光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造方法

【課題】医薬品の中間体として有用な光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの効率的かつ工業的な製造方法を提供する。
【解決手段】2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルにポリペプチド、該ポリペプチドを産生する生物体、または該生物体の処理物を作用させて還元することにより、光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルを製造する。ポリペプチドは、キャンディダ属、ロードトルーラ属、デボシア属、オガタエア属、ブレブンディモナス属、ラクトバシラス属、サーモアナエロビウム属、ロドコッカス属、スポロボロマイセス属、スポリディオボラス属からなる群より選ばれた微生物由来のものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル、特に光学活性2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルの製造方法に関する。光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルは、医薬品、農薬等の合成原料及び中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル、特に光学活性2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルは、医薬品、農薬等の合成原料及び中間体として有用な化合物である。
【0003】
2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルを水素化ホウ素ナトリウムなどで2位のカルボニル基を還元すると、2つの不斉炭素が生じるため、4種類の立体異性体(シス(cis)体の(1R,2S体)と(1S,2R)体、トランス(trans)体の(1S,2S)体と(1R,2R)体)の混合した2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルが生成する。
【0004】
医薬品や農薬等の合成原料として有用なのは、特定の立体の光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルであり、他の立体異性体が含有しているとそれは不純物となる。そのため、不要な立体異性体をできるだけ含まない、目的にあった立体の光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの効率的な製造技術が求められている。
【0005】
光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造方法の一つに、微生物菌体や酵素を触媒とした2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルの不斉還元法が挙げられる。
【0006】
光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル、例えば、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルの製造方法については、以下が報告されている。
【0007】
クレブジラ・ニウモニエ(Klebsiella pneumoniae)(特許文献1、非特許文献1)、ゲオトリカム・キャンディダム(Geotrichum candidum)、ムコール・ラセモサス(Mucor racemosus)、ムコール・サーシネロイデス(Mucor circinelloides)、クニングガメラ・グロエオスポロイデス(Cunninghamella gloeosporoides)(非特許文献2)、還元酵素KRED102、KRED103、KRED106(非特許文献3)を用いた2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルの不斉還元では、主として(1R,2S)体の2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルが生成すると報告されている。
【0008】
また、還元酵素KRED107、KRED131(非特許文献3)を用いた2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルの不斉還元では、主として(1S,2R)体の2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルが生成すると報告されている。
【0009】
また、アブシディア・グラウカ(Absidia glauca)、リゾプス・アーリズス(Rhizopus arrhizus)、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium chrysogenum)(非特許文献2)、還元酵素KRED113(非特許文献3)を用いた2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルの不斉還元では、主として(1S,2S)体の2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルが生成すると報告されている。
【0010】
以上のように、微生物や酵素を用いた2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルの不斉還元例はあるものの、特定の微生物や酵素を用いた還元反応に限られており、特に、還元反応での主生成物が(1R,2R)体の2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとする報告はこれまでに全く存在しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特平5−192187
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Biosci. Biotech. Biochem., 60(5), 760-764,(1996)
【非特許文献2】Tetrahedron Letters, 27(23), 2631-2634,(1986)
【非特許文献3】Tetrahedron, 62, 901-905,(2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、医薬品の中間体として有用な光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル、特に光学活性2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルを効率的かつ工業的に製造することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの簡便かつ効率的な製造方法を開発すべく検討を重ねた結果、特定のポリペプチドを2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルに作用させて不斉還元することにより、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルの特定の立体異性体を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の1又は複数の特徴を有する。
【0016】
本発明は、光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル、好ましくは2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルの製造方法であって、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルに、ポリペプチド、該ポリペプチドを産生する生物体、または、該生物体の処理物を作用させて、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルを還元することを特徴とする方法である。ポリペプチドとしては、キャンディダ(Candida)属、ロードトルーラ(Rhodotorula)属、デボシア(Devosia)属、オガタエア(Ogataea)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、サーモアナエロビウム(Themoanaerobium)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)属、スポリディオボラス(Sporidiobolus)属からなる群より選ばれた微生物由来のポリペプチドがあげられる。
【0017】
また、本発明は、(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造方法であり、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルにポリペプチド、好ましくはスポロボロマイセス(Sporobolomyces)属、スポリディオボラス(Sporidiobolus)属からなる群より選ばれた微生物由来のポリペプチド、を作用させることを特徴とする方法である。
【0018】
また、本発明は、(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造方法であって、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルに、ポリペプチド、好ましくは下記(a1)、(a2)、および(a3)からなる群から選択されるポリペプチド、該ポリペプチドを産生する生物体、または、該生物体の処理物を作用させて、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルを還元することを特徴とする方法である:
(a1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(a2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチド、
(a3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチド。
【0019】
また、上記の(a1)、(a2)、および(a3)からなる群から選択されるポリペプチドを産生する生物体が、下記(A1)、(A2)、(A3)、および(A4)からなる群から選択されるDNAを導入された組換え生物であることが好ましい。
(A1)配列表の配列番号2に記載のDNA、
(A2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA、
(A3)配列表の配列番号2に記載のDNAと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
(A4)、配列表の配列番号2に記載の塩基配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
【0020】
上記製造方法において、組換え生物が Escherichia coli(大腸菌)であることが好ましい。
【0021】
また、本発明は、(1S,2S)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造方法であり、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルに、キャンディダ(Candida)属、ロードトルーラ(Rhodotorula)属、オガタエア(Ogataea)属、サーモアナエロビウム(Themoanaerobium)属からなる群から選ばれた微生物由来のポリペプチドを作用させることを特徴とする方法である。
【0022】
また、本発明は、(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造方法であり、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルに、キャンディダ(Candida)属、デボシア(Devosia)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属、ラクトバシラス(Lactobacillus)属からなる群から選ばれた微生物由来のポリペプチドを作用させることを特徴とする方法である。
【0023】
また、本発明は、(1R,2S)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造方法であり、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルに、キャンディダ(Candida)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属からなる群から選ばれた微生物由来のポリペプチドを作用させることを特徴とする方法である。
【0024】
上記のいずれの製造方法においても、還元型補酵素再生能を有するポリペプチドを更に作用させることが好ましい。
【0025】
また、本発明は、上記の方法で得られる2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルとアンモニアを反応させることを特徴とする、2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸アミドの製造方法に関する。
【0026】
また、本発明は、上記で得られる2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸アミドを塩基条件下でハロゲン化剤と反応させることを特徴とする2−アミノシクロアルカノールの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の方法によれば、光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル、特に光学活性2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルを効率的かつ工業的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。なお、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0029】
なお、本発明で製造する光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルとは、2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの4種類の立体異性体に占める目的の立体異性体の比率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上の2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルである。これについては後に詳説する。
【0030】
本発明で用いるポリペプチド
本発明で用いるポリペプチドは、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルに作用して光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルを生成する活性を有するものであれば、いずれを用いても良い。本ポリペプチドの取得方法は、後で詳述する。
【0031】
以下、本発明で用いるポリペプチドについて、(1R、2R)体の2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造に用いるポリペプチドを例に用いて詳説する。なお、他の立体異性体の2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造に用いるポリペプチドについても、以下の内容が適応できる。
【0032】
本発明で用いるポリペプチドとしては、例えば(1R、2R)体の2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルを製造する場合は、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列からなるポリペプチドを挙げることができる((a1)のポリペプチド)。また、本発明で用いるポリペプチドとしては、配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列において、1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、挿入、置換及び/または付加したアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい((a2)のポリペプチド)。これらのポリペプチドは、Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley and Sons, Inc., 1989)等に記載の公知の方法に準じて調製することができ、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有する限りは、上記ポリペプチドに包含される。
【0033】
ここで「複数個のアミノ酸」とは、例えば、50個、好ましくは30個、より好ましくは15個、さらに好ましくは10個、9個、8個、7個、6個、5個、4個、3個、または2個以下のアミノ酸を意味する。
【0034】
配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列において、アミノ酸が置換、挿入、欠失及び/または付加される場所は特に制限されないが、高度保存領域を避けるのが好ましい。ここで、高度保存領域とは、由来の異なる複数の酵素について、アミノ酸配列を最適に整列させて比較した場合に、複数の配列間でアミノ酸が一致している領域を表す。高度保存領域は、配列番号1に示したアミノ酸配列と、公知の微生物由来のアルコール脱水素酵素のアミノ酸配列とを、GENETYX等のツールを用いて比較することにより確認することができる。
【0035】
置換、挿入、欠失及び/または付加により改変されたアミノ酸配列としては、1種類のタイプ(例えば置換)の改変のみを含むものであっても良いし、2種以上の改変(例えば、置換と挿入)を含んでいても良い。
【0036】
また、置換の場合には、置換するアミノ酸は、置換前のアミノ酸と類似の性質を有するアミノ酸(同族アミノ酸)であることが好ましい。ここでは、以下に挙げる各群の同一群内のアミノ酸を同族アミノ酸とする。
(第1群:中性非極性アミノ酸)Gly, Ala, Val, Leu, Ile, Met, Cys, Pro, Phe
(第2群:中性極性アミノ酸)Ser, Thr, Gln, Asn, Trp, Tyr
(第3群:酸性アミノ酸)Glu, Asp
(第4群:塩基性アミノ酸)His, Lys, Arg。
【0037】
また、本発明で用いるポリペプチドとしては、配列表の配列番号1に示すアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチドであってもよい((a3)のポリペプチド)。
【0038】
配列表の配列番号1のアミノ酸配列に対する配列同一性は85%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が更に好ましく、98%以上もしくは99%以上がより最も好ましい。
【0039】
アミノ酸配列の配列同一性は、配列表の配列番号1に示したアミノ酸配列と評価したいアミノ酸配列とを比較し、両方の配列でアミノ酸が一致した位置の数を比較総アミノ酸数で除して、さらに100を乗じた値で表される。
【0040】
2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有する限り、配列番号1に記載のアミノ酸配列に、付加的なアミノ酸配列を結合することができる。例えば、ヒスチジンタグやHAタグのようなタグ配列を付加しても良い。あるいは、他のタンパク質との融合タンパク質とすることもできる。また、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有する限り、ペプチド断片であってもよい。
【0041】
また、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性のレベルが低下する場合であっても、実質的に同等の活性があれば、本発明のポリペプチドに包含される。ここで「実質的に同等の活性」とは、元の活性に対して、例えば50%以上、通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上あるいは95%以上の活性を言う。活性の測定は、後述の方法で実施できる。
【0042】
本発明で用いるポリペプチドの取得方法
本発明で用いるポリペプチドは、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルを還元して、光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルを生成する能力を有する微生物から取得できる。該ポリペプチドを有する微生物は、例えば、以下の方法で見出すことができる。
【0043】
微生物を適当な培地で培養し、集菌後、緩衝液中、グルコースなどの栄養存在下で2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルと反応させる。反応後、溶剤などで抽出を行い、ガスクロマトグラフィーおよび高速液体クロマトグラフィーなどで分析することにより、生成する2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの生成量、4種類の立体異性体の組成比を確認すればよい。
【0044】
微生物を培養するための培地としては、その微生物が増殖する限り、通常の、炭素源、窒素源、無機塩類、有機栄養素などを含む液体栄養培地を用いることができる。培養は、例えば、温度25℃〜37℃、pH4〜8で振とうもしくは通気することで行い得る。
【0045】
微生物からの本発明に用いるポリペプチドの単離は、公知の蛋白質精製法を適当に組み合わせて用いることにより実施できる。例えば、以下のように実施できる。まず、微生物を適当な培地で培養し、培養液から遠心分離、あるいは、濾過により菌体を集める。得られた菌体を、超音波破砕機、あるいは、グラスビーズ等を用いた物理的手法で破砕した後、遠心分離にて菌体残渣を除き、無細胞抽出液を得る。そして、熱処理、塩析(硫酸アンモニウム沈殿、リン酸ナトリウム沈殿など)、溶媒沈殿(アセトンまたはエタノールなどによる蛋白質分画沈殿法)、透析、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、限外濾過等の手法を単独で、または組み合わせて用いることにより、該無細胞抽出液から本発明に用いるポリペプチドを単離する。
【0046】
単離したポリペプチドの2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルに対する還元活性は、評価したいポリペプチドと2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルとを作用させた後に、2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの生成をガスクロマトグラフィーなどで分析することにより評価できる。また、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステル還元活性、例えば、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステル還元活性については、以下の簡便な方法でも評価できる。
【0047】
[2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルに対する還元活性の測定方法]
2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルに対する還元活性は、100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステル10mM、補酵素NADPH0.25mM、および粗酵素液を添加して30℃で1分間反応を行い、波長340nmにおける吸光度の減少速度より算出する。この反応条件において、1分間に1μmolのNADPHをNADPに酸化する酵素活性を1Uと定義する。NADPHのかわりにNADHを用いても良い。
【0048】
本発明で用いるポリペプチドの起源は限定されるものではないが、好ましくはキャンディダ(Candida)属、ロードトルーラ(Rhodotorula)属、デボシア(Devosia)属、オガタエア(Ogataea)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、サーモアナエロビウム(Themoanaerobium)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)属、スポリディオボラス(Sporidiobolus)属からなる群より選ばれた微生物由来のものである。
【0049】
(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルを製造する場合は、用いるポリペプチドとしてはスポロボロマイセス(Sporobolomyces)属、スポリディオボラス(Sporidiobolus)属からなる群より選ばれた微生物由来のものが好ましい。
【0050】
スポロボロマイセス(Sporobolomyces)属酵母としては、例えば、スポロボロマイセス・アルビダス(Sporobolomyces albidus)、スポロボロマイセス・アルボルベスセンス(Sporobolomyces alborubescens)、スポロボロマイセス・アルバス(Sporobolomyces albus)、スポロボロマイセス・アンタークティカス(Sporobolomyces antarcticus)、スポロボロマイセス・ビスフォフィア(Sporobolomyces bischofiae)、スポロボロマイセス・ブルーミ(Sporobolomyces blumeae)、スポロボロマイセス・コルニカラー(Sporobolomyces carnicolor)、スポロボロマイセス・コプロフィラス(Sporobolomyces coprophilus)、スポロボロマイセス・コプロスマ(Sporobolomyces coprosmae)、スポロボロマイセス・コプロスミコーラ(Sporobolomyces coprosmicola)、スポロボロマイセス・コラリフォーミス(Sporobolomyces coralliformis)、スポロボロマイセス・ディメナエ(Sporobolomyces dimmenae)、スポロボロマイセス・ディオスピロリス(Sporobolomyces diospyroris)、スポロボロマイセス・ドラコフィラス(Sporobolomyces dracophyllus)、スポロボロマイセス・エロンガタス(Sporobolomyces elongatus)、スポロボロマイセス・ファルカタス(Sporobolomyces falcatus)、スポロボロマイセス・フォリーコラ(Sporobolomyces foliicola)、スポロボロマイセス・グラシリス(Sporobolomyces gracilis)、スポロボロマイセス・グリセオフラバス(Sporobolomyces griseoflavus)、スポロボロマイセス・ホルサチカス(Sporobolomyces holsaticus)、スポロボロマイセス・イノシトフィラス(Sporobolomyces inositophilus)、スポロボロマイセス・インターメディウス(Sporobolomyces intermedius)、スポロボロマイセス・クルイベリ−ニエリー(Sporobolomyces kluyveri-nielii)、スポロボロマイセス・ラクトフィラス(Sporobolomyces lactophilus)、スポロボロマイセス・ラクトサス(Sporobolomyces lactosus)、スポロボロマイセス・リンデラ(Sporobolomyces linderae)、スポロボロマイセス・ロファセリ(Sporobolomyces lophatheri)、スポロボロマイセス・マグニスポラス(Sporobolomyces magnisporus)、スポロボロマイセス・マルシラエ(Sporobolomyces marcillae)、スポロボロマイセス・ミスカンチ(Sporobolomyces miscanthi)、スポロボロマイセス・ナガノエンシス(Sporobolomyces naganoensis)、スポロボロマイセス・ノバジアランディカス(Sporobolomyces novazealandicus)、スポロボロマイセス・ナイランディ(Sporobolomyces nylandii)、スポロボロマイセス・オドラタス(Sporobolomyces odoratus)、スポロボロマイセス・オドラス(Sporobolomyces odorus)、スポロボロマイセス・オガサワレンシス(Sporobolomyces ogasawarensis)、スポロボロマイセス・オリジコーラ(Sporobolomyces oryzicola)、スポロボロマイセス・パラロセウス(Sporobolomyces pararoseus)、スポロボロマイセス・ファフィ(Sporobolomyces phaffii)、スポロボロマイセス・フィラダス(Sporobolomyces phylladus)、スポロボロマイセス・フィロマティス(Sporobolomyces phyllomatis)、スポロボロマイセス・ポルアッシ(Sporobolomyces pollaccii)、スポロボロマイセス・プーンスーキー(Sporobolomyces poonsookiae)、スポロボロマイセス・プニセウス(Sporobolomyces puniceus)、スポロボロマイセス・ピロシ(Sporobolomyces pyrrosiae)、スポロボロマイセス・ロセウス(Sporobolomyces roseus)、スポロボロマイセス・ルバー(Sporobolomyces ruber)、スポロボロマイセス・ルバーリムス・バー・アルバス(Sporobolomyces ruberrimus var. albus)、スポロボロマイセス・ルバーリムス・バー・ルバーリムス(Sporobolomyces ruberrimus var. ruberrimus)、スポロボロマイセス・サリシナス(Sporobolomyces salicinus)、スポロボロマイセス・サルモネウス(Sporobolomyces salmoneus)、スポロボロマイセス・サルモニカラー(Sporobolomyces salmonicolor)、スポロボロマイセス・サシコーラ(Sporobolomyces sasicola)、スポロボロマイセス・シバタナス(Sporobolomyces shibatanus)、スポロボロマイセス・シングラリス(Sporobolomyces singularis)、スポロボロマイセス・スブルンネス(Sporobolomyces subbrunneus)、スポロボロマイセス・スブロセウス(Sporobolomyces subroseus)、スポロボロマイセス・シジギー(Sporobolomyces syzygii)、スポロボロマイセス・タウポエンシス(Sporobolomyces taupoensis)、スポロボロマイセス・テヌイス(Sporobolomyces tenuis)、スポロボロマイセス・ツガエ(Sporobolomyces tsugae)、スポロボロマイセス・バーミキュラタス(Sporobolomyces vermiculatus)、スポロボロマイセス・ウェイマニ(Sporobolomyces weijmanii)、スポロボロマイセス・ザンザス(Sporobolomyces xanthus)、スポロボロマイセス・ヤマトアヌス(Sporobolomyces yamatoanus)、スポロボロマイセス・ユチコーラ(Sporobolomyces yuccicola)、スポロボロマイセス・ユンナネンシス(Sporobolomyces yunnanensis)、などが挙げられる。
【0051】
スポリディオボラス(Sporidiobolus)属酵母としては、例えば、スポリディオボラス・ジョンソニ(Sporidiobolus johnsonii)、スポリディオボラス・ミクロスポラス(Sporidiobolus microsporus)、スポリディオボラス・パラロセウス(Sporidiobolus pararoseus)、スポリディオボラス・ルイネニエ(Sporidiobolus ruineniae)、スポリディオボラス・ルイネニエ・バー・コプロフィラス(Sporidiobolus ruineniae var. coprophilus)、スポリディオボラス・サルモニカラー(Sporidiobolus salmonicolor)、などが挙げられる。
【0052】
また、新たに自然界から分離した新種のスポロボロマイセス(Sporobolomyces)属やスポリディオボラス(Sporidiobolus)属酵母なども挙げられる。
【0053】
好ましくは、スポロボロマイセス・サルモニカラー(Sporobolomyces salmonicolor)、スポリディオボラス・サルモニカラー(Sporidiobolus salmonicolor)などが挙げられる。
【0054】
(1S,2S)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルを製造する場合は、用いるポリペプチドとしてはキャンディダ(Candida)属、ロードトルーラ(Rhodotorula)属、オガタエア(Ogataea)属、サーモアナエロビウム(Themoanaerobium)属からなる群から選ばれた微生物由来のものが好ましい。より好ましくは、キャンディダ・マグノリエ(Candida magnoliae)、キャンディダ・ボイディニ(Candida boidinii)、ロードトルーラ・グルチニス・バー・ダイレネンシス(Rhodotorula glutinis var. dairenensis)、オガタエア・ミヌータ・バー・ミヌータ(Ogataea minuta var. minuta)、サーモアナエロビウム・ブロッキ(Themoanaerobium brockii)由来のポリペプチドである。特に好ましいポリペプチドは、キャンディダ・マグノリエ(Candida magnoliae)由来の還元酵素CR酵素(実施例4)、ロードトルーラ・グルチニス・バー・ダイレネンシス(Rhodotorula glutinis var. dairenensis)NBRC0415 由来の還元酵素RRG(実施例5)、オガタエア・ミヌータ・バー・ミヌータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975 由来の還元酵素(実施例6)などである。これら酵素の理化学的性質、アミノ酸配列、取得方法については、CR酵素は国際公報WO01/040450、RRG酵素は国際公報WO03/093477、オガタエア・ミヌータ・バー・ミヌータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975 由来の還元酵素は国際公報WO06/013801、に記載されている。
【0055】
(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルを製造する場合は、用いるポリペプチドとしてはキャンディダ(Candida)属、デボシア(Devosia)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属、ラクトバシラス(Lactobacillus)属からなる群から選ばれた微生物由来のものが好ましい。より好ましくは、キャンディダ・マリス(Candida maris)、デボシア・リボフラビナ(Devosia riboflavina)、ブレブンディモナス・ディミヌータ(Brevundimonas diminuta)、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・ケフィア(Lactobacillus kefir)由来のポリペプチドである。特に好ましいポリペプチドは、キャンディダ・マリス(Candida maris)NBRC10003由来の還元酵素FPDH(実施例9)、デボシア・リボフラビナ(Devosia riboflavina)NBRC13584 由来のRDR還元酵素(実施例10)、ブレブンディモナス・ディミヌータ(Brevundimonas diminuta)NBRC13584由来の還元酵素(実施例11)などである。これら酵素の理化学的性質、アミノ酸配列、取得方法については、FPDH酵素は国際公報WO01/05996、RRG酵素は国際公報WO04/027055、ブレブンディモナス・ディミヌータ(Brevundimonas diminuta)NBRC13584 由来の還元酵素は国際公報WO07/114217、に記載されている。
【0056】
(1R,2S)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルを製造する場合は、用いるポリペプチドとしてはキャンディダ(Candida)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属からなる群から選ばれた微生物由来のものが好ましい。より好ましくは、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)由来のポリペプチドである。特に好ましいポリペプチドは、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)NBRC1977由来の還元酵素(実施例14)、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)NBRC708由来の還元酵素(実施例15)などである。これら酵素の理化学的性質、アミノ酸配列、取得方法については、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)NBRC1977由来の還元酵素は国際公報WO08/066018、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)NBRC708由来の還元酵素は特開2003−289874、に記載されている。
【0057】
上記の微生物は、例えば、以下のカルチャーコレクションより入手可能である。
・独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部 生物遺伝資源部門(NBRC)(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)。
・独立行政法人理化学研究所 バイオリソースセンター 微生物材料開発室(JCM)(〒351-0198 埼玉県和光市広沢2-1)
・German Collection of Microorganisms and Cell Cultures GmbH(DSMZ)(Marschroder Weg 1b, D-38124 Brunswick, Germany)。
【0058】
本発明で用いるポリペプチドをコードするDNA
本発明で用いるポリペプチドをコードするDNAは、後述する方法に従って導入された宿主細胞内で該ポリペプチドを発現し得るものであればいかなるものでもよく、任意の非翻訳領域を含んでいてもよい。天然よりクローニングされたDNA、cDNAの他、合成によって得られるDNAも含まれる。
【0059】
該ポリペプチドが取得できれば、該ポリペプチドの起源となる微生物より、当業者であれば公知の方法で、このようなDNAを取得できる。例えば、以下に示した方法で取得できる。
【0060】
なお、本明細書において後述する、DNAクローニング、ベクターの調製及び形質転換等の遺伝子操作は、特に明記しない限り、Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)等の成書に記載されている方法により実施することができる。また、本明細書の記述に用いられる%は、特に断りのない限り、%(w/v)を意味する。
【0061】
まず、先の「本発明で用いるポリペプチドの取得方法」で記載した方法により単離された本発明で用いるポリペプチドを、適当なエンドペプチダーゼを用いて消化し、生じたペプチド断片を逆相HPLCにより分取する。そして、例えば、ABI492型プロテインシークエンサー(Applied Biosystems社製)により、これらのペプチド断片のアミノ酸配列の一部または全部を決定する。
【0062】
このようにして得られたアミノ酸配列情報をもとにして、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅するためのPCR(Polymerase Chain Reaction)プライマーを合成する。次に、通常のDNA単離法、例えば、Visser等の方法(Appl. Microbiol. Biotechnol., 53, 415 (2000))により、該ポリペプチドの起源となる微生物の染色体DNAを調製する。もしくは、該ポリペプチドの起源となる微生物のmRNAよりcDNAを調製する。これらのDNAを鋳型として、先述のPCRプライマーを用いてPCRを行い、該ポリペプチドをコードするDNAの一部を増幅し、その塩基配列を決定する。塩基配列の決定は、例えば、Applied Biosystems 3130xl ジェネティックアナライザ(アプライドバイオシステムズ社製)等を用いて行うことができる。
【0063】
該ポリペプチドをコードするDNAの一部の塩基配列が明らかになれば、例えば、インバース(Inverse)PCR法(Nucl. Acids Res., 16, 8186 (1988))により、その全体の配列を決定することができる。
【0064】
このようにして得られる本発明のポリペプチドをコードするDNAとして、例えば、配列表の配列番号1に示すポリペプチドをコードするDNA((A2)のDNA)が挙げられる。具体的には、配列表の配列番号2に示すDNA((A1)のDNA)を挙げることができる。
【0065】
また、本発明で用いるDNAとしては、配列表の配列番号2に記載のDNAと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAであってもよい((A3)のDNA)。
【0066】
また、本発明で用いるDNAとしては、配列表の配列番号2に記載の塩基配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAであってもよい((A4)のDNA)。
【0067】
ここで、「配列表の配列番号2に記載のDNAと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA」とは、配列表の配列番号2に示した塩基配列と相補的な塩基配列からなるDNAをプローブとして、ストリンジェントな条件下にコロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法、あるいはサザンハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAで、かつ2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNAを意味する。
【0068】
ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning, A laboratory manual, second edition (Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)等に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNA」とは、例えば、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃で相補鎖形成を行った後、2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、65℃の条件下でフィルターを洗浄することにより取得できるDNAをあげることができる。好ましくは65℃で0.3倍濃度のSSC溶液で洗浄、より好ましくは65℃で0.1倍濃度のSSC溶液で洗浄、更に好ましくは65℃で0.05倍濃度のSSC溶液で洗浄することにより取得できるDNAである。
【0069】
以上のようにハイブリダイゼーション条件を記載したが、これらの条件に特に制限されない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度や塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0070】
上記の条件にてハイブリダイズ可能なDNAとしては、配列番号2に示されるDNAと、配列同一性が85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは97%以上、最も好ましくは99%以上のDNAをあげることができ、コードされるポリペプチドが、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有する限り、上記DNAに包含される。
【0071】
ここで、「配列同一性(%)」とは、対比される2つのDNAを最適に整列させ、核酸塩基(例えば、A、T、C、G、U、またはI)が両方の配列で一致した位置の数を比較塩基総数で除し、そして、この結果に100を乗じた数値で表される。
配列同一性は、例えば、以下の配列分析用ツールを用いて算出し得る:GCG Wisconsin Package(Program Manual for The Wisconsin Package, Version8, 1994年9月, Genetics Computer Group, 575 Science Drive Medison, Wisconsin, USA 53711; Rice, P. (1996) Program Manual for EGCG Package, Peter Rice, The Sanger Centre, Hinxton Hall, Cambridge, CB10 1RQ, England)、及び、the ExPASy World Wide Web分子生物学用サーバー(Geneva University Hospital and University of Geneva, Geneva, Switzerland)。
【0072】
本発明で用いるポリペプチドを生産する組換え生物
本発明で用いるポリペプチドを生産する組換え生物としては、例えば、上記で述べた(A1)、(A2)、(A3)、または(A4)のいずれかに記載のDNAを導入された組換え生物を挙げることができる。
【0073】
本発明で用いるポリペプチドをコードするDNAを発現ベクターに挿入して作製したポリペプチド発現ベクターを用いて宿主生物を形質転換すれば、本発明で用いるポリペプチドを生産する組換え生物が得られる。この生物が生育しうる培地を用いて培養することにより、本発明のポリペプチドを発現させることができる。更に、本発明で用いるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを染色体中に導入する方法なども利用できる。
【0074】
上記で用いる発現ベクターとしては、適当な宿主生物内で当該DNAがコードするポリペプチドを発現できるものであれば、特に限定されない。このようなベクターとしては、例えば、プラスミドベクター、ファージベクター、コスミドベクターなどが挙げられ、さらに、他の宿主株との間での遺伝子交換が可能なシャトルベクターも使用できる。
【0075】
このようなベクターは、例えば大腸菌の場合では、通常、lacUV5プロモーター、trpプロモーター、trcプロモーター、tacプロモーター、lppプロモーター、tufBプロモーター、recAプロモーター、pLプロモーター等の制御因子を含み、本発明のDNAと作動可能に連結された発現単位を含む発現ベクターとして好適に使用できる。例えば、pUCN18(実施例2参照)、pSTV28(タカラバイオ社製)、pUCNT(WO94/03613公報)などが挙げられる。
【0076】
本明細書で用いる用語「制御因子」は、機能的プロモーター及び、任意の関連する転写要素(例えばエンハンサー、CCAATボックス、TATAボックス、SPI部位など)を有する塩基配列をいう。
【0077】
本明細書で用いる用語「作動可能に連結」は、遺伝子の発現を調節するプロモーター、エンハンサー等の種々の調節エレメントと遺伝子が、宿主細胞中で作動し得る状態で連結されることをいう。制御因子のタイプ及び種類が、宿主に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。
【0078】
各種生物において利用可能なベクター、プロモーターなどに関して「微生物学基礎講座8遺伝子工学・共立出版」などに詳細に記述されている。
【0079】
本発明で用いるポリペプチドを発現させるために用いる宿主生物は、各ポリペプチドをコードするDNAを含むポリペプチド発現ベクターにより形質転換され、導入したDNAがコードするポリペプチドを発現することができる生物であれば、特に制限されないが、宿主ベクター系の開発されている生物が好ましい。
【0080】
利用可能な微生物としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、及びラクトバチルス(Lactobacillus)属などの細菌;ロドコッカス(Rhodococcus)属及びストレプトマイセス(Streptomyces)属などの放線菌;サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クライベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウイア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、及びキャンディダ(Candida)属などの酵母;ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、及びトリコデルマ(Trichoderma)属などのカビなどが挙げられる。
【0081】
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、特に蚕などの昆虫(Nature 315, 592-594 (1985))や菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、好適に利用できる。これらのうち、導入及び発現効率からは微生物が好ましく、細菌がより好ましく、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)(通称は大腸菌)が特に好ましい。
【0082】
本発明で用いるポリペプチドをコードするDNAを含むポリペプチド発現ベクターは、公知の方法により宿主生物に導入できる。
【0083】
例えば、ベクターpUC118に配列番号2に示すDNAを導入して作成されたプラスミドpUCAR2(Applied and Environmental Microbiology, 65(12), 5207-5211, (1999))を、宿主微生物である大腸菌に導入する場合、市販の E. coli コンピテントセル(タカラバイオ社製)などを用いて、そのプロトコールに従って操作することにより、当該ベクターを宿主細胞に導入した組換え生物 E. coli、例えば E. coli JM109(pUCAR2)(実施例1参照)、が得られる。
【0084】
また、本発明で用いるポリペプチド及び後述する還元型補酵素再生能を有するポリペプチドの両ポリペプチドを、同一菌体内で発現させた組換え生物も育種することができる。すなわち、本発明で用いるポリペプチドをコードするDNA及び還元型補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAを、同一のベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入することにより得られる。また、本発明で用いるポリペプチドをコードするDNA及び還元型補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAを、不和合性グループの異なる2種のベクターにそれぞれ組み込み、それらを同一の宿主細胞に導入することによっても、本発明で用いるポリペプチド及び還元型補酵素再生能を有するポリペプチドの両ポリペプチドを同一菌体内で生産する組換え生物が育種できる。
【0085】
ポリペプチドもしくは組換え生物を用いた光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造
上記ポリペプチドもしくは該ポリペプチドを発現させた組換え生物を用いて、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステル(8);
【0086】
【化1】

【0087】
を還元して光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル(9);
【0088】
【化2】

【0089】
を製造する場合、以下のように実施され得る。但し、以下の方法に限定されるわけではない。
【0090】
前記式(8)、(9)中、nは0〜8の整数を表す。中でも好ましくは0〜4であり、さらに好ましくは1〜3であり、最も好ましくは1である。n=1の場合、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルは、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルであり、生成物である光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルは2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルである。
【0091】
前記式(8)、(9)中、Rは炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキルとしては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基としては例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルベンジル基、p−クロロフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜11のアラルキル基としては例えば、ベンジル基、p−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−トリフルオロメチルベンジル基等が挙げられる。中でも好ましくは炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
【0092】
前記式(9)中、*1、*2は不斉炭素を表す。*1、*2にそれぞれ独立して(S)の立体配置であっても良いし、(R)の立体配置であっても良い。中でも好ましくは*1、*2ともに(R)の立体配置である。
【0093】
なお、本発明で製造する光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル(9)とは、2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの4種類の立体異性体(シス(cis)体の(1R,2S体)と(1S,2R)体、トランス(trans)体の(1S,2S)体と(1R,2R)体の4種類)に占める目的の立体異性体の比率が50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上の2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルである。
【0094】
前記式(9)に占める(1R,2R)体及び(1S,2S)の比率は、例えば、以下のように決定できる。
【0095】
分析したい前記式(9)が、例えば、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの場合、下記のガスクロマトグラフィー条件で分析することにより、トランス体比(4つの立体異性体に占めるトランス体((1S,2S)体と(1R,2R)体)の割合)を下記式により決定することができる。
[トランス体比(%)]=[トランス体のエリア]/([トランス体のエリア]+[シス体のエリア])×100
【0096】
[ガスクロマトグラフィーによる分析条件]
カラム:ULBON HR−20M(0.25mm(内径)×25m;信和化工社製)、検出:FID、カラム温度:130℃、注入温度:200℃、検出温度:200℃、キャリアーガス:ヘリウム(130kPa)、溶出時間:2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル(トランス体)約15.7分、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル(シス体)約8.1分、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エチル 約8.8分。
【0097】
また、トランス体に占める(1R,2R)体もしくは(1S,2S)体の割合は、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルを塩基条件下にてジニトロベンゾイルクロライドを作用させて誘導体化し、下記条件の高速液体クロマトグラフィーの条件で分析することにより容易に算出できる。
【0098】
[高速液体クロマトグラフィーによる分析条件]
カラム:Chiralcel AD−H(4.6μm(内径)×250mm;ダイセル化学社製)、カラム温度:30℃、検出波長:245nm、移動相:n−ヘキサン/エタノール=70/30、保持時間:(1R,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル 約7.2分、(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル 約9.2分、(1S,2S)-2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル 約15.3分、(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル 約17.0分。
【0099】
上記の2つの分析結果より、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルに占める(1R,2R)体もしくは(1S,2S)体の比率が容易に算出可能である。
【0100】
生成した前記式(9)に占める(1S,2R)体及び(1R,2S)の比率は、以下のように決定できる。
【0101】
分析したい前記式(9)が、例えば、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの場合、上記のガスクロマトグラフィー条件で分析することにより、シス体比(4つの立体異性体に占めるトランス体((1S,2R)体と(1R,2S)体)の割合)を下記式により決定することができる。
[シス体比(%)]=[シス体のエリア]/([トランス体のエリア]+[シス体のエリア])×100
【0102】
また、シス体に占める(1S,2R)体もしくは(1S,2R)体の割合は、例えば、前記式(9)が2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの場合、塩基条件下にてジニトロベンゾイルクロライドを作用させて誘導体化し、上記条件の高速液体クロマトグラフィーの条件で分析することにより容易に算出できる。
【0103】
上記の2つの分析結果より、前記式(9)に占める(1S,2R)体もしくは(1S,2R)体の比率が容易に算出可能である。
【0104】
前記式(8)を前記式(9)へ変換する場合は、適当な溶媒、例えば100mMりん酸緩衝液(pH6.5)など、中に前記式(8)を加え、NADPHやNADP+、NADHやNAD+等の補酵素、及び該組換え生物の培養物及び/またはその処理物などを添加し、pH調整下、攪拌して反応させる。
【0105】
ここで、処理物とは、例えば、菌体破砕物、粗抽出液、培養菌体、凍結乾燥生物体、アセトン乾燥生物体、あるいはそれらの磨砕物、これらの混合物であり、該ポリペプチドの触媒活性が残存している物を意味する。
【0106】
反応は5〜80℃、好ましくは10〜60℃、より好ましくは20〜40℃の温度で行われ、反応中反応液のpHは3〜10、好ましくは4〜9、より好ましくは5〜8に維持する。反応はバッチ式あるいは連続方式で行われ得る。バッチ方式の場合は、反応基質は0.01〜100%(w/v)、好ましくは0.1〜70%、より好ましくは0.5〜50%の仕込み濃度で添加されうる。また、反応の途中で新たに基質を追加添加しても良い。
【0107】
また更に、トリトン(ナカライテスク株式会社製)、スパン(関東化学株式会社製)、ツイーン(ナカライテスク株式会社製)などの界面活性剤を反応液に添加することも効果的である。更に、基質及び/または還元反応の生成物であるアルコール体による反応の阻害を回避する目的で、酢酸エチル、酢酸ブチル、イソプロピルエーテル、トルエン、ヘキサンなどの水に不溶な有機溶媒を反応液に添加してもよい。更に、基質の溶解度を高める目的で、メタノール、エタノール、アセトン、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシドなどの水に可溶な有機溶媒を添加することもできる。
【0108】
還元反応により生成した光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの採取は、特に限定されないが、反応液から直接、あるいは菌体等を分離後、酢酸エチル、トルエン、t−ブチルメチルエーテル、ヘキサン、n−ブタノール、ジクロロメタン等の溶剤で抽出し、減圧加熱等の操作により溶剤を留去すると良い。さらには、蒸留やシリカゲルカラムクロマトグラフィー等により精製すれば高純度の前記式(9)を容易に得ることができる。
【0109】
還元型補酵素再生能を有するポリペプチド
本発明で用いるポリペプチドの生産能を有する組換え生物を用いて、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステル(8)を還元して光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル(9)を合成する場合、補酵素としてNADHもしくはNADPHが必要となる。上記のように、反応系にNADHもしくはNADPHを必要な量だけ添加しても実施しうる。しかし、酸化された該補酵素(NAD+もしくはNADP+)を還元型(NADHもしくはNADPH)に変換する能力(以後還元型補酵素再生能力と呼ぶ)を有する酵素をその基質と共に、つまり補酵素再生系を本発明で用いるポリペプチドと組み合わせて反応を行うことにより、高価な補酵素の使用量を大幅に削減することができる。還元型補酵素再生能力を有する酵素としては、ヒドロゲナーゼ、ギ酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素及びグルコース脱水素酵素等を用いることができる。好適には、グルコース脱水素酵素が用いられる。
【0110】
このような反応は、補酵素再生系を不斉還元反応系内に添加することによっても行われ得るが、本発明の酵素をコードするDNA及び還元型補酵素再生能を有するポリペプチドをコードするDNAの両者により形質転換された組換え生物を触媒とした場合は、還元型補酵素再生能を有する酵素を別に調製し反応系内に添加しなくても、効率的に反応を行うことができる。このような組換え生物は、先述の方法により得られる。
【0111】
光学活性−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルから他の化合物への変換
上記記載の方法にて製造した光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステル(9);
【0112】
【化3】

【0113】
より、医薬品中間体として特に有用な2−アミノシクロアルカノール誘導体(2);
【0114】
【化4】

【0115】
、もしくは光学活性−2−アミノシクロアルカノール(2)’;
【0116】
【化5】

【0117】
を製造することができる。
【0118】
前記式(9)において、Rは炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキルとしては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基としては例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルベンジル基、p−クロロフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜11のアラルキル基としては例えば、ベンジル基、p−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−トリフルオロメチルベンジル基等が挙げられる。中でも好ましくは炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基あり、さらに好ましくはメチル基、エチル基である。
【0119】
前記式(9)は、上記した微生物や酵素を用いた対応するケトエステルの還元反応により取得できる。
【0120】
前記式(2)において、R’としては例えば、炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアラルキル基等が挙げられる。炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基としては例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基としては例えば、フェニル基、p−メチルフェニル基、o−メチルフェニル基、m−メチルベンジル基、p−クロロフェニル基、p−ニトロフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。炭素数7〜11のアラルキル基としては例えば、ベンジル基、p−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、p−ニトロベンジル基、p−トリフルオロメチルベンジル基等が挙げられる。中でも好ましくは炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜11のアラルキル基であり、さらに好ましくはメチル基、エチル基、t−ブチル基、ベンジル基である。
【0121】
前記式(9)より前記式(2)もしくは前記式(2)’を製造するルートとしては、前記式(9)とアンモニアを反応させることで、2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸アミド(3)を製造し、続いて転位反応を行うHofmann転位ルート、もしくは、前記式(1)より2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸アジド(4)を経由し転位反応を行うCurtius転位ルートが挙げられる(図1参照)。Curtius転位は爆発危険性の伴うアジド化合物を使用するため、好ましくはHofmann転位を行うルートである。
【0122】
【化6】

【0123】
前記式(9)、(2)、(2)’(3)、(4)において、nは0〜8の整数を表す。中でも好ましくは0〜4であり、さらに好ましくは1〜3であり、最も好ましくは1である。
【0124】
前記式(9)、(2)、(2)’(3)、(4)中、*1、*2は不斉炭素を表す。*1、*2にそれぞれ独立して(S)の立体配置であっても良いし、(R)の立体配置であっても良い。中でも好ましくは*1、*2ともに(R)の立体配置である。
【0125】
以下、これら二つのルートについて詳細に説明する。
【0126】
Hofmann転位反応を用いるルート
本ルートは、前記式(9)とアンモニアを反応させることで前記式(3)を製造し、続いて転位反応を行うことで前記式(2)もしくは前記式(2)’を製造するルートである。
【0127】
まず、前記式(9)とアンモニアを反応させ前記式(3)を製造する方法について述べる。
【0128】
前記式(9)において、Rは前記に同じである。
【0129】
用いるアンモニアは溶媒に希釈したものを用いても良いし、希釈することなく用いても良い。希釈する溶媒としてはメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール系溶媒溶液、水溶液等が挙げられる。中でも好ましくはメタノール溶液又は水溶液である。
【0130】
アンモニアを希釈して用いる場合、その濃度は特に限定しないが、好ましくは5〜40重量%溶液であり、より好ましくは10〜30重量%溶液であり、さらに好ましくは15〜28重量%である。
【0131】
用いるアンモニアの当量は特に限定しないが、前記式(9)に対して好ましくは1〜30当量であり、より好ましくは5〜25当量であり、さらに好ましくは10〜20当量である。
【0132】
反応温度は、通常、−50〜120℃の範囲内で行えばよい。好ましくは0〜100℃の範囲内であり、更に好ましくは20〜100℃の範囲内である。
【0133】
反応は常圧(1気圧)下に行うこともできるが、密閉された反応缶を用いて加熱することにより加圧条件下に行うことができる。
【0134】
用いる溶媒としては、特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルスルホキシド(DMSO),N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、ヘキサメチルベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF),ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒、水などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。中でも好ましくは、アルコール系溶媒、炭化水素系溶媒、水であり、さらに好ましくは、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、水である。
【0135】
反応終了後、反応液を濃縮することで粗生成物を取得することができる。また、一般的な後処理を行って組成物を取得しても良い。一般的な後処理としては例えば、水および一般的な抽出溶媒、例えば、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から、減圧加熱等の操作により反応溶媒および抽出溶媒を留去すると、目的化合物が得られる。
【0136】
このようにして得られる目的物は、そのまま次工程で使用しても良いが、晶析精製、分別蒸留、カラムクロマトグラフィー等、一般的な手法により精製を加え、さらに純度を高めても良い。
【0137】
粗生成物に前記式(3)のジアステレオマーが含まれる場合、医薬品中間体として十分な品質の前記式(2)もしくは前記式(2)’を取得するためにも晶析操作を行う方が好ましい。即ち、前記式(3)を含む粗生成物の晶析を行うことで、ジアステレオマーを除去することができる。
【0138】
ジアステレオマーとしては特に限定しないが、例えば、前記式(3)において好ましい立体配置、すなわち、*1、*2ともに(R)の場合、ジアステレオマーは(1R,2S)−2−ヒドロキシシクロアルカンアミド及び/又は(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロアルカンアミドである。
【0139】
晶析溶媒としては特に限定されず、例えば、ヘキサメチルベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF),ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒、水などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。中でも好ましくは、エステル系溶媒とアルコール系溶媒の組合せであり、さらに好ましくは酢酸エチルとメタノールの組合せである。
【0140】
晶析に用いる溶媒の量としては前記式(9)で表される化合物に対して1〜200倍重量であり、好ましくは1〜50倍重量である。
【0141】
晶析時の温度は−10℃〜120℃の範囲内であり、好ましくは−10℃〜70℃の範囲内であり、もっとも好ましくは−10℃〜50℃の範囲内である。
【0142】
晶析の方法としては特に限定せずどのような方法をとっても良い。例えば、前記式(9)で表される化合物を含む粗生成物に晶析溶媒を添加し、均一溶液となるまで加熱したのち、冷却し結晶化させる方法でも良いし、粗生成物を適量の富溶媒にて溶解した後、貧溶媒を添加することで結晶化させても良い。また、前記式(9)で表される化合物を含む粗生成物を富溶媒と貧溶媒の混合液に溶解した後、濃縮留去等により良溶媒を除去する方法で結晶化させても良い。さらに上述した方法に種晶添加等の操作を適宜組み合わせることができる。
【0143】
晶析によって取得した前記式(9)中に含まれるジアステレオマーの含量はモル比で10.0モル%以下であり、好ましくは5.0モル%以下であり、さらに好ましくは2.0モル%以下である。
【0144】
このようにして得られる前記式(3)で表される化合物の結晶は、例えば、遠心分離、加圧ろ過、減圧ろ過等により固液分離、更に、必要に応じてケーキ洗浄を行い、湿体として取得することができる。また、さらに減圧乾燥を行うことで、乾燥晶を取得することができる。
【0145】
取得した結晶を次工程の反応に用いる場合、乾燥晶として使用しても良いし、湿体のまま用いても良い。
【0146】
次に前記式(3)を塩基存在下、ハロゲン化剤を反応させることにより前記式(2)もしくは化合物(2)’を製造する方法について述べる。
【0147】
用いる塩基は、無機塩基であっても良いし、有機塩基であっても良い。無機塩基としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウム等の金属水酸化物、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0148】
有機塩基としては特に限定しないが、第三級アミンが好ましい。第三級アミンとしては例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミンなど炭素数1〜12のトリアルキルアミンや、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N.N−ジメチルアミノピリジンなどの炭素数1〜4のアルキル基とアリール基又はヘテロアリール基からなる第三級アミン、ピリジン、ピコリン、ルチジンなどの含窒素有機塩基、N,N,N,N−テトラメチル−1,2−エチレンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N,N−テトラメチル−1,6−ヘキサンジアミンなど炭素数1〜10のN,N,N,N−テトラメチル−α,ω−アルキルジアミンなどが挙げられる。
【0149】
これらの塩基は単独で用いても良いし、複数を同時に使用しても良い。中でも、安価で入手が容易である点から、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0150】
用いる塩基の量としては、前記式(3)に対して1当量以上使用すれば良く、好ましくは1〜10当量であり、さらに好ましくは1〜5当量である。
【0151】
本反応に用いられる塩基は、溶媒に希釈することなく用いても良いし、希釈して用いても良い。
【0152】
本反応に用いられるハロゲン化剤としては、例えば、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、次亜臭素酸ナトリウム、塩素、臭素、ヨウ素、N−クロロスクシンイミド(NCS)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ヨードスクシンイミド(NIS)、N−クロロイソシアヌル酸等が挙げられる。中でも好ましくは次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウムであり、さらに好ましくは次亜塩素酸ナトリウムである。
【0153】
これらハロゲン化剤は、そのまま用いても良いし、水又は有機溶媒に希釈されたものを用いても良い。特に次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合は、通常、水溶液のものが用いられる。
【0154】
また、ハロゲン化剤は系内で調製する方法をとっても良い。例えば、メタノール溶媒中、臭素とナトリムメトキシドを反応させることで、次亜臭素酸ナトリウムのメタノール溶液を調製することができる。
【0155】
本反応に用いるハロゲン化剤の量としては、前記式(3)に対して1当量以上使用すれば良く、好ましくは1〜10当量であり、さらに好ましくは1〜5当量である。
【0156】
反応温度は、通常−30〜120℃の範囲内であり、好ましくは−20〜80℃である。さらに好ましくは−10〜60℃である。
【0157】
本工程に用いる溶媒としては、特に限定されず、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF),ジメチルスルホキシド(DMSO),N−メチルピロリドン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、ヘキサメチルベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF),ジイソプロピルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロベンゼン、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン等のハロゲン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトニトリル、ブチロニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール系溶媒、水などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用しても良い。中でも、エーテル系溶媒、アルコール系溶媒、水が好ましく、さらに好ましくは、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、水である。
【0158】
本反応は水存在下で行うことにより、前記式(2)’を得ることができる。また、アルコール(5);
【0159】
【化7】

【0160】
存在下に行うことにより、前記式(2)を得ることができる。
【0161】
前記式(2)、(5)中、R’は前記に同じである。
【0162】
反応終了後、反応液から粗生成物を取得するためには、一般的な後処理を行えばよい。例えば、一般的な抽出溶媒、例えば、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等を用いて抽出操作を行う。得られた抽出液から、減圧加熱等の操作により反応溶媒および抽出溶媒を留去すると、目的化合物が得られる。さらに、反応終了後、減圧加熱等の操作により反応溶媒を留去もしくは溶媒置換等をおこなってから、上記と同様の操作を行っても良い。
【0163】
上記のようにして合成される2−アミノシクロペンタノール(2)’;
【0164】
【化8】

【0165】
より、一般式(6)
【0166】
【化9】

【0167】
で表されるN−保護−2−アミノシクロペンタノール誘導体を取得することができる。
【0168】
前記式(6)中、R4は炭素数1〜15の置換又は無置換のアルキルオキシカルボニル基、炭素数7〜12の置換又は無置換のアラルキルオキシカルボニル基、又は炭素数2〜12の置換又は無置換のアシル基を表す。置換基としては、Rにおいて記載したものと同様のものが挙げられる。炭素数1〜15の置換又は無置換のアルキルオキシカルボニル基としては例えば、t−ブチルオキシカルボニル基(Boc基)、メトキシカルボニル基(Moc基)、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)等が挙げられる。炭素数7〜12の置換又は無置換のアラルキルオキシカルボニル基としては例えば、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。炭素数2〜12の置換又は無置換のアシル基としては例えば、アセチル基、ベンゾイル基等が挙げられる。中でも好ましくは、t−ブチルオキシカルボニル基(Boc基)、メトキシカルボニル基(Moc基)、9−フルオレニルメトキシカルボニル基(Fmoc基)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)、アセチル基であり、さらに好ましくはt−ブチルオキシカルボニル基(Boc基)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz基)である。
【0169】
前記式(6)中、*1、*2は不斉炭素を表す。*1、*2にそれぞれ独立して(S)の立体配置であっても良いし、(R)の立体配置であっても良い。中でも好ましくは*1、*2ともに(R)の立体配置である。
【0170】
前記式(2)’より前記式(6)へと誘導する方法については、一般的な保護を行う条件で実施すれば良い。例えばTheodora W.Greene, Peter G.M.Wuts著 Protective Groups in Organic Chemistry(第3版)JOHN WILEY & SONS,INC社出版に記載の脱保護法に従い、実施することができる。
【0171】
例えば、適当な溶媒中、塩基存在下、二炭酸t−ブチルを作用させることで、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)保護をおこなうことが出来るし、適当な溶媒中、塩基存在下、ベンジルオキシカルボニルクロリドを作用させることで、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)保護を行うことができる。
【0172】
前述した方法により単離した前記式(2)’を用いて前記式(6)へと誘導しても良いし、単離操作を行うことなく、前記式(2)’を含む反応液をそのまま用いて前記式(7)へと誘導しても良い。
【0173】
Curtius転位反応を用いるルート
次に前記式(9)より前記式(4)を経由し、前記式(2)もしくは前記式(2)’を製造するCurtius転位ルートについて説明する。
【0174】
前記式(9)より前記式(2)を製造するためには、一般的なCurtius転位の反応条件を用いれば良い。例えば、Strategic Applications of Named Reaction in Organic Synthesis Elsevir Inc社出版に記載の方法に従い、実施することができる。
【0175】
本反応において、前記式(9)の加水分解反応によって製造できる2−ヒドロキシアシクロアルカンカルボン酸(1);
【0176】
【化10】

【0177】
を用いることもできる。
【0178】
前記式(1)は上記製造方法により製造した2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの酸や塩基を用いた一般的な加水分解により取得可能である。例えば、酵素を用いた還元反応により製造した2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチルエステルを水−メタノールの混合溶媒中、水酸化ナトリウムを作用させることで製造できる。
【0179】
本反応は水存在下で行うことにより、前記式(2)’を製造することができる。また前記アルコール(5)存在下に行うことにより、前記式(2)を製造することができる。
【0180】
例えば、ベンジルアルコール存在下、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸(1)とジフェニルリン酸アジドを反応させることで、N−(ベンジルオキシカルボニル)−2−ヒドロキシシクロペンタノールを製造することができる。
【0181】
前記式(9)中、Rは前記に同じである。
【0182】
前記式(2)(5)中、R’は前記に同じである。
【0183】
前記式(1)、(2)、(2)’、(4)、(9)において、nは0〜8の整数を表す。中でも好ましくは0〜3であり、さらに好ましくは1〜3であり、最も好ましくは1である。
【0184】
前記式(1)、(2)、(2)’、(4)、(9)において、*1、*2は不斉炭素を表す。*1、*2にそれぞれ独立して(S)の立体配置であっても良いし、(R)の立体配置であっても良い。中でも好ましくは*1、*2ともに(R)の立体配置である。
【0185】
通常、前記式(4)は単離することなく反応に用いられる。前記式(4)の製造方法は特に限定されず、上記したCurtius転位の一般的に用いる条件の他に、前記式(9)とヒドラジンを反応させることでヒドラジド(7);
【0186】
【化11】

【0187】
を製造した後、続いて亜硝酸塩を作用させることによって製造しても良い。
【0188】
前記式(7)中、n、*1、*2は前記に同じである。
【実施例】
【0189】
以下、実施例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。なお、以下の実施例において用いた組み換えDNA技術に関する詳細な操作方法などは、次の成書に記載されている:
Molecular Cloning 2nd Edition(Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)、Current Protocols in Molecular Biology(Greene Publishing Associates and Wiley-Interscience)。
【実施例1】
【0190】
スポロボロマイセス・サルモニカラー(Sporobolomyces salmonicolor)由来のポリペプチド(ARII)を生産する大腸菌 E. coli JM109(pUCAR2)
Applied and Environmental Microbiology, 65(12), 5207-5211, (1999) に記載の方法で、プラスミドpUCAR2(ベクタープラスミドpUC118にポリペプチドARIIの構造遺伝子を導入したプラスミド)を有する大腸菌 E. coli J
M109(pUCAR2)を育種した。E. coli JM109(pUCAR2)およびベクタープラスミドpUC118を有する組換え大腸菌 E. coli HB101(pUC118)(比較例)を、0.1mMのIPTG、200μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)5mlに接種し、37℃で20時間振盪培養した。
【0191】
上記の培養で得られたそれぞれの培養液について、遠心分離により菌体を集め、5mlの100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に懸濁した。これを、UH−50型超音波ホモゲナイザー(SMT社製)を用いて破砕した後、遠心分離により菌体残渣を除去し、無細胞抽出液を得た。これら無細胞抽出液の2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステル還元活性を測定した。
【0192】
2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルに対する還元活性は、100mMリン酸緩衝液(pH6.5)に、2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチル5mM、補酵素NADPH0.25mM、および粗酵素液を添加して30℃で1分間反応を行い、波長340nmにおける吸光度の減少速度より算出した。この反応条件において、1分間に1μmolのNADPHをNADP+に酸化する酵素活性を1Uと定義した。
【0193】
E. coli HB101(pUC118)(比較例)の2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステル還元活性は、0.1U/mg以下であるのに対して、ARIIを発
現させた E. coli HB101(pUCAR2)の2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステル還元活性は3.3U/mgであった。
【0194】
以上のように、ポリペプチドARIIは、目的の2−オキソシクロペンタンカル
ボン酸エステルに対して還元活性を有した。
【実施例2】
【0195】
組換え生物 E. coli HB101(pUCAR2)を用いた(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
E. coli HB101(pUCAR2)を実施例1と同様に培養後、超音波ホモゲナイザーによる菌体破砕を実施し、無細胞抽出液180mlを得た。この無細胞抽出液180mlに、グルコース脱水素酵素(商品名:GLUCDH"Amano"II、天野エンザイム社製)2250U、グルコース12.5g、NADP+22mg、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エチルを3.6g添加し、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpH6.5に調整しながら、30℃で攪拌した。反応開始後2時間目に3.6g、4.75時間目に1.8gの2−オキソシクロペンタンカルボン酸エチルを追加添加し、27時間攪拌して反応させた。反応後に、反応液の一部をサンプリングし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を下記のガスクロマトグラフィーの条件で分析し、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率とトランス体比を測定した。その結果、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は100%であり、そのトランス体比は76.4%であった。なお、トランス体比(%)は以下の式で算出した。
[トランス体比(%)]=[トランス体のエリア]/([トランス体のエリア]+[シス体のエリア])×100。
【0196】
[ガスクロマトグラフィーによる分析条件]
カラム:ULBON HR−20M(0.25mm(内径)×25m;信和化工社製)、検出:FID、カラム温度:130℃、注入温度:200℃、検出温度:200℃、キャリアーガス:ヘリウム(130kPa)、溶出時間:2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル(トランス体)約15.7分、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル(シス体)約8.1分、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エチル 約8.8分。
【0197】
また反応液から生成物をトルエンで抽出後、溶媒を留去することで8.35gの2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルが得られた。得られた2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルを塩基条件下にてジニトロベンゾイルクロライドを作用させて誘導体化し、下記条件の高速液体クロマトグラフィーの条件で分析することにより光学純度を分析した。その結果、(1R,2R)体の光学純度は99.3%e.e.であった。
【0198】
[高速液体クロマトグラフィーによる分析条件]
カラム:Chiralcel AD−H(4.6μm(内径)×250mm;ダイセル化学社製)、カラム温度:30℃、検出波長:245nm、移動相:n−ヘキサン/エタノール=70/30、保持時間:(1R,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル 約7.2分、(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル 約9.2分、(1S,2S)-2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル 約15.3分、(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチル 約17.0分。
【0199】
2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルのトランス比および光学純度の分析結果より、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1R,2R)体の割合は76.1%であった。
【実施例3】
【0200】
組換え生物 E. coli HB101(pUCAR2)を用いた(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチルの製造
E. coli HB101(pUCAR2)を実施例1と同様に培養後、超音波ホモゲナイザーによる菌体破砕を実施し、無細胞抽出液1200mlを得た。この無細胞抽出液1200mlに、グルコース脱水素酵素(商品名:GLUCDH"Amano"II、天野エンザイム社製)15000U、グルコース164g、NADP+115mg、2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチルを25g添加し、5Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下することによりpH6.5に調整しながら、30℃で攪拌した。反応開始後1.5時間目、3時間目および6時間目に各25g、9.5時間目に12.5gの2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチルを追加添加し、27時間攪拌して反応させた。反応後に、反応液の一部をサンプリングし、酢酸エチルで抽出した。抽出液を下記のガスクロマトグラフィーの条件で分析し、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチルへの変換率とトランス体比を測定した。その結果、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチルへの変換率は98%であり、そのトランス体比は83.1%であった。
【0201】
[ガスクロマトグラフィーによる分析条件]
カラム:ULBON HR−20M(0.25mm(内径)×25m;信和化工社製)、検出:FID、カラム温度:130℃、注入温度:200℃、検出温度:200℃、キャリアーガス:ヘリウム(130kPa)、溶出時間:2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチル(トランス体)約14.3分、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチル(シス体)約7.6分、2−オキソシクロペンタンカルボン酸メチル 約8.0分。
【0202】
また反応液から生成物をトルエンで抽出後、溶媒を留去することで95.8gの2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチルが得られた。得られた2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチルを塩基条件下にてジニトロベンゾイルクロライドを作用させて誘導体化し、下記条件の高速液体クロマトグラフィーの条件で分析することにより光学純度を分析した。その結果、(1R,2R)体の光学純度は98.8%e.e.であった。
【0203】
[高速液体クロマトグラフィーによる分析条件]
カラム:Chiralcel AD−H(4.6μm(内径)×250mm;ダイセル化学社製)、カラム温度:30℃、検出波長:245nm、移動相:n−ヘキサン/エタノール=70/30、保持時間:(1R,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチル 約9.5分、(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチル 約13.4分、(1S,2S)-2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチル 約19.1分、(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチル 約22.4分。
【0204】
2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチルのトランス比および光学純度の分析結果より、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチルの4種類の立体異性体に占める(1R,2R)体の割合は82.6%であった。
【実施例4】
【0205】
キャンディダ・マグノリエ由来のポリペプチドを用いた(1S,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
2mlの100mMりん酸緩衝液(pH6.5)に、グルコース46mg、キャンディダ・マグノリエ(Candida magnoliae)NBRC0705 から調製したCR酵素(国際公報WO01/040450パンフレット、実施例1参照)100U、グルコース脱水素酵素(商品名:GLUCDH"Amano"II、天野エンザイム社製) 25U、NADP+ 1mg、2−オキソシクロペンタンカルボン酸エチル20mg を加えて、30℃で24時間攪拌した。実施例2に記載の方法で、反応後の2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率、トランス体比、その光学純度を測定した。その結果、変換率は45%で、トランス体比は57.6%であった。また、光学純度は(1S,2S)体で93.6%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2S)体の割合は55.8%であった。
【実施例5】
【0206】
ロードトルーラ・グルチニス・バー・ダイレネンシス由来のポリペプチドを用いた(1S,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、ロードトルーラ・グルチニス・バー・ダイレネンシス(Rhodotorula glutinis var. dairenensis)NBRC0415 から調製した還元酵素RRG(国際公報WO03/093477パンフレット、実施例1参照)100Uを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は99%で、トランス体比は97.9%であった。また、光学純度は(1S,2S)体で100%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2S)体の割合は97.9%であった。
【実施例6】
【0207】
オガタエア・ミヌータ・バー・ミヌータ由来のポリペプチドを用いた(1S,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、オガタエア・ミヌータ・バー・ミヌータ(Ogataea minuta var. minuta)NBRC0975 から調製した還元酵素(国際公報WO06/013801パンフレット、実施例1参照)100Uを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は98%で、トランス体比は70.0%であった。また、光学純度は(1S,2S)体で100%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2S)体の割合は70.0%であった。
【実施例7】
【0208】
キャンディダ・ボイディニ由来のポリペプチドを用いた(1S,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、キャンディダ・ボイディニ(Candida boidinii)由来のアルコール脱水素酵素CP(Julich Fine chemicals 社製)20mgを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は60%で、トランス体比は75.0%であった。また、光学純度は(1S,2S)体で100%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2S)体の割合は75.0%であった。
【実施例8】
【0209】
サーモアナエロビウム・ブロッキ由来のポリペプチドを用いた(1S,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、サーモアナエロビウム・ブロッキ(Themoanaerobium brockii)由来のアルコール脱水素酵素(SigmaAldrich社製)50mgを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は100%で、トランス体比は80.4%であった。また、光学純度は(1S,2S)体で100%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2S)体の割合は80.4%であった。
【実施例9】
【0210】
キャンディダ・マリス由来のポリペプチドを用いた(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、キャンディダ・マリス(Candida maris)NBRC10003 から調製した還元酵素FPDH(国際公報WO01/05996パンフレット、実施例14参照)100Uを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は95%で、シス体比は97.4%であった。なお、シス体比(%)は以下の式で算出した。
[シス体比(%)]=[シス体のエリア]/([トランス体のエリア]+[シス体のエリア])×100
【0211】
また、光学純度は(1S,2R)体で99.1%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2R)体の割合は97.0%であった。
【実施例10】
【0212】
デボシア・リボフラビナ由来のポリペプチドを用いた(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、デボシア・リボフラビナ(Devosia riboflavina)NBRC13584 から調製した還元酵素RDR(国際公報WO04/027055パンフレット、実施例1参照)100Uを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は96%で、シス体比は95.7%であった。また、光学純度は(1S,2R)体で99.5%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2R)体の割合は95.5%であった。
【実施例11】
【0213】
ブレブンディモナス・ディミヌータ由来のポリペプチドを用いた(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、ブレブンディモナス・ディミヌータ(Brevundimonas diminuta)NBRC13584 から調製した還元酵素(国際公報WO07/114217パンフレット、実施例4参照)100Uを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は80%で、シス体比は93.4%であった。また、光学純度は(1S,2R)体で98.6%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2R)体の割合は92.7%であった。
【実施例12】
【0214】
ラクトバシラス・ブレビス由来のポリペプチドを用いた(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、ラクトバシラス・ブレビス(Lactobacillus brevis)由来のアルコール脱水素酵素(Julich Fine chemicals 社製)100μlを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は98%で、シス体比は98.7%であった。また、光学純度は(1S,2R)体で99.5%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2R)体の割合は98.5%であった。
【実施例13】
【0215】
ラクトバシラス・ケフィア由来のポリペプチドを用いた(1S,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、ラクトバシラス・ケフィア(Lactobacillus kefir)由来のアルコール脱水素酵素(Fluka 社製)50mgを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は98%で、シス体比は97.7%であった。また、光学純度は(1S,2R)体で98.5%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1S,2R)体の割合は97.0%であった。
【実施例14】
【0216】
キャンディダ・マルトーサ由来のポリペプチドを用いた(1R,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、キャンディダ・マルトーサ(Candida maltosa)NBRC1977から調製した還元酵素(国際公報WO08/066018パンフレット、実施例1参照)100Uを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は40%で、シス体比は98.2%であった。また、光学純度は(1R,2S)体で99.0%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1R,2S)体の割合は97.7%であった。
【実施例15】
【0217】
キャンディダ・パラプシロシス由来のポリペプチドを用いた(1R,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、キャンディダ・パラプシロシス(Candida parapsilosis)NBRC708から調製した還元酵素(特開2003−289874パンフレット、実施例1参照)100Uを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は40%で、シス体比は98.2%であった。また、光学純度は(1R,2S)体で99.0%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1R,2S)体の割合は97.7%であった。
【実施例16】
【0218】
ロドコッカス・エリスロポリス由来のポリペプチドを用いた(1R,2S)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの製造
CR酵素のかわりに、ロドコッカス・エリスロポリス(Rhodococcus erythropolis)由来のアルコール脱水素酵素(Julich Fine chemicals 社製)100μlを用いて、実施例4と同様に反応を実施した。2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルへの変換率は40%で、シス体比は99.8%であった。また、光学純度は(1R,2S)体で97.5%e.e.であることから、2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エチルの4種類の立体異性体に占める(1R,2S)体の割合は98.6%であった。
【実施例17】
【0219】
(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸アミドの製造
実施例3に記載した方法にて取得した(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸メチル(73.34g,0.52mol)と20重量%NH3/MeOH溶液(658.20g,7.74mol)をオートクレーブ中、密閉下、バス温80℃にて48時間の攪拌を行った。反応終了後、常温下にオートクレーブを開封し、内溶液をロータリーエバポレーターを用いて全量が110.14gとなるまで濃縮した。濃縮液に酢酸エチル(490g)を添加した後、析出した固体をろ過操作により取得し、表題化合物を得た(収量35.17g,収率53%)。1H−NMRより(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸アミド中に存在するジアステレオマーは、モル比で2.0%であった。
1H−NMR(CDCl3)1.54−1.80(m,4H),1.90−2.04(m,2H),2.51−2.57(m,1H),4.26(dt,1H)
【実施例18】
【0220】
(1R,2R)−2−アミノシクロペンタノールの製造
実施例17に記載した方法にて取得した(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸アミド(34.00g,0.26mol)を水(170g)に希釈し、バス温0℃下、30重量%水酸化ナトリウム水溶液(70.20g,0.53mol)を35分間かけて滴下した。続いて同温下、13重量%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(226.10g,0.40mol)を2.5時間かけて滴下した。同温下、30分間の攪拌を行った後、バス温40℃下、さらに1時間の攪拌を行った。反応液を20℃まで冷却した後、35重量%塩酸を添加することで、系内のpHを6.8に調整した。反応液の標準品((1R,2R)−2−アミノシクロペンタノール塩酸塩)と比較したガスクロマトグラフィー定量分析を行った結果、表題化合物の含有が確認された(収量27.61g,収率80%)。
【実施例19】
【0221】
(1R,2R)−2−(t−ブチルオキシカルボニルアミノ)シクロペンタノール
実施例17に記載した方法にて取得した(1R,2R)−2−アミノシクロペンタノールの水溶液(net量:27.61g,0.21mol)に30重量%水酸化ナトリウム水溶液を加え、系内のpHを10.4に調整した。バス温20℃下、ジ炭酸t−ブチル(68.94g,0.32mol)を添加した。反応中、系内のpHが低下するため、適宜30重量%NaOHを添加し、pH=10±0.5に調整した。同温にて14時間の攪拌を行った後、濃塩酸を加え、系内のpHを4.0とした。トルエンを用いて2回抽出し(70g×2)、得られた有機層を水(70g)にて洗浄した。反応液の標準品と比較したガスクロマトグラフィー定量分析を行った結果、表題化合物の含有が確認された(収量39.04g,収率93%)。ロータリーエバポレーターを用いて、有機層を全量が145.55gとなるまで濃縮した。
1H−NMR(CDCl3)1.33−1.39(m,1H),1.45(s,9H),1.61−1.70(m,2H),1.75−1.83(m,1H),1.97−2.14(m,2H),3.59−3.66(m,1H),3.96−4.00(1H,m),4.06(br,1H),4.71(br,1H)
【実施例20】
【0222】
(1R,2R)−2−アミノシクロペンタノール塩酸塩
実施例19に記載して方法にて取得した)(1R,2R)−2−(t−ブチルオキシカルボニルアミノ)シクロペンタノールのトルエン溶液(net量:38.60g,0.19mol)に対して、バス温50℃下、29.5重量%塩化水素/イソプロパノール溶液(118.52g,0.96mol)を1.5時間かけて滴下した。同温下にて1.0時間、バス温20℃下に1.0時間、バス温10℃下に3.0時間の攪拌を行った後、ろ過操作により析出固体を取得した。取得固体をトルエン(21.70g)とイソプロパノール(38.20g)の混合液にて洗浄後、減圧乾燥を行い、表題化合物を得た(収量20.50g,収率78%)。
1H−NMR(DMSO)1.43−1.57(m,2H),1.60−1.71(m,2H),1.85−2.03(m,2H),3.09−3.14(m,1H),3.96−4.02(m,1H),5.20−5.21(d,1H),8.08(br,3H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(9);
【化12】

(式中、Rは炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。nは0〜8の整数を表す。*1、*2は不斉炭素を表す。)で表される光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルの製造方法であって、一般式(8);
【化13】

(式中、R,nは前記に同じ。)で表される2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルに、ポリペプチド、該ポリペプチドを産生する生物体、または、該生物体の処理物を作用させて、2−オキソシクロアルカンカルボン酸エステルを還元することを特徴とする製造方法。
【請求項2】
nが1である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
ポリペプチドが、キャンディダ(Candida)属、ロードトルーラ(Rhodotorula)属、デボシア(Devosia)属、オガタエア(Ogataea)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属、ラクトバシラス(Lactobacillus)属、サーモアナエロビウム(Themoanaerobium)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)属、スポリディオボラス(Sporidiobolus)属からなる群より選ばれた微生物由来のものである、請求項1もしくは請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(9)で表される光学活性2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルが、(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルである、請求項1もしくは請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
ポリペプチドが、スポロボロマイセス(Sporobolomyces)属、スポリディオボラス(Sporidiobolus)属からなる群より選ばれた微生物由来のものである、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
ポリペプチドが下記(a1)、(a2)、および(a3)からなる群から選択されるポリペプチドである、請求項4に記載の製造方法:
(a1)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチド、
(a2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入及び/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ前記式(8)とNADPHに作用して前記式(9)とNADPを生成する活性を有するポリペプチド、
(a3)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ前記式(8)とNADPHに作用して前記式(9)とNADPを生成する活性を有するポリペプチド。
【請求項7】
前記(a1)、(a2)、および(a3)からなる群から選択されるポリペプチドを産生する生物体が、下記(A1)、(A2)、(A3)および(A4)からなる群から選択されるDNAを導入された組換え生物である、請求項4に記載の製造方法:
(A1)配列表の配列番号2に記載のDNA、
(A2)配列表の配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA、
(A3)配列表の配列番号2に記載のDNAと相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ前記式(8)とNADPHに作用して前記式(9)とNADPを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA、
(A4)、配列表の配列番号2に記載の塩基配列と85%以上の配列同一性を有し、かつ2−オキソシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPHに作用して(1R,2R)−2−ヒドロキシシクロペンタンカルボン酸エステルとNADPを生成する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
【請求項8】
組換え生物が Escherichia coli(大腸菌)である請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記式(9)において、*1が(S),*2が(S)の絶対立体配置であり、かつポリペプチドがキャンディダ(Candida)属、ロードトルーラ(Rhodotorula)属、オガタエア(Ogataea)属、サーモアナエロビウム(Themoanaerobium)属からなる群から選ばれた微生物由来のものである、請求項1もしくは請求項2に記載の製造方法。
【請求項10】
前記式(9)において、*1が(S),*2が(R)の絶対立体配置であり、かつポリペプチドがキャンディダ(Candida)属、デボシア(Devosia)属、ブレブンディモナス(Brevundimonas)属、ラクトバシラス(Lactobacillus)属からなる群から選ばれた微生物由来のものである、請求項1もしくは請求項2に記載の製造方法。
【請求項11】
前記式(9)において、*1が(R),*2が(S)の絶対立体配置であり、かつポリペプチドがキャンディダ(Candida)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属からなる群から選ばれた微生物由来のものである、請求項1もしくは請求項2に記載の製造方法。
【請求項12】
還元型補酵素再生能を有するポリペプチドを更に作用させる請求項1〜11のいずれかに記載の製造方法。
【請求項13】
上記(a1)、(a2)、または(a3)のポリペプチドに加えて、還元型補酵素再生能を有するポリペプチドの生産能を付与された組換え生物を用いる、請求項12記載の製造方法。
【請求項14】
還元型補酵素再生能を有するポリペプチドがグルコース脱水素酵素である請求項12または13に記載の製造方法。
【請求項15】
Rが炭素数1〜4の置換もしくは無置換のアルキル基である、請求項1〜14に記載の製造方法。
【請求項16】
Rがメチル基もしくはエチル基である、請求項1〜14に記載の製造方法。
【請求項17】
請求項1〜16いずれかに記載の方法にて製造した一般式(9);
【化14】

(式中、Rは炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。nは0〜8の整数を表す。*1、*2は不斉炭素を表す。)で表される2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸エステルとアンモニアを反応させ、式(3);
【化15】

(式中、*1、*2は前記に同じ)で表される2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸アミド体を得ることを特徴とする製造方法。
【請求項18】
前記式(3)で表される2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸アミドを、晶析精製することを特徴とする請求項17記載の製造方法。
【請求項19】
式(3)中に存在するジアステレオマー含量が、モル比で5.0モル%以下である請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
式(3)中に存在するジアステレオマー含量が、モル比で2.0モル%以下である請求項17又は19記載の製造方法。
【請求項21】
請求項17〜20いずれかに記載の方法にて製造した前記式(3);
【化16】

(式中、*1、*2は前記に同じ)で表される2−ヒドロキシシクロアルカンカルボン酸アミドを塩基存在下、ハロゲン化剤と反応させ、一般式(2);
【化17】

(式中、R’は炭素数1〜6の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜10の置換もしくは無置換のアリール基、炭素数7〜11の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。*1、*2は前記に同じ)で表される2−アミノシクロアルカノール誘導体、もしくは式(2)’;
【化18】

(式中、*1、*2は前記に同じ。)で表される2−アミノシクロアルカノールを得ることを特徴とする製造方法。
【請求項22】
*1、*2がともに(R)の立体配置である請求項17〜21いずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−46572(P2013−46572A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278626(P2009−278626)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】