光学式座標検知装置
【課題】 省スペース化が可能な光学式の座標検知装置を提供する。
【解決手段】 座標検知装置1は、座標領域Cの周縁上に配置され、表面が再帰反射するよう形成された外枠2と、外枠2の上辺の両端に配置された一対の光学装置3,4とを備える。光学装置3,4は、レーザ光を出射する光源31と、この光を偏向して出射する光偏向器142と、再帰反射した光を検知する光検知部33とを備える。光偏向器142は、ミラーと、座標領域Cの全領域に対して光源31からのレーザ光で走査可能にミラーを回転駆動する圧電アクチュエータとで構成される。
【解決手段】 座標検知装置1は、座標領域Cの周縁上に配置され、表面が再帰反射するよう形成された外枠2と、外枠2の上辺の両端に配置された一対の光学装置3,4とを備える。光学装置3,4は、レーザ光を出射する光源31と、この光を偏向して出射する光偏向器142と、再帰反射した光を検知する光検知部33とを備える。光偏向器142は、ミラーと、座標領域Cの全領域に対して光源31からのレーザ光で走査可能にミラーを回転駆動する圧電アクチュエータとで構成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式座標検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の位置を決定する長方形状の目標区域を内部に有するハウジングと、一対の光分配検出アセンブリとを備える光学的位置決め装置が知られている(特許文献1)。ハウジングは、再帰反射性の材料からなる反射器アセンブリを有する。ここで、再帰反射とは、入射した光に平行で且つ入射方向と反対の方向に出射する反射のことである。
【0003】
光分配検出アセンブリは、光源と、ビーム分割器と、光を偏向する鏡と、光検出器と、鏡を回転させるモータとを有する。光源からの光は、ビーム分割器を通過した後、鏡によって偏向されて目標区域に出射される。
【0004】
目標区域に出射された光は、ハウジングの反射器アセンブリによって反射されることで、入射時と同じ経路を入射方向とは反対方向に戻る。そして、戻ってきた光は、鏡によって偏向され、光源からの光がビーム分割器を通過したときとは反対方向に、ビーム分割器に入射する。ビーム分割器は、この方向で入射した光を90度の角度で偏向して光検出器に向かって出射する。このようにして、光検出器は、光源から出射された後、反射器アセンブリによって反射された光を検出している。
【0005】
光源から出射された光が、反射器アセンブリに到達する前に物体に遮られた場合には、物体に遮られていない場合に比べて光検出器が検出する光のレベルが変化する。光分配検出アセンブリは、この検出した光のレベルによって、物体の有無を検知できる。
【0006】
また、モータは、鏡を回転することで90度の範囲にわたって目標区域を走査する。モータの回転速度は、光速に比べて充分に遅いため、反射器アセンブリによって反射された光が検出されたときの鏡の角度は、光源からの光が出射したときの鏡の角度とほぼ同じである。
【0007】
このような光分配検出アセンブリが一対すなわち2つあるため、目標区域内に物体がある場合、この物体によって光源から出射された光が遮られた角度が2つ検知される。一対の光分配検出アセンブリ間の距離は既知であるので、一辺とその両端の角度とから頂点を求める三角測量法によって目標区域内の物体の位置を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−5428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の光学式座標検知装置では、鏡を駆動する手段として用いているモータは、一般に磁石による磁界中で回転子を回転させる機械的な構造のため、小型化に限度がある。このため、光分配検出アセンブリを小型化するのは困難であり、省スペースが要求されるディスプレイやホワイトボード等への搭載が難しい。
【0010】
そこで、本発明は、省スペース化が可能な光学式の座標検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、平面座標領域内の物体の座標を検知するために、前記座標領域の周縁上又は座標領域外に配置され、光を出射すると共に受光する一対の光学装置と、前記光学装置から出射された光を再帰反射する再帰反射部とを備える光学式座標検知装置であって、前記光学装置は、光を出射する光源と、前記光源からの光を前記座標領域の面に平行に光を偏向して当該光学装置から出射する光偏向部と、前記再帰反射部が反射した光を検知する光検知部とを備え、前記光偏向部は、反射面を有するミラーと、電圧信号が印加されることで該ミラーを回転駆動する圧電アクチュエータとで構成され、前記座標領域の全領域に対して光を出射できる角度で前記ミラーを回転駆動することを特徴とする。
【0012】
本発明において、座標領域とは、上記特許文献1でいう目標区域に相当する領域であって、平面座標で表わされるものである。
【0013】
本発明によれば、圧電アクチュエータにより、座標領域の全領域に対して光を出射できる角度でミラーを回転駆動する。
【0014】
このような圧電アクチュエータを用いた駆動装置として、MEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスが知られている。MEMSによれば、圧電アクチュエータを用いることで、駆動部を非常に小型化できる。すなわち、駆動源としてモータを用いる従来の装置に比べて光偏向部を小型化できる。従って、本発明の座標検知装置は、省スペースが要求されるディスプレイ等に搭載するのに最適なものである。
【0015】
また、例えば、座標領域の形状が長方形であり、その1辺の両端に光偏向器を配置した場合には、ミラーを45°の角度で回転駆動することで、座標領域の全領域に対して光を出射できる。
【0016】
これに対し、従来のモータによってミラーを45°の角度で回転駆動させる場合には、座標領域上の物体の座標を即時検知できる程度に高速で45°回転駆動することは難しい。このため、モータによる駆動は、360°回転、すなわち、同一方向に回転させることが現実的である。この場合、45°から360°の角度で回転している間は座標領域内に光が出射されず、その間の回転駆動は無用になる。この点、本発明では、圧電アクチュエータにより座標領域の全領域に対して光を出射するのに充分な角度(例えば、0°〜45°)でミラーを回転駆動するので、ミラーをより効率よく回転駆動させることができる。
【0017】
本発明において、前記再帰反射部は、入射角が0°の光を、反射角が0°で最大光度となり所定の半値角の広がりを持つ光として反射する反射特性を有し、前記ミラーから前記光検知部までの距離が、前記再帰反射部の反射特性と前記座標領域の大きさとに応じて決定されることが好ましい。
【0018】
一般に、出射光と反射光とが同一光路を通る場合には、ミラーと光検知部とが互いに干渉しないように、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設ける必要がある。しかしながら、上記のように、再帰反射部が、入射角が0°の光を、反射角が0°で最大光度となり所定の半値角の広がりを持つ光として反射する反射特性を有する場合には、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設けることなく、ミラーと光検知部とを配置できる。これによって、光学装置の部品数が減り、小型化及び構造の簡単化ができる。
【0019】
本発明において、前記圧電アクチュエータは、支持体及び該支持体上に形成された圧電体を有し圧電駆動により屈曲変形を行う複数の圧電カンチレバーを含むと共に、該複数の圧電カンチレバーの圧電体にそれぞれ駆動電圧を印加するための複数の電極を備え、該複数の圧電カンチレバーは各々の屈曲変形を累積するように端部が機械的に連結され、前記駆動電圧の印加により各圧電カンチレバーが屈曲変形されることが好ましい。
【0020】
これにより、複数の圧電カンチレバーを、各々の屈曲変形を累積するように端部を機械的に連結しているので、小型化した場合であっても、大きな偏向角を得ることができる。
【0021】
本発明において、前記駆動電圧が所定の電圧値を上回ったとき又は前記駆動電圧が所定の電圧値を下回ったときから、前記光検知部の受光量が変化するまでの経過時間に応じて、前記ミラーの回転角を決定することが好ましい。
【0022】
光偏向部に印加される電圧の周波数は予め分かっているので、本発明の座標検知装置は、駆動電圧が所定の電圧値を上回るか又は下回ったときから光検知部が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、ミラーの回転角を決定できる。これにより、より正確に物体の座標を検知することができる。
【0023】
本発明において、前記ミラーは、前記座標領域の全領域に対して光を出射できる角度より大きい角度で回転駆動し、前記座標領域の周縁上又は座標領域外であると共に、前記ミラーの回転駆動によって前記光学装置からの光が出射される領域内に受光部を備え、前記受光部が受光したときから前記光検知部の受光量が変化するまでの経過時間に応じて、前記ミラーの回転角を決定してもよい。
【0024】
上述したものと同様に、光偏向部に印加される電圧の周波数は予め分かっているので、本発明の座標検知装置は、受光部が受光したときから光検知部が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、ミラーの回転角を決定できる。これにより、より正確に物体の座標を検知することができる。
【0025】
本発明において、前記光学装置から出射した光が再帰反射して当該光学装置に入射するまでの光路が、前記座標領域の面に平行な平面上にあり、前記一対の光学装置のうち、一方の光学装置からの光の光路がある前記平面と、他方の光学装置からの光の光路がある前記平面とが異なる平面上になるように構成されることが好ましい。
【0026】
これにより、一方の光学装置からの光と他方の光学装置からの光とが混ざることを防止し、高精度に座標を検知できる。
【0027】
本発明において、前記再帰反射部の表面を、前記ミラーからの光の入射角が0°になるような傾斜面が並ぶように形成することが好ましい。
【0028】
一般に、再帰反射した光は、入射したときの入射角が大きくなるほど弱くなる(光束が小さくなる)。光検知部に入射する光は強い方がよいので、入射角は0°であることが好ましい。しかしながら、1つの光学装置は、ミラーを回転駆動させて光を偏向させるため、再帰反射部の表面を平坦に形成した場合においては、全ての光の入射角を0°にできない。
【0029】
しかしながら、ミラーを回転駆動させて光を再帰反射部に出射するため、再帰反射部の所定の位置に対しての光の入射角は一意になる。そこで、上記のように傾斜面を並ぶように再帰反射部を形成することで、様々な角度で入射する光に対して入射角が0°にできる。これによって、ミラーの回転駆動によって偏向されて再帰反射した光が弱くなることを低減できる。
【0030】
更に、この場合においては、前記傾斜面の表面を鏡面加工することもできる。これによって、例えば、微小なガラスビーズを混ぜた塗料を塗布された再帰反射性テープを貼るような場合に比べて、再帰反射部を容易に形成できる。
【0031】
本発明において、前記光偏向部の位置を調整可能に構成することで、ミラーの位置を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の座標検知装置の構成を示す図。
【図2】図1の座標検知装置の外枠右上隅部を示す図。
【図3】(a)は外枠の下辺右側部を示す図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(a)のc−c線断面図。
【図4】(a)は本実施形態の再帰反射部の傾斜、(b)は別形態の再帰反射部の傾斜を示す図。
【図5】(a)は光学装置の走査部の構成を示す図、(b)は(a)を下側から見た図。
【図6】図5の走査部に設けられたアライメンタを示す図。
【図7】光学装置の光偏向器の構成を示す図。
【図8】光偏向器の圧電アクチュエータを説明する図。
【図9】(a)は圧電アクチュエータが作動していない状態を示し、(b)は圧電アクチュエータが作動している状態を示す図。
【図10】本実施形態の光学装置の光検知器及び受光部が受光して出力した信号の一例を示す図。
【図11】別形態の圧電アクチュエータに印加される電圧信号、コンパレータの出力信号及び光検知器の出力した信号の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1〜図9を参照して、本発明の実施形態の光学式座標検知装置(以下、「座標検知装置」という)の構成について説明する。本実施形態の座標検知装置1は、平面状の表示領域を有する大型ディスプレイに搭載され、大型ディスプレイの表示領域内のうちユーザーの指等によってタッチされた座標(物体の座標)を検知するように構成される。
【0034】
本実施形態では、大型ディスプレイの表示領域を座標領域Cとしている。ここで、座標領域Cとは、当該領域内の各位置を一意な座標で表現可能な領域のことである。すなわち、座標領域C内の座標が決定すれば、当該領域内の位置が決定される。
【0035】
座標検知装置1は、外枠2と、平面状の表示領域である平面座標領域C内の物体の座標を検知するために、光を出射すると共に受光する左右一対の光学装置3,4とを備える。
【0036】
外枠2は、座標領域Cの周縁上に配置され、図1において上側の上辺21と、下側の下辺22と、右側の右辺23と、左側の左辺24とで構成される。上辺21と下辺22は互いに平行で且つ水平な辺として構成され、右辺23と左辺24は互いに平行で且つ上下辺21,22に垂直な辺として構成される。
【0037】
また、上辺21は、上辺右側部21aと上辺左側部21bとで構成される。同様に、下辺22は、下辺右側部22aと下辺左側部22bとで構成される。なお、本実施形態では、上辺21及び下辺22を、製造及び運搬等の容易性を考慮して右側及び左側の2つの部材から構成しているが、1つの部材で形成してもよい。
【0038】
外枠2は、大画面の枠として必要な剛性を持つ部材であればよく、例えば、熱可塑性樹脂を用いて射出成形等の製法で製造された軽量安価な樹脂枠が好ましい。下辺22,右辺23及び左辺24は、入射した光に平行で且つ入射方向とは反対方向に出射する再帰反射となるような反射特性を持つように表面が加工されている。下辺22,右辺23及び左辺24が、本発明における再帰反射部に相当する。
【0039】
右側の光学装置3は、上辺21と右辺23の交点上、すなわち図1の右上の角の外枠2の周縁上に配置され、左側の光学装置4は、上辺21と左辺24の交点上、すなわち図1の左上の角の外枠2の周縁上に配置される。一対の光学装置3,4は、外枠2の配置する位置に応じて左右対称に同じ構成を有するものであるので、以下の説明では、主に光学装置3について説明し、光学装置4の詳細な説明は省略する。
【0040】
図2に示されるように、光学装置3は、光源31と、走査部32と、光検知部としての光検知器33とを備える。光源31は、狭指向性の光となるように半導体レーザ光を出射するように構成されている。このため、光が進んだ距離による光の減衰は無いものとして扱うことができる。これによって、本実施形態の光学装置3,4は、大型ディスプレイに適した構成となっている。
【0041】
走査部32は、後述する光偏向部としての光偏向器142と、この光偏向器142を駆動するための電圧波形を生成する回路(図示省略)とを備える。走査部32は、光偏向器142が有するミラー144(図7)によって、光源31が出射したレーザ光を様々な角度に偏向して、外枠2で形成された座標領域C内を走査する。
【0042】
光検知器33は、走査部32によって座標領域C内に出射された光が、外枠2の下辺22,右辺23及び左辺24のいずれかに入射し、再帰反射して戻って来た反射光を受光できるように配置される。光検知器33は、受光したエネルギーに応じて電気信号を出す光電変換素子であり、コスト等を考慮するとフォトダイオードが好ましいが、これに限らず、イメージセンサー等を使用しても良い。
【0043】
光源31は、外枠2の上辺21から走査部32のミラー144の中央部に向けてレーザ光を出射できる位置に配置される。本実施形態では、光源31は、半導体レーザの出力にビーム整形用のレンズを装着してレーザ光を出力できるように構成しているがこれに限らない。例えば、任意の位置に配置された光源の光を、光ファイバによって本実施形態の光源31の位置に伝達させて、ミラー144に向けてレーザ光を出射できるように構成したものであってもよい。
【0044】
走査部32は、後述の光偏向器142のミラー144を±22.5°(計45°)以上の角度で回転駆動(振動)することで、座標領域Cの全領域に対して光源31からのレーザ光で走査可能に構成される。このとき、走査部32は、光源31からのレーザ光を偏向した光が、座標領域Cの平面に対して水平に出射されるようにミラー144を回転駆動する。以下、このミラー144に偏向されたレーザ光の光路で形成される平面を「走査平面」という。この走査平面は、本発明において「光学装置から出射した光が再帰反射して当該光学装置に入射するまでの光路がある、座標領域の面に平行な平面」に相当する。
【0045】
詳細には、ミラー144の偏向角が0°の時には、座標領域Cの対角方向に向かってミラー144からレーザ光が出射される。すなわち、光学装置3の場合には、上辺21と右辺23の交点から下辺22と左辺24の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射され、光学装置4の場合には、上辺21と左辺24の交点から下辺22と右辺23の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射される。
【0046】
ミラー144の偏向角が22.5°の時には、座標領域Cの垂直方向に向かってミラー144からレーザ光が出射される。すなわち、光学装置3の場合には、上辺21と右辺23の交点から下辺22と右辺23の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射され、光学装置4の場合には、上辺21と左辺24の交点から下辺22と左辺24の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射される。
【0047】
ミラー144の偏向角が−22.5°の時には、座標領域Cの水平方向に向かってミラー144からレーザ光が出射される。すなわち、光学装置3の場合には、上辺21と右辺23の交点から上辺21と左辺24の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射され、光学装置4の場合には、上辺21と左辺24の交点から上辺21と右辺23の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射される。
【0048】
ミラー144の偏向角が0°〜22.5°の間の時には、下辺22の偏向角に応じた位置に向かって光学装置3,4のミラー144からレーザ光が出射される。ミラー144の偏向角が0°〜−22.5°の間の時には、対向する垂直な辺に向かって光学装置3,4のミラー144からレーザ光が出射される。
【0049】
次に、図3及び図4を参照して、外枠2の下辺22,右辺23及び左辺24の再帰反射となるように加工された表面の詳細について説明する。
【0050】
下辺22,右辺23及び左辺24は、入射角が0°の光を、反射角が0°で最大光度となり所定の半値角の広がりを持つ光として反射する反射特性を持つ。これによって、例えば座標領域Cの大きさ、例えば、座標領域Cの対角線の長さが50インチ程度とすると、光学装置3,4から出射した光が再び光学装置3,4に戻ってきた時点で、30〜40mmφ程度のビーム幅を持つことになる。従って、この場合には、光学装置3,4の光検知器33は、ミラー144から30〜40mm以内の場所に配置されれば、再起反射した光を受光できる。
【0051】
本実施形態では、光検知器33を外枠2の右上(上辺21と右辺23の交点)及び左上(上辺21と左辺24の交点)の座標領域C側の側壁に配置している。このとき、光学装置3,4のミラー144と光検知器33は、座標領域Cの平面に垂直な方向に30〜40mm程度ずらした位置に配置される。
【0052】
下辺22,右辺23及び左辺24を、反射光にある程度の広がりを持たない反射光を返す反射特性の部材で構成した場合においては、出射光と反射光とが同一光路を通る。このため、光を出射するミラー144と光を受光する光検知器23とが互いに干渉しないように、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設ける必要がある。
【0053】
しかしながら、本実施形態のように、反射光にある程度の広がりを持つ反射光を返す反射特性の部材で下辺22,右辺23及び左辺24を構成した場合においては、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設けることなく、光を出射するミラー144と光を受光する光検知器23とを配置できる。
【0054】
このように、光学装置3,4のミラー144から光検知器33までの距離を、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24の反射特性と、座標領域Cの大きさとに応じて決定することで、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設けることなく、ミラー144と光検知器33とを互いに干渉しないように配置できる。
【0055】
図3(a)は、下辺22の下辺右側部22aを上辺21側から見たとき、すなわち、図1の上側から下方向に向かって見たときの図を示す。なお、図3(a)の左右の方向は、図1と同じである。すなわち、図3(a)の左端は下辺左側部22bと接続され、図3(a)の右端は右辺23と接続される。
【0056】
一対の光学装置3,4の各ミラー144から出射する光が互いに影響を与えないようにするため、互いの走査平面が同一平面にならないように構成している。これは、本発明において、一方の光学装置からの光の光路がある平面と他方の光学装置からの光の光路がある平面とが異なる平面上になるように構成されることに相当する。
【0057】
このため、図3(a)に示されるように、下辺右側部22aは、光学装置3から出射された光を再帰反射するための再帰反射部である第1下辺右側部22a1と、光学装置4から出射された光を再帰反射するための再帰反射部である第2下辺右側部22a2とで構成される。
【0058】
下辺右側部22aがこのように構成されることで、光学装置3と光学装置4の走査平面が同一平面にならないようにでき、且つそれぞれの光学装置3,4から出射された光を互いに干渉せずに再帰反射することができる。
【0059】
また、下辺左側部22bは、下辺右側部22aと同様に、光学装置3から出射された光を再帰反射するための再帰反射部として第1下辺左側部と、光学装置4から出射された光を再帰反射するための再帰反射部として第2下辺左側部とで構成されている(図示省略)。
【0060】
また、右辺23は、光学装置4から出射された光を再帰反射すればよく、光学装置3から出射された光を再帰反射する必要はない。このため、右辺23は、下辺22のように2つの再帰反射部は設けられず、1つの再帰反射部のみが設けられる。同様に、左辺24は、光学装置3から出射された光を再帰反射すればよく、光学装置4から出射された光を再帰反射する必要はない。このため、左辺24は、下辺22のように2つの再帰反射部は設けられず、1つの再帰反射部のみが設けられる。
【0061】
第1下辺右側部22a1、第1下辺左側部、及び左辺24は、光学装置3からの光を再帰反射できるように光学装置3の走査平面上に配置される。また、第1下辺右側部22a1及び第1下辺左側部は、光学装置4の走査平面上を避けて配置される。同様に、第2下辺右側部22a2、第2下辺左側部、及び右辺23は、光学装置4からの光を再帰反射できるように光学装置4の走査平面上に配置される。また、第2下辺右側部22a2及び第2下辺左側部は、光学装置3の走査平面上を避けて配置される。
【0062】
また、図4(a)に示されるように、下辺22,右辺23及び左辺24の表面は、入射する光に対して反射する面が可能な限り0°になるような傾斜面I1,I2,I3が細かく並ぶように形成されている。この傾斜面I1,I2,I3は、所定の深さhとなるように形成されている。なお、所定の深さhは、各傾斜毎に可変であってもよい。
【0063】
例えば、第1下辺右側部22a1は、光学装置3から出射された光を再帰反射するための再帰反射部であるので、右辺23側に近付くに従って光学装置3から出射された光の入射角が下辺22の面に垂直(0°)に近付く。このため、第1下辺右側部22a1は、下辺22に水平な面に対して緩やかな角度の傾斜が形成される。このとき、第1下辺右側部22a1の傾斜の角度は、右辺23に近付くに従って緩やかになる。
【0064】
また、第2下辺右側部22a2は、光学装置4から出射された光を再帰反射するための再帰反射部であるので、右辺23側に近付くに従って光学装置3から出射された光の入射角が下辺22の面に水平(90°)に近付く。このため、第2下辺右側部22a2は、下辺22に水平な面に対して急な角度の傾斜が形成される。このとき、第2下辺右側部22a2の傾斜の角度は、右辺23に近付くに従って急になる。
【0065】
同様に、下辺左側部22bの第1下辺左側部は、光学装置3から出射された光を再帰反射するための再帰反射部であるので、左辺24側に近付くに従って光学装置3から出射された光の入射角が下辺22の面に水平(90°)に近付く。このため、下辺左側部22bの第1下辺左側部は、下辺22に水平な面に対して急な角度の傾斜が形成される。このとき、下辺左側部22bの第1下辺左側部の傾斜の角度は、左辺24に近付くに従って急になる。
【0066】
また、下辺左側部22bの第2下辺左側部は、光学装置4から出射された光を再帰反射するための再帰反射部であるので、左辺24側に近付くに従って光学装置3から出射された光の入射角が下辺22の面に垂直(0°)に近付く。このため、下辺左側部22bの第2下辺左側部は、下辺22に水平な面に対して緩やかな角度の傾斜が形成される。このとき、下辺左側部22bの第2下辺左側部の傾斜の角度は、左辺24に近付くに従って緩やかになる。
【0067】
このように、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24は、傾斜面I1,I2,I3が細かく並ぶように形成されており、この傾斜面は、入射角が0°になるように徐々に角度が変化するように形成される。このため、下辺22,右辺23及び左辺24は、光学装置3から出射された光に対して、この光の入射方向と同じ方向に反射光を出射することができる。すなわち、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24は、入射光を再帰反射できる。
【0068】
なお、下辺22,右辺23及び左辺24の表面は、図4(a)に示されるように各傾斜面I1,I2,I3の表面を平面で形成するのではなく、図4(b)に示されるように各傾斜面I1’,I2’,I3’の表面を光の入射角が可能な限り0°になるような曲面で形成してもよい。この場合には、傾斜面を平面で構成するものに比べて、光の入射角をより垂直(0°)に近い角度にできる。
【0069】
ここで、「可能な限り0°になるような傾斜」とは、入射角によっては、0°にならない場合も含んでおり、反射するときに、入射した光を出射した光学装置3,4に対して出射可能な程度の角度であればよい。
【0070】
本実施形態では、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24の表面を、図4(a)に示されるような傾斜面I1,I2,I3を細かく並ぶように形成しているので、傾斜面を鏡面反射するように鏡面加工している。鏡面加工は、射出成形や板金加工などで作成したフレームに、AlやAg合金等の高反射金属薄膜を成膜する。この場合には、微小なガラスビーズを混ぜた塗料が塗布された再帰反射性テープを貼るような場合に比べて、再帰反射部を容易に形成できる。
【0071】
図5は、一対の光学装置3,4の走査部32の構成を示す。
【0072】
走査部32は、光偏向器142の位置を、上下方向U−D、左右方向L−R、及び前後方向F−Bに調整可能に構成される。更に、走査部32は、光偏向器142のミラー144を回転可能に構成される。ここで、上下方向U−D及び左右方向L−Rは、それぞれ、図5(a)に矢印で示される方向であり、前後方向F−Bとは図5(b)に矢印で示される方向である。
【0073】
図5(a)に示されるように、走査部32は、上下方向U−Dに移動可能な上下ステーテージS1と、左右方向L−Rに移動可能な左右ステージS2と、回転可能な回転ステージS3との3つのステージを備える。
【0074】
光偏向器142は、上下ステージS1に装着されている。また、上下ステージS1は、左右ステージS2の前面(図5(b)の上側)に装着されている。更に、左右ステージS2は、回転ステージS3の前面(図5(b)の上側)に装着されている。また、回転ステージS3は、前後方向F−Bに位置を調整可能な前後調整アングルによって、外枠2に装着される。詳細には、右側の光学装置3では上辺21と右辺23の交点付近に装着され、左側の光学装置4では上辺21と左辺24の交点付近に装着される。
【0075】
上下ステージS1は、略H字型に形成されており、H字の左右脚部S1aに位置調整用の長孔H1が設けられている。上下ステージS1は、上下アライメンタA1によって図5(a)の上下方向U−Dの位置を調整した後、左右ステージS2に長孔H1を介してネジN1によってねじ留めされる。上下ステージS1は、左右ステージS2に対して上下方向U−Dに移動可能となっている。
【0076】
また、左右ステージS2は、上下の辺に、それぞれ左右方向L−Rに長い長孔H2が設けられている。左右ステージS2は、左右アライメンタA2によって図5(b)の左右方向L−Rの位置を調整した後、回転ステージS3に長孔H2を介してネジN2によってねじ留めされる。左右ステージS2は、回転ステージS3に対して左右方向L−Rに移動可能となっている。
【0077】
また、左右ステージS2は、回転軸ねじ(図示省略)を回転軸として回転可能に回転ステージS3に支持される。更に、左右ステージS2は、左右の辺から突出した支持部S2aを有する。これによって、左右ステージS2は、回転方向RTに回転可能となる。
【0078】
上記の左右ステージS2は上下アライメンタA1が固定され、回転ステージS3は左右アライメンタA2及び回転アライメンタA3が固定される。
【0079】
図6は、上下アライメンタA1を示す。上下アライメンタA1は、ステーA1aと、位置調整用ねじA1bと、固定用ねじA1cとを備える。
【0080】
ステーA1aは、位置調整用ねじA1b及び固定用ねじA1cが螺挿されるねじ孔(図示省略)が設けられる。ステーA1aは、固定用ねじA1cによって、左右ステージS2に固定される。位置調整用ねじA1bを閉める方向に回転すると、ステーA1aは固定されているので、位置調整用ねじA1bが図6の上方向に移動する。位置調整用ねじA1bを開ける方向に回転すると、ステーA1aは固定されているので、位置調整用ねじA1bが図6の下方向に移動する。
【0081】
位置調整用ねじA1bは、図5(a)に示されるように4つ設けられている。4つの位置調整用ねじA1bのねじ先(図6の上側の先端)は、それぞれが上下ステージS1の左右脚部S1aを上方向又は下方向に押圧可能に当接している。このとき、4つのうち2つの位置調整用ねじA1bと、残りの2つの位置調整用ねじA1bとで上下ステージS1の左右脚部S1aを対向するように挟持している。詳細には、上下ステージS1の左右脚部S1aの上側に2つの位置調整用ねじA1bが配置され、上下ステージS1の左右脚部S1aの下側に残り2つの位置調整用ねじA1bが配置される。
【0082】
このため、上下ステージS1を下方向に移動する場合には、図5(a)の上側の2つの位置調整用ねじA1bを閉める方向に回転すると共に、図5(a)の下側の2つの位置調整用ねじA1bを開ける方向に回転する。また、上下ステージS1を上方向に移動する場合には、図5(a)の上側の2つの位置調整用ねじA1bを開ける方向に回転すると共に、図5(a)の下側の2つの位置調整用ねじA1bを閉める方向に回転する。このように4つの位置調整用ねじA1bを同時に回転させることで、上下ステージS1を上下方向U−Dに位置調整できる。
【0083】
左右アライメンタA2は、上下アライメンタA1と同様に、ステーA2aと、位置調整用ねじA2bと、固定用ねじA2cとを備える(図示省略)。
【0084】
左右アライメンタA2は、固定用ねじA2cによって、回転ステージS3に固定される。左右アライメンタA2は、図5(a)に示されるように4つ設けられており、4つのうち2つの位置調整用ねじA2bと、残りの2つの位置調整用ねじA2bとで左右ステージS2を対向するように挟持している。左右アライメンタA2のねじ先は、左右ステージS2を左方向又は右方向に押圧可能に当接している。
【0085】
このため、左右ステージS2を左方向に移動する場合には、図5(a)の右側の2つの位置調整用ねじA2bを閉める方向に回転すると共に、図5(a)の左側の2つの位置調整用ねじA2bを開ける方向に回転する。また、左右ステージS2を右方向に移動する場合には、図5(a)の右側の2つの位置調整用ねじA2bを開ける方向に回転すると共に、図5(a)の左側の2つの位置調整用ねじA2bを閉める方向に回転する。このように4つの位置調整用ねじA2bを同時に回転させることで、左右ステージS2を左右方向L−Rに位置調整できる。
【0086】
回転アライメンタA3は、上下アライメンタA1及び左右アライメンタA2と同様に、ステーA3aと、位置調整用ねじA3bと、固定用ねじA3cとを備える(図示省略)。
【0087】
回転アライメンタA3は、固定用ねじA3cによって、回転ステージS3に固定される。回転アライメンタA3は、図5(a)に示されるように2つ設けられており、一方の回転アライメンタA3の位置調整用ねじA3bのねじ先は、左右ステージS2の図5(a)の右側の支持部S2aに当接し、他方の回転アライメンタA3の位置調整用ねじA3bのねじ先は、左右ステージS2の図5(a)の左側の支持部S2aに当接している。
【0088】
このため、左右ステージS2を図5(a)の時計回りに回転する場合には、図5(a)の右側の位置調整用ねじA3bを閉める方向に回転すると共に、図5(a)の左側の位置調整用ねじA3bを開ける方向に回転する。また、左右ステージS2を図5(a)の反時計回りに回転する場合には、図5(a)の右側の位置調整用ねじA3bを開ける方向に回転すると共に、図5(a)の左側の位置調整用ねじA3bを閉める方向に回転する。このように2つの位置調整用ねじA3bを同時に回転させることで、左右ステージS2を回転方向RTに位置調整できる。
【0089】
このように、ミラー144は、各ステージS1,S2,S3、各アライメンタA1,A2,A3及び前後調整アングルによって、上下方向U−D、左右方向L−R、回転方向RT及び前後方向F−Bに、位置を調整できる。これによって、ミラー144による走査平面を調整することができる。このような構成は、本発明において、光偏向部の位置を調整可能な構造に相当する。
【0090】
次に、図7〜図9を参照して、光偏向器142の詳細について説明する。図7に示すように、光偏向器142は、入射された光を反射するミラー144と、ミラー144を駆動する1対の圧電アクチュエータ145,146と、1対の圧電アクチュエータ145,146を支持する台座153とを備えている。
【0091】
ミラー144は矩形形状で、その両側が、ミラー144を挟んで対向した1対の圧電アクチュエータ145,146の先端部145a1,146a1にそれぞれ連結されている。また、これらの1対の圧電アクチュエータ145,146は、その基端部145d1,146d1が台座153により支持されている。
【0092】
ミラー144は、ミラー支持体143と、ミラー支持体143上に形成されたミラー面反射膜とを備えている。なお、ミラー面反射膜は、ミラー支持体143上の金属薄膜(本実施形態では1層の金属薄膜)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工して形成されている。金属薄膜の材料としては、例えば金、白金、アルミニウム(Al)等が用いられる。金属薄膜の厚みは、例えば100〜500nm程度とする。金属薄膜は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。
【0093】
また、ミラー支持体143は、シリコン基板から形成され、後述の圧電アクチュエータ145,146の支持体147,148と一体的に形成されている。これにより、ミラー144は、圧電アクチュエータ145,146と機械的に連結され、圧電アクチュエータ145,146の駆動に応じて回転する。
【0094】
1対の圧電アクチュエータ145,146は、それぞれ、4つの圧電カンチレバー145A〜145D,146A〜146Dを備えている。また、1対の圧電アクチュエータ145,146は、それぞれ、4つの圧電カンチレバー145A〜145D,146A〜146Dの支持体として一体的に形成された支持体147,148を備えている。
【0095】
更に、これらの支持体147,148は、シリコン基板を形状加工することにより1枚の支持体149として一体的に形成されている。この支持体149は、その基端部149Eが台座153上に保持され、基端部149Eの一辺の一方の端から伸びた部分が、一方の圧電アクチュエータ145の支持体147を構成し、他方の端から延びた部分が、他方の圧電アクチュエータ146の支持体148を構成する。
【0096】
なお、台座153もシリコン基板から形成され、シリコン基板を形状加工することによりミラー支持体143、支持体149と一体的に形成されている。シリコン基板を形状加工する手法としては、フォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術等を利用した半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスが用いられる。また、ミラー144と台座153との間には空隙が設けられ、ミラー144が所定角度まで回転可能となっている。本実施形態では、ミラー144は、45°以上の角度(例えば、50°)まで回転駆動させることを可能にしている。
【0097】
また、光偏向器142は、1対の圧電アクチュエータ145,146にそれぞれ駆動電圧を印加するための2つの電極セット151,152を、支持体149の基端部149E上に備えている。一方の電極セット151には、一方の圧電アクチュエータ145に駆動電圧を印加するための第1上部電極151aと第2上部電極151bと共通下部電極151cとの3つの電極パッドが備えられている。また、他方の電極セット152には、他方の圧電アクチュエータ146に駆動電圧を印加するための第1上部電極152a、第2上部電極152b、共通下部電極152cの3つの電極パッドが備えられている。
【0098】
一方の圧電アクチュエータ145の電極セット151は、先端部側から奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cに駆動電圧を印加するための第1上部電極151aと、偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dに駆動電圧を印加するための第2上部電極151bと、これらの第1,第2上部電極151a,151bの共通の下部電極として用いられる共通下部電極151cとを備えている。
【0099】
同様に、他方の圧電アクチュエータ146の電極セット152は、先端部側から奇数番目の圧電カンチレバー146A,146Cに駆動電圧を印加するための第1上部電極152aと、偶数番目の圧電カンチレバー146B,146Dに駆動電圧を印加するための第2上部電極152bと、これらの第1,第2上部電極152a,152bの共通の下部電極として用いられる共通下部電極152cとを備えている。これらの電極セット151,152の各電極151a〜151c,152a〜152cは、それぞれ、支持体149の基端部149E上にパッド状に形成されている。
【0100】
次に、一方の圧電アクチュエータ145の構成の詳細について説明する。なお、他方の圧電アクチュエータ146の構成は、一方の圧電アクチュエータ145の構成と同じであるため説明を省略する。圧電カンチレバー145A〜145Dは、その長さ方向が同じになるように、各圧電カンチレバー145A〜145Dの両端部a0〜d0,a1〜d1が隣り合うように並んで配置されている。そして、圧電カンチレバー145Aの端部a0と圧電カンチレバー145Bの端部b0との隣り合う部分が連結され、圧電カンチレバー145Bの端部b1と圧電カンチレバー145Cの端部c1との隣り合う部分が連結され、圧電カンチレバー145Cの端部c0と圧電カンチレバー145Dの端部d0との隣り合う部分が連結されている。これにより、圧電カンチレバー145A〜145Dは折り返すように連結される。
【0101】
圧電カンチレバー145A〜145Dは、それぞれ、支持体161A〜161Dと、下部電極162A〜162Dと、圧電体163A〜163Dと、上部電極164A〜164Dとを備えている。第1上部電極151aは、第1上部電極配線165Dを介して上部電極164Cに接続され、更に、第1上部電極配線165Bを介して上部電極164Aに接続されている。また、第2上部電極151bは、上部電極164Dに接続され、更に、第2上部電極配線166Cを介して上部電極164Bと接続されている。また、共通下部電極151cは、下部電極162A〜162Dと接続されている。
【0102】
そして、第1上部電極151aと共通下部電極151cとの間に電圧を印加することで、上部電極164A,164Cと下部電極162A,162Cとの間にそれぞれ電圧が印加され、圧電アクチュエータ145の先端部側から奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cが駆動される。同様に、第2上部電極151bと共通下部電極151cとの間に電圧を印加することで、上部電極164B,164Dと下部電極162B,162Dとの間にそれぞれ電圧が印加され、圧電アクチュエータ145の先端部側から偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dが駆動される。
【0103】
支持体161A〜161Dは板状の部材で、シリコン基板を形状加工することにより支持体149として一体的に形成されている。支持体149は、その端部149Eが台座153に保持されており、端部149Eから延びた部分が支持体161Dを構成し、支持体161Dから折り返した部分が支持体161Cを構成し、支持体161Cから折り返した部分が支持体161Bを構成し、支持体161Bから折り返した部分が支持体161Aを構成する。これにより、圧電カンチレバー145A〜145Dが機械的に連結されたものとなる。
【0104】
共通下部電極151cと下部電極162A〜162Dとは、支持体149と支持体161A〜161D上に成膜された金属薄膜(下部電極層)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。共通下部電極151cは、支持体149の端部149E上にパッド状に形成され、下部電極162Dと導通している。この下部電極162Dは、支持体161D上のほぼ全面に形成され、下部電極162Cと導通している。この下部電極162Cは、支持体161C上のほぼ全面に形成され、下部電極162Bと導通している。この下部電極162Bは、支持体161B上のほぼ全面に形成され、下部電極162Aと導通している。この下部電極162Aは、支持体161A上のほぼ全面に形成されている。
【0105】
圧電体163A〜163Dは、下部電極層上の1層の圧電膜(圧電体層)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより、それぞれ、下部電極162A〜162D上に互いに分離して形成されている。
【0106】
第1,第2上部電極151a,151bと、第1,第2上部電極配線165B,165D,166Cと、上部電極164A〜164Dとは、圧電体層上の上部電極層を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。
【0107】
第1上部電極151aは、支持体149の端部149E上にパッド状に形成され、第1上部電極配線165Dと導通している。第1上部電極配線165Dは、支持体161D上に線状に形成され、上部電極164Cと導通している。上部電極164Cは、支持体161C上のほぼ全面に形成され、第1上部電極配線165Bと導通している。第1上部電極配線165Bは、支持体161B上に線状に形成され、上部電極164Aと導通している。上部電極164Aは、支持体161A上のほぼ全面に形成されている。
【0108】
同様に、第2上部電極151bは、支持体149の端部149E上にパッド状に形成され、上部電極164Dと導通している。上部電極164Dは、支持体161D上のほぼ全面に形成され、第2上部電極配線166Cと導通している。第2上部電極配線166Cは、支持体161C上に線状に形成され、上部電極164Bと導通している。上部電極164Bは、支持体161B上のほぼ全面に形成されている。
【0109】
なお、第1,第2上部電極151a,151bは、支持体149の端部149E上で、その下層の圧電体層及び下部電極層と共に形状加工されて、互いに分離して設けられていると共に、共通下部電極151cと分離して設けられている。
【0110】
このとき、支持体161D上で、第1上部電極配線165D及びその下層の圧電体が、上部電極164D及び圧電体163Dと分離して設けられている。これにより、第1上部電極配線165Dは、上部電極164Dと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極162Dとの間で絶縁されている。
【0111】
同様に、支持体161C上で、第2上部電極配線166C及びその下層の圧電体が、上部電極164C及び圧電体163Cと分離して設けられている。これにより、第2上部電極配線166Cは、上部電極164Cと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極162Cとの間で絶縁されている。
【0112】
同様に、支持体161B上で、第1上部電極配線165B及びその下層の圧電体が、上部電極164B及び圧電体163Bと分離して設けられている。これにより、第1上部電極配線165Bは、上部電極164Bと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極162Bとの間で絶縁されている。
【0113】
このように、第1,第2上部電極151a,151bは、平面的に互いに分離されると共に、共通下部電極151cとの間で層間絶縁されている。従って、第1,第2上部電極151a,151bにより、奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cと、偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dとに独立に駆動電圧を印加することができる。
【0114】
次に、本実施形態の光偏向器142の作動について説明する。まず、一方の圧電アクチュエータ145の第1上部電極151aと共通下部電極151cとの間に、所定の第1電圧を印加して奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cを駆動させると共に、第2上部電極151bと共通下部電極151cとの間に、第1電圧と逆極性の所定の第2電圧を印加して偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dを駆動させる。
【0115】
このとき、第1,第2電圧とは、奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cと偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dとの角度変位が逆方向に発生するように印加する。例えば、圧電アクチュエータ145の先端部を上方向に変位させる場合には、奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cを上方向に変位させ、偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dを下方向に変位させる。一方の圧電アクチュエータ145の先端部を下方向に変位させるには、その逆にする。これにより、一方の圧電アクチュエータ145の基端部145d1を支点として、一方の圧電アクチュエータ145の先端部145a1で角度変位が発生する。
【0116】
図9(b)は、このときの圧電アクチュエータ145の駆動状態を模式的に示した図である。この図では、圧電アクチュエータ145の先端部を上方向に変位させる場合が例示されている。圧電カンチレバー145Dは、台座153と連結した端部d1を支点として、その端部d0に下方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー145Cは、圧電カンチレバー145Dの端部d0と連結した端部c0を支点として、その端部c1に上方向の角度変位が発生している。
【0117】
また、圧電カンチレバー145Bは、圧電カンチレバー145Cの端部c1と連結した端部b1を支点として、その端部b0に下方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー145Aは、圧電カンチレバー145Bの端部b0と連結した端部a0を支点として、その端部a1に上方向の角度変位が発生している。このように4つの圧電カンチレバー145A〜145Dを屈曲変形させることで、その先端部a1では、各圧電カンチレバー145A〜145Dの屈曲変形の大きさが加算された大きな出力が得られる。
【0118】
この一方の圧電アクチュエータ145への第1電圧と第2電圧の印加と共に、他方の圧電アクチュエータ146の第1上部電極152aと共通下部電極152cとの間に、第1電圧を印加すると共に、第2上部電極152bと共通下部電極152cとの間に、第2電圧を印加する。これにより、一方の圧電アクチュエータ145と同様に、他方の圧電アクチュエータ146の基端部146d1を支点として、他方の圧電アクチュエータ146の先端部146a1で角度変位が発生する。
【0119】
このとき、1対の圧電アクチュエータ145,146は対向して設けられているので、それぞれで発生する角度変位の中心軸線は同軸である。また、1対の圧電アクチュエータ145,146は、同じ大きさの角度変位が発生するように駆動される。このミラー144の両側で発生した角度変位に応じて、ミラー144が、図7で第1の軸x1回りで矢印で示した方向に回転して、レーザ光等の光ビームを偏向する。第1の軸x1は、1対の圧電アクチュエータ145,146の中心軸線と同軸である。
【0120】
ここで、図9は、本実施形態の光偏向器142の駆動状態を模式的に示した図である。図9(a)は1対の圧電アクチュエータ145,146に電圧を印加していない状態を示し、図9(b)は電圧を印加している状態を示す。図9(a),(b)には、圧電アクチュエータ145が示されている。
【0121】
図9(b)に示したように、圧電アクチュエータ145に電圧を印加して、ミラー144側から奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cを上方向に屈曲変形させると共に、偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dを下方向に屈曲変形させる。これにより、圧電アクチュエータ145では、各圧電カンチレバー145A〜145Dの屈曲変形の大きさを加算した大きさの角度変位が発生する。同様に、対向した圧電アクチュエータ146でも角度変位が発生する。これらの角度変位により、ミラー144が、図9(b)の矢印で示したように回転する。
【0122】
本実施形態によれば、小型で大きな出力を得ることができる1対の圧電アクチュエータ145,146をミラー144を挟んで対向するように配置し、各圧電アクチュエータ145,146を駆動することによりミラー144を回転させるので、小型の光偏向器で大きな偏向角を容易に得ることができる。
【0123】
本実施形態の光偏向器142は、このような圧電アクチュエータを用いたMEMSデバイスによって構成されているので、大きな(例えば、50°以上)偏向角が得られるように構成した場合であっても、ミラー144を回転させるためにモータを使用するものに比べて光偏向器142、延いては光学装置3,4を小型に構成できる。これによって、本発明の座標検知装置1を搭載した大型ディスプレイは、省スペース等の要求に対応することが容易である。
【0124】
本実施形態では、第1及び第2の電圧は、所定の周波数の交流波形とし、これらの電圧を光偏向器142に印加することでミラー144を周期的に回転駆動できる。このとき、所定の周波数を、1対の圧電アクチュエータ145,146等の光偏向器142を構成する部材の構造によって決定される光偏向器142の可動部の共振周波数にすることで大きな偏向角を得ることができる。
【0125】
本実施形態では、第1及び第2の電圧を光偏向器142の可動部の共振周波数となるように、ミラー144を、22.5°より大きい偏向角(例えば、24°〜25°)まで回転駆動させる。これによって、レーザ光は、座標領域Cの外に向かって出射される。すなわち、光学装置3の場合には右辺23より右に向かってレーザ光を出射し、光学装置4の場合には左辺24の左に向かってレーザ光を出射する。
【0126】
また、右辺23にはその中央付近に受光部23aが設けられており、左辺24にはその中央付近に受光部24aが設けられている。これらの受光部23a,24aは、フォトダイオードで構成されており、ミラー144からのレーザ光を受光すると電気信号を出力する。これによって、光学装置3,4のミラー144の偏向角が22.5°になったときに、受光部23a,24aが受光する。
【0127】
詳細には、ミラー144の偏向角が0°から22.5°に向かって回転駆動し、偏向角が22.5°になったときに受光し、その後、偏向角が25°になって逆方向に折り返して−22.5°に向かって回転駆動する途中、偏向角が22.5°になったときに再び受光する。すなわち、ミラー144の1回の回転駆動、例えば偏向角が0°から22.5°まで回転駆動した後、逆方向の−22.5°まで回転駆動して0°になるまでの間に、受光部23a,24aは2回受光する。
【0128】
図10は、受光部23a,24a及び光検知器33が受光して出力した信号の一例を示す図である。図10の(a)は、受光部23a,24aが受光したことによって出力した信号を示し、(b)は、光検知器33が受光したことによって出力した信号を示す。時刻t11a,時刻t11b,時刻t12a及び時刻t12bは、受光部23a,24aが受光した時刻を示し、時刻t11c,時刻t11d,時刻t12c及び時刻t12dは、光検知器33が座標領域C内の物体に遮られて受光できなかった時刻、又は受光した光が弱くなった(受光量が変化した)時刻を示す。
【0129】
時刻t11aと時刻t11bの間に、時刻t11cと時刻t11dがあることより、時刻t11aは、ミラー144が22.5°より大きい偏向角から22.5°の偏向角になった時刻、すなわち、座標領域C外に向かって光が照射されていた状態から座標領域C内に向かって光が照射される状態になった時刻を示し、を示し、時刻t11bは、ミラー144が22.5°の偏向角から22.5°より大きい偏向角になった時刻、すなわち、座標領域C内に向かって光が照射されていた状態から座標領域C外に向かって光が照射された状態になった時刻を示すことが分かる。
【0130】
従って、光検知器33が受光したとき(例えば、時刻t11c)には、時刻t11aから経過した時間t1と、光偏向器142に印加した電圧の周波数とから、上辺21と、ミラー144上の反射中心と物体とを結ぶ線との角度を一意に決定できる。
【0131】
このように角度を決定することが、本発明において、受光部が受光したときから光検知器が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、ミラーの回転角を決定することに相当する。
【0132】
このように、座標検知装置1は、受光部23aによって、座標領域C内の物体と光学装置3のミラー144上の反射中心とを結ぶ線と、上辺21との角度を決定できる。同様に、座標検知装置1は、受光部24aによって、座標領域C内の物体と光学装置4のミラー144とを結ぶ線と、上辺21との角度を決定できる。
【0133】
上辺21の長さは予め規定されているので、上辺21の両端の角度が決定されることで、座標検知装置1は、三角測量法によって座標領域C内の物体の座標P(x,y)を検知できる。
【0134】
なお、本実施形態では、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24を、図4(a)に示されるように傾斜を並べるように形成しているがこれに限らない。上述したように、図4(b)に示されるように傾斜を平面ではなく、どの方向から入射しても入射角が垂直になるような曲面で形成してもよい。
【0135】
また、図4(a),(b)に示されるような傾斜を並べるように形成せずに、表面に微小なガラスビーズを混ぜた塗料を塗布された再帰反射性テープを貼ることで、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24に再帰反射性を持たせてもよい。
【0136】
また、本実施形態では、座標領域C内の物体と光学装置3,4のミラー144とを結ぶ線と、上辺21との角度を決定するために受光部23a,24aを設けているが、これに限らない。例えば、ミラー144を回転駆動するために光偏向器142に印加される電圧信号を、基準電圧値Vrefを超えたか否かで出力を切り替えるコンパレータを用いてもよい。
【0137】
図11は、コンパレータを用いた場合の例を示す。図11の(a)は光偏向器142に印加される電圧信号を示し、(b)はコンパレータが出力した信号を示し、(c)は光検知器33が受光したことによって出力した信号を示す。時刻t21a及び時刻t22aは、光偏向器142への印加電圧が基準電圧値Vrefを上回った時刻を示し、時刻t21b及び時刻t22bは、光偏向器142への印加電圧が基準電圧値Vrefを下回った時刻を示す。
【0138】
すなわち、時刻t21a〜時刻t21b及び時刻t22a〜時刻t22bでは、コンパレータの出力がHigh(0より大きい値。例えば5[V])になる。一方、時刻t21a〜時刻t21b及び時刻t22a〜時刻t22b以外の時刻では、コンパレータの出力がLow(例えば、0[V])になる。
【0139】
また、時刻t21c,時刻t21d,時刻t22c及び時刻t22dは、光検知器33が座標領域C内の物体に遮られて受光できなかった時刻、又は受光した光が弱くなった(受光量が変化した)時刻を示す。
【0140】
このように、光検知器33が受光したとき(例えば、時刻t21c)には、コンパレータの出力がLowからHighに切り替わった時刻(例えば、時刻t21a)から経過した時間t2と、ミラー144に印加した電圧の周波数とから、上辺21と、ミラー144と物体とを結ぶ線との角度を一意に決定できる。
【0141】
このように角度を決定することが、本発明において、駆動電圧が所定の電圧値を上回ったとき、又は駆動電圧が所定の電圧値を下回ったときから光検知器が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、ミラーの回転角を決定することに相当する。
【0142】
更に、コンパレータを用いた場合には、ミラー144の偏向角を45°よりも大きな角度にする必要はなく、0°〜45°の偏向角となるように回転駆動できればよい。これによって、最大の偏向角を小さくできるので、大きな偏向角が必要なものに比べて、ミラー144をより効率よく回転駆動させることができる。
【0143】
また、基準電圧値Vrefは、コンパレータがHighとLowとを出力可能な値であればよい。
【0144】
また、本実施形態の座標検知装置1は、大型ディスプレイに搭載されているがこれに限らない。ホワイトボードや電子看板等のように平面状の領域を有するものに搭載する場合であってもこの領域内の座標を取得できる。更に、所定の領域内にいる人や物体等を検知できるエリアセンサとして使用することもできる。
【符号の説明】
【0145】
C…座標領域、1…座標検知装置、2…外枠、21…上辺、22…下辺(再帰反射部)、23…右辺(再帰反射部)、24…左辺(再帰反射部)、23a,24a…受光部、3,4…光学装置、31…光源、32…走査部、33…光検知器(光検知部)、I1〜I3,I1’〜I3’…傾斜面、142…光偏向器(光偏向部)、144…ミラー、145…圧電アクチュエータ、146…圧電アクチュエータ、145A〜145D…圧電カンチレバー、151,152…電極セット(複数の電極)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式座標検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物体の位置を決定する長方形状の目標区域を内部に有するハウジングと、一対の光分配検出アセンブリとを備える光学的位置決め装置が知られている(特許文献1)。ハウジングは、再帰反射性の材料からなる反射器アセンブリを有する。ここで、再帰反射とは、入射した光に平行で且つ入射方向と反対の方向に出射する反射のことである。
【0003】
光分配検出アセンブリは、光源と、ビーム分割器と、光を偏向する鏡と、光検出器と、鏡を回転させるモータとを有する。光源からの光は、ビーム分割器を通過した後、鏡によって偏向されて目標区域に出射される。
【0004】
目標区域に出射された光は、ハウジングの反射器アセンブリによって反射されることで、入射時と同じ経路を入射方向とは反対方向に戻る。そして、戻ってきた光は、鏡によって偏向され、光源からの光がビーム分割器を通過したときとは反対方向に、ビーム分割器に入射する。ビーム分割器は、この方向で入射した光を90度の角度で偏向して光検出器に向かって出射する。このようにして、光検出器は、光源から出射された後、反射器アセンブリによって反射された光を検出している。
【0005】
光源から出射された光が、反射器アセンブリに到達する前に物体に遮られた場合には、物体に遮られていない場合に比べて光検出器が検出する光のレベルが変化する。光分配検出アセンブリは、この検出した光のレベルによって、物体の有無を検知できる。
【0006】
また、モータは、鏡を回転することで90度の範囲にわたって目標区域を走査する。モータの回転速度は、光速に比べて充分に遅いため、反射器アセンブリによって反射された光が検出されたときの鏡の角度は、光源からの光が出射したときの鏡の角度とほぼ同じである。
【0007】
このような光分配検出アセンブリが一対すなわち2つあるため、目標区域内に物体がある場合、この物体によって光源から出射された光が遮られた角度が2つ検知される。一対の光分配検出アセンブリ間の距離は既知であるので、一辺とその両端の角度とから頂点を求める三角測量法によって目標区域内の物体の位置を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−5428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1の光学式座標検知装置では、鏡を駆動する手段として用いているモータは、一般に磁石による磁界中で回転子を回転させる機械的な構造のため、小型化に限度がある。このため、光分配検出アセンブリを小型化するのは困難であり、省スペースが要求されるディスプレイやホワイトボード等への搭載が難しい。
【0010】
そこで、本発明は、省スペース化が可能な光学式の座標検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、平面座標領域内の物体の座標を検知するために、前記座標領域の周縁上又は座標領域外に配置され、光を出射すると共に受光する一対の光学装置と、前記光学装置から出射された光を再帰反射する再帰反射部とを備える光学式座標検知装置であって、前記光学装置は、光を出射する光源と、前記光源からの光を前記座標領域の面に平行に光を偏向して当該光学装置から出射する光偏向部と、前記再帰反射部が反射した光を検知する光検知部とを備え、前記光偏向部は、反射面を有するミラーと、電圧信号が印加されることで該ミラーを回転駆動する圧電アクチュエータとで構成され、前記座標領域の全領域に対して光を出射できる角度で前記ミラーを回転駆動することを特徴とする。
【0012】
本発明において、座標領域とは、上記特許文献1でいう目標区域に相当する領域であって、平面座標で表わされるものである。
【0013】
本発明によれば、圧電アクチュエータにより、座標領域の全領域に対して光を出射できる角度でミラーを回転駆動する。
【0014】
このような圧電アクチュエータを用いた駆動装置として、MEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスが知られている。MEMSによれば、圧電アクチュエータを用いることで、駆動部を非常に小型化できる。すなわち、駆動源としてモータを用いる従来の装置に比べて光偏向部を小型化できる。従って、本発明の座標検知装置は、省スペースが要求されるディスプレイ等に搭載するのに最適なものである。
【0015】
また、例えば、座標領域の形状が長方形であり、その1辺の両端に光偏向器を配置した場合には、ミラーを45°の角度で回転駆動することで、座標領域の全領域に対して光を出射できる。
【0016】
これに対し、従来のモータによってミラーを45°の角度で回転駆動させる場合には、座標領域上の物体の座標を即時検知できる程度に高速で45°回転駆動することは難しい。このため、モータによる駆動は、360°回転、すなわち、同一方向に回転させることが現実的である。この場合、45°から360°の角度で回転している間は座標領域内に光が出射されず、その間の回転駆動は無用になる。この点、本発明では、圧電アクチュエータにより座標領域の全領域に対して光を出射するのに充分な角度(例えば、0°〜45°)でミラーを回転駆動するので、ミラーをより効率よく回転駆動させることができる。
【0017】
本発明において、前記再帰反射部は、入射角が0°の光を、反射角が0°で最大光度となり所定の半値角の広がりを持つ光として反射する反射特性を有し、前記ミラーから前記光検知部までの距離が、前記再帰反射部の反射特性と前記座標領域の大きさとに応じて決定されることが好ましい。
【0018】
一般に、出射光と反射光とが同一光路を通る場合には、ミラーと光検知部とが互いに干渉しないように、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設ける必要がある。しかしながら、上記のように、再帰反射部が、入射角が0°の光を、反射角が0°で最大光度となり所定の半値角の広がりを持つ光として反射する反射特性を有する場合には、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設けることなく、ミラーと光検知部とを配置できる。これによって、光学装置の部品数が減り、小型化及び構造の簡単化ができる。
【0019】
本発明において、前記圧電アクチュエータは、支持体及び該支持体上に形成された圧電体を有し圧電駆動により屈曲変形を行う複数の圧電カンチレバーを含むと共に、該複数の圧電カンチレバーの圧電体にそれぞれ駆動電圧を印加するための複数の電極を備え、該複数の圧電カンチレバーは各々の屈曲変形を累積するように端部が機械的に連結され、前記駆動電圧の印加により各圧電カンチレバーが屈曲変形されることが好ましい。
【0020】
これにより、複数の圧電カンチレバーを、各々の屈曲変形を累積するように端部を機械的に連結しているので、小型化した場合であっても、大きな偏向角を得ることができる。
【0021】
本発明において、前記駆動電圧が所定の電圧値を上回ったとき又は前記駆動電圧が所定の電圧値を下回ったときから、前記光検知部の受光量が変化するまでの経過時間に応じて、前記ミラーの回転角を決定することが好ましい。
【0022】
光偏向部に印加される電圧の周波数は予め分かっているので、本発明の座標検知装置は、駆動電圧が所定の電圧値を上回るか又は下回ったときから光検知部が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、ミラーの回転角を決定できる。これにより、より正確に物体の座標を検知することができる。
【0023】
本発明において、前記ミラーは、前記座標領域の全領域に対して光を出射できる角度より大きい角度で回転駆動し、前記座標領域の周縁上又は座標領域外であると共に、前記ミラーの回転駆動によって前記光学装置からの光が出射される領域内に受光部を備え、前記受光部が受光したときから前記光検知部の受光量が変化するまでの経過時間に応じて、前記ミラーの回転角を決定してもよい。
【0024】
上述したものと同様に、光偏向部に印加される電圧の周波数は予め分かっているので、本発明の座標検知装置は、受光部が受光したときから光検知部が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、ミラーの回転角を決定できる。これにより、より正確に物体の座標を検知することができる。
【0025】
本発明において、前記光学装置から出射した光が再帰反射して当該光学装置に入射するまでの光路が、前記座標領域の面に平行な平面上にあり、前記一対の光学装置のうち、一方の光学装置からの光の光路がある前記平面と、他方の光学装置からの光の光路がある前記平面とが異なる平面上になるように構成されることが好ましい。
【0026】
これにより、一方の光学装置からの光と他方の光学装置からの光とが混ざることを防止し、高精度に座標を検知できる。
【0027】
本発明において、前記再帰反射部の表面を、前記ミラーからの光の入射角が0°になるような傾斜面が並ぶように形成することが好ましい。
【0028】
一般に、再帰反射した光は、入射したときの入射角が大きくなるほど弱くなる(光束が小さくなる)。光検知部に入射する光は強い方がよいので、入射角は0°であることが好ましい。しかしながら、1つの光学装置は、ミラーを回転駆動させて光を偏向させるため、再帰反射部の表面を平坦に形成した場合においては、全ての光の入射角を0°にできない。
【0029】
しかしながら、ミラーを回転駆動させて光を再帰反射部に出射するため、再帰反射部の所定の位置に対しての光の入射角は一意になる。そこで、上記のように傾斜面を並ぶように再帰反射部を形成することで、様々な角度で入射する光に対して入射角が0°にできる。これによって、ミラーの回転駆動によって偏向されて再帰反射した光が弱くなることを低減できる。
【0030】
更に、この場合においては、前記傾斜面の表面を鏡面加工することもできる。これによって、例えば、微小なガラスビーズを混ぜた塗料を塗布された再帰反射性テープを貼るような場合に比べて、再帰反射部を容易に形成できる。
【0031】
本発明において、前記光偏向部の位置を調整可能に構成することで、ミラーの位置を調整できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態の座標検知装置の構成を示す図。
【図2】図1の座標検知装置の外枠右上隅部を示す図。
【図3】(a)は外枠の下辺右側部を示す図、(b)は(a)のb−b線断面図、(c)は(a)のc−c線断面図。
【図4】(a)は本実施形態の再帰反射部の傾斜、(b)は別形態の再帰反射部の傾斜を示す図。
【図5】(a)は光学装置の走査部の構成を示す図、(b)は(a)を下側から見た図。
【図6】図5の走査部に設けられたアライメンタを示す図。
【図7】光学装置の光偏向器の構成を示す図。
【図8】光偏向器の圧電アクチュエータを説明する図。
【図9】(a)は圧電アクチュエータが作動していない状態を示し、(b)は圧電アクチュエータが作動している状態を示す図。
【図10】本実施形態の光学装置の光検知器及び受光部が受光して出力した信号の一例を示す図。
【図11】別形態の圧電アクチュエータに印加される電圧信号、コンパレータの出力信号及び光検知器の出力した信号の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1〜図9を参照して、本発明の実施形態の光学式座標検知装置(以下、「座標検知装置」という)の構成について説明する。本実施形態の座標検知装置1は、平面状の表示領域を有する大型ディスプレイに搭載され、大型ディスプレイの表示領域内のうちユーザーの指等によってタッチされた座標(物体の座標)を検知するように構成される。
【0034】
本実施形態では、大型ディスプレイの表示領域を座標領域Cとしている。ここで、座標領域Cとは、当該領域内の各位置を一意な座標で表現可能な領域のことである。すなわち、座標領域C内の座標が決定すれば、当該領域内の位置が決定される。
【0035】
座標検知装置1は、外枠2と、平面状の表示領域である平面座標領域C内の物体の座標を検知するために、光を出射すると共に受光する左右一対の光学装置3,4とを備える。
【0036】
外枠2は、座標領域Cの周縁上に配置され、図1において上側の上辺21と、下側の下辺22と、右側の右辺23と、左側の左辺24とで構成される。上辺21と下辺22は互いに平行で且つ水平な辺として構成され、右辺23と左辺24は互いに平行で且つ上下辺21,22に垂直な辺として構成される。
【0037】
また、上辺21は、上辺右側部21aと上辺左側部21bとで構成される。同様に、下辺22は、下辺右側部22aと下辺左側部22bとで構成される。なお、本実施形態では、上辺21及び下辺22を、製造及び運搬等の容易性を考慮して右側及び左側の2つの部材から構成しているが、1つの部材で形成してもよい。
【0038】
外枠2は、大画面の枠として必要な剛性を持つ部材であればよく、例えば、熱可塑性樹脂を用いて射出成形等の製法で製造された軽量安価な樹脂枠が好ましい。下辺22,右辺23及び左辺24は、入射した光に平行で且つ入射方向とは反対方向に出射する再帰反射となるような反射特性を持つように表面が加工されている。下辺22,右辺23及び左辺24が、本発明における再帰反射部に相当する。
【0039】
右側の光学装置3は、上辺21と右辺23の交点上、すなわち図1の右上の角の外枠2の周縁上に配置され、左側の光学装置4は、上辺21と左辺24の交点上、すなわち図1の左上の角の外枠2の周縁上に配置される。一対の光学装置3,4は、外枠2の配置する位置に応じて左右対称に同じ構成を有するものであるので、以下の説明では、主に光学装置3について説明し、光学装置4の詳細な説明は省略する。
【0040】
図2に示されるように、光学装置3は、光源31と、走査部32と、光検知部としての光検知器33とを備える。光源31は、狭指向性の光となるように半導体レーザ光を出射するように構成されている。このため、光が進んだ距離による光の減衰は無いものとして扱うことができる。これによって、本実施形態の光学装置3,4は、大型ディスプレイに適した構成となっている。
【0041】
走査部32は、後述する光偏向部としての光偏向器142と、この光偏向器142を駆動するための電圧波形を生成する回路(図示省略)とを備える。走査部32は、光偏向器142が有するミラー144(図7)によって、光源31が出射したレーザ光を様々な角度に偏向して、外枠2で形成された座標領域C内を走査する。
【0042】
光検知器33は、走査部32によって座標領域C内に出射された光が、外枠2の下辺22,右辺23及び左辺24のいずれかに入射し、再帰反射して戻って来た反射光を受光できるように配置される。光検知器33は、受光したエネルギーに応じて電気信号を出す光電変換素子であり、コスト等を考慮するとフォトダイオードが好ましいが、これに限らず、イメージセンサー等を使用しても良い。
【0043】
光源31は、外枠2の上辺21から走査部32のミラー144の中央部に向けてレーザ光を出射できる位置に配置される。本実施形態では、光源31は、半導体レーザの出力にビーム整形用のレンズを装着してレーザ光を出力できるように構成しているがこれに限らない。例えば、任意の位置に配置された光源の光を、光ファイバによって本実施形態の光源31の位置に伝達させて、ミラー144に向けてレーザ光を出射できるように構成したものであってもよい。
【0044】
走査部32は、後述の光偏向器142のミラー144を±22.5°(計45°)以上の角度で回転駆動(振動)することで、座標領域Cの全領域に対して光源31からのレーザ光で走査可能に構成される。このとき、走査部32は、光源31からのレーザ光を偏向した光が、座標領域Cの平面に対して水平に出射されるようにミラー144を回転駆動する。以下、このミラー144に偏向されたレーザ光の光路で形成される平面を「走査平面」という。この走査平面は、本発明において「光学装置から出射した光が再帰反射して当該光学装置に入射するまでの光路がある、座標領域の面に平行な平面」に相当する。
【0045】
詳細には、ミラー144の偏向角が0°の時には、座標領域Cの対角方向に向かってミラー144からレーザ光が出射される。すなわち、光学装置3の場合には、上辺21と右辺23の交点から下辺22と左辺24の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射され、光学装置4の場合には、上辺21と左辺24の交点から下辺22と右辺23の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射される。
【0046】
ミラー144の偏向角が22.5°の時には、座標領域Cの垂直方向に向かってミラー144からレーザ光が出射される。すなわち、光学装置3の場合には、上辺21と右辺23の交点から下辺22と右辺23の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射され、光学装置4の場合には、上辺21と左辺24の交点から下辺22と左辺24の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射される。
【0047】
ミラー144の偏向角が−22.5°の時には、座標領域Cの水平方向に向かってミラー144からレーザ光が出射される。すなわち、光学装置3の場合には、上辺21と右辺23の交点から上辺21と左辺24の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射され、光学装置4の場合には、上辺21と左辺24の交点から上辺21と右辺23の交点に向かってミラー144からレーザ光が出射される。
【0048】
ミラー144の偏向角が0°〜22.5°の間の時には、下辺22の偏向角に応じた位置に向かって光学装置3,4のミラー144からレーザ光が出射される。ミラー144の偏向角が0°〜−22.5°の間の時には、対向する垂直な辺に向かって光学装置3,4のミラー144からレーザ光が出射される。
【0049】
次に、図3及び図4を参照して、外枠2の下辺22,右辺23及び左辺24の再帰反射となるように加工された表面の詳細について説明する。
【0050】
下辺22,右辺23及び左辺24は、入射角が0°の光を、反射角が0°で最大光度となり所定の半値角の広がりを持つ光として反射する反射特性を持つ。これによって、例えば座標領域Cの大きさ、例えば、座標領域Cの対角線の長さが50インチ程度とすると、光学装置3,4から出射した光が再び光学装置3,4に戻ってきた時点で、30〜40mmφ程度のビーム幅を持つことになる。従って、この場合には、光学装置3,4の光検知器33は、ミラー144から30〜40mm以内の場所に配置されれば、再起反射した光を受光できる。
【0051】
本実施形態では、光検知器33を外枠2の右上(上辺21と右辺23の交点)及び左上(上辺21と左辺24の交点)の座標領域C側の側壁に配置している。このとき、光学装置3,4のミラー144と光検知器33は、座標領域Cの平面に垂直な方向に30〜40mm程度ずらした位置に配置される。
【0052】
下辺22,右辺23及び左辺24を、反射光にある程度の広がりを持たない反射光を返す反射特性の部材で構成した場合においては、出射光と反射光とが同一光路を通る。このため、光を出射するミラー144と光を受光する光検知器23とが互いに干渉しないように、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設ける必要がある。
【0053】
しかしながら、本実施形態のように、反射光にある程度の広がりを持つ反射光を返す反射特性の部材で下辺22,右辺23及び左辺24を構成した場合においては、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設けることなく、光を出射するミラー144と光を受光する光検知器23とを配置できる。
【0054】
このように、光学装置3,4のミラー144から光検知器33までの距離を、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24の反射特性と、座標領域Cの大きさとに応じて決定することで、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設けることなく、ミラー144と光検知器33とを互いに干渉しないように配置できる。
【0055】
図3(a)は、下辺22の下辺右側部22aを上辺21側から見たとき、すなわち、図1の上側から下方向に向かって見たときの図を示す。なお、図3(a)の左右の方向は、図1と同じである。すなわち、図3(a)の左端は下辺左側部22bと接続され、図3(a)の右端は右辺23と接続される。
【0056】
一対の光学装置3,4の各ミラー144から出射する光が互いに影響を与えないようにするため、互いの走査平面が同一平面にならないように構成している。これは、本発明において、一方の光学装置からの光の光路がある平面と他方の光学装置からの光の光路がある平面とが異なる平面上になるように構成されることに相当する。
【0057】
このため、図3(a)に示されるように、下辺右側部22aは、光学装置3から出射された光を再帰反射するための再帰反射部である第1下辺右側部22a1と、光学装置4から出射された光を再帰反射するための再帰反射部である第2下辺右側部22a2とで構成される。
【0058】
下辺右側部22aがこのように構成されることで、光学装置3と光学装置4の走査平面が同一平面にならないようにでき、且つそれぞれの光学装置3,4から出射された光を互いに干渉せずに再帰反射することができる。
【0059】
また、下辺左側部22bは、下辺右側部22aと同様に、光学装置3から出射された光を再帰反射するための再帰反射部として第1下辺左側部と、光学装置4から出射された光を再帰反射するための再帰反射部として第2下辺左側部とで構成されている(図示省略)。
【0060】
また、右辺23は、光学装置4から出射された光を再帰反射すればよく、光学装置3から出射された光を再帰反射する必要はない。このため、右辺23は、下辺22のように2つの再帰反射部は設けられず、1つの再帰反射部のみが設けられる。同様に、左辺24は、光学装置3から出射された光を再帰反射すればよく、光学装置4から出射された光を再帰反射する必要はない。このため、左辺24は、下辺22のように2つの再帰反射部は設けられず、1つの再帰反射部のみが設けられる。
【0061】
第1下辺右側部22a1、第1下辺左側部、及び左辺24は、光学装置3からの光を再帰反射できるように光学装置3の走査平面上に配置される。また、第1下辺右側部22a1及び第1下辺左側部は、光学装置4の走査平面上を避けて配置される。同様に、第2下辺右側部22a2、第2下辺左側部、及び右辺23は、光学装置4からの光を再帰反射できるように光学装置4の走査平面上に配置される。また、第2下辺右側部22a2及び第2下辺左側部は、光学装置3の走査平面上を避けて配置される。
【0062】
また、図4(a)に示されるように、下辺22,右辺23及び左辺24の表面は、入射する光に対して反射する面が可能な限り0°になるような傾斜面I1,I2,I3が細かく並ぶように形成されている。この傾斜面I1,I2,I3は、所定の深さhとなるように形成されている。なお、所定の深さhは、各傾斜毎に可変であってもよい。
【0063】
例えば、第1下辺右側部22a1は、光学装置3から出射された光を再帰反射するための再帰反射部であるので、右辺23側に近付くに従って光学装置3から出射された光の入射角が下辺22の面に垂直(0°)に近付く。このため、第1下辺右側部22a1は、下辺22に水平な面に対して緩やかな角度の傾斜が形成される。このとき、第1下辺右側部22a1の傾斜の角度は、右辺23に近付くに従って緩やかになる。
【0064】
また、第2下辺右側部22a2は、光学装置4から出射された光を再帰反射するための再帰反射部であるので、右辺23側に近付くに従って光学装置3から出射された光の入射角が下辺22の面に水平(90°)に近付く。このため、第2下辺右側部22a2は、下辺22に水平な面に対して急な角度の傾斜が形成される。このとき、第2下辺右側部22a2の傾斜の角度は、右辺23に近付くに従って急になる。
【0065】
同様に、下辺左側部22bの第1下辺左側部は、光学装置3から出射された光を再帰反射するための再帰反射部であるので、左辺24側に近付くに従って光学装置3から出射された光の入射角が下辺22の面に水平(90°)に近付く。このため、下辺左側部22bの第1下辺左側部は、下辺22に水平な面に対して急な角度の傾斜が形成される。このとき、下辺左側部22bの第1下辺左側部の傾斜の角度は、左辺24に近付くに従って急になる。
【0066】
また、下辺左側部22bの第2下辺左側部は、光学装置4から出射された光を再帰反射するための再帰反射部であるので、左辺24側に近付くに従って光学装置3から出射された光の入射角が下辺22の面に垂直(0°)に近付く。このため、下辺左側部22bの第2下辺左側部は、下辺22に水平な面に対して緩やかな角度の傾斜が形成される。このとき、下辺左側部22bの第2下辺左側部の傾斜の角度は、左辺24に近付くに従って緩やかになる。
【0067】
このように、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24は、傾斜面I1,I2,I3が細かく並ぶように形成されており、この傾斜面は、入射角が0°になるように徐々に角度が変化するように形成される。このため、下辺22,右辺23及び左辺24は、光学装置3から出射された光に対して、この光の入射方向と同じ方向に反射光を出射することができる。すなわち、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24は、入射光を再帰反射できる。
【0068】
なお、下辺22,右辺23及び左辺24の表面は、図4(a)に示されるように各傾斜面I1,I2,I3の表面を平面で形成するのではなく、図4(b)に示されるように各傾斜面I1’,I2’,I3’の表面を光の入射角が可能な限り0°になるような曲面で形成してもよい。この場合には、傾斜面を平面で構成するものに比べて、光の入射角をより垂直(0°)に近い角度にできる。
【0069】
ここで、「可能な限り0°になるような傾斜」とは、入射角によっては、0°にならない場合も含んでおり、反射するときに、入射した光を出射した光学装置3,4に対して出射可能な程度の角度であればよい。
【0070】
本実施形態では、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24の表面を、図4(a)に示されるような傾斜面I1,I2,I3を細かく並ぶように形成しているので、傾斜面を鏡面反射するように鏡面加工している。鏡面加工は、射出成形や板金加工などで作成したフレームに、AlやAg合金等の高反射金属薄膜を成膜する。この場合には、微小なガラスビーズを混ぜた塗料が塗布された再帰反射性テープを貼るような場合に比べて、再帰反射部を容易に形成できる。
【0071】
図5は、一対の光学装置3,4の走査部32の構成を示す。
【0072】
走査部32は、光偏向器142の位置を、上下方向U−D、左右方向L−R、及び前後方向F−Bに調整可能に構成される。更に、走査部32は、光偏向器142のミラー144を回転可能に構成される。ここで、上下方向U−D及び左右方向L−Rは、それぞれ、図5(a)に矢印で示される方向であり、前後方向F−Bとは図5(b)に矢印で示される方向である。
【0073】
図5(a)に示されるように、走査部32は、上下方向U−Dに移動可能な上下ステーテージS1と、左右方向L−Rに移動可能な左右ステージS2と、回転可能な回転ステージS3との3つのステージを備える。
【0074】
光偏向器142は、上下ステージS1に装着されている。また、上下ステージS1は、左右ステージS2の前面(図5(b)の上側)に装着されている。更に、左右ステージS2は、回転ステージS3の前面(図5(b)の上側)に装着されている。また、回転ステージS3は、前後方向F−Bに位置を調整可能な前後調整アングルによって、外枠2に装着される。詳細には、右側の光学装置3では上辺21と右辺23の交点付近に装着され、左側の光学装置4では上辺21と左辺24の交点付近に装着される。
【0075】
上下ステージS1は、略H字型に形成されており、H字の左右脚部S1aに位置調整用の長孔H1が設けられている。上下ステージS1は、上下アライメンタA1によって図5(a)の上下方向U−Dの位置を調整した後、左右ステージS2に長孔H1を介してネジN1によってねじ留めされる。上下ステージS1は、左右ステージS2に対して上下方向U−Dに移動可能となっている。
【0076】
また、左右ステージS2は、上下の辺に、それぞれ左右方向L−Rに長い長孔H2が設けられている。左右ステージS2は、左右アライメンタA2によって図5(b)の左右方向L−Rの位置を調整した後、回転ステージS3に長孔H2を介してネジN2によってねじ留めされる。左右ステージS2は、回転ステージS3に対して左右方向L−Rに移動可能となっている。
【0077】
また、左右ステージS2は、回転軸ねじ(図示省略)を回転軸として回転可能に回転ステージS3に支持される。更に、左右ステージS2は、左右の辺から突出した支持部S2aを有する。これによって、左右ステージS2は、回転方向RTに回転可能となる。
【0078】
上記の左右ステージS2は上下アライメンタA1が固定され、回転ステージS3は左右アライメンタA2及び回転アライメンタA3が固定される。
【0079】
図6は、上下アライメンタA1を示す。上下アライメンタA1は、ステーA1aと、位置調整用ねじA1bと、固定用ねじA1cとを備える。
【0080】
ステーA1aは、位置調整用ねじA1b及び固定用ねじA1cが螺挿されるねじ孔(図示省略)が設けられる。ステーA1aは、固定用ねじA1cによって、左右ステージS2に固定される。位置調整用ねじA1bを閉める方向に回転すると、ステーA1aは固定されているので、位置調整用ねじA1bが図6の上方向に移動する。位置調整用ねじA1bを開ける方向に回転すると、ステーA1aは固定されているので、位置調整用ねじA1bが図6の下方向に移動する。
【0081】
位置調整用ねじA1bは、図5(a)に示されるように4つ設けられている。4つの位置調整用ねじA1bのねじ先(図6の上側の先端)は、それぞれが上下ステージS1の左右脚部S1aを上方向又は下方向に押圧可能に当接している。このとき、4つのうち2つの位置調整用ねじA1bと、残りの2つの位置調整用ねじA1bとで上下ステージS1の左右脚部S1aを対向するように挟持している。詳細には、上下ステージS1の左右脚部S1aの上側に2つの位置調整用ねじA1bが配置され、上下ステージS1の左右脚部S1aの下側に残り2つの位置調整用ねじA1bが配置される。
【0082】
このため、上下ステージS1を下方向に移動する場合には、図5(a)の上側の2つの位置調整用ねじA1bを閉める方向に回転すると共に、図5(a)の下側の2つの位置調整用ねじA1bを開ける方向に回転する。また、上下ステージS1を上方向に移動する場合には、図5(a)の上側の2つの位置調整用ねじA1bを開ける方向に回転すると共に、図5(a)の下側の2つの位置調整用ねじA1bを閉める方向に回転する。このように4つの位置調整用ねじA1bを同時に回転させることで、上下ステージS1を上下方向U−Dに位置調整できる。
【0083】
左右アライメンタA2は、上下アライメンタA1と同様に、ステーA2aと、位置調整用ねじA2bと、固定用ねじA2cとを備える(図示省略)。
【0084】
左右アライメンタA2は、固定用ねじA2cによって、回転ステージS3に固定される。左右アライメンタA2は、図5(a)に示されるように4つ設けられており、4つのうち2つの位置調整用ねじA2bと、残りの2つの位置調整用ねじA2bとで左右ステージS2を対向するように挟持している。左右アライメンタA2のねじ先は、左右ステージS2を左方向又は右方向に押圧可能に当接している。
【0085】
このため、左右ステージS2を左方向に移動する場合には、図5(a)の右側の2つの位置調整用ねじA2bを閉める方向に回転すると共に、図5(a)の左側の2つの位置調整用ねじA2bを開ける方向に回転する。また、左右ステージS2を右方向に移動する場合には、図5(a)の右側の2つの位置調整用ねじA2bを開ける方向に回転すると共に、図5(a)の左側の2つの位置調整用ねじA2bを閉める方向に回転する。このように4つの位置調整用ねじA2bを同時に回転させることで、左右ステージS2を左右方向L−Rに位置調整できる。
【0086】
回転アライメンタA3は、上下アライメンタA1及び左右アライメンタA2と同様に、ステーA3aと、位置調整用ねじA3bと、固定用ねじA3cとを備える(図示省略)。
【0087】
回転アライメンタA3は、固定用ねじA3cによって、回転ステージS3に固定される。回転アライメンタA3は、図5(a)に示されるように2つ設けられており、一方の回転アライメンタA3の位置調整用ねじA3bのねじ先は、左右ステージS2の図5(a)の右側の支持部S2aに当接し、他方の回転アライメンタA3の位置調整用ねじA3bのねじ先は、左右ステージS2の図5(a)の左側の支持部S2aに当接している。
【0088】
このため、左右ステージS2を図5(a)の時計回りに回転する場合には、図5(a)の右側の位置調整用ねじA3bを閉める方向に回転すると共に、図5(a)の左側の位置調整用ねじA3bを開ける方向に回転する。また、左右ステージS2を図5(a)の反時計回りに回転する場合には、図5(a)の右側の位置調整用ねじA3bを開ける方向に回転すると共に、図5(a)の左側の位置調整用ねじA3bを閉める方向に回転する。このように2つの位置調整用ねじA3bを同時に回転させることで、左右ステージS2を回転方向RTに位置調整できる。
【0089】
このように、ミラー144は、各ステージS1,S2,S3、各アライメンタA1,A2,A3及び前後調整アングルによって、上下方向U−D、左右方向L−R、回転方向RT及び前後方向F−Bに、位置を調整できる。これによって、ミラー144による走査平面を調整することができる。このような構成は、本発明において、光偏向部の位置を調整可能な構造に相当する。
【0090】
次に、図7〜図9を参照して、光偏向器142の詳細について説明する。図7に示すように、光偏向器142は、入射された光を反射するミラー144と、ミラー144を駆動する1対の圧電アクチュエータ145,146と、1対の圧電アクチュエータ145,146を支持する台座153とを備えている。
【0091】
ミラー144は矩形形状で、その両側が、ミラー144を挟んで対向した1対の圧電アクチュエータ145,146の先端部145a1,146a1にそれぞれ連結されている。また、これらの1対の圧電アクチュエータ145,146は、その基端部145d1,146d1が台座153により支持されている。
【0092】
ミラー144は、ミラー支持体143と、ミラー支持体143上に形成されたミラー面反射膜とを備えている。なお、ミラー面反射膜は、ミラー支持体143上の金属薄膜(本実施形態では1層の金属薄膜)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工して形成されている。金属薄膜の材料としては、例えば金、白金、アルミニウム(Al)等が用いられる。金属薄膜の厚みは、例えば100〜500nm程度とする。金属薄膜は、例えば、スパッタ法、電子ビーム蒸着法等により成膜する。
【0093】
また、ミラー支持体143は、シリコン基板から形成され、後述の圧電アクチュエータ145,146の支持体147,148と一体的に形成されている。これにより、ミラー144は、圧電アクチュエータ145,146と機械的に連結され、圧電アクチュエータ145,146の駆動に応じて回転する。
【0094】
1対の圧電アクチュエータ145,146は、それぞれ、4つの圧電カンチレバー145A〜145D,146A〜146Dを備えている。また、1対の圧電アクチュエータ145,146は、それぞれ、4つの圧電カンチレバー145A〜145D,146A〜146Dの支持体として一体的に形成された支持体147,148を備えている。
【0095】
更に、これらの支持体147,148は、シリコン基板を形状加工することにより1枚の支持体149として一体的に形成されている。この支持体149は、その基端部149Eが台座153上に保持され、基端部149Eの一辺の一方の端から伸びた部分が、一方の圧電アクチュエータ145の支持体147を構成し、他方の端から延びた部分が、他方の圧電アクチュエータ146の支持体148を構成する。
【0096】
なお、台座153もシリコン基板から形成され、シリコン基板を形状加工することによりミラー支持体143、支持体149と一体的に形成されている。シリコン基板を形状加工する手法としては、フォトリソグラフィ技術やドライエッチング技術等を利用した半導体プレーナプロセス及びMEMSプロセスが用いられる。また、ミラー144と台座153との間には空隙が設けられ、ミラー144が所定角度まで回転可能となっている。本実施形態では、ミラー144は、45°以上の角度(例えば、50°)まで回転駆動させることを可能にしている。
【0097】
また、光偏向器142は、1対の圧電アクチュエータ145,146にそれぞれ駆動電圧を印加するための2つの電極セット151,152を、支持体149の基端部149E上に備えている。一方の電極セット151には、一方の圧電アクチュエータ145に駆動電圧を印加するための第1上部電極151aと第2上部電極151bと共通下部電極151cとの3つの電極パッドが備えられている。また、他方の電極セット152には、他方の圧電アクチュエータ146に駆動電圧を印加するための第1上部電極152a、第2上部電極152b、共通下部電極152cの3つの電極パッドが備えられている。
【0098】
一方の圧電アクチュエータ145の電極セット151は、先端部側から奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cに駆動電圧を印加するための第1上部電極151aと、偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dに駆動電圧を印加するための第2上部電極151bと、これらの第1,第2上部電極151a,151bの共通の下部電極として用いられる共通下部電極151cとを備えている。
【0099】
同様に、他方の圧電アクチュエータ146の電極セット152は、先端部側から奇数番目の圧電カンチレバー146A,146Cに駆動電圧を印加するための第1上部電極152aと、偶数番目の圧電カンチレバー146B,146Dに駆動電圧を印加するための第2上部電極152bと、これらの第1,第2上部電極152a,152bの共通の下部電極として用いられる共通下部電極152cとを備えている。これらの電極セット151,152の各電極151a〜151c,152a〜152cは、それぞれ、支持体149の基端部149E上にパッド状に形成されている。
【0100】
次に、一方の圧電アクチュエータ145の構成の詳細について説明する。なお、他方の圧電アクチュエータ146の構成は、一方の圧電アクチュエータ145の構成と同じであるため説明を省略する。圧電カンチレバー145A〜145Dは、その長さ方向が同じになるように、各圧電カンチレバー145A〜145Dの両端部a0〜d0,a1〜d1が隣り合うように並んで配置されている。そして、圧電カンチレバー145Aの端部a0と圧電カンチレバー145Bの端部b0との隣り合う部分が連結され、圧電カンチレバー145Bの端部b1と圧電カンチレバー145Cの端部c1との隣り合う部分が連結され、圧電カンチレバー145Cの端部c0と圧電カンチレバー145Dの端部d0との隣り合う部分が連結されている。これにより、圧電カンチレバー145A〜145Dは折り返すように連結される。
【0101】
圧電カンチレバー145A〜145Dは、それぞれ、支持体161A〜161Dと、下部電極162A〜162Dと、圧電体163A〜163Dと、上部電極164A〜164Dとを備えている。第1上部電極151aは、第1上部電極配線165Dを介して上部電極164Cに接続され、更に、第1上部電極配線165Bを介して上部電極164Aに接続されている。また、第2上部電極151bは、上部電極164Dに接続され、更に、第2上部電極配線166Cを介して上部電極164Bと接続されている。また、共通下部電極151cは、下部電極162A〜162Dと接続されている。
【0102】
そして、第1上部電極151aと共通下部電極151cとの間に電圧を印加することで、上部電極164A,164Cと下部電極162A,162Cとの間にそれぞれ電圧が印加され、圧電アクチュエータ145の先端部側から奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cが駆動される。同様に、第2上部電極151bと共通下部電極151cとの間に電圧を印加することで、上部電極164B,164Dと下部電極162B,162Dとの間にそれぞれ電圧が印加され、圧電アクチュエータ145の先端部側から偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dが駆動される。
【0103】
支持体161A〜161Dは板状の部材で、シリコン基板を形状加工することにより支持体149として一体的に形成されている。支持体149は、その端部149Eが台座153に保持されており、端部149Eから延びた部分が支持体161Dを構成し、支持体161Dから折り返した部分が支持体161Cを構成し、支持体161Cから折り返した部分が支持体161Bを構成し、支持体161Bから折り返した部分が支持体161Aを構成する。これにより、圧電カンチレバー145A〜145Dが機械的に連結されたものとなる。
【0104】
共通下部電極151cと下部電極162A〜162Dとは、支持体149と支持体161A〜161D上に成膜された金属薄膜(下部電極層)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。共通下部電極151cは、支持体149の端部149E上にパッド状に形成され、下部電極162Dと導通している。この下部電極162Dは、支持体161D上のほぼ全面に形成され、下部電極162Cと導通している。この下部電極162Cは、支持体161C上のほぼ全面に形成され、下部電極162Bと導通している。この下部電極162Bは、支持体161B上のほぼ全面に形成され、下部電極162Aと導通している。この下部電極162Aは、支持体161A上のほぼ全面に形成されている。
【0105】
圧電体163A〜163Dは、下部電極層上の1層の圧電膜(圧電体層)を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより、それぞれ、下部電極162A〜162D上に互いに分離して形成されている。
【0106】
第1,第2上部電極151a,151bと、第1,第2上部電極配線165B,165D,166Cと、上部電極164A〜164Dとは、圧電体層上の上部電極層を半導体プレーナプロセスを用いて形状加工することにより形成されている。
【0107】
第1上部電極151aは、支持体149の端部149E上にパッド状に形成され、第1上部電極配線165Dと導通している。第1上部電極配線165Dは、支持体161D上に線状に形成され、上部電極164Cと導通している。上部電極164Cは、支持体161C上のほぼ全面に形成され、第1上部電極配線165Bと導通している。第1上部電極配線165Bは、支持体161B上に線状に形成され、上部電極164Aと導通している。上部電極164Aは、支持体161A上のほぼ全面に形成されている。
【0108】
同様に、第2上部電極151bは、支持体149の端部149E上にパッド状に形成され、上部電極164Dと導通している。上部電極164Dは、支持体161D上のほぼ全面に形成され、第2上部電極配線166Cと導通している。第2上部電極配線166Cは、支持体161C上に線状に形成され、上部電極164Bと導通している。上部電極164Bは、支持体161B上のほぼ全面に形成されている。
【0109】
なお、第1,第2上部電極151a,151bは、支持体149の端部149E上で、その下層の圧電体層及び下部電極層と共に形状加工されて、互いに分離して設けられていると共に、共通下部電極151cと分離して設けられている。
【0110】
このとき、支持体161D上で、第1上部電極配線165D及びその下層の圧電体が、上部電極164D及び圧電体163Dと分離して設けられている。これにより、第1上部電極配線165Dは、上部電極164Dと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極162Dとの間で絶縁されている。
【0111】
同様に、支持体161C上で、第2上部電極配線166C及びその下層の圧電体が、上部電極164C及び圧電体163Cと分離して設けられている。これにより、第2上部電極配線166Cは、上部電極164Cと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極162Cとの間で絶縁されている。
【0112】
同様に、支持体161B上で、第1上部電極配線165B及びその下層の圧電体が、上部電極164B及び圧電体163Bと分離して設けられている。これにより、第1上部電極配線165Bは、上部電極164Bと平面的に分離されると共に、その下層の圧電体により下部電極162Bとの間で絶縁されている。
【0113】
このように、第1,第2上部電極151a,151bは、平面的に互いに分離されると共に、共通下部電極151cとの間で層間絶縁されている。従って、第1,第2上部電極151a,151bにより、奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cと、偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dとに独立に駆動電圧を印加することができる。
【0114】
次に、本実施形態の光偏向器142の作動について説明する。まず、一方の圧電アクチュエータ145の第1上部電極151aと共通下部電極151cとの間に、所定の第1電圧を印加して奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cを駆動させると共に、第2上部電極151bと共通下部電極151cとの間に、第1電圧と逆極性の所定の第2電圧を印加して偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dを駆動させる。
【0115】
このとき、第1,第2電圧とは、奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cと偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dとの角度変位が逆方向に発生するように印加する。例えば、圧電アクチュエータ145の先端部を上方向に変位させる場合には、奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cを上方向に変位させ、偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dを下方向に変位させる。一方の圧電アクチュエータ145の先端部を下方向に変位させるには、その逆にする。これにより、一方の圧電アクチュエータ145の基端部145d1を支点として、一方の圧電アクチュエータ145の先端部145a1で角度変位が発生する。
【0116】
図9(b)は、このときの圧電アクチュエータ145の駆動状態を模式的に示した図である。この図では、圧電アクチュエータ145の先端部を上方向に変位させる場合が例示されている。圧電カンチレバー145Dは、台座153と連結した端部d1を支点として、その端部d0に下方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー145Cは、圧電カンチレバー145Dの端部d0と連結した端部c0を支点として、その端部c1に上方向の角度変位が発生している。
【0117】
また、圧電カンチレバー145Bは、圧電カンチレバー145Cの端部c1と連結した端部b1を支点として、その端部b0に下方向の角度変位が発生している。また、圧電カンチレバー145Aは、圧電カンチレバー145Bの端部b0と連結した端部a0を支点として、その端部a1に上方向の角度変位が発生している。このように4つの圧電カンチレバー145A〜145Dを屈曲変形させることで、その先端部a1では、各圧電カンチレバー145A〜145Dの屈曲変形の大きさが加算された大きな出力が得られる。
【0118】
この一方の圧電アクチュエータ145への第1電圧と第2電圧の印加と共に、他方の圧電アクチュエータ146の第1上部電極152aと共通下部電極152cとの間に、第1電圧を印加すると共に、第2上部電極152bと共通下部電極152cとの間に、第2電圧を印加する。これにより、一方の圧電アクチュエータ145と同様に、他方の圧電アクチュエータ146の基端部146d1を支点として、他方の圧電アクチュエータ146の先端部146a1で角度変位が発生する。
【0119】
このとき、1対の圧電アクチュエータ145,146は対向して設けられているので、それぞれで発生する角度変位の中心軸線は同軸である。また、1対の圧電アクチュエータ145,146は、同じ大きさの角度変位が発生するように駆動される。このミラー144の両側で発生した角度変位に応じて、ミラー144が、図7で第1の軸x1回りで矢印で示した方向に回転して、レーザ光等の光ビームを偏向する。第1の軸x1は、1対の圧電アクチュエータ145,146の中心軸線と同軸である。
【0120】
ここで、図9は、本実施形態の光偏向器142の駆動状態を模式的に示した図である。図9(a)は1対の圧電アクチュエータ145,146に電圧を印加していない状態を示し、図9(b)は電圧を印加している状態を示す。図9(a),(b)には、圧電アクチュエータ145が示されている。
【0121】
図9(b)に示したように、圧電アクチュエータ145に電圧を印加して、ミラー144側から奇数番目の圧電カンチレバー145A,145Cを上方向に屈曲変形させると共に、偶数番目の圧電カンチレバー145B,145Dを下方向に屈曲変形させる。これにより、圧電アクチュエータ145では、各圧電カンチレバー145A〜145Dの屈曲変形の大きさを加算した大きさの角度変位が発生する。同様に、対向した圧電アクチュエータ146でも角度変位が発生する。これらの角度変位により、ミラー144が、図9(b)の矢印で示したように回転する。
【0122】
本実施形態によれば、小型で大きな出力を得ることができる1対の圧電アクチュエータ145,146をミラー144を挟んで対向するように配置し、各圧電アクチュエータ145,146を駆動することによりミラー144を回転させるので、小型の光偏向器で大きな偏向角を容易に得ることができる。
【0123】
本実施形態の光偏向器142は、このような圧電アクチュエータを用いたMEMSデバイスによって構成されているので、大きな(例えば、50°以上)偏向角が得られるように構成した場合であっても、ミラー144を回転させるためにモータを使用するものに比べて光偏向器142、延いては光学装置3,4を小型に構成できる。これによって、本発明の座標検知装置1を搭載した大型ディスプレイは、省スペース等の要求に対応することが容易である。
【0124】
本実施形態では、第1及び第2の電圧は、所定の周波数の交流波形とし、これらの電圧を光偏向器142に印加することでミラー144を周期的に回転駆動できる。このとき、所定の周波数を、1対の圧電アクチュエータ145,146等の光偏向器142を構成する部材の構造によって決定される光偏向器142の可動部の共振周波数にすることで大きな偏向角を得ることができる。
【0125】
本実施形態では、第1及び第2の電圧を光偏向器142の可動部の共振周波数となるように、ミラー144を、22.5°より大きい偏向角(例えば、24°〜25°)まで回転駆動させる。これによって、レーザ光は、座標領域Cの外に向かって出射される。すなわち、光学装置3の場合には右辺23より右に向かってレーザ光を出射し、光学装置4の場合には左辺24の左に向かってレーザ光を出射する。
【0126】
また、右辺23にはその中央付近に受光部23aが設けられており、左辺24にはその中央付近に受光部24aが設けられている。これらの受光部23a,24aは、フォトダイオードで構成されており、ミラー144からのレーザ光を受光すると電気信号を出力する。これによって、光学装置3,4のミラー144の偏向角が22.5°になったときに、受光部23a,24aが受光する。
【0127】
詳細には、ミラー144の偏向角が0°から22.5°に向かって回転駆動し、偏向角が22.5°になったときに受光し、その後、偏向角が25°になって逆方向に折り返して−22.5°に向かって回転駆動する途中、偏向角が22.5°になったときに再び受光する。すなわち、ミラー144の1回の回転駆動、例えば偏向角が0°から22.5°まで回転駆動した後、逆方向の−22.5°まで回転駆動して0°になるまでの間に、受光部23a,24aは2回受光する。
【0128】
図10は、受光部23a,24a及び光検知器33が受光して出力した信号の一例を示す図である。図10の(a)は、受光部23a,24aが受光したことによって出力した信号を示し、(b)は、光検知器33が受光したことによって出力した信号を示す。時刻t11a,時刻t11b,時刻t12a及び時刻t12bは、受光部23a,24aが受光した時刻を示し、時刻t11c,時刻t11d,時刻t12c及び時刻t12dは、光検知器33が座標領域C内の物体に遮られて受光できなかった時刻、又は受光した光が弱くなった(受光量が変化した)時刻を示す。
【0129】
時刻t11aと時刻t11bの間に、時刻t11cと時刻t11dがあることより、時刻t11aは、ミラー144が22.5°より大きい偏向角から22.5°の偏向角になった時刻、すなわち、座標領域C外に向かって光が照射されていた状態から座標領域C内に向かって光が照射される状態になった時刻を示し、を示し、時刻t11bは、ミラー144が22.5°の偏向角から22.5°より大きい偏向角になった時刻、すなわち、座標領域C内に向かって光が照射されていた状態から座標領域C外に向かって光が照射された状態になった時刻を示すことが分かる。
【0130】
従って、光検知器33が受光したとき(例えば、時刻t11c)には、時刻t11aから経過した時間t1と、光偏向器142に印加した電圧の周波数とから、上辺21と、ミラー144上の反射中心と物体とを結ぶ線との角度を一意に決定できる。
【0131】
このように角度を決定することが、本発明において、受光部が受光したときから光検知器が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、ミラーの回転角を決定することに相当する。
【0132】
このように、座標検知装置1は、受光部23aによって、座標領域C内の物体と光学装置3のミラー144上の反射中心とを結ぶ線と、上辺21との角度を決定できる。同様に、座標検知装置1は、受光部24aによって、座標領域C内の物体と光学装置4のミラー144とを結ぶ線と、上辺21との角度を決定できる。
【0133】
上辺21の長さは予め規定されているので、上辺21の両端の角度が決定されることで、座標検知装置1は、三角測量法によって座標領域C内の物体の座標P(x,y)を検知できる。
【0134】
なお、本実施形態では、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24を、図4(a)に示されるように傾斜を並べるように形成しているがこれに限らない。上述したように、図4(b)に示されるように傾斜を平面ではなく、どの方向から入射しても入射角が垂直になるような曲面で形成してもよい。
【0135】
また、図4(a),(b)に示されるような傾斜を並べるように形成せずに、表面に微小なガラスビーズを混ぜた塗料を塗布された再帰反射性テープを貼ることで、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24に再帰反射性を持たせてもよい。
【0136】
また、本実施形態では、座標領域C内の物体と光学装置3,4のミラー144とを結ぶ線と、上辺21との角度を決定するために受光部23a,24aを設けているが、これに限らない。例えば、ミラー144を回転駆動するために光偏向器142に印加される電圧信号を、基準電圧値Vrefを超えたか否かで出力を切り替えるコンパレータを用いてもよい。
【0137】
図11は、コンパレータを用いた場合の例を示す。図11の(a)は光偏向器142に印加される電圧信号を示し、(b)はコンパレータが出力した信号を示し、(c)は光検知器33が受光したことによって出力した信号を示す。時刻t21a及び時刻t22aは、光偏向器142への印加電圧が基準電圧値Vrefを上回った時刻を示し、時刻t21b及び時刻t22bは、光偏向器142への印加電圧が基準電圧値Vrefを下回った時刻を示す。
【0138】
すなわち、時刻t21a〜時刻t21b及び時刻t22a〜時刻t22bでは、コンパレータの出力がHigh(0より大きい値。例えば5[V])になる。一方、時刻t21a〜時刻t21b及び時刻t22a〜時刻t22b以外の時刻では、コンパレータの出力がLow(例えば、0[V])になる。
【0139】
また、時刻t21c,時刻t21d,時刻t22c及び時刻t22dは、光検知器33が座標領域C内の物体に遮られて受光できなかった時刻、又は受光した光が弱くなった(受光量が変化した)時刻を示す。
【0140】
このように、光検知器33が受光したとき(例えば、時刻t21c)には、コンパレータの出力がLowからHighに切り替わった時刻(例えば、時刻t21a)から経過した時間t2と、ミラー144に印加した電圧の周波数とから、上辺21と、ミラー144と物体とを結ぶ線との角度を一意に決定できる。
【0141】
このように角度を決定することが、本発明において、駆動電圧が所定の電圧値を上回ったとき、又は駆動電圧が所定の電圧値を下回ったときから光検知器が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、ミラーの回転角を決定することに相当する。
【0142】
更に、コンパレータを用いた場合には、ミラー144の偏向角を45°よりも大きな角度にする必要はなく、0°〜45°の偏向角となるように回転駆動できればよい。これによって、最大の偏向角を小さくできるので、大きな偏向角が必要なものに比べて、ミラー144をより効率よく回転駆動させることができる。
【0143】
また、基準電圧値Vrefは、コンパレータがHighとLowとを出力可能な値であればよい。
【0144】
また、本実施形態の座標検知装置1は、大型ディスプレイに搭載されているがこれに限らない。ホワイトボードや電子看板等のように平面状の領域を有するものに搭載する場合であってもこの領域内の座標を取得できる。更に、所定の領域内にいる人や物体等を検知できるエリアセンサとして使用することもできる。
【符号の説明】
【0145】
C…座標領域、1…座標検知装置、2…外枠、21…上辺、22…下辺(再帰反射部)、23…右辺(再帰反射部)、24…左辺(再帰反射部)、23a,24a…受光部、3,4…光学装置、31…光源、32…走査部、33…光検知器(光検知部)、I1〜I3,I1’〜I3’…傾斜面、142…光偏向器(光偏向部)、144…ミラー、145…圧電アクチュエータ、146…圧電アクチュエータ、145A〜145D…圧電カンチレバー、151,152…電極セット(複数の電極)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面座標領域内の物体の座標を検知するために、前記座標領域の周縁上又は座標領域外に配置され、光を出射すると共に受光する一対の光学装置と、前記光学装置から出射された光を再帰反射する再帰反射部とを備える光学式座標検知装置であって、
前記光学装置は、
光を出射する光源と、
前記光源からの光を前記座標領域の面に平行に光を偏向して当該光学装置から出射する光偏向部と、
前記再帰反射部が反射した光を検知する光検知部とを備え、
前記光偏向部は、反射面を有するミラーと、電圧信号が印加されることで該ミラーを回転駆動する圧電アクチュエータとで構成され、前記座標領域の全領域に対して光を出射できる角度で前記ミラーを回転駆動することを特徴とする座標検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の座標検知装置において、
前記再帰反射部は、入射角が0°の光を、反射角が0°で最大光度となり所定の半値角の広がりを持つ光として反射する反射特性を有し、
前記ミラーから前記光検知部までの距離が、前記再帰反射部の反射特性と前記座標領域の大きさとに応じて決定されることを特徴とする座標検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の座標検知装置において、前記圧電アクチュエータは、支持体及び該支持体上に形成された圧電体を有し圧電駆動により屈曲変形を行う複数の圧電カンチレバーを含むと共に、該複数の圧電カンチレバーの圧電体にそれぞれ駆動電圧を印加するための複数の電極を備え、該複数の圧電カンチレバーは各々の屈曲変形を累積するように端部が機械的に連結され、前記駆動電圧の印加により各圧電カンチレバーが屈曲変形されることを特徴とする座標検知装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の座標検知装置において、前記駆動電圧が所定の電圧値を上回ったとき又は前記駆動電圧が所定の電圧値を下回ったときから、前記光検知部の受光量が変化するまでの経過時間に応じて、前記ミラーの回転角を決定することを特徴とする座標検知装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の座標検知装置において、
前記ミラーは、前記座標領域の全領域に対して光を出射できる角度より大きい角度で回転駆動し、
前記座標領域の周縁上又は座標領域外であると共に、前記ミラーの回転駆動によって前記光学装置からの光が出射される領域内に受光部を備え、
前記受光部が受光したときから前記光検知部が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、前記ミラーの回転角を決定することを特徴とする座標検知装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の座標検知装置において、
前記光学装置から出射した光が再帰反射して当該光学装置に入射するまでの光路が、前記座標領域の面に平行な平面上にあり、
前記一対の光学装置のうち、一方の光学装置からの光の光路がある前記平面と、他方の光学装置からの光の光路がある前記平面とが異なる平面上になるように構成されることを特徴とする座標検知装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の座標検知装置において、前記再帰反射部の表面を、前記ミラーからの光の入射角が0°になるような傾斜面が並ぶように形成することを特徴とする座標検知装置。
【請求項8】
請求項7に記載の座標検知装置において、前記傾斜面の表面を鏡面加工することを特徴とする座標検知装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の座標検知装置において、前記光偏向部の位置を調整可能に構成されることを特徴とする座標検知装置。
【請求項1】
平面座標領域内の物体の座標を検知するために、前記座標領域の周縁上又は座標領域外に配置され、光を出射すると共に受光する一対の光学装置と、前記光学装置から出射された光を再帰反射する再帰反射部とを備える光学式座標検知装置であって、
前記光学装置は、
光を出射する光源と、
前記光源からの光を前記座標領域の面に平行に光を偏向して当該光学装置から出射する光偏向部と、
前記再帰反射部が反射した光を検知する光検知部とを備え、
前記光偏向部は、反射面を有するミラーと、電圧信号が印加されることで該ミラーを回転駆動する圧電アクチュエータとで構成され、前記座標領域の全領域に対して光を出射できる角度で前記ミラーを回転駆動することを特徴とする座標検知装置。
【請求項2】
請求項1に記載の座標検知装置において、
前記再帰反射部は、入射角が0°の光を、反射角が0°で最大光度となり所定の半値角の広がりを持つ光として反射する反射特性を有し、
前記ミラーから前記光検知部までの距離が、前記再帰反射部の反射特性と前記座標領域の大きさとに応じて決定されることを特徴とする座標検知装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の座標検知装置において、前記圧電アクチュエータは、支持体及び該支持体上に形成された圧電体を有し圧電駆動により屈曲変形を行う複数の圧電カンチレバーを含むと共に、該複数の圧電カンチレバーの圧電体にそれぞれ駆動電圧を印加するための複数の電極を備え、該複数の圧電カンチレバーは各々の屈曲変形を累積するように端部が機械的に連結され、前記駆動電圧の印加により各圧電カンチレバーが屈曲変形されることを特徴とする座標検知装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の座標検知装置において、前記駆動電圧が所定の電圧値を上回ったとき又は前記駆動電圧が所定の電圧値を下回ったときから、前記光検知部の受光量が変化するまでの経過時間に応じて、前記ミラーの回転角を決定することを特徴とする座標検知装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の座標検知装置において、
前記ミラーは、前記座標領域の全領域に対して光を出射できる角度より大きい角度で回転駆動し、
前記座標領域の周縁上又は座標領域外であると共に、前記ミラーの回転駆動によって前記光学装置からの光が出射される領域内に受光部を備え、
前記受光部が受光したときから前記光検知部が受光量が変化するまでの経過時間に応じて、前記ミラーの回転角を決定することを特徴とする座標検知装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の座標検知装置において、
前記光学装置から出射した光が再帰反射して当該光学装置に入射するまでの光路が、前記座標領域の面に平行な平面上にあり、
前記一対の光学装置のうち、一方の光学装置からの光の光路がある前記平面と、他方の光学装置からの光の光路がある前記平面とが異なる平面上になるように構成されることを特徴とする座標検知装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の座標検知装置において、前記再帰反射部の表面を、前記ミラーからの光の入射角が0°になるような傾斜面が並ぶように形成することを特徴とする座標検知装置。
【請求項8】
請求項7に記載の座標検知装置において、前記傾斜面の表面を鏡面加工することを特徴とする座標検知装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の座標検知装置において、前記光偏向部の位置を調整可能に構成されることを特徴とする座標検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−242959(P2012−242959A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110607(P2011−110607)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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