説明

光学情報読取装置とコンピュータとの間の通信設定プログラム及び記録媒体

【課題】作業者が光学情報読取装置のIPアドレスを調べる必要無しに且つこの光学情報読取装置に接続したパーソナルコンピュータのIPアドレスを変更する必要無しにパーソナルコンピュータと光学情報読取装置との間でイーサネット通信を確立する。
【解決手段】コードリーダ2Aは、PC3からBOOTPリプライを受信すると、元のIPアドレス「192.168.100.1」を不揮発メモリ5に保存すると共にBOOTPリプライに含まれている仮IPアドレス「10.10.14.1」がコードリーダ2AのIPアドレスとして設定される。PC3は作業者の操作に従ってコードリーダ2Aに復元コマンドを送信する。コードリーダ2Aは、復元コマンドを受け取るとIPアドレスの復元処理が実行され、不揮発メモリ5の元のIPアドレス「192.168.100.1」がIPアドレスとして再設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコードやQRコードなどの光学情報を読み取るための光学情報読取装置とこれに接続されるコンピュータとがイーサネット通信するための通信設定に関する。
【背景技術】
【0002】
トレーサビリティ(traceability)が普及した今日、工場や物流拠点などに光学情報読取装置を設置して、製品や産品に付与されたバーコードなどの光学情報又は光学符号の解読が行われている。この種の光学情報読取装置は「バーコードリーダ」又は「コードリーダ」と呼ばれている。
【0003】
コードリーダはレーザ光、可視光、赤外光を光学情報に照射し、その反射光を光学読取素子(撮像素子)で取り込む。そして、この取り込んだ撮像画像から光学情報に記録されている情報の解析が行われる(特許文献1)。コードリーダは、特許文献2にも記載のとおり、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)などと接続して運用されるが、PLCはCC−Link、DeviceNetなどのフィールドネットワークを介して外部機器と接続される。
【0004】
ところで、コードリーダの各種の設定は、コードリーダに接続したパーソナルコンピュータを使って行われる(特許文献2)。具体的には、コードリーダの撮像及びデコードで使用するパラメータは、コードリーダが撮像した画像をパーソナルコンピュータで確認しながら設定されるのが通常である。また、コードリーダで読取エラーが発生したときに、その時の撮像画像をパーソナルコンピュータに取り込んで原因の解析などが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−33465号公報
【特許文献2】特開2008−59194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
コードリーダが撮像した画像をパーソナルコンピュータでリアルタイムに確認するには、画像データの送受信に適したイーサーネット(登録商標)を使うのが効果的であるが、そのためには、パーソナルコンピュータとコードリーダとの間の通信を確立するIPアドレスをコードリーダ、パーソナルコンピュータに設定する必要がある。
【0007】
図7を参照して問題点を指摘すると、共通のフィールドネットワーク1に属する3つのコードリーダ2A、2B、2Cの運用で使用するIPアドレスが第1〜第3のコードリーダ2A、2B、2Cの夫々設定されている。図7に見られる「192.168.100.1」は第1コードリーダ2AのIPアドレスであり、「192.168.100.2」は第2コードリーダ2BのIPアドレスであり、「192.168.100.3」は第3コードリーダ2CのIPアドレスである。これに対して、第1コードリーダ2Aとパーソナルコンピュータ3との間でイーサネット通信をするには、パーソナルコンピュータ3と第1コードリーダ2Aとが共通のIPネットワークに属している必要があり且つパーソナルコンピュータ3もしくは第1コードリーダ2AのIPアドレスを適切に設定する必要がある。
【0008】
しかし、第1コードリーダ2Aには、フィールドネットワーク1での運用上、既にIPアドレス「192.168.100.1」が設定されており、このIPアドレスの設定を変えることはフィールドネットワーク1での運用上の理由から好ましくない。また、パーソナルコンピュータ3のIPアドレスを第1コードリーダ2Aに合わせることは、作業者が、この第1コードリーダ2Aに設定されているIPアドレスを調べる必要があり煩雑である。
【0009】
本発明の目的は、作業者が光学情報読取装置のIPアドレスを調べる必要無しに且つこの光学情報読取装置に接続したパーソナルコンピュータのIPアドレスを変更する必要無しにパーソナルコンピュータと光学情報読取装置との間でイーサネット通信を確立することのできる通信設定プログラム及び記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の技術的課題は、本発明によれば、基本的には、
フィールドネットワークでの運用のためにIPアドレスが割り当てられ且つワークの光学符合を撮像して該撮像画像から光学符合を読み取ってデコード処理を実行する光学情報読取装置と、該光学情報読取装置に接続されて該光学情報読取装置から取得した前記撮像画像を確認しながら各種の設定を実行するためのコンピュータとの間でイーサネット通信を実行するために前記光学情報読取装置に一時的な仮IPアドレスを設定するための通信設定プログラムであって、
作業者の操作を受けて前記光学情報読取装置から前記コンピュータにリクエスト送信を発信するリクエスト送信手段と、
該リクエスト送信を前記光学情報読取装置が受け取った前記コンピュータが前記光学情報読取装置に前記仮IPアドレスを送信する仮IPアドレス送信手段と、
該仮IPアドレスを受け取った前記光学情報読取装置が、前記フィールドネットワークの運用で割り付けられている元のIPアドレスを前記仮IPアドレスと置換させると共に、前記元のIPアドレスを前記光学情報読取装置のメモリに保存させる仮IPアドレス設定手段とを前記光学情報読取装置と前記コンピュータに実行させるための通信設定プログラムを提供することにより達成される。
【0011】
本発明によれば、作業者が光学情報読取装置のIPアドレスを調べる必要無しに且つこの光学情報読取装置に接続したパーソナルコンピュータのIPアドレスを変更する必要無しにパーソナルコンピュータと光学情報読取装置との間でイーサネット通信を確立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コードリーダとこれに接続されたパーソナルコンピュータとの間でイーサネット通信を行うためにコードリーダに仮のIPアドレスを割り付ける過程を説明するための図である。
【図2】コードリーダとこれに接続されたパーソナルコンピュータとの間でイーサネット通信を行うためにコードリーダに仮のIPアドレスを割り付ける一連の処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】パーソナルコンピュータからコードリーダに供給された仮IPアドレスをコードリーダのIPアドレスとして設定する処理を説明するための図である。
【図4】コードリーダのIPアドレスとしてコードリーダの運用のために設定されていた元のIPアドレスに復元させるために、パーソナルコンピュータからコードリーダにIPアドレス復元コマンドが送信されることを説明するための図である。
【図5】IPアドレスを復元するための一連の処理を説明するためのフローチャートである。
【図6】IPアドレス復元コマンドを受けて、コードリーダに一時的に設定された仮IPアドレスを除去して、このコードリーダのIPアドレスとしてコードリーダの運用のために設定されていた元のIPアドレスに戻す処理を説明するための図である。
【図7】フィールドネットワークに接続されたコードリーダと、コードリーダの種々の設定のためにコードリーダに接続されるパーソナルコンピュータとの関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0013】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の好ましい実施例を説明する。
【0014】
図1、図7を参照して、第1コードリーダ2A及びこれに接続されたパーソナルコンピュータ3には、実施例の通信設定プログラムがインストールされており、この通信設定プログラムによって第1コードリーダ2Aに仮IPアドレスが割り付けられ、この仮IPアドレスによりパーソナルコンピュータ3と第1コードリーダ2Aとはイーサネット(登録商標)を介した通信が可能な状態になる。
【0015】
通信設定プログラムによる仮IPアドレスの割り付けに先立って、第1コードリーダ2Aの不揮発メモリ5に次の(1)、(2)の情報を書き込む記憶領域が用意される(例えば図3参照)。
(1)第1コードリーダ2Aに仮IPアドレスを割り当てる前のIPアドレス(「元のIPアドレス」);
(2)IPアドレス復元フラグ。
なお、上記(1)及び(2)の仮IPアドレス、IPアドレス復元フラグの意義は後の説明から明らかになろう。
【0016】
上記(1)の情報は、前述の図7の例であればフィールドネットワーク1の運用で設定されているIPアドレス「192.168.100.1」が「元のIPアドレス」に相当する。上記(2)のIP復元フラグは「1」又は「0」であるが、以下の説明では「ON」、「OFF」と記述することにする。
【0017】
また、パーソナルコンピュータ3は通信設定プログラムによりBOOTPを使って当該パーソナルコンピュータが所属するネットワーク内で未使用なIPアドレスをパーソナルコンピュータ3に割り当てる。パーソナルコンピュータ3に割り当てたIPアドレスは、ここでは「10.10.14.200」であったと仮定する。
【0018】
以上の準備が整ったら、パーソナルコンピュータ3及び第1コードリーダ2Aに組み込まれた通信設定プログラムによって、第1コードリーダ2Aに仮IPアドレスの割り付け処理を実行することができる。図2のフローチャートを参照して、その具体例を説明する。先ず、ステップS100で、第1コードリーダ2Aの図外のTESTキーを4秒以上長押しすると、第1コードリーダ2Aからパーソナルコンピュータ3にBOOTPリクエストパケットが送信される(図1の上の図)。このリクエストを受けたパーソナルコンピュータ3は、当該パーソナルコンピュータ3が所属するネットワーク内の全IPアドレスに対して順番にPINGコマンドを送信し、レスポンスの無かったIPアドレスは未使用であると判断して、このIPアドレス又は作業者がパーソナルコンピュータ3に入力したIPアドレスをBOOTPリプライパケットに設定して第1コードリーダ2Aに送信する(図1の下の図)。ここでは第1コードリーダ2Aに供給されたIPアドレスは「10.10.14.1」である。このアドレス「10.10.14.1」は、第1コードリーダ2Aに一時的に設定されるIPアドレスであり、これを「仮IPアドレス」と呼ぶ。
【0019】
第1コードリーダ2Aは上記BOOTPリプライを受信すると、ステップS102からステップS103に進んで、元のIPアドレス「192.168.100.1」を不揮発メモリ5に保存すると共に上記IPアドレス復元フラグをOFFにリセットする(S104)。そして、上記BOOTPリプライパケットに含まれている仮IPアドレス「10.10.14.1」が第1コードリーダ2AのIPアドレスとして設定される(S105、図3)。これにより、第1コードリーダ2Aとパーソナルコンピュータ3はイーサネットを介して通信できる状態になり、第1コードリーダ2Aが撮像した画像をパーソナルコンピュータ3でリアルタイムに確認しながら第1コードリーダ2Aの撮像条件などのパラメータを設定することができる。
【0020】
パーソナルコンピュータ3を使った第1コードリーダ2Aに関連した作業が終わると、パーソナルコンピュータ3は作業者の操作に従って第1コードリーダ2AにIPアドレス復元コマンドを送信する(図4)。図2のフローチャートに戻って、第1コードリーダ2AがIPアドレス復元コマンドを受信すると、ステップS106からステップS107に進んで、上記IPアドレス復元フラグがONにセットされる。換言すると、第1コードリーダ2Aは、パーソナルコンピュータ3からIPアドレス復元コマンドを受け取るまでは、ステップS107からS108に進んでIPアドレス復元フラグはOFF状態が継続される。
【0021】
図5はIPアドレス復元処理のフローチャートである。第1コードリーダ2Aの電源がONされる(S200)と、IPアドレス復元フラグがON状態であるかの判別が行われ(S201)、YES(ON状態)であれば、ステップS202に進んで第1コードリーダ2AのIPアドレスの復元処理が実行される。図6を参照して、この復元処理を説明すると、第1コードリーダ2AのIPアドレスは消去され、不揮発メモリ5に保存されている元のIPアドレス「192.168.100.1」が第1コードリーダ2AのIPアドレスとして再設定される。また、不揮発メモリ5のIPアドレス復元フラグはOFFにリセットされる(S203)。これにより第1コードリーダ2Aは、図7で説明したフィールドネットワーク1での運用に戻ることができ、それ以降は、第1コードリーダ2Aの電源が再投入されても、図5のステップS204で通常の起動処理が実行されるためIPアドレスはフィールドネットワークの「192.168.100.1」のままであり、IPアドレスを書き換える処理は行われない。
【0022】
如上の説明から分かるように、実施例によれば、作業者に手間をかけることなく且つ第1コードリーダ2Aの運用に支障を及ぼすことなく第1コードリーダ2Aとパーソナルコンピュータ3との間でイーサネットを使った通信が可能になる。したがって、第1コードリーダ2Aが撮像した画像をパーソナルコンピュータ3でリアルタイムに確認しながら第1コードリーダ2Aの撮像及びデコードで使用するパラメータを設定することができる。また、第1コードリーダ2Aで読取エラーが発生したときに、その時の撮像画像をパーソナルコンピュータ3に取り込む処理もイーサネット通信で素早く完了することができる。
【符号の説明】
【0023】
1 フィールドネットワーク
2 コードリーダ
3 パーソナルコンピュータ
5 コードリーダの不揮発メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィールドネットワークでの運用のためにIPアドレスが割り当てられ且つワークの光学符合を撮像して該撮像画像から光学符合を読み取ってデコード処理を実行する光学情報読取装置と、該光学情報読取装置に接続されて該光学情報読取装置から取得した前記撮像画像を確認しながら各種の設定を実行するためのコンピュータとの間でイーサネット通信を実行するために前記光学情報読取装置に一時的な仮IPアドレスを設定するための通信設定プログラムであって、
作業者の操作を受けて前記光学情報読取装置から前記コンピュータにリクエスト送信を発信するリクエスト送信手段と、
該リクエスト送信を前記光学情報読取装置が受け取った前記コンピュータが前記光学情報読取装置に前記仮IPアドレスを送信する仮IPアドレス送信手段と、
該仮IPアドレスを受け取った前記光学情報読取装置が、前記フィールドネットワークの運用で割り付けられている元のIPアドレスを前記仮IPアドレスと置換させると共に、前記元のIPアドレスを前記光学情報読取装置のメモリに保存させる仮IPアドレス設定手段とを前記光学情報読取装置と前記コンピュータに実行させるための通信設定プログラム。
【請求項2】
前記コンピュータから前記光学情報読取装置にIPアドレス復元コマンドを送信する復元コマンド送信手段と、
該復元コマンドを受け取った前記光学情報読取装置が、前記メモリに保存してある前記元のIPアドレスを前記仮IPアドレスに代えて前記光学情報読取装置のIPアドレスに再設定するIPアドレス復元手段とを前記光学情報読取装置と前記コンピュータに更に実行させる、請求項1に記載の通信設定プログラム。
【請求項3】
前記仮IPアドレスが、前記コンピュータが所属するネットワーク内で未使用なIPアドレスである、請求項2に記載の通信設定プログラム。
【請求項4】
前記仮IPアドレスが、作業者が前記コンピュータに入力したIPアドレスである、請求項2に記載の通信設定プログラム。
【請求項5】
前記復元コマンドが前記コンピュータから前記光学情報読取装置に送信されるまで、前記元のIPアドレスの再設定を禁止する再設定禁止手段を前記光学情報読取装置と前記コンピュータに更に実行させる、請求項2に記載の通信設定プログラム。
【請求項6】
フィールドネットワークでの運用のためにIPアドレスが割り当てられ且つワークの光学符合を撮像して該撮像画像から光学符合を読み取ってデコード処理を実行する光学情報読取装置と、該光学情報読取装置に接続されて該光学情報読取装置から取得した前記撮像画像を確認しながら各種の設定を実行するためのコンピュータとの間でイーサネット通信を実行するために前記光学情報読取装置に一時的な仮IPアドレスを設定する機能を前記光学情報読取装置と前記コンピュータとに実行させるための通信設定プログラムを記録した前記光学情報読取装置と前記コンピュータが読み取り可能な記録媒体であって、
作業者の操作を受けて前記光学情報読取装置から前記コンピュータにリクエスト送信を発信するリクエスト送信手段と、
該リクエスト送信を前記光学情報読取装置が受け取った前記コンピュータが前記光学情報読取装置に前記仮IPアドレスを送信する仮IPアドレス送信手段と、
該仮IPアドレスを受け取った前記光学情報読取装置が、前記フィールドネットワークの運用で割り付けられている元のIPアドレスを前記仮IPアドレスと置換させると共に、前記元のIPアドレスを前記光学情報読取装置のメモリに保存させる仮IPアドレス設定手段とを前記光学情報読取装置と前記コンピュータとに実行させるための通信設定プログラムを記録した記録媒体。
【請求項7】
前記コンピュータから前記光学情報読取装置にIPアドレス復元コマンドを送信する復元コマンド送信手段と、
該復元コマンドを受け取った前記光学情報読取装置が、前記メモリに保存してある前記元のIPアドレスを前記仮IPアドレスに代えて前記光学情報読取装置のIPアドレスに再設定するIPアドレス復元手段とを前記光学情報読取装置と前記コンピュータに更に実行させる、請求項6に記載の記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−65296(P2012−65296A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210250(P2010−210250)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000129253)株式会社キーエンス (681)
【Fターム(参考)】