光学情報読取装置
【課題】読取対象から離れた位置から情報コードの読取りができるものにあって、装置から読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲内にあるかどうか自動判別し、ひいては無駄な電力消費を抑える。
【解決手段】読取対象に対して読取位置を示すためのマーカ光Mを照射するマーカ光照射部を設ける。このとき、装置から読取対象までの距離が、読取機構により二次元コードの読取りを良好行える読取可能範囲Aにあるときには、マーカ光Mが読取対象に鮮明なパターンを描き、その範囲から遠近に外れた範囲B、Cにおいてはぼけるように構成する。制御回路は、トリガスイッチが操作されると、マーカ光Mを照射した状態の画像を撮影させるマーカ光画像取込動作と、二次元コードの画像の取込動作を連続して実行させる。このとき、マーカ光画像からマーカ光Mのぼけの有無を判定し、ぼけている場合には、二次元コードの画像取込みの処理を中止する。
【解決手段】読取対象に対して読取位置を示すためのマーカ光Mを照射するマーカ光照射部を設ける。このとき、装置から読取対象までの距離が、読取機構により二次元コードの読取りを良好行える読取可能範囲Aにあるときには、マーカ光Mが読取対象に鮮明なパターンを描き、その範囲から遠近に外れた範囲B、Cにおいてはぼけるように構成する。制御回路は、トリガスイッチが操作されると、マーカ光Mを照射した状態の画像を撮影させるマーカ光画像取込動作と、二次元コードの画像の取込動作を連続して実行させる。このとき、マーカ光画像からマーカ光Mのぼけの有無を判定し、ぼけている場合には、二次元コードの画像取込みの処理を中止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコード、二次元コードなどの情報コードが記された読取対象に対して、読取位置又は読取範囲を示すための複数個のマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備える光学情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードや二次元コード等の情報コードを読取るためのハンディタイプの光学情報読取装置においては、近年、使い勝手の良さから、読取対象から離れた位置から読取りができるものが供されてきている。このものは、例えば、手持ち可能に構成された本体ケース内に、CCDエリアセンサなどの受光センサ、結像レンズを有する結像光学部、LEDなどの照明装置等を備えて構成される。そして、ユーザが、本体ケースの先端部の読取口を読取対象に向けた状態で、トリガスイッチを操作すると、照明装置により読取対象(バーコード)に対して照明光が照射され、その反射光が読取口から入射され、結像レンズを介して受光センサにより撮像されるようになっている。尚、このようなハンディタイプの光学情報読取装置においては、バッテリ(二次電池)を駆動電源とすることが一般的である。
【0003】
そして、この種の光学情報読取装置においては、読取対象(情報コード)と装置(読取口)との間の位置合せのために、レーザダイオードやLEDを用いて、読取対象に対して読取位置(受光センサの視野やその中心位置)を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えるものが考えられている(例えば特許文献1参照)。このマーカ光照射手段は、読取視野の中心部と左右両端部との3点のスポット光を照射するようになっている。また、このマーカ光は、位置合せ時にのみ照射(点灯)され、情報コードの画像取込み時には消灯される。
【0004】
ところで、この種光学情報読取装置にあっては、照明光の強度や受光センサの露光時間等の関係から、読取りに適切となる読取距離(装置から読取対象までの距離)にある程度の範囲がある。そこで、上記した特許文献1には、情報コードの最適な読取り深度(距離)をユーザに視覚的に知らせるべく、3点のスポット光からなるマーカ光が、最適な読取距離において読取対象面にくっきりと結像され、適切な距離範囲から外れるとぼけるように構成されている。
【特許文献1】特開平11−250172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した従来の光学情報読取装置では、マーカ光によって、適切な装置から読取対象までの距離の範囲をユーザに教えることができるとはいうものの、適切な距離範囲から外れた位置にある場合でも、トリガスイッチがオン操作されたときには、常に読取動作(撮像(露光)、画像データの取込み、デコード処理)が実行されてしまう。例えば、比較的大きな(横長な)バーコードを読取りたいときには、ユーザが、バーコード全体を視野に入れるように、本体ケースを適切な距離範囲から外れるまで遠くに離した上でトリガスイッチをオン操作してしまう場合がある。
【0006】
このような場合には、例えば光量不足によって読取りを良好に行うことができず、デコード処理までを行なった後にデコードが失敗した旨をユーザに報知して、再度の読取動作を促すことになるが、これでは、いわば無駄なデコード処理を実行するため、電力消費が大きくなり、バッテリ駆動の製品では、連続使用時間が短くなってしまう不具合を招いてしまう。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、読取対象から離れた位置から情報コードの読取りができるものにあって、装置から読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲内にあるかどうかを自動で判別でき、ひいては無駄な電力消費を抑えることができる光学情報読取装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の光学情報読取装置は、読取対象から離れた位置から情報コードの読取りができるものにあって、読取対象に対して読取位置又は読取範囲を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を、読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲においてマーカ光が該読取対象に鮮明なパターンを描き、その範囲から外れるとぼけるように構成すると共に、読取対象にマーカ光を照射した状態の画像を撮像手段により取込むマーカ光画像取込動作実行手段と、このマーカ光画像取込動作実行手段により撮影された画像から前記マーカ光のぼけを判定するぼけ判定手段とを備えるところに特徴を有するものである(請求項1の発明)。
【0009】
これによれば、装置から読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲内である場合には、マーカ光照射手段により照射されるマーカ光は、読取対象に鮮明なパターンを描く。これに対し、読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲から外れている場合には、マーカ光がぼけた状態で読取対象に照射される。従って、まず、ユーザは、読取対象に照射されているマーカ光を視認することによって、適切な読取距離にあるかどうかを知ることができる。そして、マーカ光画像取込動作実行手段により、読取対象にマーカ光を照射した状態の画像が取込まれ、ぼけ判定手段により、その画像におけるマーカ光のぼけが判定されるので、装置から読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲内にあるかどうかを自動で判別することが可能となる。
【0010】
このとき、上記した読取りを良好に行える範囲を、前記撮像手段を構成する結像レンズのベストフォーカス近傍に設定することができる(請求項2の発明)。これにより、適切な読取距離にある場合には、読取対象の情報コードを確実に読取ることができる。そして、本発明においては、上記マーカ光を、線状の光を含んで構成すると共に、ぼけ判定手段を、撮影画像からマーカ光の線状部分の太さを検出することに基づいてぼけを判定するように構成することができる(請求項3の発明)。これにより、簡単な構成及び処理により、ぼけを判定することが可能となる。尚、ぼけの判定手法としては、他にも様々なものが考えられ、例えば受光センサにカラーセンサを採用した場合には、マーカ光の色のにじみを検出するといった手法も可能である。
【0011】
本発明の光学情報読取装置においては、画像の取込み動作として、マーカ光画像取込動作実行手段によるマーカ光画像の取込みをまず行い、その後に、マーカ光の照射を停止した状態で情報コードの画像取込み動作を連続して実行するという、いわば2段階で行うことができ、これにより、マーカ光画像の取込み、情報コードの読取りの各々を確実に行なうことができる。
【0012】
ここで、マーカ光画像の取込みに基づき、ぼけ判定手段によりぼけが判定された場合には、次に取込んだ情報コードの画像の処理を中止するように構成することができる(請求項4の発明)。あるいは、マーカ光画像の取込みに基づき、ぼけ判定手段によりぼけが判定された場合には、情報コードの画像取込み動作を中断し、再度マーカ光画像の取込み動作を実行するように構成することもできる(請求項5の発明)。これらによれば、適切な読取距離にない場合における、無駄な処理を行なわずに済ませることができ、その分電力消費を抑えることができる。
【0013】
更には、ぼけ判定手段により判定されたぼけ量が所定値以下である場合には、マーカ光画像取込動作実行手段により取込んだマーカ光画像から、情報コードの読取処理を併せて実行するように構成するようにしても良い(請求項6の発明)。これによれば、一度の画像取込みにより、適切な読取距離にあるかどうかの判定及び情報コードの読取りの双方を行うことができ、効率的となる。尚、この際、バーコードのような一次元コードを読取る場合には、マーカ光の存在しない部分(水平方向の走査線)で読取りを行えば良く、二次元コードを読取る場合でも、誤り訂正(データ復元)機能等を用いることにより、誤り訂正可能なレベルであれば読取りが可能となる。
【0014】
本発明における、読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲においてマーカ光が読取対象に鮮明なパターンを描き、その範囲から外れるとぼけるような構成は、マーカ光照射手段が絞りを備えている場合には、絞りの大きさによって実現することが可能である(請求項7の発明)。あるいは、マーカ光照射手段が備えているレンズの形状によって実現することも可能である(請求項8の発明)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を手持ち式(ガンタイプ)の二次元コード読取装置に適用したいくつかの実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
<1>第1の実施例
本発明の第1の実施例について、図1ないし図7を参照しながら説明する。まず、図2及び図3を参照して、本実施例に係る光学情報読取装置たる二次元コード読取装置の全体構成について述べる。図2に示すように、二次元コード読取装置の本体ケース1は、丸みを帯びた薄型のほぼ矩形箱状をなす主部1aの下面側後部寄りに、ユーザが片手で把持して操作することが可能なグリップ部1bを一体的に有して構成されている。前記本体ケース1(主部1a)の先端面部には、矩形状をなし透光性を有する読取口1cが設けられている。また、前記グリップ部1bの上端部には、読取指示用のトリガスイッチ2が設けられている。
【0017】
前記本体ケース1(主部1a)内の先端側部分には、商品に付されたラベルやカタログ等の読取対象R(図3参照)に記録された情報コードたる例えばQRコード等の二次元コードQ(便宜上、図9参照)を読取るための読取機構が設けられる。図3にも示すように、この読取機構は、例えばCCDエリアセンサからなる受光センサ3、結像光学系を構成する結像レンズ4、照明部5(図2では図示省略)、後述するマーカ光照射手段としてのマーカ光照射部6などから構成されている。
【0018】
そのうち受光センサ3は、本体ケース1(主部1a)内の中央部に前記読取口1cを向いて配設されており、その前方に前記結像レンズ4が配設されている。詳しい図示及び説明は省略するが、この結像レンズ4は、鏡筒内に複数枚のレンズを配設して構成されている。前記照明部5は、詳しく図示はしないが、照明光源となるLEDと、このLEDの前部に配置され光を集光及び拡散する照明用レンズとを、前記結像レンズ4の周囲部(上部を除く)に、前記読取口1cに向けて複数組配設して構成されている。これにて、照明部5によって読取口1cを通して読取対象Rに記された二次元コードQに照明光が照射され、二次元コードQからの反射光が読取口1cを通して入射され、前記結像レンズ4を介して受光センサ3上に結像され、以て、二次元コードQの画像を取込む撮像手段が構成されている。
【0019】
このとき、図1に示すように、読取機構の光学特性(主として結像レンズ4の焦点距離)により、情報コードの読取りが良好に行えるような、装置(読取口1c)から読取対象Rまでの距離(合焦位置)は、予め決まっている。この場合、読取可能範囲Aは、例えば、結像レンズ4のベストフォーカスの近傍(前後)に全体で200mm程度の幅を有したものとされる。従って、ユーザは、読取対象Rがこの読取可能範囲A内に位置された状態で読取り操作を行う必要があり、そこから遠近方向に外れた距離(範囲B,C)ではQRコードQのデコード処理が正しく行えない事情がある。
【0020】
前記マーカ光照射部6は、図4(a)にも示すように、光源となるレーザダイオード7を備えると共に、そのレーザダイオード7の前部に位置して、コリメートレンズ8、マーカ光Mのパターンを形成するフォログラム9、絞り10を順に備えて構成されている。このマーカ光照射部6は、前記結像レンズ4の上部に位置して読取口1cを向いて水平やや斜め下向きに配設されており、前記読取対象Rに対して、読取位置(読取範囲)を示すためのマーカ光Mを照射するようになっている。
【0021】
この場合、マーカ光照射部6は、前記結像レンズ4の上部に位置して読取口1cを向いて水平やや斜め下向きに配設されており、図1,図5に示すように、前記読取対象Rに対して、読取位置(読取範囲)を示すためのマーカ光Mを照射するようになっている。本実施例では、このマーカ光Mは、前記受光センサ3の撮影視野Fよりも僅かだけ小さい、やや横長の長方形の4つの角部に対応したL字状の光と、中心を示す十字状の光とからなっている。つまり、マーカ光Mは、線状の光の組合せから構成されている。
【0022】
そしてこのとき、図1に示すように、マーカ光照射部6により読取対象Rに対して照射されるマーカ光Mは、読取対象Rまでの距離が、良好に読取りを行える読取可能範囲Aにおいては、読取対象Rに鮮明なパターンを描き、その範囲から遠近に外れた範囲B、Cにおいてはぼけるように構成されている。本実施例では、図5に示すように、マーカ光照射部6のベストフォーカス位置と、前記結像レンズ4のベストフォーカス位置とをほぼ一致させると共に、図4(a)に示すように、前記絞り10の開口径の大きさを比較的大きく(例えば直径2mm)することによって、前記マーカ光Mの結像及びぼけが実現されるように構成されている。この場合、図4(b)に示すように、従来のマーカ光照射部では、絞り25の開口径を比較的小さく(例えば直径1mm以下)していた。
【0023】
尚、本実施例では、このマーカ光照射部6は、例えば装置の電源オン時には、受光センサ3による二次元コードQの画像取込み(撮影)時を除いて、常にマーカ光Mを照射(点灯)するようになっている。あるいは、前記トリガスイッチ2を2段階の押圧操作可能に構成し、第1段の押圧操作(いわゆる半押し状態)で、マーカ光Mの照射動作が実行され、第2段の押圧操作で受光センサ3による画像取込み動作が実行されるように構成しても良い。
【0024】
図2に示すように、前記本体ケース1(主部1a)内の後部側には、図3に示す各回路等が実装されている回路基板23が設けられている。さらに、図3のみに図示するように、本体ケース1の外面部(主部1aの上面部)には、ユーザが各種入力指示を行うための操作スイッチ24、報知用のLED11、液晶表示器12などが設けられている。本体ケース1内にはエラー報知等を行うためのブザー13や、外部との通信を行うための通信インタフェイス14、駆動電源となる二次電池15なども設けられている。
【0025】
図3は、本実施例の二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示しており、前記回路基板23には、マイコンを主体として構成され、全体の制御やデコード処理等を行う制御回路16が設けられている。この制御回路16には、前記トリガスイッチ2及び操作スイッチ24からの信号が入力されるようになっていると共に、制御回路16は、前記受光センサ3、照明部5、マーカ光照射部6を制御するようになっており、以て、読取対象Rに記された二次元コードQの画像の取込み動作を実行するようになっている。また、この制御回路16は、前記LED11、ブザー13、液晶表示器12を制御し、通信インタフェイス14を介して外部(管理コンピュータ等)とのデータ通信を実行する。
【0026】
さらに、前記回路基板23には、増幅回路17、A/D変換回路18、メモリ19、特定比検出回路20、同期信号発生回路21、アドレス発生回路22などが実装され、これらも前記制御回路16により制御されるようになっている。これにて、受光センサ3による撮像信号が、増幅回路17にて増幅され、A/D変換回路18にてデジタル信号に変換されて画像データとしてメモリ19に記憶される。またこのとき、特定比検出回路20にて画像データ中の特定パターンが検出されるようになっている。前記受光センサ3及び特定比検出回路20、アドレス発生回路22には、同期信号発生回路21から同期信号が与えられるようになっている。
【0027】
さて、後の作用説明でも述べるように、本実施例では、前記制御回路16は、主としてそのソフトウエア的構成(プログラムの実行)により、読取対象Rにマーカ光Mを照射した状態の画像を受光センサ3により撮影させるマーカ光画像取込み動作を実行させるようになっていると共に、その撮影画像からマーカ光Mのぼけ(ぼけ量)を判定するようになっている。従って、制御回路16が、本発明にいうマーカ光画像取込動作実行手段、及び、ぼけ判定手段として機能するようになっている。
【0028】
この場合、本実施例では、通常時には、マーカ光照射部6によるマーカ光Mの照射(点灯)が連続的に行われており、この状態でトリガスイッチ2がオン操作されると、受光センサ3により、読取対象Rにマーカ光Mが照射された状態(照明部5はオフ(消灯)状態)で画像が取込まれ、引続き、マーカ光Mの照射が一時的に停止された状態で照明部5がオン(点灯)されて受光センサ3による二次元コードQの画像の取込み動作(受光センサ3における露光、画像データの取込み(A/D変換回路18からのデジタル画像データの画像メモリ19への書込み)、二次元コードQのデコード処理)が連続して行われるようになっている。つまり、2段階の画像取込み動作が実行されるようになっている。
【0029】
さて、後の作用説明でも述べるように、1段目の画像取込み動作によりマーカ光画像が取込まれると、制御回路16により、撮影視野F中のマーカ光Mが検出されると共に、そのマーカ光Mの線の太さが求められて予め設定されているしきい値(例えば2mm)と比較される。マーカ光Mの線の太さがしきい値よりも大きい場合には、マーカ光Mがぼけていると判定され、マーカ光Mの線の太さがしきい値以下であるときには、マーカ光Mがぼけていないと判定される。
【0030】
そして、本実施例では、制御回路16は、マーカ光Mがぼけていないと判定された場合には、読取対象Rまでの距離が良好に読取りを行える読取可能範囲Aにあるとして、2段目の二次元コードQの画像取込み動作をそのまま実行(続行)する。これに対し、マーカ光Mがぼけていると判定された場合には、読取対象Rまでの距離が、二次元コードQの読取りに不適切な距離の範囲B又はCにあるとして、2段目の二次元コードQの画像取込み動作を中止(中断)し、再度、1段目のマーカ光画像の取込み動作を実行するようになっている。
【0031】
次に、上記のように構成された本実施例の二次元コード読取装置の作用について、図6及び図7も参照して述べる。ユーザが読取対象Rに記された二次元コードQを読取らせるにあたっては、本体ケース1を読取対象Rから適当な距離だけ離し、且つ、読取口1cがその読取対象Rに向いた状態とする。このとき、マーカ光照射部6からはマーカ光Mが出射されているので、ユーザは、マーカ光Mを読取対象Rに当てて、できるだけマーカ光Mの中心部の位置に二次元コードQが配置されるように、本体ケース1(読取口1c)の位置合せを行う。また、ユーザは、読取対象Rに照射されているマーカ光Mを視認することによって、マーカ光Mができるだけ鮮明に描かれる(ぼけない)ように、距離についても位置合せを行い、その位置合せ状態でトリガスイッチ2をオン操作するようにする。
【0032】
図6のフローチャートは、トリガスイッチ2がオン操作されたときに、制御回路16が実行する二次元コードQの読取りの処理手順の概略を示している。また、図7のタイムチャートは、その際のマーカ光M(マーカ光照射部6)のオン、オフの制御と、読取処理との関係とを示しており、図7(a)は1段目の画像取込み動作でマーカ光Mがぼけていないと判定された場合、図7(b)は1段目の画像取込み動作でマーカ光Mがぼけていると判定された場合を夫々示している。
【0033】
図6のフローチャートに示すように、トリガスイッチ2がオン操作されると、まずステップS1にて、受光センサ3による1段目の画像取込み動作(露光)が開始される。このときには、図7に示すように、読取対象Rにマーカ光Mが照射されており、照明光はオフしているので、受光センサ3には、読取対象Rにマーカ光Mが写り込んだ画像が取込まれることになる。ステップS2では、マーカ光画像のデータの取込みが行われ、取込まれたマーカ光画像データからマーカ光Mのぼけの判定が実行される。
【0034】
このとき、図6には詳しく図示されていないが、図7に示すように、ぼけ判定の処理開始(画像データの取込み終了)と同時に、受光センサ3による2段目の画像取込み動作(露光)が開始される。このとき(露光時のみ)には、図7に示すように、マーカ光Mがオフされると共に照明部5により照明光がオンされるので、読取対象Rに照明光が照射されその反射光(二次元コードQの画像)が受光センサ3により撮像されることになる。
【0035】
ステップS3では、マーカ光Mがぼけているかどうかが判断される。マーカ光Mがぼけていないと判断された場合には(ステップS3にてNo)、読取対象Rまでの距離が良好に読取りを行える読取可能範囲Aにあるので、ステップS4に進み、図7(a)にも示すように、そのまま2段目の画像取込みの処理(画像データの取込み、デコード)が実行される。ステップS5では、デコードが成功したかどうかが判断され、デコードに成功した場合には(Yes)、処理が終了する。デコードに失敗した場合には(ステップS5にてNo)、ステップS1に戻り、1段目の画像取込み動作が再度実行される。
【0036】
これに対し、読取対象Rまでの距離が、二次元コードQの読取りに不適切な距離(遠過ぎる或いは近過ぎる)である場合には、1段目の画像取込み動作においてマーカ光Mがぼけていると判定される(ステップS3にてYes)。この場合には、図7(b)に示すように、2段目の画像取込みの処理(画像データの取込み、デコード)が中断(中止)され、ステップS1に戻り、1段目の画像取込み動作(マーカ光画像の取込み動作)が再度実行され、マーカ光Mのぼけの判定の処理などが繰返される。
【0037】
このように本実施例によれば、マーカ光照射部6を、読取対象Rまでの距離が読取りを良好に行える範囲Aにおいてマーカ光Mが該読取対象Rに鮮明なパターンを描き、その範囲から外れるとぼけるように構成し、そのマーカ光画像を利用して読取対象Rまでの距離が読取可能範囲Aにあるかどうかを自動で判断するようにした。そして、マーカ光Mがぼけていると判定されたとき、つまり読取対象Rまでの距離が読取可能範囲Aから外れているときに、二次元コードQの画像取込みの処理を中止するようにした。
【0038】
この結果、従来のようなトリガスイッチが操作された際に常に読取処理を行っていたものと異なり、無駄なデコード処理等の実行を未然に防止して無駄な電力消費を抑えることができる。しかも、読取時の二次元コードQの位置合せのために元々備えているマーカ光照射部6を利用して判定するものであるから、別途の距離センサなどを用いることもなく簡単な構成で済ませることができる。更には、ユーザが、読取対象Rに照射されているマーカ光Mを視認することによって、適切な読取距離にあるかどうかを容易に知ることができるといったメリットがあることは勿論である。
【0039】
<2>第2〜第6の実施例、その他の実施例
図8及び図9は、本発明の第2の実施例を示すものである。尚、以下に述べる各実施例も、上記第1の実施例と同様に、本発明を光学情報読取装置たるガンタイプの二次元コード読取装置に適用したものであるため、上記第1の実施例と同一部分には同一符号を付して新たな図示及び詳しい説明を省略することとし、以下、異なる点を中心に述べることとする。
【0040】
この第2の実施例が、上記第1の実施例と異なるところは、受光センサ3による2段階の画像取込み動作を実行することに代えて、一度の画像取込み動作を実行し、その撮影画像データに基づいて、マーカ光Mのぼけの判定を行うと共に、マーカ光がMぼけていないと判定されたとき(ぼけ量が所定値以下である場合)には、前記取込んだ画像データから、二次元コードQの読取り(デコード)処理を併せて行うように構成した点にある。
【0041】
ここで、周知のように、二次元コードQであるQRコードは、リードソロモン符号による誤り訂正(データ復元)機能を有しており、面積の最大30%が汚れていたり、破損したりしていても、読取りが可能とされている。この実施例では、そのような誤り訂正機能を利用するものであり、取込んだ画像において、例えば図9に示すように、二次元コードQの画像にマーカ光Mの一部が重なっていて、二次元コードQのデータの一部が正しく読取れなくても、誤り訂正機能によるデータ復元が可能なレベル(面積)であれば、デコードが可能となるのである。
【0042】
図8のタイムチャートは、本実施例におけるトリガスイッチ2がオン操作された際のマーカ光M(マーカ光照射部6)のオン、オフの制御と、制御回路16の実行する読取処理との関係とを示している。このときも、ユーザは、本体ケース1を読取対象Rから適当な(任意の)距離だけ離した状態で、マーカ光Mを読取対象Rに当てて、その中心部に二次元コードQが配置されるように位置合せを行い、トリガスイッチ2をオン操作する。
【0043】
すると、受光センサ3による画像取込み動作(露光)が実行される。このときには、読取対象Rにマーカ光Mが照射されていると共に、照明光がオンするようになっている。従って、受光センサ3には、図9に示すような、読取対象Rに記された二次元コードQの画像にマーカ光Mが写り込んだ画像が撮影されることになる。そして、画像データの取込みが実行され、次いで、まず撮影視野F中のマーカ光Mが検出され、そのマーカ光Mの線の太さが求められてぼけが判定される。尚このとき、マーカ光Mのうち、コーナー部のL字状の部分等によりマーカ光Mの検出は可能である。
【0044】
ここで、マーカ光Mがぼけていないと判定されたときには、引続き、上記誤り訂正機能を用いた二次元コードQのデコード処理が実行される。そして、デコードに成功した場合には処理が終了され、例えば次の画像取込み動作が実行される。一方、図示はしていないが、マーカ光Mがぼけていると判定された場合には、デコード処理が中止され、再度の画像取込み動作が実行され、上記した処理が繰返される。
【0045】
このような第2の実施例によれば、上記第1の実施例と同様に、読取対象Rから離れた位置から二次元コードQの読取りができるものにあって、装置から読取対象Rまでの距離が読取りを良好に行える範囲A内にあるかどうかを自動で判別でき、ひいては無駄な電力消費を抑えることができるという優れた効果を奏する。そして、それに加え、一度の画像取込みにより、マーカ光Mのぼけの判定及び二次元コードQの読取り(デコード)の双方を行うことができて効率的な動作を行うことができ、例えば複数の二次元コードQを連続して読取るような場合に、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0046】
図10は、本発明の第3の実施例を示すものであり、1段目の画像取込み動作でマーカ光Mがぼけていると判定された場合における、マーカ光M(マーカ光照射部6)のオン、オフの制御と、読取処理との関係とを示すタイムチャートである。この第3の実施例が、上記第1の実施例と異なる点は、1段目の画像取込み動作においてマーカ光Mがぼけていると判定された場合に、2段目の画像取込みの処理(画像データの取込み、デコード)を中断し、すぐに再度の(1段目の)マーカ光画像の取込み(露光)に移るようにした構成にある。これにより、処理時間をより短くすることができる。
【0047】
図11〜図13は、本発明の第4〜第6の実施例を順に示しており、マーカ光照射手段としてのマーカ光照射部の構成が、上記第1の実施例のマーカ光照射部6と異なっている。即ち、図11に示す本発明の第4の実施例に係るマーカ光照射部31は、光源となるレーザダイオード7、集光レンズ32、マーカ光Mのパターンを形成するシリンドリカルレンズ33、絞り10を順に備えて構成されている。この場合も、絞り10の開口径の大きさを比較的大きく(例えば直径2mm)することによって、マーカ光照射部31により読取対象Rに対して照射されるマーカ光Mは、読取対象Rまでの距離が、良好に読取りを行える読取可能範囲Aにおいては、読取対象Rに鮮明なパターンを描き、その範囲から遠近に外れた範囲B、Cにおいてはぼけるように構成されている。
【0048】
図12に示す本発明の第5の実施例に係るマーカ光照射部34は、光源となるレーザダイオード7、コリメートレンズ35、マーカ光Mのパターンを形成するフォログラム36を順に備え、絞りを有さずに構成されている。また、図13に示す本発明の第6の実施例に係るマーカ光照射部37は、光源となるレーザダイオード7、集光レンズ38、マーカ光Mのパターンを形成するシリンドリカルレンズ39を順に備え、やはり絞りを有さずに構成されている。これらの構成においては、各レンズ35,38,39の形状によって、マーカ光Mの結像及びぼけが実現されるように構成されている。
【0049】
尚、上記した実施例では、マーカ光Mのぼけの判定を、マーカ光Mの線状部分の太さを検出することに基づいて行うように構成したが、このぼけ判定については様々な手法を採用することが可能であり、例えば、受光センサにカラーセンサを採用すると共に、マーカ光Mを特定の色(例えば赤色)で照射し、マーカ光の色のにじみの検出に基づいてぼけ度合(ぼけ量)を判定するといった手法も可能である。マーカ光Mのパターン(形状)としても、例えば中央部とその左右に3個のポイント状の光を照射するものや、読取機構の視野を示す四角い枠状の光とする等、種々の変形が考えられる。
【0050】
また、上記実施例では、マーカ光Mのぼけが判定された場合には、二次元コードQの画像の取込み(デコード)の処理を中止して再度マーカ光画像を取込むように構成したが、ぼけ判定の結果を用いて、受光センサのシャッタ速度(露光時間)の制御や、照明光の強度が可変のものでは照明光の強度を調整するといった制御を行うことも可能である。この場合、単にマーカ光Mがぼけているかいないかを判定するのではなく、ぼけ度合(ぼけ量)を複数段階で判断するようにしても良く、よりきめ細かな制御が可能となる。マーカ光Mのぼけが判定された場合にぼけが判定された場合に、ブザーや表示などによって、ユーザに報知を行う構成としても良い。
【0051】
さらには、上記各実施例では、本発明の光学情報読取装置を、情報コードとしての二次元コードQ、特にQRコードの読取りに適用したが、他の種類の二次元コードの読取りに適用したり、バーコードなどの一次元コードの読取りに適用したりすることもできる。例えば、バーコードに関して、一度の画像取込みにより、マーカ光Mのぼけ判定及び情報コードの読取りを行う際には、マーカ光Mの存在しない部分(水平方向の走査線)に沿って読取り(デコード)を行えば良く、同様に実施することができる。
【0052】
その他、例えば本発明の光学情報読取装置は、ガンタイプのものに限らず、ハンディタイプのものや、FAシステムなどに固定的に組込まれるもの(読取対象側の位置が変動するもの)であっても良く、また、全体のハードウエア構成、特にマーカ光照射手段の構成などについても様々な変更が可能である等、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、読取対象までの距離の変化に伴ってマーカ光画像がぼける様子を示す図
【図2】二次元コード読取装置の構成を概略的に示す縦断側面図
【図3】二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】マーカ光照射部の構成を(a)を従来のもの(b)と併せて示す拡大縦断側面図
【図5】マーカ光照射部のベストフォーカス位置と結像レンズのベストフォーカス位置とが一致する様子を示す図
【図6】二次元コードの読取りの処理手順を示フローチャート
【図7】マーカ光のオン、オフの制御と読取処理との関係とを示すタイムチャートであり、(a)はマーカ光がぼけていないと判定された場合、(b)はマーカ光がぼけていると判定された場合を示す図
【図8】本発明の第2の実施例を示すもので、マーカ光のオン、オフの制御と読取処理との関係とを示すタイムチャート
【図9】二次元コードの画像にマーカ光が写り込んだ画像を示す図
【図10】本発明の第3の実施例を示す図8相当図
【図11】本発明の第4の実施例を示すもので、マーカ光照射部の構成を示す拡大縦断側面図
【図12】本発明の第5の実施例を示す図11相当図
【図13】本発明の第6の実施例を示す図11相当図
【符号の説明】
【0054】
図面中、1は本体ケース、1cは読取口、2はトリガスイッチ、3は受光センサ、4は結像レンズ、5は照明部、6,31,34,37はマーカ光照射部(マーカ光照射手段)、10は絞り、16は制御回路(マーカ光画像取込動作実行手段、ぼけ判定手段)、19はメモリ、Rは読取対象、Qは二次元コード(情報コード)、Mはマーカ光を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、バーコード、二次元コードなどの情報コードが記された読取対象に対して、読取位置又は読取範囲を示すための複数個のマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備える光学情報読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーコードや二次元コード等の情報コードを読取るためのハンディタイプの光学情報読取装置においては、近年、使い勝手の良さから、読取対象から離れた位置から読取りができるものが供されてきている。このものは、例えば、手持ち可能に構成された本体ケース内に、CCDエリアセンサなどの受光センサ、結像レンズを有する結像光学部、LEDなどの照明装置等を備えて構成される。そして、ユーザが、本体ケースの先端部の読取口を読取対象に向けた状態で、トリガスイッチを操作すると、照明装置により読取対象(バーコード)に対して照明光が照射され、その反射光が読取口から入射され、結像レンズを介して受光センサにより撮像されるようになっている。尚、このようなハンディタイプの光学情報読取装置においては、バッテリ(二次電池)を駆動電源とすることが一般的である。
【0003】
そして、この種の光学情報読取装置においては、読取対象(情報コード)と装置(読取口)との間の位置合せのために、レーザダイオードやLEDを用いて、読取対象に対して読取位置(受光センサの視野やその中心位置)を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を備えるものが考えられている(例えば特許文献1参照)。このマーカ光照射手段は、読取視野の中心部と左右両端部との3点のスポット光を照射するようになっている。また、このマーカ光は、位置合せ時にのみ照射(点灯)され、情報コードの画像取込み時には消灯される。
【0004】
ところで、この種光学情報読取装置にあっては、照明光の強度や受光センサの露光時間等の関係から、読取りに適切となる読取距離(装置から読取対象までの距離)にある程度の範囲がある。そこで、上記した特許文献1には、情報コードの最適な読取り深度(距離)をユーザに視覚的に知らせるべく、3点のスポット光からなるマーカ光が、最適な読取距離において読取対象面にくっきりと結像され、適切な距離範囲から外れるとぼけるように構成されている。
【特許文献1】特開平11−250172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した従来の光学情報読取装置では、マーカ光によって、適切な装置から読取対象までの距離の範囲をユーザに教えることができるとはいうものの、適切な距離範囲から外れた位置にある場合でも、トリガスイッチがオン操作されたときには、常に読取動作(撮像(露光)、画像データの取込み、デコード処理)が実行されてしまう。例えば、比較的大きな(横長な)バーコードを読取りたいときには、ユーザが、バーコード全体を視野に入れるように、本体ケースを適切な距離範囲から外れるまで遠くに離した上でトリガスイッチをオン操作してしまう場合がある。
【0006】
このような場合には、例えば光量不足によって読取りを良好に行うことができず、デコード処理までを行なった後にデコードが失敗した旨をユーザに報知して、再度の読取動作を促すことになるが、これでは、いわば無駄なデコード処理を実行するため、電力消費が大きくなり、バッテリ駆動の製品では、連続使用時間が短くなってしまう不具合を招いてしまう。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、読取対象から離れた位置から情報コードの読取りができるものにあって、装置から読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲内にあるかどうかを自動で判別でき、ひいては無駄な電力消費を抑えることができる光学情報読取装置を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の光学情報読取装置は、読取対象から離れた位置から情報コードの読取りができるものにあって、読取対象に対して読取位置又は読取範囲を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段を、読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲においてマーカ光が該読取対象に鮮明なパターンを描き、その範囲から外れるとぼけるように構成すると共に、読取対象にマーカ光を照射した状態の画像を撮像手段により取込むマーカ光画像取込動作実行手段と、このマーカ光画像取込動作実行手段により撮影された画像から前記マーカ光のぼけを判定するぼけ判定手段とを備えるところに特徴を有するものである(請求項1の発明)。
【0009】
これによれば、装置から読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲内である場合には、マーカ光照射手段により照射されるマーカ光は、読取対象に鮮明なパターンを描く。これに対し、読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲から外れている場合には、マーカ光がぼけた状態で読取対象に照射される。従って、まず、ユーザは、読取対象に照射されているマーカ光を視認することによって、適切な読取距離にあるかどうかを知ることができる。そして、マーカ光画像取込動作実行手段により、読取対象にマーカ光を照射した状態の画像が取込まれ、ぼけ判定手段により、その画像におけるマーカ光のぼけが判定されるので、装置から読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲内にあるかどうかを自動で判別することが可能となる。
【0010】
このとき、上記した読取りを良好に行える範囲を、前記撮像手段を構成する結像レンズのベストフォーカス近傍に設定することができる(請求項2の発明)。これにより、適切な読取距離にある場合には、読取対象の情報コードを確実に読取ることができる。そして、本発明においては、上記マーカ光を、線状の光を含んで構成すると共に、ぼけ判定手段を、撮影画像からマーカ光の線状部分の太さを検出することに基づいてぼけを判定するように構成することができる(請求項3の発明)。これにより、簡単な構成及び処理により、ぼけを判定することが可能となる。尚、ぼけの判定手法としては、他にも様々なものが考えられ、例えば受光センサにカラーセンサを採用した場合には、マーカ光の色のにじみを検出するといった手法も可能である。
【0011】
本発明の光学情報読取装置においては、画像の取込み動作として、マーカ光画像取込動作実行手段によるマーカ光画像の取込みをまず行い、その後に、マーカ光の照射を停止した状態で情報コードの画像取込み動作を連続して実行するという、いわば2段階で行うことができ、これにより、マーカ光画像の取込み、情報コードの読取りの各々を確実に行なうことができる。
【0012】
ここで、マーカ光画像の取込みに基づき、ぼけ判定手段によりぼけが判定された場合には、次に取込んだ情報コードの画像の処理を中止するように構成することができる(請求項4の発明)。あるいは、マーカ光画像の取込みに基づき、ぼけ判定手段によりぼけが判定された場合には、情報コードの画像取込み動作を中断し、再度マーカ光画像の取込み動作を実行するように構成することもできる(請求項5の発明)。これらによれば、適切な読取距離にない場合における、無駄な処理を行なわずに済ませることができ、その分電力消費を抑えることができる。
【0013】
更には、ぼけ判定手段により判定されたぼけ量が所定値以下である場合には、マーカ光画像取込動作実行手段により取込んだマーカ光画像から、情報コードの読取処理を併せて実行するように構成するようにしても良い(請求項6の発明)。これによれば、一度の画像取込みにより、適切な読取距離にあるかどうかの判定及び情報コードの読取りの双方を行うことができ、効率的となる。尚、この際、バーコードのような一次元コードを読取る場合には、マーカ光の存在しない部分(水平方向の走査線)で読取りを行えば良く、二次元コードを読取る場合でも、誤り訂正(データ復元)機能等を用いることにより、誤り訂正可能なレベルであれば読取りが可能となる。
【0014】
本発明における、読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲においてマーカ光が読取対象に鮮明なパターンを描き、その範囲から外れるとぼけるような構成は、マーカ光照射手段が絞りを備えている場合には、絞りの大きさによって実現することが可能である(請求項7の発明)。あるいは、マーカ光照射手段が備えているレンズの形状によって実現することも可能である(請求項8の発明)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を手持ち式(ガンタイプ)の二次元コード読取装置に適用したいくつかの実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0016】
<1>第1の実施例
本発明の第1の実施例について、図1ないし図7を参照しながら説明する。まず、図2及び図3を参照して、本実施例に係る光学情報読取装置たる二次元コード読取装置の全体構成について述べる。図2に示すように、二次元コード読取装置の本体ケース1は、丸みを帯びた薄型のほぼ矩形箱状をなす主部1aの下面側後部寄りに、ユーザが片手で把持して操作することが可能なグリップ部1bを一体的に有して構成されている。前記本体ケース1(主部1a)の先端面部には、矩形状をなし透光性を有する読取口1cが設けられている。また、前記グリップ部1bの上端部には、読取指示用のトリガスイッチ2が設けられている。
【0017】
前記本体ケース1(主部1a)内の先端側部分には、商品に付されたラベルやカタログ等の読取対象R(図3参照)に記録された情報コードたる例えばQRコード等の二次元コードQ(便宜上、図9参照)を読取るための読取機構が設けられる。図3にも示すように、この読取機構は、例えばCCDエリアセンサからなる受光センサ3、結像光学系を構成する結像レンズ4、照明部5(図2では図示省略)、後述するマーカ光照射手段としてのマーカ光照射部6などから構成されている。
【0018】
そのうち受光センサ3は、本体ケース1(主部1a)内の中央部に前記読取口1cを向いて配設されており、その前方に前記結像レンズ4が配設されている。詳しい図示及び説明は省略するが、この結像レンズ4は、鏡筒内に複数枚のレンズを配設して構成されている。前記照明部5は、詳しく図示はしないが、照明光源となるLEDと、このLEDの前部に配置され光を集光及び拡散する照明用レンズとを、前記結像レンズ4の周囲部(上部を除く)に、前記読取口1cに向けて複数組配設して構成されている。これにて、照明部5によって読取口1cを通して読取対象Rに記された二次元コードQに照明光が照射され、二次元コードQからの反射光が読取口1cを通して入射され、前記結像レンズ4を介して受光センサ3上に結像され、以て、二次元コードQの画像を取込む撮像手段が構成されている。
【0019】
このとき、図1に示すように、読取機構の光学特性(主として結像レンズ4の焦点距離)により、情報コードの読取りが良好に行えるような、装置(読取口1c)から読取対象Rまでの距離(合焦位置)は、予め決まっている。この場合、読取可能範囲Aは、例えば、結像レンズ4のベストフォーカスの近傍(前後)に全体で200mm程度の幅を有したものとされる。従って、ユーザは、読取対象Rがこの読取可能範囲A内に位置された状態で読取り操作を行う必要があり、そこから遠近方向に外れた距離(範囲B,C)ではQRコードQのデコード処理が正しく行えない事情がある。
【0020】
前記マーカ光照射部6は、図4(a)にも示すように、光源となるレーザダイオード7を備えると共に、そのレーザダイオード7の前部に位置して、コリメートレンズ8、マーカ光Mのパターンを形成するフォログラム9、絞り10を順に備えて構成されている。このマーカ光照射部6は、前記結像レンズ4の上部に位置して読取口1cを向いて水平やや斜め下向きに配設されており、前記読取対象Rに対して、読取位置(読取範囲)を示すためのマーカ光Mを照射するようになっている。
【0021】
この場合、マーカ光照射部6は、前記結像レンズ4の上部に位置して読取口1cを向いて水平やや斜め下向きに配設されており、図1,図5に示すように、前記読取対象Rに対して、読取位置(読取範囲)を示すためのマーカ光Mを照射するようになっている。本実施例では、このマーカ光Mは、前記受光センサ3の撮影視野Fよりも僅かだけ小さい、やや横長の長方形の4つの角部に対応したL字状の光と、中心を示す十字状の光とからなっている。つまり、マーカ光Mは、線状の光の組合せから構成されている。
【0022】
そしてこのとき、図1に示すように、マーカ光照射部6により読取対象Rに対して照射されるマーカ光Mは、読取対象Rまでの距離が、良好に読取りを行える読取可能範囲Aにおいては、読取対象Rに鮮明なパターンを描き、その範囲から遠近に外れた範囲B、Cにおいてはぼけるように構成されている。本実施例では、図5に示すように、マーカ光照射部6のベストフォーカス位置と、前記結像レンズ4のベストフォーカス位置とをほぼ一致させると共に、図4(a)に示すように、前記絞り10の開口径の大きさを比較的大きく(例えば直径2mm)することによって、前記マーカ光Mの結像及びぼけが実現されるように構成されている。この場合、図4(b)に示すように、従来のマーカ光照射部では、絞り25の開口径を比較的小さく(例えば直径1mm以下)していた。
【0023】
尚、本実施例では、このマーカ光照射部6は、例えば装置の電源オン時には、受光センサ3による二次元コードQの画像取込み(撮影)時を除いて、常にマーカ光Mを照射(点灯)するようになっている。あるいは、前記トリガスイッチ2を2段階の押圧操作可能に構成し、第1段の押圧操作(いわゆる半押し状態)で、マーカ光Mの照射動作が実行され、第2段の押圧操作で受光センサ3による画像取込み動作が実行されるように構成しても良い。
【0024】
図2に示すように、前記本体ケース1(主部1a)内の後部側には、図3に示す各回路等が実装されている回路基板23が設けられている。さらに、図3のみに図示するように、本体ケース1の外面部(主部1aの上面部)には、ユーザが各種入力指示を行うための操作スイッチ24、報知用のLED11、液晶表示器12などが設けられている。本体ケース1内にはエラー報知等を行うためのブザー13や、外部との通信を行うための通信インタフェイス14、駆動電源となる二次電池15なども設けられている。
【0025】
図3は、本実施例の二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示しており、前記回路基板23には、マイコンを主体として構成され、全体の制御やデコード処理等を行う制御回路16が設けられている。この制御回路16には、前記トリガスイッチ2及び操作スイッチ24からの信号が入力されるようになっていると共に、制御回路16は、前記受光センサ3、照明部5、マーカ光照射部6を制御するようになっており、以て、読取対象Rに記された二次元コードQの画像の取込み動作を実行するようになっている。また、この制御回路16は、前記LED11、ブザー13、液晶表示器12を制御し、通信インタフェイス14を介して外部(管理コンピュータ等)とのデータ通信を実行する。
【0026】
さらに、前記回路基板23には、増幅回路17、A/D変換回路18、メモリ19、特定比検出回路20、同期信号発生回路21、アドレス発生回路22などが実装され、これらも前記制御回路16により制御されるようになっている。これにて、受光センサ3による撮像信号が、増幅回路17にて増幅され、A/D変換回路18にてデジタル信号に変換されて画像データとしてメモリ19に記憶される。またこのとき、特定比検出回路20にて画像データ中の特定パターンが検出されるようになっている。前記受光センサ3及び特定比検出回路20、アドレス発生回路22には、同期信号発生回路21から同期信号が与えられるようになっている。
【0027】
さて、後の作用説明でも述べるように、本実施例では、前記制御回路16は、主としてそのソフトウエア的構成(プログラムの実行)により、読取対象Rにマーカ光Mを照射した状態の画像を受光センサ3により撮影させるマーカ光画像取込み動作を実行させるようになっていると共に、その撮影画像からマーカ光Mのぼけ(ぼけ量)を判定するようになっている。従って、制御回路16が、本発明にいうマーカ光画像取込動作実行手段、及び、ぼけ判定手段として機能するようになっている。
【0028】
この場合、本実施例では、通常時には、マーカ光照射部6によるマーカ光Mの照射(点灯)が連続的に行われており、この状態でトリガスイッチ2がオン操作されると、受光センサ3により、読取対象Rにマーカ光Mが照射された状態(照明部5はオフ(消灯)状態)で画像が取込まれ、引続き、マーカ光Mの照射が一時的に停止された状態で照明部5がオン(点灯)されて受光センサ3による二次元コードQの画像の取込み動作(受光センサ3における露光、画像データの取込み(A/D変換回路18からのデジタル画像データの画像メモリ19への書込み)、二次元コードQのデコード処理)が連続して行われるようになっている。つまり、2段階の画像取込み動作が実行されるようになっている。
【0029】
さて、後の作用説明でも述べるように、1段目の画像取込み動作によりマーカ光画像が取込まれると、制御回路16により、撮影視野F中のマーカ光Mが検出されると共に、そのマーカ光Mの線の太さが求められて予め設定されているしきい値(例えば2mm)と比較される。マーカ光Mの線の太さがしきい値よりも大きい場合には、マーカ光Mがぼけていると判定され、マーカ光Mの線の太さがしきい値以下であるときには、マーカ光Mがぼけていないと判定される。
【0030】
そして、本実施例では、制御回路16は、マーカ光Mがぼけていないと判定された場合には、読取対象Rまでの距離が良好に読取りを行える読取可能範囲Aにあるとして、2段目の二次元コードQの画像取込み動作をそのまま実行(続行)する。これに対し、マーカ光Mがぼけていると判定された場合には、読取対象Rまでの距離が、二次元コードQの読取りに不適切な距離の範囲B又はCにあるとして、2段目の二次元コードQの画像取込み動作を中止(中断)し、再度、1段目のマーカ光画像の取込み動作を実行するようになっている。
【0031】
次に、上記のように構成された本実施例の二次元コード読取装置の作用について、図6及び図7も参照して述べる。ユーザが読取対象Rに記された二次元コードQを読取らせるにあたっては、本体ケース1を読取対象Rから適当な距離だけ離し、且つ、読取口1cがその読取対象Rに向いた状態とする。このとき、マーカ光照射部6からはマーカ光Mが出射されているので、ユーザは、マーカ光Mを読取対象Rに当てて、できるだけマーカ光Mの中心部の位置に二次元コードQが配置されるように、本体ケース1(読取口1c)の位置合せを行う。また、ユーザは、読取対象Rに照射されているマーカ光Mを視認することによって、マーカ光Mができるだけ鮮明に描かれる(ぼけない)ように、距離についても位置合せを行い、その位置合せ状態でトリガスイッチ2をオン操作するようにする。
【0032】
図6のフローチャートは、トリガスイッチ2がオン操作されたときに、制御回路16が実行する二次元コードQの読取りの処理手順の概略を示している。また、図7のタイムチャートは、その際のマーカ光M(マーカ光照射部6)のオン、オフの制御と、読取処理との関係とを示しており、図7(a)は1段目の画像取込み動作でマーカ光Mがぼけていないと判定された場合、図7(b)は1段目の画像取込み動作でマーカ光Mがぼけていると判定された場合を夫々示している。
【0033】
図6のフローチャートに示すように、トリガスイッチ2がオン操作されると、まずステップS1にて、受光センサ3による1段目の画像取込み動作(露光)が開始される。このときには、図7に示すように、読取対象Rにマーカ光Mが照射されており、照明光はオフしているので、受光センサ3には、読取対象Rにマーカ光Mが写り込んだ画像が取込まれることになる。ステップS2では、マーカ光画像のデータの取込みが行われ、取込まれたマーカ光画像データからマーカ光Mのぼけの判定が実行される。
【0034】
このとき、図6には詳しく図示されていないが、図7に示すように、ぼけ判定の処理開始(画像データの取込み終了)と同時に、受光センサ3による2段目の画像取込み動作(露光)が開始される。このとき(露光時のみ)には、図7に示すように、マーカ光Mがオフされると共に照明部5により照明光がオンされるので、読取対象Rに照明光が照射されその反射光(二次元コードQの画像)が受光センサ3により撮像されることになる。
【0035】
ステップS3では、マーカ光Mがぼけているかどうかが判断される。マーカ光Mがぼけていないと判断された場合には(ステップS3にてNo)、読取対象Rまでの距離が良好に読取りを行える読取可能範囲Aにあるので、ステップS4に進み、図7(a)にも示すように、そのまま2段目の画像取込みの処理(画像データの取込み、デコード)が実行される。ステップS5では、デコードが成功したかどうかが判断され、デコードに成功した場合には(Yes)、処理が終了する。デコードに失敗した場合には(ステップS5にてNo)、ステップS1に戻り、1段目の画像取込み動作が再度実行される。
【0036】
これに対し、読取対象Rまでの距離が、二次元コードQの読取りに不適切な距離(遠過ぎる或いは近過ぎる)である場合には、1段目の画像取込み動作においてマーカ光Mがぼけていると判定される(ステップS3にてYes)。この場合には、図7(b)に示すように、2段目の画像取込みの処理(画像データの取込み、デコード)が中断(中止)され、ステップS1に戻り、1段目の画像取込み動作(マーカ光画像の取込み動作)が再度実行され、マーカ光Mのぼけの判定の処理などが繰返される。
【0037】
このように本実施例によれば、マーカ光照射部6を、読取対象Rまでの距離が読取りを良好に行える範囲Aにおいてマーカ光Mが該読取対象Rに鮮明なパターンを描き、その範囲から外れるとぼけるように構成し、そのマーカ光画像を利用して読取対象Rまでの距離が読取可能範囲Aにあるかどうかを自動で判断するようにした。そして、マーカ光Mがぼけていると判定されたとき、つまり読取対象Rまでの距離が読取可能範囲Aから外れているときに、二次元コードQの画像取込みの処理を中止するようにした。
【0038】
この結果、従来のようなトリガスイッチが操作された際に常に読取処理を行っていたものと異なり、無駄なデコード処理等の実行を未然に防止して無駄な電力消費を抑えることができる。しかも、読取時の二次元コードQの位置合せのために元々備えているマーカ光照射部6を利用して判定するものであるから、別途の距離センサなどを用いることもなく簡単な構成で済ませることができる。更には、ユーザが、読取対象Rに照射されているマーカ光Mを視認することによって、適切な読取距離にあるかどうかを容易に知ることができるといったメリットがあることは勿論である。
【0039】
<2>第2〜第6の実施例、その他の実施例
図8及び図9は、本発明の第2の実施例を示すものである。尚、以下に述べる各実施例も、上記第1の実施例と同様に、本発明を光学情報読取装置たるガンタイプの二次元コード読取装置に適用したものであるため、上記第1の実施例と同一部分には同一符号を付して新たな図示及び詳しい説明を省略することとし、以下、異なる点を中心に述べることとする。
【0040】
この第2の実施例が、上記第1の実施例と異なるところは、受光センサ3による2段階の画像取込み動作を実行することに代えて、一度の画像取込み動作を実行し、その撮影画像データに基づいて、マーカ光Mのぼけの判定を行うと共に、マーカ光がMぼけていないと判定されたとき(ぼけ量が所定値以下である場合)には、前記取込んだ画像データから、二次元コードQの読取り(デコード)処理を併せて行うように構成した点にある。
【0041】
ここで、周知のように、二次元コードQであるQRコードは、リードソロモン符号による誤り訂正(データ復元)機能を有しており、面積の最大30%が汚れていたり、破損したりしていても、読取りが可能とされている。この実施例では、そのような誤り訂正機能を利用するものであり、取込んだ画像において、例えば図9に示すように、二次元コードQの画像にマーカ光Mの一部が重なっていて、二次元コードQのデータの一部が正しく読取れなくても、誤り訂正機能によるデータ復元が可能なレベル(面積)であれば、デコードが可能となるのである。
【0042】
図8のタイムチャートは、本実施例におけるトリガスイッチ2がオン操作された際のマーカ光M(マーカ光照射部6)のオン、オフの制御と、制御回路16の実行する読取処理との関係とを示している。このときも、ユーザは、本体ケース1を読取対象Rから適当な(任意の)距離だけ離した状態で、マーカ光Mを読取対象Rに当てて、その中心部に二次元コードQが配置されるように位置合せを行い、トリガスイッチ2をオン操作する。
【0043】
すると、受光センサ3による画像取込み動作(露光)が実行される。このときには、読取対象Rにマーカ光Mが照射されていると共に、照明光がオンするようになっている。従って、受光センサ3には、図9に示すような、読取対象Rに記された二次元コードQの画像にマーカ光Mが写り込んだ画像が撮影されることになる。そして、画像データの取込みが実行され、次いで、まず撮影視野F中のマーカ光Mが検出され、そのマーカ光Mの線の太さが求められてぼけが判定される。尚このとき、マーカ光Mのうち、コーナー部のL字状の部分等によりマーカ光Mの検出は可能である。
【0044】
ここで、マーカ光Mがぼけていないと判定されたときには、引続き、上記誤り訂正機能を用いた二次元コードQのデコード処理が実行される。そして、デコードに成功した場合には処理が終了され、例えば次の画像取込み動作が実行される。一方、図示はしていないが、マーカ光Mがぼけていると判定された場合には、デコード処理が中止され、再度の画像取込み動作が実行され、上記した処理が繰返される。
【0045】
このような第2の実施例によれば、上記第1の実施例と同様に、読取対象Rから離れた位置から二次元コードQの読取りができるものにあって、装置から読取対象Rまでの距離が読取りを良好に行える範囲A内にあるかどうかを自動で判別でき、ひいては無駄な電力消費を抑えることができるという優れた効果を奏する。そして、それに加え、一度の画像取込みにより、マーカ光Mのぼけの判定及び二次元コードQの読取り(デコード)の双方を行うことができて効率的な動作を行うことができ、例えば複数の二次元コードQを連続して読取るような場合に、処理時間の短縮化を図ることができる。
【0046】
図10は、本発明の第3の実施例を示すものであり、1段目の画像取込み動作でマーカ光Mがぼけていると判定された場合における、マーカ光M(マーカ光照射部6)のオン、オフの制御と、読取処理との関係とを示すタイムチャートである。この第3の実施例が、上記第1の実施例と異なる点は、1段目の画像取込み動作においてマーカ光Mがぼけていると判定された場合に、2段目の画像取込みの処理(画像データの取込み、デコード)を中断し、すぐに再度の(1段目の)マーカ光画像の取込み(露光)に移るようにした構成にある。これにより、処理時間をより短くすることができる。
【0047】
図11〜図13は、本発明の第4〜第6の実施例を順に示しており、マーカ光照射手段としてのマーカ光照射部の構成が、上記第1の実施例のマーカ光照射部6と異なっている。即ち、図11に示す本発明の第4の実施例に係るマーカ光照射部31は、光源となるレーザダイオード7、集光レンズ32、マーカ光Mのパターンを形成するシリンドリカルレンズ33、絞り10を順に備えて構成されている。この場合も、絞り10の開口径の大きさを比較的大きく(例えば直径2mm)することによって、マーカ光照射部31により読取対象Rに対して照射されるマーカ光Mは、読取対象Rまでの距離が、良好に読取りを行える読取可能範囲Aにおいては、読取対象Rに鮮明なパターンを描き、その範囲から遠近に外れた範囲B、Cにおいてはぼけるように構成されている。
【0048】
図12に示す本発明の第5の実施例に係るマーカ光照射部34は、光源となるレーザダイオード7、コリメートレンズ35、マーカ光Mのパターンを形成するフォログラム36を順に備え、絞りを有さずに構成されている。また、図13に示す本発明の第6の実施例に係るマーカ光照射部37は、光源となるレーザダイオード7、集光レンズ38、マーカ光Mのパターンを形成するシリンドリカルレンズ39を順に備え、やはり絞りを有さずに構成されている。これらの構成においては、各レンズ35,38,39の形状によって、マーカ光Mの結像及びぼけが実現されるように構成されている。
【0049】
尚、上記した実施例では、マーカ光Mのぼけの判定を、マーカ光Mの線状部分の太さを検出することに基づいて行うように構成したが、このぼけ判定については様々な手法を採用することが可能であり、例えば、受光センサにカラーセンサを採用すると共に、マーカ光Mを特定の色(例えば赤色)で照射し、マーカ光の色のにじみの検出に基づいてぼけ度合(ぼけ量)を判定するといった手法も可能である。マーカ光Mのパターン(形状)としても、例えば中央部とその左右に3個のポイント状の光を照射するものや、読取機構の視野を示す四角い枠状の光とする等、種々の変形が考えられる。
【0050】
また、上記実施例では、マーカ光Mのぼけが判定された場合には、二次元コードQの画像の取込み(デコード)の処理を中止して再度マーカ光画像を取込むように構成したが、ぼけ判定の結果を用いて、受光センサのシャッタ速度(露光時間)の制御や、照明光の強度が可変のものでは照明光の強度を調整するといった制御を行うことも可能である。この場合、単にマーカ光Mがぼけているかいないかを判定するのではなく、ぼけ度合(ぼけ量)を複数段階で判断するようにしても良く、よりきめ細かな制御が可能となる。マーカ光Mのぼけが判定された場合にぼけが判定された場合に、ブザーや表示などによって、ユーザに報知を行う構成としても良い。
【0051】
さらには、上記各実施例では、本発明の光学情報読取装置を、情報コードとしての二次元コードQ、特にQRコードの読取りに適用したが、他の種類の二次元コードの読取りに適用したり、バーコードなどの一次元コードの読取りに適用したりすることもできる。例えば、バーコードに関して、一度の画像取込みにより、マーカ光Mのぼけ判定及び情報コードの読取りを行う際には、マーカ光Mの存在しない部分(水平方向の走査線)に沿って読取り(デコード)を行えば良く、同様に実施することができる。
【0052】
その他、例えば本発明の光学情報読取装置は、ガンタイプのものに限らず、ハンディタイプのものや、FAシステムなどに固定的に組込まれるもの(読取対象側の位置が変動するもの)であっても良く、また、全体のハードウエア構成、特にマーカ光照射手段の構成などについても様々な変更が可能である等、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施例を示すもので、読取対象までの距離の変化に伴ってマーカ光画像がぼける様子を示す図
【図2】二次元コード読取装置の構成を概略的に示す縦断側面図
【図3】二次元コード読取装置の電気的構成を概略的に示すブロック図
【図4】マーカ光照射部の構成を(a)を従来のもの(b)と併せて示す拡大縦断側面図
【図5】マーカ光照射部のベストフォーカス位置と結像レンズのベストフォーカス位置とが一致する様子を示す図
【図6】二次元コードの読取りの処理手順を示フローチャート
【図7】マーカ光のオン、オフの制御と読取処理との関係とを示すタイムチャートであり、(a)はマーカ光がぼけていないと判定された場合、(b)はマーカ光がぼけていると判定された場合を示す図
【図8】本発明の第2の実施例を示すもので、マーカ光のオン、オフの制御と読取処理との関係とを示すタイムチャート
【図9】二次元コードの画像にマーカ光が写り込んだ画像を示す図
【図10】本発明の第3の実施例を示す図8相当図
【図11】本発明の第4の実施例を示すもので、マーカ光照射部の構成を示す拡大縦断側面図
【図12】本発明の第5の実施例を示す図11相当図
【図13】本発明の第6の実施例を示す図11相当図
【符号の説明】
【0054】
図面中、1は本体ケース、1cは読取口、2はトリガスイッチ、3は受光センサ、4は結像レンズ、5は照明部、6,31,34,37はマーカ光照射部(マーカ光照射手段)、10は絞り、16は制御回路(マーカ光画像取込動作実行手段、ぼけ判定手段)、19はメモリ、Rは読取対象、Qは二次元コード(情報コード)、Mはマーカ光を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結像レンズ及び受光センサを備え読取対象に記された情報コードの画像を取込む撮像手段と、前記読取対象に対して読取位置又は読取範囲を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段とを具備する光学情報読取装置であって、
前記マーカ光照射手段は、前記読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲において前記マーカ光が該読取対象に鮮明なパターンを描き、その範囲から外れるとぼけるように構成されていると共に、
前記読取対象にマーカ光を照射した状態の画像を前記撮像手段により取込むマーカ光画像取込動作実行手段と、
このマーカ光画像取込動作実行手段により撮影された画像から前記マーカ光のぼけを判定するぼけ判定手段とを備えることを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項2】
前記読取りを良好に行える範囲は、前記結像レンズのベストフォーカス近傍であることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置。
【請求項3】
前記マーカ光は、線状の光を含んで構成されると共に、
前記ぼけ判定手段は、撮影画像から前記マーカ光の線状部分の太さを検出することに基づいてぼけを判定することを特徴とする請求項1または2記載の光学情報読取装置。
【請求項4】
前記マーカ光画像取込動作実行手段によるマーカ光画像の取込み動作の後に、前記マーカ光の照射を停止した状態で前記情報コードの画像の取込み動作が連続して実行されるように構成されていると共に、
前記ぼけ判定手段によりぼけが判定された場合には、取込んだ前記情報コードの画像の処理を中止するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項5】
前記マーカ光画像取込動作実行手段によるマーカ光画像の取込み動作の後に、前記マーカ光の照射を停止した状態で前記情報コードの画像の取込み動作が連続して実行されるように構成されていると共に、
前記ぼけ判定手段によりぼけが判定された場合には、前記情報コードの画像取込み動作を中断し、再度マーカ光画像の取込み動作を実行するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項6】
前記ぼけ判定手段により判定されたぼけ量が所定値以下である場合には、前記マーカ光画像取込動作実行手段により取込んだマーカ光画像から、前記情報コードの読取処理を併せて実行するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項7】
前記マーカ光照射手段は、絞りを備えて構成されていると共に、
前記絞りの大きさによって、前記マーカ光の結像及びぼけが実現されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項8】
前記マーカ光照射手段は、レンズを備えて構成されていると共に、
前記レンズの形状によって、前記マーカ光の結像及びぼけが実現されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項1】
結像レンズ及び受光センサを備え読取対象に記された情報コードの画像を取込む撮像手段と、前記読取対象に対して読取位置又は読取範囲を示すためのマーカ光を照射するマーカ光照射手段とを具備する光学情報読取装置であって、
前記マーカ光照射手段は、前記読取対象までの距離が読取りを良好に行える範囲において前記マーカ光が該読取対象に鮮明なパターンを描き、その範囲から外れるとぼけるように構成されていると共に、
前記読取対象にマーカ光を照射した状態の画像を前記撮像手段により取込むマーカ光画像取込動作実行手段と、
このマーカ光画像取込動作実行手段により撮影された画像から前記マーカ光のぼけを判定するぼけ判定手段とを備えることを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項2】
前記読取りを良好に行える範囲は、前記結像レンズのベストフォーカス近傍であることを特徴とする請求項1記載の光学情報読取装置。
【請求項3】
前記マーカ光は、線状の光を含んで構成されると共に、
前記ぼけ判定手段は、撮影画像から前記マーカ光の線状部分の太さを検出することに基づいてぼけを判定することを特徴とする請求項1または2記載の光学情報読取装置。
【請求項4】
前記マーカ光画像取込動作実行手段によるマーカ光画像の取込み動作の後に、前記マーカ光の照射を停止した状態で前記情報コードの画像の取込み動作が連続して実行されるように構成されていると共に、
前記ぼけ判定手段によりぼけが判定された場合には、取込んだ前記情報コードの画像の処理を中止するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項5】
前記マーカ光画像取込動作実行手段によるマーカ光画像の取込み動作の後に、前記マーカ光の照射を停止した状態で前記情報コードの画像の取込み動作が連続して実行されるように構成されていると共に、
前記ぼけ判定手段によりぼけが判定された場合には、前記情報コードの画像取込み動作を中断し、再度マーカ光画像の取込み動作を実行するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項6】
前記ぼけ判定手段により判定されたぼけ量が所定値以下である場合には、前記マーカ光画像取込動作実行手段により取込んだマーカ光画像から、前記情報コードの読取処理を併せて実行するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項7】
前記マーカ光照射手段は、絞りを備えて構成されていると共に、
前記絞りの大きさによって、前記マーカ光の結像及びぼけが実現されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【請求項8】
前記マーカ光照射手段は、レンズを備えて構成されていると共に、
前記レンズの形状によって、前記マーカ光の結像及びぼけが実現されるように構成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光学情報読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−209208(P2006−209208A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−16875(P2005−16875)
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年1月25日(2005.1.25)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]