説明

光学活性な化合物の製造方法

【課題】 エポキシドヒドロラーゼ(EH)を有機合成試薬として使用して、ラセミ体のエポキシドから光学活性な化合物を製造する方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の光学活性な化合物の製造方法は、エポキシドのラセミ体に、エポキシド加水分解活性を有する微生物または該微生物に由来する酵素を作用させて、該ラセミ体の一方の鏡像体を加水分解する工程;および反応液から目的の光学活性な化合物を回収する工程を包含し、該エポキシドは、式(I)で表される化合物:
【化1】


であり、そして該微生物は、バチルス属、クロモバクテリウム属、ノカルディア属、ステノトロホモナス属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属、ゴルドナ属、クレブシエラ属、キャンディダ属、ガラクトマイセス属、サッカロマイセス属、スポリジオボラス属、ロドスポリジウム属、ピチア属、またはロドトルラ属に属する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性な化合物の製造方法に関する。より詳細には、微生物または該微生物由来の酵素を用いて光学活性なエポキシドまたはジオール化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシド(酸素を含む三員環)は、その構造にひずみがあるため、反応性が高い化合物である。例えば、生体内では、エポキシドがアルキル化剤として作用し得るため、DNAやタンパク質などの生体高分子がアルキル化されて、変異原性、発がん性、細胞毒性などを示す。エポキシドハイドロラーゼ(EH:EC 3.3.2.3)は、エポキシドを加水分解してビシナルジオールを与える酵素である。具体的には、EHは、生体内で過度に酸化されて生じた有害なエポキシド化合物を、より反応性が低くかつ水溶性であるジオールへと変換することによって、エポキシド化合物の代謝あるいは体外への排泄を促進する。このように、EHは、生体防御にかかわる機能を有していると考えられており(非特許文献1)、生物に普遍的に存在している。例えば、哺乳類(ウサギ、ラット、ヒト)、植物(ジャガイモ、大豆、ナタネ、シロイヌナズナ)、昆虫(マイマイガ)、微生物などに幅広く存在していることが知られている。EHを有する微生物によって触媒されるエポキシドの加水分解について、いくつかの報告がある(非特許文献2〜11)。
【0003】
加水分解酵素による光学活性化合物の製造方法は、主として、ラセミ体混合物の半量を目的物に変換する「光学分割」による手法である。EHを用いる場合は、ラセミ体のエポキシドを立体選択的に加水分解することによって、光学活性な1,2−ジオールおよび光学活性なエポキシドを得ることができる。これらの光学活性な化合物はいずれも、キラルビルディングブロックとして有用な化合物となり得る。さらに、エポキシドを構成する三員環の一つの炭素原子に二つの置換基を有する2,2−二置換のエポキシドをEHによって立体選択的に加水分解すると、化学的合成が非常に困難である光学活性3級アルコールを作ることができる。こうして得られる3級アルコールは、活性官能基であるヒドロキシル基を二個有するジオールであり、様々な化合物へと誘導することができるため、医薬品や農薬の中間体として重要である。しかし、2,2−二置換のエポキシドを加水分解して光学活性な3級アルコールを製造したことについての報告は少ない。例えば、Rhodococcus ruberに由来するEHは、その発現量が十分とはいえず、工業規模での利用には至っていない(非特許文献9)。
【特許文献1】国際公開第98/53081号パンフレット
【特許文献2】国際公開第96/12818号パンフレット
【非特許文献1】山田隆志,「化学と生物」,2002年,40巻,288頁
【非特許文献2】ペドラゴザ−モレウ エス.(Pedragosa−Moreau S.)ら,「ジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(J.Org.Chem.)」,1993年,58巻,5533頁
【非特許文献3】モンフォート,エヌ.(Monfort,N.)ら,「テトラヘドロン(Tetrahedron)」,2004年,60巻,601頁
【非特許文献4】ゾヒェル,エフ.(Zocher,F.)ら,「ジャーナル・オブ・バイオテクノロジー(J.Biotechnol.)」,2000年,77巻,287頁
【非特許文献5】ウェイジャース,シー.エイ.ジー.エム.(Weijers,C.A.G.M.)ら,「テトラヘドロン:アシンメトリー(Tetrahedron:Asymmetry)」,1998年,9巻,467頁
【非特許文献6】チョア,ダブリュー.ジェイ.(Choi,W.J.)ら,「アプライド・ミクロバイアル・バイオテクノロジー(Appl.Microbial.Biotechnol.)」,1999年,53巻,7頁
【非特許文献7】タン,ワイ−エフ.(Tang,Y−F.)ら,「ジャーナル・オブ・モレキュラー・カタリシス.ビー:エンザイマテック(J.Mol.Catal.B:Enzym.)」,2001年,13巻,61頁
【非特許文献8】オルル,アール.ブイ.エイ.(Orru,R.V.A.)ら,「テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)」,1997年,38巻,1753頁
【非特許文献9】ミシッツ,エム.(Mischitz,M.)ら,「テトラヘドロン:アシンメトリー(Tetrahedron:Asymmetry)」,1995年,6巻,1261頁
【非特許文献10】ファン デル ウェルフ,エム.ジェイ.(van der Werf,M.J.)ら,「アプライド・マイクロバイアル・バイオテクノロジー(Appl.Microbial.Biotechnol.)」,1999年,52巻,380頁
【非特許文献11】アーチェル,イアン ブイ.ジェイ.(Archer,Ian V.J.)ら,「テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Lett.)」,1995年,37巻,8819頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、酵素は基質特異性を有しており、EHに対しても、基質となりやすいエポキシドとそうでないものとが存在する。また、立体選択性も酵素および基質によって異なっている。そのため、EHを有機合成試薬として使用する場合には、基質特異性が低いこと、種々の化合物を加水分解できること、および反応の立体選択性が高いことが要求される。しかし、これらの条件を1種類の酵素のみで満たすことは困難であり、数種類のEHを使い分けることによって、数多くのエポキシドの加水分解に対応する必要がある。
【0005】
本発明は、EHを有機合成試薬として使用して、ラセミ体のエポキシドから光学活性な化合物、具体的には、光学活性なジオールまたは光学活性なエポキシドを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、光学活性な化合物の製造方法を提供し、該方法は、
エポキシドのラセミ体に、エポキシド加水分解活性を有する微生物または該微生物に由来する酵素を作用させて、該ラセミ体の一方の鏡像体を加水分解する工程;および
反応液から目的の光学活性な化合物を回収する工程
を包含し、
該エポキシドは、式(I)で表される化合物:
【0007】
【化1】

【0008】
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、
水素原子;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルケニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基および/またはカルボニル基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
Ar1’−(CH−(ここで、Ar1’は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、ヘテロアラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【0009】
【化2】

【0010】
(ここでpは1〜3の整数である)であり、かつRおよびRが互いに同一ではなく、そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基である)であり、そして
該微生物は、バチルス・サブチリスJCM10629株、バチルス・サブチリスIAM1186株、クロモバクテリウム・ビオラセウムJCM1249株、バチルス・リケニホルミスATCC39307株、ノカルディア・フスカNBRC14340株、ステノトロホモナス・マルトフィリアJCM1975株、バチルス・プミリスNBRC14358株、ミクロバクテリウム・ラクチカムJCM1379株、シュードモナス・クロロラフィスJCM2778株、ノカルディア・アステロイデスNBRC3384株、ゴルドナ・テラエJCM3206株、バチルス・アネウリノリティカスIAM1077株、クレブシエラ・オキシトカSNSM−87(微工研菌寄第12953号)株、キャンディダ・コリカロサJCM2199株、キャンディダ・エルノビJCM9948株、キャンディダ・ルゴサJCM1619株、ガラクトマイセス・ゲオトリカムJCM6359株、キャンディダ・インタメディアNBRC0761株、サッカロマイセス・セレビシエJCM2223株、スポリジオボラス・サルモニカラNBRC1035株、キャンディダ・クルセイNBRC0011株、ロドスポリジウム・ジオボバタムNBRC0688株、ピチア・ブルトニJCM3708株、キャンディダ・アンタラクチカJCM3941株、ロドトルラ・ルブラJCM8117株、キャンディダ・グイリエルモンジNBRC0566株、キャンディダ・ケフィアNBRC10287株、ロドトルラ・ミヌタNBRC0879株、およびキャンディダ・パラプシロシスJCM1785株からなる群より選択される少なくとも1種の菌株である。
【0011】
1つの実施態様では、上記微生物は、バチルス・サブチリスJCM10629株、バチルス・サブチリスIAM1186株、クロモバクテリウム・ビオラセウムJCM1249株、キャンディダ・コリカロサJCM2199株、キャンディダ・エルノビJCM9948株、キャンディダ・ルゴサJCM1619株、ガラクトマイセス・ゲオトリカムJCM6359株、およびキャンディダ・インタメディアNBRC0761株からなる群より選択される少なくとも1種である。
【0012】
さらなる実施態様では、上記微生物はデンプン含有培地で培養された微生物である。
【0013】
ある実施態様では、上記式(I)で表される化合物において
は、C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;であり、そして
は、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【0014】
【化3】

【0015】
(ここでpは1〜3の整数である)であり、そしてRおよびRは水素原子である。
【0016】
さらなる実施態様では、上記式(I)で表される化合物において
がC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、

ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;もしくは
−X−O−Y−(ここで、Wは、ハロゲン原子か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはメチレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
であり、そして
およびRが水素原子である。
【0017】
1つの実施態様では、上記光学活性な化合物は光学活性なエポキシドまたは光学活性なジオールである。
【0018】
さらなる実施態様では、上記光学活性な化合物は光学活性なジオールであって、そして
上記酵素を作用させる工程に続いて、得られた酵素反応液を酸処理する工程
をさらに包含する。
【0019】
本発明はまた、光学活性な化合物の他の製造方法を提供し、該方法は、
エポキシドのラセミ体に、エポキシド加水分解活性を有する微生物または該微生物に由来する酵素を作用させて、該ラセミ体の一方の鏡像体を加水分解する工程;および
反応液から目的の光学活性な化合物を回収する工程
を包含し、
該エポキシドは、式(I)で表される化合物:
【0020】
【化4】

【0021】
(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、
水素原子;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルケニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基および/またはカルボニル基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
Ar1’−(CH−(ここで、Ar1’は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、ヘテロアラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【0022】
【化5】

【0023】
(ここでpは1〜3の整数である)であり、かつRおよびRが互いに同一ではなく、そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基である)であり、そして
該微生物は、デンプン含有培地で培養された微生物であり、そしてバチルス属、クロモバクテリウム属、ノカルディア属、ステノトロホモナス属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属、ゴルドナ属、クレブシエラ属、キャンディダ属、ガラクトマイセス属、サッカロマイセス属、スポリジオボラス属、ロドスポリジウム属、ピチア属、またはロドトルラ属に属する。
【0024】
1つの実施態様では、上記式(I)で表される化合物において
は、C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;であり、そして
は、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【0025】
【化6】

【0026】
(ここでpは1〜3の整数である)であり、そしてRおよびRは水素原子である。
【0027】
さらなる実施態様では、上記式(I)で表される化合物において
がC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、

ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;もしくは
−X−O−Y−(ここで、Wは、ハロゲン原子か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはメチレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
であり、そして
およびRが水素原子である。
【0028】
ある実施態様では、上記光学活性な化合物は光学活性なエポキシドまたは光学活性なジオールである。
【0029】
さらなる実施態様では、上記光学活性な化合物は光学活性なジオールであって、そして
上記酵素を作用させる工程に続いて、得られた酵素反応液を酸処理する工程
をさらに包含する。
【0030】
本発明は、さらに、以下の化合物:
【0031】
【化7】

【0032】
を提供する。
【発明の効果】
【0033】
本発明の方法によれば、基質であるエポキシド化合物に応じて、適切なEHまたはEHを生産し得る微生物を用いて、光学活性なジオールまたは光学活性なエポキシドを製造することができる。また、本発明の別の方法によれば、ラセミ体のエポキシドをEHまたはEHを生産し得る微生物で処理した後、さらに酸処理することによって、光学分割することなく、光学活性なジオールを理論収率100%で製造することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
まず、本明細書中で用いられる用語を定義する。
【0035】
用語「C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基」とは、任意の炭素数1〜6を有する、直鎖または分岐鎖アルキル基を包含していい、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、およびヘキシルなどが挙げられる。
【0036】
用語「C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルケニル基」とは、任意の炭素数2〜8を有する、直鎖または分岐鎖アルケニル基を包含していい、例えば、エテニル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロペニル、ペンテニル、およびヘキセニルなどが挙げられる。
【0037】
用語「C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキニル基」とは、任意の炭素数2〜6を有する、直鎖または分岐鎖アルキニル基を包含していい、例えば、エチニル、プロピニル、シクロプロピルエチニル、ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、ペンチニル、およびヘキシニルなどが挙げられる。
【0038】
用語「分岐していてもよいC〜Cアルキル基」とは、任意の炭素数1〜4を有する、直鎖または分岐鎖アルキル基を包含していい、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、およびtert−ブチルが挙げられる。
【0039】
用語「分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基」とは、炭素数1〜5の任意の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基および炭素数3〜5の任意の分岐鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メチルオキシ、エチルオキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、tert−ブチルオキシなどが挙げられる。
【0040】
本明細書中に用いられる用語「ハロゲン原子」の例としては、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素が挙げられる。
【0041】
本明細書中に用いられる用語「アリール基」の例としては、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。
【0042】
本明細書中に用いられる用語「ヘテロアリール基」の例としては、ピリジル、ピロリル、イミダゾリル、フリル、インドリル、チエニル、オキサゾリル、チアゾリル、およびテトラゾリルが挙げられる。
【0043】
本明細書中に用いられる用語「アラルキル基」の例としては、ベンジル、フェネチル、およびナフチルメチルが挙げられる。
【0044】
本明細書中に用いられる用語「ヘテロアラルキル基」の例としては、ピリジルメチル、インドリルメチル、フリルメチル、チエニルメチルおよびピロリルメチルが挙げられる。
【0045】
本発明の光学活性な化合物の製造方法は、エポキシドのラセミ体に、エポキシド加水分解活性を有する微生物または該微生物に由来する酵素を作用させて、該ラセミ体の一方の鏡像体を加水分解する工程;および反応液から目的の光学活性な化合物を回収する工程を包含する。
【0046】
本発明において、出発原料となるエポキシドのラセミ体は、式(I)で表される化合物:
【0047】
【化8】

【0048】
である。
【0049】
式(I)において、RおよびRは、それぞれ独立して、
水素原子;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルケニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基および/またはカルボニル基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
Ar1’−(CH−(ここで、Ar1’は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、ヘテロアラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【0050】
【化9】

【0051】
(ここでpは1〜3の整数である)であり、そしてRおよびRは互いに同一ではない。
【0052】
1つの実施態様では、Rが、C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;であり、そしてRが、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;W−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;W−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;W−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいはAr−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そしてRは、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【0053】
【化10】

【0054】
(ここでpは1〜3の整数である)である。
【0055】
式(I)において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;水酸基;ニトロ基;アミノ基;またはハロゲン原子で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基である。1つの実施態様では、RおよびRは、両方とも水素原子である。
【0056】
さらなる実施態様では、式(I)において、RがC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、Rがハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;もしくはW−X−O−Y−(ここで、Wは、ハロゲン原子か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはメチレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;であり、そしてRおよびRが水素原子である。
【0057】
エポキシドのラセミ体の例としては、以下に示す化合物が挙げられるが、これらに限定されない:
【0058】
【化11】

【0059】
本発明において、エポキシド加水分解活性を有する微生物は、バチルス・サブチリスJCM10629株、バチルス・サブチリスIAM1186株、クロモバクテリウム・ビオラセウムJCM1249株、バチルス・リケニホルミスATCC39307株、ノカルディア・フスカNBRC14340株、ステノトロホモナス・マルトフィリアJCM1975株、バチルス・プミリスNBRC14358株、ミクロバクテリウム・ラクチカムJCM1379株、シュードモナス・クロロラフィスJCM2778株、ノカルディア・アステロイデスNBRC3384株、ゴルドナ・テラエJCM3206株、バチルス・アネウリノリティカスIAM1077株、クレブシエラ・オキシトカSNSM−87(微工研菌寄第12953号)株、キャンディダ・コリカロサJCM2199株、キャンディダ・エルノビJCM9948株、キャンディダ・ルゴサJCM1619株、ガラクトマイセス・ゲオトリカムJCM6359株、キャンディダ・インタメディアNBRC0761株、サッカロマイセス・セレビシエJCM2223株、スポリジオボラス・サルモニカラNBRC1035株、キャンディダ・クルセイNBRC0011株、ロドスポリジウム・ジオボバタムNBRC0688株、ピチア・ブルトニJCM3708株、キャンディダ・アンタラクチカJCM3941株、ロドトルラ・ルブラJCM8117株、キャンディダ・グイリエルモンジNBRC0566株、キャンディダ・ケフィアNBRC10287株、ロドトルラ・ミヌタNBRC0879株、およびキャンディダ・パラプシロシスJCM1785からなる群より選択される少なくとも1種の菌株の、バクテリア、酵母、またはカビである。
【0060】
上記微生物のうち、バチルス・サブチリスJCM10629株、バチルス・サブチリスIAM1186株、クロモバクテリウム・ビオラセウムJCM1249株、キャンディダ・コリカロサJCM2199株、キャンディダ・エルノビJCM9948株、キャンディダ・ルゴサJCM1619株、ガラクトマイセス・ゲオトリカムJCM6359株、およびキャンディダ・インタメディアNBRC0761株は、立体選択的かつ比較的高いエポキシド加水分解活性を有する。
【0061】
本発明において、微生物に由来する酵素とは、上記のエポキシド加水分解活性を有する微生物から得られたエポキシド加水分解活性を有する酵素をいう。例えば、上記の菌体を超音波などで破砕した後、不溶物を除去して得られる破砕上清液を、粗酵素液として用いることができる。あるいは、この粗酵素液から、さらに当業者が通常用いる精製方法、例えば、カラムクロマトグラフィーなどの手段によって精製または単離されたエポキシドハイドロラーゼ(EH)であってもよい。あるいは、エポキシド加水分解活性を発揮し得るならば、上記の天然のEHの改変体または誘導体であってもよい。ここで、「改変体」とは、天然のEHと、少なくとも70、または少なくとも80、あるいは少なくとも90パーセントのアミノ酸配列相同性を有し、かつEH活性を有するタンパク質をいう。例えば、天然のEHにおいて、1以上のアミノ酸の付加、欠失、または置換を有するタンパク質が挙げられる。「誘導体」とは、天然のEHと他のペプチドとの融合タンパク質をいう。融合される他のペプチドは、EHの基本的な折りたたみおよびコンホメーション構造を妨害しない。
【0062】
上記微生物は、上記微生物に由来するエポキシド加水分解活性を有するならば、野生型または形質転換体のいずれであってもよい。例えば、形質転換体は、上記の酵素(例えば、EH)をコードする遺伝子が組み込まれている他の宿主微生物(例えば、大腸菌、枯草菌など)であってもよい。さらに、例えば、EHの発現を促進するように、適切なプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどの発現調節因子が導入されている形質転換体であってもよい。
【0063】
これらの微生物は、デンプン含有培地で培養することにより、より高いエポキシド加水分解活性を示す。ここで、デンプン含有培地とは、当業者が微生物の培養に通常用いる培地よりも、デンプンを豊富に含有する培養培地をいう。含有されるデンプンは、どのような由来のものであってもよい。培地中でのデンプンの糊化を防止する目的で、予め液化したデンプンを用いてもよい。デンプンの液化は、当業者に公知の方法(例えば、α−アミラーゼで処理する方法)によって行われ得る。培地中のデンプンの濃度は、特に制限はなく、4〜20w/v%であり得、あるいは8〜12w/v%であり得る。
【0064】
あるいは、本発明において、エポキシド加水分解活性を有する微生物は、バチルス属、クロモバクテリウム属、ノカルディア属、ステノトロホモナス属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属、ゴルドナ属、クレブシエラ属、キャンディダ属、ガラクトマイセス属、サッカロマイセス属、スポリジオボラス属、ロドスポリジウム属、ピチア属、またはロドトルラ属に属し、かつ上記のデンプン含有培地で培養された微生物であり得る。
【0065】
これらの微生物は、どのような形態で使用してもよい。例えば、培地などに懸濁した菌液、乾燥菌体、固定化菌体、または固定化乾燥菌体の形態で使用され得る。これらはいずれも、当業者が通常行う手段によって調製され得る。例えば、乾燥菌体は、凍結乾燥、風乾、アセトン乾燥などによって調製され得る。乾燥菌体を調製する場合、安定性を向上させる目的で、20w/v%グリセロールとともに乾燥させてもよい。固定化菌体は、アクリルアミド、カラギーナン、アルギン酸カルシウムなどを用いて調製し得る。さらに、固定化菌体は、ポリエチレンイミンとグルタルアルデヒドとの組み合わせまたはヘキサメチレンジアミンとグルタルアルデヒドとの組み合わせを用いて架橋することによって、さらに安定化させることもできる。固定化乾燥菌体は、当業者が通常用いる手段を用いて、固定化菌体を乾燥させることによって調製され得る。固定化乾燥菌体は、本発明の方法に反復使用することが可能である。例えば、本発明の方法に少なくとも10回繰り返して使用しても、固定化乾燥菌体の活性の低下は認められない。
【0066】
本発明の方法において、エポキシドのラセミ体に、エポキシド加水分解活性を有する微生物または該微生物に由来する酵素を作用させて、該ラセミ体の一方の鏡像体を加水分解する工程では、例えば、以下に示すような反応(1−a)、(1−b)、(1−c)および/または(1−d)が進行する。
【0067】
【化12】

【0068】
なお、本発明の方法において、上記反応(1−a)、(1−b)、(1−c)または(1−d)のうち、いずれが優先的に起こるかは、例えば、本発明に用いる微生物の種類または該微生物由来の酵素の種類に依存し得る。
【0069】
上記の微生物または該微生物由来の酵素によってエポキシドのラセミ体の一方の鏡像体のみが加水分解を受ける。そのため、加水分解によって光学活性なジオールが生じ、そして加水分解されなかった(酵素の作用を受けなかった)もう一方の鏡像体であるエポキシドが残存する。
【0070】
この工程は、具体的には、適切な緩衝液または培地に微生物または酵素を添加し、さらにエポキシドのラセミ体を添加して、攪拌または振盪することによって行われる。この工程における反応液中の基質(エポキシド)濃度および菌体量または酵素量は、適宜決定され得る。使用する微生物または酵素は、単独で用いてもよく、あるいは数種の微生物または異なる起源の酵素を混合して用いてもよい。また、通常、反応液の至適pHは約6.5〜8.0であり、そして反応温度は約30〜35℃である。反応時間は特に制限されず、通常は少なくとも5分であり、30分〜96時間であってもよく、3〜72時間であってもよく、6〜48時間であってもよい。
【0071】
本発明の方法では、次いで、上記の酵素反応液から目的の光学活性な化合物を回収する工程が行われる。ここで、目的の光学活性な化合物とは、光学活性なエポキシドまたは光学活性なジオールである。上記の酵素を作用させる工程においては、上記の微生物または該微生物由来の酵素によってエポキシドのラセミ体の一方の鏡像体のみが立体選択的に加水分解される。そのため、酵素反応液中には加水分解によって生じた光学活性なジオールと加水分解されなかった光学活性なエポキシドとが存在し得るので、目的に応じて、エポキシドまたはジオールを当業者が通常用いる適切な手段によって回収する。具体的には、酵素反応液に適切な有機溶媒を加えてエポキシドおよびジオールを有機層に抽出し、抽出物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーなどに供することによって、これらを分離してそれぞれ回収できる。
【0072】
本発明の方法の他の実施態様においては、光学活性なジオールのみを目的の光学活性な化合物とする。以下の(反応2−a)および(反応2−b)を参照して説明する。この場合、上記の酵素を作用させる工程に続いて、得られた酵素反応液を酸処理する工程が行われ得る。この工程では、酵素の作用を受けなかった残存エポキシドを酸性条件下で立体反転を伴って加水分解させる。EHを利用する加水分解反応では、エポキシドの一方の光学活性体のみが加水分解されるため、酵素作用によって得られるジオールは理論的には基質の約半分の量に過ぎない。この酸処理で生成したジオールは、立体反転により、先の酵素作用により生じたジオールと同一の絶対配置を有する。したがって、以下の反応式に示すように、酵素反応液を酸処理することによって、エポキシドのラセミ体から、理論収率100%で光学活性なジオールが得られる。
【0073】
【化13】

【0074】
なお、本発明の方法において、エポキシドのラセミ体が、EHによって上記反応(2−a)または(2−b)のいずれが優先的に反応するかは、例えば、本発明に用いる微生物の種類または該微生物由来の酵素の種類に依存し得る。
【0075】
ここで、酸処理に用いられる酸は、無機酸であり得、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、硝酸、過塩素酸などが挙げられる。反応液中の酸の濃度は、特に限定されないが、通常約0.1Mであり得る。
【0076】
次いで、生成した光学活性なジオールは、例えば、上記酸処理反応液にアルカリ性溶液を添加して中和した後、上述のように適切な有機溶媒で抽出することによって回収することができる。
【0077】
このようにして目的の光学活性な化合物が得られ、必要に応じて、さらに数段階の工程を経て最終目的の化合物へと変換され得る。
【実施例】
【0078】
(調製例1)2−ベンジルオキシメチル−2−メチルオキシラン(エポキシド1)の調製
【0079】
【化14】

【0080】
氷浴で冷却した1Lの四つ口フラスコに水素化ナトリウム(12.21g,305mmol、ヘキサン洗浄)および無水DMF(50ml)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら、無水DMF(90ml)に溶解したベンジルアルコール(30.0g,277mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、反応混合物を1.5時間攪拌(氷冷〜室温)した後に、再度氷冷し、DMF(50ml)に溶解した3−クロロ−2−メチルプロペン(30.14g,333mmol)を滴下した。室温にて16時間攪拌後、氷冷しながら水をゆっくりと添加した。ヘキサンを加えて攪拌後、有機層を回収して、有機層を水および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮して、45.3gの(2−メチルアリロキシメチル)−ベンゼンを得た(無色透明液体、収率100.8%)。
【0081】
次いで、300Lの四つ口フラスコに、得られた(2−メチルアリロキシメチル)−ベンゼン(40.0g,247mmol)を入れ、アセトニトリル(20ml)およびメタノール(100ml)に溶解させた。さらに、炭酸水素カリウム(7.41g,74 mmol)を過酸化水素水(30%水溶液、56g,494mmol)に溶解して滴下した。途中、二層に分離したため、アセトニトリルを加えた。室温で攪拌しながらTLCで反応の進行を追跡した。なお、TLCの分析条件は、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1、および、Rf値:(2−メチルアリロキシメチル)−ベンゼン=0.6;エポキシド=0.3であった。途中で反応が停止したため、さらに過酸化水素水(70g,621mmol)を3回に分けて添加した。5日間攪拌を続け、原料がほぼ消失したことをTLCにて確認し、減圧濃縮にて有機溶媒を留去した。ヘキサンを加えて有機層を回収し、チオ硫酸ナトリウム水溶液、水、次いで飽和食塩水で洗浄した。硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮して、39.76gの2−ベンジルオキシメチル−2−メチルオキシラン(エポキシド1)を得た(無色透明液体、収率90.3%)。
【0082】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.40(3H,s,2−Me),2.63(1H,d,J4.8,1−H),2.75(1H,d,J4.8,1−H),3.44(1H,d,J10.8,3−H),3.57(1H,d,J10.8,3−H),4.54(1H,d,J12.0,OCHPh),4.59(1H,d,J12.0,OCHPh),7.34(5H,s,Ph)。
【0083】
なお、得られたエポキシド1のHPLC分析条件は、以下のとおりである:
カラム:CHIRALPAK AD.(250mm×4.6mmI.D.、ダイセル製)
カラム温度:18℃
溶離液:ヘキサン/ジグライム=98/2
流量:0.5ml/分
検出:UV260nm
保持時間:R体=21.7分、S体=25.5分。
【0084】
(調製例2)2−ベンジルオキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール(ジオール1b)の調製
50mlの三つ口フラスコに、上記調製例1で得られたエポキシド1(1.0g,5.6mmol)とTHF(5ml)とを入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら水(1ml)を少しずつ添加した。続いて濃硫酸(7.5μl,Hとして5mol%)を加えて6日間室温で攪拌した。TLCにて反応の進行を追跡した。なお、TLCの分析条件は、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=2:1、および、Rf値:エポキシド1=0.7;ジオール1b=0.1であった。炭酸水素ナトリウム水溶液で中和後、酢酸エチルを加えて有機層を回収した。その後、有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた後に減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=4:1〜1:1)で精製を行って、559mgの3−ベンジルオキシ−2−メチルプロパン−1,2−ジオール(ジオール1b)を得た(無色透明液体、収率50.9%)。
【0085】
なお、エポキシド1および得られたジオール1bのHPLC分析条件は、以下のとおりである:
カラム:CHIRALPAK AD.(250mm×4.6mmI.D.、ダイセル製)
カラム温度:18℃
溶離液:ヘキサン/2−プロパノール=90/10
流量:0.75ml/分
検出:UV260nm
保持時間:エポキシド1=6.0分、R−ジオール1b=13.6分、S−ジオール1b=14.8分。
【0086】
(調製例3)2−(4−メトキシフェノキシメチル)−2−メチルオキシラン(エポキシド2)の調製
【0087】
【化15】

【0088】
1Lの四つ口フラスコにp−メトキシフェノール(36.6g,295mmol)を入れ、DMFに溶解させた。さらに炭酸カリウム(44.8g,324mmol)を加えて攪拌を続けたところ、無色透明から赤紫色に変色した。続いてDMF(30ml)に溶解した3−クロロ−2−メチルプロペン(32.04g,354mmol)を滴下し、室温で1日間攪拌した。ヘキサンを加えて有機層を回収し、炭酸ナトリウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶液、水、および飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮して、34.3gの1−メトキシ−4−(2−メチルアリロキシ)ベンゼンを得た(無色透明針状結晶、融点約37℃、収率65.3%)。
【0089】
次いで、0.5Lの四つ口フラスコに、得られた1−メトキシ−4−(2−メチルアリロキシ)ベンゼン(31.0g,174mmol)を入れ、アセトニトリル(100ml)およびメタノール(60ml)を加えて溶解させた。次いで、炭酸水素カリウム(5.22g,52mmol)を水(10ml)に溶解し、過酸化水素水(30%水溶液、59.2g,522mmol)と混合し、これを上記の溶液に滴下した。途中、TLCで反応の進行をモニターした。なお、TLCの分析条件は、展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=10:1、および、Rf値:1−メトキシ−4−(2−メチルアリロキシ)ベンゼン=0.25;エポキシド=0.5であった。反応を促進させるために過酸化水素(100g,881mmol)および炭酸水素カリウム(1.73g,17.3mmol)を分割添加しながら攪拌を続けた。8日後に減圧濃縮にて有機溶媒を留去し、ヘキサンを加えて有機層を回収し、洗浄および乾燥した後、減圧濃縮して、24.8gの2−(4−メトキシフェノキシメチル)−2−メチルオキシラン(エポキシド2)を得た(淡黄色固体、収率73.3%)。
【0090】
H−NMR(400MHz,CDCl)δ:1.47(3H,s,2−Me),2.71(1H,d,J5.6,1−H),2.85(1H,d,J5.2,1−H),3.76(3H,s,OMe),3.90(1H,d,J10.8,3−H),3.97(1H,d,J10.8,3−H),7.34(5H,s,Ph)。
【0091】
(調製例4)3−(4−メトキシフェノキシ)−2−メチルプロパン−1,2−ジオール(ジオール2b)の調製
エポキシド1の代わりに上記調製例3で得られたエポキシド2用いたこと以外は、上記調製例2と同様に操作を行って、765mgの3−(4−メトキシフェノキシ)−2−メチルプロパン−1,2−ジオール(ジオール2b)を得た(白色結晶、収率70.0%)。
【0092】
なお、エポキシド2および得られたジオール2bのHPLC分析条件は、以下のとおりである:
カラム:Chiralcel OD
カラム温度:40℃
溶離液:ヘキサン/イソプロパノール=99/1〜91/9
流量:1ml/分
検出:UV260nm
保持時間:エポキシド2=4.6および5.3分、ジオール2b=22.0および23.7分。
【0093】
(調製例5)2−メチル−2−フェネチルオキシラン(エポキシド3)の調製
【0094】
【化16】

【0095】
氷浴で冷却した300mlの三つ口フラスコに水素化ナトリウム(2.4g,60mmol)、無水THF(25ml)、および無水DMSO(10ml)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌した。次いでDMSO(90ml)に溶解したトリメチルスルホキソニウムヨージド(13.2g,60mmol)をゆっくりと滴下した(水素ガスが発生した)。滴下終了後、約50分攪拌した後に、DMSO(20ml)に溶解した4−フェニル−2−ブタノン(7.41g,50mmol)を滴下した。約5時間攪拌後(氷冷→室温)、ゆっくりと水を添加した。石油エーテルを加えて有機層を回収し、水および飽和食塩水で洗浄後、炭酸ナトリウムで乾燥させた。減圧濃縮し、6.9gの2−メチル−2−フェネチルオキシラン(エポキシド3)を得た(無色透明液体、収率85.1%)。
【0096】
(調製例6)2−メチル−4−フェニルブタン−1,2−ジオール(ジオール3b)の調製
100mlのナスフラスコにTHF(6ml)および上記調製例5で得られたエポキシド3(1.0g,6.2mmol)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら水を少しずつ添加した。水を2ml添加したところで白濁が見られたため、濃硫酸(8.3μl,Hで5mol%)を加えて4時間室温で攪拌した。炭酸ナトリウム水溶液で中和した後、減圧濃縮し、酢酸エチルを加えて有機層を回収した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、炭酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して、1.01gの2−メチル−4−フェニルブタン−1,2−ジオール(ジオール3b)を得た(無色透明液体、収率90.9%)。
【0097】
(実施例1)エポキシド加水分解活性(EH活性)を有する微生物のスクリーニング
EH活性を有する微生物の探索を行った。96穴のマイクロプレートに600μlの液体培地を分注し、30μlの微生物の培養液を接種した。バクテリアの培地としてブイヨン培地(肉エキス:5g/L、ペプトン:15g/L、NaCl:5g/L、K2HPO4:5g/L、pH7.0)を、および酵母の培地として、YM5.5培地(ペプトン:5g/L、酵母エキス:3g/L、麦芽エキス:3g/L、グルコース:10g/L、pH5.5)をそれぞれ用いた。微生物の培養液は、これらの培地で培養したものである。培養液を接種した後、30℃で1.5〜3日間培養した。培養後、基質として2μlの2−メチル−2−フェネチルオキシラン(エポキシド3)を添加し、さらに1〜2日間振盪させることにより反応を行った。次いで、反応生成物を0.25mlの酢酸エチルで抽出し、酢酸エチル層(200μl)をマイクロプレートに分取後、約5倍に濃縮してTLCを行った。(1)エポキシド3のスポットが薄く小さくなっているか否か、および(2)生成するジオール3bのスポットがはっきりと見えるか否かを基準としてEH活性の有無を検討した。EH活性が確認された場合、反応生成物をHPLCにかけて、立体選択的なEH活性を有するか否かについて検討した。結果を表1に示す。なお、TLCおよびHPLC分析条件は、それぞれ以下のとおりである:
【0098】
TLCの分析条件
展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5:1
Rf値:エポキシド3=0.8、ジオール3b=0.09
HPLCの分析条件
カラム:Chiralcel OD
カラム温度:40℃
溶離液:ヘキサン/イソプロパノール=95/5〜83/17(30分)
流量:1.0ml/分
検出:UV260nm
保持時間:エポキシド3=4.8および5.5分、ジオール3b=22.4および26.0分。
【0099】
【表1】

【0100】
表中のE値(エナンチオ比)は、Shiらの方法(Chen,C−S.ら、J.Am.Chem.Soc.,1982年,104巻,7294頁)に従って、基質(エポキシド)および生成物(ジオール)のEe(エナンチオマー過剰率)から、または変換率および生成物のEeから、以下の計算式に従って算出した。
【0101】
【数1】

【0102】
表1からわかるように、種々の属に属する菌株でエポキシド加水分解活性が見られた。Bacillus subtilis JCM 10629株、Bacillus subtilis IAM 1186株、Bacillus megaterium IAM 1166株、B. licheniformis TI株、Rhodococcus erythropolis IAM 12122株、Chromobacterium violaceum JCM 1249株などで比較的高い反応性および立体選択性を示した。バクテリアによって得られたジオールのほとんどはHPLC分析で後方のピークとして溶出される(保持時間の長い)ジオールであった。酵母の中では、Candida colliculosa JCM 2199株、C. ernobii JCM 9948株、C. rugosa JCM 1619株などのCandida属酵母やGalactomyces geotrichum JCM 6359株で立体選択的な加水分解が認められた。Candida属酵母を作用させた場合には、バクテリアとは異なって保持時間の短いジオールを優先的に与える傾向が見られた。したがって、バクテリアと酵母とを使い分けることにより、生成物であるジオールの両鏡像体を得ることが可能である。
【0103】
(実施例2)種々の基質についての検討
Bacillus subtilis IAM 1186株をLB培地(ペプトン:10g/L、酵母エキス:5g/L、NaCl:5g/L、pH7.0)で培養した後、遠心分離によって回収し、50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に再懸濁し、100μlを2ml容のエッペンドルフチューブに入れた。このチューブに各2μlの表2に記載のエポキシド1〜7を添加して30℃で激しく30分間攪拌した。次いで、酢酸エチル250μlを添加して反応を停止させ、さらに30分間攪拌した。酢酸エチル層を回収し、TLCにてエポキシドおよびジオールの有無を確認した。なお、エポキシド5はアルドリッチ社製、エポキシド6は和光純薬工業株式会社製、およびエポキシド7は東京化成工業株式会社製のものを使用し、エポキシド4は、以下のように調製した。
【0104】
2−メチル−2−フェノキシメチルオキシラン(エポキシド4)の調製
【0105】
【化17】

【0106】
氷浴で冷却した1Lの三つ口フラスコに水素化ナトリウム(7.53g,188mmol、ヘキサン洗浄)、および無水THF(30ml)を入れ、マグネチックスターラーで攪拌しながら無水DMSO(200ml)に溶解したトリメチルスルホキソニウムヨージド(39.6g,180mmol)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温で約30分攪拌した後に、DMSO(100ml)に溶解した1−フェノキシ−2−プロパノン(24.57g,164mmol)を滴下した。室温にて約5時間攪拌後、氷冷しながら塩化アンモニウム水溶液をゆっくりと添加した。有機成分をヘキサンで抽出し、水および飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥させた。減圧濃縮し、10.63gの2−メチル−2−フェノキシメチルオキシラン(エポキシド4)を得た(無色透明液体、収率39.5%)。
【0107】
結果を表2に示す。
【0108】
【表2】

【0109】
いずれのエポキシドに対しても良好な加水分解活性を示し、基質特異性が比較的広いことがわかった。
【0110】
(実施例3)微生物の培養培地の検討
微生物の培養培地の種類に応じて酵素の発現量が異なる場合があるので、当業者が通常用いる培地とデンプン含有培地で培養した場合を比較した。
【0111】
バクテリア4株および酵母2株をそれぞれ2種類の培地(バクテリア:LB培地とデンプン含有培地、酵母:YM5.5培地とデンプン含有培地)中で1〜5日間培養した。培養後、遠心分離によって菌体を回収し、50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に再懸濁し、100μlを2ml容のエッペンドルフチューブに入れた。このチューブに2μlのエポキシド3を添加して30℃で激しく15分間攪拌した。次いで、酢酸エチル250μlを添加して反応を停止させ、さらに30分間攪拌した。酢酸エチル層を回収し、HPLC分析を行った。予め作成した検量線から生成物および残存基質の量を算出し、培養液1ml当たり1時間に加水分解される基質量をEH活性とした。結果を表3に示す。なお、デンプン含有培地は、ポリペプトンS:50g/L、アミラーゼ処理したデンプン:120g/L、(NH4)2HPO4:10g/L、CaCl2・2H2O:2g/L、MgSO4・7H2O:2g/L、コーンスティープリカー:10g/L、pH7.0である。
【0112】
【表3】

【0113】
デンプン含有培地で培養することにより、バクテリアおよび酵母のいずれの菌種についてもEH活性が上昇していた。特に、バクテリアではBacillus subtilis IAM 1186株が7.2倍、酵母ではCandida colliculosa JCM 2199株が9.3倍もの活性を示した。これは、微生物においてEHの生産能が向上したことによると思われる。
【0114】
(実施例4)残存エポキシドの酸性条件下での加水分解
50mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)中のエポキシド1(40μl/1.6ml)を基質として、固定化菌体を用いて30℃にて16時間加水分解反応を行った。ここで用いた固定化菌体は、アミラーゼプロモーター下にゲノム解読株であるB. subtilis 168株由来のEHを組み込んだプラスミドを用いて形質転換したB. subtilis MT-2の形質転換体を、デンプン含有培地中で培養した後に、1%アルギン酸カルシウムで固定化し、さらにポリエチレンイミンとグルタルアルデヒドとの組み合わせによって架橋して濃縮機中で乾燥させた菌体である。この酵素反応によって得られた酵素反応液から固定化菌体を遠心分離によって除去し、上記実施例3と同様にして生成したジオール1bおよび残存エポキシド1の量を定量した。次いで、酵素反応液100μlに、表4に記載の種々の酸を添加し、30℃にて17時間振盪した。酸処理終了後、酢酸エチル250μlで抽出してHPLCにて生成したジオール1bおよび残存エポキシド1の量を定量した。結果を表4に示す。
【0115】
【表4】

【0116】
5種類の酸のいずれにおいても、HPLCではエポキシドが完全に加水分解して消失していた。一方、ジオールは、光学純度がほとんど低下することなく高収率で得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0117】
本発明の方法によれば、微生物または微生物由来のEHを有機合成試薬として使用して、ラセミ体のエポキシドから光学活性な化合物を製造できる。こうして得られる光学活性な化合物は、キラルビルディングブロックとして有用な化合物となり得る。さらに、エポキシド環の一つの炭素原子に二つの置換基を有する2,2−二置換のエポキシドをEHによって立体選択的に加水分解すると、化学的合成が非常に困難である光学活性3級アルコールを作ることができ、これは様々な化合物へと誘導することができるため、医薬品や農薬の中間体として非常に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシドのラセミ体に、エポキシド加水分解活性を有する微生物または該微生物に由来する酵素を作用させて、該ラセミ体の一方の鏡像体を加水分解する工程;および
反応液から目的の光学活性な化合物を回収する工程
を包含する、光学活性な化合物の製造方法であって、
該エポキシドが、式(I)で表される化合物:
【化1】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、
水素原子;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルケニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基および/またはカルボニル基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
Ar1’−(CH−(ここで、Ar1’は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、ヘテロアラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0から3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【化2】

(ここで、pは1〜3の整数である)であり、かつRおよびRが互いに同一ではなく、そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;である)であり、そして
該微生物が、バチルス・サブチリスJCM10629株、バチルス・サブチリスIAM1186株、クロモバクテリウム・ビオラセウムJCM1249株、バチルス・リケニホルミスATCC39307株、ノカルディア・フスカNBRC14340株、ステノトロホモナス・マルトフィリアJCM1975株、バチルス・プミリスNBRC14358株、ミクロバクテリウム・ラクチカムJCM1379株、シュードモナス・クロロラフィスJCM2778株、ノカルディア・アステロイデスNBRC3384株、ゴルドナ・テラエJCM3206株、バチルス・アネウリノリティカスIAM1077株、クレブシエラ・オキシトカSNSM−87(微工研菌寄第12953号)株、キャンディダ・コリカロサJCM2199株、キャンディダ・エルノビJCM9948株、キャンディダ・ルゴサJCM1619株、ガラクトマイセス・ゲオトリカムJCM6359株、キャンディダ・インタメディアNBRC0761株、サッカロマイセス・セレビシエJCM2223株、スポリジオボラス・サルモニカラNBRC1035株、キャンディダ・クルセイNBRC0011株、ロドスポリジウム・ジオボバタムNBRC0688株、ピチア・ブルトニJCM3708株、キャンディダ・アンタラクチカJCM3941株、ロドトルラ・ルブラJCM8117株、キャンディダ・グイリエルモンジNBRC0566株、キャンディダ・ケフィアNBRC10287株、ロドトルラ・ミヌタNBRC0879株、およびキャンディダ・パラプシロシスJCM1785株からなる群より選択される少なくとも1種の菌株である、
方法。
【請求項2】
前記微生物が、バチルス・サブチリスJCM10629株、バチルス・サブチリスIAM1186株、クロモバクテリウム・ビオラセウムJCM1249株、キャンディダ・コリカロサJCM2199株、キャンディダ・エルノビJCM9948株、キャンディダ・ルゴサJCM1619株、ガラクトマイセス・ゲオトリカムJCM6359株、およびキャンディダ・インタメディアNBRC0761株からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物がデンプン含有培地で培養された微生物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物において
が、C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;であり、そして
が、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【化3】

(ここでpは1〜3の整数である)であり、そしてRおよびRは水素原子である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記式(I)で表される化合物において
がC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、

ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;もしくは
−X−O−Y−(ここで、Wは、ハロゲン原子か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはメチレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
であり、そして
およびRが水素原子である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光学活性な化合物が光学活性なエポキシドまたは光学活性なジオールである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記光学活性な化合物が光学活性なジオールであって、そして
前記酵素を作用させる工程に続いて、得られた酵素反応液を酸処理する工程
をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エポキシドのラセミ体に、エポキシド加水分解活性を有する微生物または該微生物に由来する酵素を作用させて、該ラセミ体の一方の鏡像体を加水分解する工程;および
反応液から目的の光学活性な化合物を回収する工程
を包含する、光学活性な化合物の製造方法であって、
該エポキシドが、式(I)で表される化合物:
【化4】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、
水素原子;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルケニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基および/またはカルボニル基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
Ar1’−(CH−(ここで、Ar1’は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、ヘテロアラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【化5】

(ここでpは1〜3の整数である)であり、かつRおよびRが互いに同一ではなく、そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;である)であり、そして
該微生物が、デンプン含有培地で培養された微生物であり、そしてバチルス属、クロモバクテリウム属、ノカルディア属、ステノトロホモナス属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属、ゴルドナ属、クレブシエラ属、キャンディダ属、ガラクトマイセス属、サッカロマイセス属、スポリジオボラス属、ロドスポリジウム属、ピチア属、またはロドトルラ属に属する、
方法。
【請求項9】
前記式(I)で表される化合物において
が、C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;であり、そして
が、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【化6】

(ここでpは1〜3の整数である)であり、そしてRおよびRは水素原子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記式(I)で表される化合物において
がC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、

ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;もしくは
−X−O−Y−(ここで、Wは、ハロゲン原子か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはメチレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
であり、そして
およびRが水素原子である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記光学活性な化合物が光学活性なエポキシドまたは光学活性なジオールである、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記光学活性な化合物が光学活性なジオールであって、そして
前記酵素を作用させる工程に続いて、得られた酵素反応液を酸処理する工程
をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
以下の化合物:
【化7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシドのラセミ体に、エポキシド加水分解活性を有する微生物または該微生物に由来する酵素を作用させて、該ラセミ体の一方の鏡像体を加水分解する工程;および
反応液から目的の光学活性な化合物を回収する工程
を包含する、光学活性な化合物の製造方法であって、
該エポキシドが、式(I)で表される化合物:
【化1】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、
水素原子;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;
〜Cの直鎖または分岐鎖のアルケニル基;
〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキニル基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基および/またはカルボニル基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
Ar1’−(CH−(ここで、Ar1’は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、ヘテロアラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0から3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Ar、ニトロ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【化2】

(ここで、pは1〜3の整数である)であり、かつRおよびRが互いに同一ではなく、そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;である)であり、そして
該微生物が、バチルス・サブチリスJCM10629株、バチルス・サブチリスIAM1186株、クロモバクテリウム・ビオラセウムJCM1249株、バチルス・リケニホルミスATCC39307株、ノカルディア・フスカNBRC14340株、ステノトロホモナス・マルトフィリアJCM1975株、バチルス・プミリスNBRC14358株、ミクロバクテリウム・ラクチカムJCM1379株、シュードモナス・クロロラフィスJCM2778株、ノカルディア・アステロイデスNBRC3384株、ゴルドナ・テラエJCM3206株、バチルス・アネウリノリティカスIAM1077株、クレブシエラ・オキシトカSNSM−87(微工研菌寄第12953号)株、キャンディダ・コリカロサJCM2199株、キャンディダ・エルノビJCM9948株、キャンディダ・ルゴサJCM1619株、ガラクトマイセス・ゲオトリカムJCM6359株、キャンディダ・インタメディアNBRC0761株、サッカロマイセス・セレビシエJCM2223株、スポリジオボラス・サルモニカラNBRC1035株、キャンディダ・クルセイNBRC0011株、ロドスポリジウム・ジオボバタムNBRC0688株、ピチア・ブルトニJCM3708株、キャンディダ・アンタラクチカJCM3941株、ロドトルラ・ルブラJCM8117株、キャンディダ・グイリエルモンジNBRC0566株、キャンディダ・ケフィアNBRC10287株、ロドトルラ・ミヌタNBRC0879株、およびキャンディダ・パラプシロシスJCM1785株からなる群より選択される少なくとも1種の菌株である、
方法。
【請求項2】
前記微生物が、バチルス・サブチリスJCM10629株、バチルス・サブチリスIAM1186株、クロモバクテリウム・ビオラセウムJCM1249株、キャンディダ・コリカロサJCM2199株、キャンディダ・エルノビJCM9948株、キャンディダ・ルゴサJCM1619株、ガラクトマイセス・ゲオトリカムJCM6359株、およびキャンディダ・インタメディアNBRC0761株からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記微生物がデンプン含有培地で培養された微生物である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記式(I)で表される化合物において
が、C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;であり、そして
が、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;もしくは
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
あり、そしてRおよびR水素原子である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記式(I)で表される化合物において
がC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、そして

ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;もしくは
−X−O−Y−(ここで、W、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはメチレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記光学活性な化合物が光学活性なエポキシドまたは光学活性なジオールである、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記光学活性な化合物が光学活性なジオールであって、そして
前記酵素を作用させる工程に続いて、得られた酵素反応液を酸処理する工程
をさらに包含する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
エポキシドのラセミ体に、エポキシド加水分解活性を有する微生物または該微生物に由来する酵素を作用させて、該ラセミ体の一方の鏡像体を加水分解する工程;および
反応液から目的の光学活性な化合物を回収する工程
を包含する、光学活性な化合物の製造方法であって、
該エポキシドが、式(I)で表される化合物:
【化3】

(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、
水素原子;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;
〜Cの直鎖または分岐鎖のアルケニル基;
〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキニル基;
ロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基および/またはカルボニル基で置換されていてもよい、ヘテロアリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
Ar1’−(CH−(ここで、Ar1’は、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいヘテロアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、ヘテロアラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
−OC(=O)−NR−Y−(ここで、Wは、
分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基か、あるいは
Ar−(CH−(ここで、Ar、ニトロ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基かであり、そして
は、水素原子あるいは分岐していてもよいC〜Cアルキル基であり、
Yはメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてmは0〜3の整数である)で表される基;もしくは
【化4】

(ここでpは1〜3の整数である)であり、かつRおよびRが互いに同一ではなく、そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、および/またはアミノ基で置換されていてもよいC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;である)であり、そして
該微生物が、デンプン含有培地で培養された微生物であり、そしてバチルス属、クロモバクテリウム属、ノカルディア属、ステノトロホモナス属、ミクロバクテリウム属、シュードモナス属、ゴルドナ属、クレブシエラ属、キャンディダ属、ガラクトマイセス属、サッカロマイセス属、スポリジオボラス属、ロドスポリジウム属、ピチア属、またはロドトルラ属に属する、
方法。
【請求項9】
前記式(I)で表される化合物において
が、C〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基;であり、そして
が、
ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;
−X−O−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;もしくは
−X−S−Y−(ここで、Wは、水素原子か、ハロゲン原子か、水酸基か、ニトロ基か、アミノ基か、分岐していてもよいC〜Cアルキル基か、あるいはハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはそれぞれ独立してメチレン基またはp−フェニレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
あり、そしてRおよびR水素原子である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記式(I)で表される化合物において
がC〜Cの直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、そして

ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アミノ基、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよい、アリール基;
Ar−(CH−(ここで、Arは、ハロゲン原子、分岐していてもよいC〜Cアルキル基および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基であり、そしてnは1〜3の整数である)で表される、アラルキル基;もしくは
−X−O−Y−(ここで、W、分岐していてもよいC〜Cアルキル基、および/または分岐していてもよいC〜Cアルコキシ基で置換されていてもよいアリール基かであり、XおよびYはメチレン基であり、そしてnおよびmはそれぞれ独立して0〜3の整数である)で表される基;
である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記光学活性な化合物が光学活性なエポキシドまたは光学活性なジオールである、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記光学活性な化合物が光学活性なジオールであって、そして
前記酵素を作用させる工程に続いて、得られた酵素反応液を酸処理する工程
をさらに包含する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
以下の化合物:
【化5】



【公開番号】特開2006−160609(P2006−160609A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349376(P2004−349376)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000214272)長瀬産業株式会社 (137)
【Fターム(参考)】