説明

光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法、これを用いた位相差フィルムの製造方法。

【課題】本発明は、延伸することにより光学特性を発現させることが可能な光学機能層を有する光学機能フィルムについて、延伸後に生じる光学特性のバラツキを、延伸前に評価することが可能な光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層とを有する光学機能フィルムを用い、上記光学機能層の蛍光強度を測定することにより、光学機能フィルムの光学特性発現性を評価することを特徴とする、光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法を提供することにより、上記課題を解決するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学特性の発現性をあらかじめ予測することが可能な光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法、およびこれを用いた位相差フィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、その省電力、軽量、薄型等といった特徴を有することから、従来のCRTディスプレイに替わり、近年急速に普及している。一般的な液晶表示装置としては、図1に示すように、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル101とを有するものを挙げることができる。偏光板102Aおよび102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル101は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102Aと102Bとの間に配置されている。
【0003】
このような液晶表示装置は、上記液晶セルに用いられる液晶材料の配列形態により種々の駆動方式を用いたものが知られている。今日、普及している液晶表示装置の主たるものは、TN、STN、MVA、IPS、および、OCB等に分類される。なかでも今日においては、上記MVA、および、IPSの駆動方式を有するものが広く普及するに至っている。
【0004】
一方、液晶表示装置はその特有の問題点として、液晶セルや偏光板の屈折率異方性に起因する視野角依存性の問題点がある。この視野角依存性の問題は、液晶表示装置を正面から見た場合と、斜め方向から見た場合とで視認される画像の色味やコントラストが変化してしまう問題である。このような視野角特性の問題は、近年の液晶表示装置の大画面化に伴って、さらにその問題の重大性を増している。
【0005】
このような視野角依存性の問題を改善するため、現在までに様々な技術が開発されている。その代表的な方法として位相差フィルムを用いる方法がある。この位相差フィルムを用いる方法は、例えば、図2に示すように所定の光学特性を有する位相差フィルム103を、液晶セル101と偏光板102Aおよび102Bとの間に配置することにより、視野角依存性の問題を改善する方法である。このような方法は位相差フィルム103を液晶表示装置に組み込むことのみで上記視野角依存性の問題点を改善できることから、簡便に視野角特性に優れた液晶表示装置を得ることが可能な方法として広く用いられるに至っている。
【0006】
このような位相差フィルムに要求される光学特性は、視野角特性を改善する対象となる液晶表示装置の種類に依存するものである。例えば、上述したVA方式の液晶表示装置には、光学的に負のBプレートとして性質を有する位相差フィルム(以下、単に「−Bプレート」と称する場合がある。)及び、負のCプレートとしての性質を有する位相差フィルム(以下、単に「−Cプレート」と称する場合がある。)、が用いられている。このような位相差フィルムとしては、例えば、特許文献1に開示されているように、透明基板と、上記透明基板上に形成され、重合性液晶材料等を含有する位相差層とを有する構成を有するものが主流になっている。
【0007】
ところで、上述した位相差フィルムを製造する方法としては、通常、重合性液晶材料などの位相差性を発現することが可能な光学機能材料を用い、透明基板上に当該光学機能材料を含有する光学異方性層を形成する方法が一般的であり、必要に応じて上記光学異方性層が積層された透明基板を所定の方向に延伸する方法も用いられる。特に、上記光学的に負のBプレートとしての性質を有する位相差フィルムを製造する際には、面内における屈折率異方性を発現させるために上記延伸方法が用いられている。このような方法は、例えば、特許文献2に開示されている。
【0008】
しかしながら、上記延伸を用いる方法は、延伸倍率等を適宜選択することにより発現可能な光学特性の範囲を適宜調整できるという利点を有するものであるが、一方で、延伸前には面内において均一であった光学特性が、延伸後にはバラツキが生じてしまうという問題点が指摘されている。そして、延伸後に生じる光学特性のバラツキについては、延伸前に予測することが不可能であったことから、製造される光学機能フィルムの品質管理が困難であるという問題点も指摘されていた。
【0009】
【特許文献1】特開2000−131693号公報
【特許文献2】特開2000−190385号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、延伸することにより光学特性を発現させることが可能な光学異方性層を有する光学機能フィルムについて、延伸後に生じる光学特性のバラツキを、延伸前に評価することが可能な光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らが延伸によって光学特性にバラツキが生じる原因について鋭意検討した結果、従来バラツキが生じる支配的な原因と考えられてきた延伸倍率のバラツキは、実は支配的な要因ではなく、延伸前の光学機能層に含まれる光学機能材料の存在状態のムラが主たる原因になっていることを見出した。さらに、上記光学機能材料として、一般的な紫外線硬化性光学機能材料を光重合開始剤と併用して用いる場合、上記光学機能材料の存在状態のムラは、光学機能層の蛍光強度を測定することによって可視化することができ、延伸前の光学機能層における蛍光強度のムラと、延伸後の光学機能層における光学特性のバラツキに対応関係が存在することを確認した。このようなことから、蛍光強度という指標を用いることにより、延伸後の光学機能層に生じる光学特性のバラツキの位置や程度を、延伸前に事前に予測することが可能であることを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
【0012】
すなわち、上記課題を解決するために本発明は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層とを有する光学機能フィルムを用い、上記光学機能層の蛍光強度を測定することにより、光学機能フィルムの光学特性発現性を評価することを特徴とする、光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法を提供する。
【0013】
本発明の光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法によれば、上記紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤が含有される光学機能層の蛍光強度を測定することにより、上記光学機能フィルムを延伸した際に生じる光学特性のバラツキを、延伸前に事前に評価することができる。
【0014】
本発明においては、上記光学機能フィルムが長尺状の連続体であり、上記光学機能フィルムの長手方向に対して面内の直交する方向の蛍光強度を測定するものであってもよい。このような方法によれば、特別な設備を要することなく、本発明の光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法を、従来の位相差フィルムの製造方法に適用することが可能になるからである。
【0015】
また本発明は、透明基板を用い、上記透明基板上に紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層を形成する光学機能層形成工程と、上記光学機能層に紫外線を照射することによって、上記紫外線硬化性光学機能材料を硬化させる、硬化処理工程と、上記光学機能層の光学特性の発現性を評価する、光学特性発現性評価工程と、上記光学機能層が積層された透明基板を延伸する延伸工程と、を有する位相差フィルムの製造方法であって、上記光学特性発現性評価工程において、上記光学機能層の光学特性発現性を評価する方法が、上記本発明に係る光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法であることを特徴とする位相差フィルムの製造方法を提供する。
【0016】
本発明によれば、上記光学特性発現性評価工程において本発明に係る光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法により光学機能層の光学特性発現性が評価されることにより、上記延伸工程前に、上記延伸工程後に光学機能層に生じる光学特性のバラツキを評価することができる。このため、例えば、上記光学特性発現性評価工程における評価結果に基づいて、上記延伸工程の延伸条件を制御したり、あるいは上記光学特性発現性評価工程における評価結果に基づいて光学機能層形成工程における光学機能層の形成条件、硬化処理工程における紫外線の照射方法・条件を決定することにより、延伸後においても光学特性のバラツキが少ない位相差フィルムを製造することができる。
【0017】
本発明の位相差フィルムの製造方法においては、前記紫外線硬化性光学機能材料が重合性液晶材料であることが好ましい。これにより、光学特性の発現性に優れた位相差フィルムを製造することができるからである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法は、延伸することにより光学特性を発現させることが可能な光学機能層を有する光学機能フィルムについて、延伸後に生じる光学特性のバラツキを、延伸前に評価することが可能であり、このような方法を用いることにより、光学特性のバラツキが少ない位相差フィルムを製造することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法、および位相差フィルムの製造方法について順に説明する。
【0020】
A.光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法
まず、本発明の光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法(以下、単に「光学特性発現性評価方法」と称する場合がある。)について説明する。
上述したように、本発明の光学特性発現性評価方法は、透明基板と、上記透明基板上に形成され、紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層とを有する光学機能フィルムを用い、上記光学機能層の蛍光強度を測定することにより、光学機能フィルムの光学特性発現性を評価することを特徴とするものである。
【0021】
本発明の光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法によれば、上記紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤が含有される光学機能層の蛍光強度を測定することにより、上記光学機能フィルムを延伸した際に生じる光学特性のバラツキを、延伸前に事前に評価することができる。
【0022】
以下、本発明の光学特性発現性評価方法について詳細に説明する。
【0023】
1.蛍光強度の測定方法
まず、本発明の光学特性発現性評価方法において、光学機能層の蛍光強度を測定する方法について説明する。
本発明において蛍光強度を測定する方法としては、上記光学機能層の蛍光強度を所望の感度で測定できる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的に蛍光強度を測定する方法として公知の方法を用いることができる。このような方法としては、光学機能フィルムを透過した測定光を検出器で受光することによって、光学機能層の蛍光強度を測定する透過方式と、光学機能フィルムの光学機能層側から測定光を照射し、光学機能層によって反射された測定光を受光することによって、光学機能層の蛍光強度を測定する反射方式とを挙げることができる。本発明においては、これらのいずれの方式であっても好適に用いることができるが、なかでも反射方式を用いることが好ましい。反射方式によればと透明基板に起因する信号を排除することができるため、より高精度で光学機能層の蛍光強度を測定することができるからである。
【0024】
本発明は透明基板上に光学機能層が積層された構成を有する光学機能フィルムの光学異方性層の蛍光強度を測定するものであるが、上記光学機能フィルムが長尺状の連続体である場合は、上記光学機能フィルムの長手方向に対して面内の直交する方向の蛍光強度を測定するものであってもよい。このような方法によれば、特別な設備を要することなく、本発明の光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法を、従来の位相差フィルムの製造方法に適用することが可能になるからである。
【0025】
2.光学機能フィルム
次に、本発明の光学特性発現性評価方法の評価対象となる光学機能フィルムについて説明する。本発明の光学特性発現性評価方法の評価対象となる光学機能フィルムは、透明基板と、上記透明基板上に形成され、紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層とを有するものである。
【0026】
(1)光学機能層
まず、上記光学機能層について説明する。上記光学機能層は紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有するものである。また、本発明における光学機能層は蛍光強度を測定可能なものであることから、上記光学機能層は所定の光が照射されることによって蛍光を発することができることを特徴とするものである。
【0027】
(紫外線硬化性光学機能材料)
上記紫外線硬化性光学機能材料としては、紫外線が照射されることによって重合される重合性官能基を有することにより、紫外線照射によって硬化可能なものであり、かつ所定の光学特性を発現できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも、本発明に用いられる紫外線硬化性光学機能材料は、後述する光重合開始剤との作用により蛍光を発する開始種を形成できるものであることが好ましい。このような紫外線硬化性光学機能材料を用いることにより、本発明の光学特性発現性評価方法により、延伸後の光学特性のバラツキをより正確に評価することが可能になるからである。
【0028】
上記紫外線硬化性光学機能材料が有する重合性官能基としては、所定の波長を有する紫外線を照射することによって重合されるものであれば特に限定されるものではなく、本発明における光学機能フィルムを製造する方法等に応じて、適宜選択して用いることができる。
【0029】
このような重合性官能基としては、例えば、ラジカル重合性官能基、或いはカチオン重合性官能基を挙げることができ、さらにラジカル重合性官能基の代表例としては、少なくとも一つの付加重合可能なエチレン性不飽和二重結合を持つ官能基を挙げることができる。より具体的な例としては、例えば、置換基を有するもしくは有さないビニル基、アクリレート基(アクリロイル基、メタクリロイル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基を包含する総称)等を挙げることができる。また、上記カチオン重合性官能基の具体例としては、例えば、エポキシ基等を挙げることができる。
【0030】
本発明に用いられる紫外線硬化性光学機能材料は、上記重合性官能基を分子内に1つ有する単官能材料であってもよく、あるいは上記重合性官能基を分子内に複数有する多官能材料であってもよい。
【0031】
本発明に用いられる紫外線硬化性光学機能材料としては、例えば、重合性液晶材料、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミノ基エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等を挙げることができる。本発明においてはこれらのいずれの紫外線硬化性光学機能材料であっても好適に用いることができるが、なかでも重合性液晶材料が好適に用いられる。上記紫外線硬化性光学機能材料として、重合性液晶材料が用いられることにより評価対象となる光学機能フィルムを光学特性の発現性に優れたものになるからである。
【0032】
上記重合性液晶材料としては、評価対象となる光学機能フィルムの用途等に応じて、光学機能層において所望の形態で配列することにより、目的とする光学特性を発現できるものであれば特に限定されるものではない。したがって、本発明に用いられる重合性液晶材料が示す液晶相の種類は特に限定されるものではなく、ネマチック相、コレステリック相、および、スメクチック相等のいずれの液晶相示す材料であってもよい。なかでも本発明に用いられる重合性液晶性材料はネマチック相を示すものであることが好ましい。ネマチック相を示す重合性液晶性材料は、他の液晶相を示す重合性液晶性材料と比較して規則的に配列させることが容易であるからである。
【0033】
また、本発明においては、上記ネマチック相を示す重合性液晶性材料として、メソゲン両端にスペーサを有する材料を用いることが好ましい。メソゲン両端にスペーサを有する重合性液晶性材料は柔軟性に優れるからである。
【0034】
本発明に用いられる重合性液晶材料の具体例としては、下記式(1)〜(6)で表される化合物を例示することができる。
【0035】
【化1】

【0036】
ここで、化学式(1)、(2)、(5)および(6)で示される液晶性材料は、D.J.Broerら、Makromol.Chem.190,3201−3215(1989)、またはD.J.Broerら、Makromol.Chem.190,2250(1989)に開示された方法に従い、あるいはそれに類似して調製することができる。また、化学式(3)および(4)で示される液晶性材料の調製は、DE195,04,224に開示されている。
【0037】
また、末端にアクリレート基を有するネマチック液晶性材料の具体例としては、下記化
学式(7)〜(17)に示すものも挙げられる。
【0038】
【化2】

【0039】
なお、本発明に用いられる重合性液晶材料は、1種類のみを用いてもよく、または、2種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
(光重合開始剤)
次に、上記光学機能層に含有される光重合開始剤について説明する。本発明に用いられる光重合開始剤は、紫外線が照射されることにより上述した紫外線硬化性光学機能材料を重合させることができるものである。
【0041】
本発明に用いられる光重合開始剤としては、紫外線が照射されることにより上記紫外線硬化性光学機能材料を硬化させることができるものであれば特に限定されるものではなく、上記紫外線硬化性光学機能材料の種類等に応じて、適宜選択して用いることができる。なかでも本発明に用いられる光重合開始剤は、上述した紫外線硬化性光学機能材料と作用することにより、蛍光を発する開始種を形成できるものであることが好ましい。このような光重合開始剤を用いることにより、本発明の光学特性発現性評価方法により、延伸後の光学特性のバラツキをより正確に評価することが可能になるからである。
【0042】
本発明に用いられる光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。
【0043】
本発明に用いられる光重合開始剤は1種類のみであってもよく、あるいは2種以上であってもよい。
【0044】
また、本発明においては光重合開始剤とともに、光重合開始助剤を併用することができる。このような光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
【0045】
(その他の化合物)
本発明における光学機能層は少なくとも、上記紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有するものであるが、必要に応じてこれら以外の他の化合物が含有されてもよい。本発明に用いられる他の化合物としては、光学機能フィルムの用途等に応じて、所望の機能を有する化合物を適宜選択して用いることができる。このような他の化合物の具体例としては、例えば、一般的にハードコート剤に用いられる重合可能な材料を挙げることができる。
【0046】
上記重合可能な材料としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸とを縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミノ基エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等を挙げることができる。
【0047】
(光学機能層)
本発明における光学機能層は、上述した透明基板上に形成されているものである。ここで、本発明における光学機能層が、上記透明基板上に形成されている態様としては、特に限定されるものではなく、たとえば、上記透明基板上に光学機能層が直接形成されている態様であってもよく、あるいは、上記透明基板上に形成された他の層を介して形成されている態様であってもよい。なかでも本発明においては、前者の態様によって光学機能層が形成されていることが好ましい。光学機能層が透明基板上に直接形成されていることにより、本発明の位相差フィルムを、光学機能層と透明基板との密着性に優れたものにできる場合があるからである。
【0048】
本発明における光学機能層の厚みは、上記紫外線硬化性光学機能材料の種類に応じて、光学機能層に所望の光学的特性を付与できる範囲内であれば特に限定されない。なかでも本発明においては光学機能層の厚みが0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、なかでも0.5μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、特に1μm〜3μmの範囲内であることが好ましい。
【0049】
(2)透明基板
次に、本発明の光学特性発現性評価方法の評価対象となる光学機能フィルムに用いられる透明基板について説明する。本発明に用いられる透明基板は、所望の透明性を有し、上記光学機能層を支持できるものであれば特に限定されるものではない。なかでも本発明に用いられる透明基板は、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。ここで、透明基板の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
【0050】
本発明に用いられる透明基板の厚みは、光学機能フィルムの用途等に応じて、必要な自己支持性を有するものであれば特に限定されない。なかでも本発明においては、10μm〜188μmの範囲内が好ましく、特に20μm〜125μmの範囲内が好ましく、特に30μm〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0051】
また、本発明に用いられる透明基板は可撓性を有するフレキシブル材でも、可撓性のないリジッド材を用いることもできるが、フレキシブル材を用いることが好ましい。フレキシブル材を用いることにより、本発明における光学機能フィルムの製造工程をロールトゥロールプロセスとすることができるからである。
【0052】
上記フレキシブル材を構成する材料としては、セルロース誘導体、シクロオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類などを例示することができるが、本発明においてはセルロース誘導体およびシクロオレフィン系ポリマーを好適に用いることができる。
【0053】
上記シクロオレフィン系ポリマーとしては、シクロオレフィンポリマー(COP)またはシクロオレフィンコポリマー(COC)を挙げることができる。本発明に用いられる上記シクロオレフィンポリマーの具体例としては、例えば、JSR株式会社製 商品名:ARTON;日本ゼオン株式会社製 商品名:ゼオノア;積水化学工業株式会社製 商品名:エスシーナ等を挙げることができる。
【0054】
上記セルロース誘導体としては、セルロースエステルを用いることが好ましく、さらに、セルロースエステル類の中では、セルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
【0055】
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであっても良い。
【0056】
本発明においては、上記低級脂肪酸エステルの中でもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。トリアセチルセルロースは、比較的嵩高い側鎖を有する分子構造を有することから、トリアセチルセルロースから透明基板を構成することにより、上記光学機能層を形成する棒状化合物が透明基板に浸透し易いため、透明基板と光学機能層との密着性をより向上することできるからである。また、トリアセチルセルロースは、負のCプレートとしての性質を発現しやすいことから、上記棒状化合物のランダムホモジニアス配向を形成することが容易になるからである。ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。
【0057】
3.光学特性発現性評価方法の用途
本発明の光学特性発現性評価方法の用途は特に限定されるものではなく、延伸後の光学機能フィルムの光学特性のバラツキを予想することが有用な用途であれば、あらゆる用途に用いることができる。このような用途としては、例えば、液晶表示装置に用いられる位相差フィルム、ARフィルムおよびハードコートフィルム等の製造方法の一工程として用いる例を挙げることができる。なかでも本発明の光学特性発現性評価方法は、液晶表示装置の視野角特性を補償するために用いられる位相差フィルムを製造する、位相差フィルムの製造方法の一工程として最も好適に用いられる。
すなわち、液晶表示装置に用いられる位相差フィルムは、通常、光学機能フィルムを延伸することによって、所定の光学特性を発現させるものであるが、延伸前の光学機能層には光学特性のバラツキが認められない場合であっても、延伸後の光学機能層に光学特性のバラツキが発生することが少なくない。
この点、本発明の光学特性発現性評価方法を用いることにより、事前に延伸後の光学特性のバラツキを評価することができるため、例えば、評価結果に基づいて延伸条件を制御したり、あるいは評価結果に基づいて光学機能フィルムを作製する工程の条件決定を行うことにより、光学特性のバラツキが少ない位相差フィルムを製造することができる。
【0058】
なお、本発明の光学特性発現性評価方法を位相差フィルムの製造方法に用いる例としては、例えば、後述する「B.位相差フィルムの製造方法」の項において説明する例を挙げることができる。
【0059】
B.位相差フィルムの製造方法
次に、本発明の位相差フィルムの製造方法について説明する。本発明の位相差フィルムの製造方法は、透明基板を用い、上記透明基板上に紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層を形成する光学機能層形成工程と、上記光学機能層に紫外線を照射することによって、上記紫外線硬化性光学機能材料を硬化させる、硬化処理工程と、上記光学機能層の光学特性の発現性を評価する、光学特性発現性評価工程と、上記光学機能層が積層された透明基板を延伸する延伸工程と、を有する位相差フィルムの製造方法であって、上記光学特性発現性評価工程において、上記光学機能層の光学特性発現性を評価する方法が、上記本発明に係る光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法であることを特徴とする位相差フィルムの製造方法を提供する。
【0060】
本発明によれば、上記光学特性発現性評価工程において本発明に係る光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法により光学機能層の光学特性発現性が評価されることにより、上記延伸工程前に、上記延伸工程後に光学機能層に生じる光学特性のバラツキを評価することができる。このため、例えば、上記光学特性発現性評価工程における評価結果に基づいて、上記延伸工程の延伸条件を制御したり、あるいは上記光学特性発現性評価工程における評価結果に基づいて光学機能層形成工程における光学機能層の形成条件、硬化処理工程における紫外線の照射方法・条件を決定することにより、延伸後においても光学特性のバラツキが少ない位相差フィルムを製造することができる。
【0061】
本発明の位相差フィルムの製造方法は少なくとも、光学機能層形成工程と、硬化処理工程と、光学特性発現性評価工程と、延伸工程とを有するものであり、必要に応じて他の工程を有してもよいものである。
以下、本発明に用いられる各工程について順に説明する。
【0062】
1.光学機能層形成工程
まず、本発明に用いられる光学機能層形成工程について説明する。本工程は、透明基板を用い、上記透明基板上に紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層を形成する工程である。
【0063】
本工程において透明基板上に光学機能層を形成する方法としては、所望の紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層を形成できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層形成用塗工液を、上記透明基板上に塗工する方法や、紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有するフィルムを上記透明基板に貼り合わせる方法等を挙げることができる。本工程においてはこれらのいずれの方法であっても好適に用いることができるが、なかでも紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層形成用塗工液を、上記透明基板上に塗工する方法が好ましい。
以下、このような方法により光学機能層を形成する具体的な方法について説明する。
【0064】
上記光学機能形成用塗工液としては、通常、紫外線硬化性光学機能材料と、光重合開始剤とが、溶媒に溶解(あるいは分散)されたものが用いられる。このような光学機能層形成用塗工液に用いられる溶媒としては、上記紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を所望の濃度で溶解できるものであれば特に限定されない。本発明に用いられる溶媒としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒、メタノール、エタノール、およびプロパノール等のアルコール系溶媒を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、本発明に用いられる溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の溶媒の混合溶媒でもよい。
【0065】
上記光学機能層形成用塗工液中における上記紫外線硬化性光学機能材料の含有量は、上記光学機能層形成用塗工液を透明基板上に塗布する塗工方式等に応じて、上記光学機能層形成用塗工液の粘度を所望の値にできる範囲内であれば得に限定されない。なかでも本発明においては、上記紫外線硬化性光学機能材料の含有量が、上記光学機能層形成用塗工液中、10質量%〜50質量%の範囲内が好ましく、特に10質量%〜25質量%の範囲内が好ましく、なかでも10質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましい。
ここで、本工程に用いられる紫外線硬化性光学機能材料については、上記「A.光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0066】
また、上記光学機能層形成用塗工液中における上記光重合開始剤の含有量は、上記紫外線硬化性光学機能材料の種類や含有量に応じて、上記紫外線硬化性光学機能材料を硬化させるのに十分な量であれば特に限定されるものではない。なかでも本発明においては、上記光重合開始剤の含有量が、上記紫外線硬化性光学機能材料に対して、0.5重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましく、1重量部〜15重量部の範囲内であることがより好ましく、3重量部〜10重量部の範囲内であることがさらに好ましい。
ここで、本工程に用いられる光重合開始剤については、上記「A.光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0067】
さらに、上記光学機能層形成用塗工液中には、上記紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤以外に他の化合物が含まれていてもよい。本発明に用いられる他の化合物としては、本発明により製造される位相差フィルムの用途に応じて、所望の機能を有する化合物を適宜選択した用いることができる。
ここで、本工程に用いられる他の化合物については、上記「A.光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法」の項において、光学機能層に含有させることができる他の化合物として説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0068】
次に、本工程において光学機能層形成用塗工液を透明基板上に塗工する方法について説明する。本工程において上記光学機能層形成用塗工液を、透明基板上に塗工する塗布方式としては、所望の平面性を達成できる方法であれば特に限定されるものではない。このような方法としては、例えば、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができるが、これに限られるものではない。
【0069】
上記光学機能層形成用塗工液の塗膜の厚みについても、所望の平面性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましく、特に0.5μm〜30μmの範囲内が好ましく、なかでも0.5μm〜10μmの範囲内が好ましい。光学機能層形成用塗工液の塗膜の厚みが上記範囲より薄いと形成される光学機能層の平面性を損なってしまう場合があり、また厚みが上記範囲より厚いと、溶媒の乾燥負荷が増大し、生産性が低下してしまう可能性があるからである。
【0070】
上記光学機能層形成用塗工液の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、本工程における乾燥方法は、単一の方法に限られず、例えば残留する溶媒量に応じて順次乾燥方式を変化させる等の態様により、複数の乾燥方式を採用してもよい。
【0071】
2.硬化処理工程
次に、本発明に用いられる効果処理工程について説明する。本工程は、上記光学機能層形成工程によって形成された光学機能層に紫外線を照射することによって、上記光学機能層に含まれる紫外線硬化性光学機能材料を硬化させる工程である。
【0072】
本工程において光学機能層に照射する紫外線としては、上記紫外線硬化性光学機能材料が有する重合性官能基の種類に応じて、当該重合性官能基を重合させることができる波長範囲のものであれば特に限定されるものではない。なかでも本工程において照射される紫外線の波長は、150nm〜500nmの範囲内であることが好ましく、250nm〜450nmの範囲内であることがより好ましく、300nm〜400nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0073】
また、本工程において紫外線を照射するために用いられる光源としては、所望の波長の紫外線を照射できるものであれば特に限定されるものではない。このような光源としては、例えば、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。中でも、メタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。また、照射強度は、光重合開始剤の含有量等によって適宜調整して照射することができる。
【0074】
3.光学特性発現性評価工程
次に、本発明に用いられる光学特性発現性評価工程について説明する。本工程は、上述した硬化処理工程において硬化された光学機能層の光学特性の発現性を評価する工程である。また、本工程は評価方法として、上記本発明に係る光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法が用いられることを特徴とするものである。
【0075】
ここで、本工程に用いられる光学特性発現性評価方法については、上記「A.光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法」の項において説明したものと同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0076】
4.延伸工程
次に、本発明における延伸工程について説明する。本工程は上記硬化処理工程において硬化された光学機能層を有する透明基板を、上記光学機能層とともに延伸する工程である。
【0077】
本工程において透明基板および光学機能層を延伸する方法としては、光学機能層に所望の光学特性を発現させることができる方法であれば特に限定されるものではない。したがって、本工程に用いられる延伸方法は、一軸延伸であってもよく、あるいは二軸延伸であってもよい。また、二軸延伸は、アンバランス二軸延伸処理を実施してもよい。ここで、アンバランス二軸延伸は、ある方向に一定倍率延伸した後、それと垂直な方向にそれ以上の倍率に延伸する方法である。
【0078】
また、本工程に用いられる延伸方式としては、例えば、ロール延伸法、長間隙沿延伸法、テンター延伸法、チューブラー延伸法等の任意の延伸方法により適宜行うことができる。また、延伸に当たり、高分子フィルムは、例えばガラス転移点温度以上、溶融温度(乃至は融点温度)以下などに加熱されることが好ましい。
【0079】
5.位相差フィルムの製造方法
次に、本発明の位相差フィルムの実施態様について説明する。本発明の位相差フィルムの製造方法は、上記光学特性発現性評価工程が用いられていることにより、光学特性のバラツキが少ない位相差フィルムを製造できるという効果を奏するものである。本発明の位相差フィルムの製造方法が、このような奏し得る実施態様としては、次の2態様を挙げることができる。
まず、第1の実施態様としては、上記光学特性発現性評価工程の結果に基づいて、延伸工程の延伸工程の延伸条件を調整する態様を挙げることができる。このような態様によれば、上記光学特性発現性評価工程において、延伸前に延伸後の光学特性のバラツキを予測することができるため、予測された光学特性のバラツキが生じないように延伸条件を調整することにより、バラツキの少ない位相差フィルムを作製することができる。
延伸条件の調整としては、例えば、延伸倍率の変更や、延伸温度の調整等を例示することができる。
【0080】
一方、第2の実施態様としては、上記光学特性発現性評価工程の結果に基づいて、上記光学機能層形成工程または硬化処理工程の工程条件を決定する態様を挙げることができる。すなわち、上述したように光学特性発現性評価工程において光学機能層の蛍光強度にバラツキが認められた場合は、それに対応して延伸後の光学特性にバラツキが生じることから、本実施態様は、上記光学特性発現性評価工程において確認される光学機能層の蛍光強度のバラツキを低減するように、上記光学機能層形成工程または硬化処理工程の工程条件を決定することにより、延伸前において光学機能層の蛍光強度のバラツキを低減する態様である。このような態様によっても、延伸後に光学特性のバラツキが生じることを防止できるため、光学特性のバラツキが少ない位相差フィルムを製造することができる。
上記光学機能層形成工程の工程条件の調整としては、例えば、透明基板上に塗布する光学機能層形成用塗工液の膜厚分布を調整する方法等を挙げることができる。また、上記硬化処理工程の工程条件の調整としては、例えば、紫外線の照射強度が光学特性の全面に渡って均一になるように調整する方法等を挙げることができる。
【0081】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0082】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。
【0083】
1.実施例1
(1)位相差フィルムの作製
下記式(A)に示される重合性液晶化合物をシクロヘキサノンに15質量%になるように溶解させ、さらに光重合開始剤を固形分に対して4質量%加えることにより、光学機能層形成用塗工液を調整した。
次いで、透明基板として幅1000mmのトリアセチルセルロースフィルム(以下、TACフィルム)(富士フィルム社製、商品名:TF80UL)を用い、上記光学機能層形成用塗工液を、当該透明基板の表面に乾燥後の塗工量が2.5g/mとなるように塗工した。
次いで、40℃で加熱して溶剤を乾燥除去し、塗工面に紫外線を照射することにより、上記重合性液晶化合物を固定化して光学機能フィルムを形成した。紫外線照射装置は、照射ランプがフィルム搬送方向に対して直行方向に対して2cm間隔で4本のランプ用いられており、ランプとフィルム間距離を53mmとした。このとき得られた厚み方向位相差値は、光学フィルムの短尺方向すなわち幅方向に対してほぼ一定のRth=125nmであった。
【0084】
【化3】

【0085】
得られた光学機能フィルムの短尺方向すなわち幅方向に対して、50mm間隔で19箇所についてミツワ理化学社製蛍光強度測定装置により測定した。
【0086】
次に、作製した光学機能フィルムを延伸装置により、延伸倍率が1.2倍になるように165℃で加熱しながら光学機能フィルムの長手方向の端部の二辺を固定端としてこれに直交する方向に一軸延伸を行うことにより、位相差フィルムを作製した。得られた延伸光学フィルムは、−Bプレートとなっていた。
【0087】
(2)評価
上記実施例において、延伸前の光学機能フィルムにおける幅方向の蛍光強度のバラツキと、延伸後の位相差フィルムにおける幅方向の面内位相差のバラツキとを図3に示す。図3に示すように、延伸前の蛍光強度のバラツキと、延伸後の位相差値のバラツキは対応関係にあり、延伸後の位相差値のバラツキを、延伸前の蛍光強度のバラツキによって評価することができることが分かる。
【0088】
2.実施例2
(1)位相差フィルムの作製
実施例1にて照射ランプとフィルム間距離を100mmとしたこと以外は実施例1と同様にして光学機能フィルムを得た。
得られた光学フィルムを実施例1と同様にして蛍光強度を測定した。
【0089】
次に、作製した光学機能フィルムを実施例1と同様にして延伸して−Bプレートを得た。
【0090】
(2)評価
上記実施例において、延伸前の光学機能フィルムにおける幅方向の蛍光強度のバラツキと、延伸後の位相差フィルムにおける幅方向の面内位相差のバラツキと、を図4に示す。図4に示すように、延伸前の蛍光強度のバラツキと、延伸後の位相差値のバラツキは対応関係にあり、延伸後の位相差値のバラツキを、延伸前の蛍光強度のバラツキによって評価することができることが分かる。
【0091】
3.比較例
(1)位相差フィルムの作製
実施例1と同様の方法により光学機能フィルムを作製した。次に、作製した光学機能フィルムについて日本分光社製FT/IR−610にて硬化度の測定を行った。硬化度の測定は、アクロイル基の炭素−炭素二重結合に起因する810/cm付近の吸収ピーク(A)、カルボニル基の炭素−酸素伸縮振動に起因する1700/cm付近の吸収ピーク(B)から計算される。測定の結果、幅方向に硬化度のバラツキを見出すことはできなかった。
【0092】
(2)評価
上記実施例において、延伸前の光学機能フィルムにおける幅方向の硬化度のバラツキと、延伸後の位相差フィルムにおける幅方向の面内位相差のバラツキと、をグラフ図5に示す。図5に示すように、延伸前の硬化度のバラツキと、延伸後の位相差値のバラツキは対応関係になく、延伸前の硬化度のバラツキでは、延伸後の位相差値のバラツキを評価することができないことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】一般的な液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図2】位相差フィルムが用いられた液晶表示装置の一例を示す概略図である。
【図3】延伸前の光学機能フィルムにおける幅方向の蛍光強度のバラツキと、延伸後の位相差フィルムにおける幅方向の面内位相差のバラツキとを示すグラフである。
【図4】延伸前の光学機能フィルムにおける幅方向の蛍光強度のバラツキと、延伸後の位相差フィルムにおける幅方向の面内位相差のバラツキとを示すグラフである。
【図5】延伸前の光学機能フィルムにおける幅方向の硬化度のバラツキと、延伸後の位相差フィルムにおける幅方向の面内位相差のバラツキとを示すグラフである。
【符号の説明】
【0094】
101 … 液晶セル
102A、102B … 偏光板
103,104 … 位相差フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、前記透明基板上に形成され、紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層とを有する光学機能フィルムを用い、
前記光学機能層の蛍光強度を測定することにより、光学機能フィルムの光学特性発現性を評価することを特徴とする、光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法。
【請求項2】
前記光学機能フィルムが長尺状の連続体であり、前記光学機能フィルムの長手方向に対して面内の直交する方向の蛍光強度を測定することを特徴とする請求項1に記載の光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法。
【請求項3】
透明基板を用い、前記透明基板上に紫外線硬化性光学機能材料および光重合開始剤を含有する光学機能層を形成する、光学機能層形成工程と、
前記光学機能層に紫外線を照射することによって、前記紫外線硬化性光学機能材料を硬化させる、硬化処理工程と、
前記光学機能層の光学特性の発現性を評価する、光学特性発現性評価工程と、
前記光学機能層が積層された透明基板を延伸する延伸工程と、を有する位相差フィルムの製造方法であって、
前記光学特性発現性評価工程において、前記光学機能層の光学特性発現性を評価する方法が、請求項1または請求項2に記載の光学機能フィルムの光学特性発現性評価方法であることを特徴とする、位相差フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記紫外線硬化性光学機能材料が重合性液晶材料であることを特徴とする、請求項3に記載の位相差フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−180786(P2009−180786A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17516(P2008−17516)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】