説明

光学樹脂および光学樹脂層の製造方法、光学樹脂用組成物、ならびに画像表示装置

【課題】前面板と画像表示部とを備えた画像表示装置において、前記前面板と前記画像表示部との間に挟持される、視認性および耐衝撃性を向上できると共に非流動性を備えた光学樹脂を提供する。
【解決手段】光学樹脂20は、(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が1000以上であり、前記数平均分子量を1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値が500以上である化合物と、(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.1〜20Pa・sであり、数平均分子量が500〜20000である化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有し、(B)化合物100質量部に対して、(A)化合物を5〜50質量部含有する光学樹脂用組成物を硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学樹脂および光学樹脂層の製造方法、光学樹脂用組成物、ならびに画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LCDや3Dディスプレイ、タッチパネル等の画像表示装置において、液晶パネル等の画像表示部の保護およびデザイン性向上等の観点から画像表示部に前面板(透過性の保護部)を設けるケースが増大している。従来の画像表示装置の場合では、外部からの衝撃に対して画像表示部を保護するために、前面板と画像表示部との間に約1mm程度の隙間(以下、「エアギャップ層」ともいう)が設けられている。
【0003】
しかしながら、このような画像表示装置は、画像表示部のガラス基板、エアギャップ層、前面板(ガラス板またはアクリル板)の順に屈折率が異なる材料が積み重ねられているため、光の一部が反射されて光の散乱が起こりやすかった。その結果、光の取り出し効率やコントラスト比の低下という問題が生じていた。また、エアギャップ層では、外部からの衝撃に対する強度が不十分であり、これにより画像表示部が損傷するという問題が生じていた。
【0004】
このような問題を解決するために、前面板と画像表示部との隙間(エアギャップ層)に樹脂を充填することが提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−282000号公報
【特許文献2】特開2009−186957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば大面積を有するLCDにおいて樹脂組成物を充填し硬化させた場合、樹脂が硬化収縮する際の応力によって画像表示部に変形が生じて、表示不良等が発生することがあった。
【0007】
また、樹脂が硬化収縮することで、樹脂が前面板と画像表示部との隙間全面に行き渡らないという問題があった。樹脂を前面板と画像表示部との隙間全面に行き渡らせるためには、硬化させる前の樹脂組成物に非硬化成分を添加して流動性を付与する方法が考えられる。ところが、かかる非硬化成分は通常流動性を有しているため、硬化後の樹脂が不安定となり長期間の使用により視認性が低下することがあった。
【0008】
そこで、本発明に係る幾つかの態様は、前記課題を解決することで、前面板と画像表示部とを備えた画像表示装置において、前記前面板と前記画像表示部との間に挟持される、視認性および耐衝撃性を向上できると共に非流動性を備えた光学樹脂ならびに光学樹脂層の製造方法、あるいは該光学樹脂を形成するための光学樹脂用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様または適用例として実現することができる。
【0010】
[適用例1]
本発明に係る光学樹脂の一態様は、
画像表示装置を構成する前面板と画像表示部との間に使用される光学樹脂であって、
(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が1000以上であり、前記数平均分子量を1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値が500以上である化合物と、
(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.1Pa・s以上20Pa・s以下であり、数平均分子量が500以上20000以下である化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含有し、
前記(B)化合物100質量部に対して、前記(A)化合物を5質量部以上50質量部以下含有する光学樹脂用組成物を硬化させてなることを特徴とする。
【0011】
[適用例2]
適用例1の光学樹脂において、
前記(B)化合物が、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびポリプロピレングリコールから選択される少なくとも1種であることができる。
【0012】
[適用例3]
適用例1または適用例2の光学樹脂において、
前記(B)化合物が、少なくとも1個の末端に水酸基を有することができる。
【0013】
[適用例4]
適用例1ないし適用例3のいずれか一例の光学樹脂において、
前記(C)光重合開始剤は、380nm以上500nm以下に極大吸収波長を有する化合物を含むことができる。
【0014】
[適用例5]
本発明に係る光学樹脂用組成物の一態様は、
(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が1000以上であり、前記数平均分子量を1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値が500以上である化合物と、
(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.1Pa・s以上20Pa・s以下であり、数平均分子量が500以上20000以下である化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含有し、
前記(B)化合物100質量部に対して、前記(A)化合物を5質量部以上50質量部以下含有することを特徴とする。
【0015】
[適用例6]
適用例5の光学樹脂用組成物において、
前記(B)化合物が、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびポリプロピレングリコールから選択される少なくとも1種であることができる。
【0016】
[適用例7]
適用例5または適用例6の光学樹脂用組成物において、
前記(B)化合物が、少なくとも1個の末端に水酸基を有することができる。
【0017】
[適用例8]
適用例5ないし適用例7のいずれか一例の光学樹脂用組成物において、
前記(C)光重合開始剤は、380nm以上500nm以下に極大吸収波長を有する化合物を含むことができる。
【0018】
[適用例9]
本発明に係る光学樹脂層の製造方法の一態様は、
画像表示装置を構成する前面板と画像表示部との間に使用される光学樹脂層の製造方法であって、適用例8の光学樹脂用組成物を前記前面板に塗布し、それを前記画像表示部と貼り合わせた後、前記前面板方向から380nm以上500nm以下の波長領域を含む光を照射することを特徴とする。
【0019】
[適用例10]
本発明に係る画像表示装置の一態様は、
画像表示部と、前記画像表示部の上方に配置された前面板と、を備えた画像表示装置であって、
前記画像表示部と前記前面板との間に適用例1ないし適用例4のいずれか一例の光学樹脂を挟持させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る光学樹脂は、透明性および貯蔵弾性率が良好な弾性体であり、かつ硬化収縮率が低いという特徴を有している。そのため、前面板と画像表示部とを備えた画像表示装置において、本発明に係る光学樹脂を前記前面板と前記画像表示部との間に挟持させることにより、画像表示装置の視認性および耐衝撃性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態に係る光学樹脂を備えた画像表示装置を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明は、下記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変型例も含む。
【0023】
1.光学樹脂用組成物
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物は、(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が1000以上であり、前記数平均分子量を1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値が500以上である化合物と、(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.1Pa・s以上20Pa・s以下であり、数平均分子量が500以上20000以下である化合物と、(C)光重合開始剤と、を含有し、前記(B)化合物100質量部に対して、前記(A)化合物を5質量部以上50質量部以下含有することを特徴とする。
【0024】
以下、本実施の形態に係る光学樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。なお、以下の記載において(A)ないし(D)の各材料を、それぞれ(A)成分ないし(D)成分と省略して記載することがある。
【0025】
1.1.(A)成分
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物は、(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が1000以上であり、前記数平均分子量を1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値が500以上である化合物を含有する。(A)成分の機能の一つとしては、本実施の形態に係る光学樹脂用組成物に対して光を照射したときに(A)成分同士が網目構造を形成することが挙げられる。
【0026】
(A)成分の数平均分子量を(A)成分1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値は500以上である。(A)成分の数平均分子量を(A)成分1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値が500未満の場合、形成される網目構造が複雑に絡み合うことにより光学樹脂が硬くなりすぎることがある。(A)成分の数平均分子量を(A)成分1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値の上限は10000以下が好ましい。当該値が10000を超えると、本実施の形態に係る光学樹脂用組成物に対して光を照射しても網目構造を形成できない場合がある。ここで、(A)成分の数平均分子量は、好ましくは1000以上20000以下、より好ましくは1000以上15000以下である。数平均分子量が1000未満であると、硬化させたときに硬度が上がりすぎるおそれがあり、分子量が20000を超えると塗布性が悪化するおそれがある。なお、本発明において、(A)成分の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量を意味する。
【0027】
(A)成分としては、例えば、ポリプロピレングリコール末端アクリレート(日油株式会社、商品名「ブレンマー(登録商標)PPG−800」)、ポリイソプレン末端アクリレート(株式会社クラレ製、商品名「UC−102」)、ポリイソプレン末端メタクリレート(株式会社クラレ製、商品名「UC−203」)ポリブタジエン末端アクリレート(大阪有機工業株式会社製、商品名「BAC−45」)、ウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
前記ウレタン(メタ)アクリレートは、ポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることにより製造される。すなわち、ジイソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基および水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基と、をそれぞれ反応させることにより製造される。かかる反応としては、例えば、ポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを一括に仕込んで反応させる方法;ポリオールおよびジイソシアネートを反応させ、次いで水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させる方法;ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させ、次いでポリオールを反応させ、再び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させる方法等が挙げられる。
【0029】
ポリオールとしては、例えば、水酸基を有する液状ゴム、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。これらのポリオールにおける各構造単位の配列状態は特に制限されず、ランダム重合、ブロック重合、グラフト重合のいずれであってもよい。
【0030】
これらのポリオールについてさらに詳しく述べると、液状ゴムとしては、ポリイソプレンに水酸基を導入したものやポリブタジエンに水酸基を導入したものが挙げられ、水酸基を有する液状ゴムとしては、出光興産株式会社製のPoli ip、Poly bd(R−45HT、R−15HT);日本曹達株式会社製のG−1000、G−2000、G−3000;株式会社クラレ製のLIR−290等を市販品として入手することができる。
【0031】
脂肪族ポリエーテルジオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコール、ポリヘプタメチレングリコール、ポリデカメチレングリコール、あるいは2種以上のイオン重合性環状化合物を開環共重合させて得られるポリエーテルジオール等が挙げられる。前記イオン重合性環状化合物としては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテン−1−オキシド、イソブテンオキシド、3,3−ビスクロロメチルオキセタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン、テトラオキサン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エピクロルヒドリン、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルカーボネート、ブタジエンモノオキシド、イソプレンモノオキシド、ビニルオキセタン、ビニルテトラヒドロフラン、ビニルシクロヘキセンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、安息香酸グリシジルエステル等の環状エーテル類が挙げられる。また、前記イオン重合性環状化合物と、エチレンイミン等の環状イミン類、β−プロピオラクトン、グリコール酸ラクチド等の環状ラクトン酸、あるいはジメチルシクロポリシロキサン類とを開環共重合させたポリエーテルジオールを使用することもできる。前記2種以上のイオン重合性環状化合物の具体的な組み合わせとしては、例えば、テトラヒドロフランとプロピレンオキシド、テトラヒドロフランと2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランと3−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランとエチレンオキシド、プロピレンオキシドとエチレンオキシド、ブテン−1−オキシドとエチレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブテン−1−オキシド、エチレンオキシドの三元重合体等が挙げられる。これらのイオン重合性環状化合物の開環共重合体はランダムに結合していてもよいし、ブロック状の結合をしていてもよい。これらの脂肪族ポリエーテルジオールは、PTMG650、PTMG1000、PTMG2000(以上、三菱化学株式会社製);PPG400、PPG1000、PPG2000、PPG3000、PPG4000、PPG8000、PPG10000、EXCENOL720、1020、2020(以上、旭硝子株式会社製);PEG1000、ユニセーフDC1100、DC1800(以上、日油株式会社製);PPTG2000、PPTG1000、PTG400、PTGL2000(以上、保土ヶ谷化学株式会社製);Z−3001−4、Z−3001−5、PBG2000A、PBG2000B(以上、第一工業製薬株式会社製)等の市販品としても入手することができる。
【0032】
脂環式ポリエーテルジオールとしては、例えば、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、水添ビスフェノールFのアルキレンオキサイド付加ジオール、ハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、ナフトハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、アントラハイドロキノンのアルキレンオキサイド付加ジオール、1,4−シクロヘキサンジオールおよびそのアルキレンオキサイド付加ジオール、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ペンタシクロペンタデカンジオール、ペンタシクロペンタデカンジメタノール、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン等が挙げられ、これらの中でも、ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加ジオール、トリシクロデカンジメタノールが好ましい。これらの脂環式ポリエーテルジオールは、ユニオールDA400、DA700、DA1000、DA1500、DB400、DB800(以上、日本油脂株式会社製);トリシクロデカンジメタノール(三菱化学株式会社製)等の市販品として入手することもできる。
【0033】
ポリエステルジオールとしては、二価アルコールと多塩基酸とを反応させて得られるポリエステルジオール等が挙げられる。前記二価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール等が挙げられる。前記多塩基酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸、セバシン酸等が挙げられる。このようなポリエステルジオールは、クラポールP−2010、PMIPA、PKA−A、PKA−A2、PNA−2000(以上、株式会社クラレ製)等の市販品として入手することもできる。
【0034】
ポリカーボネートジオールとしては、例えば、ポリテトラヒドロフランのポリカーボネート、1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネート等が挙げられる。このようなポリカーボネートジオールは、DN−980、981、982、983(以上、日本ポリウレタン株式会社製);PC−8000(米国PPG株式会社製)、PC−THF−CD(BASF社製)等の市販品として入手することができる。
【0035】
ポリカプロラクトンジオールとしては、ε−カプロラクトンと、例えばエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、1,2−ポリブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオール等のジオールとを反応させて得られるポリカプロラクトンジオールが挙げられる。このようなポリカプロラクトンジオールとしては、プラクセル205、205AL、212、212AL、220、220AL(以上、ダイセル化学工業株式会社製)等の市販品として入手することができる。
【0036】
上記以外のポリオールを併用してもよい。このようなポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジシクロペンタジエンのジメチロール化合物、トリシクロデカンジメタノール、β−メチル−δ−バレロラクトン、ヒドロキシ末端ポリブタジエン、ヒドロキシ末端水添ポリブタジエン、ヒマシ油変性ポリオール、ポリジメチルシロキサンの末端ジオール化合物、ポリジメチルシロキサンカルビトール変性ポリオール等が挙げられる。
【0037】
また、上記したようなポリオールを併用する以外にも、ポリオ−ルと共にジアミンを併用することもできる。このようなジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、パラフェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン等のジアミンやヘテロ原子を含むジアミン、ポリエーテルジアミン等が挙げられる。
【0038】
ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルフェニレンジイソシアネート、4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアネートエチル)フマレート、6−イソプロピル−1,3−フェニルジイソシアネート、4−ジフェニルプロパンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,5(または6)-ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン等が挙げられる。これらの中でも、2,4−トリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)が好ましい。これらのジイソシアネートは、1種単独あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリロイルフォスフェート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、下記一般式(1)または下記一般式(2)
【化1】

【化2】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、nは1〜15の数を表す。)
で表される(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、アルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物と、(メタ)アクリル酸との付加反応により得られる化合物も使用することができる。これらの中でも、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。これらの水酸基含有(メタ)アクリレート化合物は、1種単独あるいは2種類以上組み合わせて用いることができる。
【0040】
ポリオール、ジイソシアネートおよび水酸基含有(メタ)アクリレートの使用割合は、ポリオールに含まれる全水酸基をウレタン化するのではなく、ポリオール1分子鎖中の1ないし2つの水酸基をジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が1〜2当量、水酸基含有(メタ)アクリレートの水酸基が0.2〜1.5当量となるようにするのが好ましい。
【0041】
これらの化合物の反応においては、ナフテン酸銅、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸亜鉛、ラウリル酸ジn−ブチルスズ、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)等の有機金属化合物;トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、2,6,7−トリメチル−1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン等のアミン化合物等の公知のウレタン化触媒を、反応物の総量100質量部に対して0.01〜1質量部用いることが好ましい。また、反応温度は、通常10〜90℃、特に30〜80℃で行うのが好ましい。
【0042】
3個以上の水酸基を有するポリオールを用いてウレタン(メタ)アクリレートを調製する場合には、水酸基含有(メタ)アクリレートの一部をイソシアネート基に付加しうる官能基を持った化合物で置き換えて用いることもできる。このような化合物としては、例えば、γ−メルカプトトリメトキシシラン、γ−アミノトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの化合物を使用することにより、ガラスやアクリル樹脂等からなる前面板への密着性を高めることができる。
【0043】
また、ジイソシアネート1モルに対して水酸基含有(メタ)アクリレート化合物2モルを反応させたウレタン(メタ)アクリレートを使用してもよい。かかるウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートと2,5または6−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの反応物、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとイソフォロンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートと2,4−トリレンジイソシアネートの反応物、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとイソフォロンジイソシアネートの反応物が挙げられる。
【0044】
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物における(A)成分の含有量は、後述する(B)成分100質量部に対して5質量部以上50質量部以下であり、10質量部以上40質量部以下であることが好ましい。(A)成分と(B)成分の含有量の関係が前記範囲であると、視認性および耐衝撃性を向上できると共に、非流動性を備えた光学樹脂を得ることができる。
【0045】
なお、本実施の形態に係る光学樹脂用組成物に後述する(D)成分が含まれる場合には、(A)成分と(D)成分との合計量を100質量部としたときに、(A)成分の含有量が30質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましい。(A)成分と(D)成分の含有量の関係が前記範囲であると、視認性および耐衝撃性がより良好な光学樹脂が得られる。
【0046】
1.2.(B)成分
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物は、(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.1Pa・s以上20Pa・s以下であり、数平均分子量が500以上20000以下である化合物を含有する。(B)成分は(メタ)アクリロイル基を有しないため、本実施の形態に係る光学樹脂用組成物に光を照射しても(A)成分と(B)成分とが共重合して網目構造を形成することはない。(B)成分の主な機能としては、(A)成分が形成した網目構造に入り込み、光学樹脂に接着性および衝撃吸収能を付与することが挙げられる。また、(B)成分の他の機能としては、(1)光学樹脂用組成物全体の(メタ)アクリロイル基濃度が低くなるため硬化収縮率が低くなること、(2)光学樹脂用組成物の粘度が(B)成分を添加することにより低くなるため塗布性が向上すること、(3)(A)成分との相溶性が良好なため光学樹脂用組成物を無溶剤化できることが挙げられる。そのため、(B)成分に要求される特性は、室温(25℃)で流動性を有することであり、さらに塗布性、粘着性、耐衝撃性の観点から、その粘度が0.1Pa・s以上20Pa・s以下であることが必要であり、0.15Pa・s以上15Pa・s以下であることが好ましい。なお、本発明において粘度は、B型粘度計で測定した25℃での値をいう。
【0047】
(B)成分としては、有機成分であっても無機成分であってもよく、例えば有機成分としては、前記、脂肪族ポリエーテルジオール、脂環式ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリカプロラクトンジオール等の各種ジオール化合物、およびそれらの水酸基をアクリル基等で封止した化合物、液状ポリオレフィン、ならびに液状ゴムが挙げられる。これらの中でも、前述した機能を十分に発揮させる観点から、水酸基を両末端に有するポリブタジエン、水酸基を両末端に有するポリイソプレンおよびポリプロピレングリコールから選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、高屈折率を示し、硬化収縮率をより低減させる観点から、水酸基を両末端に有するポリイソプレンを用いることが特に好ましい。無機成分としては、例えばシリコーンオイル等が挙げられる。
【0048】
(B)成分の数平均分子量は、500以上20000以下であり、好ましくは500以上15000以下であり、より好ましくは800以上10000以下である。(B)成分の数平均分子量が500未満では、流動性が高すぎるためブリードアウトしやすくなり、数平均分子量が20000を超えると塗布性が悪化するおそれがある。なお、本発明において、(B)成分の数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した、数平均分子量を意味する。
【0049】
(B)成分としては、例えば、水酸基末端液状ポリブタジエン(出光興産株式会社製、商品名「Poly bd(登録商標)」)、水酸基末端液状ポリイソプレン(出光興産株式会社製、商品名「Poly ip(登録商標)」)、ポリプロピレングリコール(旭硝子ウレタン株式会社製、例えばPPG−400、1000、2000、3000、EXCENOL720、1020、2020」)、液状ゴム(株式会社クラレ製、商品名「LIR−30」、「LIR−50」、「LBR−307」、「LBR−305」、「LBR−300」、日本曹達株式会社製、商品名「B−1000」、「B−2000」、「B−3000」、三菱化学株式会社製、商品名「ポリエーテルH」)、液状ポリオレフィン化合物(三井化学株式会社製、「ルーカント(登録商標)H−10」、「H−20」、「H−40」、「H−100」、「H−600」、「H−2000」)等の市販品として入手することができる。
【0050】
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物における(A)成分および(B)成分の含有量の合計は、組成物全体を100質量%として、70〜99.5質量%が好ましく、80〜99質量%がより好ましい。(A)成分および(B)成分の含有量の合計が、上記範囲内であることで、光学樹脂とした場合に、各性能のバランスがとれるため好ましい。
【0051】
1.3.(C)成分
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物は、(C)光重合開始剤を含有する。本実施の形態に係る光学樹脂用組成物は、光を照射することによって硬化される。ここで「光」とは、例えば、赤外線、可視光線、紫外線およびX線等の放射光を意味するが、通常では紫外線ないし可視光線領域の光が簡便に用いられる。このような光硬化反応には(C)光重合開始剤を必要とし、必要に応じて光増感剤を添加することができる。
【0052】
(C)成分としては、光照射により分解してラジカルを発生して重合を開始せしめるものであれば特に制限されず、例えば、アセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、べンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が挙げられる。なお(C)成分は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0053】
(C)成分の市販品としては、例えばIrgacure184、369、651、500、819、907、784、2959、CGI−1700、−1750、−1850、CG24−61、Darocur1116、1173、LucirinTPO、LR8893、LR8970(以上、BASF社製)、ユベクリルP36(UCB社製)等が挙げられる。
【0054】
なお、本実施の形態に係る光学樹脂用組成物に添加される(C)成分は、380nm以上500nm以下に極大吸収波長を有する光重合開始剤を含むことが好ましい。この理由について、以下に説明する。後述する光学樹脂層の製造方法では前面板方向から光を照射して光学樹脂層を形成するのであるが、380nm未満の波長を含む光を照射した場合にはその光によって後方にある画像表示部(例えば、液晶配向膜やカラーフィルター等)に悪影響を及ぼすことがある。それを防ぐために、380nm未満の波長の光をカットした光を照射することにより光学樹脂層を形成するのが望ましいとされているからである。380nm以上500nm以下に極大吸収波長を有する光重合開始剤としては、例えばLucirinTPO(BASF社製)が挙げられる。
【0055】
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物中において、(C)成分の含有量は、溶剤を除く全成分の合計を100質量%としたときに、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜10質量%の範囲内である。前記範囲で(C)成分を添加することにより、網目構造がより強固なものとなる。
【0056】
また、光増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N−メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。光増感剤の市販品としては、例えば、ユベクリルP102、103、104、105(以上、UCB社製)等が挙げられる。
【0057】
1.4.(D)(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物は、必要に応じて(D)(A)成分以外のエチレン性不飽和基を有する化合物を添加してもよい。(D)成分は、ポリマーであってもモノマーであってもよいが、硬化物である光学樹脂の物性を調節する上ではモノマーを用いる方が設計上好ましい。(D)成分をさらに添加した場合には、(A)成分と(D)成分とが共重合することによって、得られる光学樹脂の硬化性をより向上できる。(D)成分としては、(メタ)アクリロイル基またはビニル基を有する化合物(以下、「不飽和モノマー」ともいう)を使用することができる。このような不飽和モノマーとしては、以下に例示するエチレン性不飽和基を1個有するモノマー(以下、「単官能モノマー」という。)やエチレン性不飽和基を2個以上有するモノマー(以下、「多官能モノマー」という。)が挙げられる。
【0058】
単官能モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン等のビニルモノマー;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシ−2−メチルエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、4−フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、3−(2−フェニルフェニル)−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレンオキシドを反応させたp−クミルフェノールの(メタ)アクリレート、2−ブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4−ジブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2,4,6−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを複数モル変性させたフェノキシ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルホリン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシブチルビルエーテル、ラウリルビニルエーテル、セチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3―フェニルプロピルアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物;イソボルニル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3―フェニルプロピルアクリレートが好ましい。これらの(D)モノマーを添加することにより、高屈折率を有すると共に、良好な流動性を有する光学樹脂組成物が得られる。また、N−ビニル化合物を添加することにより硬化性を改善することができる。
【0059】
以上例示した単官能モノマーの市販品としては、例えば、アロニックスM101、M102、M110、M111、M113、M117、M5700、TO−1317、M120、M150、M156(以上、東亞合成株式会社製);LA、IBXA、2−MTA、HPA、ビスコート#150、#155、#158、#190、#192、#193、#220、#2000、#2100、#2150(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、ライトアクリレートBO−A、EC−A、DMP−A、THF−A、HOP−A、HOA−MPE、HOA−MPL、PO−A、P−200A、NP−4EA、NP−8EA、エポキシエステルM−600A(以上、共栄社化学株式会社製)、KAYARAD TC110S、R−564、R−128H(以上、日本化薬株式会社製)、NKエステルAMP−10G、AMP−20G(以上、新中村化学工業株式会社製)、FA−511A、512A、513A(以上、日立化成株式会社製)、PHE、CEA、PHE−2、PHE−4、BR−31、BR−31M、BR−32(以上、第一工業製薬株式会社製)、VP(BASF社製)、ACMO、DMAA、DMAPAA(以上、興人株式会社製)等が挙げられる。
【0060】
多官能モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−へキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリオキシエチル(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロイルオキシ)イソシアヌレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのポリエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの付加体であるジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルに(メタ)アクリレートを付加させたエポキシ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジビニルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートが好ましい。
【0061】
以上例示した多官能モノマーの市販品としては、例えば、ユピマーUV SA1002、SA2007(以上、三菱化学株式会社製)、ビスコート #195、#230、#215、#260、#335HP、#295、#300、#360、#700、GPT、3PA(以上、大阪有機化学工業株式会社製)、ライトアクリレート 4EG−A、9EG−A、NP−A、DCP−A、BP−4EA、BP−4PA、TMP−A、PE−3A、PE−4A、DPE−6A(以上、共栄社化学株式会社製)、KAYARAD PET−30、TMPTA、R−604、DPHA、DPCA−20、−30、−60、−120、HX−620、D−310、D−330(以上、日本化薬株式会社製)、アロニックス M208、M210、M215、M220、M240、M305、M309、M310、M315、M325、M400(以上、東亞合成株式会社製)、リポキシVR−77、VR−60、VR−90(以上、昭和高分子株式会社製)等が挙げられる。
【0062】
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物中において、(D)成分の含有量は、溶剤を除く全成分の合計を100質量%としたときに、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜15質量%の範囲内である。前記範囲で(D)成分を添加することにより、網目構造の強度を調節することができる。
【0063】
1.5.その他の添加剤
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物は、上記成分以外に必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、シランカップリング剤、塗面改良剤、熱重合禁止剤、レベリング剤、界面活性剤、着色剤、保存安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、溶剤、フィラー、老化防止剤、濡れ性改良剤等を添加してもよい。
【0064】
本実施の形態に係る硬化性組成物は、(A)成分と(B)成分との相溶性が良好であるために無溶剤化することもできるが、塗膜の厚さを調節する観点から溶剤で希釈して粘度を調節してもよい。なお、本実施の形態に係る光学樹脂組成物の粘度は、通常1000〜10000mPa・s/25℃であり、好ましくは1500〜3000mPa・s/25℃であるとよい。
【0065】
前記溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類等が挙げられる。
【0066】
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物において、必要に応じて用いられる溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の合計を100質量部としたときに、1〜10000質量部の範囲内であることが好ましい。溶剤の含有量は、塗布膜厚、光学樹脂用組成物の粘度等を考慮して適宜決定することができる。本実施の形態に係る光学樹脂用組成物が溶剤を含む場合は、塗布後に加熱処理等の溶剤除去工程を行うことが好ましい。
【0067】
1.6.光学樹脂用組成物の製造方法
本実施の形態に係る光学樹脂用組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、必要に応じて(D)成分、その他の添加剤をそれぞれ添加して、室温または加熱条件下で混合することにより調製することができる。具体的には、ミキサー、ニーダー、ボールミル、三本ロール等の混合機を用いて調製することができる。
【0068】
2.光学樹脂および光学樹脂層の製造方法
2.1.光学樹脂
本実施の形態に係る光学樹脂は、前述した光学樹脂用組成物を硬化させることにより得られる。かかる光学樹脂は、透明性および貯蔵弾性率が良好な弾性体であり、かつ硬化収縮率も低いという特徴がある。したがって、画像表示装置を構成する前面板と画像表示部との間に該光学樹脂を挟持させることによって、画像表示装置の視認性および耐衝撃性を向上させることができる。
【0069】
本実施の形態に係る光学樹脂が上記のような効果を奏するためには、厚さ100μmの場合の可視光領域の透過率が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、99%以上であることが特に好ましい。また、厚さが100μmの場合のヘイズは1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。さらに、厚さが100μmの場合のイエローインデックス(YI)は1.0以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましい。透過率、ヘイズおよびYIが前記範囲であると、画像表示装置の視認性が良好となる。
【0070】
本実施の形態に係る光学樹脂が上記のような効果を奏するためには、硬化収縮率(23℃)が0〜2%であることが好ましい。硬化収縮率が前記範囲であると、光学樹脂用組成物が硬化する際に蓄積される内部応力を緩和させることができ、光学樹脂と前面板または画像表示部との界面に歪みができることを防止できる。これにより、画像表示装置の視認性を向上させることができる。
【0071】
本実施の形態に係る光学樹脂が上記のような効果を奏するためには、貯蔵弾性率(23℃)が0〜1×10MPaであることが好ましい。貯蔵弾性率が前記範囲であると、外部からの衝撃を吸収する機能に優れ、画像表示装置の耐衝撃性を向上させることができる。
【0072】
本実施の形態に係る光学樹脂が上記のような効果を奏するためには、非流動性であることが好ましい。光学樹脂が流動性を有すると、画像表示装置の長期間の使用により光学樹脂と前面板または画像表示部との界面に歪みが生じ、視認性が低下することがあるからである。
【0073】
本実施の形態に係る光学樹脂は、前述したように画像表示装置を構成する前面板と画像表示部との間に挟持させる用途に使用される。以下、本実施の形態に係る光学樹脂を備えた画像表示装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施の形態に係る光学樹脂を備えた画像表示装置を模式的に示した断面図である。
【0074】
図1に示すように、画像表示装置100では、図示しない駆動回路に接続され所定の画像を表示する画像表示部10と、画像表示部10上に形成された光学樹脂層20と、光学樹脂層20上に形成された前面板30と、が順次積層されている。
【0075】
画像表示部10としては、特に限定されるものではなく、例えば液晶表示装置(LCD)、3Dディスプレイ、タッチパネル等が挙げられる。
【0076】
光学樹脂層20は、前述した光学樹脂からなる層であり、画像表示部10および前面板30の各々と密着するように形成されている。
【0077】
前面板30は、画像表示部の保護およびデザイン性向上等の観点から設けられている。前面板30は、画像表示部10と同程度の大きさの板状の部材からなるもので、例えば光学ガラスやプラスチック(アクリル樹脂等)を好適に用いることができる。
【0078】
2.2.光学樹脂層の製造方法
以下に、本実施の形態に係る光学樹脂層の製造方法について説明する。かかる製造方法は、画像表示装置100を構成する前面板30と画像表示部10との間に使用される光学樹脂層20の製造方法である。
【0079】
まず、前述した光学樹脂用組成物を前面板30に塗布する。光学樹脂組成物を前面板30に塗布する方法は特に制限されず、例えばバーコート塗工、エアナイフ塗工、グラビア塗工、グラビアリバース塗工、リバースロール塗工、リップ塗工、ダイ塗工、ディップ塗工、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の公知の方法を用いることができる。
【0080】
次いで、前面板30の光学樹脂用組成物の塗布面と画像表示部10と貼り合わせる。その後、前面板30の方向から380nm以上500nm以下の波長領域を含む光を照射して光学樹脂用組成物を硬化させる。前述したように画像表示部10に組み込まれている液晶配向膜やカラーフィルター等を紫外線から保護するために、380nm未満の波長の光をカットした光を照射することが好ましいからである。
【0081】
放射光照射装置としては、380nm未満の波長の光をカットした光を照射できる市販の装置を用いることができる。また、放射光の照射量は、好ましくは10〜10000mJ/cmであり、より好ましくは100〜5000mJ/cmである。
【0082】
前記方法のほか、前面板30と画像表示部10を対向して設置し、前面板30と画像表示部10の隙間に前述した光学樹脂用組成物を注入し、次いで光を照射して光学樹脂層を製造してもよい。
【0083】
3.実施例
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0084】
3.1.実施例1
3.1.1.光学樹脂用組成物の製造
紫外線を遮蔽した容器中に、(A)成分としてポリブタジエン末端アクリレート(大阪有機工業株式会社製、商品名「BAC−45」、数平均分子量:2800、分子中のアクリロイル基数:2)15質量部、(B)成分として水酸基末端液状ポリイソプレン(出光興産株式会社製、商品名「Poly ip(登録商標)」)75質量部、(C)成分としてジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキサイド(BASF社製、商品名「LucirinTPO」)3質量部および1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、商品名「Irgacure184」)2質量部、(D)成分としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート(東亜合成株式会社製、商品名「アロニックスM113」)5質量部を添加して室温で2時間撹拌することにより均一な光学樹脂用組成物を得た。
【0085】
3.1.2.硬化膜サンプルの作製
前記「3.1.1.光学樹脂用組成物の製造」で得られた光学樹脂用組成物を、厚さ100μmPETフィルムまたはガラス上にバーコーターを用いて膜厚が約100μmとなるように塗布した。その後、窒素雰囲気下、下記の条件で紫外線を照射して硬化膜サンプルを作製した。
【0086】
<光照射条件>
・紫外線照射装置;アイグラフィックス株式会社製、型式「UBX0311−00」
・照度計;アイグラフィックス株式会社製、型式「UV METER UVPF−36」
・照射量;1500mJ/cm
なお、透明性、ヘイズ、イエローインデックス(YI)、流動性評価、弾性率測定には、PETフィルム上に形成された硬化膜サンプルを使用した。硬化収縮率測定には、ガラス上に形成された硬化膜サンプルを使用した。
【0087】
3.2.実施例2〜12、比較例1〜3
表1に示す成分を表1に示す割合で配合したこと以外は、実施例1と同様にして光学樹脂用組成物を製造して硬化膜サンプルを作製した。なお、表1に記載の(A)成分は、それぞれ以下のようにして合成した。
【0088】
<合成例1>
撹拌機を備えた反応容器に、イソフォロンジイソシアネート9.496g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、合成触媒ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)(以下、「Zr(acac)4」と表す)を0.080g仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。数平均分子量4000のポリ(プロピレングリコール)ジオール(旭硝子株式会社製)85.44gを加えて、液温度30〜40℃にて2時間撹拌を継続させ、その後、ヒドロキシエチルアクリレートを4.956g滴下した。液温度60〜70℃にて3時間撹拌を継続させ残留イソシアネートが0.01重量%以下になったことを確認し反応終了とした。得られた(A)成分は、下記式(3)で表される構造を有しており、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は4700であった。このようにして得られた(A)成分を「ウレタンアクリレートA1」という。
HEA−IP−PPG4000−IP−HEA …(3)
[式(3)中、HEAはヒドロキシエチルアクリレートに由来する構造であり、IPはイソフォロンジイソシアネートに由来する構造であり、PPG4000は数平均分子量4000のポリ(プロピレングリコール)ジオールに由来する構造である。]
【0089】
<合成例2>
撹拌機を備えた反応容器に、イソフォロンジイソシアネート13.981g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、合成触媒Zr(acac)4を0.080g仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。数平均分子量2500のPoly ip(出光興産株式会社製)78.620gを加えて、液温度30〜40℃にて2時間撹拌を継続させ、その後、ヒドロキシエチルアクリレートを7.296g滴下した。液温度60〜70℃にて3時間撹拌を継続させ残留イソシアネートが0.01重量%以下になった確認し反応終了とした。得られた(A)成分は、下記式(4)で表される構造を有しており、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は3200であった。このようにして得られた(A)成分を「ウレタンアクリレートA2」という。
HEA−IP−(Poly ip)−IP−HEA …(4)
[式(4)中、HEAはヒドロキシエチルアクリレートに由来する構造であり、IPはイソフォロンジイソシアネートに由来する構造であり、Poly ipは数平均分子量2500のポリ(イソプレン)ジオールに由来する構造である。]
【0090】
<合成例3>
撹拌機を備えた反応容器に、イソフォロンジイソシアネート12.774g、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.024g、合成触媒Zr(acac)4を0.080g仕込み、これらを撹拌しながら液温度が15℃以下になるまで氷冷した。数平均分子量2800のPoly bd(出光興産株式会社製)80.456gを加えて、液温度30〜40℃にて2時間撹拌を継続させ、その後、ヒドロキシエチルアクリレートを6.666g滴下した。液温度60〜70℃にて3時間撹拌を継続させ残留イソシアネートが0.01重量%以下になった確認し反応終了とした。得られた(A)成分は、下記式(5)で表される構造を有しており、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した数平均分子量は3200であった。このようにして得られた(A)成分を「ウレタンアクリレートA3」という。
HEA−IP−(Poly bd)−IP−HEA …(5)
[式(5)中、HEAはヒドロキシエチルアクリレートに由来する構造であり、IPはイソフォロンジイソシアネートに由来する構造であり、Poly bdは数平均分子量2800のポリ(ブタジエン)ジオールに由来する構造である。]
【0091】
上記以外の表1に記載の各成分について、以下にまとめておいた。
・ポリブタジエン末端アクリレート(大阪有機工業株式会社製、商品名「BAC−45」、数平均分子量:2800、分子中のアクリロイル基数:2)
・水酸基末端液状ポリイソプレン(出光興産株式会社製、商品名「Poly ip(登録商標)」、数平均分子量:2500、粘度:12Pa・s)
・水酸基末端液状ポリブタジエン(出光興産株式会社製、商品名「Poly bd(登録商標)」、数平均分子量:2800、粘度:8.6Pa・s)
・ポリプロピレングリコール(旭硝子ウレタン株式会社製、商品名「PPG−1000」、数平均分子量:1000、粘度:0.16Pa・s)
・液状ポリブタジエン(日本曹達株式会社製、商品名「B−1000」、数平均分子量:1000、粘度:5.4Pa・s)
・LucirinTPO(商品名、BASF社製、ジフェニル(2,4,6−トリメトキシベンゾイル)ホスフィンオキサイド)
・Irgacure184(商品名、BASF社製、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)
・ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルアクリレート(東亜合成株式会社製、商品名「アロニックスM113」)
・2−ヒドロキシ−3−フェニルプロピルアクリレート(共栄社化学株式会社、商品名「エポキシエステルM−600A」)
なお、上記(B)成分の粘度の値は、B型粘度計で測定した25℃での値である。
【0092】
3.3.評価試験
上記実施例で作製された硬化膜サンプルについて、下記項目の評価を行った。その結果を表1に併せて示す。
【0093】
3.3.1.透明性の評価
得られた硬化膜サンプルを目視により評価した。評価基準は以下の通りである。
A:完全に透明である。
B:透明ではあるが、やや白濁している。
C:白濁している。
【0094】
3.3.2.透過率、ヘイズ、およびイエローインデックス(YI)の測定
温度23℃、湿度50%の環境下において、得られた硬化膜サンプルの透過率、ヘイズ、およびイエローインデックス(YI)をヘーズメーター(スガ試験機株式会社製、カラー・ヘイズ・コンピューター MODEL SC−3H)を用いて測定した。なお、リファレンスには、硬化膜を形成していない膜厚100μmPETフィルムを用いた。
【0095】
3.3.3.硬化収縮率の測定
硬化前の光学樹脂用組成物の比重dおよび硬化膜サンプル中の硬化膜の比重dを求め、下記式(6)により硬化収縮率(%)を算出した。なお、硬化膜の比重dはアルキメデス法により求めた。
硬化収縮率(%)=(1−d/d)×100 …(6)
【0096】
3.3.4.流動性の評価
温度23℃、湿度50%の環境下、得られた硬化膜サンプルについて、ARシリーズレオメータ(TAインスツルメント社製、型式「AR2000ex」)を用い、20Paの応力でクリープ試験を行った。応力をかけ続けても変形しない平坦部が現れる場合には、非流動性を示すと判断した。
【0097】
3.3.5.貯蔵弾性率の測定
温度23℃、湿度50%の環境下、得られた硬化膜サンプルについて、ARシリーズレオメータ(TAインスツルメント社製、型式「AR2000」)を用い、測定周波数1Hzでの貯蔵弾性率(MPa)を測定した。
【0098】
3.3.6.380nm未満をカットした光による硬化性評価
「3.1.2.硬化膜サンプルの作製」の項に記載の紫外線照射装置および照度計を用いた。この紫外線照射装置には、380nm未満の光をカットするフィルターを装着させた。なお、光の照射量は3000mJ/cmとした。このような条件としたこと以外は、「3.1.2.硬化膜サンプルの作製」と同様にして硬化膜サンプルを作製した。得られた硬化膜サンプルについて、高速FT−IR(BIO−RAD社製、FTS−6000)にダイヤモンドATR装置(SENSIR TECHNOLOGIES社製、Dura Scope)を用いてIR測定を行った。C=Oに由来する1720cm−1を基準ピークとして、CH=CHに由来する810cm−1の存在比を求めることにより、アクリロイル基の反応率を求めた。なお、硬化前の光学樹脂用組成物の反応率が0%であり、810cm−1が完全に消失した場合に反応率が100%となる。
【0099】
【表1】

【0100】
3.4.評価結果
表1の結果から明らかなように、実施例1〜12の光学樹脂用組成物を硬化させてなる硬化膜サンプルは、透明性および弾性率が良好な弾性体であり、かつ硬化収縮率も低いことが理解できる。このような特性を備えた光学樹脂を画像表示装置の前面板と画像表示部との間に挟持させることにより、画像表示装置の視認性および耐衝撃性を向上させることができる。なお、波長380〜500nmに極大吸収を有する(C)成分を配合した実施例1〜11では、380nm以下の波長をカットした光を照射しても非流動性となり、画像表示部を紫外線で傷めることなく画像表示装置を製造することが可能となる。
【0101】
比較例1では(B)成分を含有しない光学樹脂用組成物を用いているため、得られた硬化膜サンプルは、硬化収縮率が大きく、また貯蔵弾性率も大きくなった。
【0102】
比較例2および比較例3では(B)成分に対する(A)成分の含有量が少なすぎるため、得られた硬化膜サンプルは十分に硬化しないことが判った。
【0103】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0104】
10…画像表示部、20…光学樹脂層、30…前面板、100…画像表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示装置を構成する前面板と画像表示部との間に使用される光学樹脂であって、
(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が1000以上であり、前記数平均分子量を1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値が500以上である化合物と、
(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.1Pa・s以上20Pa・s以下であり、数平均分子量が500以上20000以下である化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含有し、
前記(B)化合物100質量部に対して、前記(A)化合物を5質量部以上50質量部以下含有する光学樹脂用組成物を硬化させてなることを特徴とする、光学樹脂。
【請求項2】
請求項1において、
前記(B)化合物が、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびポリプロピレングリコールから選択される少なくとも1種である、光学樹脂。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記(B)化合物が、少なくとも1個の末端に水酸基を有する、光学樹脂。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項において、
前記(C)光重合開始剤は、380nm以上500nm以下に極大吸収波長を有する化合物を含む、光学樹脂。
【請求項5】
(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、数平均分子量が1000以上であり、前記数平均分子量を1分子当たりの(メタ)アクリロイル基の数で除した値が500以上である化合物と、
(B)(メタ)アクリロイル基を有さず、B型粘度計で測定した25℃における粘度が0.1Pa・s以上20Pa・s以下であり、数平均分子量が500以上20000以下である化合物と、
(C)光重合開始剤と、
を含有し、
前記(B)化合物100質量部に対して、前記(A)化合物を5質量部以上50質量部以下含有することを特徴とする、光学樹脂用組成物。
【請求項6】
請求項5において、
前記(B)化合物が、ポリブタジエン、ポリイソプレンおよびポリプロピレングリコールから選択される少なくとも1種である、光学樹脂用組成物。
【請求項7】
請求項5または請求項6において、
前記(B)化合物が、少なくとも1個の末端に水酸基を有する、光学樹脂用組成物。
【請求項8】
請求項5ないし請求項7のいずれか一項において、
前記(C)光重合開始剤は、380nm以上500nm以下に極大吸収波長を有する化合物を含む、光学樹脂用組成物。
【請求項9】
画像表示装置を構成する前面板と画像表示部との間に使用される光学樹脂層の製造方法であって、請求項8に記載の光学樹脂用組成物を前記前面板に塗布し、それを前記画像表示部と貼り合わせた後、前記前面板方向から380nm以上500nm以下の波長領域を含む光を照射することを特徴とする、光学樹脂層の製造方法。
【請求項10】
画像表示部と、前記画像表示部の上方に配置された前面板と、を備えた画像表示装置であって、
前記画像表示部と前記前面板との間に請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の光学樹脂を挟持させたことを特徴とする、画像表示装置。

【図1】
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【公開番号】特開2012−144634(P2012−144634A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−3690(P2011−3690)
【出願日】平成23年1月12日(2011.1.12)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】