説明

光学式火災警報器

【課題】可聴域外の音をスピーカから鳴動させることによって、内部に堆積した異物を分散させる機能を有した火災警報器において、可聴域外の音を鳴動させるための回路を簡単なものする。
【解決手段】スピーカ4は、鳴動時に、振動が煙検知室2に伝播するように配置されており、煙検知した回数が火災判定未満の所定値であれば、スピーカ4から可聴域外の音を所定時間鳴動させる制御部6を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の天井面等に設置される火災警報器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、上記のような火災警報器は、電池式のものが広く販売されている。そして中には、電池の高性能化や節電技術の進歩から、10年程も電池交換せずに連続稼働するものもある。そのような警報器は一旦天井面等に設置されると、手が届かない、あるいは面倒という理由で、長期間メンテナンスなしに放置され易い傾向がある。
【0003】
しかしながら警報器は、そのように放置されている間も空気が絶えず出入りしているので、埃等の異物が内部に徐々に堆積する。そして特に光学式火災警報器では、その異物を煙粒子と判断して、誤警報を鳴動させるおそれがある。
【0004】
そのような問題に対処した従来技術の例として、次の引用文献に、警報器を自身によって適宜振動させることによって、ハウジング内部に付着した異物を、適所に設けたポケット部に捕捉することの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-72851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記特許文献1は、警報器が振動するための条件として、所定期間が経過したこと、あるいは散乱光の強度が火災とみなす閾値よりも小さい閾値を超えたことを採用している。しかしながら、前者の条件では、異物がハウジング内部に付着していない場合でも振動して電力を消費してしまう。また後者の条件では、散乱光の強度を、火災とみなす閾値、それより小さい閾値の2つと比較する必要があるので、比較回路の構成が複雑になってしまう問題などがある。またこの警報器は、図1、図2を参照すれば、垂直に設置された場合には、異物を効率的に捕捉できるが、水平に設置された場合は、異物を効率的に捕捉できないと考えられる。
【0007】
そこで本発明は、煙検知室内に堆積した異物を振動することによって分散させる条件を判断する回路が簡単になり、かつ警報器が水平に設置されている場合でも、堆積した異物を効率的に分散できる警報器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による光学式火災警報器は、光学式煙検知手段を収容した煙検知室を有し、前記煙検知手段を所定回数作動させて、煙検知した回数により火災判定してスピーカから警報を鳴動させる警報器であって、前記スピーカは、鳴動時に、振動が前記煙検知室に伝播するように配置されており、前記煙検知した回数が火災判定未満の所定値であれば、前記スピーカから可聴域外の音を所定時間鳴動させる制御部を備える。
【0009】
前記煙検知室と、警報器の構造部または基板との間に、隙間を確保するための複数のスペーサを備えるとよい。
【0010】
前記スペーサは、弾性材からなるとよい。
【0011】
また前記煙検知室は、警報器が天井面に設置されたとき、前記煙検知手段の検知領域の直下に頂点を有する凸面を備えるとよい。
【0012】
その場合、前記スピーカは、前記凸面の背後に固定するとよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、煙検知した回数によって、火災、あるいは異物の堆積を判断するので、受光部の出力は、煙検知とみなす閾値とだけ比較すればよく、比較回路の構成が簡単になる。また煙検知室と警報器の構造部または基板との間に隙間を確保するためのスペーサを備えた構成、あるいは煙検知室が、警報器が天井面に設置されたとき、煙検知手段の検知領域の直下に頂点を有する凸面を備えた構成では、警報器が水平に設置されている場合でも、堆積した異物が効率的に分散できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による火災警報器の概略断面図である。
【図2】本発明による火災警報器の分解斜視図である。
【図3】本発明による火災警報器の概略ブロック図である。
【図4】(a)、(b)はいずれも煙検知室における異物の分散作用を示す概念図である。
【図5】本発明による火災警報器の基本動作を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明による光学式火災警報器の構造、機能的なブロック構成を、以下、図1〜図3に従ってより具体的に説明する。
警報器1は、発光部31および受光部32からなる光学式煙検知手段3と、警報を鳴動させるスピーカ4と、制御部を構成するマイコン基板6と、マイクロスイッチなどからなる操作部7と、電源を供給する電池8とを備えている。
【0016】
煙検知室2は、皿状の基台21に、それぞれ屈曲した複数の遮光壁21aを所定間隔で周設し、その内側に発光部31と受光部32とを立設し、その基台21に更に防虫カバー22を被せて一体化させたものである。遮光壁21aの上端は防虫カバー22の底面に隙間なく接触するように高さが揃えられている。隣接し合う遮光壁21aの隙間は、空気は容易に流通できるが、光は通過できない光学的ラビリンスを形成する。
【0017】
防虫カバー22は、羽虫等の侵入を防止する網目22aが全周に形成されている。また底面には、スピーカ4が固定されている。
【0018】
そして、そのような煙検知室2とスピーカ4とを保護するために、有底筒状の保護カバー5が被せられている。保護カバー5は、複数の通気窓5aが全周に渡って形成され、多数の音孔5bが底面に形成されている。
【0019】
警報器1の筐体9は円盤型であり、中央穴9bの奥にマイコン基板6が固定され、その背面に電池8が収容され、操作部7を形成する釦7aが中央穴9bの横から露出され、釦7aに連動する引紐7bが縁部から導出されている。なお筐体9は、天井面に固定される台座部91と結合、分離自在にするとよい。煙検知室2は、中央穴9bに嵌め込む形でマイコン基板6に固定されている。外気は、保護カバー5の通気窓5a、防虫カバー22の網目22a、更に遮光壁21aによるラビリンスを通って、煙検知室2内に導入されるため、これらの通気窓5a、網目22a、ラビリンスは、それらの高さが整合するように形成されている。
【0020】
発光部31および受光部32は、外側に連絡する案内孔が形成されて、マイコン基板6に設けられた発光素子6b、および受光素子6cがそれらの案内孔から所定位置に案内される。発光素子6bはたとえば発光ダイオードであり、受光素子6cはたとえばホトダイオードである。また煙検知室2内において発光部31と受光部32とは、発光部31の光軸と、受光部32の光軸とが交叉する位置関係となるように配置される。これにより、発光部31から照射された直接光は受光部32に到達しないが、両者の光軸の交叉部、つまり煙検知領域に煙粒子が存在すれば、その煙粒子による反射光が受光部32で検出できる。
【0021】
マイコン基板6は、エポキシなどからなるプリント基板であって、これに警報器1の全体を制御するマイコン、煙検知手段3を構成する発光素子6b、受光素子6c、スピーカ4を駆動するアンプや音声回路などが実装されている。更に、発報や機器異常を報知するステータスランプ6aを実装して、その点灯が筐体9の窓9aから確認できるようにしてもよい。
【0022】
スピーカ4は、本発明の構造上、薄型のものが望ましいが、圧電式でも電磁式でも採用できる。操作部7は、釦7a、引紐7bによって作動するスイッチ(不図示)を備えている。電池8は、寿命の観点からリチウム電池などを採用するとよい。
【0023】
本発明は要するに、煙検知室2に堆積した埃等の異物50による反射光が受光部32に入射して火災と誤判定することを防止するため、スピーカ4から適宜、可聴域外の音を鳴動させる。これによって煙検知室2を振動させて、検知室2内に堆積した埃等の異物50を分散させるものである。可聴域外の音は、例えば20ヘルツ以下の低音、あるいは20kヘルツ以上の高音であるが、単一の周波数の音でも、複数の周波数を組み合わせた音でもよい。
【0024】
そのため、防虫カバー22の底面には、スピーカ4のフレーム(非振動部)を把持、固定する複数の爪部22bが形成され、煙検知室2とスピーカ4とが密着一体化するようになっている。これにより、スピーカ4の振動が煙検知室2に確実に伝播する。なおスピーカ4は、振動板が空気から受ける反力や、振動板自身の慣性力を受けて振動する。よってやや重めの振動板を採用するとよい。
【0025】
一方、基台21は、複数のスペーサ10を介して、マイコン基板6あるいは警報器1の構造部(筐体)に取り付けるとよい。すると、煙検知室2が警報器1の固定部分から浮揚した状態で保持されるので、煙検知室2の撓みによって振動し易くなる。スペーサ10を弾性材によって形成すれば、その弾性変形によって、煙検知室2が更に振動し易くなる。
【0026】
このような構成とすれば、スピーカ4による振動によって煙検知室2内に堆積した異物50を分散できるが、特に煙検知領域付近の異物50が排除できれば、より効果的である。
【0027】
そのためには、防虫カバー22の底面に、警報器1が天井面に設置されたとき、その頂点が煙検知領域直下に位置するような凸面22cを形成するとよい。凸面22cは球面状であっても、多角錐状であってもよく、形状は特に限定されない。この凸面22cの背後にスピーカ4を固定して、凸面22cを上下に振動させれば、重力作用によって異物50を頂点から落とすことができ、煙検知領域から効率的に排除できる。なお、このような構造は、警報器1が天井面に沿って水平に設置されたときに特に有効であるが、壁面等に沿って垂直に設置されたときでも、煙検知室2に付着した異物50は下方に落下する。
【0028】
図4(a)、図4(b)は、そのような凸面22cが形成された煙検知室2における異物50の分散作用を説明する概念図である。図4(a)は一様に堆積した異物50を示している。この状態では異物50が煙検知領域まで堆積しているため、その反射光によって誤警報が生じるおそれがある。しかしこのときスピーカ4によって煙検知室2を上下に振動させれば、凸面22cの頂点部分に堆積していた異物50は、図4(b)に示すように、凸面22cの周囲に落下するので煙検知領域から排除できる。なお図中の矢印は発光部31から照射された光を示している。
【0029】
次いで警報器1の基本動作を説明する。警報器1は、定期的(たとえば2分毎)に煙検知手段3を所定回数作動させる検知処理を実行し、その処理によって煙検知した回数に基づいて火災判定してスピーカ4から警報を連続的に鳴動させる。
【0030】
検知処理では、たとえば1秒間隔で煙検知手段3を5回だけ間欠作動させ、そこで4回または5回煙検知すれば火災と判定してもよい。火災警報は、たとえば「ヒュンヒュン、火事です、火事です。」というようなメッセージとしても、サイレン音やブザー音などとしてもよい。警報と同時に、ステータスランプ6aを点灯させてもよい。その後、操作部7で停止操作がなされると、たとえば2分間、警報を停止させる。
【0031】
また検知処理によって煙検知した回数が火災判定未満の所定値(ここでは1〜3回)であれば、異物50の堆積と判断して、スピーカ4から可聴域外の音を所定時間(たとえば10秒間)鳴動させる。これによって、煙検知室2内に堆積した異物50を分散させて、誤判定を防止する。
【0032】
なお、異物50の分散処理を実行した回数を更新記憶しておき、所定値に達したときには、ステータスランプ6aを点滅させるなどして、メンテナンスを促してもよい。
【0033】
また検知処理によって煙検知した回数が0回のときには、次の検知処理まで待機すればよい。
【0034】
このように煙検知した回数によって、火災、あるいは異物50の堆積を判断する構成では、受光部32の出力は、煙検知とみなす閾値とだけ比較すればよいので、そのための比較回路が簡単になる。すなわち、受光部32の出力を、火災とみなす閾値、異物50の堆積とみなす閾値の2つとそれぞれ比較するために、比較回路を2系統用意する必要はない。
【0035】
図5は、上記基本動作を示すフローチャートである。ステップ100、101は、検知処理であり、煙検知手段3を5回作動させるまで繰り返される。ステップ102は、煙検知した回数から火災を判定する。このとき煙検知した回数が5回または4回であれば、火災とみなす。ステップ103、104は、警報を鳴動しながら、停止操作を監視する状態を保つ。ステップ105は警報を停止させる。ステップ106〜108は、節電状態で2分間待機してから節電を解除する。
【0036】
ステップ109は、異物50の堆積を判定する。このとき煙検知した回数が3〜1回であれば、異物50の堆積とみなす。ステップ110〜112は、可聴域外の音を10秒間だけ鳴動させる。その後、ステップ106〜108によって、節電状態で2分間待機する。
【0037】
ステップ102、109の両方で、「N」の場合、つまり煙検知した回数が0回の場合は、警報あるいは可聴域外の音を鳴動させずに、ステップ106〜108によって、節電状態で2分間待機する。
【符号の説明】
【0038】
1 火災警報器
2 煙検知室
3 煙検知手段
4 スピーカ
6 制御部
10 スペーサ
22c 凸面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式煙検知手段を収容した煙検知室を有し、前記煙検知手段を所定回数作動させて、煙検知した回数により火災判定してスピーカから警報を鳴動させる光学式火災警報器において、
前記スピーカは、鳴動時に、振動が前記煙検知室に伝播するように配置されており、
前記煙検知した回数が火災判定未満の所定値であれば、前記スピーカから可聴域外の音を所定時間鳴動させる制御部を備えた火災警報器。
【請求項2】
請求項1に記載の火災警報器において、
前記煙検知室と、警報器の構造部または基板との間に、隙間を確保するための複数のスペーサを備えた火災警報器。
【請求項3】
請求項2に記載の火災警報器において、
前記スペーサは、弾性材からなる火災警報器。
【請求項4】
請求項1〜3に記載の火災警報器において、
前記煙検知室は、警報器が天井面に設置されたとき、前記煙検知手段の検知領域の直下に頂点を有する凸面を備えている火災警報器。
【請求項5】
請求項4に記載の光学式火災警報器において、
前記スピーカは、前記凸面の背後に固定されている火災警報器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−109581(P2013−109581A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254200(P2011−254200)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】