説明

光学活性のメチルヒドロキシアミノプロパノールを中間体として用いる(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンの製造方法

【課題】(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物を出発原料とする(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンの製造方法の提供。
【解決手段】N‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物を中間体として経由し、かつその中間体の製造方法に特徴のある、高収率かつ低処理コストの(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチルヒドロキシアミノプロパノールのキラル化合物を中間体とした、(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン(デュロキセチン(登録商標))は、イーライリリー(Eli Lilly and Company,Inc.)社により抗うつ薬として研究開発されたものである。今日、すでに多くのデュロキセチン(Duloxetine:(登録商標))に関する製造方法が報告されている。たとえば、米国特許第5023269号では、下記の工程による製造方法が開示されている。
【化1】

【0003】
この実施例において、2−アセチルチオフェンは、ホルムアルデヒド及びジメチルアミンと反応してマンニッヒ生成物(即ち、3−ジメチルアミノ‐1‐(2‐チエニル)プロパン‐1‐オン)を形成するための出発原料として用いられている。このプロパノン化合物をヒドリド還元することにより、対応する3‐ジメチルアミノ‐1‐(2‐チエニル)プロパン‐1‐オールを得る。次に、このプロパノール化合物をフルオロナフタレンと反応させることで、N,N‐ジメチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンを合成する。続いて、このプロピルアミン化合物を脱メチル化し、ラセミ体のデュロキセチン(登録商標)を得る。上記の製造方法において、この脱メチル化反応の収率は非常に低く、約41%でしかない。また、この反応経路で生成したデュロキセチン(登録商標)はラセミ体である。
【0004】
そこで、米国特許第7538232号は、有機溶剤の混合物を使用することによる、キラル性を保存するための処理方法を開示している。しかし、デュロキセチン(登録商標)を製造する方法において、異なる種類の有機溶剤を使用することは、その後の処理コストの増大につながり好ましくない。又、混合有機溶剤を使用することは、環境保護の立場からみても不利である。従って、キラル性デュロキセチン(登録商標)を製造できる新規な方法の研究開発が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5023269号
【特許文献2】米国特許第7538232号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術の欠点に鑑みて、本発明は、下記式(II)に示す新規な(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物を提供する。
【化2】

式中、RはC1‐8アルキル基、又はC6‐10アリール基を示す。又、そのキラル中心の絶対配置はS型である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様において、式(II)に示される(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノールは、(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン(デュロキセチン(登録商標))を製造するための中間体として使用される。従って、本発明は、式(II)に示す光学活性を有する(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物の、(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンを合成する際の中間体としての用途を提供するものである。
【0008】
本発明の他の態様において、本発明は、式(II)に示す(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物を中間体として使用することにより、(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン(デュロキセチン(登録商標))を高収率且つ低い処理コストで製造する方法を提供するものである。
【0009】
本発明において、デュロキセチン(登録商標)を製造する方法を下記のスキーム1に示す。
【化3】

【0010】
上記のスキーム1により示される方法には、下記の工程が含まれる:
(i)2‐アセチルチオフェン、ホルムアルデヒド、及び化学式HNCH(OR)により示されるメチルヒドロキシアミン化合物を用いたマンニッヒ反応により、下記式(I)に示される置換されたアミノケトン化合物を合成し、
【化4】

(ii)式(I)に示される、置換されたアミノケトン化合物を鏡像選択的に還元することにより式(II)により示される(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物を得、
【化5】

(iii)式(II) に示される(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物とハロナフタレンとの反応により、式(III)により示されるN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物を合成し、
【化6】

(iv)式(III)に示されるN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物のN,O‐開裂反応により、下式の(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンを得る。
【化7】

式中、RはC1‐8 アルキル基、又はC6‐10アリール基を示し,好ましくはC1‐4アルキル基を示し、より好ましくはメチル基を示し、ハロゲン基はF、Cl、Br、またはIを示す。
【0011】
又、本発明の方法の工程(iii)中、カリウムアルコレート(KOR)とジメチルスルホキシド(DMSO)がナフチル化反応に用いられ、式中、RはC1‐6アルキル基を示し、好ましくはブチル基であり、さらに好ましくはtert−ブチル基を示す。
【0012】
本発明の1つの態様において、本発明は、式(III)に示されるN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物の製造方法を提供する。上記製造方法には、式(II)に示される(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物を、DMSO中で、KOR及びハロナフタリンと反応させることが含まれる。
【化8】

式中、RはC1‐8アルキル基、又はC6‐10 アリール基を示し、好ましくはC1‐4アルキル基であり、更に好ましくはメチル基を示し、RはC1‐6アルキル基を示し、好ましくはブチル基であり、更に好ましくはtert−ブチル基を示し、ハロゲン基はF、Cl、Br、又はIを示す。
【0013】
本発明の式(III)に示す化合物を製造する方法において、該工程は10℃〜110℃の範囲内の温度下で行われる。又、該方法において使用されるハロナフタレンの量は、KOR1.1当量に対し、1.5〜7.0当量の範囲内である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、具体的な実施例を用いて本発明の開示内容を説明する。本発明の技術分野について一般的知識を備える者は、本明細書の記載内容によって、本発明の内容とその特長と効果を簡単に理解できる。
【0015】
本発明は、下記式(II)に示す光学活性を呈するメチルヒドロキシアミノプロパノール化合物を提供する。
【化9】

式中、RはC1‐8 アルキル基、又はC6‐10アリール基を示す。又、このキラル中心の絶対配置はS型である。
【0016】
上記式(II)のRは、C1‐4アルキル基がより好ましく、更にメチル基が特に好ましい。
【0017】
また、本発明は、(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン(デュロキセチン(登録商標))の製造方法を提供する。上記の方法において、式(II)に示す(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物は中間体として使用される。下記のスキーム1に、本発明の方法をまとめた。
【化10】

上記スキーム1において、RはC1‐8 アルキル基、又はC6‐10アリール基を示す。
【0018】
更に詳しくは、本発明の方法は下記の工程を含む:
(i)2‐アセチルチオフェン、ホルムアルデヒド、及び化学式HNCH(OR)により示されるメチルヒドロキシアミン化合物を用いたマンニッヒ反応により、式(I)に示される置換されたアミノケトン化合物を合成し、
(ii)式(I)に示される、置換されたアミノケトン化合物を鏡像選択的に還元することにより式(II)により示される(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物を得、
(iii)式(II) に示される(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物をハロナフタレンと反応させることにより、式(II)に示されるN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物を合成し、
(iv)式(III)に示されるN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物のN,O‐開裂反応によりデュロキセチン(登録商標)を得る。
【0019】
本発明の方法において、工程(i)は15〜90℃の範囲内の温度下、より好ましくは40〜80℃、更に好ましくは50〜70℃の範囲内の温度下で行われる。工程(i)で得られた式(I)に示す置換されたアミノケトン化合物は、遊離状態又は酸付加塩のいずれかである。
【0020】
工程(ii)における式(I)に示す、置換されたアミノケトン化合物の還元は非対称的還元であり、好ましくはキラル還元である。従って、光学活性を示す、式(II)により示される(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物が得られる。このような光学活性はキラル配位子を有する触媒又はキラル配位子を有する水素化物を使用して非対称的還元を行うことにより得ることができる。工程(ii)において、キラル還元に使用されるキラル性還元剤は、複合水素化物、ホウ化物、遷移金属触媒、及び微生物脱水素酵素からなる群より選択する。
【0021】
より好ましい実施例において、工程(ii)中の式(I)に示す、置換されたアミノケトン化合物の還元は、触媒の存在下、アルコ-ル(例えば、メタノール)と塩基(例えば、カリウムtert−ブトキシド)との混合物中で行われる。該触媒には、鏡像異性体を富化したリン含有二座配位子(enantiomer‐enriched bidentate phosphorus‐containing ligand)、遷移金属、及びジアミン、より好ましくはキラルジアミンが含まれ、例えば、該触媒としてRuCl((R)‐3,5‐キシリルBINAP) ((2R)‐DAIPEN)が用いられる。反応混合物は予定された圧力下で水素化されることにより、高いee値を有する、式(II)に示す(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物を生成する。
【0022】
工程(iii)中の式(II)に示す(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物をハロナフタリンと反応させることで式(III)に示すN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物が得られ、該反応は適当な塩基を使用し、適当な中性溶剤中で行われる。
【0023】
より好ましい実施例において、式(II)に示す(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物は、該塩基として水素化ナトリウムを使用して、DMF中でフルオロナフタレンと反応させる。反応は10〜110℃の範囲内の温度下で、より好ましくは40〜70℃の範囲の温度下で、1〜24時間行う。
【0024】
更に好ましい実施例においては、式(II)に示す(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物は、塩基としてKORを使用して、DMSO中でフルオロナフタレンと反応させる。式中、RはC1‐6アルキル基を示し、好ましくはブチル基であり、より好ましくはtertブチル基を示す。本発明の工程(iii)において、使用されるハロナフタレンの量は、KOR1.1当量当り、1.5〜7.0当量の範囲内である。
【0025】
本発明方法の工程(iv)において、式(III)に示すN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物のN,O‐開裂反応は、ラネーニッケルのような触媒の存在下での水素化により、又はLiAlHあるいは金属亜鉛のような還元剤を用いた化学的還元法により、行われる。
【0026】
より好ましい実施例において、式(III)に示すN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物は、ラネーニッケル触媒の存在下、メタノール中で、15〜80℃の範囲内の温度下、より好ましくは40〜70℃の範囲内の温度下で、9〜15時間水素化反応が行われる。
【0027】
従来の方法に比べ、本発明の方法によれば高収率、且つ低コストで、光学純度の良いデュロキセチン(登録商標)が得られる。経済的な面や環境の面からみても、本発明の方法は、特に工業的スケールでの生産に有利である。
【実施例1】
【0028】
3‐メトキシメチルアミノ‐1‐(2‐チエニル)‐1‐プロパノン塩酸塩の合成
【化11】

N,O‐ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩27.7g、パラホルムアルデヒド9.3g、32%塩酸6.4g、2‐アセチルチオフェン30.0g、及びイソプロパノール100gをフラスコにいれ、60℃の温度下で13時間かく拌した後、反応混合物を冷却して、室温まで温度を下げた。これにより生成した結晶を濾過し、イソプロパノール30gで洗浄した後、減圧下で乾燥させ、3‐メトキシメチルアミノ‐1‐(2‐チエニル)‐1プロパノン塩酸塩42.5g(収率75.9%)を得た。
【0029】
H NMR(400 MHz,CDCl)δ(ppm)=3.1(s,3H),3.7‐3.8(br,4H),4.1(s,3H),7.2(t,J= 4.5Hz,1H),7.7(d,J=4.9 Hz,1H),7.9(d,J= 3.5Hz,1H).
【実施例2】
【0030】
(S)‐3‐メトキシメチルアミノ‐1‐(2‐チエニル)プロパン‐1‐オールの合成
【化12】

RuCl((R)‐3,5‐キシリルBINAP)((2R)‐DAIPEN)10mgを含む脱気したメタノール4ml、3‐メトキシメチルアミノ‐1‐(2‐チエニル)‐1‐プロパノン160mg、カリウムtert−ブトキシド100mg、及びメタノール10mlをアルゴン気流下で、ガラス製のオートクレーブに加えた。アルゴンガスで空気を置換した後、予定した圧力になるまで水素ガスを導入し、20℃下で12時間、水素化反応を行った。水素化反応が終了した後、反応混合物を濃縮して、オイル状の目的化合物物(161mg, HPLC分析結果:95.8%,95%ee)を得た。
【0031】
H NMR(400 MHz,CDCl)δ(ppm)= 3.0(s,3H),3.0‐3.1(m,1H),4.1(s,3H),4.0‐4.1(m,3H),6.1(dt,J= 7.4,15.4 Hz,1H),6.9(d,J=15.7Hz,1H),7.0(dd,J=3.7,5.0Hz,1H),7.1(d,J=3.4 Hz,1H)。
【実施例3】
【0032】
実施例3−1
N‐メチル‐N‐メトキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンの合成
【化13】

実施例2で得た(S)‐3‐メトキシメチルアミノ‐1‐(2‐チエニル)プロパン‐1‐オール10.0gを室温下でN,N‐ジメチルホルムアミド30ml中に溶解し、強かく拌下で水素化ナトリウム(3.9g,60%)を加えた。その後、1‐フルオロナフタレン9.4gを加え、70℃下で8時間、この混合物をかく拌した。ナフチル化反応が終了した後、水90mlにより反応混合物を急冷した。トルエン(30mlx3)で抽出した後、有機層を併合し濃縮した。次に、シリカゲルカラムクロマトグラフィで粗製物を純化することによって、アンバーオイル状の目的化合物(13.5g,82.8%)を得た。
【0033】
H NMR(400 MHz,CDCl)δ(ppm)= 2.3(m,1H),2.5(m,1H),2.6(s,3H),2.9(t,2H),3.5(s,3H),5.8(m,1H),6.8(m,1H),6.9(d,1H),7.0(s,1H),7.2(d,1H), 7.3(m,1H),7.4(d,1H),7.5(m,2H),7.8(d,1H),8.3(d,1H)。
【0034】
実施例3‐2
1‐フルオロナフタレンと(S)‐3‐メトキシメチルアミノ‐1‐(2‐チエニル)プロパン‐1‐オールとのナフチル化反応
【化14】

【表1】

(S)‐3‐メトキシメチルアミノ‐1‐(2‐チエニル)プロパン‐1‐オール(40Og,1.987モル)を室温下において DMSO(254.3g)中に溶解し、強かく拌しながらカリウムtert‐ブトキシド(245.3g,2.186モル)を加えた。次に、1‐フルオロナフタレン(1307g,7.948モル)を加え、この混合物を50℃で3〜4時間、かく拌した。ナフチル化反応が完了した後、反応混合物を周囲温度まで冷却し、水(800g)により急冷した。トルエン(1200mlx3)で抽出した後、有機層を合併し、濃縮した。HPLC分析法により収率を調べた結果82.0%(533.4g)であった。キラル性HPLC (DIACEL AD‐H,250 x 4.6 mm ID,(w/w) ヘキサン:IPA:DEA = 98:2:0.2,1 mL/分,UV 248 nm)で分析した結果、ee値は96.7%を示した。
【0035】
明らかに、1‐フルオロナフタレンの当量が増すにつれてee値(%)は増大した。さらには、この1‐フルオロナフタレンは抽出で除去し、回収して再利用することができた。従って、高当量の1‐フルオロナフタレンを用いることでラセミ化問題を緩和することができるため、共溶剤システムを使用する必要がない。
【実施例4】
【0036】
(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン(デュロキセチン)の合成
【化15】

実施例3‐1あるいは実施例3‐2中で得たN‐メチル‐N‐メトキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンをメタノール15mlに溶解し、ラネーニッケル0.67gと共にガラス製のオートクレーブに入れた。この溶液を50℃で12時間水素化反応させた。水素化反応が完了した後、反応混合物を濾過し、減圧下で溶剤を除去してオイル状の目的化合物(12.0g,HPLC分析結果は96.4%)を得た。
【0037】
H NMR(400 MHz,CDCl)δ(ppm)=2.2(m,1H),2.4(m,1H),2.4(s,3H),2.8(m,2H),5.8(m,1H),6.8(d,1H),6.9(m,1H),7.1(d,1H),7.2(d,1H), 7.3(d,1H),7.4(m,1H),7.5(m,2H),7.8(m,1H),8.3(m,1H)。
【0038】
上記の詳しい具体実施例の記述は、本発明の特徴と効果を開示するために説明するものにすぎず、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。本発明権利範囲は下記特許請求の範囲に従うこととなる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式(II)に示す(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物とハロナフタリンとの反応により、下記式(III)に示すN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物を合成する工程と、
【化1】

【化2】

(式(II)、(III)中、RはC1‐8アルキル基、又はC6‐10アリール基を示し、ハロゲンはF、Cl、Br、又はIを示す。)
前記化学式(III)に示す前記N‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物のN,O‐開裂反応により、下記式に示される(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンを合成する工程
とを含むことを特徴とする、(S)‐(+)‐N‐メチル‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミンの製造方法。
【化3】

【請求項2】
前記RはC1‐4アルキル基であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記Rはメチル基であることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記化学式(II)に示す(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物と前記ハロナフタレンとの反応工程においてカリウムアルコレート(KOR)とジメチルスルホキシド(DMSO)が使用され、且つ、RはC1‐6アルキル基を示すことを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記Rはtert−ブチル基であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ハロナフタレンの用量は、前記カリウムアルコレート(KOR)1.1当量当り、1.5〜7.0当量の範囲内であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記化学式(III)に示すN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物の前記N,O‐開裂反応は、ラネーニッケルの存在下、15〜80℃の範囲内の温度下で、アルコール中で水素化反応により行われることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
前記化学式(III)に示すN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物の前記N,O‐開裂反応は、LiAlH又は金属亜鉛を還元剤として用いる化学的還元により行われることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
下記化学式(III)に示すN‐メチル‐N‐ヒドロキシ‐3‐(1‐ナフチルオキシ)‐3‐(2‐チエニル)プロピルアミン化合物の製造方法であって、下記式(II)に示す(S)‐メチルヒドロキシアミノプロパノール化合物を、DMSO中でカリウムアルコレート(KOR)及びハロナフタリンと反応させる工程を含むことを特徴とする、製造方法。
【化4】

【化5】

(式(II)、(III)中、RはC1‐8アルキル基、又は C6‐10アリール基を示し、Rは C1‐6アルキル基を示し、ハロゲンはF、Cl、Br、又はIを示す。)
【請求項10】
前記RはC1‐4アルキル基であることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記Rはメチル基であることを特徴とする、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記Rはtert‐ブチル基であることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
前記ハロナフタレンの用量は、前記カリウムアルコレート(KOR)1.1当量当り、1.5〜7.0当量の範囲内であることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。


【公開番号】特開2010−215623(P2010−215623A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−54505(P2010−54505)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(510068046)旭富製藥科技股▲分▼有限公司 (2)
【Fターム(参考)】