説明

光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法

【課題】 医薬原料として重要な光学活性3−アミノピペリジン誘導体を安価で入手容易な原料を使用し、工業的に適した方法で製造する方法を提供する。
【解決手段】
光学活性1−フェニルエチルアミンを光学分割剤として用い、含水溶媒中でニペコチン酸誘導体のラセミ混合物を光学分割して光学活性ニペコチン酸誘導体を製造する工程を有する一般式
【化1】


(*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性3−アミノピペリジンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬原料として重要な光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法に関するものである。さらに、本発明は、光学活性ニペコチン酸誘導体を使用した光学活性ニペコタミド誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性ニペコチン酸や光学活性3−アミノピペリジンのようなピペリジン骨格を有する化合物は、医薬等産業上有用な化合物として知られている。光学活性ニペコチン酸あるいは光学活性ニペコチン酸誘導体を製造する方法としては、例えば、
(1)ニペコチン酸を(S)−カンファースルホン酸を用いて光学分割して(S)−ニペコチン酸を得た後、二炭酸ジtert−ブチルを作用させて(S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸を製造する方法(特許文献1参照)、
(2)ニペコチン酸エチルをL−酒石酸で光学分割した後、N位にベンジルオキシカルボニル基を導入する。次いでアルカリ加水分解して(R)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコチン酸を製造する方法(特許文献2参照)、
(3)N−ベンジルニペコチン酸エチルを不斉的に加水分解する酵素を用いて光学活性N−ベンジルニペコチン酸を製造する方法(特許文献3参照)などが知られている。
【0003】
しかしながら、上記(1)の方法は、光学分割工程の収率が非常に低い点、また上記(2)の方法は、出発原料が高価な点、また上記(3)の方法は、基質特異的な酵素を使用する点、その酵素の産生能を有する微生物を培養するための専用設備が必要となる点、とそれぞれ問題を有している。
【0004】
また、光学活性3−アミノピペリジンあるいは光学活性3−アミノピペリジン誘導体を製造する方法としては、例えば、
(4)ニペコタミドを酵素分割し、1位に保護基を導入後、続いてホフマン転位をおこなう。次いで3位に保護基を導入してから、または保護基を導入せずにそのまま脱保護することにより、(R)−3−アミノピペリジンを製造する方法(特許文献4参照)、
(5)L−オルニチン塩酸塩をメチルエステル化し、これを環化させて(S)−3−アミノピペリドンを得、次いで水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、(S)−3−アミノピペリジンを製造する方法(非特許文献1参照)、
(6)3−アミノピリジンをロジウム触媒の存在下、水素と接触させることにより、3−アミノピペリジンを得、次いでジベンゾイル−D−酒石酸を用いて光学分割することで(R)−3−アミノピペリジンを製造する方法(特許文献5参照)、
(7)上記(2)の方法で得た(R)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコチン酸にジフェニルリン酸アジドを用いてクルチウス転位をおこない、次いで1及び3位をそれぞれ脱保護することにより、(R)−3−アミノピペリジンを製造する方法(特許文献2参照)、
(8)1−ベンジル−3−アセトアミドピペリジンを微生物処理により不斉的に加水分解することで(S)−1−ベンジル−3−アミノピペリジンを製造する方法(特許文献6参照)、
(9)1−ベンジル−3−アミノピペリジンをジベンゾイル−L−酒石酸を用いて光学分割することで(S)−1−ベンジル−3−アミノピペリジンを製造する方法(特許文献7参照)
などが知られている。
【0005】
しかしながら、上記(4)の方法は、基質特異的な酵素を使用する点、出発原料のラセミ体が高価である点に工業的な問題を抱えている。また、上記(5)の方法は、高価な出発原料を用いている点と、安全上取り扱いの困難な水素化リチウムアルミニウムを使用する点に問題を有する。また、上記(6)の方法は、高価なロジウム触媒を使用している点と、高い水素圧に耐えうる専用設備が必要な点で、製造コストが高く、工業的に問題がある方法である。また、上記(7)の方法は、爆発性を有するアジド中間体を経由するクルチウス転位反応をおこなっているため、安全上の大きな問題を有している。また、上記(8)の方法は、微生物によって基質が限定される点、且つ管理・維持して使用するための専用設備が必要となる点、出発原料のラセミ体が工業的に入手容易でない点に問題を有する。また、上記(9)の方法は、高価な出発原料、分割剤であるジベンゾイル−L−酒石酸を用いており、製造コストが高く、工業的に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2003/024477号
【特許文献2】国際公開第2003/004496号
【特許文献3】特開2007−117034号公報
【特許文献4】国際公開第2008/102720号
【特許文献5】国際公開第2007/075630号
【特許文献6】特開2007−252238号公報
【特許文献7】特開平7−330732号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】バイオオーガニック&メディシナル・ケミストリー(2006),14,2131−2150
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、医薬原料として重要な光学活性ニペコチン酸誘導体を、安価で入手容易な原料を使用して工業的に適した製造方法を提供すること、およびその製造方法を用いて光学活性3−アミノピペリジン誘導体を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光学活性1−フェニルエチルアミンを光学分割剤として用い、含水溶媒中で、一般式
【0010】
【化1】

【0011】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示す)で表されるニペコチン酸誘導体のラセミ体混合物を光学分割して、一般式
【0012】
【化2】

【0013】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性ニペコチン酸誘導体を製造する光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法である。
【0014】
本発明は、上記の方法により製造された光学活性ニペコチン酸誘導体を非プロトン性溶媒中でアンモニア水を使用してアミド化して、一般式
【0015】
【化3】

【0016】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性ニペコタミド誘導体を製造するニペコタミド誘導体の製造方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、医薬原料として重要な光学活性ニペコチン酸誘導体を安価で入手容易な原料から、工業的に適した方法で製造することが可能である。
【0018】
本発明の光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法で製造された光学活性ニペコチン酸誘導体は、好ましくは、光学活性ニペコチン酸、および/または、光学活性ニペコチン酸エステルの製造に使用することができる。
【0019】
また、本発明の光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法で製造された光学活性ニペコチン酸誘導体は、光学活性ニペコタミド誘導体の製造に使用することができる。光学活性ニペコタミド誘導体から、医薬原料として重要な光学活性3−アミノピペリジン誘導体、光学活性3−アミノピペリジンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0021】
本発明は、光学活性1−フェニルエチルアミンを光学分割剤として用い、含水溶媒中で、一般式
【0022】
【化4】

【0023】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示す)で表されるニペコチン酸誘導体のラセミ体混合物を光学分割して、一般式
【0024】
【化5】

【0025】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性ニペコチン酸誘導体を製造する光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法である。Rは、炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられるが、好ましくはtert−ブチル基である。アラルキル基としては、ベンジル基、p−クロロフェニルメチル基などが挙げられるが、好ましくはベンジル基である。
【0026】
まず、光学分割について説明する。
【0027】
本発明で用いる光学分割剤は、光学活性1−フェニルエチルアミンである。光学活性1−フェニルエチルアミンは、好ましくは、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミンが挙げられる。(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンを用いて光学活性ニペコチン酸誘導体・(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン塩を形成させた場合、難溶性塩から(R)−ニペコチン酸誘導体を得ることができる。一方、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミンを用いた場合は、同様にして(S)−ニペコチン酸誘導体を得ることができる。
【0028】
光学分割剤の使用量は、ニペコチン酸誘導体に対して、好ましくは0.5〜1.5モル倍、さらに好ましくは0.6〜1.2モル倍である。
【0029】
含水溶媒としては、溶媒における水の割合が50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは80重量%以上であり、特に好ましくは溶媒が水のみの場合である。含水溶媒の内、水以外の成分として各種の有機溶媒を用いることができる。水以外の成分の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒等が挙げられるが、好ましくはエタノール、イソプロパノールである。
【0030】
本発明では、一般式
【0031】
【化6】

【0032】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示す)で表されるニペコチン酸誘導体のラセミ体混合物を光学分割する。ここで、ラセミ体混合物とは、一般的には(R)体と(S)体が等量存在する混合物を指すが、一方が50%以上存在する場合、例えば、(R)/(S)=55/45,あるいは90/10のような場合も含む。
【0033】
ニペコチン酸誘導体は、例えば、1−メトキシカルボニルニペコチン酸、1−エトキシカルボニルニペコチン酸、1−プロポキシカルボニルニペコチン酸、1−イソプロポキシカルボニルニペコチン酸、1−ブトキシカルボニルニペコチン酸、1−イソブトキシカルボニルニペコチン酸、1−sec−ブトキシカルボニルニペコチン酸、1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸、1−ベンジルオキシカルボニルニペコチン酸、1−p−クロロフェニルメトキシカルボニルニペコチン酸などが挙げられる。ニペコチン酸誘導体は、好ましくは1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸、1−ベンジルオキシカルボニルニペコチン酸である。
【0034】
本発明により得られる一般式
【0035】
【化7】

【0036】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性ニペコチン酸誘導体は、例えば、(R)−1−メトキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−エトキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−プロポキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−イソプロポキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−ブトキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−イソブトキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−sec−ブトキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−メトキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−エトキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−プロポキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−イソプロポキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−ブトキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−イソブトキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−sec−ブトキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−p−クロロフェニルメトキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−p−クロロフェニルメトキシカルボニルニペコチン酸などが挙げられるが、好ましくは(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸、(R)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコチン酸、(S)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコチン酸である。
【0037】
本発明の光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法では、塩基性添加剤を加えて、ニペコチン酸誘導体のラセミ体混合物を光学分割することが好ましい。塩基性添加剤を使用することにより、光学分割剤の使用量を削減することができる。本発明では、塩基性添加剤を用いた場合は、塩基性添加剤を用いない場合と比較して、ニペコチン酸誘導体の濃度を高めたまま光学純度の高いジアステレオマー塩を得ることができる。塩基性添加剤を用いた場合は、ニペコチン酸誘導体の濃度を高めることができる。このことは、1缶当たりの仕込量並びに生産量を向上させる点、また、廃液を削減できる点で工業的に有利である。
【0038】
塩基性添加剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基等が挙げられるが、好ましくは、水酸化ナトリウム、トリエチルアミン、さらに好ましくは水酸化ナトリウムである。これら塩基性添加剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
塩基性添加剤の使用量は、ニペコチン酸誘導体に対して、光学分割剤使用量と合わせて好ましくは0.5〜1.5モル倍、さらに好ましくは0.8〜1.2モル倍である。
【0040】
塩基性添加剤の使用割合によって適切な溶媒使用量は異なる。
【0041】
塩基性添加剤をしないとき、溶媒使用量は、ニペコチン酸誘導体に対して、好ましくは、6〜9重量倍であり、より好ましくは8〜9重量倍である。
【0042】
塩基性添加剤を使用するときは、例えば、光学分割剤/塩基性添加剤=0.8/(0.15〜0.25)(重量比)のとき、溶媒使用量は、ニペコチン酸誘導体に対して、好ましくは5〜9重量倍であり、より好ましくは5〜6重量倍である。光学分割剤/塩基性添加剤=0.6/(0.35〜0.45)(重量比)のとき、溶媒使用量は、ニペコチン酸誘導体に対して、好ましくは2〜9重量倍であり、より好ましくは2〜3重量倍である。
【0043】
本発明における混合順序は、ニペコチン酸誘導体、光学分割剤、塩基性添加剤を同時に仕込んでもよく、また順番に仕込んでもよい。操作性の点から有利な方法を採用することができる。
【0044】
本発明の昇温熟成の温度は、好ましくは40〜100℃であり、さらに好ましくは70〜80℃である。反応系は、均一溶液、スラリーのいずれであってもよい。本発明は、均一溶液で実施することが好ましい。均一溶液の場合、降温して種晶を添加し十分に熟成してから、さらに降温する。その温度は、好ましくは0〜40℃であり、さらに好ましくは5〜30℃である。スラリーの場合、溶媒還流温度まで昇温し、その温度での熟成時間を十分に取る必要がある。熟成時間は、好ましくは30分〜12時間、さらに好ましくは、1〜12時間である。
【0045】
このようにして得られた光学活性ニペコチン酸誘導体・光学分割剤の塩は、再結晶をおこなうと、99.0%d.e.以上の高い光学純度の塩を得ることができる。また、リサイクル操作を考慮すると、2回の光学分割に使用する溶媒は同一組成にすることが好ましい。そうすれば、リサイクル使用時に溶媒組成の調整が不要となり、簡便且つ迅速に操作がおこなえ、工業プロセスにおいては極めて有意義である。
【0046】
析出したジアステレオマー塩は、ろ過操作により、母液中のジアステレオマー塩と分離することができる。本工程で得られたジアステレオマー塩はそのまま次工程に用いてもよいが、必要に応じて解塩をおこなってもよい。一般的に、結晶として単離したジアステレオマー塩は、水中で塩基によってアルカリ性にした後、トルエン、酢酸エチル、ヘキサン等の一般的な有機溶媒での洗浄により光学分割剤を除去し、次いで残った水層に酸を加えて酸析した後、最後に固液分離することにより光学活性ニペコチン酸誘導体を取得することができる。
【0047】
本発明の光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法では、好ましくは、光学活性1−フェニルエチルアミンと、1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸は、下記構造式の
【0048】
【化8】

【0049】
で表される(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとのジアステレオマー塩、および/または、
【0050】
【化9】

【0051】
で表される(S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸と(S)−(−)−1−フェニルエチルアミンとのジアステレオマー塩となる。
【0052】
本発明の光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法で製造された光学活性ニペコチン酸誘導体は、好ましくは、光学活性ニペコチン酸、および/または、光学活性ニペコチン酸エステルの製造に使用することができる。また、本発明の光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法で製造された光学活性ニペコチン酸誘導体は、下記に示す光学活性ニペコタミド誘導体の製造に使用することができる。
【0053】
本発明では、一般式
【0054】
【化10】

【0055】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示す)で表されるニペコチン酸誘導体のラセミ混合物は、好ましくは、ラセミ体混合物のニペコチン酸をカルバメート化することにより、製造する。ラセミ体混合物のニペコチン酸の製造方法は、例えば、J.Org.Chem.(1963),28(4),1135記載の方法により、ニコチン酸を核還元したり、米国特許出願公開第4910312号記載の方法によりニペコチン酸エチルをアルカリ加水分解して製造したものを用いてもよい。
【0056】
カルバメート化は、例えば、クロロ炭酸エステル等のハロ炭酸エステルを用いておこなわれる。ここでハロ炭酸エステルにおけるエステル部分は、好ましくは、一般式
【0057】
【化11】

【0058】
のニペコチン酸誘導体におけるRに対応する。例えば、Rがエチル基の場合、ハロ炭酸エステルとしてハロ炭酸エチルを用いればよい。また、Rがtert−ブチル基の場合は、二炭酸ジtert−ブチルを用いてカルバメート化してもよい。
【0059】
カルバメート化剤の使用量としては、ラセミ体混合物のニペコチン酸に対して、好ましくは0.5〜5モル倍であり、さらに好ましくは1〜2モル倍である。
【0060】
反応溶媒は、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール等のアルコール溶媒;テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族溶媒等が挙げられるが、好ましくは水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリルである。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は、ラセミ体混合物のニペコチン酸に対して、好ましくは50重量倍以下、さらに好ましくは20重量倍以下である。
【0061】
カルバメート化反応は塩基の存在下で実施してもよい。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基等が挙げられるが、好ましくは水酸化ナトリウム、トリエチルアミンである。これら塩基は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。塩基の使用量は、ラセミ体混合物のニペコチン酸に対して、好ましくは0.1〜10モル倍、さらに好ましくは0.1〜2モル倍である。
【0062】
カルバメート化反応の反応温度は、好ましくは−20〜80℃であり、さらに好ましくは0〜50℃である。カルバメート化反応の反応時間は、好ましくは30分〜12時間、さらに好ましくは、3〜10時間である。
【0063】
カルバメート化反応における混合順序は、ラセミ体混合物のニペコチン酸に塩基とカルバメート化剤を同時添加する方法や、ラセミ体混合物のニペコチン酸と塩基との混合物中にカルバメート化剤を添加する方法が好ましい。
【0064】
カルバメート化反応で得られた反応液はそのまま次の反応に用いてもよいが、必要に応じて後処理をおこなってもよい。後処理としては、反応液から生成物を取得するための抽出、濃縮、ろ過、水洗等の一般的な単離処理をおこなえばよい。このようにして得られた目的物は、次工程に使用できる十分な純度を有している。
【0065】
本発明のニペコタミド誘導体の製造方法では、一般式
【0066】
【化12】

【0067】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性ニペコチン酸誘導体を非プロトン性溶媒中でアンモニア水を使用してアミド化して、一般式
【0068】
【化13】

【0069】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性ニペコタミド誘導体を製造する。
【0070】
本発明のニペコタミド誘導体の製造方法では、光学活性ニペコタミド誘導体は、例えば、(R)−1−メトキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−エトキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−プロポキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−イソプロポキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−ブトキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−イソブトキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−sec−ブトキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−メトキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−エトキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−プロポキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−イソプロポキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−ブトキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−イソブトキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−sec−ブトキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−p−クロロフェニルメトキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−p−クロロフェニルメトキシカルボニルニペコタミドなどが挙げられるが、好ましくは(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミド、(R)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコタミド、(S)−1−ベンジルオキシカルボニルニペコタミドである。
【0071】
本発明のニペコタミド誘導体の製造方法では、アミン源としてはアンモニア水を使用することにより、滴下によって系内に導入することが可能であり、重量ベースで仕込み量を管理できるので作業し易い。また、反応溶媒としては、ハロゲン溶媒を避けて非プロトン性溶媒を使用しているので、生産上有利である。
【0072】
本発明のニペコタミド誘導体の製造方法で用いる非プロトン性溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。非プロトン性溶媒は、好ましくは、テトラヒドロフランである。
【0073】
非プロトン性溶媒の使用量は、光学活性ニペコチン酸誘導体に対して、好ましくは30重量倍以下、さらに好ましくは10重量倍以下である。
【0074】
本発明のニペコタミド誘導体の製造方法では、ハロ炭酸エステルを使用する。ハロ炭酸エステルとしては、例えば、クロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、クロロ炭酸イソプロピル、クロロ炭酸フェニル、クロロ炭酸ベンジル等が挙げられ、好ましくはクロロ炭酸メチル、クロロ炭酸エチル、さらに好ましくはクロロ炭酸エチルである。
【0075】
ハロ炭酸エステルの使用量としては、光学活性ニペコチン酸誘導体に対して、好ましくは0.5〜1.5モル倍、さらに好ましくは0.6〜1.2モル倍である。
【0076】
本発明のニペコタミド誘導体の製造方法では、好ましくは、塩基を使用する。塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸水素塩;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の金属炭酸塩;トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアミノピリジン等の有機塩基等が挙げられるが、溶媒に対して溶解していることが望ましく、好ましくは有機塩基、さらに好ましくはトリエチルアミンである。
【0077】
塩基の使用量としては、光学活性ニペコチン酸誘導体に対して、好ましくは0.5〜5モル倍、さらに好ましくは1〜2モル倍である。
【0078】
アンモニア水としては、工業的に入手可能なアンモニア濃度のものを使用することができ、好ましくは10〜35重量%、さらに好ましくは20〜30重量%である。
【0079】
本工程の反応温度は、好ましくは−20〜40℃であり、さらに好ましくは−10〜30℃である。本工程の反応時間は特に制限されないが、好ましくは30分〜5時間、さらに好ましくは、30分〜3時間である。
【0080】
本発明のニペコタミド誘導体の製造方法では、好ましくは、収率向上の目的でハロ炭酸エステルを添加することができる。本発明のニペコタミド誘導体の製造方法では、好ましくは、ハロ炭酸エステルは、光学活性ニペコチン酸誘導体に作用して、活性な中間体になる。添加するハロ炭酸エステルの使用量としては、光学活性ニペコチン酸誘導体に対して、好ましくは0.1〜1.5モル倍、さらに好ましくは0.3〜0.8モル倍である。
【0081】
本発明のニペコタミド誘導体の製造方法における混合順序は、好ましくは、光学活性ニペコチン酸誘導体と塩基との混合物中にハロ炭酸エステルを添加して混合酸無水物を形成し、次いでアンモニア水を添加することで目的物を含む反応液を得る。
【0082】
本発明のニペコタミド誘導体の製造方法で得られた反応液はそのまま次工程に用いてもよいが、必要に応じて後処理をおこなってもよい。後処理としては、反応液から生成物を取得するための抽出、濃縮、ろ過、水洗等の一般的な単離処理をおこなえばよい。このようにして得られた目的物は、次工程に使用できる十分な純度を有しているが、次工程の収率、あるいは次工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、再結晶;抽出精製;蒸留;活性炭等の吸着処理;カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製方法により純度を高めてもよい。
【0083】
本発明の光学活性ニペコタミド誘導体の製造方法で製造された光学活性ニペコタミド誘導体は、好ましくは、下記に示す光学活性3−アミノピペリジン誘導体の製造に使用することできる。
【0084】
光学活性ニペコタミド誘導体は、好ましくは、水中でホフマン転位して、一般式
【0085】
【化14】

【0086】
(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)光学活性3−アミノピペリジン誘導体とすることができる。
【0087】
光学活性3−アミノピペリジン誘導体としては、例えば、(R)−1−メトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−エトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−プロポキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−イソプロポキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−イソブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−sec−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−メトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−エトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−プロポキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−イソプロポキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−イソブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−sec−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−ベンジルオキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−p−クロロフェニルメトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−ベンジルオキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−p−クロロフェニルメトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−メトキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩、(R)−1−エトキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩、(R)−1−イソプロポキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩、(R)−1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩、(S)−1−メトキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩、(S)−1−エトキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩、(S)−1−イソプロポキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩、(S)−1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩、(R)−1−ベンジルオキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩、(S)−1−ベンジルオキシカルボニル−3−アミノピペリジン塩酸塩などが挙げられる。光学活性3−アミノピペリジン誘導体は、好ましくは(R)−1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(R)−1−ベンジルオキシカルボニル−3−アミノピペリジン、(S)−1−ベンジルオキシカルボニル−3−アミノピペリジンである。
【0088】
ホフマン転位は、好ましくは、酸化剤と塩基を用いておこなわれる。
【0089】
酸化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、塩素、臭素等が挙げられ、好ましくは、次亜塩素酸ナトリウムである。次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合は、工業的に利用可能な水溶液を用いるとよい。その水溶液の濃度としては、好ましくは5〜20重量%である。酸化剤の使用量は、光学活性ニペコタミド誘導体に対して、好ましくは1〜10モル倍、さらに好ましくは1〜3モル倍である。
【0090】
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属水酸化物;ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムメトキシド、 カリウムエトキシド、カリウムtert−ブトキシド等の金属アルコキシド等が挙げられるが、好ましくは水酸化ナトリウムである。塩基の使用量は、光学活性ニペコタミド誘導体に対して、好ましくは0.5〜10モル倍、さらに好ましくは1〜5モル倍である。
【0091】
ホフマン転位の反応溶媒としては、水が好ましい。溶媒の使用量としては、光学活性ニペコタミド誘導体に対して、好ましくは50重量倍以下、さらに好ましくは20重量倍以下である。
【0092】
ホフマン転位の反応温度は、好ましくは−20〜80℃であり、さらに好ましくは−10〜50℃である。本工程の反応時間は特に制限されないが、好ましくは30分〜48時間、さらに好ましくは、1〜24時間である。
【0093】
ホフマン転位における混合順序は、光学活性ニペコタミド誘導体、塩基の混合物中に酸化剤を添加する方法が好ましい。
【0094】
本反応で得られた反応液はそのまま次反応に用いてもよいが、必要に応じて後処理をおこなってもよい。後処理としては、反応液から生成物を取得するための抽出、濃縮、ろ過、水洗等の一般的な単離処理をおこなえばよい。例えば、反応終了後の反応液にトルエン、酢酸エチル、ヘキサン等の一般的な抽出溶媒を加えて抽出操作をおこない、得られた抽出液を減圧濃縮して、反応溶媒及び抽出溶媒を留去することで目的物が得られる。このようにして得られた目的物は、次工程に使用できる十分な純度を有しているが、次工程の収率、あるいは次工程で得られる化合物の純度をさらに高める目的で、再結晶;抽出精製;蒸留;活性炭等の吸着処理;カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製方法により純度を高めてもよい。
【0095】
光学活性3−アミノピペリジン誘導体は、好ましくは、酸で処理することにより、
一般式
【0096】
【化15】

【0097】
(*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性3−アミノピペリジンを製造することができる。
【0098】
光学活性3−アミノピペリジンとしては、例えば、(R)−3−アミノピペリジン、(S)−3−アミノピペリジンのフリー体;(R)−3−アミノピペリジン一塩酸塩、(S)−3−アミノピペリジン一塩酸塩、(R)−3−アミノピペリジン二塩酸塩、(S)−3−アミノピペリジン二塩酸塩、(R)−3−アミノピペリジン二臭酸塩、(S)−3−アミノピペリジン二臭酸塩、(R)−3−アミノピペリジン硫酸塩、(S)−3−アミノピペリジン硫酸塩、(R)−3−アミノピペリジン二硝酸塩、(S)−3−アミノピペリジン二硝酸塩等の鉱酸塩;(R)−3−アミノピペリジン二トリフルオロ酢酸塩、(S)−3−アミノピペリジン二トリフルオロ酢酸塩、(R)−3−アミノピペリジンシュウ酸塩、(S)−3−アミノピペリジンシュウ酸塩、(R)−3−アミノピペリジンコハク酸塩、(S)−3−アミノピペリジンコハク酸塩等のカルボン酸塩等が挙げられる。
【0099】
酸としては、例えば、塩化水素、臭化水素、硫酸、硝酸等の鉱酸;トリフルオロ酢酸、シュウ酸、コハク酸等が挙げられ、好ましくは、塩化水素である。塩化水素を用いる場合は、工業的に利用可能な水溶液を用いるとよい。その水溶液の濃度としては、好ましくは1〜50重量%である。
【0100】
酸の使用量としては、光学活性3−アミノピペリジン誘導体に対して、好ましくは1〜20モル倍、さらに好ましくは2〜10モル倍である。
【0101】
反応溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール溶媒;テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒が挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は、光学活性3−アミノピペリジン誘導体に対して、好ましくは50重量倍以下、さらに好ましくは20重量倍以下である。
【0102】
本反応の反応温度は、好ましくは10〜100℃であり、さらに好ましくは20〜80℃である。本工程の反応時間は特に制限されないが、好ましくは1〜20時間、さらに好ましくは、2〜10時間である。
【0103】
反応後の処理としては、反応液から目的物を取得するための抽出、濃縮、ろ過、有機溶媒洗等の一般的な単離処理をおこなえばよい。例えば、酸として塩化水素を用いた場合、反応液を減圧濃縮して、反応溶媒を留去した後、残渣に有機溶媒を加えて晶析することで塩酸塩として目的物が得られる。
【0104】
晶析溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、1−ブタノール等のアルコール溶媒;テトラヒドロフラン、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル溶媒;アセトニトリル等のニトリル溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン溶媒等が挙げられる。これら溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合してもよい。
【0105】
このようにして得られた目的物は、さらに純度を高める目的で、再結晶;抽出精製;蒸留;活性炭等の吸着処理;カラムクロマトグラフィー等の一般的な精製方法により純度を高めてもよい。
【実施例】
【0106】
以下実施例により本発明を説明する。
【0107】
実施例中の化学純度、光学純度は以下に示す方法で測定した。
【0108】
<1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸、1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミドの化学純度分析法>
サンプル調製
25mLメスフラスコに各試料約20mgを精秤し、50%アセトニトリル水溶液で標線まで希釈して溶解する。
【0109】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件
カラム:YMC−Pack ODS−A 4.6mmφ×250mm,5μm(YMC)
移動相:A:20mMリン酸二水素ナトリウム水溶液(リン酸でpH2.8に調製)
B:アセトニトリル
組成プログラム:A/B=90/10(0〜5分)→A/B=30/70(20分)→A/B=30/70(30分)
流速:1.0mL/分
カラム温度:40℃
測定波長:210nm
サンプル量:10μL
保持時間:18.1分(1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸)
16.0分(1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミド)。
【0110】
<1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸の光学純度分析法>
サンプル調製
25mLメスフラスコに試料誘導体約20mgを精秤し、50%アセトニトリル水溶液で標線まで希釈して溶解する。
【0111】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件
カラム:CHIRALCELL OD−RH 4.6mmφ×250mm(ダイセル化学)
移動相:20mMリン酸二水素ナトリウム水溶液(リン酸でpH2.8に調製)/アセトニトリル=80/20(v/v)
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
測定波長:210nm
サンプル量:10μL
保持時間:32.1分((S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸)
34.0分((R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸)。
【0112】
<1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミドの光学純度分析法>
サンプル調製
25mLメスフラスコに試料約20mgを精秤し、50%アセトニトリル水溶液で標線まで希釈して溶解する。
【0113】
HPLC分析条件
カラム:CHIRALCELL OD−RH 4.6mmφ×250mm(ダイセル化学)
移動相:20mMリン酸二水素ナトリウム水溶液(リン酸でpH2.8に調製)/アセトニトリル=85/15(v/v)
流速:0.5mL/分
カラム温度:40℃
測定波長:210nm
サンプル量:10μL
保持時間:26.6分((S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミド)
28.4分((R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミド)。
【0114】
<1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジンの化学純度分析法>
サンプル調製
10mLサンプル瓶に試料約100mgを精秤し、900mgのアセトニトリルを加えて溶解する。
【0115】
GC分析条件
カラム:Inert Cap1 0.25mmφ×60m,0.40μm(GL Sciences)
温度:カラム:60℃、注入口:200℃、検出器:270℃
昇温プログラム:60℃(10分)→5℃/分→260℃(10分)
検出器:FID
カラム流量:2.2mL/分
スプリット比:20.9
保持時間:32.8分(1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン)
16.5分(3−アミノピペリジン)
<3−アミノピペリジン二塩酸塩の化学純度分析法>
サンプル調製
10mLサンプル瓶に試料約100mgを精秤し、1N水酸化ナトリウム水溶液3mLを加えて溶解する。そこにクロロホルム3mLを加えて抽出し、下層を分析に用いる。
【0116】
GC分析条件
カラム:Inert Cap1 0.25mmφ×60m,0.40μm(GL Sciences)
温度:カラム:60℃、注入口:200℃、検出器:270℃
昇温プログラム:60℃(10分)→5℃/分→260℃(10分)
検出器:FID
カラム流量:2.2mL/分
スプリット比:20.9
保持時間:32.8分(1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン)
16.5分(3−アミノピペリジン)
<1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジンの光学純度分析法>
サンプル調製
10mLメスフラスコに試料約20mgを精秤し、1N塩酸水溶液1.5mLと回転子を加えて50℃で1時間加熱しながら撹拌する。その後、室温まで冷却し、1N水酸化ナトリウム水溶液1.5mLを加えてからアセトニトリルで標線まで希釈する。2mLサンプル瓶に上記の試料0.1mLと0.8%O,O’−p−ジトルオイル−L−酒石酸無水物のアセトニトリル溶液0.5mLを加えてよく振り混ぜてから室温で15分間静置する。最後に2%リン酸水溶液0.1mLを加えてよく振り混ぜ、これをサンプルとする。
【0117】
HPLC分析条件
カラム:CAPCELLPAK SG−120 4.6mmφ×250mm(資生堂)
移動相:0.03%アンモニア水溶液(酢酸でpH4.5に調製)/メタノール=50/50(v/v)
流速:1.2mL/分
カラム温度:40℃
測定波長:243nm
サンプル量:2μL
保持時間:53.6分((R)−3−アミノピペリジンの誘導化物)
57.3分((S)−3−アミノピペリジンの誘導化物)。
【0118】
<3−アミノピペリジン二塩酸塩の光学純度分析法>
サンプル調製
10mLメスフラスコに試料約17mgを精秤し、1N水酸化ナトリウム水溶液1,2滴を加えてからアセトニトリルで標線まで希釈する。2mLサンプル瓶に上記の試料0.1mLと0.8%O,O’−p−ジトルオイル−L−酒石酸無水物のアセトニトリル溶液0.5mLを加えてよく振り混ぜてから室温で15分間静置する。最後に2%リン酸水溶液0.1mLを加えてよく振り混ぜ、これをサンプルとする。
【0119】
HPLC分析条件
カラム:CAPCELLPAK SG−120 4.6mmφ×250mm(資生堂)
移動相:0.03%アンモニア水溶液(酢酸でpH4.5に調製)/メタノール=50/50(v/v)
流速:1.2mL/分
カラム温度:40℃
測定波長:243nm
サンプル量:2μL
保持時間:53.6分((R)−3−アミノピペリジンの誘導化物)
57.3分((S)−3−アミノピペリジンの誘導化物)。
【0120】
参考例1 1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸の製造
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた3L四つ口フラスコに、ニペコチン酸300g(2.323モル)、水900g、テトラヒドロフラン900g、水酸化ナトリウム32.5g加え完全溶解させた。次に、二炭酸ジtert−ブチル532.3g(2.439モル)とテトラヒドロフラン59.1gの混合物を20〜25℃で滴下し、40℃付近まで昇温してから5時間熟成させた。その後、アスピレータで80mmHg、内温45℃に到達するまで減圧濃縮し、反応溶媒を1188g留去させた。濃縮終了後、20%クエン酸586gを20〜25℃で滴下し(pH6.5→4.0)、同温度で1時間熟成してから遠心分離機で固液分離し、水300gで洗浄、真空乾燥して白色結晶の目的物495.0g(収率:92.9%)を得た。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:12.36(brs,1H),3.89(m,1H),3.68(m,1H),3.03(m,1H),2.82(m,1H),2.30(m,1H),1.89(m,1H),1.61(m,1H),1.51−1.31(m,11H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:174.4,153.8,78.7,40.5,28.0,26.6,23.8
m.p.:159−160℃。
【0121】
実施例1
(1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸の光学分割)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた2L四つ口フラスコに、参考例1で製造した1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸250g(1.090モル)を加え、さらに水643.9g、R−(+)−1−フェニルエチルアミン79.3g(0.654モル)、水酸化ナトリウム17.4g(0.436モル)を加え(光学分割剤/塩基性添加剤=0.6/0.4)、80℃まで昇温した。完溶後、68℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、25℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で18時間熟成してから析出結晶をろ過し、次いで200gの水で洗浄、真空乾燥して白色結晶のジアステレオマー塩147.4gを得た。その塩の光学純度は、86.7%d.e.(R)であり、仕込み1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、72.0%であった。
【0122】
(ジアステレオマー塩の再結晶)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた500mL四つ口フラスコに、上記と同様の方法で得た光学純度88.3%d.e.(R)のジアステレオマー塩44.3g(0.126モル)、水85.6gを加え、99℃まで昇温した。完溶後、種晶を添加し、95℃付近で1時間熟成した。その後、25℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で析出結晶をろ過し、次いで45.3gの水で洗浄、真空乾燥して白色結晶のジアステレオマー塩35.6gを得た。その塩の光学純度は、99.0%d.e.(R)であり、仕込みジアステレオマー塩のR体に対する取得塩中のR体収率は、85.4%であった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:7.41(d,J=7.8Hz,2H),7.33(t,J=7.3Hz,2H),7.25(t,J=7.1Hz,2H),5.70(brs,3H),4.13(q,J=6.7Hz,1H),3.96(m,1H),3.78(m,1H),2.82−2.68(m,2H),2.09(m,1H),1.90(m,1H),1.59(m,1H),1.39−1.26(m,14H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:175.5,153.9,144.9,128.3,127.0,126.2,78.4,50.2,42.4,28.1,27.5,23.9
m.p.:173−174℃。
【0123】
(ジアステレオマー塩の解塩)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた1L四つ口フラスコに、上記と同様の方法で得た光学純度99.9%d.e.の(R)のジアステレオマー塩70.0g(0.200モル)、水350g、水酸化ナトリウム9.6g(0.240モル)を加え、20〜30℃で完溶させた。次いで、トルエン329.2gを加えて、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンを抽出し、静置後、トルエン層を分液除去した。得られた水層に、さらにトルエン201.0gを加えて二次抽出し、静置後、トルエン層を分液除去した。その後、得られた水層に20%クエン酸182.7gを20〜25℃で滴下し(pHを13.1から4.0にした)、同温度で1時間熟成してから遠心分離機で固液分離し、水64.7gで洗浄、真空乾燥して白色結晶の(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸43.6g(収率:95.1%)を得た。その光学純度は99.9%e.e.(R)のままであった。
【0124】
(酸アミド化反応)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた1L四つ口フラスコに、光学純度99.9%e.e.の(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸43.6g(0.190モル)、テトラヒドロフラン305.1g、トリエチルアミン19.2g(0.190モル)を加え、4℃まで冷却した。次いでクロロ炭酸エチル21.7g(0.200モル)を0〜10℃で滴下し、30分熟成した。その後、28%アンモニア水23.1g(0.380モル)を0〜10℃で滴下し、20℃まで昇温後1.5時間熟成した。熟成後、再び5℃以下まで冷却し、クロロ炭酸エチル12.4g(0.114モル)を0〜10℃で滴下し、20℃まで昇温後1時間熟成した。その後、5%重曹水70.2gを加えて撹拌抽出し、静置後、水層を分液除去した。得られたテトラフドロフラン層に水251.8gを加えてから、アスピレータで200mmHg、内温45℃に到達するまで減圧濃縮し、反応溶媒を295.9g留去させた。濃縮終了後、20℃まで冷却してから析出結晶をろ過し、40.6gの水で洗浄、真空乾燥して微赤色結晶の(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミド37.2g(収率:85.8%)を得た。その光学純度は99.9%e.e.のままであった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:7.34(s,1H),6.83(s,1H),3.87(m,2H),2.67(m,2H),2.17(m,1H),1.73(dd,J=82.4,12.2Hz,2H),1.48−1.29(m,11H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:174.8,153.8,78.6,41.8,28.0,27.5
m.p.:168−169℃。
【0125】
参考例2
(ホフマン転位反応)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた1L四つ口フラスコに、光学純度99.9%e.e.の(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコタミド37.2g(0.163モル)、水372.0g、水酸化ナトリウム13.0g(0.326モル)を加えた。次いで、次亜塩素酸ナトリウム水溶液246.5g(7.4重量%,0.244モル)を20〜30℃で滴下し、同温度範囲で19時間熟成した。熟成後、反応液にテトラヒドロフラン223.2g、食塩66.7gを加えて撹拌し、静置後、分液してテトラヒドロフラン層に目的物を抽出した。さらに、水層にテトラヒドロフラン223.2gを加えて二次抽出し、水層を分液除去した。これらのテトラヒドロフラン層を合わせて減圧濃縮し、微黄色油状物の(R)−1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン28.9g(収率:88.5%)を得た。その光学純度は99.9%e.e.のままであった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:3.80−3.71(m,2H),2.65−2.38(m,3H),1.77(d,J=12.7Hz,1H)1.60(m,1H),1.46−1.23(m,12H),1.08(m,1H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:153.9,78.4,47.7,33.7,28.1。
【0126】
(脱保護反応)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた1L四つ口フラスコに、光学純度99.9%e.e.の(R)−1−tert−ブトキシカルボニル−3−アミノピペリジン16.4g(0.082モル)、水178.6g、35%塩酸水溶液37.4gを加え、20〜30℃で6時間熟成した。熟成後、アスピレータで20mmHg、内温50℃に到達するまで減圧濃縮し、残渣にイソプロパノール50gを加えてから、さらに20mmHg、内温50℃に到達するまで減圧濃縮した。その後、残渣にメタノール42.6gを加え、50℃まで昇温して溶解させた後、内温20℃付近まで緩やかに冷却してから、酢酸エチル45.1gを滴下した。滴下後、10℃付近まで冷却してから1時間熟成した後、析出結晶をろ過し、真空乾燥して微黄色結晶の(R)−3−アミノピペリジン二塩酸塩12.8g(収率:90.0%)を得た。その光学純度は99.9%e.e.のままであった。
1H−NMR(DO,400MHz)δppm:3.73−3.61(m,2H),3.48(d,J=13.2Hz,1H),3.12−2.98(m,2H),2.28(d,J=13.2Hz,1H),2.13(m,1H),1.90−1.69(m,2H)
13C−NMR(DO,400MHz)δppm:45.6,45.3,44.0,26.9,20.8
m.p.:184−186℃
実施例2
(1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸の光学分割)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた100mL四つ口フラスコに、参考例1と同様の方法で製造した1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸11.5g(0.050モル)を加え、さらに水28.6g、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミン3.6g(0.030モル)48%水酸化ナトリウム水溶液1.7g(0.020モル)を加え(光学分割剤/塩基性添加剤=0.6/0.4)、加えてから73℃まで昇温した(塩濃度:35重量%)。完溶後、65℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、25℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で6時間熟成してから析出結晶をろ過し、次いで9.2gの水で洗浄、真空乾燥して白色結晶のジアステレオマー塩6.5gを得た。その塩の光学純度は、87.6%d.e.(R)であり、仕込み1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸のS体に対する取得塩中のS体収率は、69.2%であった。結果を表1に示す。
【0127】
(ジアステレオマー塩の再結晶)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた100mL四つ口フラスコに、上記のジアステレオマー塩6.5g(0.018モル)、水15.0gを加え、99℃まで昇温した。完溶後、種晶を添加し、95℃付近で1時間熟成した。その後、25℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で析出結晶をろ過し、湿体のジアステレオマー塩5.2gを得た。同様の操作を再度おこない、真空乾燥して白色結晶のジアステレオマー塩3.8gを得た。その塩の光学純度は、99.9%d.e.(S)であり、仕込み1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸のS体に対する取得塩中のS体収率は、63.2%であった。
H−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:7.41(d,J=7.8Hz,2H),7.33(t,J=7.3Hz,2H),7.25(t,J=7.1Hz,2H),5.70(brs,3H),4.13(q,J=6.7Hz,1H),3.96(m,1H),3.78(m,1H),2.82−2.68(m,2H),2.09(m,1H),1.90(m,1H),1.59(m,1H),1.39−1.26(m,14H)
13C−NMR(DMSO−d,400MHz)δppm:175.5,153.9,144.9,128.3,127.0,126.2,78.4,50.2,42.4,28.1,27.5,23.9
m.p.:173−174℃。
【0128】
(ジアステレオマー塩の解塩)
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた100mL四つ口フラスコに、上記のジアステレオマー塩3.8g(0.011モル)、水19.0g、48%水酸化ナトリウム水溶液1.1g(0.013モル)を加え、20〜30℃で完溶させた。次いで、トルエン17.9gを加えて、(S)−(−)−1−フェニルエチルアミンを抽出し、静置後、トルエン層を分液除去した。得られた水層に、さらにトルエン10.7gを加えて二次抽出し、静置後、トルエン層を分液除去した。その後、得られた水層に20%クエン酸9.9gを20〜25℃で滴下し(pHを13.1から4.0にした)、同温度で1時間熟成してから遠心分離機で固液分離し、水3.8gで洗浄、真空乾燥して白色結晶の(S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸2.3g(収率:92.0%)を得た。その光学純度は99.9%e.e.(S)のままであった。
【0129】
実施例3
温度計、コンデンサー及び撹拌機の付いた100mL四つ口フラスコに、参考例1と同様の方法で製造した1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸11.5g(0.050モル)を加え、さらに水31.8g、(R)−(+)−1−フェニルエチルアミン3.6g(0.030モル)、トリエチルアミン2.0g(0.020モル)を加え(光学分割剤/塩基性添加剤=0.6/0.4)74℃まで昇温した。完溶後、66℃まで降温してから種晶を添加し、同温度付近で1時間熟成した。その後、25℃まで緩やかに冷却し、同温度付近で6時間熟成してから析出結晶をろ過し、次いで8.6gの水で洗浄、真空乾燥して白色結晶のジアステレオマー塩6.3gを得た。その塩の光学純度は、87.7%d.e.(R)であり、仕込み1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸のR体に対する取得塩中のR体収率は、72.2%であった。結果を表1に示す。
【0130】
実施例4
実施例3において、水使用量を1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸に対して、8.4重量倍に変えた以外は実施例2と同様に操作をおこなった。結果を表1に示す。
【0131】
実施例5
実施例3において、塩基性添加剤としてトリエチルアミンを光学分割剤/塩基性添加剤=0.8/0.2(モル/モル)となるように加え、水使用量を1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸に対して、6.0重量倍に変えた以外は実施例3と同様に操作をおこなった。結果を表1に示す。
【0132】
実施例6
実施例3において、塩基性添加剤を使用せず、水使用量を1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸に対して、8.6重量倍に変えた以外は実施例3と同様に操作をおこなった。結果を表1に示す。
【0133】
比較例1
実施例3において、溶媒をエタノールに、塩基性添加剤を使用せず、溶媒使用量を1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸に対して、2.3重量倍に変えた以外は実施例3と同様に操作をおこなった。結果を表1に示す。
【0134】
比較例2
実施例3において、溶媒をイソプロパノールに、塩基性添加剤を使用せず、溶媒使用量を1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸に対して、3.6重量倍に変えた以外は実施例3と同様に操作をおこなった。
【0135】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性1−フェニルエチルアミンを光学分割剤として用い、含水溶媒中で、一般式
【化1】

(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示す)で表されるニペコチン酸誘導体のラセミ混合物を光学分割して、一般式
【化2】

(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性ニペコチン酸誘導体を製造する光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法。
【請求項2】
含水溶媒が水である請求項1記載の光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法。
【請求項3】
塩基性添加剤を加えて、ニペコチン酸誘導体のラセミ混合物を光学分割する請求項1または2に記載の光学活性ニペコチン酸誘導体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法により製造された光学活性ニペコチン酸誘導体を非プロトン性溶媒中でアンモニア水を使用してアミド化して、一般式
【化3】

(Rは、炭素数1〜4のアルキル基もしくはアラルキル基を示し、*は当該炭素原子が光学活性中心であることを示す)で表される光学活性ニペコタミド誘導体を製造するニペコタミド誘導体の製造方法。
【請求項5】
非プロトン性溶媒がテトラヒドロフランである請求項4に記載の光学活性ニペコタミド誘導体の製造方法。
【請求項6】

【化4】

で表される(R)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸と(R)−(+)−1−フェニルエチルアミンとのジアステレオマー塩。
【請求項7】

【化5】

で表される(S)−1−tert−ブトキシカルボニルニペコチン酸と(S)−(−)−1−フェニルエチルアミンとのジアステレオマー塩。

【公開番号】特開2011−236157(P2011−236157A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109000(P2010−109000)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】