説明

光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの製造方法

【課題】重要な医農薬中間体に成り得る光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの実用的な製造方法を提供する。
【解決手段】グリオキシル酸エステルとシリル化芳香族複素5員環を「光学活性な配位子を有する遷移金属錯体」の存在下に反応させ、引き続いて加水分解することにより光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルを製造することができる。本発明の製造方法は触媒的な不斉合成法であり、さらに不斉誘起の効率が極めて高い。また、無置換のフランや新規化合物であるピロール類が置換した光学活性ヒドロキシ酢酸エステルにも好適に適応でき、さらにチオフェン類が置換した光学活性ヒドロキシ酢酸エステルも非常に高い光学純度で製造することができる。
この様に、本発明は、重要な医農薬中間体に成り得る光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの実用的な製造方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重要な医農薬中間体に成り得る光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明で対象とする光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルは、重要な医農薬中間体に成り得る。芳香族複素5員環がピロール骨格であるヒドロキシ酢酸エステルに関しては、ラセミ体の合成方法が非特許文献1に報告されているが、光学活性体は新規化合物である。また、芳香族複素5員環がフラン骨格であるヒドロキシ酢酸エステルに関しては、光学活性体の合成方法が非特許文献2から4に報告されている。さらに、芳香族複素5員環がチオフェン骨格であるヒドロキシ酢酸エステルに関しては、光学活性体の合成方法が非特許文献4に報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Chem.Commun.(英国),2002年,p.1336−1337
【非特許文献2】Organic Letters(米国),2006年,第8巻,p.5045−5048
【非特許文献3】Organic Letters(米国),2008年,第10巻,p.2955−2958
【非特許文献4】Tetrahedron:Asymmetry(英国),1997年,第8巻,p.1083−1099
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、重要な医農薬中間体に成り得る光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの実用的な製造方法を提供することにある。非特許文献1は、本発明で対象とする光学活性体を製造することができなかった。非特許文献2は、ジアステレオ選択的な反応であるため不斉源を量論的に必要とし、さらにルイス酸も量論的に必要である。非特許文献3は、触媒的な不斉反応であるため非特許文献2の問題点をある程度解決しているが、工業的な製造方法という観点からすると不斉触媒の使用量が依然多く(最少でも0.1モル%)、さらに生成物の光学純度も医薬中間体の用途には満足できるものではなかった(最大でも97%ee)。また、求核剤が無置換のフラン(C44O)では反応性が低く、目的物を収率良く得ることができなかった(45%)。非特許文献4は、非特許文献3と同様の問題点を有し、不斉誘起の効率は非特許文献3に比べて格段に低いものであった(不斉触媒を0.5モル%用いても生成物の光学純度は最大でも48%eeであった)。また、フリーデル−クラフツ型反応による製造方法では、求核剤が反応性の高いピロール類やチオフェン類の場合には、ビス付加物(求核剤:求電子剤=1:2または2:1)が副生し易いという問題点があった(非特許文献1およびJ.Org.Chem.(米国),2000年,第65巻,p.4732−4735を参照)。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、一般式[1]で示されるグリオキシル酸エステルと一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環を「光学活性な配位子を有する遷移金属錯体」の存在下に反応させ、引き続いて加水分解することにより、一般式[3]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルが製造できることを見出した。
【0006】
本発明の反応の特徴は、シリル基が置換した炭素原子上で脱シリル化を伴いながら炭素−炭素結合形成反応が進行する(スキーム1を参照)。一方、非特許文献3では、シリル基を残したまま2位でフリーデル−クラフツ型の反応が進行し、同一の求核剤を用いても異なる生成物が得られる。両者の反応機構は全く異なり、本発明で開示する反応は従来全く知られていないものである。
【0007】
【化1】

【0008】
一般式[1]で示されるグリオキシル酸エステルのエステル部位のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基またはヘキシル基が好ましく、大量規模での入手が容易である。一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環としては、芳香族複素5員環上の3つの置換基が全て水素原子であり、ケイ素原子上の3つの置換基がそれぞれ独立にアルキル基であり、且つ芳香族複素5員環が、アミノ基が保護されたピロール、フランまたはチオフェンであるものが好ましく、大量規模での調製が容易である。「光学活性な配位子を有する遷移金属錯体」としては、「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」が好ましく、「光学活性な配位子を有する2価カチオン性のパラジウム錯体」が特に好ましく、所望の反応が良好に進行する。
【0009】
本発明の製造方法では、一般式[1]で示されるグリオキシル酸エステルと一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環を「光学活性な配位子を有する遷移金属錯体」の存在下に反応させた後に引き続いて加水分解を行うが、該加水分解としては、酸加水分解が好ましく、所望の反応を効果的に行うことができる。
【0010】
本発明の製造方法で得られる一般式[7]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルは新規化合物であり、特に重要な医農薬中間体に成り得る。該化合物の中でもエステル部位のアルキル基がメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基またはヘキシル基であり、芳香族複素5員環上の3つの置換基が全て水素原子であり、且つ芳香族複素5員環が、アミノ基が保護されたピロールであるものが好ましく、大量規模での製造が可能である。
【0011】
この様に、新規化合物を含む光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの有用な製造方法を見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明は[発明1]から[発明5]を含み、重要な医農薬中間体に成り得る光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの実用的な製造方法を提供する。
【0013】
[発明1]
一般式[1]
【0014】
【化2】

【0015】
[式中、R1はアルキル基を表す]で示されるグリオキシル酸エステルと、一般式[2]
【0016】
【化3】

【0017】
[式中、R2はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基を表し、nはR2の置換基数を表し、0から3の任意の整数を採り、任意の炭素原子上に任意の組み合わせで置換することができる(nが0の場合は、芳香族複素5員環上の3つの置換基が全て水素原子であることを意味し、nが2以上の場合は、R2はそれぞれ独立に上記の置換基を採ることができる)。R3、R4およびR5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表し、Xはアミノ基(NH)、アルキルアミノ基(NR;Rはアルキル基を表す)、アミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)、酸素原子または硫黄原子を表す]で示されるシリル化芳香族複素5員環を「光学活性な配位子を有する遷移金属錯体」の存在下に反応させ、引き続いて加水分解することにより、一般式[3]
【0018】
【化4】

【0019】
[式中、R1、R2、nおよびXは上記と同じであり、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルを製造する方法。
【0020】
[発明2]
一般式[4]
【0021】
【化5】

【0022】
[式中、R6はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基またはヘキシル基を表す]で示されるグリオキシル酸エステルと、一般式[5]
【0023】
【化6】

【0024】
[式中、R7、R8およびR9はそれぞれ独立にアルキル基を表し、Yはアミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)、酸素原子または硫黄原子を表す]で示されるシリル化芳香族複素5員環を「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」の存在下に反応させ、引き続いて酸加水分解することにより、一般式[6]
【0025】
【化7】

【0026】
[式中、R6およびYは上記と同じであり、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルを製造する方法。
【0027】
[発明3]
発明2において、「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」が「光学活性な配位子を有する2価カチオン性のパラジウム錯体」であることを特徴とする、発明2に記載の光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの製造方法。
【0028】
[発明4]
一般式[7]
【0029】
【化8】

【0030】
[式中、R1はアルキル基を表し、R2はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基を表し、nはR2の置換基数を表し、0から3の任意の整数を採り、任意の炭素原子上に任意の組み合わせで置換することができる(nが0の場合は、芳香族複素5員環上の3つの置換基が全て水素原子であることを意味し、nが2以上の場合は、R2はそれぞれ独立に上記の置換基を採ることができる)。Z1はアミノ基(NH)、アルキルアミノ基(NR;Rはアルキル基を表す)またはアミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステル。
【0031】
[発明5]
一般式[8]
【0032】
【化9】

【0033】
[式中、R6はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基またはヘキシル基を表し、Z2はアミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステル。
【発明の効果】
【0034】
本発明の製造方法は触媒的な不斉合成法であり、量論的な不斉源やルイス酸を必要としない。さらに、不斉誘起の効率が極めて高いため、不斉触媒の使用量が極端に少なくても(0.01モル%)生成物の光学純度が非常に高く(99%ee、実施例7を参照)、工業的な製造方法としても採用することができる。また、本発明では、従来技術のフリーデル−クラフツ型反応では求核剤の反応性が低いために収率良く得ることができなかった、無置換のフランが置換した光学活性ヒドロキシ酢酸エステルも高い収率で製造することができる。さらに、本発明では、新規化合物であるピロール類が置換した光学活性ヒドロキシ酢酸エステルやチオフェン類が置換した光学活性ヒドロキシ酢酸エステルも非常に高い光学純度で収率良く製造することができ、且つ求核剤の高い反応性に起因するビス付加物も殆ど副生しない。本発明の有用性は、同様の生成物を与える従来技術との比較において明らかである(表1を参照)。本発明(実施例4)の収率および光学純度は、非特許文献3(テーブル3/エントリー2)に比べて格段に優れている。さらに、本発明の実施例4と比較例1の比較より、好結果を得るには求核剤としてシリル化された芳香族複素5員環を用いる必要性も明らかである。
【0035】
【化10】

【0036】
この様に、本発明は、重要な医農薬中間体に成り得る光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの実用的な製造方法を提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの製造方法について詳細に説明する。
【0038】
一般式[1]で示されるグリオキシル酸エステルのR1はアルキル基を表す。アルキル基は炭素数が1から12のものが挙げられ、炭素数が3以上のものは直鎖、分枝または環式を採ることができる。一般式[1]で示されるグリオキシル酸エステルの中でも大量規模での入手が容易なメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基またはヘキシル基が好ましく、光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの製造に好適である。
【0039】
一般式[1]で示されるグリオキシル酸エステルは、J.Chem.Soc.(英国),1956年,p.26−30、Synth.Commun.(米国),1996年,第26巻,p.243−251等を参考にして同様に調製することができる。また、Aldrich(カタログ2009−2010)や東京化成(カタログ2008−2009)から市販されているグリオキシル酸エチルの〜50%トルエン溶液や47%トルエン溶液を利用するのが簡便である。これらのトルエン溶液は(部分的に)ポリマー化した状態で存在するため、使用する直前に熱的に解重合したものを用いることが好ましく、新たに蒸留したものを用いることが特に好ましい。解重合や蒸留は必要に応じて五酸化リン(P25)、濃硫酸、塩化カルシウム等の添加剤の存在下に行うことができる。
【0040】
一般式[1]で示されるグリオキシル酸エステルの使用量は、一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環1モルに対して0.7モル以上を用いれば良く、0.8から10モルが好ましく、0.9から5モルが特に好ましい。
【0041】
一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環のR2はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基を表し、nはR2の置換基数を表し、0から3の任意の整数を採り、任意の炭素原子上に任意の組み合わせで置換することができる(nが0の場合は、芳香族複素5員環上の3つの置換基が全て水素原子であることを意味し、nが2以上の場合は、R2はそれぞれ独立に上記の置換基を採ることができる)。アルキル基は上記の一般式[1]で示されるグリオキシル酸エステルのR1のアルキル基が挙げられる。アルケニル基は上記のアルキル基の任意の炭素−炭素単結合が任意の数で二重結合に置き換わったものが挙げられる。二重結合の幾何異性はE体、Z体またはこれらの混合物を採ることができる。アリール基は炭素数が6から18のフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の芳香族炭化水素基または炭素数が1から12のピロリル基、フリル基、チエニル基等の芳香族複素環基が挙げられる。アルコキシカルボニル基(COOR;Rはアルキル基を表す)のアルキル基は上記のアルキル基が挙げられる。アルコキシ基(OR;Rはアルキル基を表す)のアルキル基は上記のアルキル基が挙げられる。ハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子が挙げられる。トリアルキルシリル基(SiR3;Rはそれぞれ独立にアルキル基を表す)のアルキル基は上記のアルキル基が挙げられる。置換アルキル基、置換アルケニル基および置換アリール基はそれぞれ上記のアルキル基、アルケニル基およびアリール基の任意の炭素原子上に任意の数でさらに任意の組み合わせで置換基を有することができる。係る置換基としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等の芳香環基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等の低級アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、ヒドロキシル保護体、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子のハロゲン原子等が挙げられる。R2は下記式
【0042】
【化11】

【0043】
で示されるシリル化芳香族複素5員環の矢印で示した位置で置換することができる。
【0044】
一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環のR3、R4およびR5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。アルキル基は上記の一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環のR2のアルキル基が挙げられる。アリール基は炭素数が6から18のフェニル基、ナフチル基、アントリル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。アルコキシ基は上記の一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環のR2のアルコキシ基が挙げられる。
【0045】
一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環のXはアミノ基(NH)、アルキルアミノ基(NR;Rはアルキル基を表す)、アミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)、酸素原子または硫黄原子を表す。アルキルアミノ基のアルキル基は上記の一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環のR2のアルキル基が挙げられる。アミノ保護体のアミノ保護基はProtective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.に記載されたものが挙げられる。その中でもアリル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、ホルミル基、アセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、9−フルオレニルメトキシカルボニル基、ベンゼンスルホニル基、パラトルエンスルホニル基およびオルトニトロベンゼンスルホニル基が好ましく、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリフルオロアセチル基、tert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基およびオルトニトロベンゼンスルホニル基が特に好ましい。
【0046】
本明細書において、“低級”は炭素数が1から6のものが挙げられ、炭素数が3以上のものは直鎖、分枝または環式を採ることができる。また、“ヒドロキシル保護体のヒドロキシル保護基”は上記の保護基の成書に記載されたものが挙げられる。さらに、“アリール基”は芳香族炭化水素基以外に芳香族複素環基も含めて広義に扱う場合もある。
【0047】
一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環の中でも大量規模での調製が容易な芳香族複素5員環上の3つの置換基が全て水素原子であり、ケイ素原子上の3つの置換基がそれぞれ独立にアルキル基であり、且つ芳香族複素5員環が、アミノ基が保護されたピロール、フランまたはチオフェンであるものが好ましく、光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの製造に好適である。
【0048】
一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環は、Angew.Chem.Int.Ed.(ドイツ),2008年,第47巻,p.3004−3007、Eur.J.Org.Chem.(ドイツ国),2005年,p.4401−4405、J.Org.Chem.(米国),1985年,第50巻,p.5881−5882等を参考にして同様に調製することができる。
【0049】
「光学活性な配位子を有する遷移金属錯体」としては、一般式[9]
【0050】
【化12】

【0051】
[式中、X−*−Xは光学活性SEGPHOS誘導体(図A)、光学活性BINAP誘導体(図B)、光学活性BIPHEP誘導体(図C)、光学活性P−Phos誘導体(図D)、光学活性PhanePhos誘導体(図E)、光学活性1,4−Et2−cyclo−C68−NUPHOS(図F)または光学活性BOX誘導体(図G)等を表し、YはNi、Pd、PtまたはCuを表し、ZはSbF6、ClO4、BF4、OTf(Tf;CF3SO2)、AsF6、PF6またはB(3,5−(CF32634を表す]で示される「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」
【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
【化15】

【0055】
【化16】

【0056】
【化17】

【0057】
【化18】

【0058】
【化19】

【0059】
または、一般式[10]
【0060】
【化20】

【0061】
[式中、Rは水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子またはトリフルオロメチル基を表し、Meはメチル基を表す]で示されるBINOL−Ti錯体等が挙げられる。
【0062】
その中でも「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」が好ましく、「光学活性な配位子を有する2価カチオン性のパラジウム錯体」が特に好ましい(光学活性な配位子としては代表的なものを挙げており、CATALYTIC ASYMMETRIC SYNTHESIS,Second Edition,2000,Wiley−VCH,Inc.に記載されたものを適宜使用することができる。また、Zとしては、SbF6、BF4、OTfおよびB(3,5−(CF32634が好ましく、SbF6、OTfおよびB(3,5−(CF32634が特に好ましい)。
【0063】
これらの錯体は公知の方法により調製することができ(例えば、Tetrahedron Letters(英国),2004年,第45巻,p.183−185、Tetrahedron:Asymmetry(英国),2004年,第15巻,p.3885−3889、Angew.Chem.Int.Ed.(ドイツ国),2005年,第44巻,p.7257−7260、J.Org.Chem.(米国),2006年,第71巻,p.9751−9764、J.Am.Chem.Soc.(米国),1999年,第121巻,p.686−699、nature(英国),1997年,第385巻,p.613−615等)、単離した錯体は当然、それ以外に、反応系中で予め調製し単離せずに用いることもできる。これらの錯体には水やアセトニトリル等の有機溶媒が配位(溶媒和)したものを用いることもできる。
【0064】
また、一般式[11]
【0065】
【化21】

【0066】
[式中、X−*−X、YおよびZは一般式[9]と同じものを表す]で示される「光学活性な配位子を有するカチオン性2核の遷移金属錯体」も、一般式[9]で示される「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」と同様に用いることができる場合がある。
【0067】
光学活性な配位子の立体化学[(R)、(S)、(R,R)、(S,S)等]としては、目的とする光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの立体化学に応じて適宜使い分けることができる。光学活性な配位子の光学純度としては、目標とする光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの光学純度に応じて適宜設定すれば良く、通常は95%ee(エナンチオマー過剰率)以上を用いれば良く、97%ee以上が好ましく、99%ee以上が特に好ましい。これらの光学活性な配位子の中でも、BINAP誘導体が両エナンチオマーを最も安価に入手することができ、かつ不斉触媒に誘導した時の活性も極めて高いため好適であり、BINAPおよびTol−BINAPが好ましく、BINAPが特に好ましい。
【0068】
「光学活性な配位子を有する遷移金属錯体」の使用量は、一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環1モルに対して0.3モル以下を用いれば良く、0.2から0.000001モルが好ましく、0.1から0.00001モルが特に好ましい。
【0069】
反応溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル系等が挙げられる。その中でも芳香族炭化水素系、ハロゲン化炭化水素系およびエーテル系が好ましく、芳香族炭化水素系およびハロゲン化炭化水素系が特に好ましい。これらの反応溶媒は単独または組み合わせて用いることができる。また、本発明の製造方法は反応溶媒の非存在下に行うこともできる。
【0070】
反応溶媒を用いる場合、反応溶媒の使用量は、一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環1モルに対して0.001L以上を用いれば良く、0.005から50Lが好ましく、0.01から30Lが特に好ましい。本発明は高い生産性が期待できる高濃度条件下(0.01から0.1L)で実施しても好結果が得られるため(実施例4から7を参照)、本濃度条件は好ましい態様である。
【0071】
反応温度は、−120から+120℃の範囲で行えば良く、−110から+110℃が好ましく、−100から+100℃が特に好ましい。
【0072】
反応時間は、120時間以内の範囲で行えば良く、原料基質、不斉触媒および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴(NMR)等の分析手段により反応の進行状況をモニターし、原料基質が殆ど消失した時点を終点とすることが好ましい。
【0073】
本発明の製造方法では、一般式[1]で示されるグリオキシル酸エステルと一般式[2]で示されるシリル化芳香族複素5員環を「光学活性な配位子を有する遷移金属錯体」の存在下に反応させた後に引き続いて加水分解を行うが、該加水分解前の反応混合液には、一般式[3]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルと、一般式[12]
【0074】
【化22】

【0075】
[式中、R1はアルキル基を表し、R2はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基を表し、nはR2の置換基数を表し、0から3の任意の整数を採り、任意の炭素原子上に任意の組み合わせで置換することができる(nが0の場合は、芳香族複素5員環上の3つの置換基が全て水素原子であることを意味し、nが2以上の場合は、R2はそれぞれ独立に上記の置換基を採ることができる)。R3、R4およびR5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表し、Xはアミノ基(NH)、アルキルアミノ基(NR;Rはアルキル基を表す)、アミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)、酸素原子または硫黄原子を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルのシリルエーテル体の混合物として存在する。よって、該シリルエーテル体の酸素−ケイ素結合の加水分解により、目的とする一般式[3]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルに全てを完全に変換することができる。係る加水分解としては、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.に記載された、ヒドロキシル基のシリル保護体の脱保護条件等を採用することができる。その中でも酸性条件下での加水分解(酸加水分解)が好ましく、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸等の無機酸の水溶液による加水分解が特に好ましい。加アルコール分解も加水分解と同等の効果を得ることができるため、本発明の請求項の加水分解には加アルコール分解も含まれる。また、これらの分解は必要に応じて上記の反応溶媒の存在下に行うこともできる。
【0076】
後処理は、反応終了液に対して有機合成における一般的な操作を行うことにより、目的とする一般式[3]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルを得ることができる。粗生成物は必要に応じて活性炭処理、蒸留、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の操作により、高い純度に精製することができる。加水分解前の反応混合液に含まれる不斉触媒をショートカラムで取り除き、引き続いて酸加水分解を行う操作が効果的な場合がある。
【実施例】
【0077】
実施例により本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例7で得られた生成物の絶対配置は非特許文献4に記載のS体の旋光度の符号(+)と比較することにより決定した。実施例3と8の絶対配置は実施例7の結果より類推した。
【0078】
[実施例1から3]
代表例として実施例3を以下に示す。実施例1と2は実施例3を参考にして同様に行った。実施例1から3の結果を表2に纏めた。
塩化メチレン0.25mLに、下記式
【0079】
【化23】

【0080】
で示される(S)−BINAP−PdCl20.8mg(0.001mmol)とAgSbF60.76mg(0.0022mmol)をアルゴン雰囲気下で加え、室温で30分間攪拌した(一般式[9]で示される「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体(X−*−X;(S)−BINAP、Y;Pd、Z;SbF6)」が反応系中で生成)。新たに蒸留した下記式
【0081】
【化24】

【0082】
で示されるグリオキシル酸エチル204mg(2mmol)と、下記式
【0083】
【化25】

【0084】
で示されるN−tert−ブトキシカルボニル−2−トリメチルシリルピロール239mg(1mmol)を−78℃で加え、−40℃で48時間攪拌した。反応混合液を直接、ショートカラム(シリカゲル/n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に付し、「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」を取り除き、濾洗液を減圧濃縮し、テトラヒドロフラン3mLと1N塩酸2mLを加え、室温で10分間攪拌した。反応終了液をジエチルエーテルで3回抽出し、回収有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル/n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製することにより、下記式
【0085】
【化26】

【0086】
で示される光学活性ピロール類置換ヒドロキシ酢酸エステルのR体を215mg得た。収率は80%であった。光学純度はキラル液体クロマトグラフィー[CHIRALPAK AD−H,n−ヘキサン:イソプロパノール=97:3,流量1mL/min,UV検出器254nm,保持時間;S体(マイナー)17.9分,R体(メジャー)22.1分]により99%eeであった。比旋光度は[α]D25 −50.7(c=0.96 in CHCl3)であった。1H,13C−NMRおよびHRMSを下に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,Me4Si)δ1.24(t,J=7.2Hz,3H),1.57(s,9H),4.04(d,J=8.1Hz,1H),4.18−4.26(m,2H),5.37(m,1H),6.12(t,J=3.6Hz,1H),6.25(dd,J=1.5,3.6Hz,1H),7.38(dd,J=1.5,3.6Hz,1H).
13C−NMR(75MHz,CDCl3,Me4Si)δ14.2,27.9,61.6,67.8,84.8,110.4,115.5,122.5,131.7,149.8,171.6.
HRMS(TOF)Calcd for C1319NO5Na[M+Na]+:292.1161,Found:292.1160.
【0087】
【化27】

【0088】
[実施例4から7]
代表例として実施例7を以下に示す。実施例4から6は実施例7を参考にして同様に行った。実施例4から7の結果を表3に纏めた。
塩化メチレン0.25mLに、下記式
【0089】
【化28】

【0090】
で示される(S)−BINAP−PdCl20.4mg(0.0005mmol)とAgSbF60.38mg(0.0011mmol)をアルゴン雰囲気下で加え、室温で30分間攪拌した(一般式[9]で示される「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体(X−*−X;(S)−BINAP、Y;Pd、Z;SbF6)」が反応系中で生成)。新たに蒸留した下記式
【0091】
【化29】

【0092】
で示されるグリオキシル酸エチル1.02g(10mmol)と、下記式
【0093】
【化30】

【0094】
で示される2−トリメチルシリルフラン701mg(5mmol)を−40℃で加え、−20℃で48時間攪拌した。反応混合液を直接、ショートカラム(シリカゲル/n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に付し、「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」を取り除き、濾洗液を減圧濃縮し、テトラヒドロフラン5mLと1N塩酸3mLを加え、室温で10分間攪拌した。反応終了液をジエチルエーテルで3回抽出し、回収有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル/n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製することにより、下記式
【0095】
【化31】

【0096】
で示される光学活性フラン類置換ヒドロキシ酢酸エステルのR体を604mg得た。収率は71%であった。光学純度はキラル液体クロマトグラフィー[CHIRALPAK OD−H,n−ヘキサン:イソプロパノール=96:4,流量1mL/min,UV検出器210nm,保持時間;S体(マイナー)11.2分,R体(メジャー)14.1分]により99%eeであった。比旋光度は[α]D25 −108.3(c=0.80 in CHCl3)であった。1H、13C−NMRおよびHRMSを下に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,Me4Si)δ1.27(t,J=7.2Hz,3H),3.33(d,J=6.6Hz,1H),4.25−4.33(m,2H),5.17(m,1H),6.35−6.38(m,2H),7.40(dd,J=0.9,1.8Hz,1H).
13C−NMR(75MHz,CDCl3,Me4Si)δ14.0,62.4,66.9,108.5,110.5,142.9,151.0,171.5.
HRMS(TOF)Calcd for C8114[M+H]+:171.0657,Found:171.0651.
【0097】
【化32】

【0098】
[実施例8]
塩化メチレン2mLに、下記式
【0099】
【化33】

【0100】
で示される(S)−BINAP−PdCl28mg(0.01mmol)とAgSbF67.6mg(0.022mmol)をアルゴン雰囲気下で加え、室温で30分間攪拌した(一般式[9]で示される「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体(X−*−X;(S)−BINAP、Y;Pd、Z;SbF6)」が反応系中で生成)。新たに蒸留した下記式
【0101】
【化34】

【0102】
で示されるグリオキシル酸エチル60.6mg(0.6mmol)と、下記式
【0103】
【化35】

【0104】
で示される2−トリメチルシリルチオフェン31.3mg(0.2mmol)を0℃で加え、同温度で24時間攪拌した。反応混合液を直接、ショートカラム(シリカゲル/n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に付し、「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」を取り除き、濾洗液を減圧濃縮し、テトラヒドロフラン1mLと1N塩酸1mLを加え、室温で10分間攪拌した。反応終了液をジエチルエーテルで3回抽出し、回収有機層を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル/n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製することにより、下記式
【0105】
【化36】

【0106】
で示される光学活性チオフェン類置換ヒドロキシ酢酸エステルのS体を31.7mg得た。収率は85%であった。光学純度はキラル液体クロマトグラフィー[CHIRALPAK AD−H,n−ヘキサン:イソプロパノール=96:4,流量1mL/min,UV検出器210nm,保持時間;R体(マイナー)15.5分,S体(メジャー)17.4分]により98%eeであった。比旋光度は[α]D25 −73.8(c=0.55 in CHCl3)であった。1H、13C−NMRおよびHRMSを下に示す。
1H−NMR(300MHz,CDCl3,Me4Si)δ1.29(t,J=7.2Hz,3H),3.45(br,1H),4.24−4.35(m,2H),5.40(s,1H),6.99(dd,J=3.6,5.1Hz,1H),7.10(d,J=3.6Hz,1H),7.28(dd,J=1.2,5.1Hz,1H).
13C−NMR(75MHz,CDCl3,Me4Si)δ14.0,62.6,69.1,125.3,125.6,126.9,141.5,172.6.
HRMS(TOF)Calcd for C8103SNa[M+Na]+:209.0248,Found:209.0250.
実施例8の結果をスキーム2に纏めた。
【0107】
【化37】

【0108】
[比較例1]
塩化メチレン2mLに、下記式
【0109】
【化38】

【0110】
で示される(S)−BINAP−PdCl28mg(0.01mmol)とAgSbF67.6mg(0.022mmol)をアルゴン雰囲気下で加え、室温で30分間攪拌した(一般式[9]で示される「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体(X−*−X;(S)−BINAP、Y;Pd、Z;SbF6)」が反応系中で生成)。新たに蒸留した下記式
【0111】
【化39】

【0112】
で示されるグリオキシル酸エチル60.6mg(0.6mmol)と、下記式
【0113】
【化40】

【0114】
で示されるフラン13.6mg(0.2mmol)を−40℃で加え、0℃で24時間攪拌した。反応混合液を直接、ショートカラム(シリカゲル/n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)に付し、「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」を取り除き、濾洗液を減圧濃縮し、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル/n−ヘキサン:酢酸エチル=4:1)で精製することにより、下記式
【0115】
【化41】

【0116】
で示される光学活性フラン類置換ヒドロキシ酢酸エステルのR体を21.1mg得た。収率は62%であった。光学純度はキラル液体クロマトグラフィー[CHIRALPAK OD−H,n−ヘキサン:イソプロパノール=96:4,流量1mL/min,UV検出器210nm,保持時間;S体(マイナー)11.2分,R体(メジャー)14.1分]により30%eeであった。1Hおよび13C−NMRは実施例4で得られたものと同等であった。
【0117】
比較例1の結果をスキーム3に纏めた。
【0118】
【化42】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式[1]
【化1】

[式中、R1はアルキル基を表す]で示されるグリオキシル酸エステルと、一般式[2]
【化2】

[式中、R2はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基を表し、nはR2の置換基数を表し、0から3の任意の整数を採り、任意の炭素原子上に任意の組み合わせで置換することができる(nが0の場合は、芳香族複素5員環上の3つの置換基が全て水素原子であることを意味し、nが2以上の場合は、R2はそれぞれ独立に上記の置換基を採ることができる)。R3、R4およびR5はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表し、Xはアミノ基(NH)、アルキルアミノ基(NR;Rはアルキル基を表す)、アミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)、酸素原子または硫黄原子を表す]で示されるシリル化芳香族複素5員環を「光学活性な配位子を有する遷移金属錯体」の存在下に反応させ、引き続いて加水分解することにより、一般式[3]
【化3】

[式中、R1、R2、nおよびXは上記と同じであり、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルを製造する方法。
【請求項2】
一般式[4]
【化4】

[式中、R6はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基またはヘキシル基を表す]で示されるグリオキシル酸エステルと、一般式[5]
【化5】

[式中、R7、R8およびR9はそれぞれ独立にアルキル基を表し、Yはアミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)、酸素原子または硫黄原子を表す]で示されるシリル化芳香族複素5員環を「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」の存在下に反応させ、引き続いて酸加水分解することにより、一般式[6]
【化6】

[式中、R6およびYは上記と同じであり、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルを製造する方法。
【請求項3】
請求項2において、「光学活性な配位子を有する2価カチオン性の遷移金属錯体」が「光学活性な配位子を有する2価カチオン性のパラジウム錯体」であることを特徴とする、請求項2に記載の光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステルの製造方法。
【請求項4】
一般式[7]
【化7】

[式中、R1はアルキル基を表し、R2はアルキル基、置換アルキル基、アルケニル基、置換アルケニル基、アリール基、置換アリール基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子またはトリアルキルシリル基を表し、nはR2の置換基数を表し、0から3の任意の整数を採り、任意の炭素原子上に任意の組み合わせで置換することができる(nが0の場合は、芳香族複素5員環上の3つの置換基が全て水素原子であることを意味し、nが2以上の場合は、R2はそれぞれ独立に上記の置換基を採ることができる)。Z1はアミノ基(NH)、アルキルアミノ基(NR;Rはアルキル基を表す)またはアミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステル。
【請求項5】
一般式[8]
【化8】

[式中、R6はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、アミル基またはヘキシル基を表し、Z2はアミノ保護体(NP;Pはアミノ保護基を表す)を表し、*は不斉炭素を表す]で示される光学活性芳香族複素5員環置換ヒドロキシ酢酸エステル。

【公開番号】特開2011−162526(P2011−162526A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30659(P2010−30659)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、産学共同シーズイノベーション化事業育成ステージにおける「東京工業大学大学院理工学研究科教授 三上幸一」を研究リーダーとする研究課題「光学活性含フッ素化合物の工業的製造法の開発」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】