説明

光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物の製造方法

【課題】光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物を製造できる新たな方法を提供する。
【解決手段】例えば(1−1)で示されるグリオキシル酸化合物と、(2)で示されるアルデヒドを、光学活性ピロリジン化合物の存在下に反応させる工程を含む、(4)で示される光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物の製造方法。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物は、例えば、医薬、農薬等の原体又は製造中間体として、或いはパントテン酸等のビタミン類の製造中間体として有用であることが知られている。
光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物の製造方法としては、例えば、非特許文献1に、グリオキシル酸エチル単量体とヘキサナールとを式(10)
【0003】
【化1】

【0004】
で示される軸不斉アミノスルホナミドの存在下で反応させる方法が開示されている。また、非特許文献2に、グリオキシル酸エチル多量体とイソブチルアルデヒドとを光学活性なヒスチジンの存在下で反応させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Angew. Chem. Int. Ed. 2007, 46, 1738
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 16642
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物を製造できる新たな方法を提供することである。
【0007】
グリオキシル酸化合物は、通常、多量体の形態でトルエン溶液として市販されている。単量体は、多量体よりも反応性が高いという利点がある。単量体は多量体の熱分解により生じるが、反応性が高いために、容易に重合し、またすぐに水と反応する。従って、単量体の形態での使用には、多量体を熱分解した後、使用直前に蒸留する必要がある、また、非水系の反応に限られる等の問題があった。従って、多量体の形態での使用が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、かかる状況下、グリオキシル酸化合物を多量体の形態で使用できる、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物の新たな製造法について検討した結果、特定の不斉触媒の存在下での反応が、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物の製造に優れていることを見出し、本発明に至った。即ち、本発明は、以下の通りである。
[1]式(1−1):
【0009】
【化2】

【0010】
(式中、Rは、以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基又は水素原子を表し、nは2以上の整数を表す。)
で示されるグリオキシル酸化合物(以下、グリオキシル酸化合物(1−1)ともいう)、又は式(1−2):
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、R及びnは上記で定義された通りである。)
で示されるグリオキシル酸化合物(以下、グリオキシル酸化合物(1−2)ともいう)と、式(2):
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、R及びRはそれぞれ独立に、以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基、以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C12アルコキシ基、以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよい複素環基又は水素原子を表す。)
で示されるアルデヒド(以下、アルデヒド(2)ともいう)とを、式(3):
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、Ar及びArはそれぞれ独立に、以下の群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基、C−C12鎖式炭化水素基、C−C12脂環式炭化水素基又は水素原子を表し、Rは、水素原子、フッ素原子、水酸基、C−C12アルコキシ基、C−C12フッ化アルキルオキシ基又は−OSiR(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、C−Cアルキル基又はC−C20アリール基を表す。)で示されるシリルオキシ基を表し、**は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性ピロリジン化合物(以下、光学活性ピロリジン化合物(3)ともいう)の存在下に反応させる工程を含む、式(4):
【0017】
【化6】

【0018】
(式中、R、R及びRは上記で定義された通りであり、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(以下、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)ともいう)の製造方法。
群G1:群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基、C−C12アルコキシ基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基を有するC−C12アルコキシ基、ハロゲン原子及びオキソ基からなる群
群G2:C−C12アルキル基、C−C12アルコキシ基、C−C13アルコキシカルボニル基、C−C12フッ化アルキル基、C−C13アシル基、ニトロ基、シアノ基、保護されたアミノ基及びハロゲン原子からなる群
[2]反応が溶媒の存在下で行われる、上記[1]記載の製造方法。
[3]溶媒が、芳香族炭化水素溶媒、アルコール溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒及び水からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒である、上記[2]記載の製造方法。
[4]反応が0〜50℃の範囲内で行われる、上記[1]記載の製造方法。
[5]Rが水素原子である、上記[1]記載の製造方法。
[6]Rが水酸基であり、かつAr及びArがそれぞれ独立に、C−C12フッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基である、上記[1]記載の製造方法。
[7]Rが水酸基であり、かつAr及びArが共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、上記[1]記載の製造方法。
[8]C**がS配置であり、かつCがR配置である、上記[6]または[7]記載の製造方法。
[9]上記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法により得られる光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)と、ROH又はHC(OR(式中、RはC−Cアルキル基を表す。)とを酸触媒の存在下で反応させる工程を含む、式(5):
【0019】
【化7】

【0020】
(式中、R、R及びRは上記[1]で定義された通りであり、Rは、上記で定義された通りであり、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性アセタール化合物(以下、光学活性アセタール化合物(5)ともいう)の製造方法。
[10]上記[1]〜[8]のいずれかに記載の製造方法により光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)と、PhP=CHCO(式中、Phはフェニル基を表し、RはC−Cアルキル基を表す。)とを反応させる工程を含む、式(6):
【0021】
【化8】

【0022】
(式中、R、R及びRは上記[1]で定義された通りであり、Rは、上記で定義された通りであり、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性α,β−不飽和エステル化合物(以下、光学活性α,β−不飽和エステル化合物(6)ともいう)の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明の製造方法によれば、触媒として光学活性ピロリジン化合物(3)の存在下の反応においては、グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)を多量体の形態で使用しても反応性に優れるので、市販品を使用でき、熱分解及び使用直前の蒸留のような煩雑な工程が不要となる。また、水系条件下での反応も可能となる。さらに、トルエン中での反応の場合には、市販品をトルエンの留去なしにそのまま使用できるという利点もある。
特定の構造の光学活性ピロリジン化合物(3)と特定の溶媒の使用により、収率、エナンチオ選択性及びジアステレオ選択性(アルデヒド(2)中のRとRが異なる基である場合)よく、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0025】
本明細書中、「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。
【0026】
本明細書中、「C−C20炭化水素基」とは、C−C20脂肪族炭化水素基又はC−C20芳香族炭化水素基を意味する。
【0027】
本明細書中、「C−C20脂肪族炭化水素基」とは、C−C20鎖式炭化水素基又はC−C20脂環式炭化水素基を意味する。
本明細書中、「C−C12脂肪族炭化水素基」とは、C−C12鎖式炭化水素基又はC−C12脂環式炭化水素基を意味する。
【0028】
本明細書中、「C−C20鎖式炭化水素基」とは、C−C20アルキル基、C−C20アルケニル基又はC−C20アルキニル基を意味する。
本明細書中、「C−C12鎖式炭化水素基」とは、C−C12アルキル基、C−C12アルケニル基又はC−C12アルキニル基を意味する。
【0029】
本明細書中、「C−C20アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、エイコシル等が挙げられる。中でも、C−C12アルキル基、特にC−Cアルキル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12アルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜12のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキル基が好ましく、特にC−Cアルキル基が好ましい。
本明細書中、「C−Cアルキル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜8のアルキル基を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル、ヘプチル、オクチル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキル基が好ましい。
本明細書中、「C1−6アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルキル(基)を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、1−エチルプロピル、ヘキシル、イソヘキシル、1,1−ジメチルブチル、2,2−ジメチルブチル、3,3−ジメチルブチル、2−エチルブチル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキル(基)が好ましい。
本明細書中、「C1−4アルキル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜4のアルキル(基)を意味し、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等が挙げられる。
【0030】
本明細書中、「C−C20アルケニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜20のアルケニル基を意味し、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニル、1−ウンデセニル、1−ドデセニル、1−トリデセニル、1−エイコセニル等が挙げられる。中でも、C−C12アルケニル基、特にC−Cアルケニル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12アルケニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜12のアルケニル基を意味し、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル、1−ヘプテニル、1−オクテニル、1−ノネニル、1−デセニル、1−ウンデセニル、1−ドデセニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルケニル基が好ましく、特にC−Cアルケニル基が好ましい。
本明細書中、「C−Cアルケニル(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜6のアルケニル(基)を意味し、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、4−メチル−3−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ヘキセニル、5−ヘキセニル等が挙げられる。中でも、特にC−Cアルケニル(基)が好ましい。
【0031】
本明細書中、「C−C20アルキニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜20のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、1−オクチニル、1−ノニニル、1−デシニル、1−ウンデシニル、1−ドデシニル、1−トリデシニル、1−エイコシニル等が挙げられる。中でも、C−C12アルキニル基、特にC−Cアルキニル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12アルキニル基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数2〜12のアルキニル基を意味し、例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−ペンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−ヘキシニル、2−ヘキシニル、3−ヘキシニル、4−ヘキシニル、5−ヘキシニル、1−ヘプチニル、1−オクチニル、1−ノニニル、1−デシニル、1−ウンデシニル、1−ドデシニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルキニル基が好ましく、特にC−Cアルキニル基が好ましい。
【0032】
本明細書中、「C−C20脂環式炭化水素基」とは、C−C20シクロアルキル基又はC−C20シクロアルケニル基を意味する。
本明細書中、「C−C12脂環式炭化水素基」とは、C−C12シクロアルキル基又はC−C12シクロアルケニル基を意味する。
【0033】
本明細書中、「C−C20シクロアルキル基」としては、炭素原子数3〜20の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル、シクロトリデシル、シクロエイコシル等が挙げられる。中でも、C−C12シクロアルキル基、特にC−Cシクロアルキル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12シクロアルキル基」としては、炭素原子数3〜12の環状アルキル基を意味し、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、シクロウンデシル、シクロドデシル等が挙げられる。中でも、C−Cシクロアルキル基が好ましい。
【0034】
本明細書中、「C−C20シクロアルケニル基」としては、炭素原子数4〜20の環状アルケニル基を意味し、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘプテン−1−イル、2−シクロオクテン−1−イル、2−シクロノネン−1−イル、2−シクロデセン−1−イル、2−シクロドデセン−1−イル、2−シクロエイコセン−1−イル、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサジエン−1−イル等が挙げられる。中でも、C−C12シクロアルケニル基、特にC−Cシクロアルケニル基が好ましい。
本明細書中、「C−C12シクロアルケニル基」としては、炭素原子数4〜12の環状アルケニル基を意味し、例えば、2−シクロペンテン−1−イル、3−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル、3−シクロヘキセン−1−イル、2−シクロヘプテン−1−イル、2−シクロオクテン−1−イル、2−シクロノネン−1−イル、2−シクロデセン−1−イル、2−シクロドデセン−1−イル、2,4−シクロペンタジエン−1−イル、2,4−シクロヘキサジエン−1−イル、2,5−シクロヘキサジエン−1−イル等が挙げられる。中でも、C−Cシクロアルケニル基が好ましい。
【0035】
本明細書中、「C−C20シクロアルキル基」、「C−C12シクロアルキル基」、「C−C20シクロアルケニル基」及び「C−C12シクロアルケニル基」は、ベンゼン環と縮合してもよい。このような基としては、1,2−ジヒドロナフタレン−1−イル、1,2−ジヒドロナフタレン−2−イル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−1−イル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2−イル、フルオレン−9−イル、インデン−1−イル等が挙げられる。
【0036】
本明細書中、「C−C20芳香族炭化水素基(C−C20アリール基)」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭素原子数6〜20の炭化水素基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、フェナントレン、アントラセン、アセナフチレン、ナフタセン、ビフェニリル等が挙げられる。中でも、C−C14芳香族炭化水素基(C−C14アリール基)、特にC−C10芳香族炭化水素基(C−C10アリール基)が好ましい。
本明細書中、「C−C12芳香族炭化水素基(C−C12アリール基)」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭素原子数6〜12の炭化水素基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、アセナフチレン、ビフェニリル等が挙げられる。中でも、C−C10芳香族炭化水素基(C−C10アリール基)が好ましい。
本明細書中、「C−C10アリール(基)」とは、芳香族性を示す単環式あるいは多環式(縮合)の炭素原子数6〜10の炭化水素基を意味し、例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル等が挙げられる。
【0037】
本明細書中、「C−C14アラルキル(基)」とは、「C1−4アルキル(基)」に「C−C10アリール(基)」が置換した基を意味し、例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、(ナフチル−1−イル)メチル、(ナフチル−2−イル)メチル、1−(ナフチル−1−イル)エチル、1−(ナフチル−2−イル)エチル、2−(ナフチル−1−イル)エチル、2−(ナフチル−2−イル)エチル等が挙げられる。
【0038】
本明細書中、「C−C12アルコキシ基」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜12のアルコキシ基を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ウンデシルオキシ、ドデシルオキシ等が挙げられる。中でも、C−Cアルコキシ基、特にC−Cアルコキシ基が好ましい。
本明細書中、「C−Cアルコキシ(基)」とは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜6のアルコキシ(基)を意味し、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ等が挙げられる。中でも、C−Cアルコキシ(基)が好ましい。
【0039】
本明細書中、「複素環基」とは、芳香族複素環基又は非芳香族複素環基を意味する。
【0040】
本明細書中、「芳香族複素環基」とは、環構成原子として炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1乃至4個含有する、芳香族性を示す単環式又は多環式(縮合)複素環基を意味する。
本明細書中、「単環式芳香族複素環基」としては、例えば、フリル、チエニル、ピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、ピラジニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル(1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル)、チアジアゾリル(1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル)、トリアゾリル(1,2,4−トリアゾリル、1,2,3−トリアゾリル)、テトラゾリル、トリアジニル等が挙げられる。中でも、5又は6員の単環式芳香族複素環基が好ましい。
本明細書中、「縮合芳香族複素環基」とは、上記単環式芳香族複素環基が、単環式芳香族環(好ましくは、ベンゼン環又は単環式芳香族複素環)と縮合した基を意味し、例えば、キノリル、イソキノリル、キナゾリル、キノキサリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンズオキサゾリル、ベンズイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、インドリル、インダゾリル、ピロロピリジル、ピラゾロピリジル、イミダゾピリジル、チエノピリジル、ピロロピラジニル、ピラゾロピラジニル、イミダゾピラジニル、チエノピラジニル、ピロロピリミジニル、ピラゾロピリミジニル、イミダゾピリミジニル、チエノピリミジニル、ピラゾロチエニル等が挙げられる。
本明細書中、「単環式芳香族複素環」としては、例えば、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール(1,2,4−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール)、チアジアゾール(1,2,4−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール)、トリアゾール(1,2,4−トリアゾール、1,2,3−トリアゾール)、テトラゾール、トリアジン等が挙げられる。中でも、5又は6員の単環式芳香族複素環が好ましい。
【0041】
本明細書中、「非芳香族複素環基」とは、環構成原子として炭素原子に加えて、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選ばれるヘテロ原子を1乃至4個含有する、芳香族性を示さない、単環式又は縮合複素環基を意味する。
ここで、「単環式非芳香族複素環基」としては、例えば、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピペリジル、アゼパニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、オキサゾリジニル、チアゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサゾリニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ジオキソリル、ジオキソラニル、ジヒドロオキサジアゾリル、ピラニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、チオピラニル、ジヒドロチオピラニル、テトラヒドロチオピラニル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピリジル、テトラヒドロピリジル、テトラヒドロピリミジニル等が挙げられる。
本明細書中、「縮合非芳香族複素環基」とは、上記単環式非芳香族複素環基が、単環式芳香族環(好ましくは、ベンゼン環又は単環式芳香族複素環)と縮合した基、あるいはその完全飽和又は部分飽和により得られる基を意味し、例えば、ジヒドロインドリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロベンゾフラニル、テトラヒドロベンゾフラニル、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロベンゾジオキセピニル、クロメニル、ジヒドロクロメニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ジヒドロフタラジニル、アザビシクロヘキシル等が挙げられる。
【0042】
本明細書中、「C−C12フッ化アルキル(基)」とは、フッ素原子で置換された「C1−12アルキル(基)」を意味する。フッ素原子の数は特に限定されず、ペルフルオロ置換であってもよい。具体的には、例えば、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2−ジフルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル、5−フルオロペンチル、6−フルオロヘキシル、7−フルオロヘプチル、8−フルオロオクチル、9−フルオロノニル、10−フルオロデシル、11−フルオロウンデシル、12−フルオロドデシル等が挙げられる。
【0043】
本明細書中、「C−C12フッ化アルキルオキシ基」とは、フッ素原子で置換された「C1−12アルコキシ基」を意味する。フッ素原子の数は特に限定されず、ペルフルオロ置換であってもよい。具体的には、例えば、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、2−フルオロエトキシ、2,2−ジフルオロエトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシ、3−フルオロプロポキシ、4−フルオロブトキシ、5−フルオロペンチルオキシ、6−フルオロヘキシルオキシ、7−フルオロヘプチルオキシ、8−フルオロオクチルオキシ、9−フルオロノニルオキシ、10−フルオロデシルオキシ、11−フルオロウンデシルオキシ、12−フルオロドデシルオキシ等が挙げられる。
【0044】
本明細書中、「C−C13アルコキシカルボニル基」とは、−C=O−に「C−C12アルコキシ基」が結合した基を意味し、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ペンチルオキシカルボニル、イソペンチルオキシカルボニル、ネオペンチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、ヘプチルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、ノニルオキシカルボニル、デシルオキシカルボニル、ウンデシルオキシカルボニル、ドデシルオキシカルボニル等が挙げられる。中でも、C−Cアルコキシカルボニル基、特にC−Cアルコキシカルボニル基が好ましい。
【0045】
本明細書中、「C−C13アシル基」とは、C−C13カルボン酸から水酸基を除いた原子団であり、「C−C13脂肪族アシル基」又は「C−C13芳香族アシル基」を意味する。
本明細書中、「C−C13脂肪族アシル基」とは、−C=O−に「C−C12脂肪族炭化水素基」が結合した基を意味し、例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイル、2−メチルプロパノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ウンデカノイル、ドデカノイル、アクリロイル、メタアクリロイル、クロトノイル、イソクロトノイル、プロピオノイル、シクロペンチルカルボニル、シクロヘキシルカルボニル等が挙げられる。中でも、C−C13アルキルカルボニル基が好ましく、特にC−Cアルキルカルボニル基が好ましい。
本明細書中、「C−C13芳香族アシル基」とは、−C=O−に「C−C12芳香族炭化水素基(C−C12アリール基)」が結合した基を意味し、例えば、ベンゾイル、1−ナフトイル、2−ナフトイル等が挙げられる。
【0046】
本明細書中、「保護されたアミノ基」は、「保護基」で保護されたアミノ基を意味する。当該「保護基」としては、C1−6アルキル基、C2−6アルケニル基、C6−10アリール基、C7−14アラルキル基、C1−6アルキル−カルボニル基、C1−6アルコキシ−カルボニル基、C2−6アルケニル−オキシカルボニル基、C6−10アリール−カルボニル基、C7−14アラルキル−カルボニル基、C6−10アリール−オキシカルボニル基、C7−14アラルキル−オキシカルボニル基、C6−10アリールスルホニル基、ベンズヒドリル基、トリチル基、トリC1−6アルキルシリル基、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル基、フタロイル基等が挙げられる。上記の置換基は、ハロゲン原子、C1−6アルキル基、C1−6アルコキシ基又はニトロ基でそれぞれ置換されていてもよい。
当該保護基の具体例としては、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル、tert−ブトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル、ベンズヒドリル、トリチル、フタロイル、アリルオキシカルボニル、p−トルエンスルホニル、o−ニトロベンゼンスルホニル等が挙げられる。
【0047】
以下、式(1−1)、(1−2)、(2)〜(6)の各基について説明する。
【0048】
は、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基又は水素原子を表す。ここで、C−C20炭化水素基の置換基の数は好ましくは1乃至3個であり、2個以上である場合、これらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
は、
好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基であり、
より好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アルキル基であり、
さらにより好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C12アルキル基であり、
さらに一層好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルキル基であり、
特に好ましくは、C−Cアルキル基(特にエチル基)である。
【0049】
nは2以上の整数を表す。
nは、好ましくは、3〜100000の整数である。
【0050】
及びRはそれぞれ独立に、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C12アルコキシ基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよい複素環基又は水素原子を表す。ここで、C−C20炭化水素基、C−C12アルコキシ基及び複素環基の置換基の数は好ましくは1乃至3個であり、2個以上である場合、これらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
【0051】
は、
好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アルキル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C12アルコキシ基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよい複素環基又は水素原子であり、
より好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C12アルキル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルコキシ基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよい非芳香族複素環基又は水素原子であり、
さらにより好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルキル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルコキシ基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよい非芳香族複素環基又は水素原子であり、
さらに一層好ましくは、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルキル基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルコキシ基、群G1より選ばれる置換基を有していてもよい非芳香族複素環基又は水素原子であり、
特に好ましくは、
(1)水素原子、
(2)(i)C−C20アリール基(好ましくはC−C10アリール基、特に好ましくはフェニル基)、及び
(ii)C−C12アルコキシ基(好ましくはC−Cアルコキシ基、特に好ましくはC−Cアルコキシ基)を有していてもよいC−C20アリール基(好ましくはC−C10アリール基、特に好ましくはフェニル基)を有するC−C12アルコキシ基(好ましくはC−Cアルコキシ基、特に好ましくはC−Cアルコキシ基)
より選ばれる置換基を有していてもよいC−Cアルキル基、
(3)C−C20アリール基(好ましくはC−C10アリール基、特に好ましくはフェニル)を有していてもよいC−Cアルコキシ基、又は
(4)オキソ基を有していてもよいN含有非芳香族複素環基(好ましくはイソインドリル)である。
の好適な具体例としては、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ベンジル、ベンジルオキシ、p−メトキシベンジルオキシメチル、1,3−ジオキソイソインドリル等が挙げられる。
【0052】
は、好ましくは、水素原子である。
【0053】
Ar及びArはそれぞれ独立に、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基、C−C12鎖式炭化水素基、C−C12脂環式炭化水素基又は水素原子を表す。ここで、フェニル基の置換基の数は好ましくは1乃至3個であり、2個以上である場合、これらの置換基は同一でも異なっていてもよい。
Ar及びArは、
好ましくは、それぞれ独立に、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基であり、
より好ましくは、それぞれ独立に、C−C12フッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基であり、
さらに好ましくは、それぞれ独立に、C−Cフッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基であり、
さらに一層好ましくは、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基を有していてもよいフェニル基であり、
さらにより一層好ましくは、共にフェニル基であるか、又は共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である。
特に好ましくは、共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である。
【0054】
は、水素原子、フッ素原子、水酸基、C−C12アルコキシ基、C−C12フッ化アルキルオキシ基又は−OSiR(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、C−Cアルキル基又はC−C20アリール基を表す。)で示されるシリルオキシ基を表す。
は、
好ましくは、水酸基、又は−OSiR(式中、R、R及びRは上記で定義された通りである。)で示されるシリルオキシ基であり、
より好ましくは、水酸基、又は−OSiR(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、C−Cアルキル基(好ましくはメチル基)である。)で示されるシリルオキシ基であり、
特に好ましくは、水酸基である。
【0055】
Ar及びArとRの好適な組み合わせは以下のとおりである。
(1)Ar及びArがそれぞれ独立に、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(2)Ar及びArがそれぞれ独立に、C−C12フッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(3)Ar及びArがそれぞれ独立に、C−Cフッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(4)Ar及びArがそれぞれ独立に、トリフルオロメチル基を有していてもよいフェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(5)Ar及びArが共にフェニル基であるか、又は共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
(6)Ar及びArが共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基であり、かつRが、水酸基である態様。
【0056】
は、C−Cアルキル基を表す。
は、好ましくはC−Cアルキル基(特にメチル)である。
【0057】
は、C−Cアルキル基を表す。
は、好ましくはC−Cアルキル基(特にエチル、tert−ブチル)である。
【0058】
本発明では、触媒としての光学活性ピロリジン化合物(3)の存在下、グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)とアルデヒド(2)とを反応させる工程(アルドール反応工程)を含むことにより、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を製造する。
【0059】
グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)は、式(1’):
【0060】
【化9】

【0061】
(式中、Rは上記で定義された通りである。)
で示されるグリオキシル酸化合物の多量体である。グリオキシル酸化合物は、通常、多量体(即ち、グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2))の形態でトルエン溶液として市販されている。単量体は、多量体よりも反応性が高いという利点がある。多量体の熱分解により単量体(即ち、グリオキシル酸化合物(1’))が生じるが、単量体は反応性が高いために、容易に重合し、またすぐに水と反応する。従って、単量体の形態での使用には、多量体の熱分解した後、使用直前に蒸留する必要がある、また、非水系の反応に限られる等の問題がある。
本発明におけるアルドール反応工程では、多量体の形態での使用でも反応性に優れる。従って、市販品を使用でき、熱分解及び使用直前の蒸留のような煩雑な工程が不要となる。また、水系条件下での反応も可能となる。さらに、トルエン中での反応の場合には、市販品をトルエンの留去なしにそのまま使用できるという利点もある。
【0062】
アルデヒド(2)の使用量は、収率、選択性及び経済性の点から、グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)1モル(単量体換算で)に対して、好ましくは0.5〜10モル、より好ましくは0.5〜5モルである。
【0063】
触媒である光学活性ピロリジン化合物(3)において、アルデヒド(2)の種類にもよるが、ジアステレオ選択性(アルデヒド(2)中のRとRが異なる基である場合)の点から、式(3a):
【0064】
【化10】

【0065】
(式中、Ar及びArは上記で定義された通りであり、**は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性ピロリジン化合物が好ましく、中でも、Ar及びArがそれぞれ独立に、C−Cフッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基である光学活性ピロリジン化合物が好ましく、さらには、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基を有していてもよいフェニル基である光学活性ピロリジン化合物が好ましく、さらには、共にフェニル基であるか、あるいは共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である光学活性ピロリジン化合物が好ましく、特に、共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である光学活性ピロリジン化合物が好ましい。
【0066】
光学活性ピロリジン化合物(3)の使用量は、収率及び経済性の点から、グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)(単量体換算で)に対して、好ましくは0.5〜30モル%、より好ましくは1〜20モル%、特に好ましくは5〜15モル%である。
【0067】
本発明におけるアルドール反応工程は、好ましくは溶媒の存在下で行われる。本発明で使用される溶媒としては、芳香族炭化水素溶媒(例、トルエン、ベンゼン、キシレン);アルコール溶媒(例、メタノール、エタノール);ハロゲン化炭化水素溶媒(例、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素);エーテル溶媒(例、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン);ニトリル溶媒(例、アセトニトリル);非プロトン性極性溶媒(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド);水;これらの混合溶媒等が挙げられる。
中でも、アルデヒド(2)の種類にもよるが、エナンチオ選択性及びジアステレオ選択性(アルデヒド(2)中のRとRが異なる基である場合)の点から、芳香族炭化水素溶媒;アルコール溶媒;ハロゲン化炭化水素溶媒;エーテル溶媒;ニトリル溶媒;水;これらの混合溶媒等が好ましく、収率、エナンチオ選択性及びジアステレオ選択性が特に良好である点から、ニトリル溶媒と水との混合溶媒が特に好ましい。ニトリル溶媒と水との混合溶媒の場合、水の使用量は、ニトリル溶媒1モルに対し、好ましくは1〜5モル、より好ましくは2〜4モルである。
トルエンを含まない溶媒中でアルドール反応を行う場合には、市販のグリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)のトルエン溶液は、濃縮した後に使用される。
【0068】
本発明におけるアルドール反応工程は、グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)に、アルデヒド(2)、光学活性ピロリジン化合物(3)及び溶媒を添加して混合する方法;グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)、光学活性ピロリジン化合物(3)及び溶媒を混合し、そこへアルデヒド(2)を添加する方法;等により行われ、収率及び選択性の点から、グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)に、アルデヒド(2)、光学活性ピロリジン化合物(3)及び溶媒を添加して混合する方法により行うことが好ましい。
【0069】
本発明におけるアルドール反応工程は、アルデヒド(2)の種類にもよるが、好ましくは0〜100℃の範囲内、より好ましくは0〜40℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、アルデヒド(2)の種類及び反応温度にもよるが、好ましくは1〜100時間、より好ましくは10〜50時間、特に好ましくは20〜40時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0070】
このようにして得られた反応混合物に含まれる光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)の単離は、反応混合物を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。またその精製は光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を再結晶処理、抽出精製処理、蒸留処理、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー処理に付すことにより行うことができる。
【0071】
アルデヒド(2)中のRとRが異なる基である場合、ジアステレオマー(シン体とアンチ体)が存在するが、反応混合物からの光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)の単離及び/又は精製の間に異性化する場合がある。従って、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)のジアステレオ比(シン/アンチ比)及びエナンチオマー過剰率(ee(%))の測定は、アルドール反応終了後の単離及び/又は精製を行わず、3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を反応中かつ単離及び精製中に異性化が生じない化合物に変換した後に行うことが望ましい。本発明では、対応するアセタール化合物(式(5):
【0072】
【化11】

【0073】
(式中、R、R、R及びRは上記で定義された通りであり、*は不斉炭素原子を表す。)で示される光学活性アセタール化合物)、又は対応する光学活性α,β−不飽和エステル化合物(式(6):
【0074】
【化12】

【0075】
(式中、R、R、R及びRは上記で定義された通りであり、*は不斉炭素原子を表す。)で示される光学活性α,β−不飽和エステル化合物)に変換する。
【0076】
光学活性アセタール化合物(5)は、アルドール反応終了後の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を含む反応混合物又は単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)と、ROH又はHC(OR(式中、Rは上記で定義した通りである。)とを酸触媒の存在下で反応させる工程(アセタール化反応工程)を含むことにより製造される。
好ましくは、光学活性アセタール化合物(5)は、
(A)単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)と、ROH(式中、Rは上記で定義した通りである。)とを酸触媒の存在下で反応させる工程、あるいは、
(B)アルドール反応終了後の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を含む反応混合物と、HC(OR(式中、Rは上記で定義した通りである。)とを酸触媒の存在下で反応させる工程を含むことにより製造される。
【0077】
以下、工程Aについて説明する。
OHの使用量は、収率及び経済性の点から、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)1モルに対して、好ましくは2〜200モル、より好ましくは10〜100モルである。工程Aでは、ROHが反応溶媒も兼ねる。
【0078】
使用される酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム、p−トルエンスルホン酸又はその水和物(一水和物)が挙げられ、反応選択性の点から、p−トルエンスルホン酸ピリジニウムが好ましい。
酸触媒の使用量は、反応性及び経済性の点から、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)1モルに対して、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.01〜0.1モルである。
【0079】
アセタール化反応は、単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)に、ROH及び酸触媒を添加して混合する方法;単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)に酸触媒を添加し、その後、ROHを添加して混合する方法;等により行われ、操作を簡便にする点から、単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)に、ROH及び酸触媒を添加して混合する方法により行うことが好ましい。
【0080】
アセタール化反応は、ROH及び酸触媒の種類にもよるが、好ましくは0〜100℃の範囲内、より好ましくは20〜80℃の範囲内、特に好ましくは40〜60℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、ROH及び酸触媒の種類、及び反応温度にもよるが、好ましくは10分〜50時間、より好ましくは30分〜20時間、特に好ましくは1〜10時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0081】
次いで、工程Bについて説明する。
HC(ORの使用量は、収率及び経済性の点から、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)1モルに対して、好ましくは1〜20モル、より好ましくは3〜10モルである。
【0082】
使用される酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸又はその水和物(一水和物)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウムが挙げられ、収率及び経済性の点から、p−トルエンスルホン酸又はその水和物(一水和物)が好ましい。
酸触媒の使用量は、反応速度の点から、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)1モルに対して、好ましくは0.01〜1モル、より好ましくは0.01〜0.1モルである。
【0083】
アセタール化反応は、アルドール反応終了後の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を含む反応混合物に、HC(OR及び酸触媒を添加して混合する方法;アルドール反応終了後の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を含む反応混合物に酸触媒を添加し、その後、HC(ORを添加して混合する方法;等により行われ、操作を簡便にする点から、アルドール反応終了後の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を含む反応混合物に、HC(OR及び酸触媒を添加して混合する方法により行うことが好ましい。
【0084】
アセタール化反応は、HC(OR及び酸触媒の種類にもよるが、好ましくは0〜100℃の範囲内、より好ましくは10〜40℃の範囲内、特に好ましくは20〜30℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、HC(OR及び酸触媒の種類、及び反応温度にもよるが、好ましくは10分〜50時間、より好ましくは30分〜20時間、特に好ましくは1〜10時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0085】
このようにして得られた反応混合物に含まれる光学活性アセタール化合物(5)の単離は、反応混合物を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。またその精製は光学活性アセタール化合物(5)を再結晶処理、抽出精製処理、蒸留処理、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー処理に付すことにより行うことができる。
【0086】
光学活性α,β−不飽和エステル化合物(6)は、アルドール反応終了後の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を含む反応混合物又は単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)と、PhP=CHCO(式中、Ph及びRは上記で定義した通りである。)とを反応させる工程(ウィッティッヒ反応工程)を含むことにより製造される。
【0087】
PhP=CHCOの使用量は、収率及び経済性の点から、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)1モルに対して、好ましくは0.01〜5モル、より好ましくは0.5〜2モルである。
【0088】
単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を使用する場合、ウィッティッヒ反応の使用可能な溶媒として、芳香族炭化水素溶媒(例、トルエン、ベンゼン、キシレン);アルコール溶媒(例、メタノール、エタノール);ハロゲン化炭化水素溶媒(例、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素);エーテル溶媒(例、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン);ニトリル溶媒(例、アセトニトリル);非プロトン性極性溶媒(例、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド);これらの混合溶媒等が挙げられる。
【0089】
ウィッティッヒ反応は、アルドール反応終了後の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を含む反応混合物又は単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)に、PhP=CHCOを添加して混合する方法;PhP=CHCOに、アルドール反応終了後の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を含む反応混合物又は単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を添加して混合する方法;等により行われ、操作を簡便にする点から、アルドール反応終了後の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を含む反応混合物又は単離後未精製の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)に、PhP=CHCOを添加して混合する方法により行うことが好ましい。
【0090】
ウィッティッヒ反応は、PhP=CHCOの種類にもよるが、好ましくは0〜100℃の範囲内、より好ましくは10〜40℃の範囲内、特に好ましくは20〜30℃の範囲内で行われる。
また、その反応時間は、PhP=CHCOの種類及び反応温度にもよるが、好ましくは10分〜50時間、より好ましくは30分〜20時間、特に好ましくは1〜10時間である。
反応の進行度合いは、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー等の分析手段により確認することができる。
【0091】
このようにして得られた反応混合物に含まれる光学活性α,β−不飽和エステル化合物(6)の単離は、反応混合物を常法による後処理(例えば、中和、抽出、水洗、蒸留、結晶化等)に付すことにより行うことができる。またその精製は光学活性α,β−不飽和エステル化合物(6)を再結晶処理、抽出精製処理、蒸留処理、活性炭、シリカ、アルミナ等の吸着処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等のクロマトグラフィー処理に付すことにより行うことができる。
【0092】
得られた光学活性アセタール化合物(5)又は光学活性α,β−不飽和エステル化合物(6)について、ジアステレオ比(シン/アンチ比)及びエナンチオマー過剰率が測定される。測定されたジアステレオ比(シン/アンチ比)及びエナンチオマー過剰率は、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)のそれに対応する。
【0093】
アルデヒド(2)中のRとRが異なる基である場合、本発明におけるアルドール反応工程では、アンチ体の光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)が優先的に得られる。ジアステレオ比(シン/アンチ比)が例えば50/50以上、また例えば20/80以上のジアステレオ選択性が可能となる。
【0094】
本発明におけるアルドール反応工程では、C**がS配置である光学活性ピロリジン化合物(3a)、即ち、式(3a−S):
【0095】
【化13】

【0096】
(式中、Ar及びArは上記で定義された通りである。)
で示される光学活性ピロリジン化合物を触媒として使用した場合、CがR配置である光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)、即ち、式(4R):
【0097】
【化14】

【0098】
(式中、R、R及びRは上記で定義された通りである。)
で示される光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物が優先的に得られる。
【0099】
一方、C**がR配置である光学活性ピロリジン化合物(3a)、即ち、式(3a−R):
【0100】
【化15】

【0101】
(式中、Ar及びArは上記で定義された通りである。)
で示される光学活性ピロリジン化合物を触媒として使用した場合、CがS配置である光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)、即ち、式(4S):
【0102】
【化16】

【0103】
(式中、R、R及びRは上記で定義された通りである。)
で示される光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物が優先的に得られる。
【0104】
このように、本発明におけるアルドール反応工程では、エナンチオマー過剰率が例えば50ee%以上、また例えば80ee%以上のエナンチオ選択性が可能となる。
【実施例】
【0105】
以下、本発明について、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。
グリオキシル酸エチル(多量体)(トルエン中47%;TCI(東京化成工業株式会社)から購入;カタログナンバー:G0242)を用いた。グリオキシル酸エチル以外の全ての液体アルデヒド及び溶媒を使用前に蒸留した。
全ての反応をアルゴン雰囲気下で行い、メルク60 F254プレコートシリカゲルプレート(0.25mm厚)を用いた薄層クロマトグラフィーによりモニターした。分取薄層クロマトグラフィーは、和光純薬工業株式会社(日本、東京)から購入したWakogel B−5Fを用いて行った。フラッシュクロマトグラフィーは、関東化学株式会社(日本、東京)のシリカゲル60Nを用いて行った。
FT−IRスペクトルは、JASCO FT/IR−410分光計で測定した。
H及び13C−NMRスペクトルは、Bruker AM400(H−NMRでは400MHz、13C−NMRでは100MHz)装置で測定した。H−NMRデータは、化学シフト(δppm)、多重度(s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、m=マルチプレット)、カップリング定数(Hz)、積分及びアサインメントとして報告した。13C−NMRデータは、化学シフトとして報告した。
高分解能質量スペクトル解析(HRMS)はBruker ESI−TOF MS及びAPCI−TOF MSを用いて行った。
HPLC分析は、HITACHI Elite LaChrom Series HPLCにより、それぞれ適当な波長でUV検出をモニターしながら、CHIRALCEL OB−H(0.46cm×25cm)、CHIRALPAK IA(0.46cm×25cm)及びCHIRALPAK IB(0.46cm×25cm)を用いて行った。
【0106】
実施例1−1及び1−2
【0107】
【化17】

【0108】
グリオキシル酸エチル多量体(108.6mg,47%トルエン溶液0.5mmol)に、触媒としての光学活性ピロリジン化合物(触媒a又はb,0.05mmol)、プロパナール(145mg,2.5mmol)を加えた。反応混合物を23℃で24時間攪拌後、トルエンおよび過剰のプロパナールを減圧留去した。残渣にベンゼン(5mL)およびPhP=CHCOEt(348mg,1.0mmol)を加えた。反応混合物を23℃で24時間攪拌後、シリカゲルパッドを通過させることにより、ウィッティッヒ反応を停止させ、減圧下で濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)での精製により、(4R,5R,E)−5−ヒドロキシ−4−メチルヘキサ−2−エン二酸 1,6−ジエチルを得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表1に示す。収率は2工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。また、エナンチオマー過剰率は、CHIRALCEL OB−Hカラム(PrOH:ヘキサン=1:100、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した。
【0109】
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 1.17(3H,d,J=6.8Hz),1.20−1.31(6H,m),2.73−2.84(1H,m),4.11−4.30(5H,m),5.81(1H,dd,J=15.6,0.8Hz),6.85(1H,dd,J=15.6,0.8Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 14.1,15.6,40.4,60.3,61.9,73.7,122.6,147.5,166.1,173.4;
IR(neat):ν 3481,2981,1719,1654,1456,1370,1278,1183,1029,865cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1118Na]:計算値253.1046,実測値253.1058;
[α]18℃ +8.7(c=0.6,CHCl);
マイナーエナンチオマーの保持時間=22.8分、メジャーエナンチオマーの保持時間=31.8分。
【0110】
実施例1−3〜1−8
実施例1−1において、グリオキシル酸エチル多量体を濃縮後、これに、(S)−2−[ビス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(触媒b、26.3mg,0.05mmol)、プロパナール(145mg,2.5mmol)及び表1に示す溶媒(0.5ml)を加えたこと以外は、実施例1−1と同様に行った。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表1に示す。
【0111】
実施例1−9
実施例1−1において、グリオキシル酸エチル多量体を濃縮後、これに、(S)−2−[ビス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(触媒b、26.3mg,0.05mmol)、プロパナール(145mg,2.5mmol)、アセトニトリル(0.5ml,1M)及び水(27.3μL,1.5mmol)を加えたこと以外は、実施例1−1と同様に行った。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表1に示す。
【0112】
実施例1−10
実施例1−1において、グリオキシル酸エチル多量体を濃縮後、これに、(S)−2−[ビス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(触媒b、26.3mg,0.05mmol)、プロパナール(43.5mg,0.75mmol)、アセトニトリル(0.5ml,1M)及び水(27.3μL,1.5mmol)を加えたこと以外は、実施例1−1と同様に行った。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表1に示す。
【0113】
【表1】

【0114】
実施例2−1〜2−4
【0115】
【化18】

【0116】
グリオキシル酸エチル多量体を濃縮後、これに、表2に示す量の(S)−2−[ビス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン、プロパナール(43.5mg,0.75mmol)、アセトニトリル(0.5ml,1M)及び水(27.3μL,1.5mmol)を加えた。反応混合物を23℃で24時間攪拌後、PhP=CHCOEt(348mg,1.0mmol)を加えた。反応混合物を23℃で24時間攪拌後、シリカゲルパッドを通過させることにより、ウィッティッヒ反応を停止させ、減圧下で濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)での精製により、(4R,5R,E)−5−ヒドロキシ−4−メチルヘキサ−2−エン二酸 1,6−ジエチルを得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表2に示す。収率は2工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。また、エナンチオマー過剰率は、CHIRALCEL OB−Hカラム(PrOH:ヘキサン=1:100、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した。
【0117】
【表2】

【0118】
実施例3−1〜3−6
【0119】
【化19】

【0120】
47%トルエン溶液(108.6mg,0.5mmol)から濃縮したグリオキシル酸エチル多量体に、(S)−2−[ビス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(26.3mg,0.05mmol)、アセトニトリル(0.5mL,1.0M)、水(27.3μL,1.5mmol)および対応するアルデヒド(0.75mmol)を加えた。反応混合物を23℃で24時間攪拌後、PhP=CHCOEt(348mg,1.0mmol)を加えた。反応混合物を23℃で24時間攪拌後、シリカゲルパッドを通過させることにより、ウィッティッヒ反応を停止させ、減圧下で濃縮した。分取薄層クロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:2)での精製により、対応するα,β−不飽和エステルを得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表3に示す。収率は2工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。
【0121】
(R,E)−5−ヒドロキシ−ヘキサ−2−エン二酸 1−tert−ブチル 6−エチル(実施例3−1)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 1.27(3H,t,J=7.2Hz),1.29(9H,s),2.46−2.56(1H,m),2.60−2.70(1H,m),3.02(1H,br−s),4.18−4.30(3H,m),5.82(1H,d,J=15.6Hz),6.79(1H,dt,J=15.6,7.2Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 14.1,28.0,36.8,61.9,69.3,80.3,126.3,141.3,165.3,173.9;
IR(neat):ν 3481,2980,2936,1715,1655,1369,1153,1106,1027,981,850 cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1220Na]:計算値267.1203,実測値267.1204;
[α]17℃ +10.0(c=1.9,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、CHIRALCEL OB−Hカラム(PrOH:ヘキサン=1:10、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=9.9分、メジャーエナンチオマーの保持時間=13.8分)。
【0122】
(4R,5R,E)−5−ヒドロキシ−4−メチルヘキサ−2−エン二酸 1,6−ジエチル(実施例3−2)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 1.17(3H,d,J=6.8Hz),1.20−1.31(6H,m),2.73−2.84(1H,m),4.11−4.30(5H,m),5.81(1H,dd,J=15.6,0.8Hz),6.85(1H,dd,J=15.6,0.8Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 14.1,15.6,40.4,60.3,61.9,73.7,122.6,147.5,166.1,173.4;IR(neat):ν 3481,2981,1719,1654,1456,1370,1278,1183,1029,865 cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1118Na]:計算値253.1046,実測値253.1058;
[α]18℃ +8.7(c=0.6,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、CHIRALCEL OB−Hカラム(PrOH:ヘキサン=1:100、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=22.8分、メジャーエナンチオマーの保持時間=31.8分)。
【0123】
(4R,5R,E)−5−ヒドロキシ−4−エチルヘキサ−2−エン二酸 1−tert−ブチル 6−エチル(実施例3−3)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 0.92(3H,t,J=7.6Hz),1.28(3H,t,J=6.8Hz),1.45(9H,s),1.50−1.75(4H,m),2.47(1H,tq,J=2.8,9.2Hz),2.80(1H,br−s),4.16−4.32(3H,m),5.72(1H,dd,J=0.8,15.6Hz),6.66(1H,dd,J=9.2,15.6Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 11.7,14.1,23.4,28.0,47.7,61.7,72.3,80.1,125.5,145.0,165.2,173.7;
IR(neat):ν 3488,2979,2935,1729,1724,1654,1368,1157,1026,982cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1424Na]:計算値295.1516,実測値:95.1519;
[α]18℃ −14.8(c=1.1,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、CHIRALPAK IAカラム(PrOH:ヘキサン=1:30、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=15.1分、メジャーエナンチオマーの保持時間=12.3分)。
【0124】
(4R,5R,E)−5−ヒドロキシ−4−normal−プロピルヘキサ−2−エン二酸 1−tert−ブチル 6−エチル(実施例3−4)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 0.91(3H,t,J=7.2Hz),1.29(3H,t,J=6.8Hz),1.29−1.38(1H,m),1.46(9H,s),1.48−1.66(4H,m),2.59(1H,ddt,J=2.8,5.6,8.8Hz),4.18−4.32(3H,m),5.72(1H,d,J=16.0Hz),6.67(1H,dd,J=9.6,16.0Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 13.9,14.2,20.3,28.1,32.6,45.8,61.9,72.7,80.3,125.5,145.2,165.3,173.8;
R(neat):ν 3470,2961,2931,1733,1716,1454,1368,1250,1158,1139cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1526Na]:計算値309.1672,実測値:306.1678;
[α]19℃ −14.6(c=2.2,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、ウィッティッヒ生成物の2,4−ジニトロベンゾイル化後、CHIRALPAK IAカラム(PrOH:ヘキサン=1:100、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=50.6分、メジャーエナンチオマーの保持時間=31.0分)。
【0125】
(4R,5R,E)−5−ヒドロキシ−4−iso−プロピルヘキサ−2−エン二酸 1−tert−ブチル 6−エチル(実施例3−5)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 0.90(3H,d,J=6.8Hz),1.06(3H,d,J=6.4Hz),1.28(3H,t,J=7.2Hz),1.46(9H,s),1.97(1H,dq,J=9.2,6.8Hz),2.20(1H,dt,J=2.4,9.6Hz),2.78(1H,br−s),4.20(1H,dq,J=7.2,10.4Hz),4.27(1H,dq,J=7.2,10.4Hz),4.40(1H,br−s),5.69(1H,d,J=15.6Hz),6.70(1H,dd,J=10.4,15.6Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 14.0,20.2,20.9,27.9,28.0,52.8,61.7,70.8,80.1,125.9,144.4,164.9,174.0;
IR(neat):ν 3442,2974,2931,1733,1716,1366,1282,1246,1157,1143cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1526Na]:計算値309.1672,実測値309.1683;
[α]20℃ −27.4(c=0.87,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、ウィッティッヒ生成物の2,4−ジニトロベンゾイル化後、CHIRALPAK IAカラム(PrOH:ヘキサン=1:100、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=33.9分、メジャーエナンチオマーの保持時間=26.3分)。
【0126】
(4S,5R,E)−5−ヒドロキシ−4−ベンジルヘキサ−2−エン二酸 1−tert−ブチル 6−エチル(実施例3−6)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 1.25(3H,t,J=7.2Hz),1.45(9H,s),2.76−2.90(2H,m),2.96(1H,dd,J=8.4,12.4Hz),4.09(1H,dd,J=2.0,4.4Hz),4.16(1H,dq,J=7.2,10.8Hz),4.25(1H,dq,J=7.2,10.8Hz),5.72(1H,d,J=15.6Hz),6.76(1H,dq,J=6.8,15.6Hz),7.32−7.22(5H,m);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 14.2,28.1,36.8,47.4,61.9,70.8,80.3,125.7,126.4,128.5,129.3,138.6,144.2,165.1,173.9;
IR(neat):ν 3500,2979,1714,1652,1456,1368,1319,1253,1149,1110,985cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1926Na]:計算値356.1672,実測値357.1668;
[α]20℃ −47.2(c=0.63,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、ウィッティッヒ生成物のベンゾイル化後、CHIRALPAK IBカラム(PrOH:ヘキサン=1:100、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=17.9分、メジャーエナンチオマーの保持時間=15.6分)。
【0127】
実施例3−7〜3−8
【0128】
47%トルエン溶液(162.9mg,0.75mmol)から濃縮したグリオキシル酸エチル多量体に、(S)−2−[ビス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(26.3mg,0.05mmol)、アセトニトリル(0.25mL,0.5M)、水(27.3μL,1.5mmol)および対応するアルデヒド(0.5mmol)を加えた。反応混合物を5℃で38時間攪拌後、PhP=CHCOEt(348mg,1.0mmol)を加えたこと以外は、実施例3−1と同様の方法により、対応するα,β−不飽和エステルを得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表3に示す。収率は2工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。
【0129】
(4S,5R,E)−5−ヒドロキシ−4−(p−メトキシベンゾイルメチル)ヘキサ−2−エン二酸 1,6−ジエチル(実施例3−8)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 1.27(3H,dt,J=3.2,7.2Hz),2.95−3.03(2H,m),3.55(1H,dd,J=5.6,9.2Hz),3.68(1H,t,J=8.8Hz),3.81(3H,s),4.17(2H,q,J=7.2Hz),4.18−4.26(2H,m),4.43−4.52(2H,m),5.87(1H,dd,J=0.8,15.6Hz),6.80(1H,dd,J=9.2,15.6Hz),6.88(2H,br−d,J=8.8Hz),7.25(2H,br−d,J=8.8Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 14.2,46.0,55.3,60.4,62.0,68.9,70.1,73.1,113.8,124.9,129.4,129.9,142.8,159.3,165.8,173.7;
IR(neat):ν 3533,2983,2837,1740,1724,1613,1514,1466,1368,1177,1033,820cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1926Na]:計算値389.1571,実測値389.1580;
[α]19℃ −5.3(c=0.70,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、ウィッティッヒ生成物のベンゾイル化後、CHIRALPAK ICカラム(PrOH:ヘキサン=1:10、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=17.6分、メジャーエナンチオマーの保持時間=23.8分)。
【0130】
実施例3−9〜3−11
【0131】
【化20】

【0132】
以下の方法Aまたは方法Bにより行った。
【0133】
方法A
47%トルエン溶液(108.6mg,0.5mmol)から濃縮したグリオキシル酸エチル多量体に、(S)−2−[ビス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(26.3mg,0.05mmol)、アセトニトリル(0.5mL,1.0M)、水(27.3μL,1.5mmol)および対応するアルデヒド(0.75mmol)を加えた。反応混合物を23℃で48時間攪拌後、溶媒および過剰のアルデヒドを減圧留去した。残査に、メタノール(1.0mL,24.7mmol)およびp−トルエンスルホン酸ピリジニウム(12.6mg,0.05mmol)を加えた。反応混合物を50℃で5時間攪拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の添加により、反応を停止させた。有機物質をクロロホルムで3回抽出し、無水NaSOで乾燥し、濾過後、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)での精製により、アセタール生成物を得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表3に示す。収率は2工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。エナンチオマー過剰率は、対応する2,4−ジニトロ安息香酸エステルに変換した後、キラルカラムを備えたHPLCにより測定した。
【0134】
方法B
47%トルエン溶液(108.6mg,0.5mmol)から濃縮したグリオキシル酸エチル多量体に、(S)−2−[ビス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ヒドロキシメチル]ピロリジン(26.3mg,0.05mmol)、アセトニトリル(0.5mL,1.0M)、水(27.3μL,1.5mmol)および対応するアルデヒド(0.75mmol)を加えた。反応混合物を23℃で48時間攪拌後、オルトギ酸トリメチル(274μL,2.5mmol)およびp−トルエンスルホン酸一水和物(9.5mg,0.05mmol)を加えた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液の添加により、反応を停止させた。有機物質をクロロホルムで3回抽出し、無水NaSOで乾燥し、濾過後、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:10)での精製により、アセタール生成物を得た。収率、シン/アンチ比及びエナンチオマー過剰率を表3に示す。収率は2工程の収率として求めた。シン/アンチ比はH−NMRスペクトルにより測定した。エナンチオマー過剰率は、対応する2,4−ジニトロ安息香酸エステルに変換した後、キラルカラムを備えたHPLCにより測定した。
【0135】
(2R,3S)−2−ヒドロキシ−4,4−ジメトキシ−3−メチルブタン酸 エチル(実施例3−9)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 1.05(3H,d,J=7.6Hz),1.28(3H,t,J=7.2Hz),3.12(1H,s),2.32(1H,d of quint.,J=3.2,7.2Hz),3.31(3H,s),3.32(3H,s),4.21(1H,q,J=7.2Hz),4.30(1H,d,J=7.6Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 12.7,14,1,39.7,53.0,55.7,61.4,72.7,106.0,174.4;
IR(neat):ν 3501,2982,2939,1733,1464,1256,1226,1131,1059,955cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C18Na]:計算値229.1046,実測値229.1054;
[α]17℃ −17.0(c=1.0,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、CHIRALPAK IAカラム(PrOH:ヘキサン=1:50、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=22.9分、メジャーエナンチオマーの保持時間=20.3分)。
【0136】
(2R,3S)−3−ベンジルオキシ−4,4−ジメトキシ−2−ヒドロキシブタン酸 エチル(実施例3−10)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 1.28(3H,t,J=6.8Hz),3.08(1H,d,J=5.2Hz),3.40(3H,s),3.45(3H,s),3.80(1H,dd,J=2.4,7.2Hz),4.23(2H,q,J=7.2Hz),4.41(1H,dd,J=2.4,4.8Hz),4.54(1H,d,J=7.2Hz),4.71(1H,d,J=12.0Hz),4.77(1H,d,J=12.0Hz),7.26−7.40(5H,m);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 14.1,55.6,56.1,61.7,71.2,73.6,80.8,105.0,127.7,127.9,128.4,138.1,172.2;
IR(neat):ν 3522,3438,2986,2834,1742,1455,1200,1138,1069,1027,745,699cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1522Na]:計算値321.1309,実測値321.1309;
[α]20℃ −31.5(c=0.90,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、CHIRALPAK IBカラム(PrOH:ヘキサン=1:20、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=20.7分、メジャーエナンチオマーの保持時間=26.2分)。
【0137】
3−フタルイミジル−4,4−ジメトキシ−2−ヒドロキシブタン酸 エチル(実施例3−11,マイナージアステレオマー)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 1.17(3H,t,J=7.2Hz),3.26(3H,s),3.55(3H,s),4.07(1H,dq,J=10.8,7.2Hz),4.20(1H,br−d,J=10.8Hz),4.68−4.77(2H,m),5.24(1H,d,J=8.4Hz),7.74(2H,dd,J=3.2,5.6Hz),7.85(2H,dd,J=3.2,5.6Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 14.0,53.0,54.8,55.9,61.6,70.9,99.6,123.7,131.5,134.4,168.7,172.1;
IR(neat):ν 3472,2941,1775,1747,1715,1389,1207,1123,1069,772cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1619NONa]:計算値360.1054,実測値:360.1063;
[α]21℃ +25.8(c=1.34,CHCl);エナンチオマー過剰率は、CHIRALPAK IBカラム(PrOH:ヘキサン=1:30、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=21.9分、メジャーエナンチオマーの保持時間=19.4分)。
【0138】
3−フタルイミジル−4,4−ジメトキシ−2−ヒドロキシブタン酸 エチル(実施例3−11,メジャージアステレオマー)
H−NMR(CDCl,400MHz):δ 1.32(3H,t,J=7.2Hz),3.27(3H,s),3.49(3H,s),3.67(1H,br−d,J=3.6Hz),4.29(2H,dq,J=2.4,7.2Hz),4.55(1H,br−t,J=3.6Hz),4.81(1H,dd,J=3.6,8.8Hz),5.42(1H,d,J=8.8Hz),7.73(2H,dd,J=3.2,5.2Hz),7.85(2H,dd,J=3.2,5.2Hz);
13C−NMR(CDCl,100MHz):δ 14.0,52.8,54.7,56.0,62.1,70.6,99.7,123.5,131.7,134.2,168.2,171.6;
IR(neat):ν 3478,2941,2838,1776,1716,1469,1388,1216,1109,1071,722cm−1
HRMS(ESI):[M+Na][C1619NONa]:計算値360.1054,実測値360.106;
[α]21℃ −33.5(c=0.52,CHCl);
エナンチオマー過剰率は、CHIRALPAK IBカラム(PrOH:ヘキサン=1:30、1mL/分)を用いてHPLCにより測定した(マイナーエナンチオマーの保持時間=35.3分、メジャーエナンチオマーの保持時間=30.7分)。
【0139】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の製造方法によれば、触媒として光学活性ピロリジン化合物(3)の存在下の反応においては、グリオキシル酸化合物(1−1)又は(1−2)を多量体の形態で使用しても反応性に優れるので、市販品を使用でき、熱分解及び使用直前の蒸留のような煩雑な工程が不要となる。また、水系条件下での反応も可能となる。さらに、トルエン中での反応の場合には、市販品をトルエンの留去なしにそのまま使用できるという利点もある。
特定の構造の光学活性ピロリジン化合物(3)と特定の溶媒の使用により、収率、エナンチオ選択性及びジアステレオ選択性(アルデヒド(2)中のRとRが異なる基である場合)よく、光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物(4)を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1−1):
【化1】


(式中、Rは、以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基又は水素原子を表し、nは2以上の整数を表す。)
で示されるグリオキシル酸化合物、又は式(1−2):
【化2】


(式中、R及びnは上記で定義された通りである。)
で示されるグリオキシル酸化合物と、式(2):
【化3】


(式中、R及びRはそれぞれ独立に、以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20炭化水素基、以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよいC−C12アルコキシ基、以下の群G1より選ばれる置換基を有していてもよい複素環基又は水素原子を表す。)
で示されるアルデヒドとを、式(3):
【化4】


(式中、Ar及びArはそれぞれ独立に、以下の群G2より選ばれる置換基を有していてもよいフェニル基、C−C12鎖式炭化水素基、C−C12脂環式炭化水素基又は水素原子を表し、Rは、水素原子、フッ素原子、水酸基、C−C12アルコキシ基、C−C12フッ化アルキルオキシ基又は−OSiR(式中、R、R及びRはそれぞれ独立に、C−Cアルキル基又はC−C20アリール基を表す。)で示されるシリルオキシ基を表し、**は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性ピロリジン化合物の存在下に反応させる工程を含む、式(4):
【化5】


(式中、R、R及びRは上記で定義された通りであり、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物の製造方法。
群G1:群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよい芳香族複素環基、C−C12アルコキシ基、群G2より選ばれる置換基を有していてもよいC−C20アリール基を有するC−C12アルコキシ基、ハロゲン原子及びオキソ基からなる群
群G2:C−C12アルキル基、C−C12アルコキシ基、C−C13アルコキシカルボニル基、C−C12フッ化アルキル基、C−C13アシル基、ニトロ基、シアノ基、保護されたアミノ基及びハロゲン原子からなる群
【請求項2】
反応が溶媒の存在下で行われる、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
溶媒が、芳香族炭化水素溶媒、アルコール溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒及び水からなる群より選択される少なくとも1種の溶媒である、請求項2記載の製造方法。
【請求項4】
反応が0〜50℃の範囲内で行われる、請求項1記載の製造方法。
【請求項5】
が水素原子である、請求項1記載の製造方法。
【請求項6】
が水酸基であり、かつAr及びArがそれぞれ独立に、C−C12フッ化アルキル基を有していてもよいフェニル基である、請求項1記載の製造方法。
【請求項7】
が水酸基であり、かつAr及びArが共に3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル基である、請求項1記載の製造方法。
【請求項8】
**がS配置であり、かつCがR配置である、請求項6または7記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られる式(4)で示される光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物と、ROH又はHC(OR(式中、RはC−Cアルキル基を表す。)とを酸触媒の存在下で反応させる工程を含む、式(5):
【化6】


(式中、R、R及びRは請求項1で定義された通りであり、Rは、上記で定義された通りであり、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性アセタール化合物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られる式(4)で示される光学活性な3−置換−3−ホルミル−2−ヒドロキシプロパン酸化合物と、PhP=CHCO(式中、Phはフェニル基を表し、RはC−Cアルキル基を表す。)とを反応させる工程を含む、式(6):
【化7】


(式中、R、R及びRは請求項1で定義された通りであり、Rは、上記で定義された通りであり、*は不斉炭素原子を表す。)
で示される光学活性α,β−不飽和エステル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2011−251924(P2011−251924A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−125763(P2010−125763)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】