説明

光学活性ハロゲン化エステル化合物の製造方法

【課題】式(4)


(式中、R1は低級アルキル基を、R2およびR3は水素原子等を、Xは臭素原子等を、*は不斉炭素原子であることを表わす。)
で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物を、光学純度よく製造する方法を提供すること。
【解決手段】式(1)


(式中、R1、R2、R3はおよび*は上記と同一の意味を表わし、R4はパーフルオロアルキル基を表わす。)
で示される光学活性エステル化合物と、式(2)


(式中、Mはアルカリ金属原子を、Xは上記と同一の意味を表わす。)
で示される化合物または式(3)


(式中、Xは上記と同一の意味を表わし、R5、R6、R7およびR8はアルキル基等を表わす。)
で示される第四級アンモニウム化合物とを反応させることを特徴とする式(4)で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性ハロゲン化エステル化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
式(4)

(式中、R1は低級アルキル基を表わし、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、ニトロ基、二置換アミノ基、アルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わす。ここで、R2およびR3が隣接する炭素原子に結合しているときは、R2およびR3が結合して、その結合炭素原子とともに環を形成してもよい。Xは臭素原子またはヨウ素原子を表わす。*は不斉炭素原子であることを表わす。)
で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物は、医薬中間体として有用であることが知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
α位にハロゲン原子を有するエステル化合物は、対応するα−ヒドロキシエステル化合物に、(a)酢酸中で臭化水素を作用させる方法(例えば非特許文献1参照。)、(b)塩化チオニルおよび臭化水素を作用させる方法(例えば非特許文献2参照。)、(c)ピリジルスルホン酸クロリドを作用させた後、臭化マグネシウムを反応させる方法(例えば非特許文献3参照。)等により製造できることが知られている。しかしながら、(a)および(b)の方法を用いて、式(5)

(式中、R1、R2、R3および*は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性ヒドロキシエステル化合物から上記式(4)で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物を製造することを試みたところ、望むハロゲン化反応は進行せず、式(4)で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物を得ることはできず、また、(c)の方法は、工業的に入手が困難な試剤を用いているという問題があった。
【0004】
一方、アルコール化合物の水酸基をハロゲン原子に変換する方法として、アルコール化合物に臭化チオニルを作用させる方法(例えば非特許文献4参照。)やアルコール化合物をメシル化した後、臭化リチウムを反応させる方法が知られている(例えば非特許文献5参照。)が、かかる方法を用いて、上記式(5)で示される光学活性ヒドロキシエステル化合物から上記式(4)で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物を製造することを試みたところ、水酸基のハロゲン化反応は進行したものの、ラセミ化反応も同時に進行し、式(4)で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物を光学純度良く得ることはできなかった。
【0005】
【特許文献1】国際公開パンフレット第00/63197号
【非特許文献1】J.Org.Chem.,53,5507(1988)
【非特許文献2】Synth.Comm.,22,2187(1992)
【非特許文献3】Heterocycles,28,1115(1989)
【非特許文献4】Tetrahedron Lett.,87(1971)
【非特許文献5】J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1562(1992)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況のもと、本発明者らは、式(4)で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物を、光学純度良く製造する方法について鋭意検討したところ、上記式(5)で示される光学活性ヒドロキシエステル化合物から容易に製造可能な式(1)

(式中、R1、R2、R3および*は上記と同一の意味を表わし、R4はパーフルオロアルキル基を表わす。)
で示される光学活性エステル化合物を、臭化ナトリウム等と反応させることにより、目的とする式(4)で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物を光学純度良く得ることができることを見いだし、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、式(1)

(式中、R1は低級アルキル基を表わし、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、ニトロ基、二置換アミノ基、アルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わす。ここで、R2およびR3が隣接する炭素原子に結合しているときは、R2およびR3が結合して、その結合炭素原子とともに環を形成してもよい。R4はパーフルオロアルキル基を表わす。*は不斉炭素原子であることを表わす。)
で示される光学活性エステル化合物と、式(2)

(式中、Mはアルカリ金属原子を表わし、Xは臭素原子またはヨウ素原子を表わす。)
で示される化合物または式(3)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わし、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ同一または相異なって、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わす。また、R5、R6およびR7が結合してその結合窒素原子とともに、ピリジン環を形成してもよい。)
で示される第四級アンモニウム化合物とを反応させることを特徴とする式(4)

(式中、R1、R2、R3、Xおよび*は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光学活性ハロゲン化エステル化合物を、光学純度良く製造することができるため、工業的にも有利な製造方法となり得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式(1)

で示される光学活性エステル化合物(以下、光学活性エステル化合物(1)と略記する。)の式中、R1は低級アルキル基を表わし、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、ニトロ基、二置換アミノ基、アルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わす。ここで、R2およびR3が隣接する炭素原子に結合しているときは、R2およびR3が結合して、その結合炭素原子とともに環を形成してもよい。また、R4はパーフルオロアルキル基を表わし、*は不斉炭素原子であることを表わす。
【0010】
低級アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基等の炭素数1〜4の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。置換されていてもよいアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、4−ヘプチル基、シクロヘキシル基等の炭素数1〜8の直鎖状、分枝鎖状もしくは環状のアルキル基およびこれらアルキル基の一つまたは二つ以上の水素原子が、例えばメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、例えばフェニル基、ナフチル基等のアリール基、例えばN−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基等の一置換もしくは二置換アミノ基、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、水酸基、シアノ基等の置換基で置換されたものが挙げられ、具体的には、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル基、2−メトキシエチル基等が挙げられる。
【0011】
置換されていてもよいアルコキシ基としては、前記置換されていてもよいアルキル基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。置換されていてもよいアリール基としては、例えば無置換のフェニル基、ナフチル基等および、これらフェニル基、ナフチル基等を構成する芳香環の一つまたは二つ以上の水素原子が、例えば前記アルキル基、例えばメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基等の置換基で置換された、例えば2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−メトキシフェニル基等が挙げられる。置換されていてもよいアリールオキシ基としては、前記置換されていてもよいアリール基と酸素原子とから構成されるもの、例えばフェノキシ基、ナフトキシ基、2−メチルフェノキシ基、3−メチルフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、2−メトキシフェノキシ基、3−メトキシフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0012】
二置換アミノ基としては、例えばジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルエチルアミノ基等の二個の前記低級アルキル基等で置換されたアミノ基が挙げられる。アルコキシカルボニル基としては、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0013】
2およびR3が結合して、その結合炭素原子とともに環を形成する場合の環構造としては、例えばシクロペンテン環、シクロヘキセン環、ベンゼン環等が挙げられる。
【0014】
パーフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基等のすべての水素原子がフッ素原子で置換された炭素数1〜4のアルキル基が挙げられる。
【0015】
かかる光学活性エステル化合物(1)としては、例えば光学活性5−フェニル−2−(トリフルオロメチルスルホニル)ペンタン酸メチル、光学活性5−(2−メチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、活性5−(3−メチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(2−メトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(3−メトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−tert−ブトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(2,4−ジメチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(2−クロロフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−フルオロフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−クロロフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−ブロモフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(3−ニトロフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−フェノキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシカルボニルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、
【0016】
光学活性5−フェニル−2−(トリフルオロメチルスルホニル)ペンタン酸エチル、光学活性5−(2−メチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、活性5−(3−メチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−エチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(2−メトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(3−メトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−エトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−tert−ブトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(2,4−ジメチルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(2−クロロフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−フルオロフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−クロロフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−ブロモフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(3−ニトロフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−フェノキシフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メトキシカルボニルフェニル)−2−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、
【0017】
光学活性5−フェニル−2−(ペンタフルオロエチルスルホニル)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メチルフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エチルフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−フェニル−2−(ペンタフルオロエチルスルホニル)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸n−プロピル、光学活性5−(4−エトキシフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−tert−ブトキシフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−フルオロフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−クロロフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−ブロモフェニル)−2−(ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、
【0018】
光学活性5−フェニル−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メチルフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エチルフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸n−プロピル、光学活性5−(4−エトキシフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−tert−ブトキシフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−フルオロフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−クロロフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−ブロモフェニル)−2−(ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、
【0019】
光学活性5−フェニル−2−(ノナフルオロブチルスルホニル)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メチルフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エチルフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸n−プロピル、光学活性5−(4−エトキシフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−tert−ブトキシフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−フルオロフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−クロロフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル、光学活性5−(4−ブロモフェニル)−2−(ノナフルオロブチルスルホニルオキシ)ペンタン酸メチル等が挙げられる。
【0020】
かかる光学活性エステル化合物(1)は、S体およびR体の二種の光学異性体が存在するが、本発明には、そのいずれか一方の光学異性体の単独を用いてもよいし、一方の光学異性体が他方の光学異性体に対して過剰な光学異性体の混合物を用いてもよい。
【0021】
かかる光学活性エステル化合物(1)と、式(2)

(式中、Mはアルカリ金属原子を表わし、Xは臭素原子またはヨウ素原子を表わす。)
で示される化合物(以下、化合物(2)と略記する。)または式(3)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わし、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ同一または相異なって、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わす。また、R5、R6およびR7が結合してその窒素原子とともに、ピリジン環を形成してもよい。)
で示される第四級アンモニウム化合物(以下、第四級アンモニウム化合物(3)と略記する。)とを反応させることにより、目的とする式(4)

(式中、R1、R2、R3、Xおよび*は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物(以下、光学活性ハロゲン化エステル化合物(4)と略記する。)を製造することができる。
【0022】
アルカリ金属原子としては、例えばリチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子等が挙げられる。
【0023】
かかる化合物(2)としては、例えば臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等が挙げられる。
【0024】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−へキシル基、n−オクチル基、n−ドデシル基、n−ヘキサデシル基、n−オクタデシル基等の炭素数1〜20の直鎖状もしくは分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、前記アルキル基と前記アリール基とから構成されるもの、例えばベンジル基、フェニルエチル基等が挙げられる。
【0025】
かかる第四級アンモニウム化合物(3)としては、例えばテトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド、テトラオクチルアンモニウムブロミド、トリエチルベンジルアンモニウムブロミド、n−ヘキサデシルピリジニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヨーダイド、テトラエチルアンモニウムヨーダイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムヨーダイド、テトラオクチルアンモニウムヨーダイド、トリエチルベンジルアンモニウムヨーダイド、n−ヘキサデシルピリジニウムヨーダイド等が挙げられる。
【0026】
かかる化合物(2)または第四級アンモニウム化合物(3)の使用量は、光学活性エステル化合物(1)に対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、光学活性エステル化合物(1)に対して、10モル倍以下である。
【0027】
反応温度は、通常0〜50℃である。
【0028】
光学活性エステル化合物(1)と化合物(2)または第四級アンモニウム化合物(3)との反応は、通常溶媒中で実施され、溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、例えばN,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒、例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、例えばジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられる。かかる溶媒の使用量は、光学活性エステル化合物(1)に対して、通常1〜100重量倍であり、好ましくは1〜20重量倍である。
【0029】
光学活性エステル化合物(1)と化合物(2)または第四級アンモニウム化合物(3)との反応を、酸の共存下に実施することにより、さらに光学純度良く目的とする光学活性ハロゲン化エステル化合物(4)を製造することができる。かかる酸としては、例えば硫酸、メタンスルホン酸等が挙げられ、その使用量は、光学活性エステル化合物(1)に対して、通常1〜50モル倍である。
【0030】
反応終了後、例えば反応液に水および必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、目的とする光学活性ハロゲン化エステル化合物(4)を取り出すことができる。取り出した光学活性ハロゲン化エステル化合物(4)は、例えば再結晶等の通常の精製手段により、さらに精製してもよい。水に不溶の有機溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
【0031】
かくして得られる光学活性ハロゲン化エステル化合物(4)としては、例えば光学活性5−フェニル−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(2−メチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(3−メチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(2−メトキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(3−メトキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エトキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−tert−ブトキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(2,4−ジメチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(2−クロロフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−フルオロフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−クロロフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−ブロモフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(3−ニトロフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−フェノキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシカルボニルフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−フェニル−2−ブロモペンタン酸エチル、光学活性5−(2−メチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸エチル、光学活性5−(3−メチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸エチル、光学活性5−(2−メトキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸エチル、光学活性5−(3−メトキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−ブロモペンタン酸エチル、光学活性5−フェニル−2−ヨードペンタン酸メチル、光学活性5−(2−メチルフェニル)−2−ヨードペンタン酸メチル、光学活性5−(3−メチルフェニル)−2−ヨードペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エチルフェニル)−2−ブロモペンタン酸メチル、光学活性5−(2−メトキシフェニル)−2−ヨードペンタン酸メチル、光学活性5−(3−メトキシフェニル)−2−ヨードペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−ヨードペンタン酸メチル等が挙げられる。
【0032】
なお、光学活性エステル化合物(1)は、式(5)

(式中、R1、R2、R3および*は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性ヒドロキシエステル化合物(以下、光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)と略記する。)と式(6)

(式中、R4は上記と同一の意味を表わし、Zはハロゲン原子または下記

で示される基を表わす。)
で示されるスルホニル化剤(以下、スルホニル化剤(6)と略記する。)とを反応させることにより製造することができる。
【0033】
光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)としては、例えば光学活性5−フェニル−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(2−メチルフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(3−メチルフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エチルフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(2−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(3−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−エトキシフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−tertブトキシフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(2,4−ジメチルフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(2,4−ジメトキシフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(2−クロロフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−ブロモフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(3−ニトロフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−フェノキシフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシカルボニルフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸メチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸エチル、光学活性5−(4−メトキシフェニル)−2−ヒドロキシペンタン酸n−プロピル等が挙げられる。
【0034】
かかる光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)は、例えば対応する2−オキソペンタン酸エステル化合物を、不斉金属触媒の存在下に還元する方法(特開平10−120621号公報参照。)、光学活性ヒダントイン化合物を開環反応せしめた後、ジアゾ化剤を作用させ、加水分解する方法(特開2000−309575号公報参照。)により対応する光学活性カルボン酸化合物を得、該光学活性カルボン酸化合物をエステル化する方法、光学活性グリシド酸エステル化合物とフェネチルマグネシウムブロミドとを、銅塩触媒の存在下に反応させる方法(特開2002−37761号公報参照)等により製造することができる。
【0035】
上記スルホニル化剤(6)の式中、Zはハロゲン原子または下記

で示される基を表わし、ハロゲン原子としては、前記したものと同様のものが挙げられる。また、下記

で示される基としては、例えばトリフルオロメチルスルホニルオキシ基、ペンタフルオロエチルスルホニルオキシ基、ヘプタフルオロプロピルスルホニルオキシ基、ノナフルオロブチルスルホニルオキシ基等が挙げられる。
【0036】
かかるスルホニル化剤(6)としては、例えばトリフルオロメタンスルホニルクロリド、ペンタフルオロエタンスルホニルクロリド、ヘプタフルオロプロパンスルホニルクロリド、ノナフルオロブタンスルホニルクロリド等の炭素数1〜4のパーフルオロアルカンスルホン酸ハロゲン化物、例えばトリフルオロメタンスルホン酸無水物、ペンタフルオロエタンスルホン酸無水物、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸無水物、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物等の炭素数2〜8のパーフルオロアルカンスルホン酸無水物等が挙げられ、Zが下記

で示される基であるスルホニル化剤が好ましい。
【0037】
スルホニル化剤(6)の使用量は、光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)に対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面等も考慮すると、実用的には、光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)に対して、10モル倍以下である。
【0038】
光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)とスルホニル化剤(6)との反応は、通常有機塩基の存在下に実施される。かかる有機塩基としては、例えばピリジン、キノリン、2,4,6−コリジン等のピリジン塩基、例えばトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン等の第三級アミン等が挙げられ、第三級アミンが好ましく、なかでもトリエチルアミンおよびN−メチルモルホリンが特に好ましい。かかる有機塩基の使用量は、光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)に対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特になく、反応条件下で液体である有機塩基であれば、溶媒を兼ねて大過剰量用いてもよいが、実用的には、光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)に対して、10モル倍以下である。また、反応速度を上げるため、4−ジメチルアミノピリジンやトリメチルアミン・塩酸塩を触媒として用いてもよく、その使用量は、光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)に対して、通常0.01〜0.5モル倍である。
【0039】
光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)とスルホニル化剤(6)との反応は、無溶媒もしくは有機溶媒中で、光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)とスルホニル化剤(6)と有機塩基を混合することにより実施される。有機溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒、例えばアセトニトリル等のニトリル系溶媒等の単独もしくは混合溶媒が挙げられ、芳香族炭化水素系溶媒が好ましい。有機溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率や反応液の性状等を考慮すると、光学活性ヒドロキシエステル化合物(5)に対して、通常2〜100重量倍、好ましくは2〜30重量倍である。
【0040】
反応温度は、通常−20℃〜反応液の還流温度の範囲、好ましくは0〜25℃の範囲である。
【0041】
反応終了後、例えば反応液に水および必要に応じて水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、光学活性エステル化合物(1)を取り出すことができる。取り出した光学活性エステル化合物(1)は、そのままもしくは必要に応じてさらに精製処理した後、前記化合物(2)または第四級アンモニウム化合物(3)との反応に用いてもよいし、光学活性エステル化合物(1)を含む反応液をそのままもしくは一部濃縮処理した後、前記化合物(2)または第四級アンモニウム化合物(3)との反応に用いてもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。なお、光学純度は、光学活性カラムを用いる高速液体クロマトグラフィ分析法により求めた。
【0043】
実施例1
(R)−2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチル(光学純度:97.2%e.e.)1.2gをトルエン10mLに溶解させた。氷冷下で、これに、無水トリフルオロメタンスルホン酸2.1gおよびトリエチルアミン0.66gを加え、1時間攪拌、反応させた。反応終了後、水10mLおよびトルエン5mLを加えて抽出処理した。得られた有機層を5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液10mL、次いで水10mLで洗浄処理した。洗浄処理後の有機層を、減圧条件下で濃縮処理して、(R)−2−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチルを含む濃縮残渣2.0gを得た。
【0044】
該濃縮残渣0.78gを、テトラヒドロフラン8mLに溶解させた後、内温5℃以下に冷却し、濃硫酸1mLを加えた。氷冷下で、これに、臭化リチウム0.87gを加え、2.5時間反応させた。反応終了後、反応液に水8mLを加え、トルエンで2回抽出処理した。得られたトルエン層を水、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、5重量%食塩水、さらに水で順次洗浄処理した後、濃縮処理した。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィにて精製処理し、(S)−2−ブロモ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチル460mgを得た。光学純度は、94.1%e.e.であった。
【0045】
1H−NMR(CDCl3)スペクトルデータ
δ(ppm);1.59−1.85(2H,m),1.93−2.16(2H,m),2.59(1H,t,J=7.6Hz),3.76(3H,s),3.79(3H,s),4.22(2H,dd,J=6.9,7.6Hz),6.83(2H,d,J=8.6Hz),7.08(2H,d,J=8.6Hz)
【0046】
実施例2
前記実施例1で得た(R)−2−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチルを含む濃縮残渣0.78gを、テトラヒドロフラン8mLに溶解させた後、内温5℃以下に冷却し、臭化リチウム0.87gを加え、2.5時間反応させた。反応終了後、反応液に水8mLを加え、トルエンで2回抽出処理した。得られたトルエン層を水、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、さらに水で順次洗浄処理した後、濃縮処理した。濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィにて精製処理し、(S)−2−ブロモ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチル500mgを得た。光学純度は、45.3%e.e.であった。
【0047】
実施例3
(S)−2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチル(光学純度:95.4%e.e.)0.2gをアセトニトリル1mLに溶解させた。氷冷下で、これに、無水トリフルオロメタンスルホン酸0.3gおよびトリエチルアミン0.09gを加え、1時間攪拌、反応させた。反応終了後、水10mLを加えた後、トルエン10mLで2回抽出処理した。得られた有機層を、水10mL、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液10mL、次いで水10mLで洗浄処理した。洗浄処理後の有機層を、減圧条件下で濃縮処理して、(S)−2−トリフルオロメチルスルホニルオキシ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチルを含む濃縮残渣を得た。
【0048】
該濃縮残渣に、テトラヒドロフラン1.5mLおよび濃硫酸1.5mLを加えた。氷冷下で、これに、臭化リチウム0.51gを加え、1時間反応させた。反応終了後、反応液に水10mLを加え、トルエンで2回抽出処理した。得られたトルエン層を水、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、さらに水で順次洗浄処理した後、濃縮処理し、(R)−2−ブロモ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチルを含む濃縮残渣を得た。
【0049】
4,4’−ジチオビス(3−ニトロ安息香酸エチル)0.23gをエタノール1.5mLおよびテトラヒドロフラン1.5mLと混合した後、内温5℃以下に冷却した。これに、水素化ホウ素ナトリウム48mgを加え、1時間攪拌、反応させた。反応終了後、反応液に、1N塩酸2.3mLを加え、トルエンで抽出処理した。得られた有機層を水洗浄した後、減圧条件下で、濃縮処理し、4−メルカプト−3−ニトロ安息香酸エチルを得た。
【0050】
得られた4−メルカプト−3−ニトロ安息香酸エチルと、先に得た(R)−2−ブロモ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチルを含む濃縮残渣と、テトラヒドロフラン1mLとを混合し、氷冷下で反応させ、4−[{(1S)−1−メトキシカルボニル−4−(4−メトキシフェニル)ブチル}チオ]−3−ニトロ安息香酸エチルを、光学純度93.4%e.e.で得た。
【0051】
比較例1
(S)−2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチル(光学純度:95.4%e.e.)1gとヘキサメチルリン酸トリアミド10mLとを混合した。室温下で、これに、臭化チオニル1.5mLを加え、40時間攪拌、反応させた。反応終了後、反応液を水100mL中に注加し、トルエンで3回抽出処理した。得られた有機層を、1N塩酸、5重量%炭酸水素ナトリウム水溶液、さらに水で順次洗浄処理した。洗浄後の有機層を、減圧条件下で濃縮処理した。得られた濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィにて精製処理し、2−ブロモ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチル1.2gを得たが、光学純度は1%e.e.であった。
【0052】
比較例2
(S)−2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチル(光学純度:95.4%e.e.)1.2gとメタノール20mLとを混合した。氷冷下で、これに、25重量%臭化水素/酢酸溶液1.9gを加えた後、ゆっくりと内温を20℃まで昇温させた。反応液を高速液体クロマトグラフィにて分析したところ、(R)−2−ブロモ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチルの生成は確認できなかった。
【0053】
比較例3
(S)−2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチル(光学純度:95.4%e.e.)1.2g、アセトニトリル、トリエチルアミンおよび塩化メタンスルホニルを混合し、内温0℃で2時間反応させ、メシル化した後、テトラヒドロフラン中で、臭化リチウム0.43gを加え、内温50℃で7時間反応させた。反応終了後、反応液を水40mL中に注加し、トルエンで2回抽出処理した。得られた有機層を、水で洗浄処理した後、洗浄後の有機層を、減圧条件下で濃縮処理した。得られた濃縮残渣をシリカゲルクロマトグラフィにて精製処理し、2−ブロモ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチルを含む油状物0.8gを得たが、光学純度は1%e.e.であった。
【0054】
比較例4
(S)−2−ヒドロキシ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチル(光学純度:95.4%e.e.)1.2gと塩化チオニル5.5mLとを混合し、室温下で終夜攪拌、保持した。その後、これに、臭化水素(ガス)6.1g相当量を吹き込んだ。その後、内温80℃に昇温し、同温度で2時間反応させた。反応液を高速液体クロマトグラフィにて分析したところ、(R)−2−ブロモ−5−(4−メトキシフェニル)ペンタン酸メチルの生成は確認できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

(式中、R1は低級アルキル基を表わし、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、ニトロ基、二置換アミノ基、アルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わす。ここで、R2およびR3が隣接する炭素原子に結合しているときは、R2およびR3が結合して、その結合炭素原子とともに環を形成してもよい。R4はパーフルオロアルキル基を表わす。*は不斉炭素原子であることを表わす。)
で示される光学活性エステル化合物と、式(2)

(式中、Mはアルカリ金属原子を表わし、Xは臭素原子またはヨウ素原子を表わす。)
で示される化合物または式(3)

(式中、Xは上記と同一の意味を表わし、R5、R6、R7およびR8はそれぞれ同一または相異なって、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表わす。また、R5、R6およびR7が結合してその結合窒素原子とともに、ピリジン環を形成してもよい。)
で示される第四級アンモニウム化合物とを反応させることを特徴とする式(4)

(式中、R1、R2、R3、Xおよび*は上記と同一の意味を表わす。)
で示される光学活性ハロゲン化エステル化合物の製造方法。
【請求項2】
酸の共存下に反応を実施する請求項1に記載の光学活性ハロゲン化エステル化合物の製造方法。
【請求項3】
式(1)で示される光学活性エステル化合物が、式(5)

(式中、R1は低級アルキル基を表わし、R2およびR3はそれぞれ同一または相異なって、水素原子、置換されていてもよいアルキル基、置換されていてもよいアルコキシ基、置換されていてもよいアリール基、置換されていてもよいアリールオキシ基、ニトロ基、二置換アミノ基、アルコキシカルボニル基またはハロゲン原子を表わす。ここで、R2およびR3が隣接する炭素原子に結合しているときは、R2およびR3が結合して、その結合炭素原子とともに環を形成してもよい。*は不斉炭素原子であることを表わす。)
で示される光学活性ヒドロキシエステル化合物と式(6)

(式中、R4はパーフルオロアルキル基を表わし、Zはハロゲン原子または下記

で示される基を表わす。)
で示されるスルホニル化剤とを反応させて得られる光学活性エステル化合物である請求項1に記載の光学活性ハロゲン化エステル化合物の製造方法。
【請求項4】
パーフルオロアルキル基が、トリフルオロメチル基である請求項1に記載の光学活性ハロゲン化エステル化合物の製造方法。
【請求項5】
式(2)で示されるハロゲン化物が、臭化リチウムである請求項1に記載の光学活性ハロゲン化エステル化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−151882(P2006−151882A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−345718(P2004−345718)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】