説明

光学式計測装置

【課題】表面の一部に傾斜面あるいは曲面が存在する計測対象物体、あるいは傾いた計測対象物体に対して高精度な計測を可能とする光学式計測装置を提供する。
【解決手段】遮光部212は、拡散反射光57の受光中心軸56に対する入射角度範囲を規定するように構成される。すなわち開口212aの径によって、拡散反射光57が遮光部212の開口212aを通過するときに拡散反射光57の進行方向と受光中心軸56とがなす最大角度θが規定される。また、投光部202は、計測対象物体5の表面5Aで正反射された投光ビーム(すなわち反射光ビーム56)のうちレンズ部211により集光される成分について、受光中心軸56上での集光位置Pが受光中心軸56上における遮光部212の範囲内に含まれるように投光ビーム53を投光する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学式計測装置に関し、特に、光学式計測装置に含まれる光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な計測対象物体の変位、長さ、角度などを計測するためのセンサ装置が知られている。たとえば、光源からの光をラインビームに整形して計測対象物体表面に所定角度で照射する投光部と、二次元撮像素子を使用して計測対象物体表面のラインビーム照射位置をラインビームの照射方向とは異なる方向から撮影して光切断面の断面輪郭線像を含む画像を取得する撮影部と、この撮影部を介して得られる光切断面の断面輪郭線像に基づいて所定の計測処理を実行することにより、計測値及び/又は判定値を生成する計測部と、を具備する、光切断法を利用した光学式計測装置(『変位センサ』とも称される)が知られている。
【0003】
上記の光学式計測装置は三角測量の原理を応用して変位を計測するものであるが、撮像部で受光する計測対象領域からの反射光の種類により2種類に大別できる。その1つは物体からの正反射光を直接受光する方式のものであり、もう1つは、投光ビームを測定面に対して垂直に投光して反射光中の拡散反射光を受光する方式のものである。
【0004】
ここで、ラインビームの断面のなす直線の方向は、二次元撮影素子の視野内においては、垂直走査方向(または水平走査方向)に対応する。また、計測装置(一般には、センサヘッド)と計測対象物体との距離が変化したときにラインビームのなす断面輪郭線像が二次元撮像素子の視野内において移動する方向は、水平走査方向(または垂直走査方向)に対応する。これにより、二次元撮像素子の受光面には光切断面の断面輪郭線像が結像される。
【0005】
かかる光学式計測装置によれば、切断光として直線状断面を有するラインビームを採用しているため、切断光として点状断面を有するスポット光を採用するもののように、切断光と計測対象物体とを相対移動させずとも、計測対象物体表面の一定直線に沿う一連の計測点の情報を一括して取得することができる。そのため、たとえば生産ラインを流れる工業製品の検査等に応用すれば、それら一連の計測点の情報に基づいて、計測対象物体表面各部の寸法を精密に測定して、製品の良否判定等を迅速かつ確実に行なうことができる。
【0006】
この種の工業製品の検査等においては、様々な形状を有する計測対象物体を想定せねばならない。たとえば工業製品の中には、表面の一部が傾斜面あるいは曲面となっているためにセンサが取り込める反射光量が部分的に異なるものがある。このような工業製品の検査(表面変位の計測など)を行なう場合には、反射光量が不足して画像が暗くなる、または光が取り込めないため正常に計測ができないことがある。
【0007】
特許第3575693号公報(特許文献1)には、このような問題を解決するために、撮影条件が異なる複数の画像を合成して合成画像に基づいて計測を行なう光学式計測装置が開示されている。
【特許文献1】特許第3575693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特許第3575693号公報(特許文献1)に記載の技術によれば、表面の一部が傾斜面あるいは曲面であることが予め分かっている計測対象物体については、変位の計測が可能と考えられる。しかしながら、生産ラインを流れる多数の工業製品の中には、たとえばステージとの間に異物が挟まったために、傾いた状態のままで移動する製品がまれに存在することが考えられる。このように計測対象物体が予期せぬ理由により傾斜している場合においてもその物体の表面変位計測が可能かどうかについては、特許文献1に特に説明されていない。
【0009】
また、そのような事態を予め想定して、すべての計測対象物体に対して一律に複数の画像を撮像し、それらを合成することで各計測対象物体の変位を計測することが考えられる。ただしこの場合には、生産ラインでの生産性が低下することが予想される。
【0010】
本発明の目的は、表面の一部に傾斜面あるいは曲面が存在する計測対象物体、あるいは傾いた計測対象物体に対して高精度な計測を可能とする光学式計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は要約すれば、光学式計測装置であって、投光部と、受光部と、計測処理部とを備える。投光部は、計測領域中に存在する計測対象物体に向けて照射光を投光する。受光部は、計測対象物体の表面で照射光が反射されて生じた拡散反射光および正反射光のいずれの反射光についても、計測対象物体の表面の変位に応じて得られる反射光像の位置が変化する方向から受光して、反射光像の画像を取得する。計測処理部は、受光部により取得された画像に基づいて、照射光を反射させる計測対象物体の表面の変位を計測する。受光部は、撮像部と、結像部と、遮光部とを含む。撮像部は、入射した光の像を画像として取得する。結像部は、投光部から投光された照射光が計測対象物体の表面で反射して生じた反射光を、撮像部に結像させる。遮光部は、計測領域中に存在する計測対象物体によって照射光が拡散反射された場合に、当該拡散反射光のうち結像部の中心光軸を含む所定の平面に平行な成分について、撮像部に到達する拡散反射光の結像部の中心光軸に対する入射角度範囲を規定する。投光部は、計測領域中に存在する計測対象物体によって照射光が正反射された場合に、照射光の正反射光のうち上記所定の平面に平行な成分が、遮光部の存在する結像部の中心光軸方向の位置で集光されるように、照射光を投光する。
【0012】
「遮光部が存在する前記中心光軸の方向の位置」とは、結像部の中心光軸の方向での遮光部の位置が、規定される拡散反射光の入射角度範囲の両端で同じ位置となる場合も、異なる位置となる場合も含む。規定される拡散反射光の入射角度範囲の両端で遮光部が異なる位置となる場合には、それら異なる位置が存在する結像部中心光軸方向の範囲内において、正反射光のうちの所定の平面に平行な成分が集光される場合も含む。
【0013】
好ましくは、投光部は、照射光としてラインビームを、計測領域中に存在する計測対象物体に向けて照射する。受光部は、計測対象物体の表面で反射されたラインビームの反射光を、計測対象物体の表面上におけるライン方向のビームの分布について、計測対象物体の表面の変位に対応して得られる反射光像の位置の分布が変化する方向から受光する。所定の平面は、投光部から照射されるラインビームの中心光軸と、結像部の中心光軸とを含む入射平面に垂直であり、かつ結像部の中心光軸を含む平面である。
【0014】
好ましくは、投光部は、照射光としてラインビームを、計測領域中に存在する計測対象物体に向けて照射する。受光部は、計測対象物体の表面で反射されたラインビームの反射光を、計測対象物体の表面上におけるライン方向のビームの分布について、計測対象物体の表面の変位に対応して得られる反射光像の位置の分布が変化する方向から受光する。所定の平面は、平面の計測対象物体が予め定められた計測対象範囲内の傾きで計測領域中に置かれた場合に、投光部からのラインビームが計測対象物体の表面で反射されて生じる反射光ビームの計測対象物体の表面上におけるライン方向と、結像部の中心光軸とに平行な平面である。
【0015】
「予め定められた計測対象範囲内の傾き」とは、光学式計測装置が仕様などに基づいて予め定めている、計測対象物体の計測可能な(仕様によって計測対象にすると定めた)角度範囲内の傾きである。
【0016】
好ましくは、遮光部には、結像部の中心光軸を中心とする円形の開口が形成される。遮光部は円形の開口の外側の光を遮光する。
【0017】
好ましくは、結像部は、複数のレンズを組み合わせた組レンズにより構成される。遮光部は、複数のレンズの並びの方向について両端に位置するレンズの間に配置される。
【0018】
好ましくは、結像部は、単レンズである。照射光の正反射光のうちの所定の平面に平行な成分について、結像部の中心光軸方向での集光位置は、単レンズの内部にある。
【0019】
好ましくは、遮光部は、計測対象物体の表面における予め定められた有効計測範囲からの拡散反射光のうち所定の平面に平行な成分について、結像部の中心光軸に対する入射角度範囲を規定する。
【0020】
好ましくは、投光部は、ラインビームの所定の平面に平行方向のビーム幅が、ラインビームが投光部から受光部へ進むにつれて次第に小さくなるように、ラインビームを投光する。所定の平面は、投光部から照射されるラインビームの投光部中心光軸と、結像部の中心光軸である結像部中心光軸とを含む入射平面に垂直であり、かつ結像部の中心光軸を含む平面である。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光学式計測装置によれば、正反射成分を持つ表面の一部に傾斜面あるいは曲面が存在する計測対象物体、あるいは傾いた計測対象物体に対して高精度な計測が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
[光学式計測装置の構成]
まず、図1〜図4を用いて、本実施の形態に係る光学式計測装置(変位センサ)の概略構成について説明する。
【0024】
本実施形態の光学式計測装置は、制御盤などへのコンパクトな収容を可能とするために、また狭小な計測環境への据え付けを容易とするために、信号処理部とセンサヘッド部が分離されたいわゆるアンプ分離型の変位センサである。
【0025】
図1は、本実施形態の光学式計測装置の信号処理部1およびセンサヘッド部2の外観斜視図である。図1を参照して、信号処理部1の外殻ケース10は、やや細長い直方体形状の形態を有している。外殻ケース10の前面からは、図示されていないが外部接続コードが引き出されている。この外部接続コードには、外部入力線、外部出力線、電源線等が含まれている。外部入力線は、たとえば上位装置としてのPLC(Programmable Logic Controller)等から信号処理部1に対して各種の指令を外部から与えるためのものである。外部出力線は、信号処理部1の内部で生成されたスイッチング出力やアナログ出力などをPLC等へ出力するためのものである。電源線は、信号処理部の内部回路に対する電源を供給するためのものである。また、外殻ケース10の下面には、図示されていないがUSB(Universal Serial Bus)コネクタと、RS-232Cコネクタとが設けられている。
【0026】
外殻ケース10の上面には開閉可能な操作部蓋14が設けられている。この操作部蓋14の下には、信号処理部1における各種の指令操作などを行なうための操作部が設けられている。また、外殻ケース10の上面には、センサヘッド部2により取得された計測対象画像情報や計測結果、計測値、設定画面等の表示を行なうための表示部15が配置されている。
【0027】
外殻ケース10の左右側面には、信号処理部間コネクタ蓋16が設けられている。この信号処理部間コネクタ蓋16の内部には、他の信号処理部1を接続するための信号処理部間コネクタが設けられている。複数の信号処理部1は、DINレールを介して隣接結合状態で1列に連装可能とされる。信号処理部1の外殻ケース10の上面には、センサヘッド部接続用コネクタ17が設けられている。信号処理部1はこのセンサヘッド部接続用コネクタ17を介して後述するセンサヘッド部2に接続されている。
【0028】
センサヘッド部2は、センサヘッド部接続用コネクタ17に対応する信号処理部接続用コネクタ27と、ケーブル21と、センサヘッド本体部20とを含む。
【0029】
センサヘッド本体部20は、投光窓51から計測対象物体にレーザ光を照射し、受光窓52に計測対象物体からの反射光を受ける。センサヘッド本体部20は、計測対象物体の形状に応じて光像位置が変化して見える角度から計測対象物体の表面を撮影して、撮影画像データを映像信号として出力する。
【0030】
図2は、センサヘッド本体部から照射されるレーザ光について説明するための図である。図2に示すように、センサヘッド本体部20に内蔵された投光素子(レーザダイオード)から出射されるパルス状レーザ光が、図示しない投光レンズを通して、計測対象物体5の表面にラインビームL1として照射される。これにより、計測対象物体5の表面にはラインビームの照射光像LM(以下、断面輪郭線像とも称する)が形成される。
【0031】
計測対象物体5で反射したラインビームの反射光L2はセンサヘッド部2内の図示しない受光レンズを通して二次元撮像素子(フォトダイオードアレイ、CCD、CMOS撮像素子等)へと入射される。
【0032】
すなわち、計測対象物体5の表面を、2次元撮像素子によりラインビームの照射方向とは異なる方向から撮影することにより、ラインビームの照射光像LMを含む映像信号を取得する。そして、この映像信号に基づいて、所定の特徴量が抽出されて、目的とする変位量(この例ではセンサヘッド本体部20と計測対象物体5との距離)の照射光像LMに沿った分布が求められる。
【0033】
図3は、図1における信号処理部1の電気的ハードウェア構成の全体を示すブロック図である。図3に示されるように、信号処理部1は、制御部101と、記憶部102と、表示部103と、センサヘッド部2との通信部104と、外部機器との通信部105と、キー入力部106と、外部入力部107と、出力部108と、電源部109とを含む。
【0034】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)とFPGA(Field Programmable Gate Array)とにより構成され、信号処理部1全体の統括制御を担う。この制御部101は、センサヘッド部2からの映像信号に基づいて後述する各種機能を実現することにより上記の計測処理を実行すると共に、映像信号を所定の閾値を基準として二値化した後、これを出力データとして、出力部108から外部へと送出する。
【0035】
記憶部102は、不揮発性メモリ(EEPROM)102aと、表示部103に表示される画像データを記憶する画像メモリ102bとを含む。なお、不揮発性メモリ102aとしてフラッシュメモリを用いても良い。
【0036】
表示部103は、閾値や計測対象物体までの距離等に係る各種数値等が表示される液晶表示部103aと、目的とする出力であるオン/オフ状態等を示す表示灯LED103bとを含む。通信部104は、センサヘッド部2との通信を担うものである。
【0037】
通信部105は、外部のパーソナルコンピュータ(PC)110に接続するためのUSB通信部105aと、コマンドやプログラムデータの送受信などに使用されるシリアル通信部105bと、所定のプロトコル並びに送受信フォーマットに従って、左右の隣接する他の信号処理部との間でデータ通信を行なう信号処理部間通信部105cとを備えている。
【0038】
キー入力部106は、図示しない各種設定のためのスイッチや操作ボタン等で構成される。外部入力部107はたとえばPLC等の上位装置から、信号処理部1に対して各種の指令を受信するためのものである。出力部108は、目的とするオン/オフ出力をPLC等の上位装置に出力するために使用される。電源部109は、制御部101並びに外部のハードウェア回路に対し電源を供給するものである。
【0039】
図4は、センサヘッド部2の電気的ハードウェア構成を示すブロック図である。図4に示されるように、センサヘッド部2は、制御部201と、計測対象物体5へと向けてラインビームを照射するための投光部202と、計測対象物体5により反射されて到達するラインビームを受光する受光部203と、表示灯LED204と、記憶部205と、通信部206とを備えている。
【0040】
制御部201は、CPU(Central Processing Unit)とPLD(Programmable Logic Device)とにより構成され、センサヘッド部2の各構成要素202〜206を統括制御するとともに、受光信号を受光部203から取り出し、信号処理部1に送り出す処理を担うものである。
【0041】
投光部202は、この例では投光素子としてのレーザダイオードと投光回路とを備え、計測対象領域へ向けてラインビームを照射する。図示しないが投光回路はたとえばAPC(Auto Power Control)機能を有し、レーザダイオードの光出力をモニタして、その結果をレーザダイオードに供給する駆動電流にフィードバックさせることにより、レーザダイオードの光出力を一定に保つ。
【0042】
受光部203は、ラインビームの反射光を受光して、受光した光の画像を取得する2次元撮像素子(フォトダイオードアレイ、CCD、CMOS撮像素子等)と、制御部201からのタイミング制御信号に同期して、2次元撮像素子から得られる受光信号を増幅して制御部201に出力する受光信号処理部とを含む。表示灯LED204は、センサヘッド部2の各種動作状態に対応して点消灯する。
【0043】
記憶部205は、たとえば不揮発性メモリ(EEPROM)から構成され、この例では、センサヘッド部2を同定するためのID(識別情報)等が記録される。通信部206は、制御部201の命令に従って、信号処理部1との通信を担うものである。
【0044】
本実施形態のセンサヘッド部2は、上述のような回路構成とされ、信号処理部1の指令に応じて適宜の投受光処理を行なう。なお信号処理部1の通信部104とセンサヘッド部2の通信部206との間の通信方式は特に限定されるものではないが、一例として、LVDS(Low voltage differential signaling)を適用することができる。
【0045】
[計測原理および計測動作例]
図5は、センサヘッド本体部20の光学系の断面の構成を示す図である。図5を参照して、本実施の形態に係る光学系は、レーザダイオード202aと、スリット202bと、投光レンズ部202cと、2次元CCD203aと、受光光学系203bとを含む。なおレーザダイオード202aと、スリット202bと、投光レンズ部202cとは、図4に示す投光部202を構成する。本実施の形態では、スリット202bは投光レンズ部202cの内部に配置される。
【0046】
レーザダイオード202aから発せられた投光ビーム53(照射光)は、スリット202bおよび投光レンズ部202cにより成形されて、所定の計測領域中に存在する計測対象物体5の表面5Aにラインビームとして照射される。投光レンズ部202cは単レンズもしくはアナモフィック系単レンズ(たとえばシリンドリカルレンズ)により構成されてもよいし、複数のレンズを組み合わせた組レンズもしくはアナモフィック系単レンズ(たとえばシリンドリカルレンズ)を含む複数のレンズを組み合わせた組レンズでもよい。投光レンズにアナモフィック系単レンズを用いることによって、計測対象物体5の表面において、ラインビームの短手方向にラインビームを絞ることができる。
【0047】
なお、図5では断面図を示しているので、図中、断面内(紙面上)において投光ビーム53は収束光として絞られて計測対象物体へ照射されるよう示されているが、断面に垂直な方向(紙面垂直方向)に関しては、投光ビーム53は線状に延びたラインビームとして計測対象物体5へ照射される。なお、以下の説明における「照射領域」とは、計測対象物体5の表面5Aにおいて投光ビーム53の断面輪郭線像が存在しうる全範囲(2次元撮像素子で撮像できる全範囲)であると規定する。
【0048】
一方、この投光ビーム53(ラインビーム)の照射により生じた断面輪郭線像は、所定の方向から受光光学系203bを介して、2次元撮像素子としての2次元CCD203aで撮影される。すなわち受光光学系203bおよび2次元CCD203aからなる受光部は、計測対象物体5の表面5Aで投光ビーム53が反射されて生じた拡散反射光および正反射光のいずれの反射光についても、計測対象物体5の表面5Aの変位に応じて得られる反射光像の位置が変化する方向から受光する。そして受光部はその反射光像の画像を取得する。2次元CCD203aは、計測対象物体5の表面5Aの変位の変化に対応して断面輪郭線像の撮像面203cにおける結像位置が変化する方向から断面輪郭線像を撮像する。このように三角測量の原理に基づいて、断面内に垂直な方向に沿う断面輪郭線像の各位置での変位が計測される。
【0049】
以下では、投光ビーム53の中心光軸(投光中心軸54)、受光光学系203bの中心光軸(受光中心軸56)を含む面を「入射平面」と定義する。また、平面計測対象物体5の表面5Aにおける断面輪郭線像の中心軸と、受光光学系203bの中心光軸に対応する受光光軸とを含む面を「ビーム集光面」と定義する。
【0050】
断面輪郭線像の中心光軸としては、ラインビームの長手方向に平行な軸でラインビームの短手方向の幅の中心を通る軸、ラインビームの短手方向に平行な軸でラインビームの長手方向の幅の中心を通る軸の両方が適用可能である。なお、図5においてはラインビームの長手方向とは紙面垂直方向であり、ラインビームの短手方向とは、ラインビームの長手方向に垂直かつ紙面に平行方向である。
【0051】
受光光学系203bは、反射光ビーム55を2次元CCD203aの撮像面203c上に結像させる。本実施の形態では、反射光ビーム55は投光ビーム53の正反射光である。
【0052】
図6に示すように、受光光学系203bはレンズ部211およびレンズ部211を固定するためのレンズホルダ213を備える。なお、レンズホルダ213は一体構造でもよいし、分離構造であってもよい。レンズ部211は反射光ビーム55を撮像面203cに結像させるためのものである。この点を示すために、図6(A)〜図6(D)の各々には反射光ビーム55の入射側および出射側を示している。ただし図6での説明は一例であって、「入射側」および「出射側」の配置が逆であってもよい。
【0053】
図6(A)および図6(B)は、複数のレンズ211a〜211cを含む組レンズによりレンズ部211を構成した例を示す図である。図6(C)および図6(D)は、単レンズによりレンズ部211を構成した例を示す図である。反射光ビーム55を撮像面203cに結像させることが可能であれば、レンズ部211を構成するレンズの枚数は特に限定されない。また、複数のレンズによりレンズ部211を構成する場合において、各レンズの種類は特に限定されるものではない。
【0054】
図6(A)および図6(C)に示した構成によれば、受光光学系203bは、レンズ部211およびレンズホルダ213に加えて遮光部212を備える。遮光部212は、複数のレンズ211a〜211cのうちの両端の屈折面の間もしくは屈折面近傍に配置されており、円形の開口212aが形成される。円形の開口の外側の光は遮光部212aにより遮光される。
【0055】
屈折面近傍とは、屈折面とは接していないが、実質的に屈折面に入射する光の範囲を規定することになる程度の距離範囲内を意味する。遮光部212は、レンズホルダに一体的に設けてもよい。レンズ211a〜211cのうちの両端の屈折面とは、具体的には、「入射側」に向けられたレンズ211aのレンズ面214および「出射側」に向けられたレンズ211cのレンズ面215である。
【0056】
なお、図6(A)では、遮光部212はレンズ211bとレンズ211cとの間に配置されているが、レンズ211aとレンズ211cとの間に配置されてもよい。このように本実施の形態では、遮光部212は複数のレンズの並びの方向について両端に位置するレンズの間に配置される。また、遮光部はレンズ211aおよび211cの両端の屈折面近傍の間に複数配置されてもよい。また、図6(C)に示した構成においては、遮光部212は「出射側」の屈折面(レンズ面216)近傍に設けられているが、図6(C)に示すレンズ部211の「入射側」の屈折面(レンズ面217)の近傍に遮光部212が配置されていてもよい。
【0057】
一方、図6(B)および図6(D)に示した構成においては、レンズホルダ213が遮光部の機能を兼ね備えている。具体的に説明すると、レンズ211a〜211cの周縁部がレンズホルダ213により覆われている。
【0058】
図6(A)〜図6(D)の各々にはレンズ軸を示しているが、このレンズ軸は上記の受光中心軸56に対応する。さらに、受光中心軸56上の位置X1から位置X2までの範囲は、受光中心軸56上における遮光部の範囲として規定される範囲に対応する。図6(A)および図6(C)に示した構成のようにレンズホルダ213とは別に遮光部212が設けられる場合には、遮光部の範囲は、たとえば遮光部212の厚みに対応する受光中心軸56上の範囲となる。一方、図6(B)および図6(D)に示した構成のように、レンズホルダ213が遮光部212の機能を兼ね備える場合には、レンズホルダ213により、受光中心軸56上における遮光部の範囲が規定される。
【0059】
なお、遮光部212を複数設ける場合には、その複数の遮光部212の両端に位置する2つの遮光部によって受光中心軸56上における遮光部の範囲が規定してもよい。また、受光中心軸56上における遮光部の範囲とは必ずしも広がりを持つものと限定されず、たとえば図6に示す位置X1あるいは位置X2等、ある特定の位置であってもよい。
【0060】
図5に戻り、2次元CCD203aは、その撮像面203cが受光中心軸56に対して垂直よりやや斜めに傾くよう配置されているが、この配置はシャインプルーフの原理を利用したものである。図7に示すように、撮像面203cと投光中心軸54とは非平行の関係にある。また、撮像面203cとレンズ面(レンズ部211の光軸に垂直な面)とは非平行の関係にある。ただし、投光中心軸54と受光中心軸56とが垂直に配置されている場合においては、例外として撮像面203cが受光中心軸56に対して垂直に配置され、かつ撮像面203cと投光中心軸54とは平行の関係、撮像面203cとレンズ面(レンズ部211の光軸に垂直な平面)とは平行の関係になる。なお図7では、説明の理解を容易にするために、投光ビーム53を投光中心軸54と重ねて示している。
【0061】
さらに、図7に示していないが、投光中心軸54と撮像面203cとレンズ面とが1軸上で交わるように、2次元CCD203aおよびレンズ部211が配置される。ただし投光中心軸54と受光中心軸56とが垂直に配置されている場合においては、例外として投光中心軸54と撮像面203cとレンズ面とがすべて平行に配置される。このような配置関係により、照射領域Aにおける変位(段差)を計測する場合にその段差の計測範囲の上端位置、中央位置、下端位置のいずれにおいても焦点を合わせることができる。これによって計測対象物体表面の変位を精度よく計測することが可能となる。
【0062】
続いて、図8および図9を参照して、一例として、蒲鉾型(扁平に変形した半円型)の計測対象物体の段差の計測について説明する。
【0063】
図8は、センサヘッド本体部からの照射光と反射光を示した図である。
図9は、2次元撮像素子で反射光を断面輪郭線像として撮像した画像を示した図である。
【0064】
図8に示すようにレーザ光が照射された計測対象物体の表面を撮影すると、表面高さに応じて2次元撮像素子の受光面上の輝点の位置が変化する図9のような断面輪郭線像が得られる。物体表面の高さが変化すると撮像素子の受光面上で所定の方向(変位方向)に像が移動することになる。この像から、各ラインビームが照射されている物体表面上のトップとボトムの差を算出し、照射角と受光角を用いて演算を行なえば計測対象物体表面の段差、すなわちラインビームが照射された部分の任意の点における変位の測定が可能となる。断面輪郭線像に基づく計測処理は信号処理部1(図1、図3参照)により実行される。
【0065】
なお、上記した段差の計測方法と同様の方法により、物体表面における突起部の高さ、あるいは物体表面に形成された溝部の深さの計測も可能である。また上記方法によれば、突起部あるいは溝部の幅の測定も可能である。
【0066】
[本実施形態の光学系]
図10は、本実施形態の光学系をビーム集光面に平行な方向に沿って示す概略構成図である。図10を参照して、本実施形態の光学系は、投光部202、受光光学系203bおよび撮像部としての2次元CCD203aを備える。投光部202は、計測対象物体5の表面5Aにおいて線状となる投光ビーム53を計測対象物体5に投光する。受光光学系203bは、その投光ビーム53の計測対象物体5の表面(照射領域A)での反射光を、2次元CCD203aの撮像面203cに結像させる。なお、ビーム集光面は、本発明における「所定の平面」に対応する。また、図10に示した光学系においては、ビーム集光面が入射平面に垂直である。
【0067】
受光光学系203bは、レンズ部211および遮光部212を含む。図10ではレンズ部211については概略的にレンズ211a,211cのみを示すとともに、レンズ211a,211cを模式的に薄肉レンズとして示す。また、図10では遮光部212はレンズホルダ213と別に設けられてもいるが、レンズホルダ213に遮光部212の機能を兼ね備えてもよいのは上述の通りである。
【0068】
照射領域Aの各点(代表的に照射領域Aの両端に位置する点P1,P2を示す)において投光ビーム53が拡散反射されることにより生じた拡散光のうち、ビーム集光面に平行な方向の成分を拡散反射光57とする。
【0069】
遮光部212は、計測領域中に存在する計測対象物体5によって投光ビーム53が拡散反射された場合に、当該拡散反射光のうちビーム集光面に平行な成分について、2次元CCD203aに到達する拡散反射光57の受光中心軸56に対する入射角度範囲を規定するように構成される。具体的には、開口212aの径によって、拡散反射光57が遮光部212の開口212aを通過するときに拡散反射光57の進行方向と受光中心軸56とがなす最大角度θが規定される(図10(A))。
【0070】
図10(A)では、拡散反射光57が受光光学系203bに入射した後の拡散反射光57の軌跡を示している。拡散反射光57は、受光光学系203bにより、撮像面203cのある撮像領域203d内に結像される。撮像領域203dは、撮像面203cのうち撮像可能な領域として予め定められた領域(有効撮像領域)に含まれる。この有効撮像領域内に光像を結像させることによって、2次元CCD203aは計測対象物体5の表面5Aの光像を取得することが可能となる。これにより変位の測定が可能となるので、照射領域Aのうち有効撮像領域内に光像を結像させることが可能な範囲(領域)を以下では「有効計測範囲」と呼ぶことにする。なお上述のように有効計測領域とは、たとえば撮像面203cの有効撮像領域に基づいて予め定められるものである。
【0071】
また、図10(B)に示すように、照射領域Aで正反射される投光ビームのうちビーム集光面に平行な成分を反射光ビーム55とする。投光部202は、反射光ビーム55が、遮光部212の存在する受光中心軸56方向の位置で集光されるように投光ビーム53を投光する。すなわち、反射光ビーム55の受光中心軸56上での集光位置Pは、受光中心軸56上において遮光部212を規定する範囲内に含まれる。
【0072】
なお、遮光部212が存在する受光中心軸56方向の位置とは、受光中心軸56方向での遮光部212の位置が、規定される拡散反射光の入射角度範囲の両端で同じ位置となる場合、異なる位置となる場合の両方を含む。また、規定される拡散反射光57の入射角度範囲の両端で遮光部212が異なる位置となる場合には、それら異なる位置が存在する受光中心軸56方向の範囲内で反射光ビーム55が集光される場合も含む。
【0073】
なお、図10では、遮光部212を規定する範囲は1点で示されているが、図6に示したように受光中心軸56上において遮光部212を規定する範囲は1点に限定されるものではなく、ある程度の幅を有していてもよい。
【0074】
また、「集光位置」とは、図10においては光が1点に集まる位置として示しているが、これに限定されない。たとえば反射光ビーム55のビーム集光面方向のビーム幅が最小となる位置でもよいし、その近傍の位置でもよい。またビーム幅が最小となる位置およびその近傍を含む範囲であってもよい。反射光ビーム55が集光された状態であるとみなすことが可能な位置であれば上記の「集光位置」とすることができる。
【0075】
また、投光部202は、ビーム集光面方向のビーム幅が一定となる投光ビーム53を投光してもよいが、本実施の形態では、投光部202から受光光学系203bへ投光ビーム53が進むにつれてビーム集光面方向のビーム幅が次第に小さくなるように、投光部202が投光ビーム53を投光する。ビーム幅が次第に小さくなるように投光ビーム53を投光することによって、レンズ部211(レンズ211a〜211c)の物理的な直径を小さくできる。したがって図10に示す光学系を備えるセンサヘッド本体部20を小型化できる。
【0076】
なお、図10に示した構成は、本実施形態に係る光学系の一態様を示したものであり、拡散反射光および正反射光のビーム集光面に平行な成分について、上記関係を成立させるものである。本実施形態に係る光学系は、拡散反射光および正反射光の各々について、受光中心軸56を含む「所定の平面」に平行な成分が上記関係を満たすように構成されるものである。すなわち本実施形態では、受光中心軸56を含む「所定の平面」をビーム集光面以外にも定めることが可能である。この場合においても、遮光部212は、拡散反射光のうち所定の平面に平行な成分について、当該拡散反射光のうち2次元CCD203aに到達する拡散反射光の受光中心軸56に対する入射角度範囲を規定する。さらに、投光部202は、正反射光の所定の平面に平行な成分が、遮光部212の存在する受光中心軸56方向の位置で集光されるように投光ビーム53を投光する。
【0077】
次に、本実施の形態に係る光学系について図11および図12を参照しながら詳細に説明する。
【0078】
図11は、計測対象物体表面で拡散反射された光ビームの軌跡を説明する図である。図11(A)は、レンズホルダ213が遮光部の機能を兼ね備えた場合を示す図であり、図11(B)は、遮光部をレンズホルダ213とは別に設けた場合を示す図である。
【0079】
図11を参照して、点P1,P2は図10に示した点P1,P2にそれぞれ対応するものであり、照射領域Aに照射されたラインビームの両端の位置に対応する。拡散反射光57a,57bは、点P1,P2においてラインビームが拡散反射されることにより生じた光であり、受光光学系203bによって撮像面203c上に結像される。なお、図11は、拡散反射光57a,57bのビーム集光面方向の軌跡を示している。
【0080】
図11(A)を参照して、角度θ1は、拡散反射光57aが受光光学系203bに入射する場合における、ビーム集光面方向での拡散反射光57aの最大傾斜角を示している。角度θ2は、拡散反射光57bが受光光学系203bに入射する場合における、ビーム集光面方向での拡散反射光57bの最大傾斜角を示す。「ビーム集光面方向での拡散反射光の傾斜」とは、ビーム集光面に垂直な軸を中心として、ビーム集光面上で拡散反射光の進行方向が回転した状態を意味する。
【0081】
図11(A)では、レンズホルダ213の一部が拡散反射光57a,57bの遮蔽部位として機能するため、ビーム集光面方向での拡散反射光の最大傾斜角はその遮蔽部位によって規定されることを示している。すなわち角度θ1は遮蔽部位213a,213bにより規定され、角度θ2は遮蔽部位213c,213dにより規定される。
【0082】
図11(B)に示した構成では、ビーム集光面方向での拡散反射光の最大傾斜角は、遮光部212の開口212aによって規定される。角度θ1aは、拡散反射光57aが受光光学系203bに入射する場合における、ビーム集光面方向での拡散反射光57aの最大傾斜角を示し、角度θ2aは、拡散反射光57bが受光光学系203bに入射する場合における、ビーム集光面方向での拡散反射光57bの最大傾斜角を示す。
【0083】
図12は、計測対象物体表面で反射された投光ビームの軌跡を説明する図である。図12(A)は、反射光ビームのビーム集光面方向での集光位置を説明する図である。図12(A)を参照して、反射光ビーム55の集光位置Pは、受光中心軸56上において遮光部212により規定される範囲にある。具体的には、集光位置Pは、遮光部212の厚みとして規定される受光中心軸56上の範囲のほぼ中央にある。
【0084】
図12(B)は、計測対象物体5が傾くことにより投光ビームが傾いた状態を示す図である。なお図12(B)は、図12(A)と同様に、反射光ビーム55のビーム集光面方向の成分を示している。図12(B)を参照して、計測対象物体5が図12(A)に示した状態より傾いていくと、投光ビームが傾くことにより反射光ビーム55も傾く。反射光ビーム55が傾くにつれて、その一部は遮光部212により遮られ、最終的には反射光ビーム55のすべてが遮光部212により遮られる。
【0085】
上記のように光学系を構成することによって、計測対象物の傾斜している場合、あるいは計測対象物の表面の一部が傾斜面(あるいは球面)である場合においても、精度のよい計測が可能となる。この点について、遮蔽部の範囲内に反射光ビームの集光位置が存在しない場合と比較しながら説明する。
【0086】
図13は、遮蔽部の範囲内に反射光ビームの集光位置が存在しない状態を説明する図である。図13を参照して、投光ビーム53は、ステージ5S上に載置された計測対象物体5の表面5Aにおいて正反射される。投光ビーム53の正反射により生じた反射光ビーム55は遮光部212の開口212aを通る。なお開口212aは円形である。この光学系においては、ビーム集光面方向のビーム幅が一定のまま、反射光ビーム55が遮光部212の開口212aを通過する。この場合、反射光ビーム55は遮光部212の開口212aを通過後に集光されるので、その集光位置は遮光部212の外側となる。なお、図13には、投光ビーム53の断面輪郭線像が存在しうる全範囲(2次元CCD203a(図13に示さず)で撮像可能な全範囲)としての照射領域Aを示している。
【0087】
図13は、計測対象物体5がステージ5S上に正しく載置された状態を示している。この状態では反射光ビーム55は開口212aの周縁に遮られることなく開口212aを通過できる。
【0088】
しかしながら計測対象物体5が傾くことがある。たとえばステージ5S上に段差がある場合、あるいはステージ5S上と計測対象物体5との間に異物が挟まった場合などにおいては、表面5Aが傾いた状態で計測対象物体5がステージ5S上に載置される。したがって、実線の矢印に示すように計測対象物体5の左右方向(紙面左右方向に等しい)に傾斜が生じたり、破線の矢印に示すように計測対象物体5の前後方向(紙面垂直方向に等しい)に傾斜が生じたりする。計測対象物体5が傾斜した場合には、反射光ビーム55の進行方向が変わるために反射光ビーム55の一部あるいは全部が遮光部212により遮られる。
【0089】
計測対象物体5がラインビームの長手方向に傾いた場合(図13に示す破線の矢印の方向に傾いた場合)、断面輪郭線像は斜めに傾く。また、投光ビーム53は、短手方向には、計測対象物体5の表面5Aにおいて集光されて計測対象物体5の表面5Aでの反射後に広がりながら進むものとする。
【0090】
図14は、図13に示した光学系のうちの受光光学系の構成例を示す概略図である。なお図14に示した構成では、レンズホルダ213が遮光部の機能を兼ね備えるものとする。また、図14は、ビーム集光面方向に沿った反射光ビーム55の軌跡を示している。図14(A)を参照して、反射光ビーム55の集光位置Paは、レンズホルダ213(遮光部)の外側にある。
【0091】
図14(B)は、図14(A)に示した光学系において、計測対象物体5が傾くことにより投光ビームが傾いた状態を示す図である。図14(B)を参照して、計測対象物体5が図14(A)に示した状態より傾いていくと、投光ビーム(図示せず)が傾くことにより反射光ビーム55も傾く。反射光ビーム55が傾くにつれて、その一部が遮光部212により遮られ、最終的には反射光ビーム55のすべてが遮光部212により遮られる。ただし、図12に示した構成に比較すれば、遮光部212により反射光ビーム55の一部が遮られ始めるときの反射光ビーム55の傾斜角度(受光中心軸56に対する角度)が小さくなる。このために、以下の図15〜図18に示した課題が生じやすくなる。なお図15、図17、図18は、投光ビーム53および反射光ビーム55の入射平面に平行な成分を示している。
【0092】
図15は、図13に示した光学系において、計測対象物体5の左右方向に計測対象物体5が傾斜した場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。図15に示すように、反射光ビーム55の一部は、遮光部212によって遮られる。このため2次元CCD(図15に示さず)の受光量が減少する。さらに、開口212aの周縁部分では、回折光58(図16参照)が生じる。この回折光が受光レンズを介して2次元CCDに入射する可能性がある。これらの理由により計測結果に誤りが生じることが考えられる。
【0093】
図16は、図13の光学系において、計測対象物体5の前後方向に計測対象物体5が傾斜した場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。図16に示すように、反射光ビーム55の一部は、遮光部212によって遮られる。このため2次元CCD(図16に示さず、以下同じ)の受光量が減少する。さらに開口212aの周縁部分では回折光58が生じる。この回折光58が図示しない受光レンズを介して2次元CCDに入射する可能性がある。これらの理由により計測結果に誤りが生じることが考えられる。
【0094】
また、計測対象物体表面の一部が傾斜面(あるいは曲面)である場合、その面の傾斜角度(あるいは曲率)が大きくなると、図15あるいは図16に示した状態と同様の状態が発生しうる。図17は、計測対象物体表面が傾斜している場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。図17に示すように、計測対象物体5の表面5A(照射領域)の傾斜(あるいは曲率)が大きくなると、反射光ビーム55の一部は、遮光部212によって遮られる。
【0095】
また、図18に示すように、計測対象物体5がステージ5S上に正しく載置されていても、センサヘッド本体部20自体が傾斜していることも起こりうる。図18に示すように反射光ビーム55が平行光である場合、センサヘッド本体部20の傾斜によって、反射光ビーム55の一部は、遮光部212によって遮られる。
【0096】
これらの課題を解決するために、開口212aの径を大きくすることが考えられる。これによって、反射光ビーム(平行光ビーム)の入射角度の許容範囲を広げることが可能になる。しかしながら開口径を広げることによって、その遮光部212の後段に設けられたレンズの収差(たとえば球面収差とする)が無視できなくなる。すなわち収差によって、2次元CCDの撮像面では光像がぼやける。これによって計測精度が低下するという課題が発生する。
【0097】
撮像面上の光像がぼやけるという課題を解決するために、たとえば非球面レンズによって球面収差を補正する方法が考えられる。ただし、センサヘッド本体部20と計測対象物体5との距離(すなわちワーキングディスタンス)を確保しつつ遮光部の開口径を拡大しようとすると、その非球面レンズの物理的な直径を大きくしなければならない。このためセンサヘッド本体部20が大型化するという課題が新たに発生する。
【0098】
また、図18に示した課題については、センサヘッド本体部20の傾きを修正することによって解決可能である。しかし、センサヘッド本体部20の傾きが小さくても図15〜図17に示した課題が発生する場合には、センサヘッド本体部20の傾きを修正する必要がある。この修正に要する手間が大きくなることが考えられる。
【0099】
本実施の形態によれば、受光中心軸56上における遮光部の範囲内に、反射光ビームの集光位置が存在する。これにより、開口212aの径の大きさを最大限に利用して、反射光ビーム55の入射角度の許容範囲を定めることができる。したがって、計測対象物体がある程度傾斜している場合、あるいは計測対象物体表面の傾斜あるいは曲率がある程度大きい場合においても計測対象物体表面の変位を計測できる。この点につき、図19〜図222を示しつつ説明する。なお図19、図21、図22は、投光ビーム53および反射光ビーム55の入射平面に平行な成分を示している。上述のように、本実施の形態に係る光学系では、正反射光のうち、受光中心軸56を含む「所定の平面」に平行な成分が、遮光部212の存在する受光中心軸56方向の位置で集光されるように投光ビーム53を投光する。したがって、本実施の形態によれば、以下に説明する効果を得ることができる。
【0100】
図19は、本実施の形態において、計測対象物体5の左右方向に計測対象物体5が傾斜した場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。なお図19は図15と対比される図である。図19に示すように、本実施の形態ではレンズ211aによって、受光中心軸(図示せず)上における遮光部212の範囲内に反射光ビーム55が集光される。したがって開口212aでは、反射光ビーム55のビーム幅が小さくなる。このため計測対象物体5の左右方向の傾斜角度が大きくなっても反射光ビーム55は遮光部212の開口212aを通過できる。
【0101】
この場合の計測対象物体5の傾きとは、「予め定められた計測対象範囲内の傾き」である。この傾きは、光学式計測装置が仕様などに基づいて予め定めている、計測対象物体の計測可能な(仕様によって計測対象にすると定めた)角度範囲内の傾きである。また、この場合の「ビーム集光面」とは、投光部からのラインビームが平面計測対象物体の表面で反射されて生じる反射光ビームの計測対象物体の表面上におけるライン方向と、受光中心軸とに平行な平面として定義される。
【0102】
図20は、本実施の形態において、計測対象物体5の前後方向に計測対象物体5が傾斜した場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。なお図20は図16と対比される図である。図20に示すように、開口212aでは反射光ビーム55のビーム幅が小さくなるので、計測対象物体5の前後方向の傾斜角度が大きくなっても反射光ビーム55は遮光部212の開口212aを通過できる。さらに反射光ビーム55の一部が開口212aの周縁によって回折するのを回避できる。
【0103】
図21は、本実施の形態において、計測対象物体表面が傾斜している場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。なお、図21は図17と対比される図である。図21に示すように、傾斜面(曲面でもよい)での投光ビーム53の反射により生じた反射光ビーム55は、レンズ211aによって、受光中心軸(図示せず)上における遮光部212の範囲内に集光される。このため計測対象物体5の表面5Aの角度(あるいは曲率)がある程度大きくなっても、反射光ビーム55は、遮光部212の開口212aを通ることができる。なお、計測対象物体表面の傾斜は、上記「予め定められた計測対象範囲内の傾き」である。
【0104】
図22は、本実施の形態において、センサヘッド本体部20が計測対象物体5の左右方向に傾いた状態を示す図である。なお図22は図18と対比される図である。図22に示すように反射光ビーム55をレンズ211aで集光させることにより、センサヘッド本体部20がある程度傾斜していても反射光ビーム55は遮光部212の開口212aを通ることができる。これによって、センサヘッド本体部20の傾きを調整するために要する手間を少なくすることができる。
【0105】
なお、上記レンズ部211の構成では、レンズ部211は複数のレンズからなる組レンズである。この構成においては、たとえば集光ぎみ(ビーム集光面方向のビーム幅が次第に小さくなる)の投光ビームを、複数のレンズの一部で集光することによりレンズ部211の内部で集光位置を生じさせることができる。一方、図23に示すように、レンズ部211が単レンズの場合、反射光ビーム55の集光位置Pが単レンズの内部となるように投光ビーム53が投光部より投光される。この場合、レンズホルダ213が遮光部としての機能を兼ね備えているので、受光中心軸56上における遮光部の範囲は、図23に示す位置X1から位置X2までの範囲となる。したがって、集光位置Pは受光中心軸56上における遮光部の範囲内に存在する。
【0106】
また、上記説明では、計測対象物体表面からの正反射光を受光する方式(正反射方式)を示したが、計測対象物体表面での拡散反射光を受光する方式(拡散反射方式)にも本実施の形態に係る光学系を適用できる。
【0107】
図10(A)に示したように、本実施の形態では、有効計測範囲からの拡散反射光57の入射角度範囲を規定するように、遮光部212の開口212aの大きさ(開口径)が定められる。有効照射領域とは、光学式計測装置の予め定められた有効計測範囲に対応する。したがって、この領域からの拡散反射光を撮像面203cに結像させることによって、拡散反射方式による計測が可能となる。
【0108】
なお、本発明の適用範囲は、計測対象物体に照射する光をラインビームとした、計測対象物体の表面上におけるライン方向のビームの分布の変位計測に限られない。たとえば、照射する光の形状は、円形ビームや矩形ビームを含む任意の形状として、計測対象物体の表面上のスポットによる変位計測を行なう場合にも適用可能である。
【0109】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本実施形態の光学式計測装置の信号処理部1およびセンサヘッド部2の外観斜視図である。
【図2】センサヘッド本体部から照射されるレーザ光について説明するための図である。
【図3】図1における信号処理部1の電気的ハードウェア構成の全体を示すブロック図である。
【図4】センサヘッド部2の電気的ハードウェア構成を示すブロック図である。
【図5】センサヘッド本体部20の光学系の断面の構成を示す図である。
【図6】受光光学系203bの一構成例を示す図である。
【図7】シャインプルーフの原理に従う受光部の配置を示す模式図である。
【図8】センサヘッド本体部からの照射光と反射光を示した図である。
【図9】2次元撮像素子で反射光を断面輪郭線像として撮像した画像を示した図である。
【図10】本実施形態の光学系をビーム集光面に平行な方向に沿って示す概略構成図である。
【図11】計測対象物体表面で拡散反射された光ビームの軌跡を説明する図である。
【図12】計測対象物体表面で反射された投光ビームの軌跡を説明する図である。
【図13】遮蔽部の範囲内に反射光ビームの集光位置が存在しない状態を説明する図である。
【図14】図13に示した光学系のうちの受光光学系の構成例を示す概略図である。
【図15】図13の光学系において、計測対象物体5の左右方向に計測対象物体5が傾斜した場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。
【図16】図13の光学系において、計測対象物体5の前後方向に計測対象物体5が傾斜した場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。
【図17】計測対象物体表面が傾斜している場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。
【図18】センサヘッド本体部20が計測対象物体5の左右方向に傾いた状態を示す図である。
【図19】本実施の形態において、計測対象物体5の左右方向に計測対象物体5が傾斜した場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。
【図20】本実施の形態において、計測対象物体5の前後方向に計測対象物体5が傾斜した場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。
【図21】本実施の形態において、計測対象物体表面が傾斜している場合の反射光ビームの軌跡を示す模式図である。
【図22】本実施の形態において、センサヘッド本体部20が計測対象物体5の左右方向に傾いた状態を示す図である。
【図23】受光光学系のレンズ部が単レンズにより構成される場合の焦点位置を説明する図である。
【符号の説明】
【0111】
1 信号処理部、2 センサヘッド部、5 計測対象物体、5A 表面、5S ステージ、10 外殻ケース、14 操作部蓋、15 表示部、16 信号処理部間コネクタ蓋、17 センサヘッド部接続用コネクタ、20 センサヘッド本体部、21 ケーブル、27 信号処理部接続用コネクタ、51 投光窓、52 受光窓、53 投光ビーム、54 投光中心軸、55 反射光ビーム、56 受光中心軸、57,57a,57b 拡散反射光、58 回折光、101 制御部、102 記憶部、102a 不揮発性メモリ、102b 画像メモリ、103 表示部、103a 液晶表示部、103b,204 表示灯LED、104,105, 通信部、105a USB通信部、105b シリアル通信部、105c 信号処理部間通信部、106 キー入力部、107 外部入力部、108 出力部、109 電源部、201 制御部、202 投光部、202a レーザダイオード、202b スリット、202c 投光レンズ部、203 受光部、203a 2次元CCD、203b 受光光学系、203c 撮像面、203d 撮像領域、205 記憶部、206 通信部、211 レンズ部、211a-211c レンズ、212 遮光部、212a 開口、213 レンズホルダ、213a-213d 遮蔽部位、214-217 レンズ面、P,Pa 集光位置、P1,P2 点、X1,X2 位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測領域中に存在する計測対象物体に向けて照射光を投光する投光部と、
前記計測対象物体の表面で前記照射光が反射されて生じた拡散反射光および正反射光のいずれの反射光についても、前記計測対象物体の表面の変位に応じて得られる反射光像の位置が変化する方向から受光して、前記反射光像の画像を取得する受光部と、
前記受光部により取得された前記画像に基づいて、前記照射光を反射させる前記計測対象物体の表面の変位を計測する計測処理部とを備え、
前記受光部は、
入射した光の像を前記画像として取得する撮像部と、
前記投光部から投光された前記照射光が前記計測対象物体の表面で反射して生じた反射光を、前記撮像部に結像させる結像部と、
前記計測領域中に存在する前記計測対象物体によって前記照射光が拡散反射された場合に、当該拡散反射光のうち前記結像部の中心光軸を含む所定の平面に平行な成分について、前記撮像部に到達する前記拡散反射光の、前記結像部の中心光軸に対する入射角度範囲を規定する遮光部とを含み、
前記投光部は、前記計測領域中に存在する前記計測対象物体によって前記照射光が正反射された場合に、前記照射光の正反射光のうち前記所定の平面に平行な成分が、前記遮光部の存在する前記結像部の中心光軸方向の位置で集光されるように、前記照射光を投光する、光学式計測装置。
【請求項2】
前記投光部は、前記照射光としてラインビームを、前記計測領域中に存在する前記計測対象物体に向けて照射し、
前記受光部は、前記計測対象物体の表面で反射された前記ラインビームの反射光を、前記計測対象物体の表面上におけるライン方向のビームの分布について、前記計測対象物体の表面の変位に対応して得られる前記反射光像の位置の分布が変化する方向から受光し、
前記所定の平面は、前記投光部から照射される前記ラインビームの中心光軸と、前記結像部の中心光軸とを含む入射平面に垂直であり、かつ前記結像部の中心光軸を含む平面である、請求項1に記載の光学式計測装置。
【請求項3】
前記投光部は、前記照射光としてラインビームを、前記計測領域中に存在する前記計測対象物体に向けて照射し、
前記受光部は、前記計測対象物体の表面で反射された前記ラインビームの反射光を、前記計測対象物体の表面上におけるライン方向のビームの分布について、前記計測対象物体の表面の変位に対応して得られる前記反射光像の位置の分布が変化する方向から受光し、
前記所定の平面は、平面の計測対象物体が予め定められた計測対象範囲内の傾きで前記計測領域中に置かれた場合に、前記投光部からの前記ラインビームが前記計測対象物体の表面で反射されて生じる反射光ビームの前記計測対象物体の表面上におけるライン方向と、前記結像部の中心光軸とに平行な平面である、請求項1に記載の光学式計測装置。
【請求項4】
前記遮光部には、前記結像部の中心光軸を中心とする円形の開口が形成され、前記円形の開口の外側の光を遮光する、請求項1に記載の光学式計測装置。
【請求項5】
前記結像部は、複数のレンズを組み合わせた組レンズにより構成され、
前記遮光部は、前記複数のレンズの並びの方向について両端に位置するレンズの間に配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の光学式計測装置。
【請求項6】
前記結像部は、単レンズであって、
前記照射光の正反射光のうちの前記所定の平面に平行な成分について、前記結像部の中心光軸方向での集光位置は、前記単レンズの内部にある、請求項1から4のいずれか1項に記載の光学式計測装置。
【請求項7】
前記遮光部は、前記計測対象物体の前記表面における予め定められた有効計測範囲からの拡散反射光のうち前記所定の平面に平行な成分について、前記結像部の中心光軸に対する前記入射角度範囲を規定する、請求項1から6のいずれか1項に記載の光学式計測装置。
【請求項8】
前記投光部は、前記所定の平面に平行方向のビーム幅が、前記ラインビームが前記投光部から前記受光部へ進むにつれて次第に小さくなるように、前記ラインビームを投光し、
前記所定の平面は、前記投光部から照射される前記ラインビームの投光部中心光軸と、前記結像部の中心光軸である結像部中心光軸とを含む入射平面に垂直であり、かつ前記結像部中心光軸を含む平面である、請求項2または3に記載の光学式計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2010−117312(P2010−117312A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292311(P2008−292311)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】