光学式変位計
【課題】対象物の変位を正確に検出することが可能な光学式変位計を提供する。
【解決手段】投光部1は、偏光方向が互いに異なる第1および第2の光を選択的にワークWに照射する。ワークWからの反射光が、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。波形生成部は、受光素子21による第1および第2の光の受光量分布を示す第1および第2波形データを生成する。波形処理部7は、第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの比を算出し、算出された比に基づいて、第1および第2の波形データの各々から1つのピークを選択し、そのピークの位置を検出する。
【解決手段】投光部1は、偏光方向が互いに異なる第1および第2の光を選択的にワークWに照射する。ワークWからの反射光が、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。波形生成部は、受光素子21による第1および第2の光の受光量分布を示す第1および第2波形データを生成する。波形処理部7は、第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの比を算出し、算出された比に基づいて、第1および第2の波形データの各々から1つのピークを選択し、そのピークの位置を検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三角測距方式により対象物の変位を検出する光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
三角測距方式の光学式変位計では、対象物(以下、ワークと呼ぶ)の表面に光が照射され、その反射光が1次元または2次元に配列された画素を有する受光素子により受光される。受光素子により得られる受光量分布のピーク位置に基づいて、ワークの表面の高さを計測することができる。これにより、ワークの変位を検出することができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
光切断方式の光学式変位計では、線状の断面を有する帯状の光がワーク上に照射され、その反射光が2次元の受光素子により受光される。受光素子により得られる受光量分布は、増幅器により増幅された後、デジタルの波形データに変換される。この波形データのピーク位置に基づいて、ワークの断面形状が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−96117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の光学式変位計においては、ワークに照射された光がワークの表面で複数回反射されることがある。複数回反射された光が受光素子に入射することにより、波形データに複数のピークが現れる。それにより、ワークの正確な断面形状を取得することができない。
【0006】
本発明の目的は、対象物の変位を正確に検出することが可能な光学式変位計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明による光学式変位計は、対象物からの反射光のピーク位置を検出することにより三角測距方式で対象物の変位を検出する光学式変位計であって、対象物に光を照射する投光部と、第1の直線偏光成分を含む第1の光および第1の直線偏光成分と異なる第2の直線偏光成分を含む第2の光を互いに識別可能に受光する受光部と、受光部による第1の光の受光量分布を第1の受光量分布として取得するとともに、受光部による第2の光の受光量分布を第2の受光量分布として取得する受光量分布取得部と、受光量分布取得部により取得された第1および第2の受光量分布に基づいて、対象物の表面で複数回反射した光による偽のピーク位置と1回反射した光による真のピーク位置とを識別するための識別情報を算出し、算出された識別情報に基づいて真のピーク位置を特定するピーク位置検出部と、ピーク位置検出部により特定された真のピーク位置に対応する対象物の変位を算出する計測処理部とを備えるものである。
【0008】
この光学式変位計においては、投光部により対象物に光が照射され、その反射光が、第1の直線偏光成分からなる第1の光および第2の直線偏光成分からなる第2の光として互いに識別可能に受光部により受光される。受光量分布取得部により、受光部による第1の光の受光量分布が第1の受光量分布として取得され、受光部による第2の光の受光量分布が第2の受光量分布として取得される。
【0009】
対象物からの反射光の受光時には、対象物において1回反射された光が第1および第2の光として受光部により受光されるとともに、対象物において複数回反射された光が第1および第2の光として受光部により受光される場合がある。この場合、1回反射光による真のピークおよび複数回反射光による偽のピークが第1および第2の受光量分布に現れる。
【0010】
ここで、第1の直線偏光成分の反射率と第2の直線偏光成分の反射率とは異なる。それにより、対象物に照射された光の第1および第2の直線偏光成分の強度が互いに等しい場合、反射された光の第1および第2の直線偏光成分の強度は互いに異なる。そのため、受光される第1および第2の光の強度が互いに異なる。
【0011】
さらに、複数回反射光の第1および第2の直線偏光成分の強度は、対象物に照射された光の第1および第2の直線偏光成分の強度に反射率を複数回乗じた値になる。それにより、複数回反射光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比は、1回反射光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比と異なる。
【0012】
そこで、ピーク位置検出部により、第1および第2の受光量分布に基づいて複数回反射光による偽のピーク位置と1回反射光による真のピーク位置とを識別するための識別情報が算出される。算出された識別情報に基づいて真のピーク位置を特定することができる。特定された真のピーク位置に対応する対象物の変位が計測処理部により算出される。これにより、偽のピーク位置に対応する値が対象物の変位として誤って算出されることが防止され、真のピーク位置に対応する値が対象物の正確な変位として得られる。
【0013】
(2)ピーク位置検出部は、受光量分布取得部により取得された第1の受光量分布におけるピーク位置を第1のピーク位置として検出し、第2の受光量分布におけるピーク位置を第2のピーク位置として検出し、互いに対応する第1および第2のピーク位置の受光量の相対値を識別情報として算出してもよい。
【0014】
上記のように、複数回反射光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比は、1回反射された光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比と異なる。そのため、複数回反射光により第1の受光量分布に現れるピークの値と第2の受光量分布に現れるピークの値との比は、1回反射光により第1の受光量分布に現れるピークの値と第2の受光量分布に現れるピークの値との比と異なる。
【0015】
それにより、第1の受光量分布におけるピーク位置の受光量と第2の受光量分布におけるピーク位置の受光量との相対値に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を特定することができる。したがって、対象物の正確な変位が得られる。
【0016】
(3)ピーク位置検出部は、受光量分布取得部により取得された第1および第2の受光量分布の相対関係を識別情報として算出してもよい。
【0017】
この場合、第1および第2の受光量分布の相対関係に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を特定することができる。したがって、対象物の正確な変位が得られる。
【0018】
(4)投光部は、第1および第2の光を対象物に選択的に照射するように構成されてもよい。
【0019】
この場合、投光部から対象物に第1の光が照射されることにより、受光部により第1の光が受光され、投光部から対象物に第2の光が照射されることにより、受光部により第2の光が受光される。これにより、簡単な構成でかつ簡単な制御で第1および第2の光を選択的に受光部に受光させることができる。
【0020】
(5)投光部は、光を発生する第1および第2の投光素子と、第1の投光素子により発生される光を第1の光として対象物に導く第1の光学系と、第2の投光素子により発生される光を第2の光として対象物に導く第2の光学系とを含んでもよい。
【0021】
この場合、第1および第2の投光素子により選択的に光を発生させることにより、簡単な構成でかつ簡単な制御で投光部から対象物に第1および第2の光を選択的に照射することができる。
【0022】
(6)投光部は、光を発生する共通の投光素子と、共通の投光素子により発生される光の偏光成分を制御することにより第1および第2の光を対象物に照射する偏光成分制御部とを含んでもよい。
【0023】
この場合、簡単な構成でかつ簡単な制御で投光部から対象物に第1および第2の光を選択的に照射することができる。
【0024】
(7)投光部は、第1および第2の直線偏光成分を含む共通の光を対象物に照射するように構成され、受光部は、受光素子と、対象物により反射された共通の光を第1および第2の光として選択的に受光素子に導く受光選択部をさらに備えてもよい。
【0025】
この場合、投光部の構成を簡略化しつつ第1および第2の光を選択的に受光部に受光させることができる。
【0026】
(8)識別情報は、第1の受光量分布に現れるピークの値と第2の受光量分布に現れるピークの値との比を含んでもよい。この場合、第1および第2の受光量分布に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を正確に特定することができる。
【0027】
(9)識別情報は、第1の受光量分布に現れるピークの値と第2の受光量分布に現れるピークの値との差を含んでもよい。この場合、第1および第2の受光量分布に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を正確に特定することができる。
【0028】
(10)識別情報は、第1および第2の受光量分布に現れるピークの値および予め定められた係数を用いた演算により得られる値を含んでもよい。この場合、第1および第2の受光量分布に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を正確に特定することができる。
【0029】
(11)第1の光の偏光方向と第2の光の偏光方向とは互いに90度異なってもよい。
【0030】
この場合、第1の光の反射率と第2の光の反射率との差を大きくすることができる。それにより、複数回反射された光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比と、1回反射された光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比との差を大きくすることができる。したがって、第1および第2の受光量分布に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を容易にかつ正確に選択することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、1回反射光による真のピーク位置を正確に選択することができる。その結果、対象物の変位を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施の形態に係る光学式変位計の構成を示すブロック図である。
【図2】投受光部およびワークの外観斜視図である。
【図3】ワークの表面における光の照射位置と受光素子における光の入射位置との関係を示す図である。
【図4】ワークの表面における光の照射位置と受光素子における光の入射位置との関係を示す図である。
【図5】受光素子の受光面における受光量分布を示す図である。
【図6】図5の受光量分布を示す波形データを示す図である。
【図7】プロファイルデータを示す図である。
【図8】ワークの表面での反射について説明するための図である。
【図9】受光素子における受光量分布の他の例を示す図である。
【図10】図9の受光量分布を示す波形データを示す図である。
【図11】投受光部の構成を示す模式的斜視図である。
【図12】投光部の構成を示す模式的斜視図である。
【図13】投光素子から出射される光の経路を示す図である。
【図14】第1および第2の光が照射された場合の波形データを示す図である。
【図15】波形処理部によるピーク位置検出処理のフローチャートである。
【図16】投光部の他の例を示す図である。
【図17】投光部のさらに他の例を示す図である。
【図18】投光部、受光素子および受光レンズの位置関係を示す図である。
【図19】真ピークおよび偽ピークの幅について説明するための図である。
【図20】波形処理部によるピーク位置検出処理の他の例のフローチャートである。
【図21】受光素子の受光量分布に基づいて真ピークが特定される場合のピーク位置検出処理のフローチャートである。
【図22】第2の実施の形態に係る光学式変位計の投光部および受光部の構成を示す図である。
【図23】投光部および受光部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態に係る光学式変位計として、光切断方式の光学式変位計について図面を参照しながら説明する。
【0034】
(1−1)光学式変位計の構成
図1は、第1の実施の形態に係る光学式変位計の構成を示すブロック図である。図1に示すように、光学式変位計100は、投受光部100aおよび制御部100bを備える。投受光部100aは、投光部1および受光部2を含む。制御部100bは、投光制御部3、受光制御部4、波形処理部7、プロファイル生成部8、計測処理部9およびインターフェース部10を含む。
【0035】
投光部1は、偏光方向が互いに異なる2種類の帯状の光を対象物(以下、ワークと呼ぶ)Wに照射可能に構成される。投光部1の詳細については後述する。受光部2は、受光素子21および受光レンズ22を含む。ワークWからの反射光が、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。受光素子21は例えばCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサを含み、2次元に配置された複数の画素を有する。受光素子2の受光量分布は、アナログの受光信号として出力される。投光制御部3は、投光部1の光の照射タイミングおよび光の強度等を制御し、受光制御部4は、受光素子2の受光タイミング等を制御する。
【0036】
波形処理部7は、増幅器およびアナログ/デジタル変換器を含む。受光素子21から出力される受光信号は、増幅器により増幅された後にアナログ/デジタル変換器によりアナログ/デジタル変換される。これにより、デジタルの波形データが得られる。波形処理部7は、得られた波形データからピーク位置を検出する。
【0037】
プロファイル生成部8は、波形処理部7により検出されたピーク位置に基づいて、ワークWの断面形状を表すプロファイルデータを生成する。計測処理部9は、プロファイル生成部8により作成されたプロファイルデータに対する補正処理および計測処理を行う。ここで、計測処理とは、プロファイルデータに基づいてワークWの表面の任意の部分の寸法(変位)を算出する処理である。
【0038】
インターフェース部10を通して、波形処理部7により得られる波形データが外部に取り出される。また、インターフェース部10を通して、ユーザが種々の設定および入力を行うことができる。
【0039】
(1−2)動作の概要
光学式変位計100の動作の概要について説明する。図2は、投受光部100aおよびワークWの外観斜視図である。図3および図4は、ワークWの表面における光の照射位置と受光素子21における光の入射位置との関係を示す図である。図2〜図4においては、水平面内で互いに直交する2方向をX方向およびY方向と定義し、矢印X,Yで示し、鉛直方向をZ方向と定義し、矢印Zで示す。また、図3および図4においては、受光素子21の受光面上で互いに直交する2方向をA1方向およびA2方向と定義し、矢印A1,A2で示す。ここで、受光面とは、受光素子21の複数の画素により形成される面である。
【0040】
図2の例では、ワークWの表面にY方向に延びる断面V字状の溝M1が形成される。投受光部100aは、X方向に沿った帯状の光をワークWの表面に照射する。以下、帯状の光が照射されるワークWの表面の線状の領域を照射領域T1と呼ぶ。
【0041】
図3に示すように、照射領域T1で反射される光が、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。この場合、照射領域T1における光の反射位置がZ方向に異なると、受光素子21への反射光の入射位置がA2方向に異なる。また、図4に示すように、照射領域T1における光の反射位置がX方向に異なると、受光素子21への反射光の入射位置がA1方向に異なる。
【0042】
これにより、受光素子21のA2方向における光の入射位置が、照射領域T1のZ方向における位置(高さ)を表し、受光素子21のA1方向における光の入射位置が、照射領域T1におけるX方向の位置を表す。
【0043】
図5は、受光素子21の受光面における受光量分布を示す図である。受光素子21の複数の画素は、A1方向およびA2方向に沿うように2次元に配置される。図2の照射領域T1で反射された光は、図5の線状の受光領域R1に入射する。それにより、受光領域R1の受光量が大きくなる。
【0044】
図5の受光量分布が、A2方向に沿った画素の列(以下、画素列と呼ぶ)ごとにアナログの受光信号として出力される。出力された受光信号に基づいて、波形処理部7により画素列ごとの波形データが生成される。図6は、図5の画素列SSの波形データを示す図である。図6において、横軸はA2方向を示し、縦軸は受光量を示す。
【0045】
図6に示すように、波形データには、図5の受光領域R1に対応するピークP1が現れる。ピークP1の位置(以下、ピーク位置と呼ぶ)PPは、照射領域T1における対応箇所の高さを示す。各波形データにおいて1つのピーク位置PPが波形処理部7により検出される。全ての波形データにおいて検出されたピーク位置PPに基づいて、ワークWの断面形状(照射領域T1の形状)を示すプロファイルデータがプロファイル生成部8により生成される。
【0046】
図7(a)は、図5の受光量分布における全てのピーク位置PPを示す図であり、図7(b)は、図7(a)のピーク位置PPに基づいて生成されたプロファイルデータを示す図である。図7(a)および図7(b)に示すように、検出された全てのピーク位置PPが、連続的な線として示されることにより、ワークWの断面形状を示すプロファイルデータが得られる。
【0047】
(1−3)偽ピーク
上記のように、照射領域T1で反射された光が受光素子21に入射することにより、照射領域T1の高さを表すピークが波形データに表れる。しかしながら、照射領域T1以外の部分で反射された光が受光素子21に入射することがある。この場合、照射領域T1の高さを示すピーク(以下、真ピークと呼ぶ)とは異なるピーク(以下、偽ピークと呼ぶ)が波形データに現れる。波形データの偽ピークが照射領域T1の高さを示すピークとして誤って選択されると、不正確なプロファイルデータが生成される。
【0048】
図8は、ワークWの表面での反射について説明するための図である。図9は、受光素子21における受光量分布の他の例を示す図である。図10は、図9の画素列SSの波形データを示す図である。
【0049】
図8(a)に示すように、ワークWに照射される光は、照射領域T1で正反射および拡散反射される。ここで、正反射とは、入射角と反射角とが等しい反射をいい、拡散反射とは、入射角と反射角とが異なる反射をいう。通常、照射領域T1で正反射された光は受光素子21に入射せず、照射領域T1で拡散反射された一部の光L1が受光素子21に入射する。
【0050】
一方、図8(b)に示すように、照射領域T1で拡散反射された他の一部の光L2が、ワークWの表面の照射領域T1以外の他の領域(以下、偽照射領域と呼ぶ)T2で正反射され、受光素子21に入射することがある。
【0051】
光が正反射された場合、反射前後で光の強度が大きく変化しない。そのため、照射領域T1から受光素子21に入射する光L1の強度と、偽照射領域T2から受光素子21に入射する光L2の強度との間に大きな差が生じない。なお、本実施の形態は一例であり、このような多重反射(複数回反射)は様々な状況下で起こりうる。例えば、正反射光がワークWからの反射光として受光素子21に受光されるようにワークWおよび投受光部100aが配置されている場合、正反射光以外の拡散反射光が他の領域でさらに反射され、受光素子21に受光されることもある。
【0052】
これにより、図9に示すように、受光素子21の受光面において、受光領域R1以外に、他の領域(以下、偽受光領域と呼ぶ)R2の受光量が大きくなる。この場合、図10に示すように、波形データにおいて、受光領域R1に対応する真ピークP1の他に、偽受光領域R2に対応する偽ピークP2が現れる。その結果、偽ピークP2が照射領域T1の高さを示すピークとして誤って選択される可能性がある。
【0053】
なお、偽照射領域T2で拡散反射された光は、正反射された光に比べて強度が大幅に小さくなる。そのため、偽照射領域T2で拡散反射された光が受光素子21に入射しても、図10のような偽ピークP2が現れることはほとんどない。
【0054】
(1−4)投光部および受光部の詳細
本実施の形態では、互いに異なる偏光方向の2種類の光を用いることにより、偽ピークP2が誤って検出されることを防止することができる。以下、その詳細について説明する。
【0055】
図11は、投受光部100aの構成を示す模式的斜視図である。図12は、投光部1の構成を示す模式的斜視図である。図11に示すように、投受光部100a内に投光部1および受光部2が設けられる。図11および図12に示すように、投光部1は、投光素子11a,11b、コリメータレンズ12a,12b、半波長板13、PBS(Polarization Beam Splitter;偏光ビームスプリッタ)14および拡張光学系(ビームエキスパンダ)15,16を含む。受光部2は、受光素子21および受光レンズ22を含む。
【0056】
投光素子11a,11bは例えばレーザダイオードをそれぞれ含む。投光素子11a,11bの各々から出射される光は直線偏光であり、電場の振動方向(以下、偏光方向と呼ぶ)が一定である。なお、投光素子11a,11bとしてLED(発光ダイオード)等を用いてもよい。その場合、投光素子11a,11bの前方(出射方向)に偏光板等が配置され、投光素子11a,11bからの出射光が直線偏光に変更される。
【0057】
投光素子11aから出射される光は、コリメータレンズ12a、偏光ビームスプリッタ14および拡張光学系15,16を通して投受光部100aの外部に導かれる。投光素子11bから出射される光は、コリメータレンズ12b、半波長板13、偏光ビームスプリッタ14および拡張光学系15,16を通して投受光部100aの外部に導かれる。
【0058】
図13は、投光素子11a,11bから出射される光の経路を示す図である。図13に示すように、投光素子11aから出射される光は、コリメータレンズ12aを通して平行光に整形され、PBS14の一面に垂直に入射する。PBS14に入射した光は、PBS14の反射面14aに対してS偏光である。そのため、その光はPBS14の反射面14aで直角に反射される。反射された光は、拡張光学系15,16を通して帯状の光に整形され、投受光部100aの外部に導かれる。
【0059】
投光素子11bから出射される光は、コリメータレンズ12bを通して平行光に整形され、半波長板13を通してPBS14の他の一面に垂直に入射する。この場合、半波長板13によって光の偏光方向が90°変化する。それにより、PBS14に入射した光は、PBS14の反射面14aに対してP偏光となり、PBS14の反射面14aを透過する。透過した光は、拡張光学系15,16を通して帯状の光に整形され、投受光部100aの外部に導かれる。
【0060】
このように、投光素子11aからの光および投光素子11bからの光は、偏光方向が互いに90°異なる直線偏光として、それぞれ投受光部100aから共通の方向に帯状に出射される。そのため、投光素子11aおよび投光素子11aから選択的に光を出射させることにより、偏光方向が90°異なる2種類の光(以下、第1および第2の光と呼ぶ)を選択的にワークWに照射することができる。
【0061】
本例では、投光素子11aから出射される光が第1の光としてワークWに照射され、投光素子11bから出射される光が第2の光としてワークWに照射される。第1の光と第2の光との切り替えは、図1の投光制御部3により行われる。
【0062】
(1−5)偏光方向と反射率との関係
図8に示したY方向に延びる溝M1を有するワークWを例に、偏光方向と反射率との関係について説明する。図8(a)に示すように、X方向に偏光する光をP偏光とし、Y方向に偏光する光をS偏光とした場合、ワークWの表面でのX方向における光の反射率は、ワークWに照射された光がP偏光であるかまたはS偏光であるかによって異なる。図8に例示したワークWにおいては、X方向成分を含む方向に反射された光が他の領域でさらに反射され、多重反射が発生する。このとき、X方向を多重反射方向と定義すると、X方向に偏光するP偏光の多重反射方向における反射率が、Y方向に偏光するS偏光の多重反射方向における反射率よりも小さくなる。特に、正反射される場合の反射率の差は、拡散反射される場合の反射率の差よりも大幅に大きい。
【0063】
また、多重反射された光の強度は、照射された光の強度に反射率を複数回乗じた値になる。そのため、多重反射されたS偏光の強度に対する同じ回数反射されたP偏光の強度の比は、1回反射されたS偏光の強度に対する1回反射されたP偏光の強度の比よりも小さくなる。
【0064】
一方、例えば図8に例示したワークWが、Z軸周りに90度回転された場合、Y方向が多重反射方向となる。この場合、Y方向に偏光するS偏光の多重反射方向における反射率が、X方向に偏光するP偏光の多重反射方向における反射率よりも小さくなる。
【0065】
すなわち、多重反射方向における反射率は、多重反射方向と水平面内において直交する方向に偏光する光よりも、多重反射方向と同じ方向に偏光する光に関して小さくなる。したがって、投受光部100aとワークWとの相対的配置によって多重反射方向が変化するため、互いに90度偏光成分が異なるP偏光およびS偏光の反射率の大小関係も変化する。
【0066】
本実施の形態では、ワークWに照射される第1の光がワークWの表面に対してP偏光(X方向に直線偏光した光)となり、ワークWに照射される第2の光がワークWの表面に対してS偏光(Y方向に直線偏光した光)となるように、投受光部100aおよびワークWが配置される。その状態で、投受光部100aからワークWに第1の光および第2の光が順次照射される。この場合、第1の光が照射されたときの受光素子21の受光量分布に基づく波形データおよび第2の光が照射されたときの受光素子21の受光量分布に基づく波形データが波形処理部7によりそれぞれ生成される。
【0067】
第1の光が照射された場合と第2の光が照射された場合とで、受光素子21の受光量分布が異なる。それにより、第1の光が照射された場合と第2の光が照射された場合とで異なる波形データが得られる。以下、第1の光が照射された場合の波形データを第1の波形データと呼び、第2の光が照射された場合の波形データを第2の波形データと呼ぶ。
【0068】
図14(a)は、第1の波形データを示す図であり、図14(b)は、第2の波形データを示す図である。図14(a)および図14(b)の波形データは、図5および図9の画素列SSの波形データである。
【0069】
図14(a)の第1の波形データには、図10の真ピークP1に相当する真ピークPp1および図10の偽ピークP2に相当する偽ピークPp2が現れる。図14(b)の第2の波形データには、図10の真ピークP1に相当する真ピークPs1および図10の偽ピークP2に相当する偽ピークPs2が現れる。図14(a)の真ピークPp1のピーク位置PP1と図14(b)の真ピークPs1のピーク位置PP1とは互いにほぼ等しく、図14(a)の偽ピークPp2のピーク位置PP2と図14(b)の偽ピークPs2のピーク位置PP2とは互いにほぼ等しい。つまり、ほぼ同じ高さの位置に、異なる偏光成分の光を照射した結果、真ピークの位置および偽ピークの位置がそれぞれ得られる。図14の例では、1つの偽ピークPP2が現れるが、2回以上の多重反射が発生した場合は、より多くの偽ピークPP2が現れることになる。以下、真ピークの位置を真のピーク位置と呼び、偽ピークの位置を偽のピーク位置と呼ぶ。
【0070】
図8(a)に示したように、照射領域T1で拡散反射された光L1が受光素子21に直接入射することにより、真ピークPp1,Ps1が現れる。一方、図8(b)に示したように、照射領域T1で拡散反射された光L2が偽照射領域T2で正反射されて受光素子21に入射することにより、偽ピークPp2,Ps2が現れる。
【0071】
上述したように、図8の例では、P偏光である第1の光の反射率は、S偏光である第2の光の反射率よりも小さい。それにより、第1の光が照射された場合に受光素子21に入射する光L1,L2の強度は、第2の光が照射された場合に受光素子21に入射する光L1,L2の強度よりも小さくなる。そのため、図14(a)の真ピークPp1の値Ppaは、図14(b)の真ピークPs1の値Psaよりも小さい。また、図14(a)の偽ピークPp2の値Ppbは、図14(b)の偽ピークPs2の値Psbよりも小さい。
【0072】
また、多重反射された第2の光(S偏光(反射率が高い光))の強度に対する同じ回数反射された第1の光(P偏光(反射率が低い光))の強度の比は、1回反射された第2の光の強度に対する1回反射された第1の光の強度の比よりも小さくなる。これは、反射率が低い場合には、反射を繰り返す毎に、反射率が高い場合よりも早いペースで光量が減少するためである。したがって、第2の光の強度に対する第1の光の強度の比は、多重反射を繰り返すほど小さくなる。
【0073】
さらに、上記のように、正反射されるP偏光の反射率とS偏光の反射率との差は、拡散反射されるP偏光の反射率とS偏光の反射率との差よりも大幅に大きい。そのため、第1の光が正反射される場合の反射率と第2の光が正反射される場合の反射率との差は、第1の光が拡散反射される場合の反射率と第2の光が拡散反射される場合の反射率との差よりも大きい。それにより、第1の光が照射された場合に偽照射領域T2(図8)で正反射された光L2の強度と第2の光が照射された場合に偽照射領域T2(図8)で正反射された光L2の強度との比は、第1の光が照射された場合に照射領域T1で拡散反射のみされた光L1の強度と第2の光が照射された場合に照射領域T1で拡散反射のみされた光L1の強度との比と大きく異なる。
【0074】
したがって、図14(b)の偽ピークPs2の値Psbに対する図14(a)の偽ピークPp2の値Ppbの比(Ppb/Psb)は、図14(b)の真ピークPs1の値Psaに対する図14(a)の真ピークPp1の値Ppaの比(Ppa/Psa)よりも小さくなる。
【0075】
このように、第2の波形データの偽ピークの値に対する第1の波形データの偽ピークの値の比は、第2の波形データの真ピークの値に対する第1の波形データの真ピークの値の比よりも小さくなる。
【0076】
なお、本例では、第2の光の受光量に対する第1の光の受光量の比を算出したが、第1の光の受光量に対する第2の光の受光量の比を算出してもよいことは云うまでもない。この場合は、多重反射を繰り返すほど、第1の光の受光量に対する第2の光の受光量の比が大きくなる。
【0077】
さらに、図8に示すワークWと投受光部100aとの位置関係では、第1の光(P偏光)が反射率の低い光となり、第2の光(S偏光)が反射率の高い光となるが、例えば投受光部100aに対して相対的にワークWをZ軸周りに90度回転させると、第1および第2の光の反射率の関係は逆転する。この場合、多重反射を繰り返すほど、第2の光の受光量に対する第1の光の受光量の比が大きくなる。
【0078】
すなわち、ワークWと投受光部100aとの相対的配置、および第1の光の強度と第2の光の強度との相対値の大小関係に基づいて、計測対象であるワークWの表面で1回のみ反射した光による真のピーク位置と、多重反射された光による偽のピーク位置とを識別することができる。
【0079】
なお、算出する相対値は比に限らず、第1の光の受光量と第2の光の受光量との相対的な値であればよく、差またはその他の値であってもよい。また、第1および第2の光のどちらを先にワークWに照射して受光量分布を取得するかは任意である。
【0080】
本実施の形態では、波形処理部7により、第2の波形データの各ピークの値に対する第1の波形データの対応するピークの値の比が算出され、算出された比に基づいて第1および第2の波形データから1つのピーク位置が検出される。
【0081】
(1−6)ピーク位置検出処理
図15は、波形処理部7によるピーク位置検出処理のフローチャートである。第1の光での撮像が完了すると、波形処理部7は、第1の光の受光量分布からなる複数の第1の波形データを生成する(ステップS1)。上述したように、第1の波形データは、図7のA2方向に沿った画素列毎にそれぞれ生成される。そのため、図7のA1方向に配列される複数の画素列分の複数の第1の波形データが順次生成される。
【0082】
なお、本例では、二次元の受光素子21を用いてワークWのプロファイル(断面形状)が取得されるため、複数の第1および第2の波形データが生成されるが、一次元の受光素子を用いてワークW上のある一点の高さを計測する光学式変位計においては、1つの第1の波形データおよび1つの第2の波形データが生成される。
【0083】
全ての第1の波形データが生成されると、波形処理部7は、生成された全ての第1の波形データにおける全てのピークの値を取得する(ステップS2)。図14(a)の例では、波形処理部7は、真ピークPp1の値Ppaおよび偽ピークPp2の値Ppbを取得する。
【0084】
次に、第2の光での撮像が完了すると、波形処理部7は、第2の光の受光量分布からなる複数の第2の波形データを生成する(ステップS3)。この場合、ステップS1と同様に、図7のA1方向に配列される複数の画素列分の複数の第2の波形データが順次生成される。
【0085】
全ての第2の波形データが生成されると、波形処理部7は、生成された全ての第2の波形データにおける全てのピークの値を取得する(ステップS4)。図14(b)の例では、波形処理部7は、真ピークPs1の値Psaおよび偽ピークPs2の値Psbを取得する。
【0086】
全ての第1および第2の波形データにおいてピークの値が取得されると、波形処理部7は、各画素列の第1の波形データと第2の波形データとの間で、互いに対応するピークの値の比を算出する(ステップS5)。図14の例では、波形処理部7は、真ピークPs1の値Psaに対する真ピークPp1の値Ppaの比(Ppa/Psa)および偽ピークPs2の値Psbに対する偽ピークPp2の値Ppbの比(Ppb/Psb)を算出する。
【0087】
次に、波形処理部7は、算出された比に基づいて、各画素列の第1および第2の波形データから真ピークを選択し、その真ピークの位置を検出する(ステップS6)。この場合、波形処理部7は、算出された比が最大となるピークを真ピークとして選択し、その真ピークの位置を検出する。図14の例では、波形処理部7は、真ピークPp1,Ps1のピーク位置PP1を検出する。これにより、波形処理部7はピーク位置検出処理を終了する。
【0088】
なお、上述したように、ワークWと投受光部100aとの相対的配置によっては、算出された比が最大となるピークではなく、算出された比が最小となるピークが真ピークに対応する場合もある。したがって、比が最大となるピークの位置を真のピーク位置として認識するか、または比が最小となるピークの位置を真のピーク位置として認識するかを適宜選択できるように構成されることが好ましい。これは、ユーザが選択してもよく、または取得された画像(例えば波形データ)等から多重反射方向が自動的に検出され、その検出結果に基づいて自動的に選択されてもよい。
【0089】
また、図15の例では、第1および第2の波形データの各々において全てのピークの位置が検出された後に、第1および第2の波形データの間でほぼ同じ位置にあるピークの値の比が相対値として算出され、その相対値に基づいて真のピーク位置が特定されるが、これに限らない。
【0090】
例えば、第1の波形データに示される全ての画素の受光量と第2の波形データに示される全ての画素の受光量との相対値(例えば比)がそれぞれ算出され、算出された全ての画素の受光量の相対値を示す新たな波形データが生成され、生成された新たな波形データに現れるピークの位置および値に基づいて、真のピーク位置が特定されてもよい。この場合、図15のステップS2,S4,S5の代わりに、新たな波形データを生成するステップおよび生成された新たな波形データに現れるピークの位置および値を取得するステップが必要になる。この場合も、図15の例と同様の効果が得られる。
【0091】
(1−7)効果
本実施の形態に係る光学式変位計100においては、照射部1からワークWに互いに偏光方向が異なる第1および第2の光が選択的に照射され、ワークWにおいて反射された第1および第2の光の受光量分布を示す第1および第2の波形データがそれぞれ生成される。生成された第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの比が算出され、算出された比に基づいて、第1および第2の波形データから1つのピークが選択される。
【0092】
これにより、第1および第2の波形データの各々における複数のピークのうち、ワークWにおいて1回反射された第1および第2の光による真ピークを正確に選択することができる。したがって、ワークWの照射領域T1の高さを示す真のピーク位置を正確に検出することができる。その結果、ワークWの断面形状を正確に検出することができる。
【0093】
また、本実施の形態では、投光素子11a,11bから選択的に光が出射されることによって第1および第2の光が選択的にワークWに照射されるように投光部1が構成される。それにより、簡単な構成でかつ簡単な制御で第1および第2の波形データを取得することができる。
【0094】
さらに、本実施の形態では、第1の光がワークWの照射領域T1に対してP偏光となり、第2の光がワークWの照射領域T2に対してS偏光となるように、投受光部100aおよびワークWが配置される。それにより、第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの比に基づいて、第1および第2の波形データの各々において、真ピークを容易にかつ正確に選択することができる。
【0095】
(1−8)投光部の他の例
(1−8−1)
図16は、投光部1の他の例を示す図である。図16の投光部1が図12の投光部1と異なるのは次の点である。図16の投光部1においては、投光素子11a、コリメータレンズ12aおよびPBS14の代わりに、波長板駆動部17が設けられる。波長板駆動部17としては、例えばロータリソレノイドまたはモータが用いられる。
【0096】
波長板駆動部17は、投光素子11bから出射される光が通る光路内の位置とその光路から外れる位置との間で半波長板13を移動させる。半波長板13が光路内に配置される場合、図13の例と同様に、投光素子11bから出射される光の偏光方向が半波長板13により変化する。それにより、その光が第2の光としてワークWに照射される。一方、半波長板13が光路から外れる位置に配置される場合、投光素子11bから出射される光の偏光方向が変化しない。それにより、その光が第1の光としてワークWに照射される。したがって、互いに偏光方向が異なる第1および第2の光を選択的にワークWに照射することができる。
【0097】
本例では、投光部1に1つの投光素子11bのみが設けられるので、複数の投光素子11a,11bが設けられる場合に比べて、光学系の構成がより簡略化される。
【0098】
(1−8−2)
図17は、投光部1のさらに他の例を示す図である。図17の例が図12の例と異なるのは次の点である。図16の投光部1においては、投光素子11a、コリメータレンズ12a、半波長板13およびPBS14の代わりに、偏光方向制御部18が設けられる。偏光方向制御部18としては、例えば液晶スイッチ、EOM(Electro Optic Modulator:電気光学変調器)またはファラデー回転子(Faraday Rotator)が用いられる。
【0099】
偏光方向制御部18は、投受光部100aから第1または第2の光が照射されるように、投光素子11bから出射される光の偏光方向を制御する。それにより、互いに偏光方向が異なる第1および第2の光を選択的にワークWに照射することができる。
【0100】
本例では、投光部1に1つの投光素子11bのみが設けられ、かつ図12の例と異なり、半波長板13の移動スペースを設ける必要がない。それにより、投光部1の占有スペースがさらに小さくなる。それにより、投受光部100aのさらなる小型化が可能となる。
【0101】
(1−9)他の検出例
(1−9−1)
上記のように、第1の光の反射率は第2の光の反射率よりも小さいので、多重反射された第2の光の強度に対する同じ回数反射された第1の光の強度の比は、1回反射された第2の光の強度に対する1回反射された第1の光の強度の比よりも小さい。そのため、照射される第1および第2の光の強度が等しい場合、第1波形データと第2の波形データとの間で互いに対応する真ピークの値の差の絶対値は、互いに対応する偽ピークの値の差の絶対値よりも小さい。
【0102】
そこで、図15のピーク位置検出処理のステップS7において、波形処理部7は、第1の波形データと第2の波形データとの間で互いに対応するピークの値の比を算出する代わりに、第1の波形データと第2の波形データとの間で互いに対応するピークの値の差を算出してもよい。この場合、ステップS8において、波形処理部7は、算出された差の絶対値が最小となるピークを真ピークとて選択し、その真ピークの位置を検出する。
【0103】
図14の例では、波形処理部7は、真ピークPs1の値Psaから真ピークPp1の値Ppaを減算した値(Psa−Ppa)および偽ピークPs2の値Psbから偽ピークPp2の値Ppbを減算した値(Psb−Ppb)を算出する。この場合、(Psa−Ppa)の絶対値が(Psb−Ppb)の絶対値よりも小さくなる。それにより、波形処理部7は、真ピークPp1,Ps1を選択し、ピーク位置PP1を検出する。
【0104】
(1−9−2)
図15のピーク位置検出処理のステップS7において、上記のように第1の波形データと第2の波形データとの間で互いに対応するピークの値の差が算出される場合に、予め定められた係数が各ピークの値に乗算され、乗算された値の差が算出されてもよい。
【0105】
この場合、ピークの値が大きいほど、係数の値が小さくなるように、ピークの値に応じて予め係数が定められる。例えば、ピークの値が0LSB(Least Significant Bit:最下位ビット)以上100LSB以下である場合には、係数が10に設定され、ピークの値が101LSB以上200LSB以下である場合には、係数が9に設定される。ピークの値が201LSB以上である場合も同様に、ピークの値が100LSB大きくなるごとに係数が1小さくなる。ピークの値が901LSB以上1000LSB以下である場合には、係数が1に設定される。
【0106】
図14の例では、波形処理部7は、真ピークPp1の値Ppaに応じて、乗算すべき係数kpaを決定し、真ピークPs1の値Psaに応じて、乗算すべき係数ksaを決定する。また、波形処理部7は、偽ピークPp2の値Ppbに応じて、乗算すべき係数kpbを決定し、偽ピークPs2の値Psbに応じて、乗算すべき係数ksbを決定する。
【0107】
続いて、波形処理部7は、真ピークPs1の値Psaに係数ksaが乗算された値と真ピークPp1の値Ppaに係数kpaが乗算された値との差(ksa・Psa−kpa・Ppa)を算出する。また、波形処理部7は、偽ピークPs2の値Psbに係数ksbが乗算された値と偽ピークPp2の値Ppbに係数kpbが乗算された値の差(ksb・Psb−kpb・Ppb)を算出する。
【0108】
この場合、(ksa・Psa−kpa・Ppa)の絶対値が(ksb・Psb−kpb・Ppb)の絶対値よりも小さくなる。それにより、波形処理部7は、真ピークPp1,Ps1を選択し、ピーク位置PP1を検出する。
【0109】
このように、ピークの値に応じて予め定められた係数が、各ピークの値に乗算されることにより、第1および第2の波形データにおける複数のピークの値が均等化される。それにより、第1および第2の波形データにおける複数のピークの値のばらつきが大きい場合でも、真ピークを正確に選択することができる。
【0110】
(1−9−3)
第1および第2の波形データの各々に現れるピークの数が多くなると、第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの値の比または差を算出する処理が煩雑になる。そこで、第1および第2の波形データに現れる各ピークの幅に基づいて、真ピークの可能性があるピークを特定し、特定されたピークに関してのみ比または差を算出してもよい。図18は、投光部1、受光素子21および受光レンズ22の位置関係を示す図である。図19は、真ピークおよび偽ピークの幅について説明するための図である。
【0111】
図18に示すように、受光素子21の受光面21a、受光レンズ22の主面22a、および投光部1から出射される光が通る平面PHが共通の直線PD上で互いに交差するように、受光素子21、受光レンズ22および投光部1がそれぞれ配置される。この場合、シャインプルーフの原理により、受光素子21の受光面21aに対してピント(焦点)が合う領域は、平面PH上の領域PRとなる。
【0112】
ワークW上の照射領域T1(図2)は、領域PR内に位置し、受光素子21の受光面21aに対してピントが合う。一方、偽照射領域T2は、領域PR内に位置せず、受光素子21の受光面21aに対してピントが合わない。これにより、偽ピークは真ピークよりも鈍った形状となり、偽ピークの幅が真ピークの幅よりも大きくなる。
【0113】
図19の例では、波形データの位置PP1,PP2,PP3に真ピークP1および偽ピークP2,P3が存在する。この場合、偽ピークP2,P3は真ピークP1よりも鈍った形状となり、偽ピークP2,P3の幅W2,W3は真ピークP1の幅W1よりも大きくなる。
【0114】
各ピークの幅は、次のようにして算出される。例えば、真ピークP1の値Paおよび偽ピークP2,P3の値Pb,Pcにそれぞれ一定の係数(例えば0.7)を乗じた値がしきい値THa,THb,THcとして設定される。ピーク位置PP1の一方側において受光量がしきい値THaとなる最もピーク位置PP1に近い位置PP1aとピーク位置PP1の他方側において受光量がしきい値THaとなる最もピーク位置PP1に近い位置PP1bとの間の距離が真ピークP1の幅W1として算出される。同様に、ピーク位置PP2の一方側において受光量がしきい値THbとなる最もピーク位置PP2に近い位置PP2aとピーク位置PP2の他方側において受光量がしきい値THbとなる最もピーク位置PP2に近い位置PP2bとの間の距離が偽ピークP2の幅W2として算出される。また、ピーク位置PP3の一方側において受光量がしきい値THcとなる最もピーク位置PP3に近い位置PP3aとピーク位置PP3の他方側において受光量がしきい値THcとなる最もピーク位置PP3に近い位置PP2cとの間の距離が偽ピークP3の幅W3として算出される。
【0115】
図20は、波形処理部7によるピーク位置検出処理の他の例のフローチャートである。図20の例が図15の例と異なるのは次の点である。
【0116】
図20の例では、波形処理部7は、第1の波形データにおける全てのピークの値を取得すると(図20のステップS2)、取得された全てのピークの値に基づいて、上記のように全てのピークの幅を算出する(ステップS3a)。次に、波形処理部7は、算出された全てのピークの幅のうち、最小の幅を特定する(ステップS4a)。
【0117】
ここで、上述したように、第1の波形データは、図7のA2方向に沿った画素列毎にそれぞれ生成される。そのため、図7のA1方向に配列される複数の画素列分の複数の第1の波形データが順次生成される。
【0118】
次に、波形処理部7は、各第1の波形データについて、最小の幅との差が予め定められたしきい値以下の幅を有するピークを第1の検出対象ピークとして特定する(ステップS5a)。ステップS5aで特定された第1の検出対象ピークは、真ピークである可能性があり、ピーク位置の検出対象となる。全ての第1の波形データにおいて、第1の検出対象ピークが特定されると、波形処理部7は、複数の第2の波形データを生成する(ステップS6a)。
【0119】
全ての第2の波形データが生成されると、波形処理部7は、生成された各第2の波形データについて、対応する第1の波形データの第1の検出対象ピークと共通のピーク位置を有する第2の検出対象ピークの値を取得する(ステップS7a)。
【0120】
全ての第2の波形データにおいて第2の検出対象ピークの値が取得されると、波形処理部7は、各画素列の第1の波形データと第2の波形データとの間で、互いに対応する第1および第2の検出対象ピークの値の比を算出する(ステップS8a)。
【0121】
次に、波形処理部7は、算出された比に基づいて、各画素列の第1および第2の波形データから真ピークを選択し、その真ピークの位置を検出する(ステップS9a)。この場合、波形処理部7は、算出された比が最大となるピークを真ピークとして選択し、その真ピークの位置を検出する。これにより、波形処理部7はピーク位置処理を終了する。
【0122】
本例では、第1の波形データの各ピークの幅に基づいて、真ピークの可能性がある第1の検出対象ピークが予め特定され、特定された第1の検出対象ピークの値とそれに対応する第2の検出ピークの値との比のみが算出される。それにより、全てのピークについて比を算出する必要がないので、効率よく真のピーク位置を検出することができる。
【0123】
なお、図20のステップS9aにおいて、第1および第2の検出対象ピークの値の比を算出する代わりに、第1および第2の検出対象ピークの値の差を算出してもよい。または、予め定められた係数を第1および第2の検出対象ピークの値に乗算し、乗算された第1および第2の検出対象ピークの値の差を算出してもよい。
【0124】
(1−9−4)
上記の例では、波形データに基づいて真ピークが特定されるが、これに限らず、受光素子21の受光量分布に基づいて真ピークが特定されてもよい。
【0125】
図21は、受光素子21の受光量分布に基づいて真ピークが特定される場合のピーク位置検出処理のフローチャートである。図21の例が図15の例と異なるのは次の点である。
【0126】
本例では、第1の光がワークWに照射された場合の受光素子21の受光量分布が第1の画像データとして波形処理部21に与えられ、第2の光がワークWに照射された場合の受光素子21の受光量分布が第2の画像データとして波形処理部21に与えられる。
【0127】
図21に示すように、波形処理部7は、第1の画像データが得られたか否かを判定する(ステップS21)。第1の画像データが得られていない場合、波形処理部7は、第1の画像データが得られるまで待機する。第1の画像データが得られた場合、波形処理部7は、第1の画像データに基づいて、第1の光が照射された場合の受光素子21の各画素の受光量を取得する(ステップS22)。
【0128】
次に、波形処理部7は、第2の画像データが得られたか否かを判定する(ステップS23)。第2の受光量分布が得られていない場合、波形処理部7は、第2の画像データが得られるまで待機する。第2の画像データが得られた場合、波形処理部7は、第2の画像データに基づいて、第2の光が照射された場合の受光素子21の各画素の受光量を取得する(ステップS24)。
【0129】
次に、波形処理部7は、受光素子21の各画素について、第2の光が照射された場合の受光量に対する第1の光が照射された場合の受光量の比を算出する(ステップS25)。次に、波形処理部7は、第1および第2の画像データに基づいて、画素列ごとにピークに対応する画素を特定する(ステップS26)。
【0130】
次に、波形処理部7は、ステップS25で算出された比およびステップS26で特定された画素に基づいて、画素列ごとに真ピークに対応する画素を選択し、その真ピークの位置を検出する(ステップS27)。この場合、波形処理部7は、各画素列のピークに対応する画素について、第2の光が照射された場合の受光量に対する第1の光が照射された場合の受光量の比を比較する。比較の結果、波形処理部7は、各画素列において受光量の比が最大となる画素を真ピークに対応する画素として選択し、その画素の位置を真のピーク位置として検出する。これにより、波形処理部7はピーク位置検出処理を終了する。
【0131】
本例では、受光素子21の受光量分布を示す第1および第2の画像データに基づいて、真のピーク位置が検出される。換言すると、第1および第2の画像データの互いに対応する画素値(受光量)の相対値からなる新たな画像データが生成され、生成された新たな画像データの各画素列に対応する波形データにおいてピーク位置が検出される。検出されたピーク位置から真のピーク位置が選択され、検出される。このように、第1および第2の画像データ間、第1および第2の画像データから得られる波形データ間、および第1および第2の画像データの波形データから検出されたピーク位置間のいずれかにおいて相対値が算出され、この相対値に基づいて多重反射光による偽のピーク位置と、1回反射光による真のピーク位置とを明確に区別することが可能である。
【0132】
(1−9−5)
図8に示した例では、ワークWに照射される第1の光がワークWの表面に対してP偏光となり、ワークWに照射される第2の光がワークWの表面に対してS偏光となるように、投受光部100aおよびワークWが配置されているが、ワークWに照射される第1の光がワークWの表面に対してS偏光となり、ワークWに照射される第2の光がワークWの表面に対してP偏光となるように、投受光部100aおよびワークWが配置されている場合、多重反射方向への光の反射率の大小関係が逆転するため、相対値(第2の波形データのピークの値に対する第1の波形データのピークの値の比)が最小となるピーク位置を真のピーク位置として特定すべきである。あるいは、照射する第1の光と第2の光との偏光成分を逆転させることにより、相対値が最大となるピーク位置を真のピーク位置として認識することも可能である。
【0133】
例えば、図15のステップS7において、第2の波形データのピークの値に対する第1の波形データのピークの値が算出される代わりに、第1の波形データのピークの値に対する第2の波形データのピークの値が算出される。または、ステップS8において、算出された比が最大となるピークが真ピークとして選択される代わりに、算出された比が最小となるピークが真ピークとして選択される。
【0134】
多重反射光の除去を行うために、ワークWと投受光部100aとの相対的配置に制約が存在することはユーザにとって好ましくない。したがって、ワークWおよび投受光部100aの配置に応じて、相対値が最大となるピーク位置を真のピーク位置として特定するか、または最小となるピーク位置を真のピーク位置として特定するかを適宜選択できるようにすることが好ましい。あるいは、第1の光の偏光成分および第2の光の偏光成分をユーザがそれぞれ選択できるようにしてもよい。
【0135】
また、第1の光の偏光成分および第2の光の偏光成分は、水平面内において偏光方向が90度異なっていることが、多重反射光を除去するという観点で最も好ましい。ただし、多重反射光を除去することが可能な程度に多重反射方向における反射率が異なるのであれば、上記に限られないことは云うまでもない。
【0136】
(2)第2の実施の形態
(2−1)
本発明の第2の実施の形態にかかる光学式変位計100について、上記第1の実施の形態に係る光学式変位計100と異なる点を説明する。図22は、第2の実施の形態に係る光学式変位計100の投光部および受光部の構成を示す図である。
【0137】
図22に示すように、投光部1は、投光素子11、コリメータレンズ12および拡張光学系15,16を含む。投光素子11は、種々の偏光方向を有する無偏光を出射する。投光素子11から出射される光は、コリメータレンズ12を通して平行光に整形され、拡張光学系15,16を通して帯状の光に整形され、投受光部100aの外部に導かれる。
【0138】
受光部2は、受光素子21、受光レンズ22、偏光板23a,23bおよび偏光板切替部24を含む。偏光板23aは、例えばワークWの照射領域T1に対してP偏光となる第1の光のみを透過させる。偏光板23bは、例えばワークWの照射領域T1に対してS偏光となる第2の光のみを透過させる。偏光板切替部24は、ワークWからの反射光が通る光路内に偏光板23a,23bの一方を選択的に配置する。偏光板切替部24としては、例えばロータリソレノイドまたはモータが用いられる。
【0139】
偏光板切替部24によって偏光板23aが光路内に配置されることにより、ワークWからの反射光のうち第1の光のみが偏光板23aを透過する。透過した第1の光は、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。この場合、受光素子21により第1の光の受光量分布が得られ、得られた受光量分布に基づいて第1の波形データが生成される。
【0140】
一方、偏光板切替部24によって偏光板23bが光路内に配置されることにより、ワークWからの反射光のうち第2の光のみが偏光板23aを透過する。透過した第2の光は、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。この場合、受光素子21により第2の光の受光量分布が得られ、得られた受光量分布に基づいて第2の波形データが生成される。生成された第1および第2の波形データを用いて、上記第1の実施の形態と同様に、波形処理部7によりピーク位置検出処理が行われる。
【0141】
(2−2)効果
本実施の形態に係る光学式変位計100においては、照射部1からワークWに共通の光が照射され、ワークWからの反射光が第1および第2の光として受光素子21に選択的に導かれる。この場合も、上記第1の実施の形態と同様に、第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの相対値に基づいて、第1および第2の波形データの各々において、真ピークを正確に選択することができる。したがって、ワークWの照射領域T1の高さを示す真のピーク位置を正確に検出することができる。その結果、ワークWの断面形状を正確に検出することができる。
【0142】
(2−3)投光部および受光部の他の例
図23は、投光部1および受光部2の他の例を示す図である。図23の投光部1および受光部2が図22の投光部1および受光部2と異なるのは、次の点である。
【0143】
図23の例では、投光素子11から一定の偏光方向を有する直線偏光が出射される。直線偏光の偏光方向は、第1および第2の光の偏光方向と異なるように設定され、例えば、ワークWへの入射面に対して45°に設定される。
【0144】
受光部2は、偏光板23a,23bおよび偏光板切替部24の代わりに、偏光成分分離部25を含む。偏光成分分離部25は、ワークWからの反射光からP偏光成分およびS偏光成分を選択的に分離することができる。偏光成分分離部25としては、例えば液晶スイッチ、EOMまたはファラデー回転子が用いられる。偏光成分分離部25により分離されたP偏光成分の光が第1の光として受光素子21により受光され、S偏光成分の光が第2の光として受光素子21により受光される。これにより、第1および第2の光の受光量分布が得られる。
【0145】
(3)他の実施の形態
(3−1)
上記第1および第2の実施の形態では、第1の光の偏光方向と第2の光の偏光方向との角度が90°に調製されるが、これに限らない。第1の光の受光量分布と第2の光の受光量分布との間で互いに対応するピークの相対値に基づいて、真のピーク位置を選択することが可能であれば、第1の光の偏光方向と第2の光の偏光方向との角度が90°からずれていてもよい。また、第1および第2の光にP偏光成分およびS偏光成分以外の偏光成分が含まれてもよい。
【0146】
(3−2)
上記第1および第2の実施の形態では、第1の光の受光量分布におけるピークの値と第2の光の受光量分布におけるピークの値との相対値として、比、差、または予め定められた係数を用いて演算された値が用いられるが、これに限らない。真ピークを正確に選択することが可能であれば、第1の光の受光量分布におけるピークの値および第2の光の受光量分布におけるピークの値を用いた種々の演算により得られる値が相対値として用いられてもよい。
【0147】
(3−3)
本発明の実施の形態は、光切断方式によりワークWの断面形状を検出する光学式変位計100に限定されない。例えば、点状の光を対象物上に走査し、反射光の受光量分布に基づいて対象物の変位を2次元で検出する光走査式の光学式変位計、または線状の光を対象物に照射し、反射光に基づいてワークWの変位を一次元で検出する光学式変位計において、上記第1および第2の実施の形態と同様の構成を用いてもよい。この場合も、対象物において1回反射された光によるピークの位置を正確に検出することができる。それにより、対象物の変位を正確に検出することができる。
【0148】
(4)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0149】
上記実施の形態においては、投光部1が投光部の例であり、受光部2が受光部の例であり、第1の波形データまたは第1の画像データが第1の受光量分布の例であり、第2の波形データまたは第2の画像データが第2の受光量分布の例であり、波形処理部7が受光量分布取得部およびピーク位置検出部の例である。また、投光素子11aが第1の投光素子の例であり、投光素子11bが第2の投光素子の例であり、PBS14が第1の光学系の例であり、半波長板13およびPBS14が第2の光学系の例であり、投光素子11bが共通の投光素子の例であり、半波長板13および波長板駆動部17あるいは偏光方向制御部18が偏光成分制御部の例である。また、受光素子21が受光素子の例であり、偏光板23a,23bおよび偏光板切替部24あるいは偏光板切替部24が受光選択部の例である。
【0150】
請求項の各構成要素として、上記実施の形態に記載された構成要素の他、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、三角測距方式による対象物の変位の検出に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0152】
1 投光部
2 受光部
6 波形生成部
7 波形処理部
8 プロファイル生成部
11a,11b 投光素子
12a,12b コリメータレンズ
13 半波長板
14 PBS
15,16 拡張光学系
17 波長板駆動部
18 偏光方向制御部
22 受光レンズ
23a,23b 偏光板
24 偏光板切替部
100 光学式変位計
100a 投受光部
100b 制御部
W ワーク
【技術分野】
【0001】
本発明は、三角測距方式により対象物の変位を検出する光学式変位計に関する。
【背景技術】
【0002】
三角測距方式の光学式変位計では、対象物(以下、ワークと呼ぶ)の表面に光が照射され、その反射光が1次元または2次元に配列された画素を有する受光素子により受光される。受光素子により得られる受光量分布のピーク位置に基づいて、ワークの表面の高さを計測することができる。これにより、ワークの変位を検出することができる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
光切断方式の光学式変位計では、線状の断面を有する帯状の光がワーク上に照射され、その反射光が2次元の受光素子により受光される。受光素子により得られる受光量分布は、増幅器により増幅された後、デジタルの波形データに変換される。この波形データのピーク位置に基づいて、ワークの断面形状が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−96117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の光学式変位計においては、ワークに照射された光がワークの表面で複数回反射されることがある。複数回反射された光が受光素子に入射することにより、波形データに複数のピークが現れる。それにより、ワークの正確な断面形状を取得することができない。
【0006】
本発明の目的は、対象物の変位を正確に検出することが可能な光学式変位計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明による光学式変位計は、対象物からの反射光のピーク位置を検出することにより三角測距方式で対象物の変位を検出する光学式変位計であって、対象物に光を照射する投光部と、第1の直線偏光成分を含む第1の光および第1の直線偏光成分と異なる第2の直線偏光成分を含む第2の光を互いに識別可能に受光する受光部と、受光部による第1の光の受光量分布を第1の受光量分布として取得するとともに、受光部による第2の光の受光量分布を第2の受光量分布として取得する受光量分布取得部と、受光量分布取得部により取得された第1および第2の受光量分布に基づいて、対象物の表面で複数回反射した光による偽のピーク位置と1回反射した光による真のピーク位置とを識別するための識別情報を算出し、算出された識別情報に基づいて真のピーク位置を特定するピーク位置検出部と、ピーク位置検出部により特定された真のピーク位置に対応する対象物の変位を算出する計測処理部とを備えるものである。
【0008】
この光学式変位計においては、投光部により対象物に光が照射され、その反射光が、第1の直線偏光成分からなる第1の光および第2の直線偏光成分からなる第2の光として互いに識別可能に受光部により受光される。受光量分布取得部により、受光部による第1の光の受光量分布が第1の受光量分布として取得され、受光部による第2の光の受光量分布が第2の受光量分布として取得される。
【0009】
対象物からの反射光の受光時には、対象物において1回反射された光が第1および第2の光として受光部により受光されるとともに、対象物において複数回反射された光が第1および第2の光として受光部により受光される場合がある。この場合、1回反射光による真のピークおよび複数回反射光による偽のピークが第1および第2の受光量分布に現れる。
【0010】
ここで、第1の直線偏光成分の反射率と第2の直線偏光成分の反射率とは異なる。それにより、対象物に照射された光の第1および第2の直線偏光成分の強度が互いに等しい場合、反射された光の第1および第2の直線偏光成分の強度は互いに異なる。そのため、受光される第1および第2の光の強度が互いに異なる。
【0011】
さらに、複数回反射光の第1および第2の直線偏光成分の強度は、対象物に照射された光の第1および第2の直線偏光成分の強度に反射率を複数回乗じた値になる。それにより、複数回反射光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比は、1回反射光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比と異なる。
【0012】
そこで、ピーク位置検出部により、第1および第2の受光量分布に基づいて複数回反射光による偽のピーク位置と1回反射光による真のピーク位置とを識別するための識別情報が算出される。算出された識別情報に基づいて真のピーク位置を特定することができる。特定された真のピーク位置に対応する対象物の変位が計測処理部により算出される。これにより、偽のピーク位置に対応する値が対象物の変位として誤って算出されることが防止され、真のピーク位置に対応する値が対象物の正確な変位として得られる。
【0013】
(2)ピーク位置検出部は、受光量分布取得部により取得された第1の受光量分布におけるピーク位置を第1のピーク位置として検出し、第2の受光量分布におけるピーク位置を第2のピーク位置として検出し、互いに対応する第1および第2のピーク位置の受光量の相対値を識別情報として算出してもよい。
【0014】
上記のように、複数回反射光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比は、1回反射された光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比と異なる。そのため、複数回反射光により第1の受光量分布に現れるピークの値と第2の受光量分布に現れるピークの値との比は、1回反射光により第1の受光量分布に現れるピークの値と第2の受光量分布に現れるピークの値との比と異なる。
【0015】
それにより、第1の受光量分布におけるピーク位置の受光量と第2の受光量分布におけるピーク位置の受光量との相対値に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を特定することができる。したがって、対象物の正確な変位が得られる。
【0016】
(3)ピーク位置検出部は、受光量分布取得部により取得された第1および第2の受光量分布の相対関係を識別情報として算出してもよい。
【0017】
この場合、第1および第2の受光量分布の相対関係に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を特定することができる。したがって、対象物の正確な変位が得られる。
【0018】
(4)投光部は、第1および第2の光を対象物に選択的に照射するように構成されてもよい。
【0019】
この場合、投光部から対象物に第1の光が照射されることにより、受光部により第1の光が受光され、投光部から対象物に第2の光が照射されることにより、受光部により第2の光が受光される。これにより、簡単な構成でかつ簡単な制御で第1および第2の光を選択的に受光部に受光させることができる。
【0020】
(5)投光部は、光を発生する第1および第2の投光素子と、第1の投光素子により発生される光を第1の光として対象物に導く第1の光学系と、第2の投光素子により発生される光を第2の光として対象物に導く第2の光学系とを含んでもよい。
【0021】
この場合、第1および第2の投光素子により選択的に光を発生させることにより、簡単な構成でかつ簡単な制御で投光部から対象物に第1および第2の光を選択的に照射することができる。
【0022】
(6)投光部は、光を発生する共通の投光素子と、共通の投光素子により発生される光の偏光成分を制御することにより第1および第2の光を対象物に照射する偏光成分制御部とを含んでもよい。
【0023】
この場合、簡単な構成でかつ簡単な制御で投光部から対象物に第1および第2の光を選択的に照射することができる。
【0024】
(7)投光部は、第1および第2の直線偏光成分を含む共通の光を対象物に照射するように構成され、受光部は、受光素子と、対象物により反射された共通の光を第1および第2の光として選択的に受光素子に導く受光選択部をさらに備えてもよい。
【0025】
この場合、投光部の構成を簡略化しつつ第1および第2の光を選択的に受光部に受光させることができる。
【0026】
(8)識別情報は、第1の受光量分布に現れるピークの値と第2の受光量分布に現れるピークの値との比を含んでもよい。この場合、第1および第2の受光量分布に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を正確に特定することができる。
【0027】
(9)識別情報は、第1の受光量分布に現れるピークの値と第2の受光量分布に現れるピークの値との差を含んでもよい。この場合、第1および第2の受光量分布に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を正確に特定することができる。
【0028】
(10)識別情報は、第1および第2の受光量分布に現れるピークの値および予め定められた係数を用いた演算により得られる値を含んでもよい。この場合、第1および第2の受光量分布に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を正確に特定することができる。
【0029】
(11)第1の光の偏光方向と第2の光の偏光方向とは互いに90度異なってもよい。
【0030】
この場合、第1の光の反射率と第2の光の反射率との差を大きくすることができる。それにより、複数回反射された光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比と、1回反射された光が第1および第2の光として受光される場合の第1および第2の光の強度の比との差を大きくすることができる。したがって、第1および第2の受光量分布に基づいて、1回反射光による真のピーク位置を容易にかつ正確に選択することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、1回反射光による真のピーク位置を正確に選択することができる。その結果、対象物の変位を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施の形態に係る光学式変位計の構成を示すブロック図である。
【図2】投受光部およびワークの外観斜視図である。
【図3】ワークの表面における光の照射位置と受光素子における光の入射位置との関係を示す図である。
【図4】ワークの表面における光の照射位置と受光素子における光の入射位置との関係を示す図である。
【図5】受光素子の受光面における受光量分布を示す図である。
【図6】図5の受光量分布を示す波形データを示す図である。
【図7】プロファイルデータを示す図である。
【図8】ワークの表面での反射について説明するための図である。
【図9】受光素子における受光量分布の他の例を示す図である。
【図10】図9の受光量分布を示す波形データを示す図である。
【図11】投受光部の構成を示す模式的斜視図である。
【図12】投光部の構成を示す模式的斜視図である。
【図13】投光素子から出射される光の経路を示す図である。
【図14】第1および第2の光が照射された場合の波形データを示す図である。
【図15】波形処理部によるピーク位置検出処理のフローチャートである。
【図16】投光部の他の例を示す図である。
【図17】投光部のさらに他の例を示す図である。
【図18】投光部、受光素子および受光レンズの位置関係を示す図である。
【図19】真ピークおよび偽ピークの幅について説明するための図である。
【図20】波形処理部によるピーク位置検出処理の他の例のフローチャートである。
【図21】受光素子の受光量分布に基づいて真ピークが特定される場合のピーク位置検出処理のフローチャートである。
【図22】第2の実施の形態に係る光学式変位計の投光部および受光部の構成を示す図である。
【図23】投光部および受光部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態に係る光学式変位計として、光切断方式の光学式変位計について図面を参照しながら説明する。
【0034】
(1−1)光学式変位計の構成
図1は、第1の実施の形態に係る光学式変位計の構成を示すブロック図である。図1に示すように、光学式変位計100は、投受光部100aおよび制御部100bを備える。投受光部100aは、投光部1および受光部2を含む。制御部100bは、投光制御部3、受光制御部4、波形処理部7、プロファイル生成部8、計測処理部9およびインターフェース部10を含む。
【0035】
投光部1は、偏光方向が互いに異なる2種類の帯状の光を対象物(以下、ワークと呼ぶ)Wに照射可能に構成される。投光部1の詳細については後述する。受光部2は、受光素子21および受光レンズ22を含む。ワークWからの反射光が、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。受光素子21は例えばCMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサを含み、2次元に配置された複数の画素を有する。受光素子2の受光量分布は、アナログの受光信号として出力される。投光制御部3は、投光部1の光の照射タイミングおよび光の強度等を制御し、受光制御部4は、受光素子2の受光タイミング等を制御する。
【0036】
波形処理部7は、増幅器およびアナログ/デジタル変換器を含む。受光素子21から出力される受光信号は、増幅器により増幅された後にアナログ/デジタル変換器によりアナログ/デジタル変換される。これにより、デジタルの波形データが得られる。波形処理部7は、得られた波形データからピーク位置を検出する。
【0037】
プロファイル生成部8は、波形処理部7により検出されたピーク位置に基づいて、ワークWの断面形状を表すプロファイルデータを生成する。計測処理部9は、プロファイル生成部8により作成されたプロファイルデータに対する補正処理および計測処理を行う。ここで、計測処理とは、プロファイルデータに基づいてワークWの表面の任意の部分の寸法(変位)を算出する処理である。
【0038】
インターフェース部10を通して、波形処理部7により得られる波形データが外部に取り出される。また、インターフェース部10を通して、ユーザが種々の設定および入力を行うことができる。
【0039】
(1−2)動作の概要
光学式変位計100の動作の概要について説明する。図2は、投受光部100aおよびワークWの外観斜視図である。図3および図4は、ワークWの表面における光の照射位置と受光素子21における光の入射位置との関係を示す図である。図2〜図4においては、水平面内で互いに直交する2方向をX方向およびY方向と定義し、矢印X,Yで示し、鉛直方向をZ方向と定義し、矢印Zで示す。また、図3および図4においては、受光素子21の受光面上で互いに直交する2方向をA1方向およびA2方向と定義し、矢印A1,A2で示す。ここで、受光面とは、受光素子21の複数の画素により形成される面である。
【0040】
図2の例では、ワークWの表面にY方向に延びる断面V字状の溝M1が形成される。投受光部100aは、X方向に沿った帯状の光をワークWの表面に照射する。以下、帯状の光が照射されるワークWの表面の線状の領域を照射領域T1と呼ぶ。
【0041】
図3に示すように、照射領域T1で反射される光が、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。この場合、照射領域T1における光の反射位置がZ方向に異なると、受光素子21への反射光の入射位置がA2方向に異なる。また、図4に示すように、照射領域T1における光の反射位置がX方向に異なると、受光素子21への反射光の入射位置がA1方向に異なる。
【0042】
これにより、受光素子21のA2方向における光の入射位置が、照射領域T1のZ方向における位置(高さ)を表し、受光素子21のA1方向における光の入射位置が、照射領域T1におけるX方向の位置を表す。
【0043】
図5は、受光素子21の受光面における受光量分布を示す図である。受光素子21の複数の画素は、A1方向およびA2方向に沿うように2次元に配置される。図2の照射領域T1で反射された光は、図5の線状の受光領域R1に入射する。それにより、受光領域R1の受光量が大きくなる。
【0044】
図5の受光量分布が、A2方向に沿った画素の列(以下、画素列と呼ぶ)ごとにアナログの受光信号として出力される。出力された受光信号に基づいて、波形処理部7により画素列ごとの波形データが生成される。図6は、図5の画素列SSの波形データを示す図である。図6において、横軸はA2方向を示し、縦軸は受光量を示す。
【0045】
図6に示すように、波形データには、図5の受光領域R1に対応するピークP1が現れる。ピークP1の位置(以下、ピーク位置と呼ぶ)PPは、照射領域T1における対応箇所の高さを示す。各波形データにおいて1つのピーク位置PPが波形処理部7により検出される。全ての波形データにおいて検出されたピーク位置PPに基づいて、ワークWの断面形状(照射領域T1の形状)を示すプロファイルデータがプロファイル生成部8により生成される。
【0046】
図7(a)は、図5の受光量分布における全てのピーク位置PPを示す図であり、図7(b)は、図7(a)のピーク位置PPに基づいて生成されたプロファイルデータを示す図である。図7(a)および図7(b)に示すように、検出された全てのピーク位置PPが、連続的な線として示されることにより、ワークWの断面形状を示すプロファイルデータが得られる。
【0047】
(1−3)偽ピーク
上記のように、照射領域T1で反射された光が受光素子21に入射することにより、照射領域T1の高さを表すピークが波形データに表れる。しかしながら、照射領域T1以外の部分で反射された光が受光素子21に入射することがある。この場合、照射領域T1の高さを示すピーク(以下、真ピークと呼ぶ)とは異なるピーク(以下、偽ピークと呼ぶ)が波形データに現れる。波形データの偽ピークが照射領域T1の高さを示すピークとして誤って選択されると、不正確なプロファイルデータが生成される。
【0048】
図8は、ワークWの表面での反射について説明するための図である。図9は、受光素子21における受光量分布の他の例を示す図である。図10は、図9の画素列SSの波形データを示す図である。
【0049】
図8(a)に示すように、ワークWに照射される光は、照射領域T1で正反射および拡散反射される。ここで、正反射とは、入射角と反射角とが等しい反射をいい、拡散反射とは、入射角と反射角とが異なる反射をいう。通常、照射領域T1で正反射された光は受光素子21に入射せず、照射領域T1で拡散反射された一部の光L1が受光素子21に入射する。
【0050】
一方、図8(b)に示すように、照射領域T1で拡散反射された他の一部の光L2が、ワークWの表面の照射領域T1以外の他の領域(以下、偽照射領域と呼ぶ)T2で正反射され、受光素子21に入射することがある。
【0051】
光が正反射された場合、反射前後で光の強度が大きく変化しない。そのため、照射領域T1から受光素子21に入射する光L1の強度と、偽照射領域T2から受光素子21に入射する光L2の強度との間に大きな差が生じない。なお、本実施の形態は一例であり、このような多重反射(複数回反射)は様々な状況下で起こりうる。例えば、正反射光がワークWからの反射光として受光素子21に受光されるようにワークWおよび投受光部100aが配置されている場合、正反射光以外の拡散反射光が他の領域でさらに反射され、受光素子21に受光されることもある。
【0052】
これにより、図9に示すように、受光素子21の受光面において、受光領域R1以外に、他の領域(以下、偽受光領域と呼ぶ)R2の受光量が大きくなる。この場合、図10に示すように、波形データにおいて、受光領域R1に対応する真ピークP1の他に、偽受光領域R2に対応する偽ピークP2が現れる。その結果、偽ピークP2が照射領域T1の高さを示すピークとして誤って選択される可能性がある。
【0053】
なお、偽照射領域T2で拡散反射された光は、正反射された光に比べて強度が大幅に小さくなる。そのため、偽照射領域T2で拡散反射された光が受光素子21に入射しても、図10のような偽ピークP2が現れることはほとんどない。
【0054】
(1−4)投光部および受光部の詳細
本実施の形態では、互いに異なる偏光方向の2種類の光を用いることにより、偽ピークP2が誤って検出されることを防止することができる。以下、その詳細について説明する。
【0055】
図11は、投受光部100aの構成を示す模式的斜視図である。図12は、投光部1の構成を示す模式的斜視図である。図11に示すように、投受光部100a内に投光部1および受光部2が設けられる。図11および図12に示すように、投光部1は、投光素子11a,11b、コリメータレンズ12a,12b、半波長板13、PBS(Polarization Beam Splitter;偏光ビームスプリッタ)14および拡張光学系(ビームエキスパンダ)15,16を含む。受光部2は、受光素子21および受光レンズ22を含む。
【0056】
投光素子11a,11bは例えばレーザダイオードをそれぞれ含む。投光素子11a,11bの各々から出射される光は直線偏光であり、電場の振動方向(以下、偏光方向と呼ぶ)が一定である。なお、投光素子11a,11bとしてLED(発光ダイオード)等を用いてもよい。その場合、投光素子11a,11bの前方(出射方向)に偏光板等が配置され、投光素子11a,11bからの出射光が直線偏光に変更される。
【0057】
投光素子11aから出射される光は、コリメータレンズ12a、偏光ビームスプリッタ14および拡張光学系15,16を通して投受光部100aの外部に導かれる。投光素子11bから出射される光は、コリメータレンズ12b、半波長板13、偏光ビームスプリッタ14および拡張光学系15,16を通して投受光部100aの外部に導かれる。
【0058】
図13は、投光素子11a,11bから出射される光の経路を示す図である。図13に示すように、投光素子11aから出射される光は、コリメータレンズ12aを通して平行光に整形され、PBS14の一面に垂直に入射する。PBS14に入射した光は、PBS14の反射面14aに対してS偏光である。そのため、その光はPBS14の反射面14aで直角に反射される。反射された光は、拡張光学系15,16を通して帯状の光に整形され、投受光部100aの外部に導かれる。
【0059】
投光素子11bから出射される光は、コリメータレンズ12bを通して平行光に整形され、半波長板13を通してPBS14の他の一面に垂直に入射する。この場合、半波長板13によって光の偏光方向が90°変化する。それにより、PBS14に入射した光は、PBS14の反射面14aに対してP偏光となり、PBS14の反射面14aを透過する。透過した光は、拡張光学系15,16を通して帯状の光に整形され、投受光部100aの外部に導かれる。
【0060】
このように、投光素子11aからの光および投光素子11bからの光は、偏光方向が互いに90°異なる直線偏光として、それぞれ投受光部100aから共通の方向に帯状に出射される。そのため、投光素子11aおよび投光素子11aから選択的に光を出射させることにより、偏光方向が90°異なる2種類の光(以下、第1および第2の光と呼ぶ)を選択的にワークWに照射することができる。
【0061】
本例では、投光素子11aから出射される光が第1の光としてワークWに照射され、投光素子11bから出射される光が第2の光としてワークWに照射される。第1の光と第2の光との切り替えは、図1の投光制御部3により行われる。
【0062】
(1−5)偏光方向と反射率との関係
図8に示したY方向に延びる溝M1を有するワークWを例に、偏光方向と反射率との関係について説明する。図8(a)に示すように、X方向に偏光する光をP偏光とし、Y方向に偏光する光をS偏光とした場合、ワークWの表面でのX方向における光の反射率は、ワークWに照射された光がP偏光であるかまたはS偏光であるかによって異なる。図8に例示したワークWにおいては、X方向成分を含む方向に反射された光が他の領域でさらに反射され、多重反射が発生する。このとき、X方向を多重反射方向と定義すると、X方向に偏光するP偏光の多重反射方向における反射率が、Y方向に偏光するS偏光の多重反射方向における反射率よりも小さくなる。特に、正反射される場合の反射率の差は、拡散反射される場合の反射率の差よりも大幅に大きい。
【0063】
また、多重反射された光の強度は、照射された光の強度に反射率を複数回乗じた値になる。そのため、多重反射されたS偏光の強度に対する同じ回数反射されたP偏光の強度の比は、1回反射されたS偏光の強度に対する1回反射されたP偏光の強度の比よりも小さくなる。
【0064】
一方、例えば図8に例示したワークWが、Z軸周りに90度回転された場合、Y方向が多重反射方向となる。この場合、Y方向に偏光するS偏光の多重反射方向における反射率が、X方向に偏光するP偏光の多重反射方向における反射率よりも小さくなる。
【0065】
すなわち、多重反射方向における反射率は、多重反射方向と水平面内において直交する方向に偏光する光よりも、多重反射方向と同じ方向に偏光する光に関して小さくなる。したがって、投受光部100aとワークWとの相対的配置によって多重反射方向が変化するため、互いに90度偏光成分が異なるP偏光およびS偏光の反射率の大小関係も変化する。
【0066】
本実施の形態では、ワークWに照射される第1の光がワークWの表面に対してP偏光(X方向に直線偏光した光)となり、ワークWに照射される第2の光がワークWの表面に対してS偏光(Y方向に直線偏光した光)となるように、投受光部100aおよびワークWが配置される。その状態で、投受光部100aからワークWに第1の光および第2の光が順次照射される。この場合、第1の光が照射されたときの受光素子21の受光量分布に基づく波形データおよび第2の光が照射されたときの受光素子21の受光量分布に基づく波形データが波形処理部7によりそれぞれ生成される。
【0067】
第1の光が照射された場合と第2の光が照射された場合とで、受光素子21の受光量分布が異なる。それにより、第1の光が照射された場合と第2の光が照射された場合とで異なる波形データが得られる。以下、第1の光が照射された場合の波形データを第1の波形データと呼び、第2の光が照射された場合の波形データを第2の波形データと呼ぶ。
【0068】
図14(a)は、第1の波形データを示す図であり、図14(b)は、第2の波形データを示す図である。図14(a)および図14(b)の波形データは、図5および図9の画素列SSの波形データである。
【0069】
図14(a)の第1の波形データには、図10の真ピークP1に相当する真ピークPp1および図10の偽ピークP2に相当する偽ピークPp2が現れる。図14(b)の第2の波形データには、図10の真ピークP1に相当する真ピークPs1および図10の偽ピークP2に相当する偽ピークPs2が現れる。図14(a)の真ピークPp1のピーク位置PP1と図14(b)の真ピークPs1のピーク位置PP1とは互いにほぼ等しく、図14(a)の偽ピークPp2のピーク位置PP2と図14(b)の偽ピークPs2のピーク位置PP2とは互いにほぼ等しい。つまり、ほぼ同じ高さの位置に、異なる偏光成分の光を照射した結果、真ピークの位置および偽ピークの位置がそれぞれ得られる。図14の例では、1つの偽ピークPP2が現れるが、2回以上の多重反射が発生した場合は、より多くの偽ピークPP2が現れることになる。以下、真ピークの位置を真のピーク位置と呼び、偽ピークの位置を偽のピーク位置と呼ぶ。
【0070】
図8(a)に示したように、照射領域T1で拡散反射された光L1が受光素子21に直接入射することにより、真ピークPp1,Ps1が現れる。一方、図8(b)に示したように、照射領域T1で拡散反射された光L2が偽照射領域T2で正反射されて受光素子21に入射することにより、偽ピークPp2,Ps2が現れる。
【0071】
上述したように、図8の例では、P偏光である第1の光の反射率は、S偏光である第2の光の反射率よりも小さい。それにより、第1の光が照射された場合に受光素子21に入射する光L1,L2の強度は、第2の光が照射された場合に受光素子21に入射する光L1,L2の強度よりも小さくなる。そのため、図14(a)の真ピークPp1の値Ppaは、図14(b)の真ピークPs1の値Psaよりも小さい。また、図14(a)の偽ピークPp2の値Ppbは、図14(b)の偽ピークPs2の値Psbよりも小さい。
【0072】
また、多重反射された第2の光(S偏光(反射率が高い光))の強度に対する同じ回数反射された第1の光(P偏光(反射率が低い光))の強度の比は、1回反射された第2の光の強度に対する1回反射された第1の光の強度の比よりも小さくなる。これは、反射率が低い場合には、反射を繰り返す毎に、反射率が高い場合よりも早いペースで光量が減少するためである。したがって、第2の光の強度に対する第1の光の強度の比は、多重反射を繰り返すほど小さくなる。
【0073】
さらに、上記のように、正反射されるP偏光の反射率とS偏光の反射率との差は、拡散反射されるP偏光の反射率とS偏光の反射率との差よりも大幅に大きい。そのため、第1の光が正反射される場合の反射率と第2の光が正反射される場合の反射率との差は、第1の光が拡散反射される場合の反射率と第2の光が拡散反射される場合の反射率との差よりも大きい。それにより、第1の光が照射された場合に偽照射領域T2(図8)で正反射された光L2の強度と第2の光が照射された場合に偽照射領域T2(図8)で正反射された光L2の強度との比は、第1の光が照射された場合に照射領域T1で拡散反射のみされた光L1の強度と第2の光が照射された場合に照射領域T1で拡散反射のみされた光L1の強度との比と大きく異なる。
【0074】
したがって、図14(b)の偽ピークPs2の値Psbに対する図14(a)の偽ピークPp2の値Ppbの比(Ppb/Psb)は、図14(b)の真ピークPs1の値Psaに対する図14(a)の真ピークPp1の値Ppaの比(Ppa/Psa)よりも小さくなる。
【0075】
このように、第2の波形データの偽ピークの値に対する第1の波形データの偽ピークの値の比は、第2の波形データの真ピークの値に対する第1の波形データの真ピークの値の比よりも小さくなる。
【0076】
なお、本例では、第2の光の受光量に対する第1の光の受光量の比を算出したが、第1の光の受光量に対する第2の光の受光量の比を算出してもよいことは云うまでもない。この場合は、多重反射を繰り返すほど、第1の光の受光量に対する第2の光の受光量の比が大きくなる。
【0077】
さらに、図8に示すワークWと投受光部100aとの位置関係では、第1の光(P偏光)が反射率の低い光となり、第2の光(S偏光)が反射率の高い光となるが、例えば投受光部100aに対して相対的にワークWをZ軸周りに90度回転させると、第1および第2の光の反射率の関係は逆転する。この場合、多重反射を繰り返すほど、第2の光の受光量に対する第1の光の受光量の比が大きくなる。
【0078】
すなわち、ワークWと投受光部100aとの相対的配置、および第1の光の強度と第2の光の強度との相対値の大小関係に基づいて、計測対象であるワークWの表面で1回のみ反射した光による真のピーク位置と、多重反射された光による偽のピーク位置とを識別することができる。
【0079】
なお、算出する相対値は比に限らず、第1の光の受光量と第2の光の受光量との相対的な値であればよく、差またはその他の値であってもよい。また、第1および第2の光のどちらを先にワークWに照射して受光量分布を取得するかは任意である。
【0080】
本実施の形態では、波形処理部7により、第2の波形データの各ピークの値に対する第1の波形データの対応するピークの値の比が算出され、算出された比に基づいて第1および第2の波形データから1つのピーク位置が検出される。
【0081】
(1−6)ピーク位置検出処理
図15は、波形処理部7によるピーク位置検出処理のフローチャートである。第1の光での撮像が完了すると、波形処理部7は、第1の光の受光量分布からなる複数の第1の波形データを生成する(ステップS1)。上述したように、第1の波形データは、図7のA2方向に沿った画素列毎にそれぞれ生成される。そのため、図7のA1方向に配列される複数の画素列分の複数の第1の波形データが順次生成される。
【0082】
なお、本例では、二次元の受光素子21を用いてワークWのプロファイル(断面形状)が取得されるため、複数の第1および第2の波形データが生成されるが、一次元の受光素子を用いてワークW上のある一点の高さを計測する光学式変位計においては、1つの第1の波形データおよび1つの第2の波形データが生成される。
【0083】
全ての第1の波形データが生成されると、波形処理部7は、生成された全ての第1の波形データにおける全てのピークの値を取得する(ステップS2)。図14(a)の例では、波形処理部7は、真ピークPp1の値Ppaおよび偽ピークPp2の値Ppbを取得する。
【0084】
次に、第2の光での撮像が完了すると、波形処理部7は、第2の光の受光量分布からなる複数の第2の波形データを生成する(ステップS3)。この場合、ステップS1と同様に、図7のA1方向に配列される複数の画素列分の複数の第2の波形データが順次生成される。
【0085】
全ての第2の波形データが生成されると、波形処理部7は、生成された全ての第2の波形データにおける全てのピークの値を取得する(ステップS4)。図14(b)の例では、波形処理部7は、真ピークPs1の値Psaおよび偽ピークPs2の値Psbを取得する。
【0086】
全ての第1および第2の波形データにおいてピークの値が取得されると、波形処理部7は、各画素列の第1の波形データと第2の波形データとの間で、互いに対応するピークの値の比を算出する(ステップS5)。図14の例では、波形処理部7は、真ピークPs1の値Psaに対する真ピークPp1の値Ppaの比(Ppa/Psa)および偽ピークPs2の値Psbに対する偽ピークPp2の値Ppbの比(Ppb/Psb)を算出する。
【0087】
次に、波形処理部7は、算出された比に基づいて、各画素列の第1および第2の波形データから真ピークを選択し、その真ピークの位置を検出する(ステップS6)。この場合、波形処理部7は、算出された比が最大となるピークを真ピークとして選択し、その真ピークの位置を検出する。図14の例では、波形処理部7は、真ピークPp1,Ps1のピーク位置PP1を検出する。これにより、波形処理部7はピーク位置検出処理を終了する。
【0088】
なお、上述したように、ワークWと投受光部100aとの相対的配置によっては、算出された比が最大となるピークではなく、算出された比が最小となるピークが真ピークに対応する場合もある。したがって、比が最大となるピークの位置を真のピーク位置として認識するか、または比が最小となるピークの位置を真のピーク位置として認識するかを適宜選択できるように構成されることが好ましい。これは、ユーザが選択してもよく、または取得された画像(例えば波形データ)等から多重反射方向が自動的に検出され、その検出結果に基づいて自動的に選択されてもよい。
【0089】
また、図15の例では、第1および第2の波形データの各々において全てのピークの位置が検出された後に、第1および第2の波形データの間でほぼ同じ位置にあるピークの値の比が相対値として算出され、その相対値に基づいて真のピーク位置が特定されるが、これに限らない。
【0090】
例えば、第1の波形データに示される全ての画素の受光量と第2の波形データに示される全ての画素の受光量との相対値(例えば比)がそれぞれ算出され、算出された全ての画素の受光量の相対値を示す新たな波形データが生成され、生成された新たな波形データに現れるピークの位置および値に基づいて、真のピーク位置が特定されてもよい。この場合、図15のステップS2,S4,S5の代わりに、新たな波形データを生成するステップおよび生成された新たな波形データに現れるピークの位置および値を取得するステップが必要になる。この場合も、図15の例と同様の効果が得られる。
【0091】
(1−7)効果
本実施の形態に係る光学式変位計100においては、照射部1からワークWに互いに偏光方向が異なる第1および第2の光が選択的に照射され、ワークWにおいて反射された第1および第2の光の受光量分布を示す第1および第2の波形データがそれぞれ生成される。生成された第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの比が算出され、算出された比に基づいて、第1および第2の波形データから1つのピークが選択される。
【0092】
これにより、第1および第2の波形データの各々における複数のピークのうち、ワークWにおいて1回反射された第1および第2の光による真ピークを正確に選択することができる。したがって、ワークWの照射領域T1の高さを示す真のピーク位置を正確に検出することができる。その結果、ワークWの断面形状を正確に検出することができる。
【0093】
また、本実施の形態では、投光素子11a,11bから選択的に光が出射されることによって第1および第2の光が選択的にワークWに照射されるように投光部1が構成される。それにより、簡単な構成でかつ簡単な制御で第1および第2の波形データを取得することができる。
【0094】
さらに、本実施の形態では、第1の光がワークWの照射領域T1に対してP偏光となり、第2の光がワークWの照射領域T2に対してS偏光となるように、投受光部100aおよびワークWが配置される。それにより、第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの比に基づいて、第1および第2の波形データの各々において、真ピークを容易にかつ正確に選択することができる。
【0095】
(1−8)投光部の他の例
(1−8−1)
図16は、投光部1の他の例を示す図である。図16の投光部1が図12の投光部1と異なるのは次の点である。図16の投光部1においては、投光素子11a、コリメータレンズ12aおよびPBS14の代わりに、波長板駆動部17が設けられる。波長板駆動部17としては、例えばロータリソレノイドまたはモータが用いられる。
【0096】
波長板駆動部17は、投光素子11bから出射される光が通る光路内の位置とその光路から外れる位置との間で半波長板13を移動させる。半波長板13が光路内に配置される場合、図13の例と同様に、投光素子11bから出射される光の偏光方向が半波長板13により変化する。それにより、その光が第2の光としてワークWに照射される。一方、半波長板13が光路から外れる位置に配置される場合、投光素子11bから出射される光の偏光方向が変化しない。それにより、その光が第1の光としてワークWに照射される。したがって、互いに偏光方向が異なる第1および第2の光を選択的にワークWに照射することができる。
【0097】
本例では、投光部1に1つの投光素子11bのみが設けられるので、複数の投光素子11a,11bが設けられる場合に比べて、光学系の構成がより簡略化される。
【0098】
(1−8−2)
図17は、投光部1のさらに他の例を示す図である。図17の例が図12の例と異なるのは次の点である。図16の投光部1においては、投光素子11a、コリメータレンズ12a、半波長板13およびPBS14の代わりに、偏光方向制御部18が設けられる。偏光方向制御部18としては、例えば液晶スイッチ、EOM(Electro Optic Modulator:電気光学変調器)またはファラデー回転子(Faraday Rotator)が用いられる。
【0099】
偏光方向制御部18は、投受光部100aから第1または第2の光が照射されるように、投光素子11bから出射される光の偏光方向を制御する。それにより、互いに偏光方向が異なる第1および第2の光を選択的にワークWに照射することができる。
【0100】
本例では、投光部1に1つの投光素子11bのみが設けられ、かつ図12の例と異なり、半波長板13の移動スペースを設ける必要がない。それにより、投光部1の占有スペースがさらに小さくなる。それにより、投受光部100aのさらなる小型化が可能となる。
【0101】
(1−9)他の検出例
(1−9−1)
上記のように、第1の光の反射率は第2の光の反射率よりも小さいので、多重反射された第2の光の強度に対する同じ回数反射された第1の光の強度の比は、1回反射された第2の光の強度に対する1回反射された第1の光の強度の比よりも小さい。そのため、照射される第1および第2の光の強度が等しい場合、第1波形データと第2の波形データとの間で互いに対応する真ピークの値の差の絶対値は、互いに対応する偽ピークの値の差の絶対値よりも小さい。
【0102】
そこで、図15のピーク位置検出処理のステップS7において、波形処理部7は、第1の波形データと第2の波形データとの間で互いに対応するピークの値の比を算出する代わりに、第1の波形データと第2の波形データとの間で互いに対応するピークの値の差を算出してもよい。この場合、ステップS8において、波形処理部7は、算出された差の絶対値が最小となるピークを真ピークとて選択し、その真ピークの位置を検出する。
【0103】
図14の例では、波形処理部7は、真ピークPs1の値Psaから真ピークPp1の値Ppaを減算した値(Psa−Ppa)および偽ピークPs2の値Psbから偽ピークPp2の値Ppbを減算した値(Psb−Ppb)を算出する。この場合、(Psa−Ppa)の絶対値が(Psb−Ppb)の絶対値よりも小さくなる。それにより、波形処理部7は、真ピークPp1,Ps1を選択し、ピーク位置PP1を検出する。
【0104】
(1−9−2)
図15のピーク位置検出処理のステップS7において、上記のように第1の波形データと第2の波形データとの間で互いに対応するピークの値の差が算出される場合に、予め定められた係数が各ピークの値に乗算され、乗算された値の差が算出されてもよい。
【0105】
この場合、ピークの値が大きいほど、係数の値が小さくなるように、ピークの値に応じて予め係数が定められる。例えば、ピークの値が0LSB(Least Significant Bit:最下位ビット)以上100LSB以下である場合には、係数が10に設定され、ピークの値が101LSB以上200LSB以下である場合には、係数が9に設定される。ピークの値が201LSB以上である場合も同様に、ピークの値が100LSB大きくなるごとに係数が1小さくなる。ピークの値が901LSB以上1000LSB以下である場合には、係数が1に設定される。
【0106】
図14の例では、波形処理部7は、真ピークPp1の値Ppaに応じて、乗算すべき係数kpaを決定し、真ピークPs1の値Psaに応じて、乗算すべき係数ksaを決定する。また、波形処理部7は、偽ピークPp2の値Ppbに応じて、乗算すべき係数kpbを決定し、偽ピークPs2の値Psbに応じて、乗算すべき係数ksbを決定する。
【0107】
続いて、波形処理部7は、真ピークPs1の値Psaに係数ksaが乗算された値と真ピークPp1の値Ppaに係数kpaが乗算された値との差(ksa・Psa−kpa・Ppa)を算出する。また、波形処理部7は、偽ピークPs2の値Psbに係数ksbが乗算された値と偽ピークPp2の値Ppbに係数kpbが乗算された値の差(ksb・Psb−kpb・Ppb)を算出する。
【0108】
この場合、(ksa・Psa−kpa・Ppa)の絶対値が(ksb・Psb−kpb・Ppb)の絶対値よりも小さくなる。それにより、波形処理部7は、真ピークPp1,Ps1を選択し、ピーク位置PP1を検出する。
【0109】
このように、ピークの値に応じて予め定められた係数が、各ピークの値に乗算されることにより、第1および第2の波形データにおける複数のピークの値が均等化される。それにより、第1および第2の波形データにおける複数のピークの値のばらつきが大きい場合でも、真ピークを正確に選択することができる。
【0110】
(1−9−3)
第1および第2の波形データの各々に現れるピークの数が多くなると、第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの値の比または差を算出する処理が煩雑になる。そこで、第1および第2の波形データに現れる各ピークの幅に基づいて、真ピークの可能性があるピークを特定し、特定されたピークに関してのみ比または差を算出してもよい。図18は、投光部1、受光素子21および受光レンズ22の位置関係を示す図である。図19は、真ピークおよび偽ピークの幅について説明するための図である。
【0111】
図18に示すように、受光素子21の受光面21a、受光レンズ22の主面22a、および投光部1から出射される光が通る平面PHが共通の直線PD上で互いに交差するように、受光素子21、受光レンズ22および投光部1がそれぞれ配置される。この場合、シャインプルーフの原理により、受光素子21の受光面21aに対してピント(焦点)が合う領域は、平面PH上の領域PRとなる。
【0112】
ワークW上の照射領域T1(図2)は、領域PR内に位置し、受光素子21の受光面21aに対してピントが合う。一方、偽照射領域T2は、領域PR内に位置せず、受光素子21の受光面21aに対してピントが合わない。これにより、偽ピークは真ピークよりも鈍った形状となり、偽ピークの幅が真ピークの幅よりも大きくなる。
【0113】
図19の例では、波形データの位置PP1,PP2,PP3に真ピークP1および偽ピークP2,P3が存在する。この場合、偽ピークP2,P3は真ピークP1よりも鈍った形状となり、偽ピークP2,P3の幅W2,W3は真ピークP1の幅W1よりも大きくなる。
【0114】
各ピークの幅は、次のようにして算出される。例えば、真ピークP1の値Paおよび偽ピークP2,P3の値Pb,Pcにそれぞれ一定の係数(例えば0.7)を乗じた値がしきい値THa,THb,THcとして設定される。ピーク位置PP1の一方側において受光量がしきい値THaとなる最もピーク位置PP1に近い位置PP1aとピーク位置PP1の他方側において受光量がしきい値THaとなる最もピーク位置PP1に近い位置PP1bとの間の距離が真ピークP1の幅W1として算出される。同様に、ピーク位置PP2の一方側において受光量がしきい値THbとなる最もピーク位置PP2に近い位置PP2aとピーク位置PP2の他方側において受光量がしきい値THbとなる最もピーク位置PP2に近い位置PP2bとの間の距離が偽ピークP2の幅W2として算出される。また、ピーク位置PP3の一方側において受光量がしきい値THcとなる最もピーク位置PP3に近い位置PP3aとピーク位置PP3の他方側において受光量がしきい値THcとなる最もピーク位置PP3に近い位置PP2cとの間の距離が偽ピークP3の幅W3として算出される。
【0115】
図20は、波形処理部7によるピーク位置検出処理の他の例のフローチャートである。図20の例が図15の例と異なるのは次の点である。
【0116】
図20の例では、波形処理部7は、第1の波形データにおける全てのピークの値を取得すると(図20のステップS2)、取得された全てのピークの値に基づいて、上記のように全てのピークの幅を算出する(ステップS3a)。次に、波形処理部7は、算出された全てのピークの幅のうち、最小の幅を特定する(ステップS4a)。
【0117】
ここで、上述したように、第1の波形データは、図7のA2方向に沿った画素列毎にそれぞれ生成される。そのため、図7のA1方向に配列される複数の画素列分の複数の第1の波形データが順次生成される。
【0118】
次に、波形処理部7は、各第1の波形データについて、最小の幅との差が予め定められたしきい値以下の幅を有するピークを第1の検出対象ピークとして特定する(ステップS5a)。ステップS5aで特定された第1の検出対象ピークは、真ピークである可能性があり、ピーク位置の検出対象となる。全ての第1の波形データにおいて、第1の検出対象ピークが特定されると、波形処理部7は、複数の第2の波形データを生成する(ステップS6a)。
【0119】
全ての第2の波形データが生成されると、波形処理部7は、生成された各第2の波形データについて、対応する第1の波形データの第1の検出対象ピークと共通のピーク位置を有する第2の検出対象ピークの値を取得する(ステップS7a)。
【0120】
全ての第2の波形データにおいて第2の検出対象ピークの値が取得されると、波形処理部7は、各画素列の第1の波形データと第2の波形データとの間で、互いに対応する第1および第2の検出対象ピークの値の比を算出する(ステップS8a)。
【0121】
次に、波形処理部7は、算出された比に基づいて、各画素列の第1および第2の波形データから真ピークを選択し、その真ピークの位置を検出する(ステップS9a)。この場合、波形処理部7は、算出された比が最大となるピークを真ピークとして選択し、その真ピークの位置を検出する。これにより、波形処理部7はピーク位置処理を終了する。
【0122】
本例では、第1の波形データの各ピークの幅に基づいて、真ピークの可能性がある第1の検出対象ピークが予め特定され、特定された第1の検出対象ピークの値とそれに対応する第2の検出ピークの値との比のみが算出される。それにより、全てのピークについて比を算出する必要がないので、効率よく真のピーク位置を検出することができる。
【0123】
なお、図20のステップS9aにおいて、第1および第2の検出対象ピークの値の比を算出する代わりに、第1および第2の検出対象ピークの値の差を算出してもよい。または、予め定められた係数を第1および第2の検出対象ピークの値に乗算し、乗算された第1および第2の検出対象ピークの値の差を算出してもよい。
【0124】
(1−9−4)
上記の例では、波形データに基づいて真ピークが特定されるが、これに限らず、受光素子21の受光量分布に基づいて真ピークが特定されてもよい。
【0125】
図21は、受光素子21の受光量分布に基づいて真ピークが特定される場合のピーク位置検出処理のフローチャートである。図21の例が図15の例と異なるのは次の点である。
【0126】
本例では、第1の光がワークWに照射された場合の受光素子21の受光量分布が第1の画像データとして波形処理部21に与えられ、第2の光がワークWに照射された場合の受光素子21の受光量分布が第2の画像データとして波形処理部21に与えられる。
【0127】
図21に示すように、波形処理部7は、第1の画像データが得られたか否かを判定する(ステップS21)。第1の画像データが得られていない場合、波形処理部7は、第1の画像データが得られるまで待機する。第1の画像データが得られた場合、波形処理部7は、第1の画像データに基づいて、第1の光が照射された場合の受光素子21の各画素の受光量を取得する(ステップS22)。
【0128】
次に、波形処理部7は、第2の画像データが得られたか否かを判定する(ステップS23)。第2の受光量分布が得られていない場合、波形処理部7は、第2の画像データが得られるまで待機する。第2の画像データが得られた場合、波形処理部7は、第2の画像データに基づいて、第2の光が照射された場合の受光素子21の各画素の受光量を取得する(ステップS24)。
【0129】
次に、波形処理部7は、受光素子21の各画素について、第2の光が照射された場合の受光量に対する第1の光が照射された場合の受光量の比を算出する(ステップS25)。次に、波形処理部7は、第1および第2の画像データに基づいて、画素列ごとにピークに対応する画素を特定する(ステップS26)。
【0130】
次に、波形処理部7は、ステップS25で算出された比およびステップS26で特定された画素に基づいて、画素列ごとに真ピークに対応する画素を選択し、その真ピークの位置を検出する(ステップS27)。この場合、波形処理部7は、各画素列のピークに対応する画素について、第2の光が照射された場合の受光量に対する第1の光が照射された場合の受光量の比を比較する。比較の結果、波形処理部7は、各画素列において受光量の比が最大となる画素を真ピークに対応する画素として選択し、その画素の位置を真のピーク位置として検出する。これにより、波形処理部7はピーク位置検出処理を終了する。
【0131】
本例では、受光素子21の受光量分布を示す第1および第2の画像データに基づいて、真のピーク位置が検出される。換言すると、第1および第2の画像データの互いに対応する画素値(受光量)の相対値からなる新たな画像データが生成され、生成された新たな画像データの各画素列に対応する波形データにおいてピーク位置が検出される。検出されたピーク位置から真のピーク位置が選択され、検出される。このように、第1および第2の画像データ間、第1および第2の画像データから得られる波形データ間、および第1および第2の画像データの波形データから検出されたピーク位置間のいずれかにおいて相対値が算出され、この相対値に基づいて多重反射光による偽のピーク位置と、1回反射光による真のピーク位置とを明確に区別することが可能である。
【0132】
(1−9−5)
図8に示した例では、ワークWに照射される第1の光がワークWの表面に対してP偏光となり、ワークWに照射される第2の光がワークWの表面に対してS偏光となるように、投受光部100aおよびワークWが配置されているが、ワークWに照射される第1の光がワークWの表面に対してS偏光となり、ワークWに照射される第2の光がワークWの表面に対してP偏光となるように、投受光部100aおよびワークWが配置されている場合、多重反射方向への光の反射率の大小関係が逆転するため、相対値(第2の波形データのピークの値に対する第1の波形データのピークの値の比)が最小となるピーク位置を真のピーク位置として特定すべきである。あるいは、照射する第1の光と第2の光との偏光成分を逆転させることにより、相対値が最大となるピーク位置を真のピーク位置として認識することも可能である。
【0133】
例えば、図15のステップS7において、第2の波形データのピークの値に対する第1の波形データのピークの値が算出される代わりに、第1の波形データのピークの値に対する第2の波形データのピークの値が算出される。または、ステップS8において、算出された比が最大となるピークが真ピークとして選択される代わりに、算出された比が最小となるピークが真ピークとして選択される。
【0134】
多重反射光の除去を行うために、ワークWと投受光部100aとの相対的配置に制約が存在することはユーザにとって好ましくない。したがって、ワークWおよび投受光部100aの配置に応じて、相対値が最大となるピーク位置を真のピーク位置として特定するか、または最小となるピーク位置を真のピーク位置として特定するかを適宜選択できるようにすることが好ましい。あるいは、第1の光の偏光成分および第2の光の偏光成分をユーザがそれぞれ選択できるようにしてもよい。
【0135】
また、第1の光の偏光成分および第2の光の偏光成分は、水平面内において偏光方向が90度異なっていることが、多重反射光を除去するという観点で最も好ましい。ただし、多重反射光を除去することが可能な程度に多重反射方向における反射率が異なるのであれば、上記に限られないことは云うまでもない。
【0136】
(2)第2の実施の形態
(2−1)
本発明の第2の実施の形態にかかる光学式変位計100について、上記第1の実施の形態に係る光学式変位計100と異なる点を説明する。図22は、第2の実施の形態に係る光学式変位計100の投光部および受光部の構成を示す図である。
【0137】
図22に示すように、投光部1は、投光素子11、コリメータレンズ12および拡張光学系15,16を含む。投光素子11は、種々の偏光方向を有する無偏光を出射する。投光素子11から出射される光は、コリメータレンズ12を通して平行光に整形され、拡張光学系15,16を通して帯状の光に整形され、投受光部100aの外部に導かれる。
【0138】
受光部2は、受光素子21、受光レンズ22、偏光板23a,23bおよび偏光板切替部24を含む。偏光板23aは、例えばワークWの照射領域T1に対してP偏光となる第1の光のみを透過させる。偏光板23bは、例えばワークWの照射領域T1に対してS偏光となる第2の光のみを透過させる。偏光板切替部24は、ワークWからの反射光が通る光路内に偏光板23a,23bの一方を選択的に配置する。偏光板切替部24としては、例えばロータリソレノイドまたはモータが用いられる。
【0139】
偏光板切替部24によって偏光板23aが光路内に配置されることにより、ワークWからの反射光のうち第1の光のみが偏光板23aを透過する。透過した第1の光は、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。この場合、受光素子21により第1の光の受光量分布が得られ、得られた受光量分布に基づいて第1の波形データが生成される。
【0140】
一方、偏光板切替部24によって偏光板23bが光路内に配置されることにより、ワークWからの反射光のうち第2の光のみが偏光板23aを透過する。透過した第2の光は、受光レンズ22を通して受光素子21に入射する。この場合、受光素子21により第2の光の受光量分布が得られ、得られた受光量分布に基づいて第2の波形データが生成される。生成された第1および第2の波形データを用いて、上記第1の実施の形態と同様に、波形処理部7によりピーク位置検出処理が行われる。
【0141】
(2−2)効果
本実施の形態に係る光学式変位計100においては、照射部1からワークWに共通の光が照射され、ワークWからの反射光が第1および第2の光として受光素子21に選択的に導かれる。この場合も、上記第1の実施の形態と同様に、第1および第2の波形データの間で互いに対応するピークの相対値に基づいて、第1および第2の波形データの各々において、真ピークを正確に選択することができる。したがって、ワークWの照射領域T1の高さを示す真のピーク位置を正確に検出することができる。その結果、ワークWの断面形状を正確に検出することができる。
【0142】
(2−3)投光部および受光部の他の例
図23は、投光部1および受光部2の他の例を示す図である。図23の投光部1および受光部2が図22の投光部1および受光部2と異なるのは、次の点である。
【0143】
図23の例では、投光素子11から一定の偏光方向を有する直線偏光が出射される。直線偏光の偏光方向は、第1および第2の光の偏光方向と異なるように設定され、例えば、ワークWへの入射面に対して45°に設定される。
【0144】
受光部2は、偏光板23a,23bおよび偏光板切替部24の代わりに、偏光成分分離部25を含む。偏光成分分離部25は、ワークWからの反射光からP偏光成分およびS偏光成分を選択的に分離することができる。偏光成分分離部25としては、例えば液晶スイッチ、EOMまたはファラデー回転子が用いられる。偏光成分分離部25により分離されたP偏光成分の光が第1の光として受光素子21により受光され、S偏光成分の光が第2の光として受光素子21により受光される。これにより、第1および第2の光の受光量分布が得られる。
【0145】
(3)他の実施の形態
(3−1)
上記第1および第2の実施の形態では、第1の光の偏光方向と第2の光の偏光方向との角度が90°に調製されるが、これに限らない。第1の光の受光量分布と第2の光の受光量分布との間で互いに対応するピークの相対値に基づいて、真のピーク位置を選択することが可能であれば、第1の光の偏光方向と第2の光の偏光方向との角度が90°からずれていてもよい。また、第1および第2の光にP偏光成分およびS偏光成分以外の偏光成分が含まれてもよい。
【0146】
(3−2)
上記第1および第2の実施の形態では、第1の光の受光量分布におけるピークの値と第2の光の受光量分布におけるピークの値との相対値として、比、差、または予め定められた係数を用いて演算された値が用いられるが、これに限らない。真ピークを正確に選択することが可能であれば、第1の光の受光量分布におけるピークの値および第2の光の受光量分布におけるピークの値を用いた種々の演算により得られる値が相対値として用いられてもよい。
【0147】
(3−3)
本発明の実施の形態は、光切断方式によりワークWの断面形状を検出する光学式変位計100に限定されない。例えば、点状の光を対象物上に走査し、反射光の受光量分布に基づいて対象物の変位を2次元で検出する光走査式の光学式変位計、または線状の光を対象物に照射し、反射光に基づいてワークWの変位を一次元で検出する光学式変位計において、上記第1および第2の実施の形態と同様の構成を用いてもよい。この場合も、対象物において1回反射された光によるピークの位置を正確に検出することができる。それにより、対象物の変位を正確に検出することができる。
【0148】
(4)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0149】
上記実施の形態においては、投光部1が投光部の例であり、受光部2が受光部の例であり、第1の波形データまたは第1の画像データが第1の受光量分布の例であり、第2の波形データまたは第2の画像データが第2の受光量分布の例であり、波形処理部7が受光量分布取得部およびピーク位置検出部の例である。また、投光素子11aが第1の投光素子の例であり、投光素子11bが第2の投光素子の例であり、PBS14が第1の光学系の例であり、半波長板13およびPBS14が第2の光学系の例であり、投光素子11bが共通の投光素子の例であり、半波長板13および波長板駆動部17あるいは偏光方向制御部18が偏光成分制御部の例である。また、受光素子21が受光素子の例であり、偏光板23a,23bおよび偏光板切替部24あるいは偏光板切替部24が受光選択部の例である。
【0150】
請求項の各構成要素として、上記実施の形態に記載された構成要素の他、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0151】
本発明は、三角測距方式による対象物の変位の検出に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0152】
1 投光部
2 受光部
6 波形生成部
7 波形処理部
8 プロファイル生成部
11a,11b 投光素子
12a,12b コリメータレンズ
13 半波長板
14 PBS
15,16 拡張光学系
17 波長板駆動部
18 偏光方向制御部
22 受光レンズ
23a,23b 偏光板
24 偏光板切替部
100 光学式変位計
100a 投受光部
100b 制御部
W ワーク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物からの反射光のピーク位置を検出することにより三角測距方式で対象物の変位を検出する光学式変位計であって、
対象物に光を照射する投光部と、
第1の直線偏光成分を含む第1の光および前記第1の直線偏光成分と異なる第2の直線偏光成分を含む第2の光を互いに識別可能に受光する受光部と、
前記受光部による前記第1の光の受光量分布を第1の受光量分布として取得するとともに、前記受光部による前記第2の光の受光量分布を第2の受光量分布として取得する受光量分布取得部と、
前記受光量分布取得部により取得された前記第1および第2の受光量分布に基づいて、対象物の表面で複数回反射した光による偽のピーク位置と1回反射した光による真のピーク位置とを識別するための識別情報を算出し、算出された前記識別情報に基づいて前記真のピーク位置を特定するピーク位置検出部と、
前記ピーク位置検出部により特定された前記真のピーク位置に対応する対象物の変位を算出する計測処理部とを備えることを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
前記ピーク位置検出部は、前記受光量分布取得部により取得された前記第1の受光量分布におけるピーク位置を第1のピーク位置として検出し、前記第2の受光量分布におけるピーク位置を第2のピーク位置として検出し、互いに対応する第1および第2のピーク位置の受光量の相対値を前記識別情報として算出することを特徴とする請求項1記載の光学式変位計。
【請求項3】
前記ピーク位置検出部は、前記受光量分布取得部により取得された前記第1および第2の受光量分布の相対関係を前記識別情報として算出することを特徴とする請求項1記載の光学式変位計。
【請求項4】
前記投光部は、前記第1および前記第2の光を前記対象物に選択的に照射するように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の光学式変位計。
【請求項5】
前記投光部は、
光を発生する第1および第2の投光素子と、
前記第1の投光素子により発生される光を前記第1の光として前記対象物に導く第1の光学系と、
前記第2の投光素子により発生される光を前記第2の光として前記対象物に導く第2の光学系とを含むことを特徴とする請求項4記載の光学式変位計。
【請求項6】
前記投光部は、
光を発生する共通の投光素子と、
前記共通の投光素子により発生される光の偏光成分を制御することにより前記第1および第2の光を前記対象物に照射する偏光成分制御部とを含むことを特徴とする請求項4記載の光学式変位計。
【請求項7】
前記投光部は、前記第1および第2の直線偏光成分を含む共通の光を前記対象物に照射するように構成され、
前記受光部は、
受光素子と、
前記対象物により反射された前記共通の光を第1および第2の光として選択的に前記受光素子に導く受光選択部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学式変位計。
【請求項8】
前記識別情報は、前記第1の受光量分布に現れるピークの値と前記第2の受光量分布に現れるピークの値との比を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学式変位計。
【請求項9】
前記識別情報は、前記第1の受光量分布に現れるピークの値と前記第2の受光量分布に現れるピークの値との差を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学式変位計。
【請求項10】
前記識別情報は、前記第1および第2の受光量分布に現れるピークの値および予め定められた係数を用いた演算により得られる値を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学式変位計。
【請求項11】
前記第1の光の偏光方向と前記第2の光の偏光方向とは互いに90度異なることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の光学式変位計。
【請求項1】
対象物からの反射光のピーク位置を検出することにより三角測距方式で対象物の変位を検出する光学式変位計であって、
対象物に光を照射する投光部と、
第1の直線偏光成分を含む第1の光および前記第1の直線偏光成分と異なる第2の直線偏光成分を含む第2の光を互いに識別可能に受光する受光部と、
前記受光部による前記第1の光の受光量分布を第1の受光量分布として取得するとともに、前記受光部による前記第2の光の受光量分布を第2の受光量分布として取得する受光量分布取得部と、
前記受光量分布取得部により取得された前記第1および第2の受光量分布に基づいて、対象物の表面で複数回反射した光による偽のピーク位置と1回反射した光による真のピーク位置とを識別するための識別情報を算出し、算出された前記識別情報に基づいて前記真のピーク位置を特定するピーク位置検出部と、
前記ピーク位置検出部により特定された前記真のピーク位置に対応する対象物の変位を算出する計測処理部とを備えることを特徴とする光学式変位計。
【請求項2】
前記ピーク位置検出部は、前記受光量分布取得部により取得された前記第1の受光量分布におけるピーク位置を第1のピーク位置として検出し、前記第2の受光量分布におけるピーク位置を第2のピーク位置として検出し、互いに対応する第1および第2のピーク位置の受光量の相対値を前記識別情報として算出することを特徴とする請求項1記載の光学式変位計。
【請求項3】
前記ピーク位置検出部は、前記受光量分布取得部により取得された前記第1および第2の受光量分布の相対関係を前記識別情報として算出することを特徴とする請求項1記載の光学式変位計。
【請求項4】
前記投光部は、前記第1および前記第2の光を前記対象物に選択的に照射するように構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の光学式変位計。
【請求項5】
前記投光部は、
光を発生する第1および第2の投光素子と、
前記第1の投光素子により発生される光を前記第1の光として前記対象物に導く第1の光学系と、
前記第2の投光素子により発生される光を前記第2の光として前記対象物に導く第2の光学系とを含むことを特徴とする請求項4記載の光学式変位計。
【請求項6】
前記投光部は、
光を発生する共通の投光素子と、
前記共通の投光素子により発生される光の偏光成分を制御することにより前記第1および第2の光を前記対象物に照射する偏光成分制御部とを含むことを特徴とする請求項4記載の光学式変位計。
【請求項7】
前記投光部は、前記第1および第2の直線偏光成分を含む共通の光を前記対象物に照射するように構成され、
前記受光部は、
受光素子と、
前記対象物により反射された前記共通の光を第1および第2の光として選択的に前記受光素子に導く受光選択部をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学式変位計。
【請求項8】
前記識別情報は、前記第1の受光量分布に現れるピークの値と前記第2の受光量分布に現れるピークの値との比を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学式変位計。
【請求項9】
前記識別情報は、前記第1の受光量分布に現れるピークの値と前記第2の受光量分布に現れるピークの値との差を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学式変位計。
【請求項10】
前記識別情報は、前記第1および第2の受光量分布に現れるピークの値および予め定められた係数を用いた演算により得られる値を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学式変位計。
【請求項11】
前記第1の光の偏光方向と前記第2の光の偏光方向とは互いに90度異なることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の光学式変位計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−127887(P2012−127887A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281231(P2010−281231)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】
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