光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物

【課題】透明性はもとより、耐熱性に優れた光学材料用ポリ乳酸系樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる光学材料用成形体、更には黄変を低減した光学材料用ポリ乳酸系樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる光学材料用成形体を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸樹脂100重量部にカルボジイミド化合物0.1〜10重量部および架橋性モノマー0.1〜10重量部を配合したポリ乳酸樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られた光学材料用の架橋ポリ乳酸樹脂組成物。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック製のレンズ、プリズム、 光ファイバー、光学フィルム・シート、フィルター、光ディスク基板などの光学特性に優れた光学材料用樹脂組成物および該樹脂組成物からなる成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
光学用素材として透明樹脂が注目され、その軽量性、耐衝撃性、易成形加工性などの利点ゆえに光学レンズ、フィルム、プリズム、光ディスク基板などに利用されている。
ポリ乳酸系樹脂は、生分解性樹脂として環境適応型材料として現在広く認知されているが、光学特性にも優れており、全光線透過率が90%以上、固有複屈折値が0.033と低く、光学用表面保護フィルムや光ディスク基板など光学材料用途への応用が期待されている(例えば、特許文献1参照)。
一方、ポリ乳酸系樹脂はガラス転移温度が約60℃付近であるため耐熱性を向上させる点から、放射線架橋させる方法(例えば特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)により架橋型の樹脂が提案されている。ところで、ポリ乳酸系樹脂は、放射線照射によってフリーラジカルを発生、分子鎖を切断して崩壊する。そこでトリアリルシアヌレートなどの架橋性モノマーを添加することにより分子鎖切断を抑制しているが、いずれの特許文献にも光学材料に関する言及はみられない。
【特許文献1】特開2004−34631号公報
【特許文献2】特開平10−147720号公報
【特許文献3】特開2003−313214号公報
【特許文献4】特開2004−204195号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、透明性はもとより、耐熱性に優れた光学材料用ポリ乳酸系樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる光学材料用成形体、更には黄変を低減した光学材料用ポリ乳酸系樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる光学材料用成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは鋭意検討した結果、ポリ乳酸系樹脂組成物中に含まれる水分含量と架橋前のポリ乳酸系樹脂組成物への活性エネルギー線の吸収線量をコントロールすることにより黄変を低減することができることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
[1] ポリ乳酸系樹脂100重量部に対してカルボジイミド化合物0.1〜10重量部および架橋性モノマー0.1〜10重量部を配合したポリ乳酸樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られた光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物、
[2] 水分含有率が500ppm以下のポリ乳酸系樹脂100重量部に対してカルボジイミド化合物0.1〜5重量部および架橋性モノマー0.1〜10重量部を配合したポリ乳酸系樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られた光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物、
[3] カルボジイミド化合物がポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートから選ばれる1種又は2種との縮合物であることを特徴とする[1]又は[2]記載の光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物、
[4] 架橋性モノマーが多官能アリル系モノマー群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする[1]〜[3]のいずれかに記載の光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物、
[5] 活性エネルギー線が電子線であり、架橋前のポリ乳酸系樹脂組成物への吸収線量が1〜300kGyの範囲であることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物、
[6] [1]〜[5]のいずれかに記載の光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物からなる光学材料用成形体、
[7] 架橋前のポリ乳酸系樹脂組成物を成形して成形体を得た後に、該成形体に活性エネルギー線を照射して架橋して得られた[6]に記載の光学材料用成形体、
[8] 成形体がフィルム、シートまたはファイバーである[6]に記載の光学材料用成形体、
である。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、透明性はもとより、黄変の少ない、耐熱性に優れた光学材料の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の実施の形態につき詳細に説明する。
本発明に使用するポリ乳酸系樹脂としては、L−乳酸および/またはD−乳酸を主たる構成成分とする重合体であるが、本発明の目的である光学特性を損なわない範囲で、乳酸以外の他の共重合成分を含んでいてもよく、0.1〜30重量%含むことが好ましい。かかる他の共重合成分単位としては、例えば、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸、ラクトン類などが挙げられ、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、フマル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムスルホイソフタル酸などの多価カルボン酸類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA、ビスフェノールにエチレンオキシドを付加反応させた芳香族多価アルコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどの多価アルコール類、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸類、グリコリド、ε−カプロラクトングリコリド、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、δ−ブチロラクトン、β−またはγ−ブチロラクトン、ピバロラクトン、δ−バレロラクトンなどのラクトン類などを使用することができる。これらの共重合成分は、単独ないし2種以上を用いることができる。
【0007】
ポリ乳酸系樹脂の製造方法としては、既知の重合方法を用いることができ、乳酸からの直接重合法、ラクチドを介する開環重合法などを採用することができる。本発明におけるポリ乳酸は乳酸、すなわちL−乳酸、D−乳酸を主とする重合体である。ポリ乳酸系樹脂において、L−乳酸単位と、D−乳酸単位の構成モル比は、L−体とD−体あわせて100%に対し、L体ないしD体いずれかが85%以上が好ましく、更に好ましくは一方が90%以上であり、更に好ましくは一方が94%以上の重合体である。本発明においてはL−乳酸を主体とするポリL乳酸とD−乳酸を主体とするポリD乳酸を同時に用いることもできる。
【0008】
ポリ乳酸系樹脂は、直接脱水縮合、ラクチドの開環重合等公知の重合法で重合することが出来る。また必要に応じてポリイソシアネートや等の結合剤を用いて、高分子量化することも出来る。
ポリ乳酸系樹脂に含まれる低分子微量成分である乳酸やその他の酸などは、残存することにより黄変着色の原因となるため、含量は5000重量ppm以下が好ましく、より好ましくは1000重量ppm以下、最も好ましくは500重量ppm以下である。
ポリ乳酸系樹脂の好ましい重量平均分子量範囲は、機械的性質の観点から重量平均分子量が30,000以上であることが好ましく、加工性の観点から1000,000以下であることが好ましい。更に好ましくは50,000〜500,000、最も好ましくは100,000〜280,000である。
【0009】
ポリ乳酸樹脂は吸水し易いため、活性エネルギー線を照射する前に充分乾燥した状態にすることが好ましく、ポリ乳酸系樹脂の分子鎖切断による分子量低下、透明性、黄変の観点からポリ乳酸系樹脂中の水分含有率は500ppm以下が好ましく、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは100ppm以下である。
更に樹脂以外の成分として、光学性能に影響を与えない範囲で各種安定剤、各種充填剤、その他の混合可能成分を任意の割合で含有していても問題ない。特に、活性エネルギー線に対して分子鎖切断、臭気、着色の発生が起こり易い場合は、各種安定剤を添加することが好ましい。
【0010】
また光学特性を損なわない範囲であれば、ポリ乳酸系樹脂に、ポリ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネートなどの脂肪族ポリエステルまたはその共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネートなどの芳香族ポリエステルまたはそれらの共重合体、またはメタクリル酸メチル単独重合体と他のアクリル酸エステル類との共重合体などのアクリル系樹脂の混合物を添加することができ、光学材料用組成物として用いることができる。
本発明で使用するカルボジイミド化合物は、少なくとも分子中に1個以上のカルボジイミド基を有しており、一般的に良く知られた方法で合成されたものを使用することができる。例えば、触媒として有機リン系化合物又は有機金属化合物を用い、各種ポリイソシアネートを約70℃以上の温度で、無溶媒又は不活性溶媒中で、脱炭酸縮合反応に付することより合成することができるものを挙げることができる。
【0011】
上記カルボジイミド化合物に含まれるモノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、t−ブチルイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ジ−t−ブチルカルボジイミド、ジ−β−ナフチルカルボジイミド等を例示することができる。
上記カルボジイミド化合物に含まれるポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができるが、基本的には従来のポリカルボジイミドの製造方法(米国特許第2941956号明細書、特公昭47−33279号公報、J.0rg.Chem.28,2069−2075(1963)、Chemical Review l981,Vol.81 No.4、p619−621)により製造したものを用いることができる。
【0012】
合成原料である有機ポリイソシアネートとしては、例えば芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートやこれらの混合物の有機ジイソシアネートを挙げることができ、具体的には、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,6−ジイソプロピルフェニルイソシアネート、1,3,5−トリイソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、等を挙げることができる。さらにはウレタンフォーム用原料として利用されているポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート等を例示することができる。
【0013】
これらのカルボジイミド化合物の中から1種または2種以上の化合物を任意に選択してポリ乳酸系樹脂のカルボキシル末端基を封鎖すればよいが、黄変を低減する透明性の観点で本発明に適しているのは、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートから選ばれる1種又は2種との縮合物であり、最も適しているのは、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物とポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの縮合物である。
【0014】
末端封鎖剤であるカルボジイミド化合物は、ポリ乳酸樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部配合することが必要であり、好ましくは0.2〜5重量部、更に好ましくは0.5〜3重量部を配合する。カルボジイミド化合物の配合量が0.1重量部以上であれば、ポリ乳酸樹脂の末端を充分に封鎖することができ、熱が加えられることによるポリ乳酸樹脂の加水分解を阻止することが可能となり、黄変着色の原因となる低分子微量成分である乳酸やその他の酸などの発生もない。また、10重量部以下であれば、未反応のカルボジイミドが原因となって発生する、樹脂成型時における未反応のカルボジイミドの分解および/または気化による成形品の耐熱性の低下や成形品の表面にシルバーが走ることによる黄変着色等の問題もない。
本発明における架橋性モノマーとしては、単一の架橋性モノマーまたは2種以上の架橋性モノマーの混合物が使用できる。また、必要に応じて適切な開始剤、触媒、安定剤等と共にポリ乳酸樹脂に配合、混合し、活性エネルギー線照射によって架橋できるモノマーであれば特に制限を受けない。
【0015】
架橋性モノマーとしては、多官能アクリル系モノマー、多官能アリル系モノマー、およびこれらの混合モノマー等が挙げられ、中でも多官能アリル系モノマーが好ましい。
具体例を挙げると、例えば、多官能アクリル系モノマーとしては、エチレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレートおよびこれらの混合物が一般的である。特にトリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート(トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のトリアクリル酸エステル)は皮膚刺激性が低く好ましく使用できる。
【0016】
多官能アリル系モノマーとしては、例えば、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジアリルベンゼンホスフォネートおよびこれらの混合物等が挙げられ、中でもトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートおよびこれらの混合物が好ましく用いられる。
架橋性モノマーには、光学性能に影響を与えない範囲で必要に応じて開始剤、触媒、安定剤等を添加することができる。これらの開始剤、触媒、安定剤等は架橋性モノマーに添加してもよいし、ポリ乳酸系樹脂に添加してもよいし、活性エネルギー線照射によって架橋できれば特に制限を受けない。例えば活性エネルギー線として、紫外線を用いる場合は、アセトフェノン系、ベンゾイン系、ベンゾフェノン系、チオキサンソン系等の光開始剤や光開始助剤、鋭感剤等が挙げられる。
【0017】
本発明において照射前のポリ乳酸系樹脂組成物は、ポリ乳酸系樹脂100重量部に対して、架橋性モノマーを0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部、更に好ましくは0.3〜5重量部を配合して成る。架橋性モノマーの配合量は、ポリ乳酸系樹脂の分子鎖の拘束の度合い、溶融時のゴム弾性や形状記憶性、耐熱性の観点から0.1重量部以上が必要であり、得られる架橋体が剛直さ、靭性の観点から20重量部以下であることが必要である。
照射前のポリ乳酸系樹脂組成物には、光学性能に影響を与えない範囲で必要に応じて、熱可塑性樹脂および硬化性オリゴマー、ガラス繊維、ガラスビーズ、さらにはインジュウムチタン酸化物や酸化亜鉛などの金属酸化物等その他の無機、有機充填材、各種安定剤、難燃剤、帯電防止剤、防カビ剤、可塑剤、粘性付与剤、ビタミンE,ビタミンC,ポリフェノール類、タンニン、没食子酸などの抗酸化剤等の添加剤を添加することができる。
【0018】
本発明における活性エネルギー線としては、電磁波、電子線(EB)、粒子線(α線、中性子線)およびこれらの組み合わせが挙げられる。電磁波としては、γ線、X線が挙げられる。好ましくは電子線、コバルト60を線源とするγ線である。これらの活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができる。電子線(EB)の場合の加速電圧としては100〜5,000KV、被照射体への吸収線量としては1.0〜300kGyの範囲が好ましい。より好ましくは10〜100kGyである。特に電子線の照射においては、被照射体の厚みに応じて吸収線量の強さをコントロールする必要があり、吸収線量が強すぎると被照射体が黄変する。また、空気中の湿度に考慮する必要があり、好ましくは窒素などの不活性ガス雰囲気下での照射が好ましい。場合によっては、分割して照射することにより被照射体の黄変を低減させることができる。
【0019】
各種成形体を成形した上で、活性エネルギー線を照射するときの温度は、ポリ乳酸系樹脂と架橋性モノマーの種類あるいは比率等によるが、室温で架橋成形体を得ることができることはもちろん、各種成形体を成形したそのままの温度でも架橋成形体を得ることができる特徴がある。特に光学材料を得るには、ポリ乳酸系樹脂組成物および該ポリ乳酸系樹脂組成物の成形体の温度が80℃以下であることが好ましい。このように、本発明によれば従来、熱架橋では困難な条件で製造することが可能であり、あるいは得られた架橋成形体の形状安定性、透明性、耐熱性が良いという特徴がある。
【0020】
本発明の光学材料用架橋ポリ乳酸系樹脂組成物の製造方法としては、特に制限を受けないが、ポリ乳酸樹脂と架橋性モノマーとカルボジイミド化合物を前記組成比率で配合し、溶融混練することでポリ乳酸樹脂の末端とカルボジイミド化合物を反応し、さらにこれをプラスチック製のレンズ、プリズム、光ファイバー、光学フィルム・シート、フィルター、ディスク基板等の各種成形体を成形した後、活性エネルギー線を照射することによって、組成物に含まれる架橋モノマーとポリ乳酸樹脂の架橋成形体を得ることができる。得られた成形体であるフィルム、シートは、架橋により耐熱性が向上し、低リタデーションのまま固定することができる。
【0021】
本発明における架橋前のポリ乳酸組成の物成形体と架橋後の光学材料用ポリ乳酸樹脂組成物の成形体における状態では、結晶化による白化や、透明性の観点からDSC昇温測定において成形体の結晶融解熱量(ΔHm)が15J/g未満であることが好ましい。より好ましくは10J/g以下、さらに好ましくは5J/g以下である。架橋前の溶融状態の成形体を急冷することで架橋前の成形体の結晶融解熱量(ΔHm)が15J/g未満にコントロールすることができ、架橋後において白化のない透明性を保った光学材料用のポリ乳酸樹脂組成物の成形体が得られ、好ましい。ポリ乳酸樹脂組成物成形体の非結晶部は、架橋によりポリ乳酸の分子鎖が拘束されて再び結晶化することはないが、結晶部は架橋されることはないため一旦加熱状態で溶融すると再結晶化を引き起こして白化の原因となる傾向にある。
【0022】
使用する溶融混練機または成形機については、公知のものが問題なく使用できる。例えば溶融混練機としては押出機、ニーダー、ロール、スタティックスミキサー等が成形機としては、押出成形機、圧縮成形機、真空成形機、ブロー成形機、Tダイ型成形機、射出成形機、インフレーション成形機等が挙げられる。また、本発明の成形体の形態がフィルムまたはシートである場合は、例えばクロロホルム、二塩化メチレン等の溶媒を用いて溶解後、キャスト乾燥固化することにより未延伸フィルムをキャスト成形もすることができる。
照射前のポリ乳酸系樹脂組成物を上記の溶融混練機または成形機にて加熱する場合は、設定温度が160℃から200℃が好ましい。樹脂温度が180℃以上となると加水分解を引き起こしてしまう。また、成形体の形態がフィルム・シートである場合は成形後、直ちに急冷して結晶化を抑える必要がある。溶融状態にあるポリ乳酸系樹脂組成物を成形後、急冷する温度は、好ましくは30〜90℃である。
【0023】
さらに必要に応じて、架橋前または架橋後に未延伸フィルムを機械的流れ方向に縦一軸延伸、機械的流れ方向に直行する方向に横一軸延伸することができ、またロール延伸とテンター延伸の逐次2軸延伸法、テンター延伸による同時2軸延伸法、チューブラー延伸による2軸延伸法等によって延伸することにより2軸延伸フィルムを製造することができる。延伸を行うことによりフィルムの強度が向上させることができる。最終的な延伸倍率は得られた成形体の熱収縮率より判断することができる。延伸倍率は少なくともどちらか一方向に0.1%以上1000%以下であることが好ましく、0.2%以上600%以下であることがさらに好ましく、0.3%以上300%以下であることがとりわけ好ましい。この延伸によりリタデーションの光学特性を付与し、さらに架橋により耐熱性が向上して固定することができる。延伸は押し出し成形、キャスト成形に連続して行うことができる。
【0024】
フィルム・シートは、厚さの違いのみであり、フィルムは300μm以下の厚さのものを言い、シートは300μmを超えるものである。また、本発明において、フィルムは望ましくは1μm以上、より望ましくは5μm以上であり、シートは、望ましくは10mm以下、より望ましくは5mm以下の厚さである。また架橋体の場合には、必要に応じて60から150℃の範囲内で3から120秒間熱固定処理することが望ましい。
ファイバーは、直径が5μm以上10mm以下の太さであり、好ましくは50μm以上3mm以下の太さである。さらに架橋体の場合には、必要に応じて延伸倍率3から20倍に延伸処理し、40から130℃で張力下熱処理を0.1から60秒間行った方が望ましい。
【0025】
本発明により、光学材料用の架橋ポリ乳酸樹脂組成物は、他の光学性樹脂であるポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、アクリル系樹脂(PMMA),ポリスチレン(PS)、環状オレフィン樹脂(COP)などと構造部品として組み立てたりシート状もしくフィルム状で積層したりして使用することもできる。
本発明の光学材料用成形体は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ等、また、太陽電池に用いられる透明基盤等に好適に用いることができる。その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーなどにも用いることができる。本発明の光学材料用成形体は、例えば反射防止処理、透明導電処理、電磁波遮蔽処理、ガスバリア処理等の表面機能化処理をすることもできる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
なお、実施例中における「%」および「重量部」は、特に断りのない限り重量基準を示す。
本願発明および実施例で用いた評価法をまず説明する。
評価法
(I)ポリ乳酸系樹脂の水分測定法
ポリ乳酸樹脂をクロロホルムに溶解し、カールフィッシャー法にて水分含有率を測定した。
(II)全光線透過率およびヘイズ値の測定
ヘーズメーター NDH2000(日本電色工業(株)社製を用いて測定した。
(III)YIの測定
スガ試験機器(株)社製の多光源分光測色系を用いて測定を行った。
(IV)フィルムの耐熱評価
評価用フィルムを80℃に約1時間加熱した状態で外観の形状変化があるかどうかを目視で観察し評価した。
○: 外観形状変化なし。
×: 外観の形状変化あり(フィルムに凹凸状態、縦横のサイズ変化)。
【0027】
[実施例1−4]
ポリ乳酸樹脂:カーギル・ダウ(株)社製 NatureWorks 4040D(重量平均分子量 約18万)を用い、ホッパードライヤーで60℃で約1時間乾燥した後、さらに真空乾燥機で60℃、24時間処理し、微量不純物を除去した(ホッパードライヤーにおける乾燥時間をそれぞれ実施例1および2は1時間、実施例3は30分間、実施例4は15分間で行った。)。
テクノベル製Tダイ装着押し出し機(KZW15TW−25MG−NH型/幅150mmTダイ装着/リップ厚0.5mm)のホッパーに、あらかじめ乾燥したポリ乳酸樹脂のペレットに2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートの混合物とポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートの縮合物(日清紡績(株)社製 カルボジライト LA−1)とトリアリルイソシアヌレートを表1に記載の量添着させたブレンドを投入した。押し出し機のシリンダー内樹脂温度:190℃とTダイの温度:60℃に調整し押し出し成形をすることにより実施例1〜4のフィルム(厚み100μmに調整)を得た。その後、このフィルムを、窒素雰囲気下で電子加速器(最大の加速電圧300kev)により表1に記載の吸収線量となる電子線を照射し60℃において熱固定処理した。
【0028】
[比較例]
ホッパードライヤーで約10分間乾燥処理したポリ乳酸樹脂を使って成形したフィルムを電子線による架橋処理を施さなかった以外は、実施例1と同様の操作を行った。
【0029】
[実施例5]
実施例1で充分乾燥処理して水分含量が82ppmのポリ乳酸樹脂のペレットに日清紡績(株)社製カルボジライト LA−1を1重量部とトリアリルイソシアヌレートを1重量部添着させたブレンドを投入した。同軸方向回転式の2軸押出機を用いて、シリンダー内樹脂温度:200℃で溶融押出しを行い、1mmに紡糸した。このファイバーを、窒素雰囲気下で電子加速器(最大の加速電圧300kev)により吸収線量が30kGyとなる電子線を照射し90℃において熱処理した。
全光線透過率は、92.6%/1mm、ヘイズ値は0.7/1mm、ΔYIは0.9/1mm、90℃における加熱状態にて形状変化は認められなかった。
【0030】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明のポリ乳酸樹脂組成物を用いた光学材料用成形体は、透明でかつ耐熱性が改良され、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、リアプロジェクションテレビ等のディスプレイに用いられる偏光板保護フィルム、1/4波長板、1/2波長板等の位相差板、視野角制御フィルム等の液晶光学補償フィルム、ディスプレイ前面板、ディスプレイ基盤、レンズ等、また、太陽電池に用いられる透明基盤等に好適に用いることができる。その他にも、光通信システム、光交換システム、光計測システムの分野において、導波路、レンズ、光ファイバー、光ファイバーの被覆材料、LEDのレンズ、レンズカバーなどにも用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸系樹脂100重量部に対してカルボジイミド化合物0.1〜10重量部および架橋性モノマー0.1〜10重量部を配合したポリ乳酸樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られた光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項2】
水分含有率が500ppm以下のポリ乳酸系樹脂100重量部に対してカルボジイミド化合物0.1〜5重量部および架橋性モノマー0.1〜10重量部を配合したポリ乳酸系樹脂組成物に活性エネルギー線を照射して得られた光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項3】
カルボジイミド化合物がポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートと芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネートおよび脂環族ジイソシアネートから選ばれる1種又は2種との縮合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項4】
架橋性モノマーが多官能アリル系モノマー群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項5】
活性エネルギー線が電子線であり、架橋前のポリ乳酸系樹脂組成物への吸収線量が1〜300kGyの範囲であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学材料用の架橋ポリ乳酸系樹脂組成物からなる光学材料用成形体。
【請求項7】
架橋前のポリ乳酸系樹脂組成物を成形して成形体を得た後に、該成形体に活性エネルギー線を照射して架橋して得られた請求項6記載の光学材料用成形体。
【請求項8】
成形体がフィルム、シートまたはファイバーである請求項6記載の光学材料用成形体。


【公開番号】特開2006−276235(P2006−276235A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
物理学 | 光学 | 光学要素,光学系,または光学装置 | 使用物質によって特徴づけられた光学要素;光学要素のための光学的コーティング | 有機物質,例.合成樹脂,で作られたもの
化学;冶金 | 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物 | 仕上げ;一般的混合方法;サブクラスC08B,C08C,C08F,C08GまたはC08Hに包含されない後処理 | 高分子物質の処理方法または混合方法 | 波動エネルギーまたは粒子線による処理
化学;冶金 | 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物 | 無機または非高分子有機物質の添加剤としての使用 | 有機配合成分の使用 | 窒素含有化合物 | 炭素−窒素二重結合を含有する化合物
化学;冶金 | 有機高分子化合物;その製造または化学的加工;それに基づく組成物 | 高分子化合物の組成物 | 主鎖にカルボン酸エステル結合を形成する反応によって得られるポリエステルの組成物;そのような重合体の誘導体の組成物 | ヒドロキシカルボン酸,例.ラクトン,より誘導されたポリエステル
【出願番号】特願2005−92407(P2005−92407)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社
【Fターム(参考)】
高分子物質の処理方法 | 高分子材料(化学構造) | 重付加、重縮合 | ポリエステル
高分子物質の処理方法 | 高分子材料(その他の特徴) | ポリマーの物性により表現されたもの | エネルギー線(←光)により硬化するもの
高分子物質の処理方法 | 配合剤又は処理剤(化学構造) | 有機化合物 | 窒素含有化合物
高分子物質の処理方法 | 配合剤又は処理剤(機能) | 架橋剤、加硫剤、それらの助剤、促進剤
高分子物質の処理方法 | 配合剤又は処理剤(機能) | その他
高分子物質の処理方法 | 架橋(手段) | 波動エネルギー又は粒子線を適用するもの
高分子物質の処理方法 | 架橋(操作) | 架橋、硬化時の条件の特定
高分子物質の処理方法 | 波動エネルギー又は粒子線の適用(種類) | 粒子線 | 電子線
高分子物質の処理方法 | 波動エネルギー又は粒子線の適用(目的) | 架橋、硬化
高分子組成物 | ポリエステル | ヒドロキシカルボン酸、ラクトンより誘導されたポリエステル
高分子組成物 | エステル、エーテルエステル | 非環式ポリカルボン酸のエステル | 不飽和のエステル
高分子組成物 | 1個以上のC=N結合を有する有機化合物
高分子組成物 | 異項原子として窒素を有する複素環式化合物 | N原子3個を有する複素環の | 6員環の(←トリアジン) | イソシアヌレート(←イソシアヌル酸)
高分子組成物 | 添加剤の機能 | 架橋剤、加硫剤、硬化剤
高分子組成物 | 添加剤の機能 | その他の機能
高分子組成物 | 光学関係用