説明

光学材料用高屈折率樹脂、光学材料用高屈折率樹脂組成物およびそれを用いた硬化物

【課題】PMMA樹脂やフルオレン骨格を有する樹脂または組成物よりも高い屈折率を有し、かつ高い透明性を有し、任意に目的の形状を形成することが可能な光学材料用高屈折率樹脂及び光学材料用高屈折率樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A)下記式(I)で示されるモノマと共重合可能なビニル系単量体とを共重合してなる樹脂と、(B)一分子内に一つ以上の不飽和結合基を有する重合性化合物と、(C)光重合開始剤または熱重合開始剤と、を成分として含む、光学材料用高屈折率樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料用高屈折率樹脂、光学材料用高屈折率樹脂組成物及びそれを用いた硬化物に関するものであり、詳しくは屈折率の制御が可能で、且つ光または熱を利用し、任意の構造を形成することが可能な光学材料用高屈折率樹脂、光学材料用高屈折率樹脂組成物およびそれを用いた硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料分野においてビニル系樹脂は、プラスチックレンズや液晶ディスプレイの構成部品の一つであるプリズムシートなど幅広く使用されている。中でもメチル(メタ)アクリレートを使用したPMMA樹脂は、透明性、耐熱性および屈折率などが優れていることにより、光学材料分野においては代表的な材料であると言える。しかし、PMMA樹脂のみでは屈折率を高くすることは、一般的に困難である。また、高い屈折率を得るために、硫黄原子を含有した重合体やフルオレン骨格を含んだ重合体などが提案されている(例えば特許文献1、2参照)。しかし、硫黄原子を含有する材料は、耐候性、着色性に問題があり、透過率が低下するおそれがある。さらにフルオレン骨格を有する材料に関しては、フルオレン骨格を有する原料の屈折率が1.62程度であるため、最終的に得られる塗膜の屈折率は、1.62よりも低いものになり、有機化合物だけで、高い透過率を持ち、且つ屈折率を1.65に近づけることは困難である。
【特許文献1】特開2005−345484号公報
【特許文献2】特開2000−7741号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、PMMA樹脂やフルオレン骨格を有する樹脂または組成物よりも高い屈折率を有し、かつ高い透明性を有し、任意に目的の形状を形成することが可能な光学材料用高屈折率樹脂、光学材料用高屈折率樹脂組成物および硬化物を提供することを目的とする。さらに、本発明の光学材料用高屈折率樹脂、光学材料用高屈折率樹脂組成物および硬化物を使用し、大型プロジェクションテレビのフルネルレンズや、液晶ディスプレイ等に使用される集光レンズまたはプリズムシートなど、光学用成型材料分野からの高屈折率化、薄膜化、さらに微細な構造を形成する形成性などの課題や要求を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、前記した現状を鑑み、上記した課題を解決するために鋭意研究を行った結果、高屈折率化と形成性に優れた光学材料用高屈折率樹脂、光学材料用高屈折率樹脂組成物および硬化物を得るに至った。即ち本発明は、以下の通りである。
1. 下記式(I)で表される単量体を重合して得られる構成単位を有する光学材料用高屈折率樹脂。
【0005】
【化1】

【0006】
2. 式(I)で表される単量体と、共重合可能なビニル系単量体と、を重合して得られる構成単位を有する光学材料用高屈折率樹脂。
【0007】
【化2】

【0008】
3. (A)式(I)で表される単量体と共重合可能なビニル系単量体とを重合して得られる構成単位を有する樹脂と、(B)一分子内に一つ以上の不飽和基を有する重合性化合物と、(C)光重合開始剤または熱重合開始剤と、を成分として含む、光学材料用高屈折率樹脂組成物。
【0009】
【化3】

【0010】
4. さらに、(D)成分として有機溶剤を含む、前記の光学材料用高屈折率樹脂組成物。
5. ビニル系単量体が、一分子中にビニル系反応基以外の反応基を含有するビニル系単量体であることを特徴とする、前記の光学材料用高屈折率樹脂組成物。
6. 一分子中にビニル系反応基以外の反応基を含有するビニル系単量体が、酸無水物基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基のいずれかを有するビニル系単量体であることを特徴とする前記の光学材料用高屈折率樹脂組成物。
7. 前記の光学材料用高屈折率樹脂組成物に、さらに、付加重合可能なビニル系単量体を添加してなる、光学材料用高屈折率樹脂組成物。
8. 前記の光学材料用高屈折率樹脂組成物を光及び/又は熱により硬化してなる硬化物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、PMMA樹脂やフルオレン骨格を有する樹脂または組成物よりも高い屈折率を有し、かつ高い透明性を有し、任意に目的の形状を形成することが可能な光学材料用高屈折率樹脂及び光学材料用高屈折率樹脂組成物および硬化物を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。
本発明は、下記式(I)で表される単量体を重合して得られる構成単位を有する光学材料用高屈折率樹脂である。また、本発明は、下記式(I)で表される単量体と、共重合可能なビニル系単量体と、を重合して得られる構成単位を有する光学材料用高屈折率樹脂である。また、本発明は、(A)下記式(I)で示されるモノマと共重合可能なビニル系単量体とを共重合してなる樹脂と、(B)一分子内に一つ以上の不飽和基を有する重合性化合物、及び(C)光または熱重合開始剤を含有する光学材料用高屈折率樹脂組成物である。なお、本発明の光学材料用高屈折率樹脂組成物は、光硬化性組成物あるいは熱硬化性組成物としても使用できる。また、(B)成分の重合性化合物としては、一般的な、光および熱重合性化合物であれば使用できる。
【0013】
【化4】

【0014】
本発明に使用する式(I)で示される単量体とは、2−ビニルナフタレンであり、通常、融点が66℃の粉末結晶である。本材料(モノマ)の純度に関しては、純度が高いことが望まれる。実用化に適している、好ましい純度は90重量%以上であり、より好ましい純度は95重量%以上であり、特に好ましい純度は99重量%以上である。純度が90重量%に満たない場合、不純物による複屈折の発生により硬化塗膜の白曇が発生するおそれがある。さらに液晶層中の構造材として形成される場合、それら不純物の影響により液晶が汚染される原因となる。
【0015】
前記の共重合可能なビニル系単量体としては、式(I)で示されるモノマ(2−ビニルナフタレン)と共重合できれば特に限定するものではない。例えば、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、(メタ)アクリレート類、イソシアナート類などが挙げられ、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ビニルナフタレン、4−ビニルビフェニル等も使用できる。
(A)樹脂(または光学材料用高屈折率樹脂)の合成(重合)においては、式(I)で示されるモノマ100重量部に対し、ビニル系単量体は、好ましくは1〜80重量部、より好ましくは5〜75重量部、特に好ましくは10〜70重量部配合する。ビニル系単量体の配合量が、1重量部未満であれば、本発明が目的とする光または熱を利用し、任意の構造を形成することが困難になるという問題があり、80重量部を超えると屈折率が低くなるという問題が生じるおそれがある。なお、本発明の光学材料用高屈折率樹脂は、共重合樹脂とも表す。
【0016】
さらに、前記の共重合可能なビニル系単量体としては、一分子中にビニル系反応基以外の反応基を含有することが好ましい。特に、一分子中にビニル系反応基以外の反応基を含有するビニル系単量体が、酸無水物基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基のいずれかを有するビニル系単量体であることが好ましい。ここでいう前記(A)樹脂の式(I)と共重合可能な一分子中にビニル系反応基以外の反応基を含有するビニル系単量体は、酸無水物基を有する単量体としては無水マレイン酸、また水酸基を有する単量体としては2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェートなど、またカルボキシル基を有する単量体としては、メタクリル酸、アクリル酸など、さらにエポキシ基を有する単量体としては、グリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、上記に記載しているものに限定するものではない。これらのビニル系単量体に塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基、また硫黄等を導入した誘導体は屈折率を向上させる手段としては有用であるが、特に透過率を重視した用途、また耐候性、さらに機械的強度などを重視した用途においては、導入する量が重要である。ビニル系単量体に塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基、また硫黄等を導入した誘導体の含有量は、共重合可能なビニル系単量体のうち、1〜50重量%であることが好ましく、5〜30重量%であることがより好ましい。含有量が1重量%から50重量%の範囲であれば、屈折率、透過率、耐候性、機械的強度等が良好である。
【0017】
また、(A)樹脂(または光学材料用高屈折率樹脂)の合成(重合)において、合成後の(A)樹脂(光学材料用高屈折率樹脂)と、付加重合可能なビニル系単量体を反応させ、共重合樹脂としてもよい。一分子中にビニル系反応基以外の反応基を含有するビニル系単量体としては、エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレート、イソシアナート基を有する2−メタクリロイルオキシエチルイソシアナート、2−(2−メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、2−アクリロイルオキシエチルイソシアナート、さらにカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸などが挙げられる。
【0018】
(B)成分である一分子内に一つ以上の不飽和結合基を有する重合性化合物に関しては、一分子内に一つの不飽和基を有する単量体であれば特に限定するものではなく、一般的な、光および熱重合性化合物であれば使用できる。不飽和結合基を一分子内に一つ有する光重合性化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、等のシアン化ビニル系単量体、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル類とこれらに対応するメタクリル酸アルキルエステル類、その他、N−置換アルキルマレイミド、N−置換フェニルマレイミド、N−置換シクロヘキシルマレイミドなどが挙げられる。特に芳香環を有する単量体、例えば、スチレン、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ビニルナフタレン、4−ビニルビフェニルが高屈折率に対しては有用である。さらに二つの不飽和結合基を有する化合物として特に限定するものではないが、EOまたはPO変性ジオールジ(メタ)アクリレート類、ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレートなどのシクロ環を有するジ(メタ)アクリレート類、さらにEOまたはPO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート類が挙げられる(EOはエチレンオキサイドを、POはプロピレンオキサイドを示す)。高屈折率に効果的なものとしては、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンなどフルオレン骨格を有するジ(メタ)アクリレート、さらにジビニルナフタレン、ジビニルビフェニルなどが挙げられる。さらに三つ以上の不飽和結合基を有する化合物としては、以下のものに特に限定するものではないが、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、さらにフェニルグリシジルエーテルアクリレート、ヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどのウレタン結合を有するオリゴマまたはプレポリマーが有用である。
【0019】
(B)成分である重合性化合物の配合量は、(A)樹脂(共重合樹脂)100重量部に対し、好ましくは5〜200重量部、より好ましくは5〜190重量部、特に好ましくは5〜180重量部である。配合量が、5重量部未満であれば、硬化された塗膜の硬度が弱いという問題が考えられ、200重量部を超えると脆く、また屈折率が低くなるという問題が生じるおそれがある。
【0020】
(C)成分である光または熱重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば、ベンゾフェノン、N,N’−テトラエチル−4,4’−ジアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、ベンジル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2,3−ジクロロアントラキノン、3−クロル−2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、1,2−ベンゾアントラキノン、1,4−ジメチルアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−2−(o−ベンゾイルオキシム)、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)などが挙げられる。これらの光開始剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
また熱重合開始剤としては、特に制限はなく、例えば2−シアノ−2−プロピルアゾホルムアミド、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドキシム)、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミド]などのアゾニトリル化合物および/または環状アゾアミジン化合物および/またはアゾアミド化合物、有機過酸化物等が使用される。
【0022】
これら(C)光または熱重合開始剤の添加量(配合量)は、(A)樹脂(共重合樹脂)100重量部に対して、好ましくは0.5重量部から40重量部であり、より好ましくは0.8重量部から35重量部であり、特に好ましくは、1重量部から30重量部である。添加量が0.5重量部から40重量部の範囲であれば、硬化が十分であり、耐薬品性が良好であり、さらに透過率を極端に低下させることもない。
【0023】
本発明の光学材料用高屈折率樹脂組成物、あるいは(A)樹脂(共重合樹脂)などは、用途に合わせ(D)成分の有機溶剤を配合することが可能である。(D)有機溶剤としては、本発明の光学材料用高屈折率樹脂組成物を溶解することが可能であれば特に限定することはなく、例えば、ケトン化合物、アルキレングリコールエーテル化合物、アルコール化合物、芳香族化合物などが挙げられる。具体的には、ケトン化合物として、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等があり、アルキレングリコールエーテル化合物として、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコール−t−ブチルエーテルアセテート等があり、アルコール化合物として、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、3−メチル−3−メトキシブタノール等があり、芳香族化合物として、ベンゼン、トルエン、キシレン、窒素含有化合物として、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシメチル−2−ピロリドン等があり、その他として、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等の有機溶剤が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
本発明の光学材料用高屈折率樹脂組成物で用いる(A)樹脂(または共重合樹脂)の合成方法は、懸濁重合、乳化重合、溶液重合、塊状重合、注型重合等、特に限定するものではない。一般的に、重合温度は、使用する重合開始剤に合わせる。適した温度範囲は、30℃以上、150℃以下であり、好ましくは40℃から140℃である。重合温度が30℃に満たない場合は、未反応モノマや不純物の発生などがあり、また150℃を超えると着色する可能性があるために好ましくはない。
【0025】
本発明の光学材料高屈折率樹脂(共重合樹脂)の合成に使用する重合開始剤は、熱重合開始剤の中で、特に、有機過酸化物やアゾ系開始剤を使用することが好ましい。有機過酸化物としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルイソブチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、イソブチルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(−t−ブチルパーオキサイド)ヘキサン、1,3−ビス−(t−ブチルパーオキサイドイソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキサイド)ヘキサン−3、トリス−(t−ブチルパーオキシ)トリアジンなどのジアルキルパーオキサイド類、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチル−パーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−(t−ブチルパーオキシ)ブタン、4,4−ジ−t−ブチルパーオキシバレリックアシッド−n−ブチルエステル、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどのパーオキシケタール類、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオヘプタネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレートなどのアルキルパーエステル類、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス−(t−ブチルパーオキシカーボネート)などのパーカーボネート類が挙げられる。
【0026】
またアゾ系開始剤としは、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1’−ビス(ヒドロキシ−メチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライドなどが挙げられる。これら重合開始剤は使用する用途の特性によって異なるが、共重合する式(I)で示されるモノマ(2−ビニルナフタレン)の全量に対して0.01重量%から10重量%の範囲で使用することが好ましく、さらに0.1重量%から8重量%の範囲で使用することがより好ましい。0.01重量%から10重量%の場合は、合成された(A)樹脂(共重合樹脂)のハンドリングも可能であり、また樹脂としての機能を十分得ることができる。
【0027】
さらにこれら重合において(A)樹脂(共重合樹脂)の分子量調整のために分子量調整剤を添加することができる。分子量調整剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン等のメルカプタン類、1−メチル4−イソプロピリデンシクロヘキセン等のモノテルペノイド類、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン等のスチレンダイマー類を挙げることができる。これら分子量調整剤の添加量は、重合の転化率の低下を及ぼす可能性もあるため、(A)樹脂(共重合樹脂)に対し、1重量%以下で使用することが好ましい。
【0028】
また本発明の光学材料用高屈折率樹脂組成物および硬化物には、その製造に際して、光学用材料として期待される用途に応じて、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒンダードフェノール類、ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレート等の光酸化防止剤、さらに紫外線吸収剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光剤、離型剤などを添加しても良い。
【0029】
さらに本発明の光学材料用高屈折率樹脂組成物および硬化物としては、屈折率が高い酸化チタンや酸化ジルコニウムなどの酸化金属粒子を分散しても良い。これらの酸化金属粒子の粒子径は1nmから500nmの範囲が好ましく、さらに5nmから250nmがより好ましい。粒子径が大きい場合、透明性を低下させる恐れがある。またこれら酸化金属粒子を分散する濃度に関しては、光学材料用高屈折率樹脂組成物に対し、0.1重量%から60重量%が好ましく、さらに0.5重量%から50重量%が好ましい。0.1重量%から60重量%の範囲で使用することで、分散性が良好で、かつ高屈折率な材料を提供できる。
【実施例】
【0030】
本発明を更に具体的に説明するために、以下に実施例及び比較例を示す。
また、本発明の光学材料用高屈折率樹脂(共重合樹脂)または光学材料用高屈折率樹脂組成物から作製された硬化塗膜の重量平均分子量、屈折率および透過率の測定方法を以下に示す。
[重量平均分子量の測定]
重量平均分子量の測定は、合成で得られた共重合樹脂をヘキサンにて洗い、未反応モノマなどの不純物を取り除き樹脂を粉体化した。その樹脂をTHFにて所定量溶解し、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ分析)を行った。カラムはGelpack GL−A100M、ポリスチレン換算で重量平均分子量を求めた。
[屈折率の測定]
共重合樹脂の屈折率の測定は、ヘキサンにて粉体化した共重合樹脂を、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテート溶液に溶解し、ガラス基板上にスピンコーターにて塗布した。溶媒を除去するために120℃で1時間乾燥し、ガラス基板上に樹脂塗膜を得た。屈折率測定は、樹脂塗膜の膜厚を表面段差計で測定した後に、光学式薄膜解析システムFilmtek3000(米国SCI社製)を用いて測定した。また高屈折率樹脂組成物を用いた硬化物の屈折率測定は、実施例等に記載した。
[透過率の測定]
得られた硬化膜の温度25℃における波長400nmでの透過率を、分光光度計(株式会社日立製作所製U−3410 Spectrophotometer)を使用して測定した。
【0031】
(共重合樹脂(a)合成 実施例1)
ネジ口試験管に、式(I)で示されるモノマである2−ビニルナフタレン5.25gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート9.848gに溶解した。予め70℃に保温されたオイルバス中に入れ、30分後に樹脂合成用の熱重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.053g添加し、攪拌しながら4時間30分放置した。その後110℃に昇温し、110℃で1時間放置した。得られた樹脂(a)の重量平均分子量(Mw)は35,000であり、屈折率は1.66であった。透過率は、膜厚1μmで98%(400nm)であった。
【0032】
(共重合樹脂(b)合成 実施例2)
ネジ口試験管に式(I)で示されるモノマである2−ビニルナフタレン4.62gと、共重合ビニル系単量体として無水マレイン酸0.98gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.50gに溶解した。予め70℃に保温されたオイルバス中に入れ、30分後に樹脂合成用の熱重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.056g添加し、攪拌しながら4時間30分放置した。その後110℃に昇温し、110℃で1時間放置した。得られた樹脂(b)の重量平均分子量(Mw)は50,000であり、屈折率は1.63であった。透過率は、膜厚1μmで98%(400nm)であった。
【0033】
(共重合樹脂(c)合成 実施例3)
ネジ口試験管に式(I)で示されるモノマである2−ビニルナフタレン4.62gと、ビニル系単量体としてグリシジルメタクリレート1.42gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート11.33gに溶解した。予め70℃に保温されたオイルバス中に入れ、30分後に樹脂合成用の熱重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.06g添加し、攪拌しながら4時間30分放置した。その後110℃に昇温し、110℃で1時間放置した。得られた樹脂(c)の重量平均分子量(Mw)は30,000であり、屈折率は1.63であった。透過率は、膜厚1μmで98%(400nm)であった。
【0034】
(共重合樹脂(d)合成 実施例4)
ネジ口試験管に式(I)で示されるモノマである2−ビニルナフタレン4.62gと、ビニル系単量体としてメタクリル酸0.86gをプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート10.28gに溶解した。予め70℃に保温されたオイルバス中に入れ、30分後に樹脂合成用の熱重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.055g添加し、攪拌しながら4時間30分放置した。その後110℃に昇温し、110℃で1時間放置した。得られた樹脂(d)の重量平均分子量(Mw)は30,000であり、屈折率は1.63であった。透過率は、膜厚1μmで98%(400nm)であった。
【0035】
(硬化塗膜 実施例5)
前記樹脂(c)5gと、前記樹脂(d)5gをプロピレングリコールモノメチルエチルアセテート中に溶解し、ガラス上に塗布した後に、230℃の乾燥機で30分乾燥し、硬化塗膜を得た。硬化塗膜の透過率は、1μmで97%(400nm)であり、屈折率は1.64であった。
【0036】
(硬化塗膜 実施例6)
前記樹脂(d)に対して、付加重合可能なビニル系単量体としてグリシジル(メタ)アクリレートを0.5mmol/g濃度添加し、プロピレングリコールモノメチルエチルアセテート中に溶解し、70℃のオイルバス中で4時間反応させ、グリシジル(メタ)アクリレートを付加した樹脂組成物(e)を得た。平均分子量は32,000、屈折率は1.62であった。
さらに、前記樹脂組成物(e)5gに、(B)成分としてジビニルビフェニルを5g加え、光重合開始剤((C)成分)として1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(o−ベンゾイルオキシム)を0.1g加え、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート中で溶解した。その溶液をガラス上に塗布した後に、90℃、5分間ホットプレート上で乾燥を行い、その後i線露光機を用い100mJ/cm露光し、さらにその後230℃の乾燥機で30分乾燥し、硬化膜を得た。硬化膜の透過率は、1μmで95%(400nm)であり、屈折率は1.65であった。
【0037】
(比較例1)
ベンジル(メタ)アクリレート70gと、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート15gと、メタクリル酸15gと、樹脂合成用の熱重合開始剤として2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.1gと、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200gに溶解した。予め70℃に保温されたオイルバス中に入れ、攪拌しながら7時間放置した。その後110℃に昇温し、110℃で1時間放置した。得られた樹脂組成物の重量平均分子量は25,000、屈折率は1.56であった。また、硬化膜の透過率は、1μmで98%(400nm)であった。
【0038】
実施例1〜6の共重合樹脂(光学材料用高屈折率樹脂)及び光学材料用高屈折率樹脂組成物は、屈折率は、1.62以上、透過率は、95%以上であるなど、高い屈折率、高い透明性を有していることがわかった。それに対し、2−ビニルナフタレンを含まない比較例1の樹脂組成物は、屈折率は、1.56であり、透過率は、98%であるなど、透過率は高いが、屈折率は低いことが分かった。
【0039】
以上説明した本発明によると、PMMA樹脂やフルオレン骨格を有する樹脂または組成物よりも高い屈折率を有し、かつ高い透明性を有する樹脂、さらにそれらの樹脂と一分子内に一つ以上の不飽和基を有する光および熱重合性化合物を含有することにより、任意に目的の形状を形成することが可能な共重合樹脂(光学材料用高屈折率樹脂)及び光学材料用高屈折率樹脂組成物および硬化塗膜を得られることが判った。また、共重合樹脂(光学材料用高屈折率樹脂)及び光学材料用高屈折率樹脂組成物および硬化塗膜により、大型プロジェクションテレビのフルネルレンズや、液晶ディスプレイ等に使用される集光レンズまたはプリズムシートなど、光学用成型材料分野からの高屈折率化、薄膜化、さらに微細な構造を形成する形成性などの課題、要求を解決することが可能であることが判った。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される単量体を重合して得られる構成単位を有する光学材料用高屈折率樹脂。
【化1】

【請求項2】
式(I)で表される単量体と、共重合可能なビニル系単量体と、を重合して得られる構成単位を有する光学材料用高屈折率樹脂。
【化2】

【請求項3】
(A)式(I)で表される単量体と共重合可能なビニル系単量体とを重合して得られる構成単位を有する樹脂と、(B)一分子内に一つ以上の不飽和基を有する重合性化合物と、(C)光重合開始剤または熱重合開始剤と、を成分として含む、光学材料用高屈折率樹脂組成物。
【化3】

【請求項4】
さらに、(D)成分として有機溶剤を含む、請求項3記載の光学材料用高屈折率樹脂組成物。
【請求項5】
ビニル系単量体が、一分子中にビニル系反応基以外の反応基を含有するビニル系単量体であることを特徴とする、請求項3または4に記載の光学材料用高屈折率樹脂組成物。
【請求項6】
一分子中にビニル系反応基以外の反応基を含有するビニル系単量体が、酸無水物基、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基のいずれかを有するビニル系単量体であることを特徴とする請求項5記載の光学材料用高屈折率樹脂組成物。
【請求項7】
請求項6記載の光学材料用高屈折率樹脂組成物に、さらに、付加重合可能なビニル系単量体を添加してなる、光学材料用高屈折率樹脂組成物。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか一項に記載の光学材料用高屈折率樹脂組成物を光及び/又は熱により硬化してなる硬化物。

【公開番号】特開2009−191159(P2009−191159A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−33165(P2008−33165)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】