説明

光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法

【課題】工業的に適しており、着色を抑えた無色透明な(ポリ)チオール化合物を安定的に得ることができる光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法は、有機(ポリ)ハロゲン化合物または(ポリ)アルコール化合物とチオ尿素とを反応させてイソチウロニウム塩を生成し、得られたイソチウロニウム塩を加水分解して(ポリ)チオール化合物を製造する方法であり、前記チオ尿素中のカルシウムの含有量が、1.0重量%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学材料用(ポリ)チオール化合物とその製造方法、および良好な光学物性を与えるポリウレタン系レンズ等の光学材料に使用される(ポリ)チオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物からなる重合性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
チオール化合物の製造方法は、従来数多くの方法が知られている。例えば、ジスルフィド化合物を還元する方法、有機ハロゲン化物に水硫化ナトリウム、水硫化カリウム等の水硫化または硫化アルカリ金属塩を反応させる方法、有機ハロゲン化物またはアルコール類にチオ尿素を反応させてイソチウロニウム塩を生成し、それを塩基で加水分解する方法、ブンテ塩を経由する方法、ジチオカルバミン酸エステルを経由する方法、Grignard試薬と硫黄を用いる方法、スルフィドのC−S結合を開裂させる方法、エピスルフィドを開環させる方法、カルボニル基を有する化合物を出発化合物として硫化水素を反応させる方法、アルケンに硫化水素またはチオ酢酸を付加させる方法等が挙げられる。
【0003】
なかでも、有機ハロゲン化物またはアルコール類からイソチウロニウム塩を経由してチオール化合物を製造する方法は、その他の製造方法と比較して、収率が高く、副生物が少なく、操作性に優れ、得られた製品の品質が良い場合が多く一般的に最も良く用いられているチオール化合物の製造方法の一つである。
【0004】
さらに、有機(ポリ)ハロゲン化合物または(ポリ)アルコール化合物とチオ尿素とを反応させる際に、硫酸を加え、イソチウロニウム塩を経由して(ポリ)チオール化合物を製造する方法は、高収率で効率的に安価で(ポリ)チオール化合物を製造できることが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
その際、用いられるチオ尿素は、石灰窒素と硫化水素、または水硫化カルシウムから製造される。また、チオ尿素含有溶液を強イオン塩基性イオン交換樹脂により精製することが知られている。(特許文献2参照)
また、この製造方法で得られる(ポリ)チオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物とを反応させて得られるポリ(チオ)ウレタン樹脂は、無色透明で高屈折率、低分散であり、衝撃性、染色性、加工性等に優れた光学材料であるプラスチックレンズに最適な樹脂の一つであることが記載されている(特許文献3、4、および5参照)。
しかしながら、上記製造方法においても得られる(ポリ)チオール化合物が着色する問題が多発し、安定的な製造が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−39944号公報
【特許文献2】特開昭48−49722号公報
【特許文献3】特開平9−110955号公報
【特許文献4】特開平9−110956号公報
【特許文献5】特開平7−252207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら従来のイソチウロニウム塩を経由する方法にて製造される(ポリ)チオール化合物が着色する問題や、この(ポリ)チオール化合物を用いて得られるポリ(チオ)ウレタン樹脂が、着色や白濁する問題が発生する場合があった。
【0008】
そのため、これらのイソチウロニウム塩を経由する方法におけるこのような問題の発生を極力抑え、着色のない(ポリ)チオール化合物の工業的な製造方法の開発が望まれている。したがって、着色、白濁のないポリ(チオ)ウレタン樹脂からなるプラスチックレンズを安定的に世の中へ提供する必要があった。
【0009】
本発明は、有機(ポリ)ハロゲン化合物、または(ポリ)アルコール化合物をチオ尿素と反応させて得られるイソチウロニウム塩を加水分解することにより(ポリ)チオール化合物を製造する方法に関し、着色を抑えた無色透明な(ポリ)チオール化合物を製造する方法に関する。また、本発明の方法により得られる(ポリ)チオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物とを重合させることにより、着色や白濁を抑えた無色透明なポリ(チオ)ウレタン樹脂ならびに光学材料として有用なプラスチックレンズを提供するものである。
【0010】
本発明者らは、上述の課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリ(チオ)ウレタン樹脂の着色が、使用される(ポリ)チオール化合物の色相によるものであることを追求した。さらに、(ポリ)チオール化合物の着色する原因を追求するため、(ポリ)有機ハロゲン化合物または(ポリ)アルコール化合物からイソチウロニウム塩を経由し、加水分解することで製造される(ポリ)チオール化合物の製造方法および製造条件について鋭意検討した。その結果、着色を抑えた無色透明な(ポリ)チオール化合物の製造条件を見出した。しかしながら、製造条件を同一とした場合でも、(ポリ)チオール化合物に着色が生じることがあり、安定的な製造が困難であった。
【0011】
そこで、製造条件を同一とした場合でも、(ポリ)チオール化合物が着色する上述の問題を解決すべく、イソチウロニウム塩化させる際に用いるチオ尿素の品質を詳細に調査した。チオ尿素の純度、チオ尿素に含まれる微量の不純物量などの品質が、得られる(ポリ)チオールの着色、ポリ(チオ)ウレタン樹脂の白濁や着色へどのように影響するかについて鋭意検討を続けた。その結果、驚くべきことに、チオ尿素に含まれる不純物量が特定量以上である場合に、得られる(ポリ)チオール化合物の着色が観察されることが判明した。その不純物の特定を鋭意検討した結果、不純物の主成分がカルシウムであることを特定するに至った。その結果、カルシウムの含有量が特定量以下であるチオ尿素を原料として(ポリ)チオール化合物を製造すれば、着色を抑えた無色透明な(ポリ)チオール化合物が安定的に得られることを見出した。さらに、これを用いて着色、白濁の抑制された無色透明なポリ(チオ)ウレタン樹脂が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
1)有機(ポリ)ハロゲン化合物または(ポリ)アルコール化合物とチオ尿素とを反応させてイソチウロニウム塩を生成し、得られたイソチウロニウム塩を加水分解して(ポリ)チオール化合物を製造する方法において、前記チオ尿素中のカルシウムの含有量が、1.0重量%以下である、光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法、
2)前記(ポリ)チオール化合物が、チオール基以外に硫黄原子を有する、上記1)記載の光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法、
3)チオール基以外に硫黄原子を有する前記(ポリ)チオール化合物が、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンからなる群より選択される一種または二種以上を主成分とする、上記2)記載の光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法、
4)上記1)乃至3)のいずれかに記載の方法により製造された光学材料用(ポリ)チオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物とを含む重合性組成物、
5)上記4)記載の重合性組成物を硬化させて得られる樹脂、
6)上記5)記載の樹脂を含む光学材料、
7)上記5)記載の樹脂を含むレンズ。
【0013】
上記6)および7)において、「樹脂を含む」とは、当該光学材料または当該レンズの全部が当該樹脂で構成されている場合、および、当該光学材料または当該レンズの一部が当該樹脂で構成されている場合の双方を含む趣旨である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法は、工業的に適しており、着色を抑えた無色透明な(ポリ)チオール化合物を安定的に得ることができる。本発明の製造方法によって得られる光学材料用(ポリ)チオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物とからなる重合性組成物を用い、得られるポリ(チオ)ウレタン樹脂は着色および白濁の抑制された無色透明なものである。本発明によれば、光学材料および透明材料として有用な無色透明のポリウレタン系レンズを安定的に提供することができ、当該分野の発展に貢献する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明は、有機(ポリ)ハロゲン化合物または(ポリ)アルコール化合物とチオ尿素とを反応させてイソチウロニウム塩を得て、該イソチウロニウム塩を加水分解して光学材料用(ポリ)チオール化合物を製造する方法に関する。本発明で使用されるチオ尿素中のカルシウムの含有量は特定量以下である。すなわち、カルシウムの含有量が1.0重量%以下であるチオ尿素が用いられる。
【0016】
イソチウロニウム塩を形成させる原料として用いるチオ尿素は、主として、石灰窒素と硫化水素とを反応させて製造される。チオ尿素に含まれる不純物として、未反応である石灰窒素、およびさらに副生される水酸化カルシウムが挙げられる。すなわち、カルシウム分がチオ尿素中に特定量を超えて含まれると、得られる(ポリ)チオール化合物が着色し、かつポリイソ(チオ)シアナート化合物と混合して得られる重合性組成物および得られる樹脂が着色または白濁する。
【0017】
本発明に用いるチオ尿素のカルシウムの含有量は、着色、白濁の抑制の観点からは、好ましくは0.0005重量%以上、1.0重量%以下であり、より好ましくは0.0005重量%以上、0.5重量%以下、さらに好ましくは0.0005重量%以上、0.2重量%以下である。
カルシウムの含有量が1.0重量%以下であれば、当該チオ尿素を用いて製造された(ポリ)チオール化合物は着色が抑制されて無色透明である。かつ、製造された(ポリ)チオール化合物とポリイソ(チオ)シアナートとを重合させて得られるポリ(チオ)ウレタン樹脂は、白濁、着色が抑制され、無色透明なポリ(チオ)ウレタン系レンズとなる。
【0018】
カルシウムの含有量の測定法は、次のとおりである。チオ尿素を水溶液とした後、イオンクロマトグラフ法により定量する。
【0019】
カルシウムの含有量は、精製、酸処理、再結晶等の方法を採用することによりこれを低減し、1.0重量%以下にすることができる。具体的には、カルシウムの含有量は、例えば、塩酸、硫酸等による酸処理によって低減することができ、または水系による再結晶法によっても、低減することができる。
【0020】
もう一方の原料である有機(ポリ)ハロゲン化合物は、一分子中に1個以上のハロゲン原子を有する化合物であり、品質的には特に制限はない。
原料となる有機(ポリ)ハロゲン化合物として、具体的には、ビス(2,3−ジクロロプロピル)スルフィド、1,1,1−トリス(クロロメチル)プロパン、1,1,1−トリス(ブロモメチル)プロパン、1,2−ビス(2−クロロエチルチオ)−3−クロロプロパン、1,2−ビス(2−ブロモエチルチオ)−3−ブロモプロパン、1,3−ビス(2−クロロエチルチオ)−2−クロロプロパン、1,3−ビス(2−ブロモエチルチオ)−2−ブロモプロパン、2,5−ビス(クロロメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(ブロモメチル)−1,4−ジチアン、4,8−ジクロロメチル−1,11−ジクロロ−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジクロロメチル−1,11−ジクロロ−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジクロロメチル−1,11−ジクロロ−3,6,9−トリチアウンデカン、4,8−ジブロモメチル−1,11−ジブロモ−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジブロモメチル−1,11−ジブロモ−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジブロモメチル−1,11−ジブロモ−3,6,9−トリチアウンデカン、1,5,9,13−テトラクロロ−3,7,11−トリチアトリデカン、1,5,9,13−テトラブロモ−3,7,11−トリチアトリデカン、1,2,6,7−テトラクロロ−4−チアヘプタン、1,2,6,7−テトラブロモ−4−チアヘプタンなどが挙げられるが、本発明はこれら例示化合物に限定されるものではない。
【0021】
もう一方の原料である(ポリ)アルコール化合物は、一分子中に1個以上のヒドロキシ基を有する化合物であり、品質的には特に制限はない。具体的には、ビス(2,3−ジヒドロキシ)スルフィド、1,1,1−トリス(ヒドロキシメチル)プロパン、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)−3−ヒドロキシプロパン、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−ヒドロキシプロパン、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジチアン、4,8−ジヒドロキシメチル−1,11−ジヒドロキシ−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジヒドロキシメチル−1,11−ジヒドロキシ−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジヒドロキシメチル−1,11−ジヒドロキシ−3,6,9−トリチアウンデカン、1,5,9,13−テトラヒドロキシ−3,7,11−トリチアトリデカン、1,2,6,7−テトラヒドロキシ−4−チアヘプタン、ペンタエリスリトールなどが挙げられるが、本発明はこれら例示化合物に限定されるものではない。
【0022】
本発明において、これら有機(ポリ)ハロゲン化合物または(ポリ)アルコール化合物とチオ尿素とを反応させる方法としては、溶媒中で行うことが好ましい。その際使用する溶媒は、例えば、水、あるいは原料以外のアルコール類、有機ハロゲン化合物である。
【0023】
アルコール類としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシエタノール等が好ましく用いられる。
【0024】
有機ハロゲン化合物としては、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−ジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0025】
イソチウロニウム塩化が行われた後、引き続き行われる加水分解は、従来の方法と同様に、通常の塩基水を用いて行われる。使用される塩基水の種類としては、例えば、水酸化ナトリウム水、水酸化カリウム水、アンモニア水、ヒドラジン水、炭酸ナトリウム水等の塩基水が挙げられ、なかでもアンモニア水を用いた場合、特に好ましい結果を与える。
【0026】
塩基の使用量は、有機ハロゲン化合物に結合しているハロゲン原子数、(ポリ)アルコール類の場合によく用いられるハロゲン化水素酸量に対しておおよそ1.0〜3.0当量の範囲が好ましい結果を与え、1.0〜2.0当量がさらに好ましい結果を与える。
【0027】
加水分解反応の反応温度は、用いる塩基水の種類によって異なるため、限定は難しいが、おおよそ0〜100℃の範囲であり、好ましくは20〜70℃の範囲である。
【0028】
加水分解に使用する溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メトキシエタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系溶媒類等が好ましく用いられる。
【0029】
前工程のイソチウロニウム塩化反応を水溶媒で行い、反応物を取り出さずにそのまま加水分解してもよい。その場合は、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒類を反応系に加え、2層系で加水分解を行う。かかる方法では、生成する(ポリ)チオール化合物が有機溶媒へ抽出されることで、その後に行われる洗浄操作等が効率的かつ短時間で行える場合があるために、好ましい。
【0030】
このようにして得られた本発明にかかる(ポリ)チオール化合物を含む反応液は、通常、酸洗浄、塩基洗浄、水洗浄など必要に応じてさまざまな洗浄が行われ、脱溶媒後、濾過して製品として得られる。また、蒸留、カラムクロマトグラフィー、または再結晶等のその他のさまざまな精製方法によって精製されてもよい。
【0031】
本発明の製造方法では、無色透明で着色の抑制された(ポリ)チオール化合物が得られる。本発明で得られる(ポリ)チオール化合物は、チオール基以外に硫黄原子を有していてもよい。具体的には、例えば、以下のような化合物では、本発明の効果がより顕著に得られる。
【0032】
例えば、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3−テトラメルカプトメチル−2−チアプロパン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、1,1,1−トリス(メルカプトメチル)プロパン、1,5,9,13−テトラメルカプト−3,7,11−トリチアトリデカン、テトラメルカプトメチルメタン等からなる群より選択される一種または二種以上を主成分とする(ポリ)チオール化合物が挙げられるが、これら例示化合物に限定されるものではない。
【0033】
本発明で用いられるポリイソ(チオ)シアナート化合物は、一分子中に少なくとも2個以上のイソ(チオ)シアナート基を有する化合物であり、特に限定されないが、具体的には、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナト−4−イソシアナトメチルオクタン、ビス(イソシアナトエチル)カーボネート、ビス(イソシアナトエチル)エーテル、リジンジイソシアナトメチルエステル、リジントリイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート化合物;
キシリレンジイソシアナート、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,3−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ジイソシアナトベンゼン、2,4−ジイソシアナトトルエン、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4'−メチレンビス(フェニルイソシアナート)、4,4'−メチレンビス(2−メチルフェニルイソシアナート)、ビベンジルー4,4'−ジイソシアナート、ビス(イソシアナトフェニル)エチレン、ビス(イソシアナトエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトプロピル)ベンゼン、α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナトブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナトメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナトメチルフェニル)エーテル、ビス(イソシアナトエチル)フタレート、2,6−ジ(イソシアナトメチル)フラン等の芳香環化合物を有するポリイソシアナート化合物;
ビス(イソシアナトメチル)スルフィド、ビス(イソシアナトエチル)スルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)スルフィド、ビス(イソシアナトヘキシル)スルフィド、ビス(イソシアナトメチル)スルホン、ビス(イソシアナトメチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトエチル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトプロピル)ジスルフィド、ビス(イソシアナトメチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)メタン、ビス(イソシアナトメチルチオ)エタン、ビス(イソシアナトエチルチオ)エタン、1,5−ジイソシアナト−2−イソシアナトメチル−3−チアペンタン、1,2,3−トリス(イソシアナトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(イソシアナトエチルチオ)プロパン、3,5−ジチア−1,2,6,7−ヘプタンテトライソシアナート、2,6−ジイソシアナトメチル−3,5−ジチア−1,7−ヘプタンジイソシアナート、2,5−ジイソシアナートメチルチオフェン、4−イソシアナトエチルチオ−2,6−ジチア−1,8−オクタンジイソシアナート等の含硫脂肪族ポリイソシアナート化合物;
2−イソシアナトフェニル−4−イソシアナトフェニルスルフィド、ビス(4−イソシアナトフェニル)スルフィド、ビス(4−イソシアナトメチルフェニル)スルフィドなどの芳香族スルフィド系ポリイソシアナート化合物;
ビス(4−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(2−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(3−メチル−6−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メチル−5−イソシアナトフェニル)ジスルフィド、ビス(4−メトキシ−3−イソシアナトフェニル)ジスルフィド等の芳香族ジスルフィド系ポリイソシアナート化合物;
2,5−ジイソシアナトテトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナトメチルテトラヒドロチオフェン、3,4−ジイソシナトメチルテトラヒドロチオフェン、2,5−ジイソシアナト−1,4−ジチアン、2,5−ジイソシアナトメチル−1,4−ジチアン、4,5−ジイソシアナト−1,3−ジチオラン、4,5−ビス(イソシアナトメチル)−1,3−ジチオラン、4,5−ジイソシアナトメチル−2−メチル−1,3−ジチオラン等の含硫脂環族ポリイソシアナート化合物;
1,2−ジイソチオシアナトエタン、1,6−ジイソチオシアナトヘキサン等の脂肪族ポリイソチオシアナート化合物;
シクロヘキサンジイソチオシアナート等の脂環族ポリイソチオシアナート化合物;
1,2−ジイソチオシアナトベンゼン、1,3−ジイソチオシアナトベンゼン、1,4−ジイソチオシアナトベンゼン、2,4−ジイソチオシアナトトルエン、2,5−ジイソチオシアナト−m−キシレン、4,4'−メチレンビス(フェニルイソチオシアナート)、4,4'−メチレンビス(2−メチルフェニルイソチオシアナート)、4,4'−メチレンビス(3−メチルフェニルイソチオシアナート)、4,4'−ジイソチオシアナトベンゾフェノン、4,4'−ジイソチオシアナト−3,3'−ジメチルベンゾフェノン、ビス(4−イソチオシアナトフェニル)エーテル等の芳香族ポリイソチオシアナート化合物;
さらには、1,3−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、1,4−ベンゼンジカルボニルジイソチオシアナート、(2,2−ピリジン)−4,4−ジカルボニルジイソチオシアナート等のカルボニルポリイソチオシアナート化合物、チオビス(3−イソチオシアナトプロパン)、チオビス(2−イソチオシアナトエタン)、ジチオビス(2−イソチオシアナトエタン)等の含硫脂肪族ポリイソチオシアナート化合物;
1−イソチオシアナト−4−[(2−イソチオシアナト)スルホニル]ベンゼン、チオビス(4−イソチオシアナトベンゼン)、スルホニル(4−イソチオシアナトベンゼン)、ジチオビス(4−イソチオシアナトベンゼン)等の含硫芳香族ポリイソチオシアナート化合物、2,5−ジイソチオシアナトチオフェン、2,5−ジイソチオシアナト−1,4−ジチアン等の含硫脂環族ポリイソチオシアナート化合物;
1−イソシアナト−6−イソチオシアナトヘキサン、1−イソシアナト−4−イソチオシアナトシクロヘキサン、1−イソシアナト−4−イソチオシアナトベンゼン、4−メチル−3−イソシアナト−1−イソチオシアナトベンゼン、2−イソシアナト−4,6−ジイソチオシアナト−1,3,5−トリアジン、4−イソシアナトフェニル−4−イソチオシアナトフェニルスルフィド、2−イソシアナトエチル−2−イソチオシアナトエチルジスルフィド等のイソシアナト基とイソチオシアナト基を有する化合物等が挙げられる。
【0034】
さらに、これらの塩素置換体、臭素置換体等のハロゲン置換体、アルキル置換体、アルコキシ置換体、ニトロ置換体や多価アルコールとのプレポリマー型変性体、カルボジイミド変性体、ウレア変性体、ビュレット変性体、ダイマー化あるいはトリマー化反応生成物等も使用できる。これらの化合物は単独または2種以上を混合して使用してもよい。
【0035】
(ポリ)チオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物の使用割合は、特に限定されないが、通常、モル比がSH基/NCO基=0.3〜2.0の範囲内、好ましくは0.7〜2.0の範囲内であり、さらに好ましくは、0.7〜1.3の範囲内である。使用割合が上記範囲内であると、プラスチックレンズ等の光学材料および透明材料として求められる屈折率、耐熱性などの各性能をバランスよく満たすことが可能となる。
【0036】
本発明のポリウレタン系樹脂の諸物性、操作性、および重合反応性等を改良する目的で、ウレタン樹脂を形成するエステル化合物とイソ(チオ)シアナート化合物に加えて、その他の物質を加えてもよい。例えば、ウレタン形成原料に加えて、アミン等に代表される活性水素化合物、エポキシ化合物、オレフィン化合物、カーボネート化合物、エステル化合物、金属、金属酸化物、有機金属化合物、無機物等の1種または2種以上を加えても良い。
【0037】
また、目的に応じて、公知の成形法と同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油溶染料、充填剤、離型剤、ブルーイング剤などの種々の物質を添加してもよい。所望の反応速度に調整するために、チオカルバミン酸S−アルキルエステル、またはポリウレタン系樹脂の製造に用いられる公知の反応触媒を適宜に添加してもよい。本発明のポリウレタン系樹脂からなるレンズは通常、注型重合により得られる。
【0038】
具体的には、本発明の製造方法により得られた(ポリ)チオール化合物と、ポリイソ(チオ)シアナート化合物とを混合し、本発明の重合性組成物を含む混合液が得られる。この混合液を必要に応じ、適当な方法で脱泡を行った後、モールド中に注入し、通常、低温から高温へ徐々に加熱し重合させる。
【0039】
このようにして、本発明の重合性組成物を硬化させて得られる本発明のポリウレタン系樹脂は、高屈折率で低分散であり、耐熱性、耐久性に優れ、軽量で耐衝撃性に優れた特徴を有しており、さらには白濁の発生が抑制されており、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学材料素材として好適である。
【0040】
また、本発明のポリウレタン系樹脂を用いて得られるレンズは、必要に応じ反射防止、高硬度付与、耐磨耗性向上、耐薬品性向上、防雲性付与、あるいはファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理、調光処理等の物理的、化学的処理を施してもよい。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。用いたチオ尿素の分析、および得られる(ポリ)チオール化合物および重合して得られるポリウレタン系樹脂の分析は以下の方法で行った。
【0042】
・チオ尿素中のカルシウム含有量:チオ尿素を水に溶解させ、水溶液とし、その後にイオンクロマトグラフ法により測定した。
・ポリチオールの色相(APHA):得られた(ポリ)チオール化合物の色相を評価する分析項目としてAPHAを採用した。APHAは、JIS K 0071−1に従って測定した。具体的には、APHAは、白金およびコバルトの試薬を溶解して調製した標準液を用い、試料の色と同等の濃さの標準液稀釈液を比較により求めた。その「度数」を測定値とした。この度数は小さいほど色相が良好である。
・ポリチオールの色相(Y.I):さらに詳細に色相を評価する分析項目としてイエローインデックス(Y.I)を採用した。Y.Iは、MINOLTA製色彩色差計CT−210を用いて測定した。まず光路長20mmのセルCT−A20に蒸留水を入れて、Y=100.00、x=0.3101、y=0.3162として白色校正を行った。その後、同じセルに試料を入れて、色彩測定を行った。測定結果であるxとyの値をもとに次式によりY.Iを算出した。
Y.I=(234×x+106×y+106)/y (1)
このY.I値をポリチオールの色相の数値とし、数値が高いほど、着色度合いが大きいことを表す。
液体であるポリチオールを測定する場合は、厚さ10mmのセルに入れ、測定を行った。
・ポリウレタン系樹脂の色相(Y.I):MINOLTA製色彩色差計CT−210を用いて、ポリウレタン系樹脂から得られるプラスチックレンズのY.Iを測定した。厚さ9mm、φ75mmのプラスチックレンズの円形平板を作成後に測定を行い、色度座標x、yを測定した。測定結果であるxとyの値を元に上記式(1)によりY.Iを算出した。
・ポリウレタン系樹脂の失透度:ポリウレタン系樹脂を含むプラスチックレンズの透明度を評価する分析項目として失透度を採用した。厚さ9mm、φ75mmの円形平板のレンズを作成する。次に、レンズ板に光源(HAYASHI製Luminar Ace LA−150A)を照射し、濃淡画像装置で測定を行う。捉えた画像を濃淡画像処理により数値化し、失透度を得る。失透度が、30以下の場合を(○)、30を超える場合を(×)とした。
【0043】
(チオ尿素中のカルシウム含有量低減化)
チオ尿素中のカルシウム(Ca)含有量は、以下の手順により低減させた。
攪拌機、還流冷却水分分離器、窒素ガスパージ管、および温度計を取り付けた2リットル4つ口反応フラスコ内に、蒸留水1530重量部、1.5重量%のCaを含む純度98.2%のチオ尿素470.0重量部を装入した。40℃に昇温し、不溶解物を濾過により除去した。その後、濾液を5℃に冷却させてチオ尿素を析出させ、3時間同温度で晶析せしめた。濾過してチオ尿素を取り出し、40℃、700Paにて減圧乾燥させ、Caの含有量が0.07重量%のチオ尿素368.6gを得た(実施例3)。
【0044】
また、他の実施例および比較例においても、上述と同様の方法を用いて、晶析時間を適宜調整することにより、種々のCa含有量を有するチオ尿素を得た。
【0045】
[実施例1]
(1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とする(ポリ)チオール化合物の合成)
攪拌機、還流冷却水分分離器、窒素ガスパージ管、および温度計を取り付けた2リットル4つ口反応フラスコ内に、2−メルカプトエタノール169重量部(2.16mol)、水76.0重量部を装入した。30℃にて、47重量%の水酸化ナトリウム水溶液91.9重量部(1.08mol)を30分かけて滴下装入した後、エピクロルヒドリン99.9重量部(1.08mol)を同温度にて3時間かけて滴下装入し、1時間熟成を行った。次に、35重量%塩酸水450.0重量部(4.32mol)、予め再結晶して得たカルシウムの含有量が0.05重量%、純度99.90%のチオ尿素246.9重量部(3.24mol)を装入し、110℃還流下にて3時間熟成して、チウロニウム塩化を行った。60℃に冷却した後、トルエン450.0重量部、25重量%のアンモニア水溶液331.1重量部(4.86mol)を装入し、加水分解を行い、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオールのトルエン溶液を得た。該トルエン溶液を、酸洗浄および水洗浄を行い、加熱減圧下でトルエンおよび微量の水分を除去した。その後、濾過して1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオール268.7重量部を得た。得られたポリチオールのAPHAは10であり、Y.Iは0.70であった。
【0046】
(プラスチックレンズの製造)
m−キシリレンジイソシアナート52重量部、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.015重量部、内部離型剤として「ZelecUN」(商品名、stepan社製、酸性リン酸アルキルエステル)0.10重量部、紫外線吸収剤として「バイオソーブ583」(商品名、共同薬品社製)0.05重量部を、20℃にて混合溶解させた。混合溶解を確認した後、引き続きこの混合溶解した液へ、上記で得られた1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオール48重量部を装入混合し、混合均一液とした。この均一液を600Paにて1時間脱泡を行った。その後、3μmテフロン(登録商標)フィルターにて濾過を行った後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃から120℃まで徐々に昇温し、18時間で重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂をさらに120℃で3時間アニールを行った。得られた樹脂のY.Iは4.5であり、失透度は20で評価は(○)であった。評価結果を、表1に示す。
【0047】
[実施例2]
実施例1で用いたチオ尿素に代えて、予め再結晶して得たカルシウムの含有量が0.20重量%、純度99.70%のチオ尿素を用いた他は、実施例1と同様に1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオールを合成した。得られた1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオールのAPHAは10であり、Y.Iは0.81であった。このポリチオールを用いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを製造して評価した。得られたプラスチックレンズの評価結果を、表1に示す。
【0048】
[実施例3]
実施例1で用いたチオ尿素に代えて、予め再結晶して得たカルシウムの含有量が0.70重量%、純度99.20%のチオ尿素を用いた他は、実施例1と同様に1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオールを合成した。得られた1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオールのAPHAは10であり、Y.Iは0.93であった。このポリチオールを用いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを製造して評価した。得られたプラスチックレンズの評価結果を、表1に示す。
【0049】
[実施例4]
実施例1で用いたチオ尿素に代えて、予め再結晶して得たカルシウムの含有量が0.90重量%、純度99.00%のチオ尿素を用いた他は、実施例1と同様に1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオールを合成した。得られた1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオールのAPHAは10であり、Y.Iは0.95であった。このポリチオールを用いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを製造して評価した。得られたプラスチックレンズの評価結果を、表1に示す。
【0050】
[実施例5]
(4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオールの合成)
攪拌機、還流冷却水分分離器、窒素ガスパージ管、および温度計を取り付けた2リットル4つ口反応フラスコ内に、2−メルカプトエタノール89.1重量部(1.14mol)、水44.8重量部、47重量%水酸化ナトリウム水溶液0.4重量部を装入した。10℃にて、エピクロルヒドリン107.3重量部(1.16mol)にて4時間かけて滴下装入し、1時間熟成を行った。次に、16.9重量%の硫化ナトリウム水溶液261.6重量部(0.58mol)を、25℃にて1時間かけて滴下装入し、同温度にて3時間熟成を行った。次に、予め再結晶して得たカルシウムの含有量が0.05重量%、純度99.90%のチオ尿素211.8重量部(2.78mol)を装入し、110℃還流下にて3時間熟成して、チウロニウム塩化を行った。60℃に冷却した後、トルエン360.0重量部、25重量%のアンモニア水溶液347.4重量部(5.10mol)を装入し、加水分解を行い、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオールのトルエン溶液を得た。該トルエン溶液を、酸洗浄および水洗浄を行い、加熱減圧下でトルエンおよび微量の水分を除去した。その後、濾過して4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオール198.8重量部を得た。得られたポリチオールのAPHAは10であり、Y.Iは1.20であった。
【0051】
(プラスチックレンズの製造)
m−キシリレンジイソシアナート50.7重量部、硬化触媒としてジブチル錫ジクロライド0.01重量部、内部離型剤として「ZelecUN」(商品名、stepan社製、酸性リン酸アルキルエステル)0.10重量部、紫外線吸収剤として「バイオソーブ583」(商品名、共同薬品社製)0.05重量部を、20℃にて混合溶解させた。上記で得られた4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオール49.3重量部を装入混合し、混合均一液とした。この均一液を600Paにて1時間脱泡を行った。その後、3μmテフロン(登録商標)フィルターにて濾過を行った後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型をオーブンへ投入し、10℃から120℃まで徐々に昇温し、18時間で重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。得られた樹脂を更に120℃で3時間アニールを行った。得られた樹脂のY.Iは5.0であり、失透度は23であり、評価は(○)であった。
【0052】
[実施例6]
実施例5で用いたチオ尿素に代えて、実施例2で用いたチオ尿素を用いた他は、実施例5と同様に4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオールを合成した。得られたポリチオールのAPHAは10であり、Y.Iは1.25であった。このポリチオールを用いて、実施例5と同様にプラスチックレンズを製造して評価した。得られたプラスチックレンズの評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例7]
実施例5で用いたチオ尿素に代えて、実施例3で用いたチオ尿素を用いた他は、実施例5と同様に4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオールを合成した。得られたポリチオールのAPHAは10であり、Y.Iは1.33であった。このポリチオールを用いて、実施例4と同様にプラスチックレンズを製造して評価した。得られたプラスチックレンズの評価結果を表1に示す。
【0054】
[実施例8]
実施例5で用いたチオ尿素に代えて、実施例4で用いたチオ尿素を用いた他は、実施例5と同様に4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオールを合成した。得られたポリチオールのAPHAは10であり、Y.Iは1.38であった。このポリチオールを用いて、実施例4と同様にプラスチックレンズを製造して評価した。得られたプラスチックレンズの評価結果を表1に示す。
【0055】
[比較例1]
実施例1で用いたチオ尿素に代えて、カルシウムの含有量が1.20重量%、純度98.70%のチオ尿素を用いた他は、実施例1と同様に1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパンを主成分とするポリチオールを合成した。得られたポリチオールのAPHAは20であり、Y.Iは2.01であった。このポリチオールを用いて、実施例1と同様にプラスチックレンズを製造して評価した。得られたプラスチックレンズの評価結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
実施例5で用いたチオ尿素に代えて、カルシウムの含有量が1.20重量%、純度98.70%のチオ尿素を用いた他は、実施例5と同様に4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンを主成分とするポリチオールを合成した。得られたポリチオールのAPHAは20であり、Y.Iは2.10であった。このポリチオールを用いて、実施例5と同様にプラスチックレンズを製造して評価した。得られたプラスチックレンズの評価結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
以上の結果、カルシウムの含有量が1.0重量%以下のチオ尿素を用いて得られる(ポリ)チオール化合物は、色相に優れており、この(ポリ)チオール化合物を用いて作製されたプラスチックレンズは色相および透明性においても優れていた。これに対し、比較例1および2にてカルシウムの含有量が1重量%を超えるチオ尿素を用いて得られる(ポリ)チオール化合物は色相が悪化し、得られるプラスチックレンズも色相および透明性において悪化していた。実施例および比較例で得られた樹脂は、単独で見るといずれも無色透明であったが、すべての樹脂を比較して観察すると、比較例の樹脂は実施例の樹脂に比べて僅かに黄色く観察された。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によって、着色の抑制された無色透明の光学材料用(ポリ)チオール化合物、ならびに着色および白濁の抑制された無色透明の(チオ)ウレタン樹脂の製造が可能となる。本発明は、光学材料および透明材料の中でも特に、眼鏡用のプラスチックレンズの安定的な提供に大きく寄与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機(ポリ)ハロゲン化合物または(ポリ)アルコール化合物とチオ尿素とを反応させてイソチウロニウム塩を生成し、得られたイソチウロニウム塩を加水分解して(ポリ)チオール化合物を製造する方法において、前記チオ尿素中のカルシウムの含有量が、1.0重量%以下である、光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法。
【請求項2】
前記(ポリ)チオール化合物が、チオール基以外に硫黄原子を有する、請求項1記載の光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法。
【請求項3】
チオール基以外に硫黄原子を有する前記(ポリ)チオール化合物が、1,2−ビス[(2−メルカプトエチル)チオ]−3−メルカプトプロパン、4,8−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、4,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン、および5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカンからなる群より選択される一種または二種以上を主成分とする、請求項2記載の光学材料用(ポリ)チオール化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の方法により製造された光学材料用(ポリ)チオール化合物とポリイソ(チオ)シアナート化合物とを含む重合性組成物。
【請求項5】
請求項4記載の重合性組成物を硬化させて得られる樹脂。
【請求項6】
請求項5記載の樹脂を含む光学材料。
【請求項7】
請求項5記載の樹脂を含むレンズ。

【公開番号】特開2013−10772(P2013−10772A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−179707(P2012−179707)
【出願日】平成24年8月14日(2012.8.14)
【分割の表示】特願2008−514376(P2008−514376)の分割
【原出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】