説明

光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物の製造方法

【課題】 本発明の課題は、入手容易な加水分解酵素を用いて、基質に対し少ない酵素量で、反応時間が短く、簡便な操作法によって、3−アミノグルタル酸ジエステル化合物から、高収率、高選択的に光学的に純粋な3−アミノグルタル酸モノエステル化合物を得る、工業的に好適な光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物の製造方法を提供することである。
【解決手段】 本発明の課題は、Candida antarcticaを起源とするリパーゼの存在下、3−アミノグルタル酸ジエステル化合物の片方のエステル基のみを選択的に加水分解反応させることを特徴とする、光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物の製造方法によって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−アミノグルタル酸ジエステル化合物から、医薬・農薬の原体又は中間体、例えば3−ラクタム系抗生物質の合成原料として有用な光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物を製造する方法に関する。本発明によって合成される光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物、特に、光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルは、例えば、メタノールに溶解させ、パラジウム炭素存在下で水素に接触させる公知の接触還元法を用いることによって3−アミノグルタル酸モノメチルエステルに誘導出来、更に公知の方法に従って、医薬品として有用な3−ラクタム系抗生物質の基本骨格をなす光学活性4−メトキシカルボニルメチル−2−オキソ−アゼチジンに誘導出来る(例えば、非特許文献1参照)。
【背景技術】
【0002】
従来、加水分解酵素を用いて光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸ジエステル化合物の片方のエステル基のみを選択的に加水分解することにより、光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物を製造する方法としては、例えば、下記に記載の方法が知られている。
【0003】
(1)3−置換アミノグルタル酸ジエステル化合物、特に3−ベンジルオキシカルボニルグルタル酸ジアルキルエステル、又はs−ブトキシカルボニルグルタル酸ジアルキルエステルの片方のエステル基のみを選択的に加水分解する能力を有する微生物の培養液、菌体、又は菌体処理物を作用させ、次いで、アミノ保護基を常法によって脱保護することによって光学活性(S)−3−アミノグルタル酸モノアルキルエステルを得る方法が記載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
(2)3−アミノグルタル酸ジアルキルエステル化合物を、固定化されたカルボン酸エステル加水分解酵素、特に哺乳動物の肝臓を起源とするエステラーゼを固定化した酵素を用いて光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノアルキルエステル化合物を得る方法が記載されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
(3)加水分解酵素として豚肝臓を起源とするエステラーゼを用いてアミノグルタル酸ジエステル化合物の片方のエステル基のみを選択的に加水分解することにより、光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物を得る方法が記載されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、上記いずれの方法においても、使用酵素量、反応時間、生成物の光学純度にまだ改良の余地が残されており、更に効率的な手法、即ち容易に入手可能な酵素を用いて、より少ない触媒量で、短い反応時間で、収率良く、光学的に純粋な光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物を得る手法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57−177696号公報
【特許文献2】特開昭57−159493号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Am.Chem.Soc.,103,2406(1981)
【非特許文献2】Chimia,40,311(1986)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、入手容易な加水分解酵素を用いて、基質に対し少ない酵素量で、反応時間が短く、簡便な操作法によって、3−アミノグルタル酸ジエステル化合物から、高収率、高選択的に光学的に純粋な3−アミノグルタル酸モノエステル化合物を得る、工業的に好適な光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の課題は、Candida antarcticaを起源とするリパーゼの存在下、一般式(I)
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、Rは、アルキル基、アルケニル基又はアラルキル基、Rは、水素原子又は離脱可能なアミノ保護基を示す。)
で示される3−アミノグルタル酸ジエステル化合物の片方のエステル基のみを選択的に加水分解反応させることを特徴とする、一般式(II)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R及びRは、前記と同義である。)
で示される光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物の製造方法によって解決される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の酵素的加水分解反応では、例えば、下記の反応式(1)
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R、R及びRは、前記と同義である。)
によって示されるように、Candida antarcticaを起源とするリパーゼの存在下、前記の一般式(I)で示される3−アミノグルタル酸ジエステル化合物(以下、化合物(I)と称することもある。)の片方のエステル基のみを選択的に加水分解反応させることによって、一般式(II)で示される光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物(以下、化合物(II)と称することもある。)を得ることが出来る。
【0018】
化合物(I)のRは、アルキル基、アルケニル基又はアラルキル基を示す。
【0019】
前記Rのアルキル基とは、直鎖状又は分岐状の炭素原子数1〜10のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基のようなアルキル基が挙げられるが、好ましくはメチル基、エチル基である。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0020】
前記Rのアルケニル基とは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数2〜10のアルケニル基であり、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0021】
前記Rのアラルキル基とは、「置換基を有していないアラルキル基」又は「置換基を有するアラルキル基」である。
【0022】
「置換基を有していないアラルキル基」としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0023】
「置換基を有するアラルキル基」の置換基としては、例えば、ヒドロキシル基;ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基、ペンチルオキシル基、ヘキシルオキシル基、ヘプチルオキシル基、オクチルオキシル基、ノニルオキシル基、デシルオキシル基等の直鎖状又は分岐状の炭素数1〜10のアルコキシル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む);ベンジルオキシル基、フェネチルオキシル基等の炭素数7〜10のアラルキルオキシル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む);フェニルオキシル基等の炭素数6〜10のアリールオキシル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む);メトキシメトキシル基等の炭素数2〜10のアルコキシアルコキシル基(なお、これらの基は、各種異性体を含む);メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基等のRで定義した炭素数1〜10のアルキル基で置換されているアルキルアミノ基(なお、これらの基は、各種異性体を含む);ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基;ベンゾイルアミノ基等のアシルアミノ基が挙げられる。
【0024】
化合物(I)のRは水素原子、又は水素添加分解や温和な加水分解により離脱可能なアミノ保護基を示す。
【0025】
前記Rの離脱可能なアミノ保護基としては、例えば、ベンジル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル基、2−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、4−クロロベンジル基、2−ブロモベンジル基、3−ブロモベンジル基、4−ブロモベンジル基、2−フルオロベンジル基、3−フルオロベンジル基、4−フルオロベンジル基、2−ニトロベンジル基、3−ニトロベンジル基、4−ニトロベンジル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、ジフェニルメチル基等のアラルキル基;ベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、3−ニトロベンジルオキシカルボニル基、4−ニトロベンジルオキシカルボニル基、2−ブロモベンジルオキシカルボニル基、3−ブロモベンジルオキシカルボニル基、4−ブロモベンジルオキシカルボニル基、2−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3−メトキシベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基等のアラルキルオキシカルボニル基;t−ブチルオキシカルボニル基、t−アミルオキシカルボニル基等のアルキルオキシカルボニル基;アリルオキシカルボニル基;トリメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等のトリアルキルシリルカルボニル基が挙げられるが、好ましくは、好ましくはベンジル基、2−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、4−メトキシベンジル基、ジフェニルメチル基、ベンジルオキシカルボニル基、更に好ましくはベンジル基である。
【0026】
本発明の不斉加水分解反応において使用される化合物(I)は、例えば、3−ベンジルアミノグルタル酸ジエステルは、1,3−アセトンジカルボン酸エステル類とベンジルアミン類から得られるエナミン類を還元することによって容易に製造することが出来る。又、例えば、3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジエステルは、1,3−アセトンジカルボン酸エステル類から還元アミノ化によって得られる3−アミノグルタル酸ジエステルと、ベンジルオキシカルボニルクロライドから容易に製造することができる。
【0027】
前記のR、Rを有する化合物(I)の具体例としては、例えば、
3−アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−アミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−アミノグルタル酸ジプロピルメチルエステル、
3−アミノグルタル酸ジブチルエステル、
3−アミノグルタル酸ジイソブチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジプロピルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジブチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジペンチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジヘキシルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジヘプチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジオクチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジノニルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジデシルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジイソプロピルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジs−ブチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジt−ブチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジクロロメチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジベンジルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジ4−ニトロベンジルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジ4−トリフロメチルベンジルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジ4−クロロベンジルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジ4−ブロモベンジルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジ4−フルオロベンジルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジ4−メトキシベンジルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジビニルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジアリルエステル、
3−(2−メチルベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(3−メチルベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(4−メチルベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(2−メトキシベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(3−メトキシベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(4−メトキシベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(2−クロロベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(3−クロロベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(4−クロロベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(2−ブロモベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(3−ブロモベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(4−ブロモベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(2−フルオロベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(3−フルオロベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(4−フルオロベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(2−ニトロベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(3−ニトロベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(4−ニトロベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(2−メトキシベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(3−メトキシベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−(4−メトキシベンジル)アミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−t−ブチルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−t−ブチルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−トリフェニルメチルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−トリフェニルメチルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−t−ブチルジメチルシリルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−t−ブチルジメチルシリルアミノグルタル酸ジエチルエステル
等が挙げられるが、好ましくは、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジプロピルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジブチルエステル、
3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−t−ブチルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−t−ブチルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−トリフェニルメチルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−トリフェニルメチルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−t−ブチルジメチルシリルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−t−ブチルジメチルシリルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
更に好ましくは、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
特に好ましくは、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル、
3−ベンジルアミノグルタル酸ジエチルエステル、
である。
【0028】
本発明の不斉加水分解反応で使用される加水分解酵素としては、Candida antarcticaを起源とするリパーゼが使用される。この加水分解酵素は非固定化酵素、あるいは固定化酵素として市販品をそのまま用いることが出来る。
【0029】
前記加水分解酵素の使用量は、化合物(I)1gに対して、好ましくは0.1〜1000mg、更に好ましくは1〜200mgである。
【0030】
本発明の加水分解反応は、水溶媒中、緩衝液溶媒中、水と有機溶媒との二相系溶媒中、又は緩衝液と有機溶媒との二相系溶媒中で行われる。前記水としては、好ましくはイオン交換水、蒸留水等の精製された水が使用され、前記緩衝液としては、リン酸ナトリウム水溶液、リン酸カリウム水溶液等の無機酸塩の水溶液;酢酸ナトリウム水溶液、クエン酸ナトリウム水溶液等の有機酸塩の水溶液が使用されるが、反応系内を加水分解酵素の至適pHに保つ必要があるため(加水分解酵素の失活を防ぐために)、好ましくは緩衝液が使用される。
【0031】
前記有機溶媒としては水に対する溶解度が低い溶媒が使用出来、例えば、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類が挙げられるが、好ましくはシクロヘキサン、トルエン、ジイソプロピルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、更に好ましくはシクロヘキサン、トルエン、t−ブチルメチルエーテルが使用される。
【0032】
前記緩衝液の濃度は、好ましくは0.01〜2mol/L、更に好ましくは0.05〜0.5mol/Lであり、反応液のpHは、好ましくは4〜9、更に好ましくは6〜8である。
【0033】
前記水と有機溶媒との二相系溶媒又は緩衝液と有機溶媒との二相系溶媒の使用量は、化合物(I)1gに対して、好ましくは2〜200mL、更に好ましくは5〜80mLである。
【0034】
水と有機溶媒との二相系溶媒中又は緩衝液と有機溶媒との二相系溶媒中における有機溶媒の使用量は、水1mLに対して、好ましくは0.1〜10mL、更に好ましくは0.5〜5mLである。
【0035】
本発明の加水分解反応は、例えば、化合物(I)、加水分解酵素、及び水溶媒、緩衝液溶媒、水と有機溶媒との二相系溶媒、又は緩衝液と有機溶媒との二相系溶媒を混合して、反応させる等の方法によって行われる。その際の反応温度は、好ましくは0〜80℃、更に好ましくは10〜50℃であり、反応圧力は特に制限されない。
【0036】
本発明の不斉加水分解反応によって得られた化合物(II)は、例えば、反応終了後の反応液を濾過し、有機溶媒によって化合物(II)を反応液から抽出し、抽出液を濃縮することで単離することが出来る。これらは、晶析、再結晶、蒸留、カラムクロマトグラフィー等の一般的な方法により、更に精製することも出来る。
【0037】
本発明の加水分解反応によって得られる化合物(II)の具体例としては、例えば、
光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノプロピルメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノブチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノソブチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノプロピルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノブチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノペンチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノヘキシルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノヘプチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノオクチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノノニルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノデシルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノソプロピルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノs−ブチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノt−ブチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノクロロメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノベンジルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノ4−ニトロベンジルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノ4−フルオロメチルベンジルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノ4−クロロベンジルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノ4−ブロモベンジルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノ4−フルオロベンジルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノ4−メトキシベンジルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノビニルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノアリルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(2−メチルベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(3−メチルベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(4−メチルベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(2−メトキシベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(3−メトキシベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(4−メトキシベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(2−クロロベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(3−クロロベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(4−クロロベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(2−ブロモベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(3−ブロモベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(4−ブロモベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(2−フルオロベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(3−フルオロベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(4−フルオロベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(2−ニトロベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(3−ニトロベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(4−ニトロベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(2−メトキシベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(3−メトキシベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−(4−メトキシベンジル)アミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−t−ブチルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−t−ブチルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−トリフェニルメチルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−トリフェニルメチルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−t−ブチルジメチルシリルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−t−ブチルジメチルシリルアミノグルタル酸モノエチルエステル
等が挙げられるが、好ましくは、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノプロピルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノブチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−t−ブチルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−t−ブチルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−トリフェニルメチルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−トリフェニルメチルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−t−ブチルジメチルシリルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−t−ブチルジメチルシリルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
更に好ましくは、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ジフェニルメチルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルオキシカルボニルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
特に好ましくは、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステル、
光学活性(R又はS)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノエチルエステル、
である。
【0038】
本発明の加水分解によって得られる化合物(II)(Rが水素原子の場合を除く)は、公知の水素化分解反応により、光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステルに変換することが出来る。
【実施例】
【0039】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0040】
参考例1(3−ベンジルアミノ−2−ペンテン二酸ジメチルエステルの合成)
1,3−アセトンジカルボン酸ジメチルエステル4.04g(23.2mmol)をトルエン30mLに溶解し、室温にて活性化モレキュラーシーブ4A800mg及びベンジルアミン2.49g(23.2mol)を加え、攪拌しながら同温度で2時間反応させた。反応終了後、得られた反応混合物を濾過、減圧下で濃縮し油状物質を得た。得られた油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200(商品名)、n−ヘキサン/酢酸エチル=5/3(容量比))で精製し、3−ベンジルアミノ−2−ペンテン二酸ジメチルエステル5.43gを得た(1,3−アセトンジカルボン酸ジメチルエステル基準の単離収率=89%)。
【0041】
3−ベンジルアミノ−2−ペンテン二酸ジメチルエステルの物性値は以下の通りであった。(E体とZ体の異性体混合物)
H−NMR(δ(ppm)、CDCl):3.21(s,3H、major isomer)、3.21(s,3H,minor isomer)、3.61(s,3H,minor isomer)、3.64(s,3H,major isomer)、3.66(s,3H,major isomer)、3.95(s,2H,minoR isomer)、4.22(d,J=4.89H,2H,minor isomer)、4.44(d,J=6.35Hz,2H,major isomer)、4.61(s,1H,major isomer)、4,78(1H,minor isomer)、5.19(s,1H,minor isomer)、7.25−7.37(m,10H,both isomer)、8.91(s,1H,major isomer)
MS(EI)m/z:263(M
MS(CI、i−C10)m/z:264(MH
【0042】
参考例2(3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステルの合成)
3−ベンジルアミノ−2−ペンテン二酸ジメチルエステル2.39g(9.1mmol)を酢酸10mLに溶解し、室温にてシアノトリホドロホウ酸ナトリウム570mg(9.1mmol)を加え、攪拌しながら同温度で1時間反応させた。反応終了後、得られた反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液60mLを加えた後、生成物を酢酸エチル30mLで抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥して、濾過後、有機層を減圧下で濃縮し油状物質を得た。得られた油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200(商品名)、n−ヘキサン/酢酸エチル=3/5(容量比))で精製し、3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル2.17gを得た(3−ベンジルアミノ−2−ペンテン二酸ジメチルエステル基準の単離収率=90%)。
【0043】
3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステルの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(δ(ppm)、CDCl):2.58(d,J=6.35,4H)、3.41−3.49(m,1H)、3.67(s,3H)、3.80(s,2H)、7.22−7.32(m,5H)。
13C−NMR(δ(ppm)、CDCl):38.6、51.0、51.2、51.6、127.0、128.1、128.4、140.0、172.2
MS(CI、i−C10)m/z:266(MH
元素分析;Calcd:C,63.37%;H,7.23%;N,5.28%
Found:C,62.96%;H,7.42%;N,5.26%
【0044】
実施例1(光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルの合成) pH8の0.1mol/Lリン酸ナトリウム水溶液10mLに、3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル1.00g(3.8mmol)を加え30℃に保った。この混合物に、同温度にてCandida antarctica由来のリパーゼ(CAL;ロシュ製、ChiRazyme L−2(商品名))2mgを加え、攪拌しながら30℃で1時間反応させた。反応終了後、セライト(No.545)で濾過し、濾液をクロロホルム30mLで抽出し、有機層を減圧下で濃縮し白色結晶を得た。得られた白色結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200(商品名)、クロロホルム/メタノール=4/1(容量比))で精製し、光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステル854mgを得た(光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル基準の単離収率=90%)。
【0045】
光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルを、光学活性カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーを使用して光学純度を測定したところ99%eeより大きかった。
【0046】
高速液体クロマトグラフィーの分析条件;
カラム:キラルCD−Ph(0.46cmΦ×25cm、株式会社資生堂製)
溶媒 :アセトニトリル/pH3.5リン酸カリウム緩衝液(=1/9(容量比))
流速 :0.5mL/min
波長 :220nm
【0047】
光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルの物性値は以下の通りであった。
H−NMR(δ(ppm)、CDCl):2.39−2.78(m,4H)、3.45−3.48(m,1H)、3.69(s,3H)、3.96(s,2H)、7.26−7.37(m,5H)。
13C−NMR(δ(ppm)、CDCl):36.0、36.1、49.2、50.7、52.1、128.5、128.9、129.0、134.7、171.2、173.6。
MS(CI、i−C10)m/z:252(MH
元素分析;Calcd:C,62.13%;H,6.83%;N,5.57%
Found:C,61.39%;H,6.72%;N,5.51%
【0048】
なお、光学活性3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルの絶対配置の決定は次ぎのようにして行った。メタノール4mLに、実施例1によって単離した光学活性3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステル545mg(2.1mmol)、20%Pd/炭素粉末57.7mgを加え、水素気流下(常圧)、攪拌しながら1時間反応させた。得られた反応混合物を濾過し、減圧濃縮した後にメタノール酢酸エチル混合溶媒で決勝を析出させた後に濾過して、光学活性3−アミノグルタル酸モノメチルエステル284mgを得た(光学活性3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステル基準の収率55%)。得られた光学活性3−アミノグルタル酸モノメチルエステルの比旋光度([α]25 −4.79°(C 2.57,HO))とJ.Am.Chem.Soc.,103,2405(1981)に記載されている(S)−3−アミノグルタル酸モノメチルエステルの比旋光度の符号(文献値[α]25 −5.52°(C 3.26,HO))とを比較し絶対配置を決定した。
【0049】
実施例2(光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルの合成) pH8の0.1mol/Lリン酸ナトリウム水溶液2mLに、3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル100mg(0.38mmol)を加え30℃に保った。この混合物に同温度でCandida antarctica由来のリパーゼ(CAL;ロシュ製、Chirazyme L−2,c−f,C2(商品名))1mgを加え、攪拌しながら30℃で30分間反応させた。反応終了後、セライト(No.545)で濾過し、濾液を減圧下で濃縮して白色結晶を得た。得られた白色結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200(商品名)、クロロホルム/メタノール=4/1(容量比))で精製し、光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルの83.3mgを得た(光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル基準の単離収率=88%)。
【0050】
光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルを、光学活性カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーを使用して光学純度を測定したところ99%eeより大きかった。
【0051】
高速液体クロマトグラフィーの分析条件;
カラム:キラルCD−Ph(0.46cmΦ×25cm、株式会社資生堂製)
溶媒 :アセトニトリル/pH3.5リン酸カリウム緩衝液(=1/9(容量比))
流速 :0.5mL/min
波長 :220nm
【0052】
実施例3(光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルの合成) 3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル100mg(0.38mmol)をトルエン1mLに溶解させた後、水1mLを加えて30℃に保った。この混合物に同温度でCandida antarctica由来のリパーゼ(CAL;ロシュ製,ChiRazyme L−2,c−f,C2(商品名))10mgを加え、攪拌しながら30℃で12時間反応させた。反応終了後、セライト(No.545)で濾過し、濾液を減圧下で濃縮し油状物質を得た。得られた油状物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200(商品名)、クロロホルム/メタノール=4/1(容量比))で精製し、光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステル80.5 mgを得た(光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル基準の単離収率=85%)。
【0053】
光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルを、光学活性カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーを使用して光学純度を測定したところ99%eeより大きかった。
【0054】
高速液体クロマトグラフィーの分析条件;
カラム:キラルCD−Ph(0.46cmΦ×25cm、株式会社資生堂製)
溶媒 :アセトニトリル/pH3.5リン酸カリウム緩衝液(=1/9(容量比))
流速 :0.5mL/min
波長 :220nm
【0055】
実施例4(光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルの合成) 3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル1.00g(3.8mmol)をシクロヘキサン5 mLに溶解させた後、水5mLを加えて30℃に保った。この混合物に同温度でCandida antarctica由来のリパーゼ(CAL;ロシュ製,ChiRazyme L−2,c−f,C2(商品名))100mgを加え、攪拌しながら30℃で3時間反応させた。反応終了後、セライト(No.545)で濾過し、濾液を減圧下で濃縮し白色結晶を得た。得られた白色結晶をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(Wakogel C−200(商品名)、クロロホルム/メタノール=4/1(容量比))で精製し、光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルの893mgを得た(光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸ジメチルエステル基準の単離収率=94%)。
【0056】
光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルを、光学活性カラムを用いた高速液体クロマトグラフィーを使用して光学純度を測定したところ99%eeより大きかった。
【0057】
高速液体クロマトグラフィーの分析条件;
カラム:キラルCD−Ph(0.46cmΦ×25cm、株式会社資生堂製)
溶媒 :アセトニトリル/pH3.5リン酸カリウム緩衝液(=1/9(容量比))
流速 :0.5mL/min
波長 :220nm
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、3−アミノグルタル酸ジエステル化合物から、医薬・農薬の原体又は中間体、例えば3−ラクタム系抗生物質の合成原料として有用な光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物を製造する方法に関する。本発明によって合成される光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物、特に、光学活性(S)−3−ベンジルアミノグルタル酸モノメチルエステルは、例えば、メタノールに溶解させ、パラジウム炭素存在下で水素に接触させる公知の接触還元法を用いることによって3−アミノグルタル酸モノメチルエステルに誘導出来、更に公知の方法に従って、医薬品として有用な3−ラクタム系抗生物質の基本骨格をなす光学活性4−メトキシカルボニルメチル−2−オキソ−アゼチジンに誘導出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Candida antarcticaを起源とするリパーゼの存在下、一般式(I)
【化1】

(式中、Rは、アルキル基、アルケニル基又はアラルキル基、Rは、水素原子又は離脱可能なアミノ保護基を示す。)
で示される3−アミノグルタル酸ジエステル化合物の片方のエステル基のみを選択的に加水分解反応させることを特徴とする、一般式(II)
【化2】

(式中、R及びRは、前記と同義である。)
で示される光学活性(R又はS)−3−アミノグルタル酸モノエステル化合物の製造方法。
【請求項2】
加水分解反応を、水溶媒中、緩衝液溶媒中、水と有機溶媒との二相系溶媒中、又は緩衝液と有機溶媒との二相系溶媒中で行う請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
一般式(I)におけるRが、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基又はt−ブチル基であり、Rが、ベンジル基、ジフェニルメチル基又はベンジルオキシカルボニル基である請求項1記載の製造方法。
【請求項4】
一般式(I)におけるRが、メチル基又はエチル基であり、Rが、ベンジル基である請求項1又は請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
有機溶媒が、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類又はエーテル類、或いはそれらの混合溶媒である請求項2記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−51975(P2013−51975A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−277526(P2012−277526)
【出願日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【分割の表示】特願2010−125757(P2010−125757)の分割
【原出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年3月11日 社団法人日本化学会発行の「日本化学会第84春季年会 講演予稿集2」に発表
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】