説明

光学情報読取装置

【課題】 遠距離から近距離まで一次元コードの読み取りができる光学情報読取装置を提供する。
【解決手段】 結像レンズ27と受光センサ23との間に、長い光路を有する遠距離用ミラー25aと、短い光路を有する近距離用ミラー25bとを、遠距離用ミラー25aの光軸Xaと近距離用ミラー25bの光軸Xbとで角度が異なるように配置してあるので、遠距離用ミラー25aを用いて遠距離の対象物の撮像を行うと共に、近距離用ミラー25bを用いて近距離の対象物の撮像を行うことで、遠距離から近距離までの広い距離範囲で一次元コードを読み取ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品等に印刷又は貼り付けられているバーコード等の一次元コードの読み取りを行う光学情報読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙などの基材にバーコードなどの一次元コードを印刷したものを物品や書類に取り付け、これを光学的に読み取り、物品の識別などを行う光学情報読取装置が知られている。係る一次元コードの光学情報読取装置は、レーザ光を線状にスキャンさせ、受光素子としてフォトダイオード等のラインセンサを用いる方式と、LEDを光源として、CCDセンサ(又はCMOSセンサ)等のエリアセンサを用いる方式とがある。一般的に、エリアセンサを用いる方式のほうが、可動部が無いことから、信頼性、耐久性に優れるとされている。特許文献1には、エリアセンサの角度を調整することで、読取深度の拡大を図ったバーコード読取装置が開示されている。
【特許文献1】特開平6−103392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
バーコードには、0.12mm程度の高密度のものから、段ボール箱等に用いられる汚れても読み取り可能な物流用ITFコードのように、低密度で幅が広いものまで種々存在する。このため、一般に、CCDセンサ(又はCMOSセンサ)等のエリアセンサを用いる読取装置では、ベストフォカス面を装置の先端から離れた位置に設定し、且つ、読取深度を広げるために結像レンズの絞り径を小さくすることで対応している。しかしその弊害として、エリアセンサへの入射光量が減少し、S/N比が低下して読み取り性能が悪化するという課題があった。
【0004】
これを回避する手段として、結像レンズを移動させるオートフォーカス機構を採用することも考え得るが、構造が複雑になり、可動部を設けることによって信頼性の低下が避けられない。
【0005】
特許文献1に示されているように、エリアセンサを傾けて配置し、エリアセンサ上の受光部によってベストフォーカス位置が変わるようにすることで、広い読取深度を得ることが可能である。しかしながら、特許文献1の構成では、読取光軸に対してエリアセンサが傾くために、エリアセンサの単位面積(受光素子)当たりの受光量が低下し、S/N比が低下して読み取り性能が悪化し、読み取りが困難になる場合がある。また、ベストフォーカス位置と共に読み取り視野が移動、即ち、距離によってバーコードに対して読取口を当てる角度が変わるので、バーコードの何処に読取口を当てれば良いかが分かり難いという課題があった。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、遠距離から近距離まで一次元コードの読み取りができる光学情報読取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、入射光を1の結像レンズ27を通して1のエリアセンサ23の受光面23c上に像を結ばせ、撮像された対象物の画像により一次元コードを読み取る光学情報読取装置10であって:
前記結像レンズ27とエリアセンサ23との間に、少なくとも長い光路を有する遠距離用ミラー25aと、短い光路を有する近距離用ミラー25bとを設け、
前記遠距離用ミラー25aの光軸Xaと前記近距離用ミラー25bの光軸25Xとで角度が異なるように配置し、
前記遠距離用ミラー25aによる前記エリアセンサ23での結像位置と、前記近距離用ミラー25bによる前記エリアセンサ23での結像位置とを異ならせ、
前記遠距離用ミラー25aと前記近距離用ミラー25bとで反射され前記エリアセンサ23に対してそれぞれ入射する入射光が垂直又は垂直に近い角度になるように、該遠距離用ミラー25aと該近距離用ミラー25bとをそれぞれ位置決めし、
前記遠距離用ミラー25aを用いて遠距離の対象物の撮像を行うと共に、前記近距離用ミラー25bを用いて近距離の対象物の撮像を行うことを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の光学情報読取装置では、結像レンズとエリアセンサとの間に、長い光路を有する遠距離用ミラーと、短い光路を有する近距離用ミラーとを、遠距離用ミラーの光軸と近距離用ミラーの光軸とで角度が異なるように配置してあるので、遠距離用ミラーを用いて遠距離の対象物の撮像を行うと共に、近距離用ミラーを用いて近距離の対象物の撮像を行うことで、遠距離から近距離までの広い距離範囲で一次元コードを読み取ることができる。ここで、遠距離用ミラーによるエリアセンサでの結像位置と、近距離用ミラーによるエリアセンサでの結像位置とを異ならせてあるので、遠距離用ミラーによる結像と近距離用ミラーによる結像とが重ならず、1のエリアセンサで複数のミラーを用いて撮像することが可能になる。また、遠距離用ミラーと近距離用ミラーとで反射され、エリアセンサに対してそれぞれ入射する入射光が垂直又は垂直に近い角度になるように、該遠距離用ミラーと該近距離用ミラーとをそれぞれ位置決めしてあるので、読取光軸に対してエリアセンサが傾かず、単位面積当たりの受光量が低下しないため、エリアセンサで鮮明な画像を撮像することができる。近距離用ミラーの光路の角度と、遠距離用ミラーの光軸の角度とが一定であるので、一次元コードに対しての光学情報読取装置の位置合わせが容易である。
【0009】
請求項2の光学情報読取装置では、遠距離用ミラーの光軸が上側に、近距離用ミラーの光軸が下側になるように配置されているので、遠距離の一次元コードを読み取る際には、光学情報読取装置を水平に近い状態で保持し、近距離の一次元コードを読み取る際には、光学情報読取装置を前傾させた状態で保持することで位置合わせできる。このため、光学情報読取装置の位置合わせが容易である。
【0010】
請求項3の光学情報読取装置では、遠距離用ミラーを用いる遠距離の対象物の撮像と、近距離用ミラーを用いる近距離の対象物の撮像とを切り換えることができるので、遠距離から近距離までの広い距離範囲で一次元コードを読み取ることができる。
【0011】
請求項4の光学情報読取装置では、対象物までの距離を推定し、推定した距離に応じて、遠距離用ミラーを用いる遠距離の対象物の撮像と、近距離用ミラーを用いる近距離の対象物の撮像とを切り換えるため、操作者による遠近の切り換え操作なしに、自動的に遠距離から近距離までの広い距離範囲で一次元コードを読み取ることができる。
【0012】
請求項5の光学情報読取装置では、遠距離用ミラーを用いて遠距離の対象物を撮像する際に、遠距離用ミラーの光軸に沿って対象物を照明する遠距離用照明手段を点灯させ、近距離用ミラーを用いて近距離の対象物を撮像する際に、近距離用ミラーの光軸に沿って対象物を照明する該近距離用照明手段を点灯させる。このため、遠距離の一次元コードも近距離の一次元コードも適切に照明を行い読み取ることができる。
【0013】
請求項6の光学情報読取装置では、遠距離用ミラーを用いて遠距離の対象物を撮像する際に、遠距離用ミラーによる読取範囲を対象物に投影する遠距離用マーカ手段を点灯させ、近距離用ミラーを用いて近距離の対象物を撮像する際に、近距離用ミラーによる読取範囲を対象物に投影する近距離用マーカ手段を点灯させる。このため、遠距離の一次元コードを撮像する際も、近距離の一次元コードを撮像する際も光学情報読取装置の位置決めを適切に行うことができる。
【0014】
請求項7の光学情報読取装置では、1の照明器で遠距離用ミラーの光軸及び近距離用ミラーの光軸に沿って対象物を照明する。そして、1のマーカ装置で遠距離用ミラーによる読取範囲及び近距離用ミラーによる読取範囲を対象物に投影する。このため、光学情報読取装置の構造を簡易化し、小型化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[第1実施形態]
以下、本発明の光学情報読取装置の実施形態について図を参照して説明する。まず、第1実施形態に係る光学情報読取装置の構成概要を図1のブロック図を参照して説明する。
バーコード等の一次元コードを読み取る光学情報読取装置10は、筐体14を備え、筐体14の前方に読取口12が、筐体14内に回路部20が設けられている。回路部20は、主に、遠距離用照明22a、近距離用照明22b、遠距離用マーカ装置21a、近距離用マーカ装置21b、受光センサ23、結像レンズ27等の光学系と、メモリ35、制御回路40、スイッチ42、液晶表示器46等のマイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)系と、電源スイッチ41、電源回路49等の電源系と、から構成されている。
【0016】
まず、光学系から説明する。図2は、光学系の配置関係の説明図であり、図2(A)は、光学情報読取装置10を側方から見ており、図2(B)は上方から見ている。
受光センサ23は、読取口12から30cm〜10cmの相対的に離れたバーコードBa、及び、読取口12から10cm未満の相対的に近いバーコードBbに照射されて反射した反射光を結像レンズ27及び遠距離用ミラー25a、近距離用ミラー25bを介して受光可能に構成されるもので、例えば、C−MOS等の固体撮像素子である受光素子を縦512、横640個の2次元に配列したイメージセンサが、これに相当する。結像レンズ27は、読取口12を介して外部から入射する入射光を集光して受光センサ23の受光面23cに像を結像可能な結像光学系として機能するもので、例えば、鏡筒とこの鏡筒内に収容される複数の集光レンズとにより構成されている(図中では1枚の凸レンズとして表す)。
【0017】
遠距離用ミラー25aの光軸(結像レンズ27の受光軸と交差する光軸)Xaは、水平方向よりもやや上を指向するように設定されている。近距離用ミラー25bの光軸(結像レンズの受光軸と交差する光軸)Xbは、水平方向よりもやや下を指向し、前傾するように設定されている。一方、発光ダイオードから成る遠距離用照明22aは、遠距離用ミラー25aの光軸Xaに沿って、読取口12から30cm〜10cmの相対的に離れたバーコードBaを照明するように設定されている。発光ダイオードから成る近距離用照明22bは、近距離用ミラー25bの光軸Xbに沿って読取口12から10cm未満の相対的に近いバーコードBbを照明するように設定されている。レーザダイオードから成る遠距離用マーカ装置21aは、遠距離用ミラー25aの光軸Xaに沿って遠距離用ミラー25aによる受光センサ23への結像範囲、即ち、図2(B)に示すように撮像範囲を示すマーカ光を照射するよう構成されている。レーザダイオードから成る近距離用マーカ装置21bは、近距離用ミラー25bの光軸Xbに沿って近距離用ミラー25bによる受光センサ23への結像範囲、即ち、図2(B)に示すように撮像範囲を示すマーカ光を照射するよう構成されている。
【0018】
結像光学系について、図3を参照して更に詳細に説明する。
図3中では、遠距離用ミラー25a及び近距離用ミラー25bを用いない場合の受光センサ23への入射光を鎖線で示している。ここで、結像レンズ27の焦点距離fを10mmとする。結像レンズ27の物体側主点から対象物(バーコード)の距離をS、結像レンズ27の像側主点から受光センサ23までの距離をS’とすると次の数1が成立する。
【数1】

【0019】
一方、結像レンズ27から近距離バーコードBbまでの距離S1を100mmとすると、結像レンズ27から受光センサ23までの距離S1’は、11.1111mmに設定することになる。ここで、結像レンズ27から近距離用ミラー25bまでの距離S11’、近距離用ミラー25bから受光センサ23までの距離S12’が、次の数2を満たす必要がある。
【数2】

【0020】
結像レンズ27から遠距離バーコードBaまでの距離S2を200mmとすると、結像レンズ27から受光センサ23までの距離S2’は、10.52632mmに設定することになる。ここで、結像レンズ27から遠距離用ミラー25aまでの距離S21’、遠距離用ミラー25aから受光センサ23までの距離S22’が、次の数3を満たす必要がある。
【数3】

【0021】
更に、遠距離用ミラー25aの光軸Xaと近距離用ミラー25bの光軸Xbとの角度θ1、遠距離用ミラー25aの鏡面と近距離用ミラー25bの鏡面との成す角度θ1’が、ほぼ等しい(θ1≒θ1’) 必要がある。
【0022】
なお、遠距離用ミラー25aによる受光センサ23での結像位置と、近距離用ミラー25bによる受光センサ23での結像位置とを異ならせてある。これにより、遠距離用ミラー25aによる結像と近距離用ミラー25bによる結像とが重ならず、1の受光センサ23で複数のミラーを用いて撮像することが可能になる。
【0023】
更に、遠距離用ミラー25aと近距離用ミラー25bとで反射され受光センサ23に対してそれぞれ入射する入射光がほぼ垂直(90±10°)になるように、該遠距離用ミラー25aと該近距離用ミラー25bとをそれぞれ位置決めしてある。これにより、読取光軸に対して受光センサ23が傾かず、単位面積当たりの受光量が低下しないため、受光センサ23で鮮明な画像を撮像することができる。
【0024】
図1に戻り、マイコン系の構成概要を説明する。マイコン系は、増幅回路31、A/D変換回路33、メモリ35、アドレス発生回路36、同期信号発生回路38、制御回路40、スイッチ42、LED43、ブザー44、液晶表示器46、通信インタフェース48等から構成されている。このマイコン系は、その名の通り、マイコン(情報処理装置)として機能し得る制御回路40およびメモリ35と中心に構成されるもので、前述した光学系によって撮像された画像信号をハードウェア的およびソフトウェア的に信号処理し得るものである。また制御回路40は、当該光学情報読取装置10の全体システムに関する制御も行っている。
【0025】
光学系の受光センサ23から出力される画像信号(アナログ信号)は、増幅回路31に入力されることで所定ゲインで増幅された後、A/D変換回路33に入力されると、アナログ信号からディジタル信号に変換される。そして、ディジタル化された画像信号、つまり画像データは、メモリ35に入力されて蓄積される。なお、同期信号発生回路38は、受光センサ23およびアドレス発生回路36に対する同期信号を発生可能に構成されており、またアドレス発生回路36は、この同期信号発生回路38から供給される同期信号に基づいて、メモリ35に格納される画像データの格納アドレスを発生可能に構成されている。
【0026】
制御回路40は、光学情報読取装置10全体を制御可能なマイコンで、CPU、システムバス、入出力インタフェース等からなるもので、メモリ35とともに情報処理装置を構成し得るもので情報処理機能を有する。この制御回路40には、内蔵された入出力インタフェースを介して種々の入出力装置(周辺装置)と接続可能に構成されており、本実施形態の場合、電源スイッチ41、スイッチ42、LED43、ブザー44、液晶表示器46、通信インタフェース48等が接続されている。
【0027】
第1実施形態の光学情報読取装置10は、スイッチ(トリガースイッチ)42の操作により、メモリ35への画像データの取り込み、メモリ35の画像データからのデコードを開始し、デコード結果をホストコンピュータ50側へ出力する。
【0028】
第1実施形態では、スイッチ(トリガースイッチ)42の操作で、遠距離用ミラー25aを用いる遠距離のバーコードの読み取りと、近距離用ミラー25bを用いる近距離のバーコードの読み取りとが切り換えられるように構成されている。更に、スイッチ42の設定で、読取対象物までの距離を推測し、自動的に遠距離用ミラー25aを用いる遠距離のバーコードの読み取りと、近距離用ミラー25bを用いる近距離のバーコードの読み取りとを切り換え得るように構成されている。この距離推測について説明する。
【0029】
図4(A)は、縦軸に周囲照度を取り、横軸に距離を取った照明光量のグラフである。照明光量は距離の自乗に比例して減衰する。
照明光量から引き下ろされた矢印は、照明光有りの画像(照明有り画像=周囲光量+照明光量)と、照明光無しの画像(照明無し画像=周囲光量)との光量差を示している。例えば、矢印(2)と矢印(3)とで光量差が同じでも、周囲光量によって距離が異なっていることが分かる。また、矢印(1)での光量差が矢印(3)とで光量差よりも大きく、距離が近いことが分かる。
【0030】
図4(B)は、周囲照度とバーコードまでの距離とに応じた受光レベルの説明図である。ここで、バーコードを読み取りを行うと、図中でバーコードの線間の白部分(光量大)で山となり、バーコードの線部分の黒(光量小)で谷となる。破線は、照明光無しの場合の信号レベルの変化を、実線は照明光有りの場合の信号レベルの変化を表している。
【0031】
周囲照度が明るい場合には、受光センサ23で取り込んだ信号の振幅は大いが、距離が近い場合には照明光有り無しでのレベル差が大きく、距離が遠いとレベル差が小さくなる。一方、周囲照明が暗い場合には、受光センサ23で取り込んだ信号の振幅は小さいが、距離が近い場合には照明光有り無しでのレベル差が大きく、距離が遠いとレベル差が小さくなる。この原理を用いて、第1実施形態の光学情報読取装置10は、対象物までの距離の推測を行う。
【0032】
引き続き、遠距離用ミラー25aを用いる遠距離のバーコードの読み取りと、近距離用ミラー25bを用いる近距離のバーコードの読み取りとを切り換える処理について、図5のフローチャートを参照して説明する。
先ず、自動切替が設定されているか否かを判断する(S12)。ここで、手動切り換えが設定されている場合には(S12:No)、設定に従い読み取りを行う(S14)。即ち、遠距離用ミラー25aを用いる遠距離のバーコードの読み取りが設定されている場合には、スイッチ(トリガースイッチ)42の操作に応じて、遠距離用マーカ装置21aにより、遠距離用ミラー25aの光軸Xaに沿って遠距離用ミラー25aによる受光センサ23への結像範囲、即ち、図2(B)に示すように撮像範囲を示すマーカ光を表示し、遠距離用照明22aで遠距離用ミラー25aの光軸Xaに沿って照明を行い、遠距離用ミラー25aからの反射光を受光センサ23で受光しデコードを行う。ここで、受光センサ23からの画像データの取り込みは、図2を参照して上述したように、遠距離用ミラー25aからの反射光が入射される範囲に限定して行われる。
【0033】
一方、近距離用ミラー25bを用いる近距離のバーコードの読み取りが設定されている場合には、スイッチ(トリガースイッチ)42の操作に応じて、近距離用マーカ装置21bにより、近距離用ミラー25bの光軸Xbに沿って近距離用ミラー25bによる受光センサ23への結像範囲、即ち、図2(B)に示すように撮像範囲を示すマーカ光を表示し、近距離用照明22bで近距離用ミラー25bの光軸Xbに沿って照明を行い、近距離用ミラー25bからの反射光を受光センサ23で受光しデコードを行う。ここで、受光センサ23からの画像データの取り込みは、図2を参照して上述したように、近距離用ミラー25bからの反射光が入射される範囲に限定して行われる。なお、遠距離用マーカ装置21a及び近距離用マーカ装置21bは、視認できない程の高速で点灯・消灯を繰り返しており、受光センサ23の露光中は遠距離用マーカ装置21a及び近距離読みマーカ装置21bは消灯している。
【0034】
他方、スイッチ42の操作で、自動切替が設定されている場合には(S12:Yes)、近距離用マーカ装置21bを点灯し(S22)、操作者に位置合わせを促し、近距離用照明22bを点灯することなく受光センサ23を露光し、バーコードの白レベルを取り込むことで(S24)、周囲光量を測定する(なお、受光センサ23を露光する際には近距離用マーカ装置21bは消灯させる)。引き続き、近距離用照明22bを点灯し(S26)、受光センサ23を露光し、バーコードの白レベルを取り込むことで(S28)、周囲光量に近距離用照明22bの光量を加えた光量を測定する。次に、取り込んだ受光センサ23の信号からバーコードのデコードを行う(ここでは、受光センサ23の受光面23cで、上述した近距離用ミラー25bからの反射光が入射される範囲に限定して行う:S30)。そして、デコードが行えたかを判断し(S32)、デコードが成功すると(S32:Yes)、処理を終了する。他方、デコードに失敗すると(S32:No)、上記S28で求めた(周囲光量に近距離用照明22bの光量を加えた光量)から上記S24で求めた(周囲光量)を引くことで、近距離用照明22bの光量を算出する(S34)。そして、近距離用照明22bの光量が予め設定されたしきい値よりも大きいか否かを判断し、しきい値よりも小さい場合(S36:No)、バーコードまでの距離が近いのでS22に戻り、近距離用ミラー25bを用いてデコードを繰り返す。他方、しきい値よりも大きい場合(S36:No)、バーコードまでの距離が遠いので、遠距離用マーカ装置21a及び遠距離用照明22a側に切り換え(S38)、S28に戻り、デコードを行う。ここで、遠距離用マーカ装置21aへの切り換えの際に、該遠距離用マーカ装置21aを数回点滅させてから切り換え、読取深度から外れていることを告知してから切り換えを行う。なお、上述したしき値は、製品毎にばらつきが出るので、製品出荷時にキャリブレーションを行い個々に設定する。
【0035】
第1実施形態の光学情報読取装置10では、結像レンズ27と受光センサ23との間に、長い光路を有する遠距離用ミラー25aと、短い光路を有する近距離用ミラー25bとを、遠距離用ミラー25aの光軸Xaと近距離用ミラー25bの光軸Xbとで角度が異なるように配置してあるので、遠距離用ミラー25aを用いて遠距離の対象物の撮像を行うと共に、近距離用ミラー25bを用いて近距離の対象物の撮像を行うことで、遠距離から近距離までの広い距離範囲で一次元コードを読み取ることができる。また、遠距離用ミラー25aと近距離用ミラー25bとで反射され受光センサ23に対してそれぞれ入射する入射光が垂直又は垂直に近い角度(90°±10°)になるように、該遠距離用ミラー25aと該近距離用ミラー25bとをそれぞれ位置決めしてあるので、読取光軸に対して受光センサ23が傾かず、単位面積当たりの受光量が低下しないため、受光センサ23で鮮明な画像を撮像することができる。
【0036】
第1実施形態の光学情報読取装置10では、遠距離用ミラー25aの光軸Xaが上側に、近距離用ミラー25bの光軸Xbが下側になるように配置されているので、遠距離の一次元コード(例えば、段ボール箱に付けられた物流用ITFコード)を読み取る際には、光学情報読取装置10を水平に近い状態で保持し、近距離の一次元コード(例えば、テーブル上のバーコード表)を読み取る際には、光学情報読取装置10を前傾させた状態で保持することで位置合わせできる。このため、光学情報読取装置10の位置合わせが容易である。
【0037】
第1実施形態の光学情報読取装置10では、対象物までの距離を推定し、推定した距離に応じて、遠距離用ミラー25aを用いる遠距離の対象物の撮像と、近距離用ミラー25bを用いる近距離の対象物の撮像とを切り換えるため、操作者による遠近の切り換え操作なしに、自動的に遠距離から近距離までの広い距離範囲で一次元コードを読み取ることができる。
【0038】
第1実施形態の光学情報読取装置10では、遠距離用ミラー25aを用いて遠距離の対象物を撮像する際に、遠距離用ミラー25aの光軸に沿って対象物を照明する遠距離用照明22aを点灯させ、近距離用ミラー25bを用いて近距離の対象物を撮像する際に、近距離用ミラー25bの光軸に沿って対象物を照明する該近距離用照明22bを点灯させる。このため、遠距離の一次元コードも近距離の一次元コードも適切に照明を行い読み取ることができる。
【0039】
第1実施形態の光学情報読取装置10では、遠距離用ミラー25aを用いて遠距離の対象物を撮像する際に、遠距離用ミラー25aによる読取範囲を対象物に表示する遠距離用マーカ装置21aを点灯させ、近距離用ミラー25bを用いて近距離の対象物を撮像する際に、近距離用ミラー25bによる読取範囲を対象物に表示する近距離用マーカ装置21bを点灯させる。第1実施形態では、遠距離を撮像する際の遠距離用ミラー25aの光軸Xaと、近距離を撮像する際の近距離用ミラー25bの光軸Xbとが、角度が固定されているため、該光軸Xaに沿って遠距離用マーカ装置21aで遠距離用ミラー25aによる読取範囲を対象物に表示することができ、また、該光軸Xbに沿って近距離用マーカ装置21bで近距離用ミラー25bによる読取範囲を対象物に表示することができる。このため、遠距離の一次元コードを撮像する際も、近距離の一次元コードを撮像する際も光学情報読取装置10の位置決め(角度調整)を容易に行うことができる。
【0040】
上述した第1実施形態の遠距離読みモードと近距離読みモードとの手動切り換えでは、初期設定として、近距離読みモードを設定しておき、例えば、物流ITFラベルを読み取らせるときの遠距離読みモードに切り換えるようにする。切り換え方法としては、例えば、スイッチ(トリガースイッチ)42をダブルクリックした際に、遠距離読みモードに切り換えるようにできる。
【0041】
或いは、上述したようにバーコードまでのおおよその距離を求め、光学情報読取装置が読取深度を超える程離れていると判断した場合に、遠距離用マーカ装置21a及び/又は、近距離用マーカ装置21bを点滅し、モードの切り換えは手動で行わせるようにも設定できる。更に、遠距離読みモードと近距離読みモードとの使用頻度を光学情報読取装置内に記憶しておき、次回使用の際には、使用頻度の多い側を自動設定するようにも構成できる。更に、上述した第1実施形態では、照明を2組設けたが、広範囲を照明するエリア照明を1台のみ備えるように構成することもできる。
【0042】
[第1実施形態の改変例]
図6を参照して第1実施形態の改変例について説明する。
図2を参照して上述した第1実施形態では、遠距離用マーカ装置21a及び近距離用マーカ装置21bが、レーザダイオードにより構成された。これに対して、第1実施形態の改変例では、遠距離用マーカ装置28a及び近距離用マーカ装置28bが発光ダイオードにより構成されている。第1実施形態の改変例では、より視認性が良い遠距離用マーカ装置21a及び近距離用マーカ装置21bを構成することができる。
【0043】
[第2実施形態]
図7を参照して本発明の第2実施形態に係る光学情報読取装置について説明する。
図2を参照して上述した第1実施形態の光学情報読取装置では、遠距離用ミラー25aを用いる遠距離の読み取りと、近距離用ミラー25bを用いる近距離の読み取りとを行った。これに対して、第2実施形態の改変例では、更に、光軸Xmを備える中距離用のミラー25bを有している。第2実施形態では、更に、距離に応じて適切な読み取りが実現できる。
【0044】
[第3実施形態]
図8を参照して本発明の第3実施形態に係る光学情報読取装置について説明する。
図2を参照して上述した第1実施形態の光学情報読取装置では、遠距離用ミラー25aの光軸Xaに沿って照明する遠距離用照明22a、マーカ光を照射する遠距離用マーカ装置21a、及び、近距離用ミラー25bの光軸Xbに沿って照明する近距離用照明22b、マーカ光を照射する近距離用マーカ装置21bをそれぞれ備えた。これに対して、第3実施形態の光学情報読取装置では、遠距離用ミラー25aの光軸Xa及び近距離用ミラー25bの光軸Xbに沿って対象物を広範囲に照明する1台の照明器22と、遠距離用ミラー25aによる読取範囲及び近距離用ミラー25bによる読取範囲のマーカ光を対象物に投影する1台のマーカ装置21とを備える。
【0045】
第3実施形態の光学情報読取装置では、1台の照明器22で遠距離用ミラー25aの光軸Xa及び近距離用ミラー25bの光軸Xbに沿って対象物を照明する。そして、1台のマーカ装置21で遠距離用ミラー25aによる読取範囲及び近距離用ミラー25bによる読取範囲のマーカ光を対象物に投影する。このため、光学情報読取装置の構造を簡易化し、小型化が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
上述した実施形態では、近距離用照明の点灯・消灯で距離の推測を行ったが、遠距離用照明を用いることも、或いは、遠距離用マーカ装置、近距離用マーカ装置の点灯・消灯で距離を測定することも可能である。また、第2実施形態の光学情報読取装置では、ミラーを3個備えたが、ミラーを4個以上備えることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学情報読取装置の回路構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態の光学情報読取装置の光学系の説明図である。
【図3】結像光学系の設定についての説明図である。
【図4】図4(A)は、縦軸に周囲照度を取り、横軸に距離を取った照明光量のグラフであり、図4(B)は、周囲照度とバーコードまでの距離とに応じた信号レベルの説明図である。
【図5】第1実施形態の光学情報読取装置での画像取り込み及びデコード処理を示すフローチャートである。
【図6】第1実施形態の改変例に係る光学情報読取装置の光学系の説明図である。
【図7】本発明の第2実施形態の光学情報読取装置の光学系の説明図である。
【図8】本発明の第3実施形態の光学情報読取装置の光学系の説明図である。
【符号の説明】
【0048】
10 光学情報読取装置
12 読取口
21 マーカ装置
21a 遠距離用マーカ装置
21b 近距離用マーカ装置
22 照明器
22a 遠距離用照明
22b 近距離用照明
23 受光センサ
25a 遠距離用ミラー
25b 近距離用ミラー
27 結像レンズ
40 制御回路
Xa 遠距離用ミラーの光軸
Xb 近距離用ミラーの光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射光を1の結像レンズを通して1のエリアセンサの受光面上に像を結ばせ、撮像された対象物の画像により一次元コードを読み取る光学情報読取装置であって: 前記結像レンズとエリアセンサとの間に、少なくとも長い光路を有する遠距離用ミラーと、短い光路を有する近距離用ミラーとを設け、
前記遠距離用ミラーの光軸と前記近距離用ミラーの光軸とで角度が異なるように配置し、
前記遠距離用ミラーによる前記エリアセンサでの結像位置と、前記近距離用ミラーによる前記エリアセンサでの結像位置とを異ならせ、
前記遠距離用ミラーと前記近距離用ミラーとで反射され前記エリアセンサに対してそれぞれ入射する入射光が垂直又は垂直に近い角度になるように、該遠距離用ミラーと該近距離用ミラーとをそれぞれ位置決めし、
前記遠距離用ミラーを用いて遠距離の対象物の撮像を行うと共に、前記近距離用ミラーを用いて近距離の対象物の撮像を行うことを特徴とする光学情報読取装置。
【請求項2】
前記遠距離用ミラーの光軸が上側に、前記近距離用ミラーの光軸が下側になるように配置したことを特徴とする請求項1の光学情報読取装置。
【請求項3】
前記遠距離用ミラーを用いる遠距離の対象物の撮像と、前記近距離用ミラーを用いる近距離の対象物の撮像とを切り換える切換手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2の光学情報読取装置。
【請求項4】
前記対象物までの距離を推定する距離推定手段を備え、
前記距離推定手段で推定した距離に応じて、前記切換手段が、前記遠距離用ミラーを用いる遠距離の対象物の撮像と、前記近距離用ミラーを用いる近距離の対象物の撮像とを切り換えることを特徴とする請求項3の光学情報読取装置。
【請求項5】
前記遠距離用ミラーの光軸に沿って対象物を照明する遠距離用照明手段と、前記近距離用ミラーの光軸に沿って対象物を照明する近距離用照明手段とを備え、
前記切換手段が、前記遠距離用ミラーを用いて遠距離の対象物を撮像する際に該遠距離用照明手段を点灯させ、前記近距離用ミラーを用いて近距離の対象物を撮像する際に該近距離用照明手段を点灯させることを特徴とする請求項3又は請求項4の光学情報読取装置。
【請求項6】
前記遠距離用ミラーによる読取範囲を前記対象物に投影する遠距離用マーカ手段と、前記近距離用ミラーによる読取範囲を前記対象物に投影する近距離用マーカ手段とを備え、
前記切換手段が、前記遠距離用ミラーを用いて遠距離の対象物を撮像する際に該遠距離用マーカ手段を点灯させ、前記近距離用ミラーを用いて近距離の対象物を撮像する際に該近距離用マーカ手段を点灯させることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1の光学情報読取装置。
【請求項7】
前記遠距離用ミラーの光軸及び前記近距離用ミラーの光軸に沿って対象物を照明する1の照明器と、
前記遠距離用ミラーによる読取範囲及び前記近距離用ミラーによる読取範囲を対象物に投影する1のマーカ装置とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1の光学情報読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−15571(P2009−15571A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176246(P2007−176246)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【Fターム(参考)】