説明

光学機器用遮光部材、およびそれを用いた光学機器の製造方法

【課題】遮光層の黒味を十分にしつつ(光沢を十分低くしつつ)、遮光層の塗膜強度に優れる光学機器用遮光部材を提供する。
【解決手段】表面が粗面化されてなる剥離可能な基材11の粗面化面上に、バインダー樹脂及び黒色微粒子を含む遮光層12を有するように光学機器用遮光部材1を構成する。遮光層12上には、接着層13、セパレータ14を有していてもよい。このような本発明の光学機器用遮光部材1は、必要に応じてセパレータ15を剥離して遮光層12の剥離可能な基材11とは反対側の面を光学機器に接着させた後、遮光層12から剥離可能な基材11を剥離して使用することで、光学機器に遮光層12を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタ等の光学機器のシャッター、絞り部材として好適に用いられる遮光部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ等に対する小型化、軽量化の要求により、金属材料により形成されていた光学機器の遮光性部材がプラスチック材料へと代わりつつある。
【0003】
このようなプラスチック材料の絞りとしては、基材フィルムにカーボンブラック、艶消し剤を含有する遮光層を設けた遮光性フィルムが知られている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−274218号公報
【特許文献2】WO2006/016555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような遮光性フィルムでは、艶消し剤(微粒子)の白っぽさの影響を受けて、遮光層の黒味が十分でないという問題がある。
【0006】
これを解決するため、艶消し剤として黒色ビーズを用いることが考えられるが、光沢を十分に低くするための表面粗さを得るためには多量の黒色ビーズが必要となり、その結果、遮光層の塗膜強度が低下するという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、遮光層の黒味を十分にしつつ、遮光層の塗膜強度に優れる光学機器用遮光部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明の光学機器用遮光部材は、表面が粗面化されてなる剥離可能な基材の粗面化面上に、バインダー樹脂及び黒色微粒子を含む遮光層を有してなることを特徴とするものである。
【0009】
また、本発明の光学機器用遮光部材は、好ましくは、前記基材の粗面化面の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)が、0.3〜6.0μmであることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の光学機器用遮光部材は、好ましくは、前記遮光層中において、前記バインダー樹脂を60〜95重量%、前記黒色微粒子を5〜40重量%の割合で含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の光学機器用遮光部材は、好ましくは、前記遮光層上に接着層を有することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の光学機器の製造方法は、本発明の光学機器用遮光部材の遮光層側を光学機器に接着させた後、遮光層から剥離可能な基材を剥離することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光学機器用遮光部材は、表面が粗面化されてなる剥離可能な基材によって表面粗さが付与されることから、従来品のように多量の艶消し剤が不要となり、遮光層の黒味が十分であり(光沢が十分低い)、遮光層の塗膜強度に優れたものとすることができる。
【0014】
また、本発明の光学機器用遮光部材は、剥離可能な基材を剥離することで、最終的には遮光層を基材レスの状態にすることもできる。このため、柔軟性に優れ、凹凸形状に追従しやすい遮光層とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の光学機器用遮光部材および本発明の光学機器の製造方法の実施の形態について説明する。
【0016】
図1〜4は、本発明の光学機器用遮光部材1の実施の形態を示す断面図である。図1〜4では、表面が粗面化されてなる剥離可能な基材11の粗面化面上に、バインダー樹脂及び黒色微粒子を含む遮光層12を有する構成をとっている。なお、図2では遮光層12上に、さらに接着層13、セパレータ14を有する構成をとっており、図3,4では遮光層12上に、さらに接着層13、第二基材15を有する構成をとっている。
【0017】
表面が粗面化されてなる剥離可能な基材は、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等の合成樹脂フィルム、合成紙、紙、金属板などの基材の少なくとも一方の面を粗面化してなるものである。
【0018】
基材表面を粗面化する方法は特に限定されない。例えば、バインダーとマット化剤とを含むマット層塗布液を支持体表面上に塗布、乾燥することにより粗面化することができる。その他、対象物表面に細かい砂を高速で吹き付けるサンドブラスト加工、対象物を金属彫刻ロールと弾性ロールとの間を通すことによってなされるエンボス加工、対象物表面を化学薬品で処理するケミカルエッチング等により基材表面を粗面化することができる。
【0019】
基材と後述する遮光層とは剥離可能に構成されている。基材と遮光層とを剥離可能に構成するためには、基材、マット層、若しくは遮光層に、離型効果に優れる材料を含有させたり、基材やマット層上に離型処理を施すことが好ましい。離型効果に優れる材料としては、フッ素系化合物やシリコーン系化合物があげられる。
【0020】
基材の粗面化の程度は、要求される光沢により異なるが、算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)、0.3〜6.0μmとすることが好ましく、0.5〜5.0μmとすることがより好ましく、1.0〜4.0μmとすることがさらに好ましい。Raを0.3μm以上とすることにより光沢を低く抑えやすくすることができ、6.0μm以下とすることにより、剥離可能な基材を遮光層から剥離しやすくすることができる。
【0021】
基材の厚みは特に限定されることはないが、剥離時の作業性を考慮して、25〜250μm程度とすることが好ましい。
【0022】
遮光層は、バインダー樹脂および黒色微粒子を含むものである。従来品の光学機器用遮光部材では、光沢を低くするために遮光層に艶消し剤を多量に含ませて表面粗さを付与するが、本発明では、表面が粗面化されてなる剥離可能な基材によって表面粗さを付与することから、従来品のように多量の艶消し剤が不要となり、遮光層の黒味が十分であり(光沢が十分低い)、遮光層の塗膜強度に優れた光学機器用遮光部材とすることができる。
【0023】
バインダー樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン/ポリブタジエン樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタンアクリレート系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、尿素系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、エポキシポリオール等のポリオール系樹脂などの熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂(必要に応じて加えるイソシアネートなどの架橋剤を含む)があげられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。なお、基材レスの状態にした際の遮光層の柔軟性、凹凸形状への追従性を考慮すると、これらバインダー樹脂の中では、ポリウレタン樹脂が好ましい。また、後述する接着層を設けることなく遮光層を光学機器に転写することを考慮すると、熱圧着可能な樹脂が好ましい。
【0024】
黒色微粒子としては、カーボンブラック、チタンブラック、アニリンブラックなどがあげられる。これらの中でも、導電性を付与させて静電気による帯電(基材を剥離する際の剥離帯電等)を防止できるカーボンブラックが好ましい。
【0025】
黒色微粒子の平均粒径は、充分な遮光性を得るため1μm以下が好ましく、0.5μm以下とすることがより好ましい。また、黒色微粒子の平均粒径の下限値は0.01μm程度である。
【0026】
遮光層中のバインダー樹脂の含有率は、下限が60重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましく、80重量%以上であることがさらに好ましく、上限は95重量%以下であることが好ましく、90重量%以下であることがより好ましい。遮光層中のバインダー樹脂を60重量%以上とすることにより、塗膜強度を十分にしやすくすることができ、95重量%以下とすることにより、カーボンブラックの比率を高めて遮光性が低化するのを防止しやすくすることができる。
【0027】
遮光層中の黒色微粒子の含有率は、目的とする遮光度合いにより異なるが、下限が5重量%以上であることが好ましく、10重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがさらに好ましく、上限は40重量%以下であることが好ましく、30重量%以下であることがより好ましい。遮光層中の黒色微粒子を5重量%以上とすることにより、遮光性を十分にしやすくすることができ、40重量%以下とすることにより、塗膜強度の低下を防止しやすくすることができる。
【0028】
なお、遮光層中には、遮光層の滑り性を向上させるために、粒子状の滑剤、非粒子状の離型性組成物などのワックスを含んでいてもよい。後者の非粒子状の離型性組成物は、遮光層の塗膜強度を低下させにくい点で好ましい。
【0029】
粒子状の滑剤としては、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の炭化水素系滑剤、ステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系滑剤、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等のアミド系滑剤、ステアリン酸モノグリセリド等のエステル系滑剤、アルコール系滑剤、金属石鹸、滑石、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、シリコーン樹脂粒子、ポリテトラフッ化エチレンワックス等のフッ素樹脂粒子、架橋ポリメチルメタクリレート粒子、架橋ポリスチレン粒子等があげられる。
【0030】
非粒子状の離型性組成物としては、フッ素系化合物やシリコーンオイル、シリコーンレジン、シリコーン系櫛型グラフトポリマー、シリコーンアクリレートなどのシリコーン系化合物があげられる。これら離型性組成物の中でも、上述したバインダー樹脂と架橋することができる反応性を有するものが好ましい。
【0031】
遮光層の厚みは、要求される光学濃度により異なるが、2〜30μmが好ましく、3〜20μmとすることがより好ましい。2μm以上とすることにより、遮光層にピンホール等を生じにくくすることができ、充分な遮光性を得やすくできる。また、30μm以下とすることにより、遮光層にひび割れを生じにくくすることができる。ただし、遮光層の厚みは、基材の粗面化面の算術平均粗さRa(JIS
B0601:2001)よりも大きくする必要がある。
【0032】
遮光層中には、本発明の機能を損なわない場合であれば、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤等の種々の添加剤を含有させることができる。
【0033】
遮光層上には、光学機器に遮光層を接着させるための接着層を有していてもよい。接着層は、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリエステル系接着剤などの感圧接着剤、感熱接着剤などの各種接着剤から形成することができる。なお、遮光層と接着層との密着性の観点から、例えば両層ともウレタン系材料を用いるなど、両層を同系統の材料とすることが好ましい。接着層の厚みは通常2〜30μm程度である。また、接着層上には必要に応じてセパレータを設けてもよい。
【0034】
遮光層や接着層は、各層を構成する材料を含む遮光層用塗布液をディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート等の従来公知の塗布方法により基材上に塗布し、乾燥させることにより得ることができる。
【0035】
以上のような本発明の光学機器用遮光部材は、必要に応じてセパレータを剥離して遮光層の剥離可能な基材11とは反対側の面を光学機器に接着させた後、遮光層から剥離可能な基材を剥離して使用することで、遮光層が付与された光学機器を製造することができる。
【0036】
光学機器に遮光層を転写により形成する場合、光学機器用遮光部材としては、図1,2のように最終的に基材が残らないもの(剥離可能な基材とは別な基材を有さないもの)を用いることが好ましい。すなわち、遮光層単体を転写する方が、基材を含むものを転写するよりも柔軟性に優れ、光学機器が曲面形状を有する場合であっても、曲面形状に追従して遮光層を容易に形成することができるためである。
【0037】
遮光層を光学機器に接着させるには、例えば、遮光層を光学機器に熱圧着させる手段、遮光層上の接着層の接着性を利用して貼り合わせる手段、遮光層と光学機器との間に両面接着シートを介在させるなどして貼り合わせる手段などがあげられる。
【0038】
なお、本発明の光学機器用遮光部材1は、遮光層12上に第二基材15を有していてもよい(図3,4)。このタイプは、使用時は剥離可能な基材を剥離するが、第二基材は残して使用する。すなわち、第二基材15を遮光層12の実質的な基材として用いるものである。このタイプのものは、遮光層の黒味が十分であり、遮光層の塗膜強度に優れつつ、第二基材の存在により強度に優れるものである。第二基材15としては、各種合成樹脂フィルム、合成紙、紙、金属板などがあげられ、これらの中でも遮光性を有する基材を用いれば、薄膜である遮光層の遮光性を補強することができる。なお、遮光層12と第二基材15との間には接着層13を有していてもよい。
【0039】
以上のような本発明の光学機器用遮光部材は、高性能一眼レフカメラ、コンパクトカメラ、ビデオカメラ、携帯電話、プロジェクタ等の光学機器のシャッター、絞り部材、光路内壁に用いることができる。そして、本発明の光学機器用遮光部材は、艶消し剤を用いることなく表面粗さを付与しているため、遮光層の黒味が十分であり(光沢が十分低い)、塗膜強度にも優れるものである。
【0040】
また、本発明の光学機器用遮光部材は、遮光層のみを光学機器に転写することができ、光学機器の薄型化や軽量化に寄与することができる。また、遮光層を光学機器に転写する場合には、遮光層単体では基材を有する場合に比べて柔軟性を有することから、曲面形状にも遮光層を容易に形成することができる。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
一方の面が離型処理された基材(MRF:三菱化学ポリエステルフィルム社、厚み100μm)の非離型処理面に、エンボスロールを加熱、圧接させて、離型処理面に算術平均粗さRa(JIS
B0601:2001)が0.7μmの粗面を形成した。次いで、当該基材の粗面化された離型処理面上に、下記の処方からなる遮光層塗布液aを塗布、乾燥し、厚み10μmの遮光層を形成した。次いで、遮光層上に、アクリル系感圧接着剤(オリバインBPS5160:東洋インキ製造社)を溶剤で希釈した接着層塗布液を塗布、乾燥し、厚み15μmの接着層を形成し、光学機器用遮光部材を得た。
【0042】
<遮光層塗布液a>
・アクリルポリオール 32部
(アクリディックA807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート 5.33部
(バーノックDN950:DIC社、固形分75%)
・カーボンブラック 5部
(トーカブラック#5500:東海カーボン社、平均粒子径25nm)
・希釈溶剤 60部
【0043】
[実施例2]
一方の面が離型処理された基材の非離型処理面の粗面の算術平均粗さRaを1.4μm
に変更した以外は、実施例1と同様にして光学機器用遮光部材を得た。
【0044】
[実施例3]
一方の面が離型処理された基材の非離型処理面の粗面の算術平均粗さRaを2.5μm
に変更した以外は、実施例1と同様にして光学機器用遮光部材を得た。
【0045】
[実施例4]
一方の面が離型処理された基材の非離型処理面の粗面の算術平均粗さRaを5.0μm
に変更した以外は、実施例1と同様にして光学機器用遮光部材を得た。
【0046】
[実施例5]
カーボンブラックの添加量を3部に変更した以外は、実施例2と同様にして光学機器用遮光部材を得た。
【0047】
[実施例6]
カーボンブラックの添加量を8部に変更した以外は、実施例2と同様にして光学機器用遮光部材を得た。
【0048】
[比較例1]
黒色ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーX30:東レ社、厚み50μm)の一方の面に、下記の処方からなる遮光層塗布液bを塗布、乾燥し、厚み10μmの遮光層を形成し、光学機器用遮光部材を得た。
【0049】
<遮光層塗布液b>
・アクリルポリオール 32部
(アクリディックA807:DIC社、固形分50%)
・イソシアネート 5.33部
(バーノックDN950:DIC社、固形分75%)
・カーボンブラック 5部
(トーカブラック#5500:東海カーボン社、平均粒子径25nm)
・艶消し剤(シリカ) 0.8部
(ACEMATT TS100:エポニック デグサ ジャパン社)
(平均粒子径:4μm)
・希釈溶剤 60部
【0050】
[比較例2]
遮光層塗布液bの艶消し剤(シリカ)の添加量を4部に変更した以外は、比較例1と同様にして光学機器用遮光部材を得た。
【0051】
[比較例3]
遮光層塗布液bの「艶消し剤(シリカ)4部」を、「アクリル樹脂ビーズ(ラブコロール220(M) クリヤー:大日精化工業社、平均粒径7〜9μm)20部」に変更した以外は、比較例1と同様にして光学機器用遮光部材を得た。
【0052】
[比較例4]
遮光層塗布液bの「艶消し剤(シリカ)4部」を、「アクリル樹脂ビーズ(ラブコロール220(F) クリヤー:大日精化工業社、平均粒径17〜20μm)20部」に変更した以外は、比較例1と同様にして光学機器用遮光部材を得た。
【0053】
実施例1〜6の光学機器用遮光部材の接着層を黒色ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーX30:東レ社、厚み50μm)に貼り合わせ、遮光層から剥離可能な基材を剥離してなる材料について、下記項目の評価を行った。また、比較例1〜4の光学機器用遮光部材について、同様に下記項目の評価を行うとともに、遮光層表面の算術平均粗さRaを測定した。結果を表1に示す。
【0054】
[評価項目]
1.光学濃度
JIS K7651:1988に基づき光学濃度計(TD−904:グレタグマクベス社)を用いて光学濃度を測定し、4.0を超え、測定不能領域の濃度のものを「○」とした。なお、測定はUVフィルターを用いた。
2.黒味
遮光層表面の黒味を目視で測定した。その結果、塗膜が十分黒く感じられるものを「○」、塗膜が僅かに白っぽく感じられるものを「△」、塗膜がかなり白っぽく感じられるものを「×」とした。
3.塗膜強度
JIS−K5400における鉛筆引掻き試験に準じ、表面測定機(HEIDON−14:新東科学社)を使用して、特定硬度の鉛筆を1000gの荷重をかけながら0.5mm/秒の速度で動かした時に、遮光層にクラック(傷でもOK)が生じない鉛筆硬度の限界を測定した。
4.光沢
遮光層表面の光沢度(鏡面光沢度)(%)を、JIS Z8741:1997に基づきを測定した。なお、測定角度は60度とした。
【0055】
【表1】

【0056】
実施例1〜6のものは、光学濃度、光沢が実用レベルであり、さらに、遮光層に艶消し剤を含まないことから、黒味が損なわれることなく、塗膜強度も十分なものであった。
【0057】
なお、実施例6の塗膜強度は比較例1と同等の評価となっているが、これは実施例6のカーボンブラックの添加量が多い(バインダー樹脂の割合が少ない)ためである。実施例と比較例との作用効果を純粋に比較する際は、Raが同等(艶消しレベルが同等)のもの同士を比較すべきであり、そうとすれば、つや消し剤を用いない実施例のものは、比較例のものより、黒味、塗膜強度に優れていることが分かる。
【0058】
なお、実施例1〜6の光学機器用遮光部材は、曲面にも遮光層を形成しやすいものであった。
【0059】
比較例1〜4のものは、艶消し剤を添加して表面を荒らし、光沢を低下させているものである。したがって、実施例のものに比べ、黒味や塗膜強度に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の光学機器用遮光部材の一実施の形態を示す断面図
【図2】本発明の光学機器用遮光部材の他の実施の形態を示す断面図
【図3】本発明の光学機器用遮光部材の他の実施の形態を示す断面図
【図4】本発明の光学機器用遮光部材の他の実施の形態を示す断面図
【符号の説明】
【0061】
1・・・・光学機器用遮光部材
11・・・表面が粗面化されてなる剥離可能な基材
12・・・遮光層
13・・・接着層
14・・・セパレータ
15・・・第二基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面が粗面化されてなる剥離可能な基材の粗面化面上に、バインダー樹脂及び黒色微粒子を含む遮光層を有してなることを特徴とする光学機器用遮光部材。
【請求項2】
前記基材の粗面化面の算術平均粗さRa(JIS B0601:2001)が、0.3〜6.0μmであることを特徴とする請求項1記載の光学機器用遮光部材。
【請求項3】
前記遮光層中において、前記バインダー樹脂を60〜95重量%、前記黒色微粒子を5〜40重量%の割合で含むことを特徴とする請求項1又は2記載の光学機器用遮光部材。
【請求項4】
前記遮光層上に接着層を有することを特徴とする請求項1から3何れか1項記載の光学機器用遮光部材。
【請求項5】
請求項1から4何れか1項記載の光学機器用遮光部材の遮光層側を光学機器に接着させた後、遮光層から剥離可能な基材を剥離することを特徴とする光学機器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−88499(P2012−88499A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−234635(P2010−234635)
【出願日】平成22年10月19日(2010.10.19)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】