説明

光学活性ピペリジン誘導体のベンゼンスルホン酸塩の製造方法

【課題】 簡便で環境にやさしい、光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩の製造方法を提供する。
【解決手段】 光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルを無触媒下に含水有機溶媒中で加水分解して光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸を製造し、次いでベンゼンスルホン酸と反応させる光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩は抗アレルギー薬として期待される医薬品である。
【0003】
光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩を製造する方法としては、光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸エステルを、無機塩基を触媒として、含水アルコール中で加水分解して光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸を製造したのちに、ベンゼンスルホン酸と反応させる方法が知られている(特許文献1)。同文献に記載されている方法によれば、加水分解反応後に、添加した無機塩基を中和する工程、生成した無機塩基の塩を濾別して除去する工程、この濾液を濃縮し、その残留物に酢酸メチルを加えて再度濃縮して得た残留物にジクロロメタンを加えて光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸を抽出する工程、抽出液に脱水剤を加えて脱水したのちに不溶物を除去する工程などの複数の工程を経て光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸を取得したのちにベンゼンスルホン酸を反応させて目的物である光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩を製造している。このように公知の方法は操作が繁雑で、環境面で問題があるジクロロメタンを使用するなど、工業的な製造方法としては問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4562229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来技術は、環境面や操作面で、工業的な製造方法としては問題が多く、簡便で環境にやさしい工業的に有利な製造方法の創出が強く望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、簡便で環境にやさしい、光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは前記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルを無触媒下に含水有機溶媒中で加水分解して光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸を製造することによって、工程の大幅な簡略化と環境面でその使用に問題のあるジクロロメタンの使用が回避できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は下記式
【0009】
【化1】

【0010】
(*はこの記号が付いている炭素原子が不斉中心であることを意味する。)で表される光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルを、無触媒下に含水有機溶媒中で加水分解して下記式
【0011】
【化2】

【0012】
(*はこの記号が付いている炭素原子が不斉中心であることを意味する。)で表される光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸を製造し、次いでベンゼンスルホン酸と反応させる下記式
【0013】
【化3】

【0014】
(*はこの記号が付いている炭素原子が不斉中心であることを意味する。)で表される光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩が、環境面で問題があるジクロロメタンを使用することなく、環境にやさしい工業的に有利な簡便な方法で製造することができる。かくして得られた光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩は、抗アレルギー薬として期待される医薬品として有用な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を具体的に述べる。原料の光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルはいかなる方法で製造したものでも使用できるが、たとえば下記式に従って製造することができる。
【0017】
【化4】

【0018】
すなわち、光学活性4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジンを炭酸カリウムの存在下に4−ブロモブタン酸メチルと反応させて製造することができる。
【0019】
光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルを加水分解する際に使用する水の使用量は、光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルに対して等モル以上であればよいが、反応速度や生産性を考慮すると5〜300倍モルが好ましく、更に好ましくは50〜200倍モルである。
【0020】
加水分解に際しては、水と任意に混合して、系中で安定な有機溶媒を共存させることが好ましい。有機溶媒としては、アルコール類、ニトリル類、エーテル類が使用でき、好ましくは炭素数が1から3のアルコール、アセトニトリル、テトラヒドロフランであり、更に好ましくは炭素数が1から3のアルコールである。その使用量に制限はないが、好ましくは光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルに対して2〜10重量倍である。
【0021】
加水分解させる際の温度は、好ましくは50〜120℃である。使用する溶媒の沸点以上の温度で反応させる場合には耐圧力容器の使用が好ましい。
【0022】
反応時間は、水の使用量や反応の温度によって変わる。水の使用量が少ない場合や反応温度が低い場合には反応は長時間化し、水の使用量が多い場合や反応温度が高い場合には反応時間を短縮することができる。
【0023】
得られた4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸を含む反応液は、そのまま次のベンゼンスルホン酸と反応させる工程で使用してもよく、あるいは、残存する水と使用した有機溶媒を濃縮除去して、4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸の濃縮物として次の工程で使用してもよい。
【0024】
かくして得られた4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸は、ベンゼンスルホン酸と反応させることで目的物である光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩を製造することができる。
【0025】
光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸とベンゼンスルホン酸を反応させる際に使用するベンゼンスルホン酸の使用量は、光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸に対して0.7〜1.3倍モルが好ましく、更に好ましくは0.9〜1.1倍モルである。
【0026】
光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸とベンゼンスルホン酸を反応させる際の溶媒は、系中で安定な有機溶媒が使用でき、その際に水が共存していてもよい。この有機溶媒としては、好ましくはエタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、アセトニトリル、テトラヒドロフランが使用できる。その使用量に制限はないが、好ましくは光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸に対して2〜10重量倍である。
【0027】
光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸とベンゼンスルホン酸の塩を含む溶液は、場合によっては濃縮操作で水や有機溶媒を留去したのちにあらためて有機溶媒を添加したのちに晶析処理するか、あるいは溶液をそのまま晶析処理することができる。あらためて添加する有機溶媒としては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、テトラヒドロフラン、アセトニトリルが使用でき、少量の水が含まれていてもよい。目的とする光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩は、晶析処理で析出した結晶を濾別することで結晶として単離できる。
【0028】
かくして得られた光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩は、抗アレルギー薬として期待される医薬品として有用な化合物である。
【実施例】
【0029】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0030】
実施例において、光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸は下記の条件に調整したHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した。
【0031】
<定量分析、化学純度分析(HPLC)>
カラム:Mightysil RP−18 GP 150mm*4.6mm
(関東化学(株)製)
移動相:A液;0.02M りん酸二水素カリウム水溶液
(pH 5.5、1N−NaOHで調整))
B液;アセトニトリル
A/B=70/30(20分)−(10分)→50/50(15分)
流量 :1.0ml/min
検出器:UV 225nm
温度 :40℃ 。
【0032】
<光学純度分析(HPLC)>
カラム:ULTRON ES−OVM 150mm*4.6mm
(信和化工(株)製)
移動相:A液;0.02M りん酸二水素カリウム水溶液
(pH 5.5、1N−NaOHで調整))
B液;アセトニトリル
A/B=100/16
流量 :0.7ml/min
検出器:UV 220nm
温度 :30℃
検出位置:R体 約8分、S体 約10分 。
【0033】
参考例1
(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルの合成
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量200mlの反応容器に、光学純度99.0%e.e.の(S)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン8.88g(29.3ミリモル)、4−ブロモブタン酸メチル6.40g(35.4ミリモル)、炭酸カリウム4.88g(35.3ミリモル)、アセトン70gを仕込み、50〜53℃を保って14時間攪拌した。次いで反応液を濃縮して残留物22gを得た。残留物にトルエン48gと水34gを加えて30分間攪拌し、分液してトルエン層を得た。そのトルエン層を水18gで洗浄したのち濃縮して濃縮残分14.40gを得た。濃縮残分に含まれる(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルの含有率は76.8%であった。収率93%。
【0034】
参考例2
(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸エチルの合成
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量200mlの反応容器に、光学純度99.2%e.e.の(S)−4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジン8.64g(含有率91.3%、26.1ミリモル)、4−ブロモブタン酸エチル6.18g(31.7ミリモル)、炭酸カリウム4.41g(31.9ミリモル)、アセトン69gを仕込み、50〜53℃を保って13時間攪拌した。次いで反応液を濃縮して残留物25gを得た。残留物にトルエン43gと水30gを加えて30分間攪拌し、分液してトルエン層を得た。そのトルエン層を水15gで洗浄したのち濃縮して濃縮残分12.87gを得た。濃縮残分に含まれる(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸エチルの含有率は78.0%であった。収率92%。
【0035】
実施例1
(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量100mlの反応容器に、参考例1で得た(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチル5.53g(10.5ミリモル)、水21.4g(1.19モル)、メタノール4.3g、エタノール4.2gを仕込み、80〜87℃を保って18時間攪拌した(反応率99%)。次いで反応液を減圧下に濃縮して残留物6.6gを得た。残留物にアセトニトリル17.1gを加えて減圧下に濃縮する操作を2回おこなって残留物5.0gを得た。この残留物にアセトニトリル15.0gを加えて溶解した(水分0.8%)。その溶液にベンゼンスルホン酸の濃度が29.9%のアセトニトリル溶液5.39g(10.2ミリモル)を加えて晶析した。スラリーを15℃で濾過し、結晶を乾燥して(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩5.04gを得た。光学純度99.9%e.e.以上。結晶中に含まれる4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸の含有率は71%。収率87%。融点161〜163℃。
【0036】
実施例2
(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量100mlの反応容器に、参考例1で得た(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチル5.50g(10.5ミリモル)、水21.0g(1.17モル)、エタノール8.5gを仕込み、80〜87℃を保って18時間攪拌した(反応率98%)。次いで反応液を減圧下に濃縮して残留物6.8gを得た。この残留物に1−プロパノール15.0gとベンゼンスルホン酸の濃度が29.8%の1−プロパノール溶液5.41g(10.2ミリモル)を加え、減圧下に濃縮して残留物6.8gを得た。その残留物に1−プロパノール15gを加えて再度減圧下に濃縮して残留物6.2gを得た。残留物に1−プロパノール20.0gを加えて晶析した。スラリーを15℃で濾過し、結晶を乾燥して(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩4.48gを得た。光学純度99.9%e.e.以上。結晶中に含まれる4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸の含有率は71%。収率78%。融点161〜163℃。
【0037】
比較例1
(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量100mlの反応容器に、参考例2で得た(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸エチル4.27g(8.0ミリモル)、エタノール16g、20%水酸化ナトリム水溶液3.20g(16.0ミリモル)を仕込み20〜25℃を保って6時間攪拌した(反応率100%)。反応液に20%塩酸水溶液2.92g(16.0ミリモル)を加えて中和したのち、析出している結晶を濾別して得た濾液を減圧下に濃縮した。残留物に酢酸メチル13gを加え、再度減圧下に濃縮した。その残留物にジクロロメタン21gと無水硫酸マグネシウム3gを加えて1時間攪拌した。スラリーを濾過し、得られた濾液を減圧下に濃縮したのち真空乾燥して、泡状物3.15gを得た。(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸の含有率は98.0%。
【0038】
上記の操作で得た泡状物の全量に酢酸メチル120gを加え、次いでベンゼンスルホン酸一水和物1.26g(7.14ミリモル)を加えて濃縮した。濃縮物に酢酸メチル120gを加え、(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩20mgを加えてかき混ぜた。析出した結晶を濾別し、その結晶をアセトニトリル25gに溶解して晶析した。スラリーを25℃で濾過し、結晶を乾燥して(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩3.20gを得た。光学純度99.9%e.e.以上。収率73%。
【0039】
比較例1の方法は、実施例1或いは実施例2に較べて単位操作が多く、更にはハロゲン系の有機溶媒を使用するなど、工業的の方法としては解決すべき問題が多かった。
【0040】
比較例2
(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩
温度計、攪拌機、コンデンサーを装着した容量100mlの反応容器に、参考例2で得た(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸エチル4.25g(8.0ミリモル)、エタノール17g、20%水酸化ナトリム水溶液3.28g(16.4ミリモル)を仕込み20〜25℃を保って6時間攪拌した(反応率100%)。反応液に20%塩酸水溶液2.99g(16.4ミリモル)を加えてpHを5.9に調整した。そのスラリーを減圧下に濃縮して残留物5.8g得た。残留物にクロロホルム21gと水2gを加え、30分間攪拌したのちに分液した。水層に再度クロロホルム21gを加え、30分間攪拌したのちに分液した。クロロホルム層を合わせて、減圧下に濃縮して残留物7.0gを得た。その残留物に13.3gのアセトニトリルを加えて溶解したのち濾過して(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸を含む濾液19.0gを得た(含有率16.2%)。その濾液にベンゼンスルホン酸の濃度が27.5%のアセトニトリル溶液4.55g(7.9ミリモル)を加えたのちに再度減圧下で濃縮して残留物5.4gを得た。残留物にアセトニトリル16gを加えて晶析した。スラリーを25℃で濾過し、乾燥して(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩2.86gを得た。収率66%。
【0041】
比較例2の方法は、実施例1或いは実施例2に較べて単位操作が多く、更にはハロゲン系の有機溶媒を使用するなど、工業的の方法としては解決すべき問題が多かった。
【0042】
比較例3
(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸
容量100mlのオートクレーブに、参考例2で得た(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸エチル4.17g(7.7ミリモル)、水15.6g(0.87モル)、エタノール6.3gを仕込み、密閉して、88〜92℃で24時間攪拌した。反応液を分析したところ反応率は38%であった。更に、120℃に加熱して20時間攪拌を続けたのちに反応液を分析したところ、反応率は81%であった。
【0043】
実施例1とほぼ同じ条件で反応をおこなったが、(S)−4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸エチルを使用すると、加水分解速度は非常に遅かった。更に温度を120℃まで上げて反応を続けても、反応は完結しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式
【化1】

(*はこの記号が付いている炭素原子が不斉中心であることを意味する。)で表される光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸メチルを、無触媒下に含水有機溶媒中で加水分解して下記式
【化2】

(*はこの記号が付いている炭素原子が不斉中心であることを意味する。)で表される光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸を製造し、次いでベンゼンスルホン酸と反応させる下記式
【化3】

(*はこの記号が付いている炭素原子が不斉中心であることを意味する。)で表される光学活性4−[4−[(4−クロロフェニル)(2−ピリジル)メトキシ]ピペリジノ]ブタン酸のベンゼンスルホン酸塩の製造方法。

【公開番号】特開2012−240982(P2012−240982A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114399(P2011−114399)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000187046)東レ・ファインケミカル株式会社 (153)
【Fターム(参考)】