説明

光学活性シアノヒドリンの製造方法

【解決手段】 アルデヒドまたはケトンとシアン化水素または反応系においてシアン化物イオンを生成する物質とを含む反応溶媒に、ヒドロキシニトリルリアーゼ酵素遺伝子を組込むことによって形質転換され、かつ当該酵素活性を有する遺伝子組換え微生物菌体を添加することを特徴とする、光学活性シアノヒドリンの製造方法。
【効果】 本発明によれば、ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子組換え菌により産生されるヒドロキシニトリルリアーゼを、抽出により該組換え菌体から取り出すことなく、組換え菌の菌体自体を使用して光学活性シアノヒドリンを簡便に効率よく合成することができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、光学活性シアノヒドリンの製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】光学活性シアノヒドリンは、ピレスロイド農薬製造や医薬合成の中間体として有用な光学活性有機合成中間体である。光学活性シアノヒドリンはこれまで様々な合成方法が提唱されているが、いずれも実用化の面で問題があり、工業的に直接合成するための方法は確立されていないのが現状である。例えば、ピレスロイド農薬製造中間体としての光学活性シアノヒドリンの合成方法としては、一旦ラセミ体のシアノヒドリンエステルを化学的に合成し、これを原料として酵素を使い不斉加水分解する方法が知られているが(特開昭61-5794 号、特開昭62-65688号)、本方法は製造工程が長いこと、不斉加水分解反応後に残った対掌体エステルを分解し、ラセミ化し、リサイクルするプロセスが必要であるなどの問題がある。
【0003】最近、アルデヒドまたはケトンと青酸とから直接的に光学活性シアノヒドリンのみを合成する酵素が報告されており、この酵素を用いた光学活性シアノヒドリンの合成が検討されている。例えば、アーモンド (Prunus amigdalus) 由来のR−ヒドロキシニトリルリアーゼ(EC4.1.2.10) 、アマ (Linum usitatissimum)由来のR−ヒドロキシニトリルリアーゼなどを用いてR−シアノヒドリンを合成する方法、モロコシ (Sorghum bicolor)由来のS−ヒドロキシニトリリルアーゼ(EC4.1.2.11) 、キャッサバ(Manihot esculenta)由来のS−ヒドロキシニトリルリアーゼ(EC4.1.2.37)、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis) のS−ヒドロキシニトリルリアーゼ(EC4.1.2.39)などを用いてS−シアノヒドリンを合成する方法があるが、これらの方法ではいずれも使用する酵素は、植物組織から抽出したものか、あるいは抽出した酵素を固定化させたものである。このように酵素を植物組織から抽出する方法は、抽出精製する操作が煩雑で労力がかかる上、酵素の損失も多く、工業的生産には適さない。また、抽出した酵素を固定化酵素として使用する方法では、固定化担体のコストが無視できないので、反応触媒を安価に得る必要のある工業的生産には不都合である。
【0004】一方、酵素遺伝子組換え菌を用いる方法としては、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis) のS−ヒドロキシニトリルリアーゼ(EC4.1.2.39)遺伝子組換え菌を用いる方法 (wo-98-30711)、キャッサバ(Manihot esculenta)由来のS−ヒドロキシニトリルリアーゼ(EC4.1.2.37)遺伝子組換え菌を用いる方法(Angrew. Chem. Int. Ed. Engl. 35, 437-439, 1996 ;Biotechnol. Bioeng. 53, 332-338,1997 ; 特開平9-227488号) などがあるが、これらはいずれも酵素を遺伝子組換え菌の菌体から抽出により取り出しており、上記の植物組織から酵素を分離抽出する方法と同様に抽出操作が非常に面倒である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、光学活性シアノヒドリンを安価に効率よく製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子組換え菌の菌体自体を使用することによっても、該組換え菌体から単離した酵素を用いる場合と同様に光学活性シアノヒドリンの合成が可能であることを初めて見出し、しかも、菌体を用いる場合には単離酵素を用いる場合に比べて酵素活性の安定性が高くなるという知見を得、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、アルデヒドまたはケトンとシアン化水素または反応系においてシアン化物イオンを生成する物質とを含む反応溶媒に、ヒドロキシニトリルリアーゼ酵素遺伝子を組込むことによって形質転換され、かつ当該酵素活性を有する遺伝子組換え微生物菌体を添加することを特徴とする、光学活性シアノヒドリンの製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明において、反応基質となるアルデヒドまたはケトンは、下記式(I) で表される。
【0009】
【化1】


【0010】上記式(I) において、R1 とR2 は、(i) 水素原子、(ii)置換または非置換の炭素数1〜18の線状または分枝鎖状の飽和アルキル基、または(iii) 置換または非置換の環員が5〜22の芳香族基である。ただし、R1 とR2 は同時に水素原子を表すことはない。
【0011】上記(ii)で、R1 とR2 が置換アルキル基の場合、置換基は、1個またはそれ以上のアミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜8のアルコキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、または N 、O、Sのヘテロ原子で置換されていてもよい炭素数22までの芳香属基である(ここで、置換基が環状置換基の場合は、それ自体が1個またはそれ以上のハロゲン、ヒドロキシ基、炭素数1〜8の線状若しくは分枝鎖状のアルキル基、炭素数2〜8の線状若しくは分枝鎖状のアルケニル基で置換されていてもよい。)。
【0012】上記(iii) で、芳香族基は、環員の4個までがN、Oおよび/またはSによって置換されているヘテロ芳香族基であってもよい。また、R1 とR2 が置換芳香族基の場合、置換基は、1個またはそれ以上のアミノ基、イミノ基、ヒドロキシ基、炭素数1〜8のアルコキシ基、アリルオキシ基、ハロゲン、カルボキシル基、炭素数22までの線状若しくは分枝鎖状の飽和若しくは不飽和のアルキル基である(ここで、一つの芳香族基が少なくとも2個の置換基により置換されてもよい)。
【0013】上記のアルデヒドまたはケトンを光学活性なシアノヒドリンに変換するためにはシアン化水素を原料として用いるが、シアン化水素の供給方法は、液体として供給する方法、気体として供給する方法のいずれをも採用できる。また、シアン化水素だけではなく、シアン化水素の水溶液であるシアン化水素酸(すなわち青酸)も全く同様に用いることができる。さらに、反応系へ添加することによってシアン化物イオン(CN-) を生じる物質であれば用いることができ、例えば、シアン化ナトリウムやシアン化カリウムなどのシアン化水素塩、アセトンシアンヒドリンなどのシアノヒドリン類などが挙げられる。反応の触媒としては、R体またはS体の光学活性なシアノヒドリンを合成しうる活性を有する酵素であるヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子を組込むことによって形質転換した微生物を培地に培養し、当該酵素生産を誘導させた組換え微生物菌体自体を用いる。
【0014】上記のヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子としては、具体的には、バラ科植物由来、例えばアーモンド (Prunus amigdalus) 由来のR−ヒドロキシニトリルリアーゼ(EC4.1.2.10) 、ブラックベリー(Prunus serotina) 由来のR−ヒドロキシニトリルリアーゼ、アマ科植物のアマ (Linum usitatissimum)由来のR−ヒドロキシニトリルリアーゼ、モロコシ (Sorghum bicolor)由来のS−ヒドロキシニトリルリアーゼ(EC4.2.2.11) 、キャッサバ(Manihot esculenta)由来のS−ヒドロキシニトリルリアーゼ(EC4.1.2.37)、パラゴムノキ(Hevea brasiliensis) のS−ヒドロキシニトリルリアーゼ(EC4.1.2.39)、キシメニア(Ximenia americana)由来のS−ヒドロキシニトリルリアーゼなどの各酵素をコードする遺伝子が挙げられる。
【0015】上記酵素遺伝子を組込むことによって形質転換する微生物としては、上記酵素遺伝子を組込むことが出来、かつ、当該酵素遺伝子を発現して酵素を生産することのできるものであれば特に限定されないが、たとえば酵母などの真核微生物、大腸菌などの原核微生物が挙げられる。組換え微生物菌体は反応の触媒として使用する際には、培地より回収した湿菌体をそのまま用いてもよいが、反応系内での分散性をよくするために過剰な水分を乾燥または脱水処理によって除いた乾燥菌体として用いることがより好ましい。
【0016】菌体の乾燥または脱水は、酵素活性を損なわない方法であれば特に制限はない。例えば、温風で乾燥する方法、減圧乾燥する方法、凍結乾燥する方法、スプレードライする方法、アセトンなど有機溶媒で乾燥する方法などが挙げられる。上記の乾燥菌体は、微粉末状にするか、またはバインダーを混合して造粒してもよい。あるいは、不溶性の担体と混合してもよいし、自体公知の方法にて固定化して固定化菌体としてもよい。反応の様式は、例えば、菌体を反応溶媒へ懸濁した状態で用いる場合には回分式または半回分式などが採用でき、菌体を充填槽に充填して用いる場合は液を流通させることができるので連続式が有利である。
【0017】反応溶媒としては、反応系内に水が大量に存在すると、酵素反応によって生成した光学活性シアノヒドリンのラセミ化が起こりやすくなったり、水に対する溶解度の小さいアルデヒドまたはケトンを原料として用いる場合には生産効率が低下するなどの点から、水に難溶または不溶である有機溶媒を主成分としてなる反応溶媒を用いることが好ましい。かかる有機溶媒としては、酵素反応による光学活性シアノヒドリンの合成反応に影響を与えないものであれば特に制限なく用いることができ、合成反応に用いる原料のアルデヒドまたはケトンの物性、生成物であるシアノヒドリンの物性に応じて適宜選択することができる。具体的には、ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和炭化水素系溶媒、例えば、ペンタン、ヘキサン、トルエン、キシレン、塩化メチレンなど;ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和アルコール系溶媒、例えば、イソプルピルアルコール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、n−アミルアルコールなど;ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和エーテル系溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソピルエーテル、ジブチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテルなど;ハロゲン化されていてもよい脂肪族または芳香族の直鎖状または分枝状または環状の飽和または不飽和エステル系溶媒、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなどが挙げられ、これらを単独で用いても、また複数を混合して用いてもよい。また、これらの有機溶媒は、pH7 以下の水系緩衝液、例えばクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液などで飽和させてもよい。
【0018】反応溶媒中のアルデヒドまたはケトンの濃度は0.01mM〜5Mの範囲が好ましく、アルデヒドまたはケトン1モルに対してシアン化水素または反応系においてシアン化物イオンを生成する物質1〜20モル、アルデヒドまたはケトンの濃度に対して1unit/mmol以上の酵素活性を示す量の前記組換え微生物菌体を使用する。なお、菌体の酵素活性は、菌体を水または緩衝液に懸濁させてから破砕し、遠心分離によって得た上澄み液を用い、DL-マンデロニトリルを基質として、基質が酵素によって分解されてベンズアルデヒドを生成する際の吸光度変化を249.6nmの波長で測定することによって算出できる。
【0019】反応溶媒のpHは、上記有機溶媒を水系緩衝液で飽和させずに用いる場合には調整する必要はないが、水系緩衝液で飽和させて用いる場合には、水系緩衝液のpHを3〜7の範囲、好ましくは3〜6の範囲に調整する。反応温度は酵素反応によらないラセミシアノヒドリンの副生を抑制するために、酵素活性が発揮される範囲でできる限り低いほうが好ましく、通常0〜40℃、好ましくは0〜30℃とする。
【0020】反応が終了したならば、反応液と菌体とを分離して反応生成液を得る。この反応生成液から光学活性シアノヒドリン以外の成分を分離することによって、目的の光学活性シアノヒドリンを得る。生成物の分離には、蒸留分離、カラムクロマトグラフィー分離、抽出分離など通常用いられる手段で行いうる。このとき、脱水剤などを添加して脱水処理をしたり、安定剤などを添加してもよい。
【0021】
【実施例】次に実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
〔実施例1〕 酵素遺伝子組換え菌の調製(1) 酵素遺伝子の取得キャッサバの葉を材料として、全mRNAの抽出を行なった。回収したmRNAを鋳型として、cDNA合成を行ない、キャッサバのcDNAライブラリーを作った。文献(Arch. Biochem. Biophys. 311, 496-502, 1994) より入手した、キャッサバ由来のS-ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子の配列情報を参考にして、下記PCRプライマーを合成した。
センスプライマー:GGG GAA TTC ATG GTA ACT GCA CAT TTT GTT CTG ATT C (配列番号1)
アンチセンスプライマー:GGG GTC GAC CTC ACG GAT TAG AAG CCG CCG (配列番号2)
【0022】これらのプライマーを使い、上記のcDNAを鋳型としてPCR(95℃0.5 分、55℃0.5 分、72℃1 分;計35サイクル)を行なったところ、S-ヒドロキシニトリルリアーゼをコードする遺伝子に相当する遺伝子を獲得した。遺伝子配列の解析を行なったところ、文献に示されている配列と一致した。
【0023】(2) 酵素遺伝子組換え菌の調製アンピシリン耐性遺伝子、酵母 2μプラスミド由来の配列、組換え酵母の選択マーカ遺伝子であるURA3の配列を含んでいる、大腸菌−酵母シャトルベクターであるYEp352プラスミドベクターに、GAPプロモーター、ターミネーターが組込まれているYEp352-GAPベクターを使い、(1) にて取得したS-ヒドロキシニトリルリアーゼのcDNAについて、該YEp352-GAPベクターのGAPプロモーターとターミネーターの間に、該cDNA配列を挿入して、酵母エピソーム型発現ベクターYEp352-GCを作成した。この発現ベクターYEp352-GC を使い、宿主酵母菌Saccharomyces cerevisiae Inv-Sc1株の形質転換を行なった。ウラシルを含まない下記組成を有する最少選択培地で組換えクローンを選抜した。
【0024】
【表1】


【0025】以上の操作によって取得した組換え酵母菌株(YEp352-GC-S2 株) を、下記の組成を有するYNBDCas 液体培地で24時間培養し、培養液を遠心分離して菌体を回収した。得られた湿菌体にアセトンを加え攪拌濾過し、アセトン乾燥菌体を得た。
【0026】
【表2】


【0027】湿菌体と乾燥菌体の酵素活性は以下のようにして測定した。菌体に0.5mm径のガラスビーズを0.1ml 添加し、液体窒素で凍結した。次いで、0.15Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH5)を0.2ml 添加し、攪拌によって菌体破砕をした。菌体破砕液を遠心分離することによって上澄み液を得た。この上澄み液を酵素活性測定に用いた。活性値は、DL-マンデロニトリルを基質として、基質が酵素によって分解されてベンズアルデヒドを生成する際の吸光度変化を249.6nmの波長で測定することによって算出し、1分間に基質1μmol を分解する活性を1unit とした。上記測定によれば、本組換え菌株(YEp352-GC-S2 株) の湿菌体の酵素活性は200 unit/g(湿重量)、乾燥菌体の酵素活性は1000 unit/g であった。
【0028】〔実施例2〕ジイソプロピルエーテル2.5ml に、実施例1で調製したアセトン乾燥菌体120mg 、ベンズアルデヒド0.5mmol、青酸56.6μl を添加し、室温下(20〜25℃) で攪拌しつつ合成反応を行った。24時間後に反応液を下記条件下で液体クロマトグラフィーで分析した結果、転換率89.7% で、光学純度94.1%ee のS-マンデロニトリルが生成されていた。
クロマトグラフィー分析条件カラム:ダイセル化学製 Chiralcel-OJカラム温度:25℃溶離液:n−ヘキサン:イソプロピルアルコール=80:20流速:0.7ml/min検出:■UV検出器 波長254nm ■施光度検出器
【0029】〔実施例3〕実施例2で用いた乾燥菌体を反応液より分離し、ジイソプロピルエーテルで洗浄した。ジイソプロピルエーテル2.5ml に、前記洗浄菌体120mg 、ベンズアルデヒド0.5mmol、青酸56.6μl を添加し、室温下(20〜25℃) で攪拌しつつ合成反応を行った。24時間後に反応液を液体クロマトグラフィー(同上)で分析した結果、転換率71% で、光学純度93.6%ee のS-マンデロニトリルが生成されていた。同じ条件で、菌体のみをリサイクルして反応を繰り返したところ、計5回の反応を行った結果においても菌体の酵素活性の低下は見られなかった。
【0030】〔比較例1〕ジイソプロピルエーテル2.5ml に、固定化酵素〔酵素遺伝子組換え大腸菌によって生産された酵素を部分精製して得た酵素液(491.3unit/ml)75 μl とアビセルセルロース75mgを混合して調製〕、3−フェノキシベンズアルデヒド0.5mmmol、青酸55.6mgを添加し、室温下(20 〜25℃) で攪拌しつつ合成反応を行った。24時間後に反応液を液体クロマトグラフィー(同上)で分析した結果、転換率62%で、光学純度92%ee のS-3-フェノキシベンズアルデヒドシアノヒドリンが生成されていたが、その後、同じ固定化酵素をリサイクルして同様にして合成反応を行ったところ、2回目の分析結果では、転換率24% で、光学純度22%ee と低下し、3回目においては酵素活性が見られなくなった。
【0031】〔実施例4〕実施例1で回収した組換え酵母菌株(YEp352-GC-S2 株) の湿菌体を、凍結乾燥することによって凍結乾燥菌体を得た。ジイソプロピルエーテル2.5ml に、前記凍結乾燥菌体120mg 、ベンズアルデヒド0.5mmol、青酸56.6μl を添加し、室温下(20〜25℃) で攪拌しつつ合成反応を行った。45時間後に反応液を液体クロマトグラフィー(同上) で分析した結果、転換率65% で、光学純度65.1%ee のS-マンデロニトリルが生成されていた。
【0032】〔実施例5〕pH4の0.15Mクエン酸ナトリウム緩衝液で飽和させたジイソプロピルエーテル2.5mlに、実施例1で調製したアセトン乾燥菌体120mg、3−フェノキシベンズアルデヒド1mmol、青酸300μlを添加し、室温下(20〜25℃) で攪拌しつつ合成反応を行った。60時間後に反応液を液体クロマトグラフィー(同上) で分析した結果、96.9% の転換率で、光学純度が58.6%ee のS-3-フェノキシベンズアルデヒドシアノヒドリンが生成されていた。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、ヒドロキシニトリルリアーゼ遺伝子組換え菌により産生されるヒドロキシニトリルリアーゼを、抽出により該組換え菌体から取り出すことなく、組換え菌の菌体自体を使用して光学活性シアノヒドリンを簡便に効率よく合成することができる。
【0034】
【配列表】
SEQUENCE LISTING <110> NIPPON SHOKUBAI CO., LTD. <120> Methods for preparing optically active cyanohydrins <130> P98-0672 <160> 4 <170> Patent in Ver. 2.0 <210> 1 <211> 37<212> DNA <213> Artificial Sequence <400> 1 ggggaattca tggtaactgc acattttgtt ctgattc 37 <210> 2 <211> 30<212> DNA <213> Artificial Sequence <400> 2 ggggtcgacc tcacggatta gaagccgccg 30

【特許請求の範囲】
【請求項1】 アルデヒドまたはケトンとシアン化水素または反応系においてシアン化物イオンを生成する物質とを含む反応溶媒に、ヒドロキシニトリルリアーゼ酵素遺伝子を組込むことによって形質転換され、かつ当該酵素活性を有する遺伝子組換え微生物菌体を添加することを特徴とする、光学活性シアノヒドリンの製造方法。
【請求項2】 遺伝子組換え微生物菌体が、菌体培養後に回収した菌体を乾燥または脱水処理して得られた菌体であることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】 反応溶媒として、水に難溶または不溶である有機溶媒を用いることを特徴とする、請求項1記載の製造方法。

【公開番号】特開2000−217590(P2000−217590A)
【公開日】平成12年8月8日(2000.8.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−25640
【出願日】平成11年2月3日(1999.2.3)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】