説明

光学機能部材支持用積層フィルム及びその製造方法、並びに、プリズムシート及び表示装置

【課題】光学機能部材の接着性と、ベースフィルムからのオリゴマーの析出防止との両立が可能な光学機能部材支持用積層フィルムを提供する。
【解決手段】プリズムシート10は、光学機能部材であるプリズム部材11と、プリズム部材11を支持する積層フィルム12とを備える。積層フィルム12は、ベースフィルム15と、ベースフィルム15のフィルム面に接着して設けられた易接着層16とを備える。易接着層16により、プリズム部材11とベースフィルム15とが接着される。易接着層16に含まれるポリエステル樹脂はガラス転移温度Tgが60℃未満のものである。易接着層16に含まれるポリエステル樹脂のジカルボン酸構成単位のうち30%以上がナフタレン環を有するジカルボン酸構成単位である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学機能部材との接着性を高める易接着層を備えた光学機能部材支持用積層フィルム及びその製造方法、並びに、プリズムシート及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの表示装置では、プリズムシート、反射防止シート、光拡散シート、ハードコートシート、IR吸収シート、電磁波シールドシート、調色シート、防眩シート等といったポリマー製の光学機能シートが用いられる。光学機能シートは、シート状の光学機能部材と、光学機能部材を支持する支持フィルムとを備え、例えば、プリズムシートは、シート状のプリズム部材と、プリズム部材を支持するポリエステルフィルムとを備える。
【0003】
しかしながら、シート状の光学機能部材をポリエステルフィルムにそのまま接着させた場合、ポリエステルフィルム及び光学機能部材の接着性が十分でない場合も多い。そこで、接着性の高い素材を含有する易接着層をポリエステルフィルムの上に設けてなる光学機能部材支持用積層フィルムを用いて、光学機能部材との接着性の向上を図っている。例えば、特許文献1では、接着性を高めるために、ポリエステルとポリウレタンとからなる易接着層を備えた光学機能部材支持用積層フィルムが提案されている。また、特許文献2では、無溶剤型の紫外線硬化樹脂に対しての接着性を向上させるため、ポリカーボネート構造を有するポリウレタンを含む易接着層を備えた光学機能部材支持用積層フィルムが提案されている。
【0004】
ところで、光学機能部材支持用積層フィルムの保管・輸送時において、高温、さらには高温高湿の状態が長く続くと、ポリエステルフィルムからのオリゴマーが易接着層の表面に析出し、光学特性及び外観上の問題を引き起こす。オリゴマーの析出を抑えるために、保管・輸送の間長時間にわたって温度・湿度の調節を行なうことも考えられるが、コストアップに繋がり現実的ではない。
【0005】
そこで、特許文献3においては、高屈折率を実現するためのポリエステル(ガラス転移温度Tgが105℃〜135℃)と、接着性向上・オリゴマーの析出防止のためのポリエステル(ガラス転移温度Tgが65℃〜95℃)とを併用して、易接着層を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−229395号公報
【特許文献2】特開2009−220376号公報
【特許文献3】特開2007−253512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3のような易接着層は、光学機能部材の形成材料によっては、十分な接着性が得られない場合がある。まず、光学機能部材の形成材料が、無溶剤型の紫外線硬化樹脂である場合、溶剤による易接着層の溶解・膨潤効果が無いため、易接着層への紫外線硬化樹脂の浸透、あるいは界面混合が起こりにくい。その結果、特許文献1に開示された易接着層は、無溶剤型の紫外線硬化樹脂に対して十分な接着性が得られない。
【0008】
近年、光学機能部材の耐傷性を改善する目的で、光学機能部材へ使用する無溶剤型の紫外線硬化樹脂として、ポリエチレンオキサイド鎖が比較的長い、すなわち平均付加モル数:(n+m)が5以上のビスフェノールA系ジアクリレート樹脂(一般式(1)参照)が使用され始めている。
【0009】
【化1】

【0010】
一般式(1)に示される化合物は、従来のもの(例えば、一般式(1)において平均付加モル数:(n+m)が2〜4のものに比べ、分子量が大きく、易接着層への浸透が極めて起こりにくい。そのため、特許文献1〜3に開示された易接着層の接着性は、十分ではない。更に、オリゴマーの析出防止に関しては、特許文献1、2ともに、対応が取られていない。
【0011】
本発明はこのような課題を解決するものであり、一般式(1)のような無溶剤型の紫外線硬化樹脂に対しても優れた接着性を示すとともに、高温環境下または高温高湿環境下におけるオリゴマーの析出が抑えられた光学機能部材支持用積層フィルム及びその製造方法を提供することを目的とする。更に、この光学機能部材支持用積層フィルムに光学機能部材が接着されてなるプリズムシート及び表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の光学機能部材支持用積層フィルムは、ポリエステルフィルムと、前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面に設けられ、光学機能部材を接着するための易接着層とを備え、前記易接着層には、ガラス転移温度Tgが60℃未満のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び架橋剤が含まれ、前記易接着層に含まれるポリエステル樹脂のジカルボン酸構成単位のうち30%以上がナフタレン環を有するジカルボン酸構成単位であることを特徴とする。
【0013】
前記易接着層は、前記ポリエステルフィルムのフィルム面上に設けられたフィルム接着層と、前記フィルム接着層に重ねて設けられた前記光学機能部材の接着面を有する部材接着層とを有し、前記フィルム接着層におけるポリエステル樹脂の質量濃度は、前記部材接着層におけるポリエステル樹脂の質量濃度よりも大きいことが好ましい。また、前記フィルム接着層に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、保管温度よりも高いことが好ましい。更に、前記フィルム接着層に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、前記部材接着層に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgよりも高いことが好ましい。
【0014】
前記易接着層の厚みは、0.5μm以上2.5μm以下であることが好ましい。
【0015】
本発明のプリズムシートは、上記の光学機能部材支持用積層フィルムと、前記易接着層に設けられた無溶剤型のアクリル系紫外線硬化樹脂製のプリズム部材とを備えたことを特徴とする。
【0016】
無溶剤型のアクリル系紫外線硬化樹脂には、一般式(1)で表され、平均付加モル数:n+m)が5以上の樹脂が50質量%以上含まれることが好ましい。
【0017】
本発明の表示装置は、上記のプリズムシートを備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明は、ポリエステルフィルムと前記ポリエステルフィルムのフィルム面に設けられた易接着層とを備えた光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法において、ガラス転移温度Tgが60℃未満のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋剤、及び溶媒を含む塗布液をポリエステルフィルムに塗布して、前記ポリエステルフィルムのフィルム面上に塗布膜を形成する塗布工程と、前記塗布膜から前記溶媒を蒸発させて前記易接着層を形成する易接着層形成工程とを有し、前記塗布液に含まれるポリエステル樹脂のジカルボン酸構成単位のうち30%以上がナフタレン環を有するジカルボン酸の構成単位であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明は、ポリエステルフィルムと前記ポリエステルフィルムのフィルム面に設けられた易接着層とを備え、前記易接着層は、前記ポリエステルフィルムのフィルム面上に設けられたフィルム接着層と、前記フィルム接着層に重ねて設けられた前記光学機能部材の接着面を有する部材接着層とを有する光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法において、ポリエステル樹脂、架橋剤、及び溶媒を含むフィルム接着層用塗布液をポリエステルフィルムに塗布して、前記ポリエステルフィルムのフィルム面上にフィルム接着層用塗布膜を形成するフィルム接着層用塗布工程と、前記フィルム接着層用塗布膜から前記溶媒を蒸発させて前記フィルム接着層を形成するフィルム接着層形成工程と、ガラス転移温度Tgが60℃未満のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋剤、及び溶媒を含む部材接着層用塗布液を前記フィルム接着層に塗布して、前記フィルム接着層の面上に部材接着層用塗布膜を形成する部材接着層用塗布工程と、前記部材接着層用塗布膜から前記溶媒を蒸発させて前記部材接着層を形成する部材接着層形成工程とを有し、前記フィルム接着層用塗布液及び前記部材接着層用塗布液に含まれるポリエステル樹脂のジカルボン酸構成単位のうち30%以上がナフタレン環を有するジカルボン酸の構成単位であり、前記フィルム接着層用塗布液中の固形分におけるポリエステル樹脂の質量濃度は、前記部材接着層用塗布液中の固形分におけるポリエステル樹脂の質量濃度よりも大きいことを特徴とする。
【0020】
前記フィルム接着層用塗布液に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、保管温度よりも高いことが好ましい。また、前記フィルム接着層用塗布液に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、前記部材接着層用塗布液に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgよりも高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、無溶剤型紫外線硬化樹脂に対しても優れた接着性を示すとともに、高温環境下または高温高湿環境下におけるオリゴマーの析出が抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の光学機能部材の概要を示す断面図である。
【図2】第2の光学機能部材の概要を示す断面図である。
【図3】第3の光学機能部材の概要を示す断面図である。
【図4】表示装置の概要を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(プリズムシート)
図1に示すように、プリズムシート10は、光学機能部材であるプリズム部材11と、プリズム部材11を支持するプリズムシート支持用積層フィルム(以下、積層フィルムと称する)12とを備える。積層フィルム12は、ベースフィルム15と、ベースフィルム15のフィルム面に接着して設けられた易接着層16とを備える。易接着層16により、プリズム部材11とベースフィルム15との接着性が確保される。
【0024】
(プリズム部材)
無溶剤型のアクリル系紫外線硬化樹脂製のプリズム部材11は液晶ディスプレイ等に備えられたバックライトユニットの正面輝度を向上させるためのものであり、透光性を有し表面にはプリズムパターンが形成されている。無溶剤型のアクリル系紫外線硬化樹脂製のプリズム部材11とは、プリズム部材11における無溶剤型のアクリル系紫外線硬化樹脂の質量濃度が90%以上のものをいう。無溶剤型のアクリル系紫外線硬化樹脂としては、一般式(1)に示され、平均付加モル数:(n+m)が5以上のものが50質量%以上含むものである。平均付加モル数:(n+m)は、20以下であることが好ましい。平均付加モル数:(n+m)が20を超えると、屈折率低下の影響で輝度低下の問題が生じるためである。なお、平均付加モル数:(n+m)は、6〜16であることが好ましい。
【0025】
【化2】

【0026】
(ベースフィルム)
ベースフィルム15は、ポリエステル製のフィルムである。ポリエステルとしては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等を用いることができる。中でも、コストや機械的強度の観点から、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
【0027】
ベースフィルム15は、機械的強度向上の観点から、延伸処理が施されたものであることが好ましく、特に2軸延伸したものが好ましい。延伸倍率には特に制限はないが、1.5〜7倍が好ましく、より好ましくは2〜5倍程度である。特に縦横方向にそれぞれ2〜5倍程度延伸した2軸延伸品が好ましい。延伸倍率が1.5倍よりも小さいと充分な機械的強度が得られなくなり、逆に7倍を超えると均一な厚みを得ることが難しくなる。
【0028】
ベースフィルム15の厚みは、例えば、30μm以上500μm以下であり、より好ましくは50μm以上300μm以下である。ベースフィルム15の厚みが30μm未満の場合には、腰がなくなり取り扱いにくくなるため好ましくない。一方で、ベースフィルム15の厚みが500μmを超えるものは、表示装置の小型化や軽量化が図りづらくなる他、コスト的にも不利となる。
【0029】
(易接着層)
易接着層16は、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及び架橋剤を含む。なお、易接着層16に、必要な添加剤が添加されていてもよい。易接着層16の厚みは、例えば、0.5μm以上2.5μm以下であり、0.6μm以上2.0μm以下であることが好ましい。
【0030】
(ポリエステル樹脂)
易接着層16に含まれるポリエステル樹脂は、ガラス転移温度Tgが60℃未満のものであることが好ましい。なお、易接着層16に含まれるポリエステル樹脂は、ガラス転移温度Tgが60℃未満のもののみであることがより好ましい。更に、易接着層16に含まれるポリエステル樹脂は、ナフタレン環を含む共重合ポリエステル樹脂である。共重合ポリエステル樹脂により、二軸延伸されたベースフィルム15との接着性が確保される。易接着層16に含まれる共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが60℃未満であることにより、一般式(1)に示されるアクリル系の紫外線硬化樹脂との接着性が確保される。易接着層16に含まれる共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、接着性の観点から、50℃以下であることがより好ましい。
【0031】
易接着層16に含まれる共重合ポリエステル樹脂は、2種類以上のポリエステル樹脂の混合物でも良い。この場合は、ガラス転移温度Tgが60℃未満のポリエステル樹脂を混ぜることが好ましい。ガラス転移温度Tgが60度以上のポリエステル樹脂を混ぜることも出来るが、一般式(1)に示されるアクリル系の紫外線硬化樹脂が易接着層16中に浸透することが困難となり、良好な接着性が得られ難くなる。従って、易接着層16に含まれる共重合ポリエステル樹脂にガラス転移温度Tgが60℃以上のポリエステル樹脂が含まれる場合、易接着層16に含まれる共重合ポリエステル樹脂におけるガラス転移温度Tgが60℃以上のポリエステル樹脂の濃度は、10質量%以下であることが好ましく、5質量%であることがより好ましい。すなわち、易接着層16に含まれる共重合ポリエステル樹脂におけるガラス転移温度Tgが60℃未満のポリエステル樹脂の濃度は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%であることがより好ましい。
【0032】
易接着層16に含まれる共重合ポリエステル樹脂として、ナフタレン環を含有する化合物を用いることで、易接着層16の表面においてオリゴマーの析出を防止することができる。これは、ベースフィルム15からのオリゴマー成分とナフタレン環を含有する共重合ポリエステル樹脂の相溶性が高いことに起因すると推定している。
【0033】
なお、易接着層16に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが−20℃未満であると、ポリエステル樹脂の安定性の観点で好ましくない。したがって、易接着層16に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、−20℃以上であることが好ましい。また、易接着層16に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、−20℃以上60℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは、−10℃以上50℃以下であることが好ましい。
【0034】
ガラス転移温度Tgの測定方法は、JIS K 7121(1987)の通りである。
【0035】
ナフタレン環を有する共重合ポリエステル樹脂は、ナフタレン環を有さない共重合ポリエステル樹脂に比べて、ガラス転移温度Tgが高い傾向にある。したがって、ナフタレン環を含む共重合ポリエステル樹脂のうち、ガラス転移温度Tgが60℃未満のものとしては、下記のジカルボン酸成分、ジオール成分からなる共重合ポリエステル樹脂であることが好ましい。
【0036】
(ジカルボン酸)
ジカルボン酸の構成単位として、2,6−ナフタレンジカルボン酸の構成単位を有することが好ましい。また、ナフタレン環を含む共重合ポリエステル樹脂のうち、ガラス転移温度Tgが60℃未満のものとしては、ジカルボン酸の構成単位として、下記の式(1)に示されるジカルボン酸や、テレフタル酸、イソフタル酸などを構成単位として有していても良い。
式(1) HOOC−(CH)n−COOH (式中、4≦n≦10の自然数)
【0037】
ナフタレン環を含む共重合ポリエステル樹脂の全てのジカルボン酸構成単位に対し、2,6−ナフタレンジカルボン酸の構成単位が占める割合Xは、30%以上90%以下であることが好ましい。割合Xが30%未満である場合には、オリゴマーの析出防止が十分ではない。割合Xが90%より大きい場合には、共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが高くなる結果、アクリル系の紫外線硬化樹脂との接着性が低下するため好ましくない。割合Xは、40%以上80%以下がより好ましく、50%以上75%以下がさらに好ましい。
【0038】
割合Xが上述の範囲となるような共重合ポリエステル樹脂をつくるためには、共重合ポリエステル樹脂をつくるためのジカルボン酸のうち、ナフタレン環を含むジカルボン酸が占める割合は、割合Xと同様に、すなわち、30モル%以上90モル%以下が好ましい。なお、共重合ポリエステル樹脂をつくるためのジカルボン酸のうち、ナフタレン環を含むジカルボン酸が占める割合は、40モル%以上80モル%以下がより好ましく、50モル%以上75モル%以下がさらに好ましい。
【0039】
(ジオール)
共重合ポリエステル樹脂のジオール成分としては、共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが低くなるようなものが好ましく、例えば、下記の式(2)に示されるジオールのほか、エチレングリコールやジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどがある。
式(2) HO−(CH)m−OH (式中、4≦m≦10の自然数)
【0040】
共重合ポリエステル樹脂の全てのジオール構成単位に対し、式(2)のジオールの構成単位が占める割合Yは、10%以上95%が好ましく、20%以上90%以下がより好ましく、30%以上85%以下がさらに好ましい。割合Yが10%未満では、ガラス転移温度Tgを下げる効果が不十分であるため、アクリル系の紫外線硬化樹脂と接着性が低下する。割合Yが95%より大きいと重合性が低下する場合がある。
【0041】
割合Yが上述の範囲となるような共重合ポリエステル樹脂をつくるためには、共重合ポリエステル樹脂をつくるためのジオールのうち、式(2)のジオールが占める割合は、割合Yと同様に、すなわち、10%以上95%が好ましい。なお、共重合ポリエステル樹脂をつくるためのジオールのうち、式(2)のジオールが占める割合は、20%以上90%以下がより好ましく、30%以上85%以下がさらに好ましい。
【0042】
本発明に用いうるポリエステル樹脂は、例えば、プラスコートZ592等の市販品(互応化学(株)製)としても入手可能である。
【0043】
(ポリウレタン樹脂)
易接着層16に含まれるポリウレタン樹脂により、プリズム部材11との接着性が確保される。易接着層16に含まれるポリウレタン樹脂は、主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI、MDI、NDI、TODI、HDI、IPDI等があり、ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール等がある。また、本発明のイソシアネートとしては、ポリイソシアネートとポリオールの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用することができる。以上に述べたポリイソシアネート、ポリオール、及び鎖延長処理については、例えば「ポリウレタンハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社、昭和62年発行)において記載されている。なお、易接着層16に含まれるポリウレタン樹脂は、1種、または2種以上のポリウレタン樹脂であってもよい。
【0044】
易接着層16に含まれるポリウレタン樹脂としては、ガラス転移温度Tgが−40℃以上50℃以下のものが好ましく、−20℃以上40℃以下のものがより好ましい。易接着層16に含まれるポリウレタン樹脂のガラス転移温度Tgが50℃を超えると一般式(1)に示されるアクリル系の紫外線硬化樹脂が易接着層16中に浸透することが困難となり、良好な接着性が得られ難くなる。易接着層16に含まれるポリウレタン樹脂のガラス転移温度Tgが−40℃未満であると、ポリウレタン樹脂の安定性の観点で好ましくない。
【0045】
本発明に用いうるポリウレタン樹脂は、例えば、スーパーフレックス150HS、スーパーフレックス470等の市販品(第一工業製薬(株)製)、ハイドランAP−20、ハイドランWLS−210、ハイドランHW−161等の市販品(DIC(株)製)としても入手可能である。
【0046】
(架橋剤)
本発明における架橋剤は、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、メラミン系、尿素系、エポキシ系等が挙げられる。これらの中で、塗布液の経時安定性、高温高湿処理後の密着性の観点から、オキサゾリン系、カルボジイミド系が好ましい。また、上記の架橋剤のいずれか1つを用いても良いし、上記の架橋剤のうち2つ以上を用いても良い。
【0047】
オキサゾリン基を有する化合物としては2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−メチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。また、オキサゾリン基を有する化合物は、例えば、エポクロスK-2020E、エポクロスK-2010E、エポクロスK-2030E、エポクロスWS−300、エポクロスWS−500、エポクロスWS−700等の市販品(日本触媒(株)製)としても入手可能である。
【0048】
オキサゾリン基を有する化合物はバインダに対して5〜50質量%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは10〜40質量%の範囲で添加することである。オキサゾリン基を有する化合物を前記範囲で添加することで、高温下、高温高湿下での経時後であっても、ベースフィルム15との接着性を失うことなく高い接着性を保持することができる。これに対して、添加量が5質量%未満の場合には高温下、高温高湿下での経時後の接着性が不良となる。一方で、添加量が50質量%を超えると、塗布液の安定性の悪化が発生してしまう。ここで、バインダとは、ポリエステル及びポリウレタンの両者を指す。
【0049】
カルボジイミド構造を有する化合物は、分子内に複数のカルボジイミド基を有する化合物であれば、特に制限なく使用することができる。ポリカルボジイミドは、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成されるが、この合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能である。ただし、反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。合成原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。
【0050】
有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が使用可能である。具体的には、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられ、また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が使用される。また、本発明に用いうるカルボジイミド系化合物は、例えば、カルボジライトV−02−L2、カルボジライトV−02、カルボジライトV−04、カルボジライトV−06、カルボジライトE−01、カルボジライトE−02、カルボジライトE−03A、カルボジライトE−04等の市販品(日清紡(株)製)としても入手可能である。
【0051】
本発明のカルボジイミド系化合物はバインダに対して15〜80質量%の範囲で添加することが好ましく、より好ましくは20〜75質量%の範囲で添加することである。カルボジイミド系化合物を前記範囲で添加することで、ベースフィルム15との接着性を向上させることができる。これに対して、添加量が15質量%未満の場合にはベースフィルム15との接着性が悪くなる。一方で、添加量が80質量%を超えると、特に弊害はないがコストがかかりすぎてしまう。
【0052】
(添加剤)
添加剤としては、マット剤、界面活性剤、滑り剤、防腐剤などを適宜用いても良い。
【0053】
マット剤としては、有機又は無機の微粒子のいずれでもよい。たとえばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などのポリマー微粒子やシリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどの無機微粒子を用いることができる。これらの中でポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカはすべり性改良効果、コストの観点から好ましい。
【0054】
マット剤の平均粒径は0.01〜12μmが好ましく、より好ましくは0.03〜9μmの範囲である。これら範囲内の平均粒径とすることで、表示装置の表示品位の低下をきたすことなく、すべり性改良効果を充分に得ることができる。また平均粒径の異なるマット剤を2種類以上用いることもできる。
【0055】
マット剤の添加量は、平均粒径によっても異なるが、0.1〜100mg/mが好ましく、より好ましくは0.5〜50mg/mの範囲である。これら範囲内の添加量とすることで、表示装置の表示品位の低下をきたすことなく、すべり性改良効果を充分に得ることができる。
【0056】
界面活性剤としては、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系の界面活性剤を用いることができる。界面活性剤については例えば「界面活性剤便覧」(西 一郎、今井 怡知一郎、笠井 正蔵編 産業図書(株) 1960年発行)に記載されている。界面活性剤の添加量としては0.1〜30mg/mが好ましく、より好ましくは0.2〜10mg/mの範囲である。これら範囲内の添加量とすることで、ハジキを発生させることなく、面状を良好にすることができる。
【0057】
滑り剤としては、合成又は天然ワックス、シリコーン化合物、R-O-SOM(ただしRは置換又は無置換のアルキル基、アルキル基の炭素数は3から20の整数、Mは一価の金属原子を表す)。
【0058】
滑り剤の具体例としてはセロゾール524、428、732-B、920、B-495、ハイドリンP-7、D-757、Z-7-30、E-366、F-115、D-336、D-337、ポリロンA、393、H-481、ハイミクロンG-110F、930、G-270(以上中京油脂(株)製)、ケミパールW100、W200、W300、W400、W500、W950(以上三井化学(株)製)などのワックス系、KF‐412、413、414、393、859、8002、6001、6002、857、410、910、851、X−22−162A、X−22−161A、X−22−162C、X−22−160AS、X−22−164B、X−22−164C、X−22−170B、X−22−800、X−22−819、X−22−820、X−22−821、(以上信越化学工業(株))などのシリコーン系、C16H33−O−SO3Na、C18H37−O−SO3Naなどの上記一般式で表される化合物などを挙げることができる。これらのすべり剤は0.1から50mg/mの範囲で添加することが好ましく、1〜20mg/mの範囲で添加することがより好ましい。これら範囲内で添加することで、面状を良好にしつつ、すべり性を充分に得ることができる。
【0059】
(積層フィルムの製造方法)
溶融ポリマーの押し出しにより、ベースフィルム15を得る。次に、ベースフィルム15を二軸方向に延伸する。延伸方向は、互いに直交することが好ましい。次に、易接着層16の原料となるポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及び架橋剤を溶媒に溶かしてなる塗布液を、二軸延伸されたベースフィルム15のいずれか片方のフィルム面に塗布し、フィルム面上に塗工膜を形成する。そして、塗工膜から溶媒を蒸発させて、易接着層16をフィルム面に有するベースフィルム15、すなわち積層フィルム12が得られる。
【0060】
塗布液の塗布方法には特に制限はなく、例えば、バーコーター塗布、スライドコーター塗布などの公知の方法が用いられる。溶媒も水、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトンなど、及びこれらの混合系などの水系、有機溶剤系の塗布溶媒を用いることができる。これらのうちで水を塗布溶媒として用いる方法は、コスト及び製造の簡便さを考えると好ましい。
【0061】
なお、二軸延伸後のベースフィルム15に対して、易接着層用の塗布液を塗布することによって、光学特性が均一で、且つ面状に優れた積層フィルム12を得ることができる。
【0062】
(プリズムシートの製造方法)
積層フィルム12のうち易接着層16側のフィルム面に、プリズム部材用の紫外線硬化樹脂を塗布し、塗布膜を形成する。次に、プリズムシート用の金型を塗布膜の膜面に押し当てて、ベースフィルム15側から紫外線を照射して、塗布膜を硬化させる。これにより、積層フィルム12とプリズム部材11とを備えたプリズムシート10を得ることができる。
【0063】
なお、図2に示すように、単層の易接着層16に代えて、複層の易接着層51を設けても良い。易接着層51は、ベースフィルム15に接着して設けられたフィルム接着層51aと、フィルム接着層51aに重なって接着し、プリズム部材11の接着面を有する部材接着層51bとを備える。プリズム部材11は、部材接着層51bを介して、フィルム接着層51a及びベースフィルム15と接着する。
【0064】
フィルム接着層51aにはポリエステル樹脂が含まれる。なお、フィルム接着層51aに、ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂とが含まれていても良い。部材接着層51bには、ポリエステル樹脂とポリウレタン樹脂とが含まれる。
【0065】
オリゴマー析出防止の観点から、次の(A1)を満たす必要がある。更なるオリゴマー析出防止の観点から、(A2)を満たすことが好ましい。
(A1)フィルム接着層51a及び部材接着層51bに含まれるポリエステル樹脂はナフタレン環を有すること
(A2)フィルム接着層51aに含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが高いこと
【0066】
(A1)については、フィルム接着層51aにおける割合X、及び部材接着層51bにおける割合Xは、それぞれ、30%以上90%未満であることが好ましい。(A2)については、フィルム接着層51aに含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、積層フィルム12やプリズムシート10の保管温度や環境試験における温度よりも高いことが好ましい。また、部材接着層51bに含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgよりも高いことが好ましい。フィルム接着層51aに含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、例えば、70℃以上である。
【0067】
(A2)によりオリゴマーの析出防止効果が確実に得られるプロセスは、次のように考えられる。ポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが高くなると、ポリエステル分子の振動が起こりにくくなる。このため、ベースフィルム15からのオリゴマーがフィルム接着層51a中を浸透しにくくなる結果、ベースフィルム15からのオリゴマーの析出が防止される。
【0068】
プリズム部材11との接着性向上の観点から、次の(B1)を満たす必要がある。更に、ベースフィルム15との接着性向上の観点から、(B2)を満たすことが好ましい。
(B1)部材接着層51bに含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgが60℃未満であること
(B2)フィルム接着層51aに含まれるポリエステル樹脂の質量濃度は、部材接着層51bに含まれるポリエステル樹脂の質量濃度よりも高いこと
【0069】
フィルム接着層51a及び部材接着層51bに含まれるポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂は、易接着層16に含まれるポリエステル樹脂及びポリウレタン樹脂と共通のものを用いればよい。
【0070】
なお、図2に示す積層フィルム12の製造方法は、ベースフィルムのフィルム面にフィルム接着層51a用の塗布液を塗布するフィルム接着層用塗布工程と、前記塗布された塗布液から溶媒を蒸発させてフィルム接着層51aを形成するフィルム接着層形成工程と、フィルム接着層に部材接着層51b用の塗布液を塗布する部材接着層用塗布工程と、前記塗布された塗布液から溶媒を蒸発させて部材接着層51bを形成する部材接着層形成工程とを有する。ここで、フィルム接着層51a用の塗布液中の固形分におけるポリエステル樹脂の質量濃度は、部材接着層51b用の塗布液中の固形分におけるポリエステルの質量濃度よりも大きい。
【0071】
なお、図3に示すように、ベースフィルム15の両方のフィルム面に易接着層16、55を設けても良い。プリズム部材11と反対側に設けられた易接着層16は、他の光学機能部材との接着性を高めることができる。
【0072】
プリズム部材11と反対側に設けられる他の光学機能部材としては、特開平10−300908に記載されている干渉縞防止層、特表2007−529780に記載されている損傷防止層、特開2010−49243に記載されているプリズム層頂点の接触痕防止層、さらには、虹ムラ改良層等が挙げられる。虹ムラ改良層とは、近年、部材削減のために、プリズムシート上の上拡散フィルムを外すことが検討されているが、上拡散フィルムを外すことで確認される虹ムラを改良するための拡散層であり、ヘイズが20〜50%程度のマット層である。
【0073】
なお、ベースフィルム15の両方のフィルム面に易接着層16、55を設ける場合には、ベースフィルム15の両方のフィルム面に塗布液を塗布すればよい。また、易接着層16、55のうちいずれか一方、または両方は、図2に示す易接着層16のように、複層構造を有していても良い。
【0074】
上記実施形態では、光学機能部材としてプリズム部材11を用いたが、光学機能部材として、拡散部材など他の光学機能部材を用いても良い。
【0075】
図4に示すように、液晶表示装置60は、液晶パネル61と光源ユニット62とを備える。液晶パネル61は、光源ユニット62から出射された光の透過・遮断を画素単位で制御するためのものであり、液晶セル63と、2枚の偏光板64,65を有する。液晶セル63は、透明なガラス基板の間に液晶を封入したものであり、各ガラス基板の内面に形成された透明電極間に電圧を印加することによって、透過する光の偏光状態を画素単位で変化させる。偏光板64は、偏光膜64aと、その両面に密着させた一対の保護膜64b,64cとを備える。偏光板65についても、偏光板64と同じ構成であり、偏光膜65aと保護膜65bと保護膜15cとを備える。各偏光板64,65は、互いにクロスニコルとなるように配置される。各偏光板64,65の間には液晶セル63が配される。
【0076】
光源ユニット62は、液晶パネル61を背後から照明するものであり、光源ランプ67と、導光板68と、拡散シート69と、プリズムシート10とを備える。光源ランプ67は、例えば棒状の蛍光管を用いており、楔形状の導光板68の端部(エッジ)に沿うように配してある。この光源ランプ67から放出される照明光は、直接、またリフレクタ67aに反射されて、導光板68の端部から内部に入射する。導光板68は、入射した照明光を、その内部で反射することにより、液晶パネル61とほぼ同じサイズの射出面68aから射出する。
【0077】
拡散シート69は、液晶パネル61の全面を均一に照明するためのものであり、射出面68aに近接させて配してある。この拡散シート69は、射出面68aから射出される照明光を透過する際に散乱・拡散させる。このような拡散シート69としては、例えば透明なシートの表面にビーズ状の光拡散材料を分散したもの、シート内部に光拡散材料を分散させたものなどを用いることができる。なお、光源ユニット62の薄型化を図る上では、拡散シート69をプリズムシート10と密着させて配すのがよい。また、薄型化を図る上では、上述のようにシート内部に光拡散材料を分散させる等して表面を平面とすることが好ましく、この例でもそのように構成してある。
【0078】
プリズムシート10は、液晶パネル61と拡散シート69との間に配され、正面輝度を向上させる。すなわち、プリズムシート10は、液晶パネル61の法線方向に射出される照明光の光量を大きくするように照明光の分布を制御する。プリズムシート10は、そのサイズは液晶パネル61の背面とほぼ同じである。拡散シート69で拡散された照明光は、プリズムシート10に入射し、プリズムシート10から射出される照明光が液晶パネル61に入射する。プリズムシート10としては、正面輝度を5%以上向上させることが好ましい。
【実施例】
【0079】
本発明の効果を確認するために、以下の実験1〜12を行なった。
【0080】
(実験1)
(ポリエステル樹脂の重合)
表1に示すジカルボン酸成分およびジオール成分を、表1に示すモル比となるようにエステル交換器に仕込み、シュウ酸チタン酸カリウム存在化のもと、窒素雰囲気下で250℃まで昇温することで、エステル交換反応を行った。次いで反応器の温度を225〜260℃まで昇温後、圧力を1mmHgまで徐々に減圧させ、重縮合反応を進行させた。重縮合反応により得られたポリエステル樹脂25質量部を、蒸留水65質量部と親水性溶媒(エチレングリコールモノ-t-ブチルエーテル)10質量部中に溶解若しくは分散させて、ポリエステル樹脂(A−1)〜(A−4)の水分散液(PA−1)〜(PA−4)を得た。各水分散液(PA−1)〜(PA−4)におけるポリエステル樹脂の濃度(固形分濃度)は、それぞれ25質量%であった。
【0081】
【表1】

【0082】
(ベースフィルムの作製)
以下の手順により、積層フィルム12用のベースフィルム15を作製した。先ず、Ti化合物を触媒として重縮合した固有粘度0.64のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記載する)樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させ、ヒーター温度が280〜300℃設定温度の押し出し機内で溶融させた。溶融させたPETをダイ部より静電印加されたチルロール上に押し出して、帯状の非結晶ベースを得た。得られた非結晶ベースを長手方向に3.3倍に延伸した後、幅方向に対して3.8倍に延伸し、厚さ188μmのベースフィルム15を得た。
【0083】
ベースフィルム15を搬送速度60m/分で搬送し、両面を730J/mの条件でコロナ放電処理を行った後、下記の塗布液Aをバーコート法により両面に塗布した。そして、これを145℃で1分乾燥して、ベースフィルム15の両面に易接着層16、55が設けられた積層フィルム12を得た。易接着層16、55の厚みは、それぞれ0.8μmであった。
【0084】
(塗布液A)
塗布液Aの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−1) 124.1質量部
ポリウレタン樹脂(ポリエステル系ポリウレタン) 81.6質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38% Tg=32℃)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 69.9質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Aの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0085】
得られた易接着層16上に、紫外線硬化樹脂を含むプリズム部材用塗工液をバーコート法によりワイヤーバー#10バー(ワイヤー径250μm)で塗工した。そして、プリズムパターンを形成するための金型を塗工面に押し当て、ベースフィルム15側からUV光(ウシオ電機(株)製メタルハライドランプUVL−1500M2)を450mJ/cmの条件で照射し、紫外線硬化樹脂の硬化を行なった。前記金型から積層フィルム12を引き剥がし、頂角90°、ピッチ60μm、高さが30μmのプリズム部材11を備える積層フィルム12、すなわちプリズムシート10を得た。尚、プリズム部材用塗工液を塗布してから、UV光を照射するまでの時間は1分とした。
【0086】
(プリズム部材用塗工液)
プリズム部材用塗工液の組成は次の通りである。
ビスフェノールA型ジアクリレート樹脂 23.75質量部
(新中村化学(株)製、NKエステル A−BPE−10)
開始剤 1.25質量部
(IRGACURE184)
【0087】
ここで、実験1に用いたビスフェノールA型ジアクリレート樹脂は、一般式(1)に示される化合物であり、(n+m)の値が10である。
【0088】
(実験2)
実験1の塗布液Aを、塗布液Bに変更する以外は実験1と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層16、55の厚みは、それぞれ1.6μmであった。
【0089】
(塗布液B)
塗布液Bの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−1) 248.2質量部
ポリウレタン樹脂(ポリエステル系ポリウレタン) 163.2質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38% Tg=32℃)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 139.8質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 2.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分 3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Bの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0090】
(実験3)
実験1の塗布液Aを、塗布液Cに変更する以外は実験1と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層16、55の厚みは、それぞれ0.8μmであった。
【0091】
(塗布液C)
塗布液Cの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−1) 173.7質量部
ポリウレタン樹脂(ポリカーボネート系ポリウレタン) 53.2質量部
(DIC(株)製 ハイドランWLS−210 固形分35% Tg=−15℃)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 69.9質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2HG 水分散物 固形分15%)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Cの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0092】
(実験4)
ベースフィルム15を搬送速度60m/分で搬送し、両面を730J/mの条件でコロナ放電処理を行った後、下記の塗布液Dをバーコート法により両面に塗布した。そして、これを145℃で1分乾燥して、ベースフィルム15にフィルム接着層51aを設けた。その後、フィルム接着層51aの上に下記の塗布液Eを、バーコート法により両面に塗布した後、145℃で1分乾燥することにより、部材接着層51bを設けた。こうして、フィルム接着層51a及び部材接着層51bからなる易接着層51をベースフィルム15の両面に備えた積層フィルム12を得た。その後、実験1と同様にして、プリズムシート10をつくった。易接着層51の厚みは、それぞれ0.7μmであった。
【0093】
(塗布液D)
塗布液Dの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−1) 124.1質量部
架橋剤(オキサゾリン化合物) 36.2質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Dの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0094】
(塗布液E)
塗布液Eの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−1) 62.1質量部
ポリウレタン樹脂(ポリエステル系ポリウレタン) 40.8質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38% Tg=32℃)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 36.2質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Eの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0095】
(実験5)
実験4において、塗布液Dに代えて下記の塗布液Fを用いてフィルム接着層51aを形成したこと以外は、実験4と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層51の厚みは、それぞれ0.7μmであった。
【0096】
(塗布液F)
塗布液Fの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−2) 124.1質量部
架橋剤(カルボジイミド化合物) 36.2質量部
(日清紡(株)製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Fの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0097】
(実験6)
実験4において、塗布液Dに代えて下記の塗布液Gを用いてフィルム接着層51aを形成したこと以外は、実験4と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層16、55の厚みは、それぞれ0.8μmであった。
【0098】
(塗布液G)
塗布液Gの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−2) 124.1質量部
架橋剤(オキサゾリン化合物) 25.9質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
架橋剤(カルボジイミド化合物) 25.9質量部
(日清紡(株)製 カルボジライトV−02−L2 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Gの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0099】
(実験7)
実験1において、塗布液Aに代えて塗布液Hを用いたこと以外は実験1と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層16、55の厚みは、それぞれ0.7μmであった。
【0100】
(塗布液H)
塗布液Hの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−1) 248.2質量部
架橋剤(オキサゾリン化合物) 69.9質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Hの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0101】
(実験8)
実験1において、塗布液Aに代えて塗布液Iを用いたこと以外は実験1と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層16、55の厚みは、それぞれ0.8μmであった。
【0102】
(塗布液I)
塗布液Iの組成は次の通りである。
ポリウレタン樹脂(ポリエステル系ポリウレタン) 163.2質量部
(第一工業製薬(株)製 スーパーフレックス150HS 固形分38% Tg=32℃)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 69.9質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2G 水分散物 固形分15%)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Iの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0103】
(実験9)
実験1において、塗布液Aに代えて塗布液Jを用いたこと以外は実験1と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層16、55の厚みは、それぞれ0.8μmであった。
【0104】
(塗布液J)
塗布液Jの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−2) 173.7質量部
ポリウレタン樹脂(ポリカーボネート系ポリウレタン) 53.2質量部
(DIC(株)製 ハイドランWLS−210 固形分35% Tg=−15℃)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 69.9質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2HG 水分散物 固形分15%)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Jの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0105】
(実験10)
実験1において、塗布液Aに代えて塗布液Kを用いたこと以外は実験1と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層16、55の厚みは、それぞれ0.8μmであった。
【0106】
(塗布液K)
塗布液Kの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−3) 144.8質量部
ポリウレタン樹脂(ポリカーボネート系ポリウレタン) 53.2質量部
(DIC(株)製 ハイドランWLS−210 固形分35% Tg=−15℃)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 69.9質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2HG 水分散物 固形分15%)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Kの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0107】
(実験11)
実験1において、塗布液Aに代えて塗布液Lを用いたこと以外は実験1と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層16、55の厚みは、それぞれ0.8μmであった。
【0108】
(塗布液L)
塗布液Lの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−4) 149.7質量部
ポリウレタン樹脂(ポリカーボネート系ポリウレタン) 53.2質量部
(DIC(株)製 ハイドランWLS−210 固形分35% Tg=−15℃)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 69.9質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2HG 水分散物 固形分15%)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Lの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0109】
(実験12)
実験1において、塗布液Aに代えて塗布液Mを用いたこと以外は実験1と同様にしてプリズムシート10をつくった。易接着層16、55の厚みは、それぞれ0.8μmであった。
【0110】
(塗布液M)
塗布液Mの組成は次の通りである。
ポリエステル樹脂水分散液(PA−1) 173.7質量部
アクリル樹脂 67.7質量部
(ダイセル化学工業(株)製 EM48D 固形分27.5% Tg=42℃)
架橋剤(オキサゾリン化合物) 69.9質量部
(日本触媒(株)製 エポクロスK−2020E 固形分40%)
界面活性剤A 29.7質量部
(三洋化成工業(株)製 ナロアクティーCL−95の1%水溶液)
界面活性剤B 12.3質量部
(日本油脂(株)製 ラピゾールB−90の1%水溶液)
PMMA粒子 1.0質量部
(綜研化学(株)製 MR−2HG 水分散物 固形分15%)
滑り剤 2.9質量部
(中京油脂(株)製 カルバナワックス分散物セロゾール524 固形分30%)
防腐剤 1.1質量部
(大東化学(株)製、AF−337、固形分3.5%メタノール溶媒)
蒸留水 α 質量部
(α;塗布液Lの全体が1000質量部になるように量を調節した)
【0111】
(評価)
上記実験1〜12で得られたプリズムシート10について、以下の評価を行った。
【0112】
[製造直後の接着性の評価]
プリズム部材11上を片刃カミソリにて縦横それぞれ11本のキズを付け100個の升目を形成した後に、粘着テープ(3M社製600)を貼り付けた。そしてテープの上を消しゴムで擦って完全に付着させた後、水平面に対して90度方向に剥離させ剥離した升目の数を求めることで紫外線硬化樹脂との接着強度の高さを下記A〜Eの5段階で以下のように評価した。
A:剥がれなしの場合
B:剥離した升目の数が1以上5未満の場合
C:剥離した升目の数が5以上15未満の場合
D:剥離した升目の数が15以上30未満の場合
E:剥離した升目の数が30以上の場合
なお、上記A及びBは製品上問題のないレベルである。
【0113】
[サーモ処理後の接着性の評価]
上記実験1〜12で得られたプリズムシート10を65℃95%RH環境下に240hr放置するサーモ処理を実施した。サーモ処理後に接着性の評価を実施した。サーモ処理後の接着性の評価基準は、プリズムシート製造後の接着性のものと同様である。
【0114】
[易接着層の厚み]
プリズム部材11を形成する前の積層フィルム12において、ミクロトーム(Leica社製RM2255)を使用し、断面切削を実施した。得られた断面を走査電子顕微鏡(HITACHI社製S−4700)にて観察することで、易接着層16の膜厚を測定した。
【0115】
[ヘイズ、全光線透過率]
両面に易接着層が形成された積層フィルム形態において、ヘイズメーター(NDH−5000、日本電色工業(株))を用い、JIS−K−7105に準じて、ヘイズ、全光線透過率を測定した。
【0116】
[オリゴマー析出の有無]
実験1〜12で得られた積層フィルム12からサンプルフィルムを切り出した。サンプルフィルムを、高温環境(温度70℃、湿度10%RH)下に24時間置くサーモ処理を行なった。サーモ処理の前後におけるサンプルフィルムのヘイズから、ヘイズの増加ΔHを求めた。ここで、サーモ処理前におけるサンプルフィルムのヘイズをHb、及びサーモ処理後におけるサンプルフィルムのヘイズをHaとすると、ヘイズの増加ΔHは、次の式で表される。
ΔH=Ha−Hb
ここで、オリゴマーが析出するとヘイズの増加ΔHが大きくなる傾向を利用して、求められたヘイズの増加を以下基準に基づいて評価した。
○:ヘイズの増加ΔHが0.2%未満
△:ヘイズの増加ΔHが0.2%以上0.5%未満
×:ヘイズの増加ΔHが0.5%以上
【0117】
各評価結果は、表2〜3に示すとおりである。
【0118】
【表2】

【0119】
【表3】

【符号の説明】
【0120】
10 光学機能部材
11 プリズムシート
12 積層フィルム
15 ベースフィルム
16、51、55 易接着層
51a フィルム接着層
51b 部材接着層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルフィルムと、
前記ポリエステルフィルムの少なくとも片方のフィルム面に設けられ、光学機能部材を接着するための易接着層とを備え、
前記易接着層には、ガラス転移温度Tgが60℃未満のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、及び架橋剤が含まれ、
前記易接着層に含まれるポリエステル樹脂のジカルボン酸構成単位のうち30%以上がナフタレン環を有するジカルボン酸構成単位であることを特徴とする光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項2】
前記易接着層は、
前記ポリエステルフィルムのフィルム面上に設けられたフィルム接着層と、
前記フィルム接着層に重ねて設けられた前記光学機能部材の接着面を有する部材接着層とを有し、
前記フィルム接着層におけるポリエステル樹脂の質量濃度は、前記部材接着層におけるポリエステル樹脂の質量濃度よりも大きいことを特徴とする請求項1記載の光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項3】
前記フィルム接着層に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、保管温度よりも高いことを特徴とする請求項2記載の光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項4】
前記フィルム接着層に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgは、前記部材接着層に含まれるポリエステル樹脂のガラス転移温度Tgよりも高いことを特徴とする請求項2または3記載の光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項5】
前記易接着層の厚みは、0.5μm以上2.5μm以下であることを特徴とする請求項1ないし4のうちいずれか1項記載の光学機能部材支持用積層フィルム。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちいずれか1項記載の光学機能部材支持用積層フィルムと、
前記易接着層に設けられた無溶剤型のアクリル系紫外線硬化樹脂製のプリズム部材とを備えたことを特徴とするプリズムシート。
【請求項7】
無溶剤型のアクリル系紫外線硬化樹脂には、次の一般式(1)で表され、ポリエチレンオキサイド鎖の平均付加モル数:(n+m)の平均値が5以上の樹脂が50質量%以上含まれることを特徴とする請求項6記載のプリズムシート。
【化3】

【請求項8】
請求項6または7記載のプリズムシートを備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項9】
ポリエステルフィルムと前記ポリエステルフィルムのフィルム面に設けられた易接着層とを備えた光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法において、
ガラス転移温度Tgが60℃未満のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋剤、及び溶媒を含む塗布液をポリエステルフィルムに塗布して、前記ポリエステルフィルムのフィルム面上に塗布膜を形成する塗布工程と、
前記塗布膜から前記溶媒を蒸発させて前記易接着層を形成する易接着層形成工程とを有し、
前記塗布液に含まれるポリエステル樹脂のジカルボン酸構成単位のうち30%以上がナフタレン環を有するジカルボン酸構成単位であることを特徴とする光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法。
【請求項10】
ポリエステルフィルムと前記ポリエステルフィルムのフィルム面に設けられた易接着層とを備え、前記易接着層は、前記ポリエステルフィルムのフィルム面上に設けられたフィルム接着層と、前記フィルム接着層に重ねて設けられた前記光学機能部材の接着面を有する部材接着層とを有する光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法において、
ポリエステル樹脂、架橋剤、及び溶媒を含むフィルム接着層用塗布液をポリエステルフィルムに塗布して、前記ポリエステルフィルムのフィルム面上にフィルム接着層用塗布膜を形成するフィルム接着層用塗布工程と、
前記フィルム接着層用塗布膜から前記溶媒を蒸発させて前記フィルム接着層を形成するフィルム接着層形成工程と、
ガラス転移温度Tgが60℃未満のポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、架橋剤、及び溶媒を含む部材接着層用塗布液を前記フィルム接着層に塗布して、前記フィルム接着層の面上に部材接着層用塗布膜を形成する部材接着層用塗布工程と、
前記部材接着層用塗布膜から前記溶媒を蒸発させて前記部材接着層を形成する部材接着層形成工程とを有し、
前記フィルム接着層用塗布液及び前記部材接着層用塗布液に含まれるポリエステル樹脂のジカルボン酸構成単位のうち30%以上がナフタレン環を有するジカルボン酸構成単位であり、
前記フィルム接着層用塗布液中の固形分におけるポリエステル樹脂の質量濃度は、前記部材接着層用塗布液中の固形分におけるポリエステルの質量濃度よりも大きいことを特徴とする光学機能部材支持用積層フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−39802(P2013−39802A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179658(P2011−179658)
【出願日】平成23年8月19日(2011.8.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】