説明

光学活性ピリジル−4H−1,2,4−オキサジアジン誘導体およびその血管疾患の治療における使用

【課題】オキサジアジン誘導体の(−)鏡像異性体、その酸付加塩、並びに血管疾患の治療における該化学化合物の使用、および上記化合物を活性成分として含む薬剤組成物を提供する。
【解決手段】(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンに、その治療的用途への使用に、およびその化合物を活性成分として含む薬剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピリジル−4H−1,2,4−オキサジアジン誘導体の光学活性の形に、その治療的な使用に、およびその化合物を活性成分として含む薬剤組成物に関する。より詳しくは、本発明は、5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンの(−)鏡像異性体、その酸付加塩、並びに血管(vascular)疾患の治療におけるこれらの化学化合物の使用、および上記化合物を活性成分として含む薬剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ラセミ体の5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンは、公知である。その製造および熱ショックに晒された細胞に対するhsp発現促進効果は、WO97/16349号に記述され、その血管内皮細胞に対する保護および再生効果は、WO98/06400号に記述されている。この化合物は、主に、虚血に起因するダメージを受け流す(fending off)ために、および、心臓血管疾患および脳血管疾患の治療において適している。
【0003】
5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンの光学活性な形は、文献には記述されていなかった。
【0004】
我々の最近の実験中において、5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンの光学活性な形が製造され、それらの生物的活性が研究された。(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンが、その(+)鏡像異性体およびラセミ化合物より実質的に強い血管保護的および心臓保護的効果を有することが判明した。それは、虚血に起因する内皮のダメージを防ぐ際に、明らかにより効率的である。
【0005】
これらの性質により、(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンは、血管疾患および血管異常に関連する疾患の治療に顕著に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO97/16349号
【特許文献2】WO98/06400号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
実験の過程で、我々は意外にも、(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンが、その(+)鏡像異性体およびラセミ化合物と対照的に、正の変力動性(inotropic)効果を有すること、すなわち、それが心臓の収縮性の力を増大できることを認識した。この活性は、その適用が心不全(cardiac failure)の場合に危険な(+)−鏡像異性体およびラセミ化合物と対照的に、(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンを心不全を有する患者の治療のために適したものとする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記した(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンの有利な生物学的性質は、以下のテストで実証される。
【0009】
ランゲンドルフ(Langendorff)灌流されたラット心臓
【0010】
虚血の前後の内皮細胞性機能の評価のためのプロトコール
腹腔内ヘパリンナトリウム(2500 IU)でラットをヘパリン化し、腹腔内ペントバルビタール(60 mg/kg)で麻酔をかけた。自発性高血圧性(SH)のラットから心臓を迅速に取り出し、重力流れ型の非再循環式ランゲンドルフ装置(イクスペリメトリア(Experimetria)社)を用いて、一定の灌流圧力(100cm H2O(9.81kPa))で、ミリモル(mM)でNaCl 120;KCl 5.4;CaCl2 2.7;MgCl2 1.1;NaHCO3 24;D−グルコース 11を含むクレブス−ヘンセライト(Krebs-Henseleit)溶液(KHS)で大動脈を通して、直ちに灌流した。そのKHSを、カルボジェン(carbogen)(95%のO2:5%のCO2)でガス処理して、pH 7.4を得た。
【0011】
我々は、いわゆる非動作の心臓モデルを用いて、遷音速のフローメーター(モデルT206、トランソニック システムズ(Transonic Systems)社)によって、平均の冠状血流量を測定した。流れプローブは、大動脈のカニューレより上に配置した。冠状血流量は、実験を通してモニターし、電位差形記録計によって記録した。心臓は、実験を通して自発的に拍動させた。20〜30分間の平衡化期間の後、冠状血流量がベースライン値に到達した。
【0012】
内皮性機能は、セロトニン(5−HT)に対する虚血前および虚血後の冠状血流量反応の観察を通して評価した。セロトニンに応答して、冠状動脈の膨張の進行は、内皮の健全性に依存する。
【0013】
ランゲンドルフ注入を、追加の10-7Mセロトニン(5−HT、シグマ ケミカル(Sigma Chemical)社)を含む他のカラムに切り替えた。引き続いて起こる冠状動脈の膨張をモニターし、定常状態に到達した時、普通のKHSにスイッチバックすることによって、5−HTを洗い落とした。大動脈のカニューレを締めつけることによって、心臓を次いで10分間の全体的虚血に供した。虚血性の期間の終わりに、心臓を再灌流した。ベースライン冠状血流量が復旧されたとき、虚血前の期間におけるように、5−HTとKHSのシーケンシャルな注入の同じプロトコールに心臓を再び供した。対照心臓を純粋なKHSで灌流し、他の三つの群の心臓をそれぞれ、追加の10-6Mのラセミ5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン、(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン、および(+)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンを含むKHSで灌流した。血液動態安定性の開始の20〜30分間後、薬物の灌流を開始し、閉塞(occlusion)期間を除いて再灌流まで続けた。
【0014】
結果を、以下の表に示す。ポット(pot)虚血性の冠状血管反応は、虚血前の血管拡張反応のパーセンテージで表される。
【0015】
【表1】

【0016】
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン(10-6M)によるラット心臓の灌流は、そのラセミ化合物、(+)鏡像異性体およびラセミ化合物、またはSH対照と対照的に、10分間の全体的虚血の後、内皮性機能を保存した。
【0017】
自発性高血圧ラットにおける心筋梗塞
【0018】
梗塞の誘発
グリズウォルド(Griswold)ら(J. Pharmacol. Methods 1988、20:225〜235)に従って、主な左冠状動脈の一時閉塞により、心筋の虚血を誘発した。ナトリウム・ペントバルビタール(60mg/kg、腹腔内)で、SHラットに麻酔をかけた。気管切開術の後、小さい齧歯動物のための呼吸マスク(モデル:ハーヴァード552)によって、正常なpO2、pCO2、およびpHパラメータを維持するために、1,5〜2ml/l00gの一回拍出量で、55ストローク/分の割合で、それらの動物を室内の空気で換気した。右けい動脈にカテーテルを挿入し、前置増幅器(Hg−O2D イクスペリメトリア;登録商標)によって左心(systemic)動脈血圧(BP)の測定のために圧力トランスデューサ(P236B ステサム(Stetham))に接続した。心拍数(HR)は、心拍タコメーター(HR−01、イクスペリメトリア;登録商標)で測定した。皮下のスチール針電極によって、心電図(ECG基準リードIII)をデバイス記録計(ER−14、マイクロメド(Micromed;登録商標))上に記録された。胸部を左の開胸術によって開け、穏やかな圧力によって心臓を右面胸郭上に体外に出した。主な左冠状動脈の下に、4/0絹結紮糸を迅速に配置した。心臓を胸部内で取り替え、その動物を回復のために放置した。直腸温度をモニターし、37℃で一定に維持した。15分間の安定化期間(その間における70mmHg未満の持続した血圧および/又は不整脈の発生の観察は、除外に至る)で、この実験を開始した。1時間の冠状動脈閉塞により心筋虚血症を誘発させ、再灌流を1時間与えた。閉塞の6時間前に、薬物を経口投与した。
【0019】
心筋梗塞の定量化
実験の終わりに、心臓を迅速に取り出した。左室を次いで、房室の溝に平行に2mm厚さのセクションにスライスした。それらのスライスを、p−ニトロブルー テトラゾリウム(NBT)、グレードIIIの0.1%の水溶液中でpH7,4で15分間インキュベートした。非梗塞の領域は、NBTとデヒドロゲナーゼ酵素との反応から生じる沈殿物の形成のための青に着色された。梗塞心筋におけるこれらの酵素のロスが、沈殿物の形成を防ぐ;従って、リスク領域内の梗塞の領域は、淡黄色のままである。壊死の領域を、コンピュータ化された像解析(コリム(COLIM)、ピクトロン(Pictron)Kft)により決定し、左室のパーセンテージとして表した。
【0020】
【表2】

【0021】
結果
閉塞の6時間前の(−)鏡像異性体(100mg/kg)による急性の単一の経口治療は顕著に心筋梗塞サイズを低減させて、SHラットにおける(+)鏡像異性体と対照的に、生存率を増大させた。
【0022】
(−)鏡像異性体が、このモデルにおいてラセミ化合物または(+)鏡像異性体と比べて、より活性であるということができた。
【0023】
心臓の収縮性の力に対するラセミ5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン、およびその(−)および(+)鏡像異性体の効果
【0024】
材料および方法
ニュージーランド白ウサギ(雄、2〜3kg)を、首筋に対するブローで殺した。胸部を開けた後に、心臓を迅速に取り出した。右心室の乳頭状筋を解剖して、器官保持用チャンバにマウントし、0.5gのプレ張力を印加した。そのスーパーフゼートは、(ミリモルで)120のNaCl、5.4のKCl、2.7のCaCl2、1.1mgのMgCl2、1.1のNaH2PO4、24.0のNaHCO3、および11.0のグルコースを含んでいた。95%のO2と5%のCO2でガス処理したとき、このスーパーフゼートのpHは37℃で7.4であった。刺激および測定を、イクスペリメトリア(ハンガリー、ブダペスト)のアイソシス(Isosys)システムによって行った。その組織標本を、1000msのサイクル長さで、1ms幅の絶縁された一定の電圧によって整調した(paced)。パルスの振幅は拡張期のスレショルド値の2倍に等しく、一対の白金電極を通してデリバリーした。測定のスタートの前に、その機械的パラメータを安定化させるために、組織標本を60分間平衡化させた。薬物を洗い流すことなく、累積的に器官浴に添加した。インキュベーションの期間は、15〜20分間であった。測定したパラメータは:静止力(mg)、および対照の%で表された収縮性の力(mg)の振幅の変化であった。
【0025】
【表3】

【0026】
結果
その(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンは、10-6〜10-4モルの間の範囲で、ウサギ乳頭筋において正の変力動性効果を有し、(+)鏡像異性体およびラセミ化合物は負の変力動性効果を示した。左心室の収縮性の低下は、明白な心不全を有する患者において、その使用に禁忌を示すのに充分な望ましくない効果である。
【0027】
その(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンは、ラセミ化合物から製造することができる。ラセミ化合物は、例えば、N−[2−ヒドロキシ−3−(1−ピペリジニル)−プロポキシ]−3−ピリジン−カルボキシイミダミド(carboximidamide)のハロゲン化、およびそのハロゲン化化合物の閉環によって製造することができる。第一段階で、上記の出発化合物は、所望により不活性溶媒中で無機ハロゲン化剤(好ましくは塩化チオニル)と反応され、過剰の試薬は例えば蒸発によって除去される。このように得られるN−[2−ハロ−3−(1−ピペリジニル)−プロポキシ]−3−ピリジン−カルボキシイミダミドは、(所望により単離および精製の後)強塩基(例えばカリウムtertブチレート)で環化され、所望のラセミ5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンを生じる。
【0028】
ラセミ化合物の分割は、ジアステレオマー塩を形成することによって達成することができる。好ましくは光学活性(−)−L−ジベンゾイル酒石酸が、その分割のために用いられる。その塩は、適当な極性溶媒、好ましくは、メタノール中、またはメタノールと水の混合物中で形成され、次いで所望のジアステレオマーが濃縮された単離された塩は、更なる精製のために同じまたは類似した溶媒から再結晶される。精製の進行は、キラル収着剤の使用でHPLCクロマトグラフィーによって好都合にモニターされる。所望の純度が達成された際に、単にアルカリ化またはアルカリ抽出によって塩基が遊離にされ、再結晶により単離される。
【0029】
このように得られる(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンは、塩基として用いることができ、または所望により特定の応用に適した酸付加塩に変換することができる。この目的のために、その塩基は公知の方法において無機または有機酸と反応される。その(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン塩基、および酸付加塩は、本発明の対象の1つである。
【0030】
本発明によれば、これらの化合物は、血管疾患および血管異常に関連する疾患の治療および予防に用いられる。
【0031】
本発明の特定の態様によれば、これらの化合物は、心不全を有する患者に対する血管疾患および血管異常に関連する疾患の治療および予防に適用される。
【0032】
本発明の化合物は、ヒトの治療、および獣医学的診療において使用することができる。
【0033】
したがって、更なる面において、本発明は、(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンまたはその酸付加塩を患者に投与することを含む、血管疾患および血管異常に関連する疾患の治療および予防の方法に関する。本発明の好ましい態様ケースにおいて、(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンまたはその酸付加塩が、心不全を病む患者に投与される。
【0034】
本発明の化合物の用量は、患者および疾患に依存し、0.1〜200mg/kg/日、好ましくは0.1〜50mg/kg/日で変化する。ヒト治療のために、成人に対して1日当たり、好ましい経口投与量は10〜200mgであり、直腸投与の場合に1〜15mg、および非経口(parenteral)の治療の場合に2〜20mgである。これらの用量は、特に経口治療の場合には、所望により2〜3の投与に分配された単位用量で適用される。
【0035】
本発明は、更に、治療に有用な薬剤組成物に関する。本発明の薬剤組成物は、薬剤組成物において従来より用いられる助剤材料およびキャリアと、活性成分としての(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンまたはその酸付加塩を含む。
【0036】
本発明の組成物は、ヒトおよび獣医学の治療において、通常適用される固体または液体の形で処方化することができる。経口使用のために、タブレット、コートされたタブレット、糖衣錠、粒剤、カプセル剤、溶液またはシロップ、直腸の投与のために坐薬、および、非経口の投与のために、凍結乾燥されたまたは凍結乾燥されない注射可能なまたは注入溶液を、製剤の公知の方法を使用して製造することができる。経口組成物は、微結晶性セルロース、デンプン、ラクトース等の充填剤、ステアリン酸およびステアリン酸マグネシウム等の滑剤、糖等のコーティング材料、ヒドロキシメチルセルロース等のフィルム材料、メチルパラベンおよびサッカリン等のフレーバーまたは甘味料、および着色剤を含むことができる。坐薬における助剤は、例えばカカオ脂およびポリエチレングリコールであることができる。非経口の使用のための組成物は、塩類溶液(saline)、または所望によりプロピレングリコール等の分散・湿潤剤と、活性成分とを含むことができる。
【実施例】
【0037】
本発明は、以下の例で説明される。
【0038】
例1
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンの製造
19.7g(0.076モル)の5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンを300mlのメタノール中に溶解し、28.5g(0.076モル)の(−)−L−ジベンゾイル酒石酸一水和物を加えた。溶解が完了したとき結晶化が開始し、そのサスペンジョンを一晩中冷蔵庫中に保持した。沈殿した結晶性材料を濾過し、洗浄して、乾燥させた。159〜160℃の融点を有する23.2gの生成物を得た。
【0039】
このように得られた塩を、熱いメタノールから再結晶した。沈殿した材料の重量は、7.9gであった。
【0040】
ジベンゾイル酒石酸の酸性塩(7.9g)から、130mlの1M−炭酸ナトリウム水溶液で塩基を遊離させ、2×130mlのクロロホルムで抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。未精製の塩基(3.2g)を、41mlの酢酸エチルから再結晶した。沈殿物を濾過して、乾燥させた。2.55gの表題の生成物を、得た。融点:137〜140℃。
【0041】
[α]406=−72°(c=1(DMF)
光学純度:97.6%(HPLC)
IR(KBr、cm-1):3185(b)、2912、2890(b)、1603、1570、1460、1335、1128、975、857、801、694。
【0042】
1H−NMR(250MHz、溶媒:CDCl3、基準:CHCl3 δ/ppm/):8.88(1H、dd)、8.68(1H、dd)、8.00(1H、ddd)、7.36(1H、ddd):ピリジン;5.8(1H、s/br):NH;4,24(1H、dd)、3.45(1H、dd):OCH2;3.82(1H、m):N−CH−N;2.3〜2.7(6H、m):3×NCH2;1.75〜1.4(6H、m):3×ピペリジンCH2
【0043】
13C−NMR(63MHz、溶媒:CDCl3、基準:CDCl3=77.0ppm δ/ppm/):167.0(COOH);150.9、128.5、133.4、123.3、146.7(ピリジン2−3−4−5−6):150.9(C=NO);67.1(NOCH2);59.5(CH2NH):46.2(NCH):54.7、26.0、24.1(ピペリジン)。
【0044】
HPLCによる光学純度の決定、クロマトグラフィー条件:
カラム:ステンレススチール(250×4.6mm、キラルセル(CHIRALCEL)OCで充填されたもの)
温度:40℃
移動相:500mlのエタノール、および500mlのn−ヘキサンの混合物
流速:0,5 ml/mm
検出:UV 220nm
【0045】
近似の保持時間:
(−) 鏡像異性体:14分
(+) 鏡像異性体:16分
【0046】
例2
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン塩酸塩
例1の化合物の390mg(1.5ミリモル)を、4mlの酢酸エチル中に溶解した。0.4mlの3.7M−塩酸を加えた。1.0mlのメタノールの添加により溶解を促進させ、次いで溶液を蒸発乾固した。冷蔵庫で冷却するうちに、メタノールおよびジエチルエーテルの混合物から残渣(540mg)が結晶化した。280mg(69.2%)の生成物を得た。融点:150〜153℃。
【0047】
IR(KBr、cm-1):3177、2930、2622、2531、1608、1533、1463、1185、1117、1026、950、799、716。
【0048】
例3
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン マレエート
例1の化合物の390mg(1.5ミリモル)を、4mlの熱いi−プロピルアルコール中に溶解した。加熱しつつ、0.174gのマレイン酸を加え、溶解し、次いで溶液を蒸発乾固した。冷却しつつ、2.0mlの酢酸エチルから残渣(620mg)を結晶化させ、次いで濾過し、酢酸エチルで洗浄した。520mg(69.2%)の生成物を得た。融点:127〜130℃。
【0049】
IR(KBr、cm-1):3257、2941、2673、2561、1690、1362、1197、1100、946、866、819、721。
【0050】
例4
タブレット
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン
20.0mg
コーンスターチ 100.0mg
ラクトース 95.0mg
タルク 4.5mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
【0051】
活性化合物を微細に摩砕し、賦形剤と混合し、その混合物を均質化して、粒状化した。その粒剤を、タブレットに圧縮した。
【0052】
例5
カプセル
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン スルフェート
20.0mg
微結晶性セルロース 99.0mg
アモルファス・シリカ 1.0mg
【0053】
活性成分を添加剤と混合し、その混合物を均質化して、ゼラチン・カプセルに充填した。
【0054】
例6
糖衣錠
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン 臭化水素酸塩
25.0mg
ラクトース 82.5mg
ジャガイモデンプン 33.0mg
ポリビニルピロリドン 4.0mg
ステアリン酸マグネシウム 0.5mg
【0055】
活性成分およびポリビニルピロリドンを、エタノール中に溶解した。ラクトースおよびジャガイモデンプンを混合し、その混合物を、活性成分の粒状化溶液で均一に湿潤させた。篩いにかけた後、湿った粒剤を50℃で乾燥させ、篩いにかけた。ステアリン酸マグネシウムを加え、粒剤を糖衣錠コアに圧縮した。それらのコアを糖でコートし、ミツバチ・ワックスでつや出しした。
【0056】
例7
座剤
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン フマル酸塩
4.0mg
カカオ脂 3.5g
固体脂肪 50坐薬塊 15.0g
【0057】
カカオ脂および坐薬塊(mass)を40℃に加熱し、活性成分をその溶融物中に分散させた。その塊を坐薬の形にキャストした。
【0058】
例8
溶液
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン塩酸塩
500mg
ソルバイト(sorbite) l0g
サッカリンナトリウム 0.05g
二回蒸留水 充分量添加(q. s. ad) 100ml
【0059】
例9
注射バイアル
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン マレエート
2mg
生理的食塩水(パイロジェン無し、滅菌)充分量添加 2.0ml
【0060】
その溶液をバイアル中に充填し、バイアルをシールした。
【0061】
例10
注入溶液
500mlの体積の注入溶液を、以下の組成物で製造した:
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−、メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン メタンスルホネート
20mg
生理的食塩水(パイロジェン無し、滅菌)充分量添加 500ml

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン、およびその酸付加塩。
【請求項2】
血管疾患および血管異常に関連する疾患の治療および予防のための、(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−l 2,4−オキサジアジン、およびその酸付加塩の使用。
【請求項3】
心不全を有する患者に対する血管疾患および血管異常に関連する疾患の治療および予防のための、(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジン、およびその酸付加塩の使用。
【請求項4】
(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンまたはその酸付加塩を患者に投与することを含む、血管疾患および血管異常に関連する疾患の治療および予防のための方法。
【請求項5】
心不全を病む患者に(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンまたはその酸付加塩を投与することを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
活性成分としての(−)−5,6−ジヒドロ−5−[(1−ピペリジニル)−メチル−3−(3−ピリジル)−4H−1,2,4−オキサジアジンまたはその酸付加塩と、薬剤組成物において慣習的に使用される助剤およびキャリアとを含む薬剤組成物。

【公開番号】特開2011−201916(P2011−201916A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−128516(P2011−128516)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【分割の表示】特願2000−588174(P2000−588174)の分割
【原出願日】平成11年12月7日(1999.12.7)
【出願人】(506149900)シトルックス コーポレイション (5)
【Fターム(参考)】