説明

光学機能フィルムの製造方法、並びに光学機能フィルム、偏光板、及び画像表示装置

【課題】層間密着性に優れる光学機能フィルム、層間密着性と共に反射防止性と耐傷性の向上した反射防止フィルムを生産性よく提供する。また、光学補償フィルムあるいは反射防止フィルムを用いた偏光板並びにこれらフィルムあるいは偏光板を備えたディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】 フルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位の含有率が10質量%以上のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有し、かつ該フルオロ脂肪族基含有共重合体が該機能層表面に偏在することを特徴とし、該光学機能層がバックアップロールによって支持されて連続走行する透明支持体の表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布したのちに、溶剤乾燥、必要に応じて電離放射線または熱で硬化する方法で形成されることを特徴とする光学機能フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機能フィルム、反射防止フィルム、該光学機能フィルム及び/又は反射防止フィルムを用いた偏光板、並びにこれらの光学機能フィルム、反射防止フィルム、あるいは偏光板を備えた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光学機能フィルムとしての反射防止フィルムは、一般に、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するようにディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
このような反射防止フィルムは、一般的には支持体上に適切な膜厚で、支持体より屈折率の低い低屈折率層を形成することにより作製できる。低い反射率を実現するために低屈折率層にはできるだけ屈折率の低い材料が望まれる。また反射防止フィルムはディスプレイの最表面に用いられるため高い耐擦傷性が要求される。厚さ100nm前後の薄膜において、高い耐擦傷性を実現するためには、皮膜自体の強度、および下層への密着性が必要である。
【0004】
近年ディスプレイの薄型化、大型化の流れに伴い、反射防止フィルムもより広い面積で均一な面状を要求されるようになっている。また反射防止フィルムの生産性を向上することがコストダウンの観点から求められており、塗布の高速化は必須の技術である。ただし、塗布速度の高速化は、同伴風や乾燥風による膜厚ムラを生じさせやすく、反射防止フィルムで要求される面状均一性を維持することが難しくなる。ここで言う面状均一性とは、反射防止性能に代表される光学性能のバラツキ、耐擦傷性能などの膜物性のバラツキ、および目視による反射色味のバラツキがディスプレイにおける全表示部内で小さいことを言う。
【0005】
この塗布高速化に伴う膜厚ムラを改善するためには、塗布液のレベリング性を向上させることが有効であることが知られている。レベリング性を向上させる一つの手段として、塗布液中に界面活性剤を添加する方法が提案されている。塗布液に界面活性剤を添加すると表面張力が低下して被塗布物への濡れを改良し、塗膜形成過程での表面張力変化を小さく、または低下させて熱対流を防止して膜の均一性を改良するという機構に基づいている(非特許文献1参照)。
【0006】
特許文献1には、炭素数6以下のパーフルオロアルキル基を有するフッ素系ポリマー型界面活性剤を用いて優れたレベリング性を実現できた例が開示されている。しかしながら、フッ素系界面活性剤を用いて塗布を行うとレベリング効果により均一な膜は出来るものの、乾燥後に出来る塗膜の表面自由エネルギーが低くなるため、その面を他の材料と貼り付けたり、その上に更に塗布を行ったりする場合に界面での密着が弱くなり耐擦傷性が悪化するという問題があった。
【0007】
また、塗布液中に界面活性剤を添加すると一般的に表面張力が低下し、それに伴い、塗布時のスジや塗り付き速度の限界が低下するという問題が生じる。反射防止フィルムの塗布方式としてはこれまでディップコート法、マイクログラビア法、リバースロールコート法などが主に用いられてきた。ディップコート法は液受け槽中の塗布液振動が不可避であり、段状のムラが発生しやすい。リバースロールコート法、マイクログラビア法では、塗布に関連するロールの偏芯やたわみにより段状のムラが発生しやすい。加えて、マイクログラビア法ではグラビアロールの製作精度や、ブレードとグラビアロールの当たりによるロールやブレードの経時変化により塗布量ムラを発生しやすい。また、これらの塗布方式は後計量方式であるため、安定した膜厚の確保が比較的困難である。そのためこれらの塗布方式ではある速度以上の塗布の高速化が困難であり、蒸着法などに比べれば生産性が高いものの、塗布本来の生産性の高さが活かし切れていない。
【0008】
特許文献2において反射防止層をダイコート法により塗布する方法が提案されている。ダイコート法は前計量塗布方式であるため、膜厚の安定性が高い利点がある。但し、通常一般的に用いられているダイの構成を用いて塗布を行うと、前記の各種塗布方式と同程度の高速性しか実現することが出来ない。具体的には、反射防止層のような薄層塗布では透明支持体の搬送方向と垂直及び並行な向きに発生する膜厚ムラが顕著に発生し、膜厚の安定性を保つことが難しい。前記特許においてはダイの構成として特に制限はなく、一般的なダイを想定しており、ダイの形状等においては特に提案を行っていない。一方、特許文献3、特許文献4ではダイの構成を工夫することによって精度良く薄層の塗布が行える事を示している。この方法を用いることで反射防止層のような薄層を精度良く塗布することが可能となるが、特許文献2で示されるダイコート法、特許文献3で示されるダイコート法共に液の種類によっては高速での塗布が困難であり、時には塗り付け自体が不可能である事が見受けられていた。
【0009】
【特許文献1】特開2002−249706号公報
【特許文献2】特開平7−151904号公報
【特許文献3】特開2003-200097号公報
【特許文献4】特開2003−211052号公報
【非特許文献1】コーティング用添加剤の最新技術、桐生春雄監修、シーエムシー、2001年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、層間密着が十分な光学機能フィルムおよびその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、反射防止性と耐傷性を有し、しかも高速塗布により製造することができる反射防止フィルムを提供することにある。
本発明の他の目的は、反射防止フィルムなどの上記光学機能フィルムを用いた偏光板を提供することにある。
本発明のさらなる他の目的は、反射防止フィルムなどの上記光学機能フィルム、あるいは偏光板を備えた画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、特定の添加剤が下層を塗布する時には表面に偏在して膜厚ムラを低減し、上層を塗布する時には上層を形成する組成物中に拡散することで、該添加剤が下層表面(上層と下層との界面)に偏在することがなくなり、高速塗布においても面状の均一性を保つことができ、かつ上層と下層の密着性が優れ、その結果より耐擦傷性の強い反射防止フィルムを提供できることを見出した。
また、上記塗布液の溶剤、塗布量、物性を選択し、特定の塗布方式で塗布することで、良好な塗布面状も合わせて得られることが判った。
本発明によれば、下記構成の光学機能フィルム、その製造方法、反射防止フィルム、偏光板、及びディスプレイ装置が提供され、上記目的が達成される。
【0012】
1.フルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位の含有率が10質量%以上のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有し、かつ該フルオロ脂肪族基含有共重合体が表面に偏在する光学該機能層を有する光学機能フィルムを製造するに際して、該光学機能層がバックアップロールによって支持されて連続走行する透明支持体の表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布したのちに、溶剤乾燥し、必要に応じて電離放射線または熱で硬化する方法で形成されることを特徴とする光学機能フィルムの製造方法。
2.スロットダイの透明支持体進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さを30μm以上100μm以下とするスロットダイを使用し、前記スロットダイを塗布位置にセットしたときに、前記ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブの隙間を、前記ウェブ進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて塗布されることを特徴とする上記1に記載の光学機能フィルムの製造方法。
【0013】
3.上記1又は2に記載の製造方法で作製したことを特徴とする光学機能フィルム。
4.フルオロ脂肪族基含有共重合体が表面に偏在する光学機能層の上にさらに上層を塗設したことを特徴とする上記3に記載の光学機能フィルム。
5.透明支持体上に光学機能層として光散乱層が形成され、更に該光散乱層上に低屈折率層を含む1層以上の薄膜層が形成された反射防止フィルムであって、前記光散乱層は、平均粒子径0.5〜5μmの透光性粒子の少なくとも1種を透光性樹脂に分散してなり、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、かつ該透光性粒子の含有量がが光散乱層の全固形分の3〜30質量%であることを特長とする上記4に記載の光学機能フィルム。
6.透明支持体上に、少なくとも2層の光学機能層を隣接して有する光学機能フィルムであって、フルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する光学機能層用塗布液が粘度が2〜15mPa・secであり、透明支持体に塗り付けられる塗布液量が5〜25cc/m2であり、かつ、該共重合体の添加により表面張力が1mN/m以上低下する塗布液であることを特徴とする上記3〜5のいずれかに記載の光学機能フィルム。
7.フルオロ脂肪族基含有共重合体が、側鎖に炭素数4以上のパーフルオロアルキル基または炭素数4以上のCF2H−基を有するフルオロアルキル基を有する共重合体であることを特徴とする上記3〜6のいずれかに記載の光学機能フィルム。
8.透明支持体上に、少なくとも2層の光学機能層を隣接して有する光学機能フィルムであって、隣接した複数の光学機能層のうち、支持体から遠い側の層が、フルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位の含有率が10質量%以上のフルオロ脂肪族基含有共重合体を支持体に近い層に対して多く含有することを特徴とする上記3〜7のいずれかに記載の光学機能フィルム。
9.隣接した複数の光学機能層が電離放射線硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂の硬化組成物を含有することを特徴とする上記3〜8のいずれかに記載の光学機能フィルム。
【0014】
10.透明支持体上に、少なくとも第1の光学機能層と第2の光学機能層を隣接してこの順序で形成することからなる上記4〜9のいずれかに記載の光学機能フィルムの製造方法であって、該第1の光学機能層を形成した後、該第2の光学機能層を形成する塗布液の溶媒を第1の光学機能層上に塗布すると、該第1の光学機能層の表面自由エネルギーが1mN/m以上変化することを特徴とする光学機能フィルムの製造方法。
11.第1の光学機能層を形成するための塗布組成物がフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位の含有率が10質量%以上のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有し、該第1の光学機能層を形成するための塗布組成物を塗布するときには、該フルオロ脂肪族基含有共重合体が該第1の光学機能層の表面に偏在し、該第2の光学機能層を塗布するときには、該フルオロ脂肪族基含有共重合体が該第2の光学機能層を形成するための塗布組成物中に溶出することを特徴とする上記10に記載の光学機能フィルムの製造方法。
12.上記3〜9のいずれかに記載の光学機能フィルム、または上記1、2、10,11のいずれかに記載の製造方法で製造された光学機能フィルムが、偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
13.上記3〜9のいずれかに記載の光学機能フィルム、上記1、2、10,11のいずれかに記載の製造方法で製造された光学機能フィルム、または上記12に記載の偏光板が、ディスプレイ面の最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光学機能フィルム、特に反射防止フィルムは、十分な反射防止性を有しながら耐傷性に優れる。また、面状に優れ、ムラが少なく、塗布適性にも優れる。更に、本発明の光学機能フィルムまたは反射防止フィルムを備えた画像表示装置、並びに本発明の光学機能フィルムまたは反射防止フィルムを用いた偏光板を備えた画像表示装置は、外光の映り込みや背景の映りこみが少なく、極めて視認性が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の一形態として、本発明の光学機能フィルムの好適な一態様である反射防止フィルムの基本的な構成を図面を参照しながら説明する。なお、本明細書において、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
図1(a)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの一例であり、反射防止フィルム1は、透明支持体2、三種類の機能層(ハードコート層3、防眩性ハードコート層4、低屈折率層5)、の順序の層構成を有する。防眩性ハードコート層を有するため、当然、ハードコート層を設けないことも可能である。防眩性ハードコート層4としては、透光性樹脂にマット粒子6が分散しており、防眩性ハードコート層4のマット粒子6以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層5の屈折率は1.35〜1.49の範囲にあることが好ましい。また、少なくとも1種のマット粒子の平均粒子径0.5〜5μmで、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、かつ該透光性粒子が光散乱層全固形分の3〜30質量%含有されてなることが望ましい。本発明において機能層は、このように防眩性を有するハードコート層でもよいし、防眩性を有しないハードコート層でもよく、また光拡散層でもよく、また、防眩性、散乱性の両方を有するハードコート層でもよい。1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。機能層である低屈折率層は最外層に塗設される。
さらに、低屈折率層は下記数式(VII)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(VII)
(m/4)×0.7<n11<(m/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
なお、上記数式(VII)を満たすとは、上記波長の範囲において数式(VII)を満たすm(正の奇数、通常1である)が存在することを意味している。
【0017】
図1(b)に模式的に示される断面図は、本発明の反射防止フィルムの一例であり、反射防止フィルム1は、透明支持体2、各々の機能層(ハードコート層3、中屈折率層7、高屈折率層8)、低屈折率層(最外層)5の順序の層構成を有する。透明支持体2、中屈折率層7、高屈折率層8および低屈折率層5は、以下の関係を満足する屈折率を有する。

高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率

図1(b)のような層構成では、特開昭59−50401号公報に記載されているように、中屈折率層が下記数式(I)、高屈折率層が下記数式(II)、低屈折率層が下記数式(III)をそれぞれ満足することがより優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる点で好ましい。
【0018】
数式(I)
(hλ/4)×0.7<n11<(hλ/4)×1.3

数式(I)中、hは正の整数(一般に1、2または3)であり、n1は中屈折率層の屈折率であり、そして、d1は中屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。

数式(II)
(iλ/4)×0.7<n22<(iλ/4)×1.3

数式(II)中、iは正の整数(一般に1、2または3)であり、n2は高屈折率層の屈折率であり、そして、d2は高屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。
【0019】
数式(III)
(jλ/4)×0.7<n33<(jλ/4)×1.3

数式(III)中、jは正の奇数(一般に1)であり、n3は低屈折率層の屈折率であり、そして、d3は低屈折率層の層厚(nm)である。λは可視光線の波長(nm)であり、380〜680nmの範囲の値である。
【0020】
図1(b)のような層構成では、中屈折率層が下記数式(IV)、高屈折率層が下記数式(V)、低屈折率層が下記数式(VI)をそれぞれ満足することが、特に好ましい。ここで、λは500nm、hは1、iは2、jは1である。

数式(IV)
(hλ/4)×0.80<n11<(hλ/4)×1.00
数式(V)
(iλ/4)×0.75<n22<(iλ/4)×0.95
数式(VI)
(jλ/4)×0.95<n33<(jλ/4)×1.05
【0021】
なお、ここで記載した高屈折率、中屈折率、低屈折率とは層相互の相対的な屈折率の高低をいう。また、図1(b)では、高屈折率層を光干渉層として用いており、極めて優れた反射防止性能を有する反射防止フィルムを作製できる。
【0022】
まず本発明の光学機能フィルム、特に反射防止フィルムにおける機能層について説明する。本発明における機能層とは、光学機能層および物理機能層のどちらでもよく、光学機能層としては、低屈折率層、高屈折率層や光拡散層が挙げられ、物理機能層としてはハードコート層などが挙げられる。もちろん光学機能層と物理機能層と兼ねる場合もあり、例えば防眩性ハードコート層などが該当する。
【0023】
本発明の反射防止フィルムにおける機能層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等のない面状均一性を高速塗布にて確保するために、フルオロ脂肪族基含有共重合体を機能層形成用の塗布組成物中に含有する。このフルオロ脂肪族基含有共重合体は、より少ない添加量で、反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましい。
【0024】
しかしながら、上記のようなフルオロ脂肪族基含有共重合体を使用すると、機能層表面にF原子を含有する官能基が偏在することにより機能層の表面エネルギーが低下し、上記機能層上に低屈折率層をオーバーコートしたときに反射防止性能および耐擦傷性能が悪化する問題が生じる。
反射防止性能が低下するのは、低屈折率層を形成するために用いられる塗布組成物の濡れ性が悪化するために、低屈折率層の膜厚に目視では検知できない程度の微小なムラが生ずるためと推定される。耐擦傷性能が悪化するのは、機能層と低屈折率層の界面の表面エネルギー差が大きくなり、密着性が悪化するためと推定される。
【0025】
本発明では、これらの問題を解決するために、フルオロ脂肪族基含有共重合体の構造を選択することにより、機能層表面に偏在した共重合体を上層(例えば低屈折率層)塗布時に上層の溶媒に抽出させて、本発明の反射防止膜を形成した時には機能層表面(機能層界面)に存在させないことが有効であることを見出した。さらに、フルオロ脂肪族基含有共重合体の添加量を調整することも、上記の効果を改良することに有効である。
【0026】
本発明の反射防止フィルムにおいて、高速塗布時の機能層の面状均一性を得るためには、機能層塗布液中にフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位を10質量%以上含むフルオロ脂肪族基含有共重合体を添加し、フルオロ脂肪族基含有共重合体が表面に偏析(偏在と同意である)することが必要であり、フルオロ脂肪族基含有共重合体の添加によって該塗布液の表面張力が1mN/m以上低下することが好ましい。
【0027】
更に本発明の反射防止フィルムにおいて、上層との密着性を得るためには、前記フルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する機能層上に上層を形成する塗布液の溶媒を塗布、乾燥することで、該機能層の表面自由エネルギーが1mN/m以上変化することが好ましく、3mN/m以上変化することがより好ましい。
本発明のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する塗布組成物により第1の機能層を形成し、さらにその上に第2の機能層を形成した光学機能フィルムでは、第1の機能層を形成を形成したときにはその表面にフルオロ脂肪族基含有共重合体が偏在するが、第2の機能層を塗布したときには、第1の機能層の表面に偏在していたフルオロ脂肪族基含有共重合体が第2の機能層中に拡散するので、第2の機能層中のフルオロ脂肪族基含有共重合体の含有量が多くなる。
【0028】
フルオロ脂肪族基含有共重合体(「フッ素系ポリマー」と略記することもある)は、側鎖に炭素数4以上のパーフルオロアルキル基または炭素数4以上のCF2H−基を有するフルオロアルキル基を有する共重合体であることが好ましい。
なかでも、下記(i)のモノマーに相当する繰り返し単位(重合単位)および下記(ii)のモノマーに相当する繰り返し単位(重合単位)を含むアクリル樹脂、メタアクリル樹脂、及びこれらに共重合可能なビニル系モノマーとの共重合体が有用である。このような単量体としては、PolymerHandbook 2nd ed.,J.Brandrup,Wiley lnterscience(1975)Chapter 2Page 1〜483記載のものを用いることが出来る。
例えばアクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等をあげることができる。
【0029】
(i)下記一般式1で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマー
一般式1
【0030】
【化1】

【0031】
上記一般式1において、R1は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基が好ましい。Xは酸素原子、イオウ原子または−N(R12)−を表し、酸素原子または−N(R12)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R12は水素原子または置換基を有しても良い炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。Rfは−CF3または−CF2Hを表す。
一般式1中のmは1〜6の整数を表し、1〜3がより好ましく、1であることが更に好ましい。
一般式1中のnは1〜17の整数を表し、4〜11がより好ましく、6〜7が更に好ましい。Rfは−CF2Hが好ましい。
またフッ素系ポリマー中に一般式1で表されるフルオロ脂肪族基含有モノマーから誘導される重合単位が2種類以上構成成分として含まれていても良い。
【0032】
(ii)上記(i)のモノマーと共重合可能な下記一般式2で示されるモノマー
一般式3
【0033】
【化2】

【0034】
上記一般式2において、R13は水素原子、ハロゲン原子またはメチル基を表し、水素原子、メチル基がより好ましい。Yは酸素原子、イオウ原子または−N(R15)−を表し、酸素原子または−N(R15)−がより好ましく、酸素原子が更に好ましい。R15は水素原子または炭素数1〜8のアルキル基を表し、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、水素原子またはメチル基が更に好ましい。
14は、置換基を有しても良い炭素数1〜60の直鎖、分岐、あるいは環状のアルキル基、または置換基を有していても良い芳香族基(例えば、フェニル基またはナフチル基)を表す。該アルキル基はポリ(アルキレンオキシ)基を含んでも良い。炭素数1〜12の直鎖、分岐あるいは環状のアルキル基、炭素数5〜40のポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基または総炭素数6〜18の芳香族がより好ましく、炭素数1〜8の直鎖、分岐、または環状のアルキル基および炭素数炭素数5〜30のポリ(アルキレンオキシ)基を含むアルキル基が極めて好ましい。以下にポリ(アルキレンオキシ)基について説明する。
【0035】
ポリ(アルキレンオキシ)基は(OR)xで表すことができ、Rは2〜4個の炭素原子を有するアルキレン基、例えば−CH2CH2−、−CH2CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、または−CH(CH3)CH(CH3)−であることが好ましい。xは2〜30を表し、2〜20が好ましく、4〜15がさらに好ましい。
前記のポリ(オキシアルキレン)基中のオキシアルキレン単位はポリ(オキシプロピレン)におけるように同一であってもよく、また互いに異なる2種以上のオキシアルキレンが不規則に分布されたものであっても良く、直鎖または分岐状のオキシプロピレンまたはオキシエチレン単位であったり、または直鎖または分岐状のオキシプロピレン単位のブロック及びオキシエチレン単位のブロックのように存在するものであっても良い。
このポリ(オキシアルキレン)鎖は1つまたはそれ以上の連鎖結合(例えば−CONH−Ph−NHCO−、−S−など:Phはフェニレン基を表す)で連結されたものも含むことができる。連鎖の結合が3つまたはそれ以上の原子価を有する場合には、これは分岐鎖のオキシアルキレン単位を得るための手段を供する。またこの共重合体を本発明に用いる場合には、ポリ(オキシアルキレン)基の分子量は250〜3000が適当である。
ポリ(オキシアルキレン)アクリレート及びメタクリレートは、市販のヒドロキシポリ(オキシアルキレン)材料、例えば商品名“プルロニック”[Pluronic](旭電化工業(株)製)、アデカポリエーテル(旭電化工業(株)製)“カルボワックス[Carbowax(グリコ・プロダクス)]、”トリトン“[Toriton(ローム・アンド・ハース(Rohm and Haas製))およびP.E.G(第一工業製薬(株)製)として販売されているものを公知の方法でアクリル酸、メタクリル酸、アクリルクロリド、メタクリルクロリドまたは無水アクリル酸等と反応させることによって製造できる。別に、公知の方法で製造したポリ(オキシアルキレン)ジアクリレート等を用いることもできる。
【0036】
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの製造に用いられる上記一般式1で示されるフルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、該フッ素系ポリマーの単量体全量に基づいて、10質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは70〜100質量%であり、さらに好ましくは80〜100質量%の範囲である。
【0037】
フルオロ脂肪族基含有モノマーの量は、本発明に用いる塗布方式で高速化するときにも重要であり、該フッ素系ポリマーの単量体全量に基づいて、10質量%以下であると、塗布液へ添加時の液の表面張力の低下が大きく、高速塗布時の安定性が悪くなり、塗布スジがより低速で出やすくなる。その観点からも、フルオロ脂肪族基含有モノマーの量は上記範囲内であることが望ましい。
【0038】
本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい質量平均分子量は、3000〜100,000が好ましく、6,000〜80,000がより好ましく、8,000〜60,000が更に好ましい。
ここで、質量平均分子量及び分子量は、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したGPC分析装置により、溶媒THF、示差屈折計検出によるポリスチレン換算で表した分子量である。分子量は300以上の成分のピーク面積から算出した。
【0039】
更に、本発明で用いられるフッ素系ポリマーの好ましい添加量は、添加による効果の発現、乾燥、および面状故障の発生の抑制などの観点から、塗布液の質量に対して0.001〜5質量%の範囲であり、好ましくは0.005〜3質量%の範囲であり、更に好ましくは0.01〜1質量%の範囲である。
【0040】
以下、本発明によるフッ素系ポリマーの具体的な構造の例を示すがこの限りではない。なお、式中の数字は各モノマー成分のモル比率を示す。Mwは質量平均分子量を表す。
【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

【0050】
本発明の反射防止フィルムにおいて機能層(防眩性ハードコート層、光拡散層、高屈折率層、ハードコート層等)および低屈折率層を形成するための塗布液に用いる溶媒について以下に説明する。
【0051】
塗布溶媒は、例えば、沸点が100℃以下の溶媒としては、ヘキサン(沸点68.7℃、以下「℃」を省略する)、ヘプタン(98.4)、シクロヘキサン(80.7)、ベンゼン(80.1)などの炭化水素類、ジクロロメタン(39.8)、クロロホルム(61.2)、四塩化炭素(76.8)、1,2−ジクロロエタン(83.5)、トリクロロエチレン(87.2)などのハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル(34.6)、ジイソプロピルエーテル(68.5)、ジプロピルエーテル(90.5)、テトラヒドロフラン(66)などのエーテル類、ギ酸エチル(54.2)、酢酸メチル(57.8)、酢酸エチル(77.1)、酢酸イソプロピル(89)などのエステル類、アセトン(56.1)、2−タノン(=メチルエチルケトン、79.6)などのケトン類、メタノール(64.5)、エタノール(78.3)、2−プロパノール(82.4)、1−プロパノール(97.2)などのアルコール類、アセトニトリル(81.6)、プロピオニトリル(97.4)などのシアノ化合物類、二硫化炭素(46.2)、などがある。
【0052】
沸点が100℃を越える溶媒としては、例えば、オクタン(125.7)、トルエン(110.6)、キシレン(138)、テトラクロロエチレン(121.2)、クロロベンゼン(131.7)、ジオキサン(101.3)、ジブチルエーテル(142.4)、酢酸イソブチル(118)、シクロヘキサノン(155.7)、2−メチル−4−ペンタノン(=MIBK、115.9)、1−タノール(117.7)、N,N−メチルホルムアミド(153)、 N,N−メチルアセトアミド(166)、ジメチルスルホキシド(189)、などがある。好ましくは、シクロヘキサノン、2−チル−4−ペンタノン、である。
溶剤の種類としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、エステル類が好ましく、特に好ましくはケトン類である。ケトン類の中ではメチルエチルケトンが特に好ましい。
ケトン系溶剤を用いる場合、単独および混合のいずれでもよく、混合のときはケトン系溶媒の含有量が塗布組成物に含まれる全溶媒の10質量%以上であることが好ましい。好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上である。
【0053】
本発明の反射防止フィルムにおいて、機能層および低屈折率層成分を前述の組成の溶媒で希釈することにより、それらの層用塗布液が調製される。塗布液濃度は、塗布液の粘度、層素材の比重などを考慮して適宜調節されることが好ましいが、0.1〜80質量%が好ましく、より好ましくは1〜60質量%である。
また各々の機能層の溶媒は同一組成であってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
以下に、本発明の各機能層について説明する。
[防眩性ハードコート層]
本発明の防眩性ハードコート層について以下に説明する。
防眩性ハードコート層は、ハードコート性を付与するためのバインダー、防眩性を付与するためのマット粒子から形成される。高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーをバインダー中に分散させて用いることもできる。
バインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。
飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマー(バインダー前駆体)の重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
【0055】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−クロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
【0056】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0057】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
【0058】
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
【0059】
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
【0060】
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を透明支持体上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止フィルムを形成することができる。
【0061】
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。また、ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
【0062】
防眩性ハードコート層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して20〜95質量%添加する。
【0063】
防眩性ハードコート層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1〜10μm、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは1.5〜4μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子、またはこれらの樹脂粒子の2種類以上の成分を含有する樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン、架橋アクリル、スチレンとアクリルの両方の成分を含有する架橋粒子、シリカを主成分とする粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0064】
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
【0065】
133ppi以上の高精細ディスプレイに反射防止フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子を併用することにより大きく改善することができる。また、1種類の粒子で、屈折率と粒径を調整することで、防眩性とギラツキ改善を両立することも可能である。
【0066】
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
【0067】
上記マット粒子は、形成された防眩性ハードコート層中のマット粒子量が好ましくは10〜2000mg/m2、より好ましくは100〜1400mg/m2となるように防眩性ハードコート層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0068】
防眩性ハードコート層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることもできる。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた防眩性ハードコート層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
防眩性ハードコート層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、防眩性ハードコート層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0069】
本発明に係る防眩性ハードコート層のバインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0070】
防眩性ハードコート層の膜厚は1〜10μmが好ましく、1.2〜8μmがより好ましい。
【0071】
[光拡散層]
本発明の光学機能フィルムにおける光拡散層の目的は、液晶表示装置の視野角(特に下方向視野角)を拡大し、観察方向の視角が変化してもコントラスト低下、階調または黒白反転、あるいは色相変化を抑止することである。
本発明者等は、ゴニオフォトメーターで測定される散乱光の強度分布が視野角改良効果に相関することを確認した。すなわち、バックライトから出射された光が視認側の偏光板表面に設置された光拡散フィルムに含有される透光性微粒子の内部散乱の効果により拡散されればされるほど視野角特性がよくなる。しかし、あまり拡散されすぎると、後方散乱が大きくなり、正面輝度が減少する、あるいは、散乱が大きすぎて画像鮮明性が劣化する等の問題が生じる。従って、散乱光強度分布をある範囲に制御することが必要となる。そこで、鋭意検討の結果、所望の視認特性を達成するには、散乱光プロファイルの出射角0°の光強度に対して、特に視認角改良効果と相関ある30°の散乱光強度が0.01%〜0.2%であることが好ましく、0.02%〜0.15%が更に好ましく、0.03%〜0.1%が特に好ましい。
散乱光プロファイルは、作成した光散乱フィルムについて、(株)村上色彩技術研究所製の自動変角光度計GP−5型を用いて測定できる。
【0072】
本発明の光拡散層はバインダー、無機フィラーおよび透光性微粒子から形成され、バインダー、無機フィラーは前述の防眩性ハードコート層と同様のものが使用でき、透光性微粒子は前述のマット粒子と同様のものが用いられる。
【0073】
光拡散性層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添加する。
【0074】
[高屈折率層]
本発明の反射防止フィルムでは、より良い反射防止能を付与するために、高屈折率層を好ましく用いることができる。
【0075】
<二酸化チタンを主成分とする無機微粒子>
本発明の高屈折率層には、コバルト、アルミニウム、ジルコニウムから選ばれる少なくとも1つの元素を含有する二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を含有する。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
本発明の高屈折率層の屈折率は屈折率1.55〜2.40であり、いわゆる高屈折率層あるいは中屈折率層といわれている層であるが、以下の本明細書では、この層を高屈折率層と総称して呼ぶことがある。
本発明における二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、屈折率が1.90〜2.80であることが好ましく、2.10〜2.80であることがさらに好ましく、2.20〜2.80であることが最も好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の一次粒子の質量平均径は1〜200nmであることが好ましく、より好ましくは1〜150nm、さらに好ましくは1〜100nm、特に好ましくは1〜80nmである。
【0076】
無機微粒子の粒子径は、光散乱法や電子顕微鏡写真により測定できる。無機微粒子の比表面積は、10〜400m2/gであることが好ましく、20〜200m2/gであることがさらに好ましく、30〜150m2/gであることが最も好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の結晶構造は、ルチル、ルチル/アナターゼの混晶、アナターゼ、アモルファス構造が主成分であることが好ましく、特にルチル構造が主成分であることが好ましい。主成分とは、粒子を構成する成分の中で最も含有量(質量%)が多い成分を意味する。
【0077】
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子に、Co、Al及びZrから選ばれる少なくとも1つの元素を含有することで、二酸化チタンが有する光触媒活性を抑えることができ、本発明の高屈折率層の耐候性を改良することができる。
特に、好ましい元素はCoである。また、2種類以上を併用することも好ましい。
Tiに対するCo、Al又はZrの含有量は、それぞれTiに対して0.05〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、特に好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜3質量%である。
Co、Al及びZrは、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部と表面の少なくともいずれかに存在させることができるが、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在させることが好ましく、内部と表面の両方に存在することが最も好ましい。
Co、Al、Zrを二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の内部に存在させる(例えば、ドープする)には、種々の手法がある。例えば、イオン注入法(Vol.18,No.5,pp.262-268,1998;青木 康)や、特開平11−263620号公報、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ特許出願公開第0335773号明細書、特開平5−330825号公報に記載の手法があげられる。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の粒子形成過程において、Co、Al、Zrを導入する手法(例えば、特表平11−512336号公報、ヨーロッパ特許出願公開第0335773号明細書、特開平5−330825号公報に記載)が特に好ましい。
Co、Al、Zrは、酸化物として存在することも好ましい。
二酸化チタンを主成分とする無機微粒子には、目的により、さらに他の元素を含むこともできる。他の元素は、不純物として含んでいてもよい。他の元素の例には、Sn、Sb、Cu、Fe、Mn、Pb、Cd、As、Cr、Hg、Zn、Mg、Si、PおよびSが含まれる。
【0078】
本発明に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は表面処理してもよい。表面処理は、無機化合物または有機化合物を用いて実施する。表面処理に用いる無機化合物の例には、コバルトを含有する無機化合物(CoO2,Co23,Co34など)、アルミニウムを含有する無機化合物(Al23,Al(OH)3など)、ジルコニウムを含有する無機化合物(ZrO2,Zr(OH)4など)、ケイ素を含有する無機化合物(SiO2など)、鉄を含有する無機化合物(Fe23など)などが含まれる。
コバルトを含有する無機化合物、アルミニウムを含有する無機化合物、ジルコニウムを含有する無機化合物が特に好ましく、コバルトを含有する無機化合物、Al(OH)3 表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、ステアリン酸、シランカップリング剤およびチタネートカップリング剤が含まれる。シランカップリング剤が最も好ましい。特に後記一般式3で表されるシランカップリング剤(オルガノシラン化合物)、その部分加水分解物、およびその縮合物の少なくとも一種で表面処理されていることが好ましい。一般式3で表されるシランカップリング剤は、後に詳しく説明する。
【0079】
チタネートカップリング剤としては、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、のどのテトライソプロポキシチタンなどの金属アルコキシド、プレンアクト(KR-TTS、KR-46B、KR-55、KR-41Bなど;味の素(株)製)などが挙げられる。
表面処理に用いる有機化合物の例には、ポリオール、アルカノールアミン、その他アニオン性基を有する有機化合物などが好ましく、特に好ましいのは、カルボキシル基、スルホン酸基、又は、リン酸基を有する有機化合物である。
ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレイン酸などが好ましく用いることができる。
表面処理に用いる有機化合物は、さらに、架橋又は重合性官能基を有することが好ましい。架橋、又は、重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する基である。
【0080】
これらの表面処理は、2種類以上を併用することもできる。アルミニウムを含有する無機化合物とジルコニウムを含有する無機化合物を併用することが、特に好ましい。
本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、表面処理により特開2001−166104号公報記載のごとく、コア/シェル構造を有していても良い。
【0081】
高屈折率層に含有される二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の形状は、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状あるいは不定形状であることが好ましく、特に好ましくは不定形状、紡錘形状である。
【0082】
<分散剤>
本発明の高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、分散剤を用いることができる。
本発明の二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散には、アニオン性基を有する分散剤を用いることが特に好ましい。
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(及びスルホ基)、リン酸基(及びホスホノ基)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基及びその塩が好ましく、カルボキシル基及びリン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、1個以上含有されていればよい。
無機微粒子の分散性をさらに改良する目的でアニオン性基は複数個が含有されていてもよい。平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
【0083】
分散剤は、さらに架橋又は重合性官能基を含有することが好ましい。架橋又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する官能基である。
本発明の高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子の分散に用いる好ましい分散剤は、アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤である。
アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤の質量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが1000以上であることが好ましい。分散剤のより好ましい質量平均分子量(Mw)は2,000〜1,000,000であり、さらに好ましくは5,000〜200,000、特に好ましくは10,000〜100,000である。
【0084】
アニオン性基としては、カルボキシル基、スルホン酸基(スルホ)、リン酸基(ホスホノ)、スルホンアミド基等の酸性プロトンを有する基、またはその塩が有効であり、特にカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基またはその塩が好ましく、カルボキシル基、リン酸基が特に好ましい。1分子当たりの分散剤に含有されるアニオン性基の数は、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有されるアニオン性基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
【0085】
アニオン性基、及び架橋又は重合性官能基を有し、かつ該架橋又は重合性官能基を側鎖に有する分散剤は、上記アニオン性基を側鎖又は末端に有する。
特に好ましい分散剤は、側鎖にアニオン性基を有する分散剤である。側鎖にアニオン性基を有する分散剤において、アニオン性基含有繰返し単位の組成は、全繰返し単位のうちの10-4〜100mol%の範囲であり、好ましくは1〜50mol%、特に好ましくは5〜20mol%である。
【0086】
架橋又は重合性官能基としては、ラジカル種による付加反応・重合反応が可能なエチレン性不飽和基(例えば(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、ビニルオキシ基等)、カチオン重合性基(エポキシ基、オキサタニル基、ビニルオキシ基等)、重縮合反応性基(加水分解性シリル基等、N−メチロール基)等が挙げられ、好ましくはエチレン性不飽和基を有する基である。
【0087】
1分子当たりの分散剤に含有される架橋又は重合性官能基の数は、平均で2個以上であることが好ましく、より好ましくは5個以上、特に好ましくは10個以上である。また、分散剤に含有される架橋又は重合性官能基は、1分子中に複数種類が含有されていてもよい。
【0088】
本発明に用いる好ましい分散剤において、側鎖にエチレン性不飽和基を有する繰返し単位の例としては、ポリ−1,2−ブタジエンおよびポリ−1,2−イソプレン構造あるいは、(メタ)アクリル酸のエステルまたはアミドの繰返し単位であって、それに特定の残基(−COORまたは−CONHRのR基)が結合しているものが利用できる。上記特定の残基(R基)の例としては、-(CH2)n-CR21=CR22R23 、-(CH2O)n-CH2CR21=CR22R23 、-(CH2CH2O)n-CH2CR21=CR22R23、-(CH2)n-NH-CO-O-CH2CR21=CR22R23、-(CH2)n-O-CO- CR21=CR22R23および-(CH2CH2O) 2-X(R21〜R23はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基であり、R21とR22またはR23は互いに結合して環を形成してもよく、nは1〜10の整数であり、そしてXはジシクロペンタジエニル残基である)を挙げることができる。エステル残基のRの具体例には、-CH2CH=CH2(特開昭64−17047号公報記載のアリル(メタ)アクリレートのポリマーに相当)、-CH2CH2O-CH2CH=CH2、-CH2CH2OCOCH=CH2、-CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、-CH2C(CH3)=CH2、-CH2CH=CH-C6H5、-CH2CH2OCOCH=CH-C6H5、-CH2CH2-NHCOO-CH2CH=CH2および-CH2CH2O-X(Xはジシクロペンタジエニル残基)が含まれる。アミド残基のRの具体例には、-CH2CH=CH2、-CH2CH2-Y (Yは1−シクロヘキセニル残基)および-CH2CH2-OCO-CH=CH2、-CH2CH2-OCO-C(CH3)=CH2が含まれる。
【0089】
上記のエチレン性不飽和基を有する分散剤においては、その不飽和結合基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、分子間で直接、または重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、分子間に架橋が形成されて硬化する。あるいは、分子中の原子(例えば不飽和結合基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0090】
架橋又は重合性官能基の含有単位は、アニオン性基含有繰返し単位以外の全ての繰返し単位を構成していてもよいが、好ましくは全架橋又は繰返し単位のうちの5〜50mol%であり、特に好ましくは5〜30mol%である。
本発明の好ましい分散剤は、架橋又は重合性官能基、アニオン性基を有するモノマー以外の適当なモノマーとの共重合体であっても良い。共重合成分に関しては特に限定はされないが、分散安定性、他のモノマー成分との相溶性、形成皮膜の強度等種々の観点から選択される。好ましい例としては、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、シクロへキシル(メタ)アクリレート、スチレン等が挙げられる。
本発明の好ましい分散剤の形態は特に制限はないが、ブロック共重合体またはランダム共重合体であることが好ましくコストおよび合成的な容易さからランダム共重合体であることが特に好ましい。
【0091】
以下に本発明に好ましく用いられる分散剤の具体例を示すが、本発明用の分散剤はこれらに限定されるものではない。なお特に記載の無い場合はランダム共重合体を表す。
【0092】
【化12】

【0093】
【化13】

【0094】
【化14】

【0095】
【化15】

【0096】
【化16】

【0097】
【化17】

【0098】
分散剤の無機微粒子に対する使用量は、1〜50質量%の範囲であることが好ましく、5〜30質量%の範囲であることがより好ましく、5〜20質量%であることが最も好ましい。また、分散剤は2種類以上を併用してもよい。
【0099】
<高屈折率層及びその形成法>
高屈折率層に用いる二酸化チタンを主成分とする無機微粒子は、分散物の状態で高屈折率層の形成に使用する。
無機微粒子の分散において、前記の分散剤の存在下で、分散媒体中に分散する。
分散媒体は、沸点が60〜170℃の液体を用いることが好ましい。分散媒体の例には、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ベンジルアルコール)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル)、脂肪族炭化水素(例、ヘキサン、シクロヘキサン)、ハロゲン化炭化水素(例、メチレンクロライド、クロロホルム、四塩化炭素)、芳香族炭化水素(例、ベンゼン、トルエン、キシレン)、アミド(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドン)、エーテル(例、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラハイドロフラン)、エーテルアルコール(例、1−メトキシ−2−プロパノール)が含まれる。トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンおよびブタノールが好ましい。
特に好ましい分散媒体は、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエンである。
【0100】
無機微粒子は、分散機を用いて分散する。分散機の例には、サンドグラインダーミル(例、ピン付きビーズミル)、高速インペラーミル、ペッブルミル、ローラーミル、アトライターおよびコロイドミルが含まれる。サンドグラインダーミルおよび高速インペラーミルが特に好ましい。また、予備分散処理を実施してもよい。予備分散処理に用いる分散機の例には、ボールミル、三本ロールミル、ニーダーおよびエクストルーダーが含まれる。
無機微粒子は、分散媒体中でなるべく微細化されていることが好ましく、質量平均径は1〜200nmである。好ましくは5〜150nmであり、さらに好ましくは10〜100nm、特に好ましくは10〜80nmである。
無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層を形成できる。
【0101】
本発明に用いる高屈折率層は、上記のようにして分散媒体中に無機微粒子を分散した分散液に、好ましくは、さらにマトリックス形成に必要なバインダー前駆体(前述の防眩性ハードコート層のバインダー前駆体と同様のもの)、光重合開始剤等を加えて高屈折率層形成用の塗布組成物とし、透明支持体上に高屈折率層形成用の塗布組成物を塗布して、電離放射線硬化性化合物(例えば、多官能モノマーや多官能オリゴマーなど)の架橋反応又は重合反応により硬化させて形成することが好ましい。
【0102】
さらに、高屈折率層のバインダーを層の塗布と同時または塗布後に、分散剤と架橋反応又は重合反応させることが好ましい。
このようにして作製した高屈折率層のバインダーは、例えば、上記の好ましい分散剤と電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーとが、架橋又は重合反応し、バインダーに分散剤のアニオン性基が取りこまれた形となる。さらに高屈折率層のバインダーは、アニオン性基が無機微粒子の分散状態を維持する機能を有し、架橋又は重合構造がバインダーに皮膜形成能を付与して、無機微粒子を含有する高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性を改良する。
【0103】
光重合性多官能モノマーの重合反応には、光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤が好ましく、特に好ましいのは光ラジカル重合開始剤である。
光ラジカル重合開始剤としては、前述の防眩性ハードコート層と同様のものが用いることができる。
【0104】
高屈折率層においてバインダーは、さらにシラノール基を有することが好ましい。バインダーがさらにシラノール基を有することで、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性がさらに改良される。
シラノール基は、例えば架橋又は重合性官能基を有する後述の一般式3で表されるシランカップリング剤、その部分加水分解物、あるいはその縮合物を上記の高屈折率層形成用の塗布組成物に添加し、塗布組成物を透明支持体上に塗布して上記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマー、一般式3で表されるシランカップリング剤、その部分加水分解物、あるいはその縮合物を架橋反応、又は、重合反応させることによりバインダーに導入することができる。
【0105】
高屈折率層においてバインダーは、アミノ基または四級アンモニウム基を有することも好ましい。
アミノ基または四級アンモニウム基を有する高屈折率層のバインダーは、例えば架橋又は重合性官能基とアミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーを上記の高屈折率層形成用の塗布組成物に添加し、塗布組成物を透明支持体上に塗布して上記の分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
【0106】
アミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーは、塗布組成物の中で無機微粒子の分散助剤として機能する。さらに、塗布後、分散剤、多官能モノマーや多官能オリゴマーと架橋反応、又は、重合反応させてバインダーとすることで高屈折率層における無機微粒子の良好な分散性を維持し、物理強度、耐薬品性、耐候性に優れた高屈折率層を作製することが出来る。
【0107】
アミノ基または四級アンモニウム基を有する好ましいモノマーとしては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアンモニウムクロライドなどがあげられる。
アミノ基または四級アンモニウム基を有するモノマーの分散剤に対する使用量は、1〜40質量%であることが好ましく、さらに好ましくは3〜30質量%、特に好ましくは3〜20質量%である。高屈折率層の塗布と同時または塗布後に、架橋又は重合反応によってバインダーを形成すれば、高屈折率層の塗布前にこれらのモノマーを有効に機能させることができる。
【0108】
架橋又は重合しているバインダーは、ポリマーの主鎖が架橋又は重合している構造を有する。ポリマーの主鎖の例には、ポリオレフィン(飽和炭化水素)、ポリエーテル、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミン、ポリアミドおよびメラミン樹脂が含まれる。ポリオレフィン主鎖、ポリエーテル主鎖およびポリウレア主鎖が好ましく、ポリオレフィン主鎖およびポリエーテル主鎖がさらに好ましく、ポリオレフィン主鎖が最も好ましい。
【0109】
ポリオレフィン主鎖は、飽和炭化水素からなる。ポリオレフィン主鎖は、例えば、不飽和重合性基の付加重合反応により得られる。ポリエーテル主鎖は、エーテル結合(−O−)によって繰り返し単位が結合している。ポリエーテル主鎖は、例えば、エポキシ基の開環重合反応により得られる。ポリウレア主鎖は、ウレア結合(−NH−CO−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレア主鎖は、例えば、イソシアネート基とアミノ基との縮重合反応により得られる。ポリウレタン主鎖は、ウレタン結合(−NH−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリウレタン主鎖は、例えば、イソシアネート基と、水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリエステル主鎖は、エステル結合(−CO−O−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリエステル主鎖は、例えば、カルボキシル基(酸ハライド基を含む)と水酸基(N−メチロール基を含む)との縮重合反応により得られる。ポリアミン主鎖は、イミノ結合(−NH−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミン主鎖は、例えば、エチレンイミン基の開環重合反応により得られる。ポリアミド主鎖は、アミド結合(−NH−CO−)によって、繰り返し単位が結合している。ポリアミド主鎖は、例えば、イソシアネート基とカルボキシル基(酸ハライド基を含む)との反応により得られる。メラミン樹脂主鎖は、例えば、トリアジン基(例、メラミン)とアルデヒド(例、ホルムアルデヒド)との縮重合反応により得られる。なお、メラミン樹脂は、主鎖そのものが架橋又は重合構造を有する。
【0110】
アニオン性基は、連結基を介してバインダーの側鎖として、主鎖に結合していることが好ましい。
アニオン性基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。架橋又は重合構造は、二つ以上の主鎖を化学的に結合(好ましくは共有結合)する。架橋又は重合構造は、三つ以上の主鎖を共有結合することが好ましい。架橋又は重合構造は、−CO−、−O−、−S−、窒素原子、リン原子、脂肪族残基、芳香族残基およびこれらの組み合わせから選ばれる二価以上の基からなることが好ましい。
【0111】
バインダーは、アニオン性基を有する繰り返し単位と、架橋又は重合構造を有する繰り返し単位とを有するコポリマーであることが好ましい。コポリマー中のアニオン性基を有する繰り返し単位の割合は、2〜96mol%であることが好ましく、4〜94mol%であることがさらに好ましく、6〜92mol%であることが最も好ましい。繰り返し単位は、二以上のアニオン性基を有していてもよい。コポリマー中の架橋又は重合構造を有する繰り返し単位の割合は、4〜98mol%であることが好ましく、6〜96mol%であることがさらに好ましく、8〜94mol%であることが最も好ましい。
【0112】
バインダーの繰り返し単位は、アニオン性基と架橋又は重合構造の双方を有していてもよい。バインダーには、その他の繰り返し単位(アニオン性基も架橋又は重合構造もない繰り返し単位)が含まれていてもよい。
その他の繰り返し単位としては、シラノール基、アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位が好ましい。
【0113】
シラノール基を有する繰り返し単位では、シラノール基は、バインダーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に結合させる。シラノール基は、連結基を介して側鎖として、主鎖に結合させることが好ましい。シラノール基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。バインダーが、シラノール基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、2〜98mol%であることが好ましく、4〜96mol%であることがさらに好ましく、6〜94mol%であることが最も好ましい。
【0114】
アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位では、アミノ基または四級アンモニウム基は、バインダーの主鎖に直接結合させるか、あるいは連結基を介して主鎖に結合させる。アミノ基または四級アンモニウム基は、連結基を介して側鎖として、主鎖に結合させることが好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基は、二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることが好ましく、三級アミノ基または四級アンモニウム基であることがさらに好ましい。二級アミノ基、三級アミノ基または四級アンモニウム基の窒素原子に結合する基は、アルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜12のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数が1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。四級アンモニウム基の対イオンは、ハライドイオンであることが好ましい。アミノ基または四級アンモニウム基とバインダーの主鎖とを結合する連結基は、−CO−、−NH−、−O−、アルキレン基、アリーレン基、およびこれらの組み合わせから選ばれる二価の基であることが好ましい。バインダーが、アミノ基または四級アンモニウム基を有する繰り返し単位を含む場合、その割合は、0.1〜32mol%であることが好ましく、0.5〜30mol%であることがさらに好ましく、1〜28mol%であることが最も好ましい。
【0115】
なお、シラノール基、及び、アミノ基、四級アンモニウム基は、アニオン性基を有する繰り返し単位あるいは架橋又は重合構造を有する繰り返し単位に含まれていても、同様の効果が得られる。
架橋又は重合しているバインダーは、高屈折率層形成用の塗布組成物を透明支持体上に塗布して、塗布と同時または塗布後に、架橋又は重合反応によって形成することが好ましい。
【0116】
高屈折率層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して、5〜80質量%添加する。
【0117】
無機微粒子は高屈折率層の屈折率を制御する効果と共に、硬化収縮を抑える機能がある。
高屈折率層の中において、無機微粒子はなるべく微細に分散されていることが好ましく、質量平均径は1〜200nmである。高屈折率層中の無機微粒子の質量平均径は、5〜150nmであることが好ましく、10〜100nmであることがさらに好ましく、10〜80nmであることが最も好ましい。
無機微粒子を200nm以下に微細化することで透明性を損なわない高屈折率層を形成できる。
【0118】
高屈折率層における無機微粒子の含有量は、高屈折率層の質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。無機微粒子は高屈折率層内で二種類以上を併用してもよい。
高屈折率層の上に低屈折率層を有する場合、高屈折率層の屈折率は透明支持体の屈折率より高いことが好ましい。
高屈折率層に、芳香環を含む電離放射線硬化性化合物、フッ素以外のハロゲン化元素(例えば、Br,I,Cl等)を含む電離放射線硬化性化合物、S,N,P等の原子を含む電離放射線硬化性化合物などの架橋又は重合反応で得られるバインダーも好ましく用いることができる。
高屈折率層の上に低屈折率層を構築して、反射防止フィルムを作製するためには、高屈折率層の屈折率は1.55〜2.40であることが好ましく、より好ましくは1.60〜2.20、更に好ましくは、1.65〜2.10、最も好ましくは1.80〜2.00である。
【0119】
高屈折率層には、前記の成分(無機微粒子、重合開始剤、光増感剤など)以外に、樹脂、界面活性剤、帯電防止剤、カップリング剤、増粘剤、着色防止剤、着色剤(顔料、染料)、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、接着付与剤、重合禁止剤、酸化防止剤、表面改質剤、導電性の金属微粒子、などを添加することもできる。
高屈折率層の膜厚は用途により適切に設計することができる。高屈折率層を後述する光学干渉層として用いる場合、30〜200nmが好ましく、より好ましくは50〜170nm、特に好ましくは60〜150nmである。
【0120】
本発明において、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応は、酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。このことは高屈折率層の形成に限らず、防眩性ハードコート層、光拡散性層についても共通である。
高屈折率層を酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、高屈折率層の物理強度、耐薬品性、耐候性、更には、高屈折率層と高屈折率層と隣接する層との接着性を改良することができる。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0121】
高屈折率層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
高屈折率層のヘイズは、防眩機能を付与する粒子を含有しない場合、低いほど好ましい。5%以下であることが好ましく、さらに好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下である。
高屈折率層は、前記透明支持体上に直接、又は、他の層を介して構築することが好ましい。
【0122】
[ハードコート層]
ハードコート層としては、反射防止フィルムに物理強度を付与するために防眩性ではない、いわゆる平滑なハードコート層も好ましく用いられ、この場合は透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記防眩性ハードコート層、透明支持体と防眩性およびまたは光拡散性を有する層、透明支持体と高屈折率層の間に設けることが好ましい。
ハードコート層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を透明支持体上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの具体例は防眩性ハードコート層で説明したものと同じである。
【0123】
光重合性官能基を有する光重合性多官能モノマーの具体例としては、高屈折率層で例示したものが挙げられ、光重合開始剤、光増感剤を用いて重合することが好ましい。光重合反応は、ハードコート層の塗布および乾燥後、紫外線照射により行うことが好ましい。
【0124】
ハードコート層のバインダーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して30〜95質量%添加する。
【0125】
ハードコート層は、一次粒子の平均粒径が200nm以下の無機微粒子を含有することが好ましい。ここでいう平均粒径は質量平均径である。一次粒子の平均粒径を200nm以下にすることで透明性を損なわないハードコート層を形成できる。
無機微粒子はハードコート層の硬度を高くすると共に、塗布層の硬化収縮を抑える機能がある。また、ハードコート層の屈折率を制御する目的にも添加される。
無機微粒子としては、高屈折率層で例示した無機微粒子に加え、二酸化珪素、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、カオリン、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛などの微粒子が挙げられる。好ましくは、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化錫、ITO、酸化亜鉛である。
【0126】
無機微粒子の一次粒子の好ましい平均粒径は5〜200nm、より好ましくは10〜150nmであり、さらに好ましくは20〜100nm、特に好ましくは20〜50nmである。
ハードコート層の中において、無機微粒子はなるべく微細に分散されていることが好ましい。
ハードコート層の中における無機微粒子の粒子サイズは、好ましくは平均粒径で5〜300nm、より好ましくは10〜200nmであり、さらに好ましくは20〜150nm、特に好ましくは20〜80nmである。
【0127】
ハードコート層における無機微粒子の含有量は、ハードコート層の全質量に対し10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは15〜80質量%、特に好ましくは15〜75質量%である。
【0128】
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μm、特に好ましくは0.7〜5μmである。
【0129】
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
ハードコート層の形成において、電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で形成することにより、物理強度や耐薬品性に優れたハードコート層を形成することができる。
好ましくは酸素濃度が6体積%以下の雰囲気で電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成することであり、更に好ましくは酸素濃度が4体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が2体積%以下、最も好ましくは1体積%以下である。
【0130】
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
ハードコート層は、透明支持体の表面に、ハードコート層形成用の塗布組成物を塗布することで形成することが好ましい。
【0131】
[低屈折率層]
本発明の低屈折率層について以下に説明する。
本発明の反射防止フィルムの低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.49であり、好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。
【0132】
本発明の低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
<含フッ素ポリマー>
本発明の低屈折率層には、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.15、水に対する接触角90〜120°の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。前述したように本発明の低屈折率層には膜強度向上のための無機フィラーを用いることもできる。
【0133】
低屈折率層に好ましく用いられる含フッ素ポリマーとしては、フルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
前者に用いることができるフルオロアルキル基含有シラン化合物としては、CF3(CH22Si(OCH33、CF3CF2(CH22Si(OCH33、CF3(CF22(CH22Si(OCH33、CF3(CF23(CH22Si(OCH33、CF3(CF24(CH22Si(OCH33、CF3(CF25(CH22Si(OCH33、CF3(CF26(CH22Si(OCH33、CF3(CF27(CH22Si(OCH33、CF3(CF28(CH22Si(OCH33、CF3(CF29(CH22Si(OCH33、CF3(CH22Si(OC253、CF3CF2(CH22Si(OC253、CF3(CF22(CH22Si(OC253、CF3(CF23(CH22Si(OC253、CF3(CF24(CH22Si(OC253、CF3(CF25(CH22Si(OC253、CF3(CF26(CH22Si(OC253、CF3(CF27(CH22Si(OC253、CF3(CF28(CH22Si(OC253、CF3(CF29(CH22Si(OC253等が挙げられ、特にCF3(CF27(CH22Si(OCH33、CF3(CF27(CH22Si(OC253を好ましく用いることができる。これらの化合物の加水分解、脱水縮合には、後述の、一般式3及び4で表される化合物の項で説明する方法が用いられる。
【0134】
含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体を構成するための含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
【0135】
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
【0136】
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tertブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
【0137】
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
【0138】
低屈折率層に用いられる特に有用な含フッ素ポリマーは、パーフルオロオレフィンとビニルエーテル類またはビニルエステル類のランダム共重合体である。特に単独で架橋反応可能な基((メタ)アクリロイル基等のラジカル反応性基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環重合性基等)を有していることが好ましい。これらの架橋反応性基含有重合単位はポリマーの全重合単位の5〜70mol%を占めていることが好ましく、特に好ましくは30〜60mol%を占めていることである。
【0139】
低屈折率層に用いられる共重合体の好ましい形態として、特開2004−45462号公報に記載の一般式1及び一般式2のものが挙げられ、好ましい具体例は該公報[0043]〜[0047]に、合成法は[0048]〜[0053]に記載されている。
【0140】
低屈折率層の含フッ素ポリマーは、該層の塗布組成物の固形分量に対して20〜95質量%添加する。
【0141】
<無機微粒子>
次に本発明の低屈折率層中に、含有することのできる無機微粒子について、以下に記載する。
無機微粒子の配合量は、1mg/m2〜100mg/m2が好ましく、より好ましくは5mg/m2〜80mg/m2、更に好ましくは10mg/m2〜60mg/m2である。配合量が上記範囲であることにより、耐擦傷性に優れ、低屈折率層表面に微細な凹凸の発生が減少し、黒の締まりなどの外観や積分反射率が良化する。
該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。例えば、フッ化マグネシウムやシリカの微粒子が挙げられる。特に、屈折率、分散安定性、コストの点で、シリカ微粒子が好ましい。シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
ここで、無機微粒子の平均粒径はコールターカウンターにより測定される。
【0142】
低屈折率層の屈折率上昇をより一層少なくするために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましく、該中空シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体として屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、下記数式(VIII)から算出される空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。

数式(VIII):x=(4πa3/3)/(4πb3/3)×100

中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は用いられない。
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定を行った。
【0143】
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。
小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
【0144】
シリカ微粒子は、分散液中あるいは塗布液中で、分散安定化を図るために、あるいはバインダー成分との親和性、結合性を高めるために、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理、界面活性剤やカップリング剤等による化学的表面処理がなされていても良い。カップリング剤の使用が特に好ましい。カップリング剤としては、アルコキシメタル化合物(例、チタンカップリング剤、シランカップリング剤)が好ましく用いられる。なかでも、シランカップリング処理が特に有効である。
上記カップリング剤は、低屈折率層の無機フィラーの表面処理剤として該層塗布液調製以前にあらかじめ表面処理を施すために用いられるが、該層塗布液調製時にさらに添加剤として添加して該層に含有させることが好ましい。
シリカ微粒子は、表面処理前に、媒体中に予め分散されていることが、表面処理の負荷軽減のために好ましい。
以上シリカ微粒子について述べたことは、他の無機微粒子についても適用される。
【0145】
<オルガノシラン化合物、ゾル成分>
本発明の反射防止フィルムを構成する機能層のうちの少なくとも1層は、その層を形成する塗布液中に、オルガノシラン化合物、その加水分解物およびその部分縮合物の少なくとも一種の成分、いわゆるゾル成分(以降このように称する場合もある)を含有することが耐擦傷性の点で好ましい。特に低屈折率層は反射防止能と耐擦傷性を両立させるためにゾル成分を含有することが好ましく、ハードコート層もゾル成分を含有することが好ましい。このゾル成分は、塗布液を塗布後、乾燥、加熱工程で縮合して硬化物を形成し上記層のバインダーとなる。また、該硬化物が重合性不飽和結合を有する場合、活性光線の照射により3次元構造を有するバインダーが形成される。
オルガノシラン化合物は、下記一般式3で表されるものが好ましい。
一般式3:(R10m−Si(X14-m
上記一般式3において、R10は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基を表す。アルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基か好ましく、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは1〜6のものである。アルキル基の具体例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、デシル、ヘキサデシル等が挙げられる。アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。
1は、水酸基または加水分解可能な基を表し、例えばアルコキシ基(炭素数1〜5のアルコキシ基が好ましい。例えばメトキシ基、エトキシ基等が挙げられる)、ハロゲン原子(例えばCl、Br、I等)、及びR2COO(R2は水素原子または炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。例えばCH3COO、C25COO等が挙げられる)で表される基が挙げられ、好ましくはアルコキシ基であり、特に好ましくはメトキシ基またはエトキシ基である。
mは1〜3の整数を表し、好ましくは1または2であり、特に好ましくは1である。
【0146】
10あるいはX1が複数存在するとき、複数のR10あるいはX1はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。
10に含まれる置換基としては特に制限はないが、ハロゲン原子(フッ素、塩素、臭素等)、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基(メチル、エチル、i−プロピル、プロピル、t−ブチル等)、アリール基(フェニル、ナフチル等)、芳香族ヘテロ環基(フリル、ピラゾリル、ピリジル等)、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、i−プロポキシ、ヘキシルオキシ等)、アリールオキシ(フェノキシ等)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオ等)、アリールチオ基(フェニルチオ等)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニル等)、アシルオキシ基(アセトキシ、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル等)、カルバモイル基(カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N−メチル−N−オクチルカルバモイル等)、アシルアミノ基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ、アクリルアミノ、メタクリルアミノ等)等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
【0147】
10が複数ある場合は、少なくとも一つが置換アルキル基もしくは置換アリール基であることが好ましく、中でも、下記一般式4で表されるビニル重合性の置換基を有するオルガノシラン化合物が好ましい。
一般式4
【0148】
【化18】

【0149】
上記一般式4において、R16は水素原子、メチル基、メトキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、または塩素原子を表す。アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。水素原子、メチル基、メトキシ基、メトキシカルボニル基、シアノ基、フッ素原子、および塩素原子が好ましく、水素原子、メチル基、メトキシカルボニル基、フッ素原子、および塩素原子が更に好ましく、水素原子およびメチル基が特に好ましい。
1は単結合もしくは*-COO-**、*-CONH-**または*-O-**を表し、単結合、*-COO-**および*-CONH-**が好ましく、単結合および*-COO-**が更に好ましく、*-COO-**が特に好ましい。*は=C(R16)−に結合する位置を、**はLに結合する位置を表す。
【0150】
Lは2価の連結鎖を表す。具体的には、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基(例えば、エーテル、エステル、アミドなど)を有する置換もしくは無置換のアルキレン基、内部に連結基を有する置換もしくは無置換のアリーレン基が挙げられ、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアリーレン基、内部に連結基を有するアルキレン基が好ましく、無置換のアルキレン基、無置換のアリーレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が更に好ましく、無置換のアルキレン基、内部にエーテルあるいはエステル連結基を有するアルキレン基が特に好ましい。置換基は、ハロゲン、水酸基、メルカプト基、カルボキシル基、エポキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられ、これら置換基は更に置換されていても良い。
【0151】
nは0または1を表す。X1が複数存在するとき、複数のX1はそれぞれ同じであっても異なっていても良い。nとして好ましくは0である。
10は一般式3のR10と同義であり、置換もしくは無置換のアルキル基、無置換のアリール基が好ましく、無置換のアルキル基、無置換のアリール基が更に好ましい。
1は一般式3と同義であり、ハロゲン原子、水酸基、無置換のアルコキシ基が好ましく、塩素原子、水酸基、無置換の炭素数1〜6のアルコキシ基が更に好ましく、水酸基、炭素数1〜3のアルコキシ基が更に好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
【0152】
一般式3又は一般式4の化合物は2種類以上を併用しても良い。以下に一般式3又は一般式4で表される化合物の具体例を示すが、限定されるものではない。
【0153】
【化19】

【0154】
【化20】

【0155】
これらのうち、(M−1)、(M−2)、および(M−5)が特に好ましい。
【0156】
本発明で用いるオルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物について詳細を説明する。
オルガノシランの加水分解反応、それに引き続く縮合反応は、一般に触媒の存在下で行われる。触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;シュウ酸、酢酸、ギ酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸等の有機酸類;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基類;トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基類;トリイソプロポキシアルミニウム、テトラブトキシジルコニウム等の金属アルコキシド類;Zr、TiまたはAlなどの金属を中心金属とする金属キレート化合物等が挙げられる。無機酸では塩酸、硫酸、有機酸では、水中での酸解離定数(pKa値(25℃))が4.5以下のものが好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が3.0以下の有機酸がより好ましく、塩酸、硫酸、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、水中での酸解離定数が2.5以下の有機酸が更に好ましく、メタンスルホン酸、シュウ酸、フタル酸、マロン酸が更に好ましく、シュウ酸が特に好ましい。
【0157】
オルガノシランの加水分解・縮合反応は、無溶媒でも、溶媒中でも行うことができるが成分を均一に混合するために有機溶媒を用いることが好ましく、例えばアルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などが好適である。
溶媒はオルガノシランと触媒を溶解させるものが好ましい。また、有機溶媒が塗布液あるいは塗布液の一部として用いることが工程上好ましく、含フッ素ポリマーなどのその他の素材と混合した場合に、溶解性あるいは分散性を損なわないものが好ましい。
【0158】
このうち、アルコール類としては、例えば1価アルコールまたは2価アルコールを挙げることができ、このうち1価アルコールとしては炭素数1〜8の飽和脂肪族アルコールが好ましい。
これらのアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテルなどを挙げることができる。
【0159】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなど、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。
これらの有機溶媒は、1種単独であるいは2種以上を混合して使用することもできる。該反応における固形分の濃度は特に限定されるものではないが通常1%〜90%の範囲であり、好ましくは20%〜70%の範囲である。
【0160】
オルガノシランの加水分解性基1モルに対して0.3〜2モル、好ましくは0.5〜1モルの水を添加し、上記溶媒の存在下あるいは非存在下に、そして触媒の存在下に、25〜100℃で、撹拌することにより行われる。
本発明においては、一般式R3OH(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールと一般式R4COCH2COR5 (式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基、R5は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、TiまたはAlから選ばれる金属を中心金属とする少なくとも1種の金属キレート化合物の存在下で、25〜100℃で撹拌することにより加水分解を行うことが好ましい。
【0161】
金属キレート化合物は、一般式R3 OH(式中、R3は炭素数1〜10のアルキル基を示す)で表されるアルコールとR4 COCH2COR5(式中、R4は炭素数1〜10のアルキル基、R5は炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基を示す)で表される化合物とを配位子とした、Zr、Ti、Alから選ばれる金属を中心金属とするものであれば特に制限なく好適に用いることができる。この範疇であれば、2種以上の金属キレート化合物を併用しても良い。本発明に用いられる 金属キレート化合物は、一般式Zr(OR3p1(R4COCHCOR5p2、Ti(OR3q1(R4COCHCOR5q2、およびAl(OR3r1(R4COCHCOR5r2で表される化合物群から選ばれるものが好ましく、前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物の縮合反応を促進する作用をなす。
金属キレート化合物中のR3およびR4は、同一または異なってもよく炭素数1〜10のアルキル基、具体的にはエチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec −ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、フェニル基などである。また、R5は、前記と同様の炭素数1〜10のアルキル基のほか、炭素数1〜10のアルコキシ基、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec −ブトキシ基、t−ブトキシ基などである。また、 金属キレート化合物中のp1、p2、q1、q2、r1、およびr2は、それぞれp1+p2=4、q1+q2=4、r1+r2=3となる様に決定される整数を表す。
【0162】
これらの金属キレート化合物の具体例としては、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシトリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどのジルコニウムキレート化合物;ジイソプロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジイソプロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどのチタニウムキレート化合物;ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、ジイソプロポキシアセチルアセトナートアルミニウム、イソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどのアルミニウムキレート化合物などが挙げられる。
これらの金属キレート化合物のうち好ましいものは、トリ−n−ブトキシエチルアセトアセテートジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジイソプロポキシエチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウムである。これらの金属キレート化合物は、1種単独であるいは2種以上混合して使用することができる。また、これらの金属キレート化合物の部分加水分解物を使用することもできる。
【0163】
金属キレート化合物は、前記オルガノシラン化合物に対し、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%の割合で用いられる。0.01質量%未満では、オルガノシラン化合物の縮合反応が遅く、塗膜の耐久性が悪化するおそれがあり、一方50質量%を超えると、オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物と金属キレート化合物を含有してなる組成物の保存安定性が悪化するおそれがあり好ましくない。
【0164】
本発明に用いられるハードコート層乃至低屈折率層の塗布液には、上記ゾル成分および金属キレート化合物を含む組成物に加えて、β−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物が添加されることが好ましい。以下にさらに説明する。
【0165】
本発明で使用されるのは、一般式R4 COCH2 COR5で表されるβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物であり、本発明に用いられる組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、前記金属キレート化合物(ジルコニウム、チタニウムおよび/またはアルミニウム化合物)中の金属原子に配位することにより、これらの金属キレート化合物によるオルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物の縮合反応を促進する作用を抑制し、得られる組成物の保存安定性を向上させる作用をなすものと考えられる。β−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物を構成するR4およびR5は、前記金属キレート化合物を構成するR4およびR5と同様である。
【0166】
このβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec-ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサン−ジオンなどを挙げることができる。これらのうち、アセト酢酸エチルおよびアセチルアセトンが好ましく、特にアセチルアセトンが好ましい。これらのβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物は、1種単独でまたは2種以上を混合して使用することもできる。本発明においてβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物は、金属キレート化合物1モルに対し好ましくは2モル以上、より好ましくは3〜20モル用いられる。2モル未満では得られる組成物の保存安定性に劣るおそれがあり好ましいものではない。
【0167】
上記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物の含有量は、比較的薄膜である表面層の場合は少なく、厚膜である下層の場合は多いことが好ましい。低屈折率層のような表面層の場合は含有層(添加層)の全固形分の0.1〜50質量%が好ましく、0.5〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。
低屈折率層以外の層への添加量は、含有層(添加層)の全固形分の0.001〜50質量%が好ましく、0.01〜20質量%がより好ましく、0.05〜10質量%が更に好ましく、0.1〜5質量%が特に好ましい。
本発明においてはまず前記オルガノシラン化合物の加水分解物および/または部分縮合物および金属キレート化合物を含有する組成物を調製し、これにβ−ジケトン化合物および/またはβ−ケトエステル化合物を添加した液をハードコート層もしくは低屈折率層の少なくとも1層の塗布液に含有せしめて塗設することが好ましい。
【0168】
低屈折率層における、含フッ素ポリマーに対するオルガノシランのゾル成分の使用量は、効果の発現、屈折率、膜の形状・面状等を考慮すると、5〜100質量%が好ましく、5〜40質量%がより好ましく、8〜35質量%が更に好ましく、10〜30質量%が特に好ましい。
【0169】
本発明において、無機フィラーの凝集、沈降を抑制する目的で、各層を形成するための塗布液に分散安定化剤を併用することも好ましい。分散安定化剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、ポリアミド、リン酸エステル、ポリエーテル、界面活性剤および、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等を使用することができる。特に前述のシランカップリング剤が硬化後の皮膜が強いため好ましい。
【0170】
本発明の低屈折率層形成組成物は、通常、液の形態をとり前記共重合体を好ましい構成成分とし、必要に応じて各種添加剤およびラジカル重合開始剤を適当な溶剤に溶解して作製される。この際固形分の濃度は、用途に応じて適宜選択されるが一般的には0.01〜60質量%程度であり、好ましくは0.5〜50質量%、特に好ましくは1%〜20質量%程度である。
【0171】
前記したとおり、低屈折率層の皮膜硬度の観点からは硬化剤等の添加剤を添加することは必ずしも有利ではないが、高屈折率層との界面密着性等の観点から、多官能(メタ)アクリレート化合物、多官能エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、アミノプラスト、多塩基酸またはその無水物等の硬化剤、あるいはシリカ等の無機微粒子を少量添加することもできる。これらを添加する場合には低屈折率層皮膜の全固形分に対して0〜30質量%の範囲であることが好ましく、0〜20質量%の範囲であることがより好ましく、0〜10質量%の範囲であることが特に好ましい。
【0172】
防汚性、耐水性、耐薬品性、滑り性等の特性を付与する目的で、公知のシリコーン系あるいはフッ素系の防汚剤、滑り剤等を適宜添加することもできる。これらの添加剤を添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。
【0173】
シリコーン系化合物の好ましい例としてはジメチルシリルオキシ単位を繰り返し単位として複数個含む化合物鎖の末端および/または側鎖に置換基を有するものが挙げられる。ジメチルシリルオキシを繰り返し単位として含む化合物鎖中にはジメチルシリルオキシ以外の構造単位を含んでもよい。置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、フルオロアルキル基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などを含む基が挙げられる。分子量に特に制限はないが、10万以下であることが好ましく、5万以下であることが特に好ましく、3000〜30000であることが最も好ましい。シリコーン系化合物のシリコーン原子含有量には特に制限はないが18.0質量%以上であることが好ましく、25.0〜37.8質量%であることが特に好ましく、30.0〜37.0質量%であることが最も好ましい。好ましいシリコーン系化合物の例としては信越化学(株)製、X−22−174DX、X−22−2426、X−22−164B、X22−164C、X−22−170DX、X−22−176D、X−22−1821(以上商品名)やチッソ(株)製、FM−0725、FM−7725、FM−4421、FM−5521、FM6621、FM−1121やGelest製DMS−U22、RMS−033、RMS−083、UMS−182、DMS−H21、DMS−H31、HMS−301、FMS121、FMS123、FMS131、FMS141、FMS221(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0174】
フッ素系化合物としては、フルオロアルキル基を有する化合物が好ましい。該フルオロアルキル基は炭素数1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜10であり、直鎖(例えば-CF2CF3,-CH2(CF2)4H,-CH2(CF2)8CF3,-CH2CH2(CF2)4H等)であっても、分岐構造(例えばCH(CF3)2,CH2CF(CF3)2,CH(CH3)CF2CF3,CH(CH3)(CF2)5CF2H等)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環または6員環、例えばパーフルオロシクロへキシル基、パーフルオロシクロペンチル基またはこれらで置換されたアルキル基等)であっても良く、エーテル結合を有していても良い(例えばCH2OCH2CF2CF3,CH2CH2OCH2C4F8H,CH2CH2OCH2CH2C8F17,CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H等)。該フルオロアルキル基は同一分子中に複数含まれていてもよい。
フッ素系化合物は、さらに低屈折率層皮膜との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。該置換基は同一であっても異なっていても良く、複数個あることが好ましい。好ましい置換基の例としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリール基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、水酸基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。フッ素系化合物はフッ素原子を含まない化合物との共重合体であっても共重合オリゴマーであってもよく、分子量に特に制限はない。フッ素系化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが20質量%以上であることが好ましく、30〜70質量%であることが特に好ましく、40〜70質量%であることが最も好ましい。好ましいフッ素系化合物の例としてはダイキン化学工業(株)製、R-2020、M-2020、R-3833、M-3833(以上商品名)、大日本インキ(株)製、メガファックF-171、F-172、F-179A、ディフェンサMCF-300(以上商品名)などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0175】
防塵性、帯電防止等の特性を付与する目的で、公知のカチオン系界面活性剤あるいはポリオキシアルキレン系化合物のような防塵剤、帯電防止剤等を適宜添加することもできる。これら防塵剤、帯電防止剤は前述したシリコーン系化合物やフッ素系化合物にその構造単位が機能の一部として含まれていてもよい。これらを添加剤として添加する場合には低屈折率層全固形分の0.01〜20質量%の範囲で添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜10質量%の範囲で添加される場合であり、特に好ましくは0.1〜5質量%の場合である。好ましい化合物の例としては大日本インキ(株)製、メガファックF-150(商品名)、東レダウコーニング(株)製、SH-3748(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0176】
[透明支持体]
本発明の反射防止フィルムの透明支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム社製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。
トリアセチルセルロースは、単層または複数の層からなる。単層のトリアセチルセルロースは、特開平7−11055号公報等で開示されているドラム流延、あるいはバンド流延等により作成され、後者の複数の層からなるトリアセチルセルロースは、公開特許公報の特開昭61−94725号公報、特公昭62−43846号公報等で開示されている、いわゆる共流延法により作成される。すなわち、原料フレークをハロゲン化炭化水素類(ジクロロメタン等、アルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル類(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル類(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等の溶剤にて溶解し、これに必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等の各種の添加剤を加えた溶液(ドープと称する)を、水平式のエンドレスの金属ベルトまたは回転するドラムからなる支持体の上に、ドープ供給手段(ダイと称する)により流延する際、単層ならば単一のドープを単層流延し、複数の層ならば高濃度のセルロースエステルドープの両側に低濃度ドープを共流延し、支持体上である程度乾燥して剛性が付与されたフィルムを支持体から剥離し、次いで各種の搬送手段により乾燥部を通過させて溶剤を除去することからなる方法である。
【0177】
上記のような、トリアセチルセルロースを溶解するための溶剤としては、ジクロロメタンが代表的である。しかし地球環境や作業環境の観点から、溶剤はジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないことが好ましい。「実質的に含まない」とは、有機溶剤中のハロゲン化炭化水素の割合が5質量%未満(好ましくは2質量%未満)であることを意味する。
ジクロロメタン等を実質的に含まない溶剤を用いてトリアセチルセルロースのドープを調製する場合には、後述するような特殊な溶解法が必須となる。
【0178】
第一の溶解法は、冷却溶解法と称され、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加する。次に、混合物は−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、さらに好ましくは−50〜−20℃、最も好ましくは−50〜−30℃)に冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。このように冷却すると、トリアセチルセルロースと溶剤の混合物は固化する。さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、溶剤中にトリアセチルセルロースが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよいし、温浴中で加温してもよい。
【0179】
第二の方法は、高温溶解法と称され、以下に説明する。まず室温近辺の温度(−10〜40℃)で溶剤中にトリアセチルセルロースを撹拌しながら徐々に添加される。本発明のトリアセチルセルロース溶液は、各種溶剤を含有する混合溶剤中にトリアセチルセルロースを添加し予め膨潤させることが好ましい。本法において、トリアセチルセルロースの溶解濃度は30質量%以下が好ましいが、フィルム製膜時の乾燥効率の点から、なるべく高濃度であることが好ましい。次に有機溶剤混合液は、0.2MPa〜30MPaの加圧下で70〜240℃に加熱される(好ましくは80〜220℃、更に好ましく100〜200℃、最も好ましくは100〜190℃)。次にこれらの加熱溶液はそのままでは塗布できないため、使用された溶剤の最も低い沸点以下に冷却する必要がある。その場合、−10〜50℃に冷却して常圧に戻すことが一般的である。冷却はトリアセチルセルロース溶液が内蔵されている高圧高温容器やラインを、室温に放置するだけでもよく、更に好ましくは冷却水などの冷媒を用いて該装置を冷却してもよい。ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアセテートフィルムおよびその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されている。
【0180】
[光学機能層の形成]
光学機能層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ダイコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法やエクストルージョンコート法(米国特許2681294号明細書記載)により、塗布により形成することができるが、ダイコート法で塗布することが好ましく、更には後述する新規ダイコーターを用いて塗布を行うことがより好ましい。二層以上を同時に塗布してもよい。同時塗布の方法については、米国特許2761791号、同2941898号、同3508947号、同3526528号の各明細書および原崎勇次著、コーティング工学、253頁、朝倉書店(1973)に記載がある。
本発明の光学機能フィルムにおいては、輝点欠陥が少ないことも望まれる。本発明における輝点欠陥とは、目視により、塗膜上の反射で見える欠陥のことで、塗布後の光学機能フィルムの裏面を黒塗りする等の操作により目視で検出できる。目視により見える輝点欠陥は、一般的に50μm以上である。輝点欠陥が多いと製造時の得率が低下し、大面積の反射防止フィルムを製造することができない。
本発明の光学機能フィルムは、輝点欠陥の数が1平方メートル当たり20個以下、好ましくは10個以下、さらに好ましくは5個以下、特に好ましくは1個以下とする。
【0181】
本発明の光学機能フィルムを連続的に製造するために、ロール状の支持体フィルムを連続的に送り出す工程、塗布液を塗布・乾燥する工程、塗膜を硬化する工程、硬化した層を有する支持体フィルムを巻き取る工程が行われる。
ロール状のフィルム支持体からフィルム支持体がクリーン室に連続的に送り出され、クリーン室内で、フィルム支持体に帯電している静電気を静電除電装置により除電し、引き続きフィルム支持体上に付着している異物を、除塵装置により除去する。引き続きクリーン室内に設置されている塗布部で塗布液がフィルム支持体上に塗布され、塗布されたフィルム支持体は乾燥室に送られて乾燥される。
乾燥した塗布層を有するフィルム支持体は乾燥室から放射線硬化室へ送り出され、放射線が照射されて塗布層に含有されるモノマーが重合して硬化する。さらに、放射線により硬化した層を有するフィルム支持体は熱硬化部へ送られ、加熱されて硬化を完結させることもできる。硬化が完結した層を有するフィルム支持体は巻き取られてロール状となる。
【0182】
上記工程は、各層の形成毎に行ってもよいし、塗布部−乾燥室−放射線硬化部−熱硬化室を複数設けて、各層の形成を連続的に行うことも可能であるが、生産性の観点から各層の形成を連続的に行う事が好ましい。各層の塗布を連続的に行う装置の構成例を図2に示す。該装置はロール状の支持体フィルムを連続的に送り出す工程1と、ロール状の支持体フィルムを巻き取る工程2の間に製膜ユニット100,200,300,400を適宜必要な数だけ設置したものである。図2で示される装置は4層を巻き取ることなく連続的に塗布する際の構成の一例だが、層構成に合わせて製膜ユニット数を変化させることはもちろん可能である。製膜ユニット100は塗布液を塗布する工程101、塗膜を乾燥する工程102、塗膜を硬化する工程103から構成されている。製膜ユニット200,300,400についても同様に構成されている。
【0183】
例えば、屈折率の異なる3層薄膜干渉型反射防止膜の場合は、製膜ユニットが3つ設置された装置を用いて、前記ハードコート層を塗設したロール状の支持体フィルムを連続的に送り出し、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を各製膜ユニットで順次塗設した後に巻き取る事がより好ましく、製膜ユニットが4つ順次塗布可能に設置された図2に示す装置を用いて、ロール状の支持体フィルムを連続的に送り出し、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層を各製膜ユニットで順次塗設した後に巻き取る事が更に好ましい。
本発明における、輝点欠陥の少ない反射防止フィルムを作成するためには、層内に分散する粒子や微粒子の分散性を向上すること、および塗布液の精密濾過操作が挙げられる。と同時に、反射防止層を形成する各層は上記の塗布部における塗布工程および乾燥室で行われる乾燥工程が高い清浄度の空気雰囲気下で行われ、かつ塗布が行われる前に、フィルム上のゴミ、ほこりが充分に除かれていることが好ましい。塗布工程および乾燥工程の空気清浄度は、米国連邦規格209Eにおける空気清浄度の規格に基づき、クラス100(0.5μm以上の粒子が353個/(立方メートル)以下)以上であることが望ましく、より好ましくはクラス10以上、更に好ましくはクラス1(0.5μm以上の粒子が35.5個/(立方メートル)以下)以上であることが望ましい。また、空気清浄度は、塗布−乾燥工程以外の送り出し、巻き取り部等においても高いことがより好ましい。
【0184】
塗布が行われる前工程としての除塵工程に用いられる除塵方法として、特開昭59−150571号公報に記載のフィルム表面に不織布や、ブレード等を押しつける方法、特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法、特開平7−333613号公報に記載される超音波振動する圧縮空気を吹き付けて付着物を剥離させ、吸引する方法(伸興社製、ニューウルトラクリーナー等)等の乾式除塵法が挙げられる。
また、洗浄槽中にフィルムを導入し、超音波振動子により付着物を剥離させる方法、特公昭49−13020号公報に記載されているフィルムに洗浄液を供給したあと、高速空気の吹き付け、吸い込みを行なう方法、特開2001−38306号に記載のように、ウェブを液体でぬらしたロールで連続的に擦った後、擦った面に液体を噴射して洗浄する方法等の湿式除塵法を用いることができる。このような除塵方法の内、超音波除塵による方法もしくは湿式除塵による方法が、除塵効果の点で特に好ましい。
【0185】
また、このような除塵工程を行う前に、フィルム支持体上の静電気を除電しておくことは、除塵効率を上げ、ゴミの付着を抑える点で特に好ましい。このような除電方法としては、コロナ放電式のイオナイザ、UV、軟X線等の光照射式のイオナイザ等を用いることができる。除塵、塗布前後のフィルム支持体の帯電圧は、1000V以下が望ましく、好ましくは300V以下、特に好ましくは、100V以下である。
【0186】
[塗布液物性・塗布量]
本発明の塗布方式は液物性により塗布可能な上限の速度が影響を受けるため、塗布する瞬間の液物性、特に粘度及び表面張力を制御する必要がある。
防眩層または光散乱層に用いる塗布液の粘度は2〜15mPa・secであることが望ましく、3〜12mPa・secであることが更に望ましい、特に望ましくは2〜5mPa・secである。透明支持体に塗り付けられる塗布液の量は5〜30cc/m2が望ましく、9.5〜22cc/minであることが特に望ましい。また表面張力に関しては、15〜30mN/mが好ましく、18〜28mN/mが特に好ましい。フルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する第1の機能層を形成する塗布液の表面張力が、該共重合体の添加により1mN/m以上低下することが特に好ましい。
【0187】
塗布液によってはせん断速度により粘度が変化するものもあるため、上記の値は塗布される瞬間のせん断速度における粘度を示している。塗布液にチキソトロピー剤を添加して、高せん断のかかる塗布時は粘度が低く、塗布液にせん断が殆どかからない乾燥時は粘度が高くなると乾燥時のムラが発生しにくくなり、好ましい。
また、液物性ではないが、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量も塗布可能な上限の速度に影響を与える。透明支持体に塗り付けられる塗布液の量を増やすと塗布可能な上限の速度が上がるため好ましいが、透明支持体に塗り付けられる塗布液の量を増やしすぎると乾燥にかかる負荷が大きくなるため、液処方・工程条件によって最適な透明支持体に塗り付けられる塗布液の量を決めることが好ましい。
表面張力については、レベリング剤を添加するなどして表面張力を低下させることは乾燥時のムラが抑止されるため好ましい。一方、表面張力が下がりすぎると塗布可能な上限の速度が低下してしまうため、適切な表面注力の範囲を選択するのが更に好ましい。
【0188】
[濾過]
塗布に用いる塗布液は、塗布前に濾過することが好ましい。濾過のフィルターは、塗布液中の成分が除去されない範囲でできるだけ孔径の小さいものを使うことが好ましい。濾過には絶対濾過精度が0.1〜10μmのフィルターが用いられ、さらには絶対濾過精度が0.1〜5μmであるフィルタを用いることが好ましく用いられる。フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は15kgf/cm2 以下、より好ましくは10kgf/cm2 以下、更には2kgf/cm2 以下で濾過することが好ましい。
ろ過フィルター部材は、塗布液に影響を及ぼさなければ特に限定されない。具体的には、前記した無機化合物の湿式分散物のろ過部材と同様のものが挙げられる。
また、濾過した塗布液を、塗布直前に超音波分散して、脱泡、分散物の分散保持を補助することも好ましい。
【0189】
本発明において、反射防止フィルム各層の硬化方法については、塗布組成物を塗布と同時、または塗布後に光照射、電子線ビーム照射や加熱することによる架橋反応、又は、重合反応により形成することが好ましい。
反射防止フィルムの各層が電離放射線硬化性の化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成される場合、架橋反応、又は、重合反応は酸素濃度が10体積%以下の雰囲気で実施することが好ましい。特に最外層の低屈折率層は優れた物理強度、耐薬品性を得るために、酸素濃度を十分に低下させる必要がある。
好ましくは酸素濃度が51体積%以下であり、更に好ましくは酸素濃度が0.5体積%以下、特に好ましくは酸素濃度が0.1体積%以下、最も好ましくは0.05体積%以下である。
【0190】
酸素濃度を10体積%以下にする手法としては、大気(窒素濃度約79体積%、酸素濃度約21体積%)を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
光照射の光源は、紫外線光域或いは近赤外線光のものであればいずれでもよく、紫外線光の光源として、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。また、近赤外光光源としてはハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプが挙げられ、波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化して照射してもよい。
近赤外光光源を用いる場合、紫外線光源と組み合わせて用いても良いし、或は塗布面側と反対の基材面側より光照射しても良い。塗膜層内の深さ方向での膜硬化が表面近傍と遅滞無く進行し均一な硬化状態の硬化膜が得られる。
照射する紫外線の照射強度は、0.1〜1000mW/cm2程度が好ましく、塗布膜表面上での光照射量は10〜1000mJ/cm2が好ましい。また、光照射工程での塗布膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、塗布膜の面内および層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0191】
[ダイコーターの構成]
図3は本発明を実施したスロットダイを用いたコーターの断面図である。コーター10はバックアップロール11に支持されて連続走行するウエブWに対して、スロットダイ13から塗布液14をビード14aにして塗布することにより、ウエブW上に塗膜14bを形成する。
【0192】
スロットダイ13の内部にはポケット15、スロット16が形成されている。ポケット15は、その断面が曲線及び直線で構成されており、例えば図3に示すような略円形でもよいし、あるいは半円形でもよい。ポケット15は、スロットダイ13の幅方向にその断面形状をもって延長された塗布液の液溜め空間で、その有効延長の長さは、塗布幅と同等か若干長めにするのが一般的である。ポケット15への塗布液14の供給は、スロットダイ13の側面から、あるいはスロット開口部16aとは反対側の面中央から行う。また、ポケット15には塗布液14が漏れ出ることを防止する栓が設けられている。
【0193】
スロット16は、ポケット15からウエブWへの塗布液14の流路であり、ポケット15と同様にスロットダイ13の幅方向にその断面形状をもち、ウェブ側に位置する開口部16aは、一般に、図示しない幅規制板のようなものを用いて、概ね塗布幅と同じ長さの幅になるように調整する。このスロット16のスロット先端における、バックアップロール11のウェブ走行方向の接線とのなす角は、30°以上90°以下が好ましい。
【0194】
スロット16の開口部16aが位置するスロットダイ13の先端リップ17は先細り状に形成されており、その先端はランドと呼ばれる平坦部18とされている。このランド18であって、スロット16に対してウエブWの進行方向の上流側を上流側リップランド18a、下流側を下流側リップランド18bと称する。
【0195】
図4は、スロットダイ13の断面形状を従来のものと比較して示すもので、(A)は本発明に用いるスロットダイ13を示し、(B)は従来のスロットダイ30を示している。従来のスロットダイ30では、上流側リップランド31aと下流側リップランド31bのウェブとの距離は等しい。なお、符号32はポケット、33はスロットを示している。これに対して、本発明のスロットダイ13では、下流側リップランド長さILOが短くされており、これによって、湿潤膜厚が20μm以下の塗布を精度良くおこなうことができる。
【0196】
上流側リップランド18aのランド長さIUPは特に限定はされないが、500μm〜1mmの範囲で好ましく用いられる。下流側リップランド18bのランド長さILOは30μm以上100μm以下であり、好ましくは30μm以上80μm以下、さらに好ましくは30μm以上60μm以下である。下流側リップのランド長さILO が30μmよりも短い場合は、先端リップのエッジあるいはランドが欠けやすく、塗膜にスジが発生しやすくなり、結果的には塗布が不可能になる。また、下流側の濡れ線位置の設定が困難になり、塗布液が下流側で広がりやすくなるという問題も発生する。この下流側での塗布液の濡れ広がりは、濡れ線の不均一化を意味し、塗布面上にスジなどの不良形状を招くという問題につながることが従来より知られている。一方、下流側リップのランド長さILOが100μmよりも長い場合は、ビードそのものを形成することができないために、薄層塗布を行うことは不可能である。
【0197】
さらに、下流側リップランド18bは、上流側リップランド18aよりもウエブWに近接したオーバーバイト形状であり、このため減圧度を下げることができて薄膜塗布に適したビード形成が可能となる。下流側リップランド18bと上流側リップランド18aのウエブWとの距離の差(以下、オーバーバイト長さLOと称する)は30μm以上120μm以下が好ましく、さらに好ましくは30μm以上100μm以下、もっとも好ましくは30μm以上80μm以下である。スロットダイ13がオーバーバイト形状のとき、先端リップ17とウエブWの隙間GL とは、下流側リップランド18bとウエブWの隙間を示す。
【0198】
図5は、本発明を実施した塗布工程のスロットダイ及びその周辺を示す斜視図である。ウエブWの進行方向側とは反対側に、ビード14aに対して十分な減圧調整を行えるよう、接触しない位置に減圧チャンバー40を設置する。減圧チャンバー40は、その作動効率を保持するためのバックプレート40aとサイドプレート40bを備えており、バックプレート40aとウエブWの間、サイドプレート40bとウエブWの間にはそれぞれ隙間GB 、GS が存在する。図6及び図7は、近接している減圧チャンバー40とウエブWを示す断面図である。サイドプレートとバックプレートは図6のようにチャンバー本体と一体のものであってもよいし、図7のように適宜隙間を変えられるようにチャンバーにネジ40cなどで留められている構造でもよい。いかなる構造でも、バックプレート40aとウエブWの間、サイドプレート40bとウエブWの間に実際にあいている部分を、それぞれ隙間GB 、GS と定義する。減圧チャンバー40のバックプレート40aとウエブWとの隙間GB とは、減圧チャンバー40を図5のようにウエブW及びスロットダイ13の下方に設置した場合、バックプレート40aの最上端からウエブWまでの隙間を示す。
【0199】
バックプレート40aとウエブWとの隙間GB をスロットダイ13の先端リップ17とウエブWとの隙間GL よりも大きくして設置するのが好ましく、これによりバックアップロール11の偏心に起因するビード近傍の減圧度変化を抑制することができる。例えば、スロットダイ13の先端リップ17とウエブWとの隙間GL が30μm以上100μm以下のとき、バックプレート40aとウエブWの間の隙間GB は100μm以上500μm以下が好ましい。
【0200】
[材質、精度]
前記ウェブの進行方向側の先端リップのウェブ走行方向における長さは、長いほどビード形成に不利であり、この長さがスロットダイ幅方向における任意の個所間でばらつくと、かすかな外乱によりビードが不安定になる。したがって、この長さをスロットダイ幅方向における変動幅が20μm以内とすることが好ましい。
【0201】
また、スロットダイの先端リップの材質については、ステンレス鋼などのような材質を用いるとダイ加工の段階でだれてしまい、前記のようにスロットダイ先端リップのウェブ走行方向における長さを30μm〜100μmの範囲にしても、先端リップの精度を満足できない。したがって、高い加工精度を維持するためには、特許第2817053号公報に記載されているような超硬材質のものを用いることが重要である。具体的には、スロットダイの少なくとも先端リップを、平均粒径5μm以下の炭化物結晶を結合してなる超硬合金にすることが好ましい。超硬合金としては、タングステンカーバイド(以下、WCと称す)などの炭化物結晶粒子をコバルトなどの結合金属によって結合したものなどがあり、結合金属としては他にチタン、タンタル、ニオブ及びこれらの混合金属を用いることも出来る。WC結晶の平均粒径としては、粒径3μm以下がさらに好ましい。
【0202】
高精度な塗布を実現するためには、先端リップのウェブ進行方向側のランドの前記長さ及びウェブとの隙間のスロットダイ幅方向のばらつきも重要な因子となる。この二つの因子の組み合わせ、つまり隙間の変動幅をある程度抑えられる範囲内の真直度を達成することが望ましい。好ましくは、前記隙間のスロットダイ幅方向における変動幅が5μm以下になるように先端リップとバックアップロールの真直度を出すのがよい。
【0203】
[塗布速度]
上記の様なバックアップロール及び先端リップの精度を達成することにより、本発明の塗布方式は高速塗布時における膜厚の安定性が高い。さらに、本発明の塗布方式は前計量方式であるために高速塗布時でも安定した膜厚の確保が容易である。本発明の反射防止フィルムの様な低塗布量の塗布液に対して、本発明の塗布方式は高速で膜厚安定性良く塗布が可能である。他の塗布方式でも塗布は可能であるが、ディップコート法は液受け槽中の塗布液振動が不可避であり、段状のムラが発生しやすい。リバースロールコート法、マイクログラビア法では、塗布に関連するロールの偏芯やたわみにより段状のムラが発生しやすい。また、マイクログラビア法ではグラビアロールの製作精度や、ブレードとグラビアロールの当たりによるロールやブレードの経時変化により塗布量ムラを発生しやすい。また、これらの塗布方式は後計量方式であるため、安定した膜厚の確保が困難である。本発明の製造方法を用いることで25m/min以上で塗布することが生産性の面から好ましい。
【0204】
本発明の反射防止フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等によってディスプレイの最表面に配置する。該透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の反射防止フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
【0205】
本発明の反射防止フィルムは、片面に粘着層を設ける等によってディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用される場合には、十分に接着させるためには透明支持体上に含フッ素ポリマーを主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏向膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏向膜と接着させる際に偏向膜と反射防止フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0206】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止膜面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点と、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該反射防止フィルムの反射防止フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
【0207】
このようにして形成された本発明の反射防止フィルムは、ヘイズ値が3〜70%、好ましくは4〜60%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が3.0%以下、好ましくは2.5%以下である。
本発明の反射防止フィルムが上記範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴なわずに良好な防眩性および反射防止性が得られる。
【0208】
偏光板は、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムで主に構成される。本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の反射防止フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の反射防止フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0209】
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向とフィルムの実質延伸方向とのなす角が、20〜70゜傾斜するようにフィルム両端を保持させた状態でフィルム進行方向を屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0210】
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
偏光子の2枚の保護フィルムのうち、反射防止フィルム以外のフィルムが、光学異方層を含んでなる光学補償層を有する光学補償フィルムであることも好ましい。光学補償フィルム(位相差フィルム)は、液晶表示画面の視野角特性を改良することができる。
光学補償フィルムとしては、公知のものを用いることができるが、視野角を広げるという点では、ディスコティック化合物を用いた光学補償フィルムが好ましい。
該角度は光学異方性層の支持体面側からの距離の増加とともに増加していることが好ましい。
【0211】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、以上述べた反射防止膜、反射防止フィルムおよび偏光板(反射防止能付き偏光板)の少なくともいずれかが画像表示面に配置されていることを特徴とする。本発明の反射防止膜、反射防止フィルム、および偏光板は、液晶表示装置(LCD)、有機ELディスプレイのような画像表示装置に適用することができる。そして、本発明の画像表示装置は、TN、STN、IPS、VA及びOCBのいずれかのモードの透過型、反射型又は半透過型の液晶表示装置に適用するのが好ましい。以下、さらに説明する。
【0212】
液晶表示装置としては、従来公知の何れも用いることができる。例えば、内田龍雄監修「反射型カラーLCD総合技術」{(株)シーエムシー、1999年刊}、「フラットパネルディスプレイの新展開」{(株)東レリサーチセンター調査部門、1996年刊}、「液晶関連市場の現状と将来展望(上巻)、(下巻)」{富士キメラ総研(株)、2003年刊}等に記載されているものが挙げられる。
【0213】
具体的には、例えばツイステッドネマチック(TN)、スーパーツイステッドネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、又は半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
【0214】
また、本発明の偏光板は、付設する液晶表示装置表示画像の大きさが17インチ以上であっても、コントラストが良好で広い視野角を有し、色相変化及び外光の移りこみ防止を実現でき、且つ耐久性が良好であり好ましい。
【0215】
[TNモード液晶表示装置]
TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献の記載が挙げられる。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0216】
[OCBモード液晶表示装置]
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている装置が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。
【0217】
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0218】
[VAモード液晶表示装置]
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
【0219】
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモード)の液晶セル{SID97,“Digest of Tech. Papers”(予稿集)28(1997)845記載]、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル[日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載]及び(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が挙げられる。
【0220】
[IPSモード液晶表示装置]
IPSモードの液晶セルでは、液晶分子を基板に対して常に水平面内で回転させるモードで、電界無印加時には電極の長手方向に対して若干の角度を持つように配向されている。電界を印加すると電界方向に液晶分子は向きを変える。液晶セルを挟持する偏光板を所定角度に配置することで光透過率を変えることが可能となる。液晶分子としては、誘電率異方性Δεが正のネマチック液晶を用いる。液晶層の厚み(ギャップ)は、2.8μm超4.5μm未満とする。これは、レターデーションΔn・dが0.25μm超0.32μm未満の時、可視光の範囲内で波長依存性が殆どない透過率特性が得られる。偏光板の組み合わせにより、液晶分子がラビング方向から電界方向に45°回転したとき最大透過率を得ることができる。なお液晶層の厚み(ギャップ)はポリマビーズで制御している。もちろんガラスビーズヤファイバー、樹脂製の柱状スペーサでも同様のギャップを得ることができる。また液晶分子は、ネマチック液晶であれば、特に限定したものではない。誘電率異方性Δεは、その値が大きいほうが、駆動電圧が低減でき、屈折率異方性Δnは小さいほうが液晶層の厚み(ギャップ)を厚くでき、液晶の封入時間が短縮され、且つギャップばらつきを少なくすることができる。
【0221】
[その他液晶モード]
ECBモード及びSTNモードの液晶表示装置に対しては、上記と同様の考え方で本発明の偏光板を供することができる。
【0222】
[表示装置]
液晶表示装置の形成は、従来に準じて行うことができる。すなわち液晶表示装置は、一般に、液晶セルと光学フィルム及び、必要に応じて、照明システム等の構成部品を適宜に組み合わせて駆動回路を組込むことなどにより形成される。本発明においては、本発明による液晶表示素子を用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。
【0223】
液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイ、レンズアレイシート、光散乱板、導光板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層又は2層以上配置することができる。また、λ/4板と組み合わせることで、反射型液晶用の偏光板や、有機ELディスプレイ用表面保護板として表面及び内部からの反射光を低減するのに用いることができる。
【実施例】
【0224】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特別の断りの無い限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0225】
(フッ素系ポリマー(FP−8)の合成)
攪拌機と還流冷却器を備えた反応器に、1H,1H,7H−ドデカフルオロヘプチルアクリレート39.93g、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート1.1g、2−ブタノン30gを加え窒素雰囲気下で6時間78℃に加熱して反応を完結させた。質量平均分子量は2.9×104であった。
【0226】
(ゾル液aの調製)
攪拌機と還流冷却器を備えた反応器に、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート(「ケロープEP−12」ホープ製薬(株)製)3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0227】
(ゾル液bの調製)
反応後室温まで冷却した後、アセチルアセトン6部を添加したこと以外は上記ゾル組成物aと同様にしてゾル液bを得た。
【0228】
(防眩性ハードコート層用塗布液A、A−1〜A−6の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET−30、日本化薬(株)製)50gをトルエン38.8gで希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2.1g添加し、混合攪拌した。 この溶液を塗布して紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した平均粒径3.5μmのポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX−350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を1.69gおよび平均粒径3.5μmのアクリル−スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を13.2g加え、最後に、フッ素系ポリマー(FP−8)0.75g、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を10gを加え、完成液とした。
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層の塗布液Aを調製した。
また、フッ素系ポリマーを表1に記載されるものに代える以外は、同様にして防眩性ハードコート層の塗布液A−2〜A−4を調製した。また、塗布液A−1としてはフッ素系ポリマーを添加していない塗布液を調製した。なお、A−5とA−6は塗布液Aの濃度を調整して作製した。
【0229】
(光拡散層用塗布液B、B−1〜B−6の調製)
市販ジルコニア含有UV硬化型ハードコート液(デソライトZ7404、JSR(株)製、固形分濃度約61%、固形分中ZrO2含率約70%、重合性モノマー、重合開始剤含有)283g、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)85gを混合し、更に、メチルイソブチルケトン60g、メチルエチルケトン17gで希釈した。更に、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学(株)製)28gを混合攪拌した。この溶液を塗布して紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.61であった。
さらにこの溶液に平均粒径3.0μmの分級強化架橋PMMA粒子(屈折率1.49、MXS−300、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散した分散液を354.8g加え、次いで、平均粒径1.5μmのシリカ粒子(屈折率1.46、シーホスターKE-P150、日本触媒(株)製)の30%メチルエチルケトン分散液をポリトロン分散機にて10000rpmで30分間分散した分散液を90g加え、最後に、フッ素系ポリマー(FP−8)0.12gを混合攪拌し、完成液とした。
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光拡散層の塗布液Bを調製した。
また、フッ素系ポリマーを表1に記載されるものに代える以外は、同様にして光拡散層の塗布液B及びB−2〜B−4を調製した。塗布液B−1としてはフッ素系ポリマーを添加していない塗布液を調製した。なお、B−5とB−6はBの濃度を調整して作製した。
【0230】
(低屈折率層用塗布液Aの調整)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、JSR(株)製)13g、コロイダルシリカ分散物(シリカ、下記MEK−STの粒子径違い品、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.28g、ゾル液a 0.6gおよびメチルエチルケトン5g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Aを調製した。
【0231】
(低屈折率層用塗布液Bの調製)
上記低屈折率層用塗布液Aの調製において、コロイダルシリカ分散物の代わりに中空シリカ分散物{粒子サイズ約40〜50nm、シエル厚6〜8nm、屈折率1.31、固形分濃度20%、主溶媒イソプロピルアルコール、特開2002−79616の調製例4に準じて粒子サイズを変更して作製}を1.91g用いた以外は添加量も含め上記塗布液Aと同様にして、低屈折率層用塗布液Bを作成した。
【0232】
(低屈折率層用塗布液Cの調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、JSR(株)製)15g、コロイダルシリカ分散物(シリカ、MEK−ST、平均粒径15nm、固形分濃度30%、日産化学社製)0.58g、コロイダルシリカ分散物MEK−ST−L(シリカ、MEK−STの粒子径違い品、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)0.82g、ゾル液a 0.4gおよびメチルエチルケトン3g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液Cを調製した。
【0233】
[実施例1:反射防止フィルムの本発明試料1〜18、比較試料1〜6の作製と評価]
表1に示す通りに防眩性ハードコート層と低屈折率層を作製した。防眩性ハードコート層の塗設(作製法A〜C)、低屈折率層の塗設は下記の通りに行った。
【0234】
防眩性ハードコート層の塗設
(ダイコーターの構成)
ダイコーターには、図3〜図7に示したものと実質的に同じものを用いた(以下の記述における部材番号は図3〜図7に用いた部材番号である)。スロットダイ13は、上流側リップランド長IUPが0.5mm、下流側リップランド長ILOが50μmで,スロット16の開口部のウェブ走行方向における長さが150μm、スロット16の長さが50mmのものを使用した。上流側リップランド18aとウエブWの隙間を、下流側リップランド18bとウエブWの隙間よりも50μm長くし(以下、オーバーバイト長さ50μmと称する)、下流側リップランド18bとウエブWとの隙間GL を50μmに設定した。また、減圧チャンバー40のサイドプレート40bとウエブWとの隙間GS 、及びバックプレート40aとウエブWとの隙間GB はともに200μmとした。
【0235】
膜作製法A
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(TD80U:商品名、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して、防眩性ハードコート層用塗布液を、表1に示す乾燥膜厚になるように前記ダイコーターを用いて25m/minの塗布速度で塗布した。減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。110℃で10秒間、50℃で20秒間、溶剤乾燥の後、さらに窒素パージ下(酸素濃度200ppm以下)で、積算光量が55mJになるようにUV照射(ハーフキュア)して、光硬化させ、防眩層を形成し、巻き取った。
【0236】
膜作製法B
オーバーバイト長さを0μmにした以外は膜作製法Aと同じ方法で防眩層を形成した。
【0237】
膜作製法C
バー塗布により塗布した以外は膜作製法Aと同じ方法で防眩層を作成した。
【0238】
低屈折率層の塗設
防眩性ハードコート層を塗設したトリアセチルセルロースフイルムを再び巻き出して、上記低屈折率層用塗布液を前記ダイコーターを用いて25m/minの塗布速度で塗布した。下流側リップランド18bとウエブWとの隙間GL を50μmに設定し、減圧チャンバーの減圧度は0.8kPaとした。120℃で70秒乾燥の後、更に110℃で10分乾燥し、熱硬化させてから、窒素パージ下(酸素濃度100ppm以下)で、積算光量が120mJになるようにUV照射(フルキュア)して、光硬化させ、低屈折率層が塗設された反射防止フィルムを形成し、巻き取った。
上記において、塗布、乾燥工程は0.5μm以上の粒子として30個/(立方メートル)以下の空気清浄度の空気雰囲気下で行われ、塗布直前に特開平10−309553号公報に記載の清浄度の高い空気を高速で吹き付けて付着物をフィルム表面から剥離させ、近接した吸い込み口で吸引する方法で除塵を行いながら塗布を行った。除塵前のベースの帯電圧は、200V以下であった。上記の塗布は1層毎に、送り出し−除塵−塗布−乾燥−(UVまたは熱)硬化−巻き取りの各工程を経る形で行った。
【0239】
(反射防止フィルムの鹸化処理)
反射防止フィルムについて、以下の処理を行った。
1.5mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を調製し、55℃に保温した。0.01mol/lの希硫酸水溶液を調製し、35℃に保温した。 作製した反射防止フィルムを上記の水酸化ナトリウム水溶液に2分間浸漬した後、水に浸漬し水酸化ナトリウム水溶液を十分に洗い流した。次いで、上記の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
このようにして、鹸化処理済み反射防止フィルム(本発明試料1〜18、比較試料1〜6)を作製した。
【0240】
(反射防止フィルムの評価)
得られたこれらの反射防止フィルム試料について、以下の項目の評価を行った。結果を表1に示した。
【0241】
(1)平均反射率
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を測定した。結果には450〜650nmの積分球平均反射率を用いた。
【0242】
(2)スチールウール耐傷性評価
ラビングテスターを用いて、以下の条件でこすりテストをおこなった。
評価環境条件:25℃、60%RH
こすり材:試料と接触するテスターのこすり先端部(1cm×1cm)に スチールウール(日本スチールウール(株)製、ゲレードNo.0000)を巻いて、動かないようバンド固定した。
移動距離(片道):13cm、こすり速度:13cm/秒、荷重:500g/cm2、先端部接触面積:1cm×1cm、こすり回数:10往復。
こすり終えた試料の裏側に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、こすり部分の傷を、以下の基準で評価した。
○:全く傷が見えない、または、非常に注意深く見ると僅かに弱い傷が見える。
○△:弱い傷が見える。
△:中程度の傷が見える。
△×〜×:一目見ただけで分かる傷がある。
【0243】
(3)水綿棒こすり耐性評価
ラビングテスターのこすり先端部に綿棒を固定し、平滑皿中で試料の上下をクリップで固定し、室温25℃で、試料と綿棒を25℃の水に浸し、綿棒に500gの荷重をかけて、こすり回数を変えてこすりテストを行った。こすり条件は以下のとおり。
こすり距離(片道):1cm、 こすり速度:約2往復/秒
こすり終えた試料を観察して、膜剥がれが起こった回数で、こすり耐性を以下のように評価した。
×:0〜10往復で膜剥がれ
×△:10〜30往復で膜剥がれ
△:30〜50往復で膜剥がれ
○△:50〜100往復で膜剥がれ
○:100〜150往復で膜剥がれ
◎:150往復でも膜剥がれなし
【0244】
(4)粘度
機能層を形成する塗布液の粘度を振動式粘度計((株)エー・アンド・デイ製 CJV−5000)にて粘度を測定した。
【0245】
(5)表面張力
機能層塗布液の表面に本発明に係るフルオロ脂肪族基含有共重合体が偏在すると、塗布液表面張力が低下することから、機能層を形成する塗布液の表面張力を温度25℃の環境下で表面張力計(協和界面科学製、KYOWA CBVP SURFACE TENSIOMETER A3)を用いて測定した。
表1には、フルオロ脂肪族基含有共重合体を添加する前と添加後に測定した値を示した。
(6)表面自由エネルギー
機能層表面に本発明のフルオロ脂肪族基含有共重合体が偏在すると機能層表面の表面自由エネルギーが変化することから、反射防止フィルムを温度25℃、湿度60%RHで2時間調湿した後、水およびヨウ化メチレンに対する接触角を測定し、それらの値より表面自由エネルギーを算出した。
また、機能層表面に低屈折率層塗布した時の挙動を見るために、斜めに傾けた光学機能フィルムの機能層面に低屈折率層を形成する塗布液の溶媒(メチルエチルケトンとシクロヘキサノンの混合溶媒)のみを流し、乾燥した後、同様の測定を行い、表面自由エネルギーを算出し、塗布後の表面エネルギーとして表1に示した。
(7)塗り付き
塗布部でのベースへの膜の塗り付き状態を下記の通りに評価した。
○:良好
△:少しスジっぽい
×:非常にスジが目立つ または 未塗布部がある
(8)面状均一性
塗布面側を上にして、裏面側から上記蛍光灯を照射して、透過目視面検にて乾燥ムラ等の面状ムラを目視評価した。
×:面状ムラが簡単に確認できる
△: 面状むらが確認できる
○: 強い面状ムラが確認できる
【0246】
(表1)
【表1】

【0247】
R−1 Mw=30,000
【0248】
【化21】

【0249】
表1に示される結果より、以下のことが明らかである。
本発明の反射防止フィルムにおいて、フルオロ脂肪族基含有共重合体を添加した試料では、フルオロ脂肪族基含有共重合体が表面張力を低下させ、面状均一性が良化するとともに、高速で均一な膜を形成することができる。これはフルオロ脂肪族基含有共重合体が機能層用塗布液の表面に偏析したためにもたらされたものと考えられる。更に、本発明のフルオロ脂肪族基含有共重合体を添加した試料では、下層の機能層(防眩性ハードコート層または光拡散層)の表面自由エネルギーが低下し、上層を形成する溶剤の塗布後には表面自由エネルギーが増加している。このことは、下層の機能層を形成したときにはフルオロ脂肪族基含有共重合体が下層の機能層上に偏在し、上層を形成したときにはフルオロ脂肪族基含有共重合体が上層に拡散して、下層の表面に偏在していないことを示している。この効果により、本発明の光学フィルムでは、上層と下層の密着性が改良され、耐擦傷性が良化したものと考えられる。
本発明により優れた面状均一性と高い耐擦傷性を持つ反射防止膜が生産性高く得られる。
【0250】
上記試験に加えて、本発明試料1〜18において、防眩性ハードコート層塗布液Aで用いる希釈溶剤をトルエンの代わりにトルエン/アノン=85/15、トルエン/アノン=70/30という溶剤組成にした試験も行った。アノンの比率が高くなるにつれて支持体/防眩性ハードコート層の界面密着力が強化され、耐擦傷性能が向上することが認められた。
また本発明試料1〜18において、低屈折率層塗布液に使用しているオルガノシランのゾル液aの代わりにゾル液bを使用したところ、塗布液の経時安定性が良くなり、連続塗布に対する適性が高くなった。
また本発明試料1〜18において、低屈折率層塗布液に使用している熱架橋性含フッ素ポリマーの代わりに、屈折率1.44の熱架橋性含フッ素ポリマー(JTA−113、固形分濃度6%、JSR(株)製)を使用したところ、耐擦傷性が著しく向上した。
【0251】
さらに、本発明試料1〜6と比較試料2につき、塗布速度をさらに上げていくと、比較試料2の方が低速で塗りつかなくなった。
【0252】
本発明試料1〜6、9と本発明試料8につき、塗布速度をさらに上げていくと、本発明試料8は30m/分で塗りつかなくなり、実施例以上の高速化は困難であった。一方本発明試料1〜6、9は50m/分以上でも塗りつけることができた。
【0253】
本発明試料10〜15、18と本発明試料17につき、塗布速度をさらに上げていくと、本発明試料17は30m/分で塗りつかなくなり、実施例以上の高速化は困難であった。一方本発明試料10〜15、18は50m/分以上でも塗りつけることができた。
【0254】
[実施例2]
1.5mol/l、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)と、実施例1の各本発明試料の裏面鹸化済みトリアセチルセルロースフィルムに、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光子の両面を接着、保護して偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製のD−BEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
【0255】
[実施例3]
実施例1の本発明試料を貼りつけた透過型TN液晶セルの視認側の偏光板の液晶セル側の保護フィルム、およびバックライト側の偏光板の液晶セル側の保護フィルムとして、視野角拡大フィルム(ワイドビューフィルムエース、富士写真フイルム(株)製)を用いたところ、明室でのコントラストに優れ、且つ上下左右の視野角が非常に広く、極めて視認性に優れ、表示品位の高い液晶表示装置が得られた。
また、また、本発明試料10〜18(光拡散層用塗布液B)は、出射角0°に対する30°の散乱光強度が0.06%であり、この光拡散性により、特に下方向の視野角アップ、左右方向の黄色味が改善され、非常に良好な液晶表示装置であった。比較として、該光拡散層用塗布液Bから、架橋PMMA粒子、シリカ粒子を除去した以外、全く本発明試料10〜18と同じく作製したフィルムでは、出射角0°に対する30°の散乱光強度が実質0%であり、下方向視野角アップ、黄色味改善効果は全く得られなかった。
【0256】
[実施例4]
実施例1の本発明試料を、有機EL表示装置の表面のガラス板に粘着剤を介して貼り合わせたところ、ガラス表面での反射が抑えられ、視認性の高い表示装置が得られた。
【0257】
[実施例5]
実施例1の試料を用いて、片面反射防止フィルム付き偏光板を作製し、偏光板の反射防止膜を有している側の反対面にλ/4板を張り合わせ、有機EL表示装置の表面のガラス板に貼り付けたところ、表面反射および、表面ガラスの内部からの反射がカットされ、極めて視認性の高い表示が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0258】
【図1】図1(a)は防眩性反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。図1(b)は反射防止性能に優れた反射防止フィルムの層構成を示す断面模式図である。
【図2】光学機能性フィルムの各構成層の塗布を連続的に行う装置の構成例である。
【図3】スロットダイを用いたコーターを示す概略断面図である。
【図4】(A)は本発明のスロットダイを示す概略断面図である。(B)は従来のスロットダイを示す概略断面図である。
【図5】塗布工程のスロットダイ及びその周辺部を示す斜視図である。
【図6】近接している減圧チャンバーとウエブを示す概略断面図である。
【図7】近接している減圧チャンバーとウエブを示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0259】
1 反射防止フィルム
2 透明支持体
3 ハードコート層
4 防眩性ハードコート層
5 低屈折率層
6 微粒子
7 中屈折率層
8 高屈折率層
10 コーター
11 バックアップロール
13 スロットダイ
14a ビード
14b 塗膜
15 ポケット
16 スロット
16a 開口部
17 先端リップ
18 平坦部(ランド)
18a 上流側リップランド
18b 下流側リップランド
30 従来のスロットダイ
31a 上流側リップランド
31b 下流側リップランド
32 ポケット
33 スロット
40 減圧チャンバー
40a バックプレート
40b サイドプレート
40c ネジ
100,200,300,400 製膜ユニット
101,201,301,401 塗布液を塗布する工程102,202,302,402 塗布液を乾燥する工程
103,203,303,403 塗布液を硬化する工程
110 ロール状支持体の連続送出工程
120 支持体の連続巻取り工程
W ウエブ
IUP 上流側リップランド長さ
ILO 下流側リップランド長さ
L 下流側リップランドとウエブとの隙間
S サイドプレートとウエブとの隙間
B バックプレートとウエブとの隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位の含有率が10質量%以上のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有し、かつ該フルオロ脂肪族基含有共重合体が表面に偏在する該機能層を有する光学機能フィルムを製造するに際して、該機能層がバックアップロールによって支持されて連続走行する透明支持体の表面に、スロットダイの先端リップのランドを近接させて、前記先端リップのスロットから塗布液を塗布したのちに、溶剤乾燥し、必要に応じて電離放射線または熱で硬化する方法で形成されることを特徴とする光学機能フィルムの製造方法。
【請求項2】
スロットダイの透明支持体進行方向側の先端リップのウェブ走行方向におけるランド長さを30μm以上100μm以下とするスロットダイを使用し、前記スロットダイを塗布位置にセットしたときに、前記ウェブの進行方向とは逆側の先端リップとウェブの隙間を、前記ウェブ進行方向側の先端リップとウェブとの隙間よりも30μm以上120μm以下大きくなるように設置した塗布装置を用いて塗布されることを特徴とする請求項1に記載の光学機能フィルムの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法で作製したことを特徴とする光学機能フィルム。
【請求項4】
請求項3に記載の光学機能フィルムのフルオロ脂肪族基含有共重合体が表面に偏在する光学機能層の上にさらに上層を塗設したことを特徴とする光学機能フィルム。
【請求項5】
透明支持体上にフルオロ脂肪族基含有共重合体が表面に偏在する光学機能層として防眩性および/または光散乱性を有する光散乱層が形成され、更に該光学機能層上に低屈折率層を含む1層以上の薄膜層が形成された反射防止フィルムであって、前記光学機能層は、平均粒子径0.5〜5μmの透光性粒子の少なくとも1種を透光性樹脂に分散してなり、該透光性粒子と該透光性樹脂との屈折率の差が0.02〜0.2であり、かつ該透光性粒子の含有量が光学機能層の全固形分の2〜30質量%であることを特長とする請求項4に記載の光学機能フィルム。
【請求項6】
フルオロ脂肪族基含有共重合体を含有する光学機能層用塗布液が粘度が2〜15mPa・secであり、透明支持体に塗り付けられる塗布液量が5〜30cc/m2であり、かつ、該共重合体の添加により表面張力が1mN/m以上低下する塗布液であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の光学機能フィルム。
【請求項7】
フルオロ脂肪族基含有共重合体が、側鎖に炭素数4以上のパーフルオロアルキル基または炭素数4以上のCF2H−基を有するフルオロアルキル基を有する共重合体であることを特徴とする請求項3〜6のいずれかに記載の光学機能フィルム。
【請求項8】
透明支持体上に、少なくとも2層の光学機能層を隣接して有する光学機能フィルムであって、隣接した複数の光学機能層のうち、支持体から遠い側の層が、フルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位の含有率が10質量%以上のフルオロ脂肪族基含有共重合体を支持体に近い層に対して多く含有することを特徴とする請求項4〜7のいずれかに記載の光学機能フィルム。
【請求項9】
隣接した複数の光学機能層が電離放射線硬化性樹脂もしくは熱硬化性樹脂の硬化組成物を含有することを特徴とする請求項3〜8のいずれかに記載の光学機能フィルム。
【請求項10】
透明支持体上に、少なくとも第1の光学機能層と第2の光学機能層を隣接してこの順序で形成することからなる請求項4〜9のいずれかに記載の光学機能フィルムの製造方法であって、該第1の光学機能層を形成した後、該第2の光学機能層を形成する塗布液の溶媒を第1の光学機能層上に塗布すると、該第1の光学機能層の表面自由エネルギーが1mN/m以上変化することを特徴とする光学機能フィルムの製造方法。
【請求項11】
第1の光学機能層を形成するための塗布組成物がフルオロ脂肪族基含有モノマーの重合単位の含有率が10質量%以上のフルオロ脂肪族基含有共重合体を含有し、該第1の光学機能層を形成するための塗布組成物を塗布するときには、該フルオロ脂肪族基含有共重合体が該第1の光学機能層の表面に偏在し、該第2の光学機能層を塗布するときには、該フルオロ脂肪族基含有共重合体が該第2の光学機能層を形成するための塗布組成物中に溶出することを特徴とする請求項10に記載の光学機能フィルムの製造方法。
【請求項12】
請求項3〜9のいずれかに記載の光学機能フィルム、または請求項1、2、10,11のいずれかに記載の製造方法で製造された光学機能フィルムが、偏光板における偏光子の2枚の保護フィルムのうちの一方に用いられていることを特徴とする偏光板。
【請求項13】
請求項3〜9のいずれかに記載の光学機能フィルム、請求項1、2、10,11のいずれかに記載の製造方法で製造された光学機能フィルム、または請求項12に記載の偏光板が、ディスプレイ面の最表面に用いられていることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−89566(P2006−89566A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−275416(P2004−275416)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】