを特徴とする粘性液体の塗布断面積の測定方法。
【請求項6】
前記ステップ(g)において、さらに前記変位データによって規定される盛り上がり部分を含む測定対象物の表面の断面輪郭と、前記判定部の判定結果が有の場合には前記ステップ(e)で算出された断面積とを表示し、前記判定部の判定結果が無の場合には前記ステップ(f)で算出された断面積とを表示するステップを実行することを特徴とする
請求項5に記載の粘性液体の塗布断面積の測定方法。
【請求項7】
前記ステップ(e)において、前記盛り上がり部分の高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えて得られた値を前記断面積として算出することを特徴とする
請求項5または6に記載の粘性液体の塗布断面積の測定方法。
【請求項8】
前記ステップ(e)において求められた盛り上がり部分の高さ及び幅と、別の手段で測定され入力された前記盛り上がり部分の断面積の真値とのセット2組から前記係数及び前記オフセットを算出し設定するステップを前記ステップ(e)の断面積を算出する前に実行することを特徴とする
請求項7記載の粘性液体の塗布断面積の測定方法。
【請求項9】
対物レンズで集束した光を測定対象物に投射し、前記測定対象物からの反射光を前記対物レンズ及びピンホールを通して受光し、前記対物レンズを光軸方向に振動させることによりその位置を検出し、受光量が最大となるときの前記対物レンズの位置情報から前記測定対象物の表面の変位を測定する光学式変位計を用いて、基板上に塗布された粘性液体の塗布断面積を測定する測定プログラムであって、コンピュータに、
前記粘性液体の塗布方向に直角または斜めの方向に前記対物レンズの光軸を相対的に移動させながら前記粘性液体が塗布された盛り上がり部分の表面の変位データ及び受光量データを取得して記憶する機能と、
前記変位データと対応させて受光量データを取得する記憶する機能と、
前記変位データによって規定される盛り上がり部分の両端を検出するためのしきい値を設定する機能と、
前記受光量データのうち前記しきい値により弁別される交点が前記移動方向に対して2箇所存在するかの有無を判定する機能と、
前記判定部の結果が有である場合には、前記変位データより前記盛り上がり部分の最大値に対応する高さを算出し、前記受光量データより盛り上がり部分の幅を算出し、該高さと幅から前記盛り上がり部分の断面積を算出する第1の断面積算出機能と、
前記判定部の結果が無である場合には、前記所定移動量と前記変位データより前記盛り上がり部分の断面積を算出する第2の断面積算出機能と、
前記変位データによって規定される盛り上がり部分の前記第1または第2の断面積算出部で算出された断面積を表示する表示機能と
を実行することを特徴とする光学式変位計の測定プログラム。
【請求項10】
光学式変位計の測定プログラムはさらに、コンピュータに、
前記表示機能において、前記変位データによって規定される盛り上がり部分を含む測定対象物の表面の断面輪郭と、前記判定部の判定結果が有の場合には前記第1の断面積算出機能で算出された断面積とを表示し、前記判定部の判定結果が無の場合には前記第2の断面積算出機能で算出された断面積とを表示することを特徴とする
請求項9記載の光学式変位計の測定プログラム。
【請求項11】
光学式変位計の測定プログラムはさらに、コンピュータに
前記第1の算出機能において、前記盛り上がり部分の高さと幅と所定の係数とを乗じて得られた積に所定のオフセットを加えて得られた値を前記断面積として算出することを特徴とする
請求項9または10記載の光学式変位計の測定プログラム。
【請求項12】
光学式変位計の測定プログラムはさらに、コンピュータに
前記第1の算出機能において求められた盛り上がり部分の高さ及び幅と、別の手段で測定され入力された前記盛り上がり部分の断面積の真値とのセット2組から前記係数及び前記オフセットを算出し設定する機能を前記第1の算出機能の前に実行することを特徴とする
請求項11記載の粘性液体の塗布断面積の測定方法。
【請求項13】
請求項9から12のいずれかに記載した光学式変位計の測定プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7a】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−105702(P2006−105702A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290832(P2004−290832)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】