説明

光学材料及び光学素子

【課題】確実に光学安定性を高める。
【解決手段】光学材料は、熱可塑性樹脂と、無機粒子と、酸化防止剤及び耐光安定剤の少なくとも一方の添加剤とを含有し、前記添加剤の含有量G1は、G0>G1>S1(但し、G0:前記無機粒子の含有量、S1:前記熱可塑性樹脂に対する当該添加剤の飽和溶解量)を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化防止剤や耐光安定剤を含有する光学材料と、当該光学材料を用いた光学素子とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、MOやCD、DVDなどの光情報記録媒体を用いて情報の記録や再生を行なう装置として、光ピックアップ装置がある。この光ピックアップ装置には、半導体レーザー光源から出射された光を光情報記録媒体の情報記録面に集光する対物レンズ等の光学素子が備えられている。
【0003】
このような光学素子の材料としてはガラスやプラスチックがあり、ガラスと比較してプラスチックの方が、光学素子を低廉に製造できるという利点を有している。
【0004】
但し、プラスチック製の光学素子は、ガラス製の光学素子と比較して光学安定性に劣っている。そのため、光学素子の材料としてプラスチックを用いる場合には、光散乱を起こさない程度の粒子サイズの添加剤をプラスチック材料に含有させることで、透光性を維持しつつ光学安定性を向上させている(例えば、特許文献1〜5参照)。
【特許文献1】特開2002−207101号公報
【特許文献2】特開2002−241560号公報
【特許文献3】特開2002−241569号公報
【特許文献4】特開2002−241592号公報
【特許文献5】特開2002−241612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献には、添加剤の添加量に関しては一切の記載や示唆がないため、光学安定性が高くならない場合がある。
【0006】
本発明の課題は、確実に光学安定性を高めることができる光学材料と、この光学材料を用いた光学素子とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、光学材料において、
熱可塑性樹脂と、
無機粒子と、
酸化防止剤及び耐光安定剤の少なくとも一方の添加剤とを含有し、
前記添加剤の含有量G1は、
0>G1>S1(但し、G0:前記無機粒子の含有量、S1:前記熱可塑性樹脂に対する当該添加剤の飽和溶解量)を満たすことを特徴とする。
【0008】
ここで、熱可塑性樹脂の単体中での添加剤の含有量が飽和溶解量S1より多い場合には、添加剤が樹脂中に溶解できずに析出したり、樹脂から分離したりする結果、成形物中で添加剤本来の機能が発揮できなくなる。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、無機粒子を含有するので、無機粒子による熱可塑性樹脂の物性改良効果を得ることができる。
また、添加剤が熱可塑性樹脂及び無機粒子の混合物に添加されるので、添加剤の一部が無機粒子の表面に吸着されたり、無機粒子の内部に吸収されたりする結果、熱可塑性樹脂中に溶解できない分の添加剤が混合物中に存在できるようになる。従って、添加剤の含有量G1がG1>S1を満たす場合であっても、析出物が発生しにくく、透明性も劣化しない。また、光照射や熱酸化によって添加剤が分解しても、無機粒子の表面で吸着平衡にある添加剤が当該無機粒子の表面から熱可塑性樹脂の内部に拡散するため、添加剤による熱可塑性樹脂の劣化防止機能を持続させることができる。つまり、従来と比較して、確実に光学安定性を高めることができる。
また、添加剤の含有量G1はG0>G1を満たすので、添加剤が無機粒子の表面に吸着されずに樹脂中に析出することがない。従って、成形物中で添加剤の機能を確実に発揮させことができる。
【0010】
請求項2載の発明は、請求項1記載の光学材料において、
前記酸化防止剤及び前記耐光安定剤を含有し、
前記酸化防止剤の含有量G2と、前記耐光安定剤の含有量G3とは、
2>S2、かつG3>S3(但し、S2:前記熱可塑性樹脂に対する前記酸化防止剤の飽和溶解量、S3:前記熱可塑性樹脂に対する前記耐光安定剤の飽和溶解量)を満たすことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、酸化防止剤の含有量G2と、耐光安定剤の含有量G3とはG2>S2、かつG3>S3を満たすので、添加剤による熱可塑性樹脂の劣化防止機能を、より長期間に亘って持続させることができる。つまり、光学安定性をいっそう高めることができる。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の光学材料において、
前記無機粒子の含有率は、10質量%以上、90質量%以下であり、
前記添加剤の含有量G1は、
1≧1.1×S1を満たすことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明によれば、添加剤の含有量G1はG1≧1.1×S1を満たすので、添加剤による熱可塑性樹脂の劣化防止機能をより長期間に亘って持続させることができる。つまり、光学安定性をいっそう高めることができる。
また、無機粒子の含有率が10質量%以上であるので、無機粒子による熱可塑性樹脂の物性改良効果を確実に得ることができる。また、含有量が90質量%以下であるので、必要な熱可塑性樹脂の比率を維持するとともに、熱可塑性樹脂の加工性などの特性が損なわれるのを防止することができる。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の光学材料において、
前記酸化防止剤の含有量G2と、前記耐光安定剤の含有量G3とは、
2≧1.1×S2、かつG3≧1.1×S3を満たす特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、酸化防止剤の含有量G2と、耐光安定剤の含有量G3とはG2≧1.1×S2、かつG3≧1.1×S3を満たすので、添加剤による熱可塑性樹脂の劣化防止機能をより長期間に亘って持続させることができる。つまり、光学安定性をいっそう高めることができる。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか一項に記載の光学材料において、
前記熱可塑性樹脂中で分散した状態での前記無機粒子の体積平均粒径は、30nm以下であることを特徴とする。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、無機粒子の体積平均粒径は30nm以下であるので、体積平均粒径が30nmより大きい場合と比較して、無機粒子に起因する光散乱を抑制し、光学材料の透明性を高めることができる。
また、体積平均粒径が30nmより大きい場合と比較して無機粒子の比表面積が大きくなる結果、無機粒子の含有量に対し、当該無機粒子の表面に吸着される添加剤の量が多くなる。従って、添加剤による熱可塑性樹脂の劣化防止機能をより長期間に亘って持続させることができる。つまり、光学安定性をいっそう高めることができる。
【0018】
なお、体積平均粒径とは、分散状態にある無機粒子を同体積の球に換算したときの直径であり、無機粒子が2次粒子を形成している場合には、その粒径である。
【0019】
請求項6記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の光学材料において、
前記無機粒子の比表面積は30m2/g以上であることを特徴とする。
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0020】
請求項7記載の発明は、請求項1〜6何れか一項に記載の光学材料において、
前記熱可塑性樹脂は、少なくともシクロオレフィン樹脂を含有することを特徴とする。
請求項7記載の発明によれば、請求項1〜6の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項1〜7の何れか1項に記載の光学材料において、
厚さが3mmのときに、波長405nmの光に対する透過率が70%以上であることを特徴とする。
【0022】
請求項8記載の発明によれば、波長405nmの光に対する透過率が70%以上であるので、70%未満の場合と比較して、例えば光ピックアップ装置の光学素子に用いられたときのデータの読み取り精度を高くすることができる。
【0023】
なお、無機粒子は405nmの光を吸収しないものが多いが、樹脂は吸収するものが多い。そのため、波長405nmの光に対する透過率を高めるには、例えば、無機粒子の分率を増大させることが考えられる。
【0024】
請求項9記載の発明は、光学素子において、
請求項1〜8の何れか一項に記載の光学材料を用いて形成されたことを特徴とする。
請求項9記載の発明によれば、光学安定性を高めることができるため、CDやDVDなどの記録媒体を用いた情報の記録再生を正確に行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明によれば、添加剤による熱可塑性樹脂の劣化防止機能を持続させることができる。つまり、従来と比較して、確実に光学安定性を高めることができる。
【0026】
請求項2〜4記載の発明によれば、請求項1記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、添加剤による熱可塑性樹脂の劣化防止機能を、より長期間に亘って持続させることができる。つまり、光学安定性をいっそう高めることができる。
【0027】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、無機粒子に起因する光散乱を抑制し、光学材料の透明性を高めることができる。
請求項6,7記載の発明によれば、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができる。
【0028】
請求項8記載の発明によれば、請求項1〜7の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、例えば光ピックアップ装置の光学素子に用いられたときのデータの読み取り精度を高くすることができる。
請求項9記載の発明によれば、請求項1〜8の何れか一項に記載の発明と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、光学安定性を高めることができるため、CDやDVDなどの記録媒体を用いた情報の記録再生を正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図1は光ピックアップ装置1の概略構成を示す断面図である。
この図に示す通り、光ピックアップ装置1は、光源としての3種類の半導体レーザー発振器L1,L2,L3を有している。
【0030】
半導体レーザー発振器L1は、BD(ブルーレイディスク)10を記録媒体として情報の記録/再生を行う際に、波長350〜450nm中の特定波長(例えば405nm,407nm)の光束を出射するものである。なお、本実施の形態においては、BD10の保護層の厚さは0.1mmとなっている。
【0031】
半導体レーザー発振器L2は、DVD20を記録媒体として情報の記録/再生を行う際に、波長620〜680nm中の特定波長(例えば、655nm)の光束を出射するものであり、半導体レーザー発振器L3と一体化されて光源ユニットL4を形成している。なお、本実施の形態においては、DVD20の保護層の厚さは0.6mmとなっている。また、本明細書において、DVDとは、DVD−ROMや、DVD−Video、DVD−Audio、DVD−RAM、DVD−R、DVD−RW、DVD+R、DVD+RW等、DVD系列の光情報記録媒体の総称である。
【0032】
半導体レーザー発振器L3は、CD30を記録媒体として情報の記録/再生を行う際に、750〜810nm中の特定波長(例えば、785nm)の光束を出射するものである。なお、本実施の形態においては、CD30の保護層の厚さは1.2mmとなっている。また、本明細書において、CDとは、CD−ROMや、CD−Audio、CD−Video、CD−R、CD−RW等、CD系列の光情報記録媒体の総称である。
【0033】
半導体レーザー発振器L1から出射される光束の光軸方向には、図1中下側から上側に向けてビームシェイパー40、ビームスプリッタ41、コリメートレンズ42、ビームスプリッタ43、1/4波長板44、絞り部材45、対物レンズ6が順に並んで配されている。対物レンズ6には、対物レンズ6を図1中上下方向に移動させる2次元アクチュエータ60が配されている。対物レンズ6との対向位置には、光情報記録媒体としてのBD10、DVD20又はCD30が配されるようになっている。
【0034】
また、ビームスプリッタ41に対し、図1中右側にはセンサーレンズ46及び光検出器47が順に並んで配されている。センサーレンズ46は、シリンドリカルレンズ460及び凹レンズ461を備えている。
【0035】
また、半導体レーザー発振器L2,L3から出射される光束の光軸方向には、図1中右側から左側に向けてビームスプリッタ48,コリメートレンズ49、ビームスプリッタ43が順に並んで配されている。ビームスプリッタ48の図1中上側にはセンサーレンズ50及び光検出器51が順に並んで配されている。センサーレンズ50は、シリンドリカルレンズ500及び凹レンズ501を備えている。
【0036】
続いて、光ピックアップ装置1における動作・作用を簡単に説明する。BD10への情報の記録時やBD10中の情報の再生時には、半導体レーザー発振器L1が光束を出射する。この光束は、図1において実線でその光線経路を示すように、始めにビームシェイパー40を透過して整形され、ビームスプリッタ41を透過した後、コリメートレンズ42で平行光に変換される。次に、この光束は、ビームスプリッタ43及び1/4波長板44を透過して絞り部材45で絞られた後、対物レンズ6で集光されてBD10の情報記録面10a上に集光スポットを形成する。このとき、対物レンズ6は、その周辺に配置された2次元アクチュエータ60によってフォーカシングやトラッキングを行う。
【0037】
次に、集光スポットを形成した光は、BD10の情報記録面10aで情報ピットにより変調されて反射する。次に、この反射光は、対物レンズ6、1/4波長板44、ビームスプリッタ43及びコリメートレンズ42を透過してビームスプリッタ41で反射した後、センサーレンズ46により非点収差が与えられて、光検出器47に到達する。そして、光検出器47の出力信号を用いることにより、BD10中の情報の再生が行われる。
【0038】
DVD20への情報の記録時やDVD20中の情報の再生時には、半導体レーザー発振器L2が光を出射する。この光束は、図1において点線でその光線経路を示すように、始めにビームスプリッタ48を透過した後、コリメートレンズ49で平行光に変換される。次に、この光束は、ビームスプリッタ43で反射して、1/4波長板44を透過して絞り部材45で絞られた後、対物レンズ6で集光されてDVD20の情報記録面20a上に集光スポットを形成する。このとき、対物レンズ6は、その周辺に配置された2次元アクチュエータ60によってフォーカシングやトラッキングを行う。
【0039】
次に、集光スポットを形成した光は、DVD20の情報記録面20aで情報ピットにより変調されて反射する。次に、この反射光は、対物レンズ6、1/4波長板44を透過して、ビームスプリッタ43,48でそれぞれ反射した後、センサーレンズ50により非点収差が与えられて、光検出器51に到達する。そして、光検出器51の出力信号を用いることにより、DVD20中の情報の再生が行われる。
【0040】
CD30への情報の記録時やCD30中の情報の再生時には、半導体レーザー発振器L3が光を出射する。この光束は、図1において2点鎖線でその光線経路を示すように、始めにビームスプリッタ48を透過した後、コリメートレンズ49で平行光に変換される。次に、この光束は、ビームスプリッタ43で反射して、1/4波長板44を透過して絞り部材45で絞られた後、対物レンズ6で集光されてCD30の情報記録面30a上に集光スポットを形成する。このとき、対物レンズ6は、その周辺に配置された2次元アクチュエータ60によってフォーカシングやトラッキングを行う。
【0041】
次に、集光スポットを形成した光は、CD30の情報記録面20aで情報ピットにより変調されて反射する。次に、この反射光は、対物レンズ6、1/4波長板44を透過して、ビームスプリッタ43,48でそれぞれ反射した後、センサーレンズ50により非点収差が与えられて、光検出器51に到達する。そして、光検出器51の出力信号を用いることにより、CD30中の情報の再生が行われる。
【0042】
続いて、対物レンズ6の構成について詳細に説明する。
対物レンズ6は本発明に係る光学素子であり、各半導体レーザー発振器L1,L2,L3から出射された光束をBD10、DVD20,CD30の情報記録面10a,20a,30a上に集光する機能を有している。この対物レンズ6は単レンズであり、2つの光学面がともに非球面となっている。対物レンズ6の開口数NAは、半導体レーザー発振器L1,L2から出射される光束に対しては0.85、半導体レーザー発振器L3から出射される光束に対しては0.45〜0.51となっている。また、対物レンズ6の屈折率は、1.55となっている。
【0043】
対物レンズ6の2つの光学面のうち、少なくとも光源側の光学面は、図示しない中央側領域及び外周側領域に分割されている。
中央側領域は、半導体レーザー発振器L1,L2,L3から出射される光束が透過する領域である。この中央側領域には、図示しない回折構造が形成されている。この回折構造は、光路差を発生させることによって半導体レーザー発振器L1,L2,L3からの各光束を、それぞれ対応する光情報記録媒体の情報記録面10a,20a,30aに集光させるものである。このような回折構造の形状としては、従来より公知の形状を用いることができる。
【0044】
外周側領域は、半導体レーザー発振器L1,L2から出射される光束が透過する領域である。この外周側領域は、半導体レーザー発振器L1,L2の2つの光束が透過する領域と、半導体レーザー発振器L2から出射される光束のみが透過する領域とに更に分割してもよい。
【0045】
以上の対物レンズ6は、本発明に係る光学材料を成形することによって形成されている。この光学材料は、熱可塑性樹脂と、無機粒子と、添加剤とを混合して形成されており、厚さが3mmのときに、波長405nmの光に対する透過率が70%以上となっている。そのため、透過率が70%未満の場合と比較して、対物レンズ6によるデータの読み取り精度が高くなっている。
【0046】
なお、この光学材料は、AMES試験に陰性であることが好ましい。AMES試験で陽性である場合には、使用者の健康を損なうとともに環境負荷を与える可能性があり、また、材料として不安定で、必要な安定性が得られないおそれがあるからである。
以下、光学材料に含有される各材料について説明する。
【0047】
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂としては、一般的な透明の熱可塑性樹脂であれば特に制限はなく用いることができるが、光学素子としての加工性を考慮すると、アクリル樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、またはポリイミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくはシクロオレフィン樹脂であり、例えば、特開2003−73559号公報等に記載の化合物を挙げることができる。好ましい化合物の例を以下の表1に示す。
【0048】
【表1】

【0049】
ここで、熱可塑性樹脂の吸水率は光学材料の物性に大きく影響するため、0.2質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。これにより、環境条件が変化しても光学材料の屈折率の変化量が許容範囲内となる。吸水率が0.2質量%以下の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン、テフロン(登録商標)AF(デュポン社製)、サイトップ(旭硝子社製)等)、シクロオレフィン樹脂(例えば、ZEONEX(日本ゼオン社製)、アートン(JSR社製)、アペル(三井化学社製)、TOPAS(チコナ社製)等)、インデン/スチレン系樹脂、ポリカーボネートなどが好適であるが、これらに限るものではない。また、これらの樹脂と相溶性のある他の樹脂を併用することも好ましい。2種以上の樹脂を用いる場合、混合樹脂の吸水率は、個々の樹脂の吸水率の平均値にほぼ等しいと考えられるため、平均の吸水率が0.2%以下になれば良い。
【0050】
(無機粒子)
無機粒子は、無機材料から形成された粒子であり、熱可塑性樹脂の物性を改良するとともに、添加剤の少なくとも一部を表面に吸着させたり内部に吸収したりする機能を有している。
【0051】
この無機粒子は、熱可塑性樹脂中で分散した状態での一次粒径の体積平均粒径が30nm以下、好ましくは10nm以下となっている。このように無機粒子の体積平均粒径が30nm以下であるので、無機粒子に起因する光散乱を抑制し、光学材料の透明性を高くすることができ、例えば405nmの光線に対する3mm厚の試料の透過率を70%以上とすることができる。また、体積平均粒径が30nmより大きい場合と比較して無機粒子の比表面積が大きくなる結果、無機粒子の含有量に対し、当該無機粒子の表面に吸着される添加剤の量が多くなる。なお、一次粒子の凝集物の粒径が30nm以上である場合には、凝集物を解凝集し分散させることで所望の透明性を確保することも考えられるが、一次粒子の粒径が30nm以上である場合には、この1次粒子を粉砕して30nm以下の粒径の粒子を得ることは困難であるため、一次粒子の大きさは30nm以下であることが好ましい。また、粒径の分布に関しては特に制限はないが、本発明の効果をより効率よく発現させるためには、広範な分布を有するものよりも、比較的狭い分布を持つものが好ましい。また、粒径分布の異なる複数種類の粒子を混合して用いるような場合には、1種の無機粒子として平均粒径30nm以下のものを、他の1種の無機粒子として平均粒径30nm以上のものを用い、無機粒子全体での平均粒径を30nm以下とすることも可能であるが、この場合は、平均粒径30nm以上の無機粒子の割合は少ないほど好ましく、具体的には、10質量%以下であることが好ましい。
【0052】
また、無機粒子の体積平均粒径は、1nm以上であることが好ましい。この場合には、比表面積が大きくなりすぎることがなく、無機粒子の表面処理が容易になることから、無機粒子の分散性を確保し、光学材料に所望の性能を付与することができる。また、この場合には、比表面積が大きくなりすぎることがないため、樹脂との親和性を得るための表面処理に必要な処理剤の量を適切な範囲に設定することができる。具体的には、無機粒子の形態が球状である場合、総体積が同じであれば比表面積は平均粒径に反比例するため、平均粒径が1nm未満になると、比表面積がその分大きくなる結果、無機粒子に対する表面処理剤の必要量が膨大になってしまい、実現が不可能となる。
【0053】
この無機粒子の比表面積は30m2/g以上となっている。この比表面積は50m2/g以上であることが好ましく、70m2/g以上であることがより好ましい。
なお、無機粒子の形状は、特に限定されるものではないが、球状であることが好ましい。
【0054】
以上のような無機粒子としては、例えば、酸化物微粒子が挙げられる。具体的には、例えばシリカや酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化インジウム、酸化錫、酸化鉛、これら酸化物より構成される複酸化物であるニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム等が挙げられる。なお、無機粒子として、リン酸塩や硫酸塩等を用いることとしても良い。
【0055】
また、この無機粒子としては、半導体結晶組成の微粒子も好ましく利用できる。半導体結晶組成には、特に制限はないが、光学素子として使用する波長領域において吸収、発光、蛍光等が生じないものが望ましい。具体的な組成例としては、例えば、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、錫等の周期表第14族元素の単体、リン(黒リン)等の周期表第15族元素の単体、セレン、テルル等の周期表第16族元素の単体、炭化ケイ素(SiC)等の複数の周期表第14族元素からなる化合物、酸化錫(IV)(SnO2)、硫化錫(II、IV)(Sn(II)Sn(IV)S3)、硫化錫(IV)(SnS2)、硫化錫(II)(SnS)、セレン化錫(II)(SnSe)、テルル化錫(II)(SnTe)、硫化鉛(II)(PbS)、セレン化鉛(II)(PbSe)、テルル化鉛(II)(PbTe)等の周期表第14族元素と周期表第16族元素との化合物、窒化ホウ素(BN)、リン化ホウ素(BP)、砒化ホウ素(BAs)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、砒化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、砒化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、砒化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)等の周期表第13族元素と周期表第15族元素との化合物(あるいはIII−V族化合物半導体)、硫化アルミニウム(Al23)、セレン化アルミニウム(Al2Se3)、硫化ガリウム(Ga23)、セレン化ガリウム(Ga2Se3)、テルル化ガリウム(Ga2Te3)、酸化インジウム(In23)、硫化インジウム(In23)、セレン化インジウム(In2Se3)、テルル化インジウム(In2Te3)等の周期表第13族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化タリウム(I)(TlCl)、臭化タリウム(I)(TlBr)、ヨウ化タリウム(I)(TlI)等の周期表第13族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化カドミウム(CdO)、硫化カドミウム(CdS)、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)等の周期表第12族元素と周期表第16族元素との化合物(あるいはII〜VI族化合物半導体)、硫化砒素(III)(As23)、セレン化砒素(III)(As2Se3)、テルル化砒素(III)(As2Te3)、硫化アンチモン(III)(Sb23)、セレン化アンチモン(III)(Sb2Se3)、テルル化アンチモン(III)(Sb2Te3)、硫化ビスマス(III)(Bi23)、セレン化ビスマス(III)(Bi2Se3)、テルル化ビスマス(III)(Bi2Te3)等の周期表第15族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化銅(I)(Cu2O)、セレン化銅(I)(Cu2Se)等の周期表第11族元素と周期表第16族元素との化合物、塩化銅(I)(CuCl)、臭化銅(I)(CuBr)、ヨウ化銅(I)(CuI)、塩化銀(AgCl)、臭化銀(AgBr)等の周期表第11族元素と周期表第17族元素との化合物、酸化ニッケル(II)(NiO)等の周期表第10族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化コバルト(II)(CoO)、硫化コバルト(II)(CoS)等の周期表第9族元素と周期表第16族元素との化合物、四酸化三鉄(Fe34)、硫化鉄(II)(FeS)等の周期表第8族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化マンガン(II)(MnO)等の周期表第7族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化モリブデン(IV)(MoS2)、酸化タングステン(IV)(WO2)等の周期表第6族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化バナジウム(II)(VO)、酸化バナジウム(IV)(VO2)、酸化タンタル(V)(Ta25)等の周期表第5族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化チタン(TiO2、Ti25、Ti23、Ti59等)等の周期表第4族元素と周期表第16族元素との化合物、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)等の周期表第2族元素と周期表第16族元素との化合物、酸化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr24)、セレン化カドミウム(II)クロム(III)(CdCr2Se4)、硫化銅(II)クロム(III)(CuCr24)、セレン化水銀(II)クロム(III)(HgCr2Se4)等のカルコゲンスピネル類、バリウムチタネート(BaTiO3)等が挙げられる。なお、G.Schmidら;Adv.Mater.,4巻,494頁(1991)に報告されている(BN)75(BF2)15F15や、D.Fenskeら;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,29巻,1452頁(1990)に報告されているCu146Se73(トリエチルホスフィン)22のように構造の確定されている半導体クラスターも同様に例示される。
【0056】
これらの無機粒子は、1種類の無機粒子を用いてもよく、また複数種類の無機粒子を併用してもよい。また、複合組成の無機粒子を用いることも可能である。
【0057】
以上の無機粒子の光学材料中での含有率は、10質量%以上、90質量%以下となっている。このように、無機粒子の含有率が10質量%以上であるので、無機粒子による物性改良効果、例えば熱可塑性樹脂の持つ屈折率を適度に制御したり温度依存性を改良したりする効果を確実に得ることができる。また、含有率が90質量%以下であるので、必要な樹脂比率を維持するとともに、樹脂の加工性などの特性が損なわれるのを防止することができる。この含有率は、20質量%以上、80質量%以下であることが好ましい。
【0058】
(添加剤)
添加剤としては、酸化防止剤及び耐光安定剤が用いられている。以下、これらについて説明する。
<酸化防止剤>
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を光学材料中に配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0059】
ここで、フェノール系酸化防止剤としては、従来より公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0060】
また、リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′−イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(C12〜C15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0061】
また、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート)、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
そのほか、ジフェニルアミン誘導体などのアミン系酸化防止剤、ニッケルや亜鉛のチオカルバメートなども酸化防止剤として用いることが出来る。
【0062】
<耐光安定剤>
耐光安定剤としては、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤、ヒンダードアミン系耐光安定剤などが挙げられるが、本発明においては、光学素子の透明性、耐着色性等の観点から、ヒンダードアミン系耐光安定剤(HALS)を用いるのが好ましい。このようなHALSとしては、低分子量のものや、中分子量のもの、高分子量のものを選ぶことができる。例えば、比較的分子量の小さいものとしては、「LA−77」(製品名、旭電化製)、「Tinuvin765」(製品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)、「Tinuvin123」(製品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)、「Tinuvin440」(製品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)、「Tinuvin144」(製品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)、「HostavinN20」(製品名、ヘキスト社製)を用いることができる。また、中程度の分子量のものとしては、「LA−57」(製品名、旭電化製)、「LA−52」(製品名、旭電化製)、「LA−67」(製品名、旭電化製)、「LA−62」(製品名、旭電化製)を用いることができる。さらに分子量の大きいものとしては、「LA−68」(製品名、旭電化製)、「LA−63」(製品名、旭電化製)、「HostavinN30」(製品名、ヘキスト社製)、「Chimassorb944」(製品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)、「Chimassorb2020」(製品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)、「Chimassorb119」(製品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)、「Tinuvin622」(製品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)、「CyasorbUV−3346」(製品名、Cytec製)、「CyasorbUV−3529」(製品名、Cytec製)、「Uvasil299」(製品名、GLC製)などを用いることができる。特に、成型体には低、中分子量のHALS、膜状の複合材料には高分子量のHALSを用いることが好ましい。
【0063】
なお、添加剤には、最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を更に配合することとしても良い。この場合には、透明性や耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止することができる。
【0064】
また、添加剤には、必要に応じて他の安定剤や樹脂改質剤、白濁防止剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤などを単独で、或いは複合して更に加えても良い。ここで、他の安定剤としては、熱安定剤や耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤などがある。また、樹脂改質剤としては、滑剤や可塑剤などがある。また、白濁防止剤としては、軟質重合体やアルコール性化合物等がある。また、着色剤としては、染料や顔料などがある。本発明においては、特に、添加剤が以下の可塑剤を含有することが好ましい。
【0065】
<可塑剤>
可塑剤としては、特に限定はないが、リン酸エステル系可塑剤、フタル酸エステル系可塑剤、トリメリット酸エステル系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、グリコレート系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、ポリエステル系可塑剤等を挙げることができる。
【0066】
リン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等、フタル酸エステル系可塑剤では、例えば、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジフェニルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート等、トリメリット酸系可塑剤では、例えば、トリブチルトリメリテート、トリフェニルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等、ピロメリット酸エステル系可塑剤では、例えば、テトラブチルピロメリテート、テトラフェニルピロメリテート、テトラエチルピロメリテート等、グリコレート系可塑剤では、例えば、トリアセチン、トリブチリン、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等、クエン酸エステル系可塑剤では、例えば、トリエチルシトレート、トリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート、アセチルトリ−n−ブチルシトレート、アセチルトリ−n−(2−エチルヘキシル)シトレート等を挙げることができる。
【0067】
以上の添加剤は、熱可塑性樹脂及び無機粒子の混合物に添加されているため、添加剤の一部が無機粒子の表面に吸着されたり、無機粒子の内部に吸収されたりする結果、熱可塑性樹脂中に溶解できない量で混合物中に存在している。具体的には、無機粒子の含有量を「G0」、熱可塑性樹脂に対する添加剤の飽和溶解量を「S1」とすると、添加剤の含有量G1はG0>G1>S1を満たしており、好ましくはG1≧1.1×S1を満たしている。このように含有量G1がG1>S1を満たすので、対物レンズ6の内部において光照射や熱酸化によって添加剤が分解しても、無機粒子の表面で吸着平衡にある添加剤が当該無機粒子の表面から熱可塑性樹脂の内部に拡散するようになっている。また、含有量G1がG0>G1を満たすので、添加剤は無機粒子の表面に吸着されずに樹脂中に析出してしまうことがなく、成形物中で確実に機能を発揮するようになっている。
【0068】
また、酸化防止剤の含有量G2と、耐光安定剤の含有量G3とは、熱可塑性樹脂に対する酸化防止剤の飽和溶解量を「S2」、熱可塑性樹脂に対する耐光安定剤の飽和溶解量を「S3」とすると、G2>S2、かつG3>S3を満たしており、好ましくはG2≧1.1×S2、かつG3≧1.1×S3を満たしている。
【0069】
なお、飽和溶解量S1を求めるには、まず、熱可塑性樹脂及び添加剤をそれぞれ溶解可能な溶媒に対し、樹脂及び添加剤を適当な濃度に溶解して溶液を作製する。次に、作製した各溶液をドクターブレードなどでガラス等の透明基板に塗布し乾燥させる。このとき、透明な膜が形成される場合には樹脂に添加剤が溶解していることを示し、膜が濁ったり、分離物が確認されたりする場合には樹脂に添加剤が溶解していないことを示す。そして、樹脂に対する添加剤の量比を変えて以上のような試験を繰りかえすことにより、樹脂に対する添加剤の溶解量の上限、すなわち飽和溶解量を求めることができる。飽和溶解量S1,S2についても同様である。
【0070】
続いて、前記無機粒子の製造方法について説明する。
無機粒子の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、ハロゲン化金属やアルコキシ金属を原料に用い、水を含有する反応系において加水分解することにより、所望の酸化物微粒子を得ることができる。この際、微粒子の安定化のために有機酸や有機アミンなどを併用する方法も用いられる。より具体的には、例えば、二酸化チタン微粒子を形成する場合には、ジャーナル・オブ・ケミカルエンジニアリング・オブ・ジャパン第31巻1号21−28頁(1998年)に記載された方法を用いることができ、硫化亜鉛を形成する場合には、ジャーナル・オブ・フィジカルケミストリー第100巻468−471頁(1996年)に記載された公知の方法を用いることができる。これらの方法に従えば、例えば体積平均粒径が5nmの酸化チタンは、チタニウムテトライソプロポキサイドや四塩化チタンを原料として、適当な溶媒中で加水分解させる際に適当な表面修飾剤を添加することにより、容易に製造することができる。また、超微粒子の硫化亜鉛は、ジメチル亜鉛や塩化亜鉛を原料とし、硫化水素あるいは硫化ナトリウムなどで硫化する際に表面修飾剤を添加することにより、製造することができる。表面修飾する方法は、特に限定されるものではなく、公知のいずれの方法も用いることができる。例えば、水が存在する条件下で加水分解により微粒子の表面に修飾する方法が挙げられる。この方法では、酸またはアルカリなどの触媒が好適に用いられ、微粒子表面の水酸基と、表面修飾剤が加水分解して生じる水酸基とが、脱水して結合を形成することが一般に考えられている。
【0071】
無機粒子の製造に用いることのできる表面修飾剤としては、例えば、シランカップリング剤:テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラフェノキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−メチルフェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジフェノキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリフェニルメトキシシラン、トリフェニルフェノキシシランなどが挙げられる。また、チタンカップリング剤:テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルフォニルチタネート及びビス(ジオクチルパイロフォスフェート)オキシアセテートチタネート等が挙げられる。その他、アルミネート系カップリング剤や、アミノ酸系分散剤、各種シリコンオイルを表面処理に用いることも可能である。
【0072】
これら表面処理剤は反応速度などの特性が異なるため、表面修飾の条件などに適した化合物を選択して用いることができる。表面処理剤としては、1種類のみを用いても、複数種類を併用してもよい。また、無機粒子の性状は表面処理剤によって異なることがあるため、表面処理剤を選択することによって、熱可塑性樹脂と無機粒子との親和性を調整することも可能である。表面修飾の割合は特に限定されるものではないが、表面修飾後の無機粒子に対して、表面修飾剤の割合が10〜99質量%であることが好ましく、30〜98質量%であることがより好ましい。
【0073】
続いて、前記光学材料の製造方法について説明する。
光学材料の製造方法としては、無機粒子存在下で熱可塑性樹脂を重合させることで複合化する方法や、熱可塑性樹脂の存在下で無機粒子を形成し複合化する方法、熱可塑性樹脂を溶解した溶媒中に無機粒子を分散させ、その後溶媒を除去することで複合化する方法、無機粒子及び熱可塑性樹脂を別々に用意し、溶媒を含んだ状態または含まない状態での溶融混練で複合化する方法などがある。各種添加剤はこのような複合化の過程において、どこで加えても良い。
【0074】
これらの方法のうち、本発明に係る光学材料は、溶融混練法で作製することが望ましい。溶融混練に用いることのできる装置としては、ラボプラストミル、ブラベンダー、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等のような密閉式混練装置またはバッチ式混練装置を挙げることができる。また、単軸押出機、二軸押出機等のように連続式の溶融混練装置を用いて製造することもできる。
【0075】
また、溶融混練を用いる場合、熱可塑性樹脂及び無機粒子を一括で添加して混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。押出機などの溶融混練装置を用いて分割添加する場合には、段階的に添加する成分をシリンダーの途中から添加することも可能である。また、無機粒子の少なくとも1部と熱可塑性樹脂とを予め混練した後、添加剤などの未添加の成分を添加して更に溶融混練する際も、これらを一括で添加して混練してもよいし、段階的に分割添加して混練してもよい。ここで、押出機などの溶融混練装置を用いて分割添加する場合には、段階的に添加する成分をシリンダーの途中から添加することも可能である。また、分割して添加する場合には、各成分を数回に分けて添加しても良いし、一成分を一括で添加し、異なる成分を段階的に添加することとしても良い。
【0076】
また、溶融混練による複合化を行う場合、無機粒子は粉体ないし凝集状態のまま添加することとしても良いし、液中に分散した状態で添加することとしても良い。液中に分散した状態で添加する場合は、混練後に脱揮を行うことが好ましい。また、この場合には、あらかじめ凝集粒子を一次粒子に分散して添加することが好ましい。分散には各種分散機が使用可能であるが、特にビーズミルが好ましい。ビーズは各種の素材があるがその大きさは小さいものが好ましく、特に直径0.1mm以下、0.001mm以上のものが好ましい。
【0077】
また、複合化は窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノンの中から選ばれる少なくとも一種の不活性ガス下で行なわれることが好ましい。酸素の含有量は少ないほど好ましく、特に1vol%以下が好ましい。炭酸ガスや、エチレンガス、水素ガスなど、他の一般的なガスの中で、混練物質と特に反応性を持たないガスの場合は不活性ガスと混合して用いることも可能である。
【0078】
溶融混練法による複合材料の作製においては、系内の酸素を極力排除することによってその影響を抑制し、樹脂の酸化劣化を防止することが好ましいが、樹脂や無機粒子の吸着した酸素を含め、完全にその影響を排除することは困難である。そのため、酸化によって樹脂が劣化すると同時に、着色が発生し特に400nm付近に光の吸収を有することになる。このように、樹脂の酸化劣化は青色光の透過率を極端に下げ、好ましくない現象である。本発明では、酸化防止剤も粒子へ吸着させることで大量に光学材料中に存在させることができるため、溶融混練による樹脂の劣化防止、ひいては青色光の透過率を確保する上でも好ましい。
【0079】
続いて、対物レンズ6の製造方法について説明する。
対物レンズ6は、まず上述のように光学材料を調製し、次いで、得られた光学材料を成型することによって形成されている。
【0080】
成型方法としては、格別制限されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成型物を得る為には溶融成型が好ましい。溶融成型に用いる装置としては、例えば、市販のプレス成型装置、市販の押し出し成型装置、市販の射出成型装置等が挙げられるが、射出成型装置が成型性、生産性の観点から好ましい。
【0081】
成型条件は使用目的、または成型方法により適宜選択されるが、例えば、射出成型における樹脂組成物の温度は、成型時に適度な流動性を樹脂に付与して成型品のヒケやひずみを防止し、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、更に、成型物の黄変を効果的に防止する観点から150℃〜400℃の範囲が好ましく、更に好ましくは200℃〜350℃の範囲であり、特に好ましくは200℃〜330℃の範囲である。
【0082】
以上の光学材料によれば、熱可塑性樹脂中に溶解できない量の添加剤を混合物中に存在させることができるため、添加剤の含有量G1がG1>S1を満たす場合であっても、析出物が発生しにくく、透明性も劣化しない。また、対物レンズ6中で光照射や熱酸化によって添加剤が分解しても、無機粒子の表面で吸着平衡にある添加剤が当該無機粒子の表面から熱可塑性樹脂の内部に拡散するため、添加剤による熱可塑性樹脂の劣化防止機能を持続させることができる。つまり、従来と比較して、確実に光学安定性を高めることができる。
【0083】
また、酸化防止剤の含有量G2と、耐光安定剤の含有量G3とがG2>S2かつG3>S3、好ましくはG2≧1.1×S2かつG3≧1.1×S3を満たすので、添加剤による熱可塑性樹脂の劣化防止機能を、より長期間に亘って持続させることができる。つまり、光学安定性をいっそう高めることができる。
【0084】
なお、上記の実施の形態においては、対物レンズ6はBD10、DVD20及びCD30を情報の記録再生の対象とすることとして説明したが、これら光情報記録媒体の何れか1つまたは2つを対象とすることとしても良いし、WORM(追記型光ディスク)やMO(光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)などを対象とすることとしても良い。
【0085】
また、本発明に係る光学素子を光ピックアップ装置1の対物レンズ6として説明したが、球状や棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態に形成することにより、コリメートレンズ42,49や、ビームシェイパー40等としても良いし、カップリングレンズやフィルター、グレーティング(回折格子)、光ファイバー、平板光導波路などとしても良い。また、カメラや顕微鏡、内視鏡、望遠鏡などに備えられる光学レンズやプリズムとしても良い。また、眼鏡などの全光線透過型レンズとしても良いし、レーザビームプリンターのレーザ走査系レンズ、具体的にはfθレンズやセンサー用レンズなどとしても良い。また、液晶ディスプレイなどの導光板としても良いし、偏光フィルムや位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルムとしても良い。更に、光拡散板や光カード、液晶表示素子基板などとしても良い。
【実施例1】
【0086】
以下、実施例および比較例を挙げることにより、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0087】
(光学材料の構成)
光学材料の前記添加剤として、耐光安定剤「Tinuvin765」(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)を用いた。熱可塑性樹脂としては、シクロオレフィン樹脂の「ゼオネックス340R」(商品名、日本ゼオン社製)をTHF(テトラヒドロフラン)に溶解後、メタノール中で再沈させ、精製したものを用いた。なお、これら「Tinuvin765」と熱可塑性樹脂とをTHFに溶解したものをスライドガラス上で乾燥させ、目視で溶解性を観察した結果、「Tinuvin765」は熱可塑性樹脂30部に対し1〜2部溶解することが確認できた。
【0088】
無機粒子としては、3種類の無機粒子(1)〜(3)を用いた。
具体的には、無機粒子(1)は、一次粒径7nmのシリカ微粒子粉体「RX300」(商品名、日本アエロジル社製)を200℃で24時間乾燥後、窒素雰囲気下で保存したものである。
【0089】
また、無機粒子(2)は、一次粒径13nmのアルミナ微粒子粉体「アルミナC」(商品名、日本アエロジル社製)を200℃で24時間乾燥後、窒素雰囲気下で保存したものである。
【0090】
また、無機粒子(3)は、一次粒径40nmのシリカ微粒子粉体「OX50」(商品名、日本アエロジル社製)を200℃で24時間乾燥後、窒素雰囲気下で保存したものである。
【0091】
以上の添加剤、熱可塑性樹脂及び無機粒子を下記表2の分量で複合し、溶融混練法を用いて9種類の光学材料(1)〜(9)を作製した。具体的には、混練装置として「ラボプラストミルμ」(製品名、東洋精機製作所製)に「セグメントミキサーKF6」(製品名、東洋精機製作所製)を装着したものを用い、複合材料をミキサーに投入して200℃、10分間混練を行い、各光学材料(1)〜(9)を作製した。これら光学材料(1)〜(9)のうち、光学材料(1)〜(7)は、本発明に係る光学材料である。また、光学材料(9)は、無機粒子を含有していない。なお、光学材料の作製中、サンプル投入口からはN2ガスを系内に導入し、空気の混入を抑えた。
【0092】
【表2】

【0093】
(光学素子の成形)
以上のようにして作製した光学材料(1)〜(9)をそれぞれ直径10mm、厚さ3mmの円盤状に成形して、本発明に係る光学素子の実施例(1)〜(7)及び比較例(1),(2)とした。なお、各光学素子の両面は鏡面になるようにした。
【0094】
(各光学素子の評価)
実施例(1)〜(7)及び比較例(1),(2)の各光学素子について、下記の方法に従って光線透過率の評価を行った。
<光線透過率の測定、透過率変化>
実施例(1)〜(7)及び比較例(1),(2)の光学素子のそれぞれについて、波長405nmにおける初期透過率と、この波長の光照射に伴う光透過率の変化量との測定を行い、前記表2の結果を得た。なお、透過率の測定方法はASTM D1003に準拠した。また、光照射は、波長405nm、強度150mW/cm2の光を1000時間照射することで行った。
【0095】
測定結果より、実施例(1)〜(7)の光学素子は、比較例(1)の光学素子と比較して透過率の変化量が小さく、光学安定性に優れていることが分かった。また、実施例(1)〜(7)の光学素子は、比較例(2)の光学素子と比較して初期透過率が大きく、光学特性に優れていることが分かった。
【実施例2】
【0096】
(光学材料の構成)
光学材料の添加剤として、酸化防止剤「Irganox1010」(商品名、チバスペシャリティケミカルズ社製)を用いた。熱可塑性樹脂としてはは、アクリル樹脂の「アクリペットVH」(商品名、三菱レーヨン製)をTHFに溶解後、メタノール中で再沈させ、精製したものを用いた。なお、これら「Irganox1010」と熱可塑性樹脂をTHFに溶解したものをスライドガラス上で乾燥させ、目視で溶解性を観察した結果、「Irganox1010」は熱可塑性樹脂30部に対し1〜2部溶解することが確認できた。
【0097】
無機粒子としては、前記無機粒子(1)〜(3)とは異なる無機粒子(4)を用いた。この無機粒子(4)は、1次粒径7nmのアルミナ粉体「TM−300」(商品名、大明化学製)である。
【0098】
以上の添加剤、熱可塑性樹脂及び無機粒子を下記表3の分量で複合し、実施例1と同様にして6種類の光学材料(10)〜(15)を作製した。これら光学材料(10)〜(15)のうち、光学材料(10)〜(12)は、本発明に係る光学材料である。また、光学材料(14),(15)は、無機粒子を含有していない。
【0099】
【表3】

【0100】
(光学素子の成形)
以上のようにして作製した光学材料(10)〜(15)を実施例1と同様に成形し、本発明に係る光学素子の実施例(8)〜(10)及び比較例(3)〜(5)とした。
【0101】
(各光学素子の評価)
実施例(8)〜(10)及び比較例(3)〜(5)の各光学素子について、実施例1と同様に光線透過率の評価を行い、前記表3の結果を得た。
【0102】
測定結果より、実施例(8)〜(10)の光学素子は、比較例(4),(5)の光学素子と比較して透過率の変化量が小さく、光学安定性に優れていることが分かった。また、実施例(8)〜(10)の光学素子は、比較例(3)の光学素子と比較して初期透過率が大きく、光学特性に優れていることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】光ピックアップ装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
6 対物レンズ(光学素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、
無機粒子と、
酸化防止剤及び耐光安定剤の少なくとも一方の添加剤とを含有し、
前記添加剤の含有量G1は、
0>G1>S1(但し、G0:前記無機粒子の含有量、S1:前記熱可塑性樹脂に対する当該添加剤の飽和溶解量)を満たすことを特徴とする光学材料。
【請求項2】
請求項1記載の光学材料において、
前記酸化防止剤及び前記耐光安定剤を含有し、
前記酸化防止剤の含有量G2と、前記耐光安定剤の含有量G3とは、
2>S2、かつG3>S3(但し、S2:前記熱可塑性樹脂に対する前記酸化防止剤の飽和溶解量、S3:前記熱可塑性樹脂に対する前記耐光安定剤の飽和溶解量)を満たすことを特徴とする光学材料。
【請求項3】
請求項1または2記載の光学材料において、
前記無機粒子の含有率は、10質量%以上、90質量%以下であり、
前記添加剤の含有量G1は、
1≧1.1×S1を満たすことを特徴とする光学材料。
【請求項4】
請求項3記載の光学材料において、
前記酸化防止剤の含有量G2と、前記耐光安定剤の含有量G3とは、
2≧1.1×S2、かつG3≧1.1×S3を満たす特徴とする光学材料。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の光学材料において、
前記熱可塑性樹脂中で分散した状態での前記無機粒子の体積平均粒径は、30nm以下であることを特徴とする光学材料。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の光学材料において、
前記無機粒子の比表面積は30m2/g以上であることを特徴とする光学材料。
【請求項7】
請求項1〜6何れか一項に記載の光学材料において、
前記熱可塑性樹脂は、少なくともシクロオレフィン樹脂を含有することを特徴とする光学材料。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の光学材料において、
厚さが3mmのときに、波長405nmの光に対する透過率が70%以上であることを特徴とする光学材料。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の光学材料を用いて形成されたことを特徴とする光学素子。

【図1】
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【公開番号】特開2006−213759(P2006−213759A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−25249(P2005−25249)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】