説明

光学活性2,6−ジメチルフェニルアラニン誘導体の製造法

【課題】ミュー/デルタ−オピオイド受容体モジュレーター薬の中間体として用いられる光学活性2,6−ジメチルフェニルアラニン誘導体の効率的な製造方法を提供する。
【解決手段】3,5−ジメチルアニリンに対して、ハロゲン化およびシアノ化反応を行うことにより、3,5−ジメチル−4−ハロ−シアノベンゼンを得る工程を含む方法によって、光学活性2,6−ジメチルフェニルアラニン誘導体を製造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品、特にミュー/デルタ−オピオイド受容体モジュレーター薬の中間体として有用な光学活性2,6−ジメチルフェニルアラニン誘導体の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミュー/デルタ−オピオイド受容体モジュレーター薬の中間体として用いられる下記式(12):
【0003】
【化1】

【0004】
で表される光学活性2,6−ジメチルフェニルアラニン誘導体の製法としては以下のような方法が知られている。
i)フェノールの水酸基を無水トリフラートで保護した4−ブロモ−3,5−ジメチル
フェノールを、パラジウム触媒を用いて、シアノ化合物または一酸化炭素とクロスカップリングさせることにより4位にシアノ基またはカルボキシル基を導入した後にアミド基に変換して、3,5−ジメチル−4−ハロ−1−アミドベンゼンを製造する。得られたアリールハライドとデヒドロアミノ酸をロジウム触媒存在下、ヘック反応により、デヒドロアミノ酸を製造する。続いて、光学活性ホスフィン−ロジウム触媒存在下、不斉水素化することにより、光学活性2,6−ジメチルフェニルアラニン誘導体を取得する方法(特許文献1)。
ii)上記のi)の方法と同様に、フェノールの水酸基を無水トリフラートで保護した
4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノールを、パラジウム触媒を用いてシアノ化して4−ブロモ−3,5−ジメチルシアノベンゼンを製造する。これに、セリンから誘導したN−Boc−ヨードアラニンエステルと金属亜鉛から調製した有機亜鉛化合物を、パラジウム触媒存在下でカップリングさせることにより、光学活性2,6−ジメチルフェニルアラニン誘導体を取得する方法(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2006/099060
【特許文献2】WO2010/062590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記i)及びii)いずれの方法においても、光学活性2,6−ジメチルフェニルアラニン誘導体において4置換アリール基を構築するために、4−ブロモ−3,5−ジメチルフェノールを使用している。しかし、当該化合物の4位に炭素置換基を導入するためには、カップリング反応を行う前に、まず、フェノールの水酸基を無水トリフラートで保護し、その後、抽出などの後処理を行う必要があり、操作的に煩雑であるという課題があった。また、i)の方法では、不斉炭素を導入する工程で、高圧条件での水素化反応が必要であるという問題があった。また、ii)の方法では、ヨードアラニン誘導体の合成には長い工程が必要であるなどの問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、3,5−ジメチルアニリンを出発物質として用いる方法により、煩雑な操作を行うことなく、よりマイルドな条件で、効率的に目的化合物が得られることを見出し本発明の完成に至った。
【0008】
すなわち、本願発明は、
a)下記式(3):
【0009】
【化2】

【0010】
で表される化合物を位置選択的にハロゲン化して、下記式(1):
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、X1はハロゲンを表す)で表される化合物とする工程、および、
b)前記式(1)で表される化合物を亜硝酸化合物と反応させた後、更にシアン化合物と反応させて下記式(2):
【0013】
【化4】

【0014】
(式中、X1は前記に同じ)で表されるシアノベンゼン誘導体とする工程
を含む下記式(12):
【0015】
【化5】

【0016】
(R1はCNまたはCONH2を表す。P1はアミノ基の保護基を表す。R2は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基をあらわす,*は不斉炭素を表す)で表される化合物の製造方法に関する。
【0017】
また、本願発明は、下記式(9):
【0018】
【化6】

【0019】
(R1は前記に同じ,X3はハロゲンを表す)で表される化合物に関する。
【発明の効果】
【0020】
3,5−ジメチルアニリンから前記式(12)で表される光学活性2,6−ジメチルフェニルアラニン誘導体を製造する本願発明に係る方法よれば、煩雑な操作を行うことなく、よりマイルドな条件で、効率的に目的化合物を得ることができる。従って、本発明は、工業的に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願発明について詳述する。
【0022】
(1)工程(a)
まず、下記式(3):
【0023】
【化7】

【0024】
で表される化合物(以下、化合物(3)とする)をハロゲン化して、下記式(1):
【0025】
【化8】

【0026】
で表される化合物(以下、化合物(1)とする)を製造する工程について説明する。
【0027】
本工程では、前記式(3)で表される化合物をハロゲン化剤と反応させることで、前記式(1)で表される化合物を製造する。
【0028】
前記式(1)において、X1は、ハロゲン基を表す。X1として具体的には、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。好ましくは、クロロ基、ブロモ基、ヨード基であり、さらに好ましくは、ブロモ基である。
【0029】
本工程で使用するハロゲン化剤としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、塩化スルフリルなどが挙げられる。好ましくは、N―ブロモスクシンイミドである。
【0030】
ハロゲン化剤の量は、化合物(3)に対して、通常0.5〜10当量であり、好ましくは1.0〜5.0当量、より好ましくは1.0〜2.0当量である。
【0031】
本工程に使用する溶媒としては、例えば、水;トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール溶媒等を使用することが出来る。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。好ましくはアセトニトリルである。
【0032】
反応液中の基質濃度は、1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。
【0033】
反応温度としては、−40℃から160℃が好ましく、より好ましくは−20℃から100℃である。特に好ましくは0℃〜40℃である。
【0034】
また、反応時間としては、おおよそ0.5時間以上であり、好ましくは5時間以上である。
【0035】
反応終了後、一般的な後処理を行うことにより生成物を単離することができる。
【0036】
例えば、反応終了後、反応液のpHを必要に応じて調整し、酢酸エチル、ジエチルエーテル、塩化メチレン、トルエン、ヘキサン等の一般的な抽出溶媒を用いて抽出操作を行えばよい。なお、必要に応じて、反応液から析出した固体を濾過した後、抽出操作を行っても良い。得られた抽出液から、減圧加熱等の操作により反応溶媒および抽出溶媒を留去すると、化合物(1)が得られる。
【0037】
また、反応終了後、直ちに減圧加熱等の操作により反応溶媒を留去してから同様の操作を行ってもよいし、必要に応じて水を添加した後、反応溶媒を留去してもよい。
【0038】
上記のようにして得られた化合物(1)は、晶析工程やクロマトグラフィーに付し、精製を行っても良い。
【0039】
晶析方法としては、溶媒に溶解させ均一溶液とした後に、貧溶媒を添加する方法や、温度を低下させる方法、またはこれらの組み合わせによって行うことができる。また、化合物(1)に溶媒を添加し、不均一系で不純物を溶解させることによって精製を行っても良い。
【0040】
使用する溶媒としては、例えば、水;トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール溶媒等をが挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。好ましくは、トルエンとヘキサンの組み合わせであり、化合物(1)のトルエン溶液にヘキサンを添加していく方法が例示される。
【0041】
晶析液中の基質濃度は1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。
【0042】
晶析温度としては、−40℃から100℃が好ましく、より好ましくは−20℃から80℃である。晶析温度は、高温から冷却することが望ましい。
【0043】
上記晶析工程等精製工程に付すことにより、純度を向上させることが可能である。
【0044】
(2)工程(b)
次に、前記式(1)で表される化合物をシアノ化することにより、下記式(2):
【0045】
【化9】

【0046】
で表されるシアノベンゼン誘導体(以下、化合物(2))を製造する方法について説明する。
【0047】
本工程では、前記式(1)で表される化合物を亜硝酸誘導体と反応させ、ジアゾ化合物とした後にシアン化合物と反応させることで、前記式(2)で表される化合物を製造する。
【0048】
前記式(2)において、X1は前記に同じである。
【0049】
まず、亜硝酸誘導体との反応について説明する。
【0050】
本反応に使用する亜硝酸誘導体として、例えば、亜硝酸、亜硝酸塩、亜硝酸エステルが挙げられる。亜硝酸塩として具体的には、亜硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸ルビジウム、亜硝酸セシウム、硝酸ベリウム、亜硝酸マグネシウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ストロンチウム、亜硝酸バリウム、亜硝酸銀などが例示できる。亜硝酸エステルとして例えば、エステル部位に炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基を持つ亜硝酸エステルが挙げられる。亜硝酸エステルのエステル部位は具体的には、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−ペンテニル基、1−メチル−2−ペンテニル基、2−メチル−2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、4−メチル−2−ペンテニル基、2−シクロペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−エチル−1−エテニル基、1−ペンテニル基、1−プロピル−1−エテニル基、1−エチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ブチル−1−エテニル基、1−プロピル−1−プロペニル基、1−エチル−1−ブテニル基、1−シクロヘキセニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−アントラセニルメチル基、2−アントラセニルメチル基、5−アントラセニルメチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、5−アントラセニル基などが例示できる。亜硝酸誘導体として好ましくは、亜硝酸、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸iso−ペンチルである。
【0051】
亜硝酸誘導体の量は、化合物(1)に対して、通常0.5〜5当量であり、好ましくは0.9〜3当量、より好ましくは1.0〜1.5当量である。
【0052】
本反応に使用する溶媒としては、水;トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール溶媒等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。好ましくは水である。
【0053】
反応液中の基質濃度は1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。
【0054】
反応温度としては、−40℃から100℃が好ましく、より好ましくは−20℃から50℃である。特に好ましくは−10℃〜20℃である。シアン化物との反応時は、−40℃から160℃が好ましく、より好ましくは0℃から100℃である。特に好ましくは30℃〜100℃である。
【0055】
本反応においては、酸を共存させても良いし、させなくても良い。特に亜硝酸塩を用いるときは、反応促進の観点から酸を使用することが好ましい。
【0056】
使用する酸は、無機酸でも有機酸でもよく、例えば無機酸としては、フッ素酸、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ルイス酸などが挙げられる。有機酸としては、スルホン酸、カルボン酸などが挙げられる。具体的には、スルホン酸としてメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、n−ペンタンスルホン酸、n−ヘキサンスルホン酸、イソプロパンスルホン酸、シクロブタンスルホン酸、シクロペンタンスルホン酸、シクロプロパンスルホン酸、tert−ブタンスルホン酸、アダマンチルスルホン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−フルオロベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、カルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。酸として、好ましくは、塩酸、硫酸である。
【0057】
酸の量は、特に制限はないが、化合物(1)に対して、通常0.5〜20当量であり、好ましくは1.0〜10当量、より好ましくは2.0〜5.0当量である。
【0058】
次に、シアン化合物との反応について説明する。
【0059】
シアン化合物との反応は、前述の亜硝酸誘導体との反応に引き続いて行われる。
【0060】
シアン化合物として、例えば、シアン化水素、シアン化塩が挙げられる。シアン化塩として具体的には、シアン化リチウム、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム、シアン化銅が例示される。本工程で、シアン化合物は単独で用いても良いし、2種類以上を合わせて用いても良い。好ましくは、シアン化銅と、シアン化ナトリウムまたはシアン化カリウムとを組み合わせて使用する。
【0061】
使用するシアン化合物の量は、化合物(1)に対して、通常0.5〜10当量であり、好ましくは0.9〜5.0当量、より好ましくは1.0〜3.0当量である。
【0062】
シアン化物との反応時には、塩基を使用してもしなくても良いが、塩基を使用することが安全面からも好ましい。
【0063】
使用する塩基として特に制限はなく、無機塩基でも有機塩基でも良い。無機塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩などが挙げられる。有機塩基としては、例えばトリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなどのアミン塩基類が挙げられる。使用する塩基として好ましくは、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウムである。
【0064】
使用する塩基の量は、特に制限はないが、化合物(1)に対して、通常0.5〜20当量であり、好ましくは1.0〜10当量、より好ましくは2.0〜5.0当量である。
【0065】
反応温度としては、−40℃から160℃が好ましく、より好ましくは0℃から100℃である。特に好ましくは30℃〜100℃である。
【0066】
また、反応時間としては、おおよそ0.5時間以上であり、好ましくは5時間以上である。
【0067】
反応終了後は、一般的な後処理を行うことにより化合物(2)を単離することができる。後処理の方法としては、工程(a)で記載した方法等が挙げられる。
【0068】
本工程にかかる方法によれば、これまで煩雑な工程を要していた4位への炭素置換基の導入が1工程で、簡便に行うことが可能である。また、本工程を工程(a)と組み合わせることにより、炭素2置換ベンゼン誘導体から、短工程で効率的に、しかも完全な位置選択性で通常製造が難しい炭素四置換ベンゼン誘導体を製造することができる。
【0069】
上記のようにして得られた化合物(2)は、晶析工程や、クロマトグラフィー等に付し、精製を行うのが好ましい。
【0070】
晶析方法およびその条件は、前記工程(a)と同様である。使用する溶媒としては、好ましくは、酢酸エチルとヘキサンの組み合わせである。
【0071】
上記晶析工程等精製工程に付すことにより、純度を向上させることが可能である。純度は、80wt%以上にするのが好ましい。
【0072】
(3)工程(c)
前記化合物(2)のシアノ基を加水分解することにより、下記式(4):
【0073】
【化10】

【0074】
で表される化合物(以下、化合物(4))を製造することができる。
【0075】
前記式(4)において、X1は前記に同じである。
【0076】
本工程では、化合物(2)のシアノ基を加水分解することで化合物(4)とする。なお、シアノ基を一旦カルボキシル基に変換した後にアミド基へ変換しても良い。カルボキシル基を経る条件としては、例えばRichard C. Larock著 Comprehensive Organic Transformations (第2版、WILEY VCH社出版)1986〜1987頁に記載の条件が挙げられる。具体的には硫酸を用いた条件などが例示される。
【0077】
本工程では酸または塩基を共存させることで加水分解を行う。
【0078】
使用する酸としては、特に制限はなく、無機酸でも有機酸でもよい。例えば無機酸としては、フッ素酸、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、硫酸、硝酸、リン酸、過酸化水素酸、ルイス酸などが挙げられる。有機酸としては例えば、スルホン酸、カルボン酸などが挙げられる。具体的には、スルホン酸としてメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、n−プロパンスルホン酸、n−ブタンスルホン酸、n−ペンタンスルホン酸、n−ヘキサンスルホン酸、イソプロパンスルホン酸、シクロブタンスルホン酸、シクロペンタンスルホン酸、シクロプロパンスルホン酸、tert−ブタンスルホン酸、アダマンチルスルホン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、p−フルオロベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリメチルベンゼンスルホン酸、カルボン酸として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、トリフルオロ酢酸などが挙げられる。好ましくは、無機酸であり、特に好ましくは、塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、硫酸、過酸化水素酸である。
【0079】
塩基としては、特に制限はなく、無機塩基でも有機塩基でも良い。無機塩基としては、例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩などが挙げられる。有機塩基としては、例えばトリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンなどのアミン塩基類が挙げられる。これらの酸及び塩基は単独で用いても良いし2種類以上を併用して用いても良いし、2種類以上を順番に用いても良い。
【0080】
塩基として好ましくは無機塩基であり、さらに好ましくは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ土類金属水酸化物、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸塩である。
【0081】
使用する酸または塩基の使用量は、特に制限はないが、化合物(2)に対して、通常0.1〜20当量であり、好ましくは0.5〜10当量、より好ましくは1.0〜5.0当量である。
【0082】
本工程で使用する溶媒に特に制限はなく、例えば水;トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール溶媒等を使用することが出来る。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。なお、本反応においては、通常、少なくとも溶媒の一種類に水を使用するが、水を使用せずともアミド化が進行する場合は、本発明に含まれるものとする。
【0083】
反応液中の基質濃度は1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。
【0084】
反応温度としては、−40℃から160℃が好ましく、より好ましくは−20℃から100℃である。特に好ましくは20℃〜80℃である。
【0085】
反応時間としては、おおよそ0.5時間以上であり、好ましくは5時間以上である。
【0086】
反応終了後、一般的な後処理を行うことにより生成物を単離することができる。後処理の方法としては、前述の工程(a)における方法等を用いることができる。
【0087】
(4)工程(d)
上記のようにして得られた化合物(2)および(4)は、特許文献2に記載の方法等を用いることにより、下記式(12):
【0088】
【化11】

【0089】
で表される化合物(以下、化合物(12))とすることができる。
【0090】
上記式(12)中、R1はCNまたはCONH2を表す。
【0091】
2は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基をあらわす。例えば、水素原子、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−ペンテニル基、1−メチル−2−ペンテニル基、2−メチル−2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、4−メチル−2−ペンテニル基、2−シクロペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−エチル−1−エテニル基、1−ペンテニル基、1−プロピル−1−エテニル基、1−エチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ブチル−1−エテニル基、1−プロピル−1−プロペニル基、1−エチル−1−ブテニル基、1−シクロヘキセニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−アントラセニルメチル基、2−アントラセニルメチル基、5−アントラセニルメチル基、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、5−アントラセニル基などが例示できる。
【0092】
1はNの保護基を表す。P1はアミノ基の保護基であれば特に限定されず、例えばTheodora W.Greene, Peter G.M.Wuts著 Protectve Groups in Organic Chemistry(第3版、JOHN WILEY & SONS,INC社出版)494〜653頁に記載の保護基が挙げられる。好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のカルバメート型保護基;ホルミル基、アセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、ベンゾイル基、p−ニトロベンゾイル基等のアシル型保護基;ベンジル基であり、更に好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基等のカルバメート型保護基であり、特に好ましくはtert−ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基である。
【0093】
特許文献2に記載の方法により、化合物(12)を得る方法について、以下に詳述する。
【0094】
本方法においては、化合物(2)または(4)と、下記式(15):
【0095】
【化12】

【0096】
で表される化合物とを、金属触媒存在下で反応させることにより、化合物(12)を製造する。
【0097】
式(15)中、P1およびR2は前記に同じである。
【0098】
2は金属元素を表す。例えば、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛などが挙げられる。好ましくはマグネシウム、亜鉛である。さらに好ましくは亜鉛である。
【0099】
5はハロゲンを表し、好ましくは、塩素、臭素、ヨウ素であり、さらに好ましくは、臭素、ヨウ素であり、特に好ましくはヨウ素である。
【0100】
本反応に用いる金属触媒としては、第VIII族遷移金属触媒が挙げられる。これら第VIII族に属する金属のうち好ましいのは、ニッケル,パラジウム,白金であり、さらに好ましくはパラジウムである。
【0101】
パラジウムの形態としてはパラジウム化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばヘキサクロロパラジウム(IV)酸ナトリウム4水和物、ヘキサクロロパラジウム(IV)酸カリウム等の4価のパラジウム化合物、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、ヨウ化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトネート(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)などの2価のパラジウム化合物、ビス(ジベンジリデン)パラジウム、トリス(ジベンジリデン)2パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデン)2パラジウムクロロホルム錯体などの0価パラジウム化合物を挙げることができる。
【0102】
ニッケルの形態としてはニッケル化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ヨウ化ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、ニッケルアセチルアセトネート(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)ニッケル(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)ニッケル(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)などの2価のニッケル化合物、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル錯体などの0価ニッケル化合物を挙げることができる。
【0103】
白金の形態としては白金化合物であれば特に限定されるものではなく、例えばヘキサクロロ白金(IV)酸ナトリウム4水和物、ヘキサクロロ白金(IV)酸カリウム等の4価の白金化合物、塩化白金(II)、臭化白金(II)、ヨウ化白金(II)、酢酸白金(II)、白金アセチルアセトネート(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)白金(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)白金(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)などの2価白金化合物、ビス(ジベンジリデン)白金、ビス(1,5−シクロオクタジエン)白金錯体などの0価白金化合物を挙げることができる。
【0104】
金属触媒の使用量は、特に制限されないが、化合物(3)1モルに対して通常0.00001〜0.1モル、好ましくは0.0001〜0.05モルである。
【0105】
本工程においては、配位子として3級リン化合物を用いた場合、一般的に、高収率で目的化合物が得られる傾向にある。
【0106】
3級リン化合物としては、特に限定されないが、例えばトリフェニルホスフィン、トリオルトトリルホスフィン、ジフェニルホスフィノフェロセン、トリn−ブチルホスフィン、トリイソブチルホスフィン、トリ−sec−ブチルホスフィン、トリtert−ブチルホスフィン、1、1’−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)フェロセン、1,3−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)プロパン、1,4−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)ブタン、1,5−ビス(ジ−t−ブチルホスフィノ)ペンタンなどを挙げることができる。また、このような3級リン化合物は既に金属触媒に配位した形態、すなわち金属錯体であってもよい。
【0107】
3級リン化合物の使用量は、金属触媒の金属1原子に対し、通常0.01〜20モル、好ましくは0.5〜10.0モルである。
【0108】
反応に使用される溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒:塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒;ヘキサメチルホスホラミド,ヘキサメチルホスフォラストリアミドなどのリン酸アミド系溶媒が挙げられる。これらの中で好ましいのは、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、アミド系溶媒である。なお、これらは単独で用いても2種類以上を併用してもよい。
【0109】
本反応は、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で実施することが好ましい。この際、常圧であっても加圧下であってもよい。
【0110】
これら、各化合物の添加順序は特に限定されず、各化合物を任意の順序で反応器に添加してよい。また、第3級リン化合物を使用する場合、金属触媒と第3級リン化合物をあらかじめ混合し、その後その他の化合物を任意の順序で添加してもよい。
【0111】
反応温度は、使用する塩基や溶媒の種類により異なるが、通常20〜250℃であり、好ましくは20〜180℃である。
【0112】
反応時間は、反応温度、使用される金属触媒の使用量によっても異なるが、通常30分〜48時間、好ましくは1〜24時間である。
【0113】
反応終了後、一般的な後処理を行うことにより生成物を単離することができる。後処理の方法としては、工程(a)に記載の方法等を用いることができる。
【0114】
(5)工程(e)
化合物(2)および化合物(4)は、下記式(6):
【0115】
【化13】

【0116】
で表される有機金属化合物と反応させて、下記式(7):
【0117】
【化14】

【0118】
で表される化合物(以下、化合物(7))とした後、当該化合物を炭素求電子剤と反応させ、必要に応じて還元することにより、下記式(8):
【0119】
【化15】

【0120】
で表される化合物(以下、化合物(8))とすることもできる。
【0121】
まず、化合物(2)または化合物(4)と、化合物(6)とを反応させて、化合物(7)とする反応について説明する。
【0122】
前記式(6)において、R3は炭素数1〜20のアルキル基を表す。例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−ペンテニル基、1−メチル−2−ペンテニル基、2−メチル−2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、4−メチル−2−ペンテニル基、2−シクロペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−エチル−1−エテニル基、1−ペンテニル基、1−プロピル−1−エテニル基、1−エチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ブチル−1−エテニル基、1−プロピル−1−プロペニル基、1−エチル−1−ブテニル基、1−シクロヘキセニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−アントラセニルメチル基、2−アントラセニルメチル基、5−アントラセニルメチル基などが例示できる。入手性の観点より、好ましくは、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基であり、より好ましくは、イソプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基である。
【0123】
前記式(6)および(7)において、M1はMgCl,MgBr,MgI,Liを表す。
【0124】
上記式(7)のR1は、CN基またはCONH2基を表す。
【0125】
化合物(6)の使用量は、化合物(2)または(4)で表される化合物に対して、通常0.5〜5.0当量であり、好ましくは0.9〜3.0当量、より好ましくは1.0〜2.0当量である。
【0126】
使用する溶媒としては、例えばトルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒等の非プロトン性溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。好ましくはエーテル系溶媒であり、さらに好ましくはTHFである。
【0127】
反応液中の基質濃度は1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。
【0128】
反応温度としては、−100℃から160℃が好ましく、より好ましくは−70℃から60℃である。特に好ましくは−20℃〜40℃である。
【0129】
反応時間としては、おおよそ0.5時間以上であり、好ましくは2時間以上である。本反応により得られた化合物(7)は、特に後処理をすることなく、続けて次の反応に用いることが出来る。
【0130】
次に化合物(7)を炭素求電子剤と反応させ、必要に応じて還元剤と反応させることにより、化合物(8)とする反応について説明する。
【0131】
上記式(8)において、R1は前記に同じである。
【0132】
使用する炭素求電子剤としては、例えばホルムアミド化合物やオルトギ酸エチル、パラホルムアルデヒド、ホルムアルデヒドが挙げられる。パラホルムアルデヒドやホルムアルデヒドを用いた場合は、還元を行うことなく化合物(8)を製造することができる。ホルムアミド化合物として具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N−ホルミルピペリジン、N−メチル−N−メトキシホルムアミドが例示される。好ましくはN,N−ジメチルホルムアミドである。
【0133】
本反応において、炭素求電子剤の使用量は、化合物(7)に対して、通常0.5〜5.0当量であり、好ましくは1.0〜3.0当量、より好ましくは1.5〜3.0当量である。
【0134】
使用する溶媒としては、例えばトルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒等の非プロトン性溶媒が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。好ましくはエーテル系溶媒であり、さらに好ましくはTHFである。
【0135】
反応液中の基質濃度は1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。
【0136】
反応温度としては、−100℃から160℃が好ましく、より好ましくは−70℃から60℃である。特に好ましくは−20℃〜40℃である。
【0137】
反応時間としては、おおよそ0.5時間以上であり、好ましくは2時間以上である。
【0138】
反応終了後、一般的な後処理を行うことにより生成物を単離することができる。後処理の方法としては、工程(a)で記載した方法等が挙げられる。
【0139】
なお、炭素求電子剤としてパラホルムアルデヒドやホルムアルデヒドを用いた場合には還元反応は不要であるが、ホルムアミド化合物やオルトギ酸エチルを用いた場合は、化合物(8)を製造するためには、還元反応を行う必要がある。
【0140】
還元反応で使用する還元剤としては特に制限はないが、具体的に例えば、ジボラン、ボラン・ジエチルエーテル、ボラン・ジメチルスルフィド、ボラン・ピリジン、ボラン・ピコリン等の水素化ホウ素化合物;水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化トリエチルホウ素リチウム、水素化トリエチルホウ素ナトリウム、水素化トリエチルホウ素カリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素金属化合物;水素化アルミニウムリチウム、水素化アルミニウムナトリウム、水素化ジイソブチルアルミニウム等の水素化アルミニウム金属化合物等が挙げられる。これらのうち、好ましくは、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化アルミニウムリチウム、又は水素化アルミニウムナトリウムであり、更に好ましくは、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、又は水素化アルミニウムリチウムであり、特に好ましくは水素化ホウ素ナトリウム、又は水素化アルミニウムリチウムである。
【0141】
還元剤の量は、通常、化合物(7)に対して、0.25当量〜10当量であり、好ましくは0.25当量〜5当量であり、さらに好ましくは0.25当量〜2当量である。
【0142】
用いる溶媒は、例えばトルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール溶媒等を使用することが出来る。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。好ましくは、メタノール、エタノールである。
【0143】
反応液中の基質濃度は1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。
【0144】
反応温度としては、−40℃から100℃が好ましく、より好ましくは−20℃から80℃である。特に好ましくは0〜40℃である。
【0145】
また、反応時間としては、おおよそ0.5時間以上であり、好ましくは5時間以上である。
【0146】
反応終了後、一般的な後処理を行うことにより生成物を単離することができる。後処理の方法としては、工程(a)で記載した方法等が挙げられる。
【0147】
上記のようにして得られた化合物(8)は、前記工程(a)と同様、晶析工程や、クロマトグラフィー等に付し、精製を行ってもよい。
【0148】
晶析方法およびその条件は、前記工程(a)と同様である。晶析工程に用いる溶媒としては、ジクロロメタンおよびヘキサンの組み合わせが好ましい。具体的な晶析方法としては、化合物(8)のジクロロメタン溶液にヘキサンを添加していく方法などが例示される。
【0149】
(6)工程(f)
上記のようにして得られた化合物(8)は、化合物(8)のヒドロキシル基を、ハロゲン化剤を用いてハロゲン化することにより、下記式(9):
【0150】
【化16】

【0151】
で表される化合物(以下、化合物(9))とすることができる。
【0152】
前記式(9)において、R1は前記に同じであり、X3はハロゲンを表す。
【0153】
3としては、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。好ましくは、クロロ基、ブロモ基、ヨード基であり、さらに好ましくは、ブロモ基、ヨード基である。
【0154】
ハロゲン化剤として例えば、ハロゲン化水素、ハロゲン化リン、ホスホン酸トリフェニルホスフィンおよびハロゲン化アルキル、スルホニルハロゲニド、ハロゲン化チオニル、並びに、酸ハロゲン化物などを用いることができる。具体的には、例えば、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、三フッ化リン、三塩化リン、三臭化リン、三ヨウ化リン、塩化チオニル、臭化チオニル、ヨウ化チオニル等が挙げられる。ホスホン酸トリフェニルホスフィンを用いる際に併用されるハロゲン化アルキルとしては、四塩化炭素が代表例として挙げられる。
【0155】
ハロゲン化剤としては、好ましくは、塩化チオニル、臭化チオニル、三臭化リンである。
【0156】
ハロゲン化剤の使用量は、化合物(8)に対して、通常0.5〜5.0当量であり、好ましくは1.0〜3.0当量である。
【0157】
本工程に使用する溶媒に特に制限はなく、例えば水、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素系溶媒等を使用することが出来る。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。好ましくはジクロロメタン、テトラヒドロフランである。
【0158】
反応液中の基質濃度は1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。反応温度としては、−40℃から160℃が好ましく、より好ましくは−20℃から100℃である。特に好ましくは0℃〜80℃である。
【0159】
反応時間としては、おおよそ0.5時間以上であり、好ましくは5時間以上である。
【0160】
反応終了後、一般的な後処理を行うことにより生成物を単離することができる。後処理の方法は、前述のとおりである。
【0161】
化合物(8)および(9)において、R1がシアノ基である場合は、当該化合物を加水分解することにより、シアノ基をアミド基に変換することが可能である。加水分解は、工程(c)で記載した方法と同様の方法で行うことができる。
【0162】
上記のようにして得られた化合物(9)は、前記工程(a)と同様、晶析工程や、クロマトグラフィー等に付し、精製を行ってもよい。
【0163】
晶析方法およびその条件は、前記工程(a)と同様である。晶析工程に用いる溶媒としては、ジクロロメタンとヘキサンの組み合わせが好ましい。具体な晶析方法としては、化合物(9)のジクロロメタン溶液にヘキサンを添加していく方法などが例示される。
【0164】
(7)工程(g)
化合物(3)は、ハロメチル化により、下記式(16):
【0165】
【化17】

【0166】
で表される化合物(以下、化合物(16)とする)とすることができる。
【0167】
本工程では、化合物(3)を、ハロゲン化水素存在下、ホルムアルデヒド等価体と反応させることで、化合物(16)を製造する。
【0168】
前記式(16)において、X6はハロゲン基を表す。X6として具体的には、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられる。好ましくは、クロロ基、ブロモ基、ヨード基である。
【0169】
本工程で使用するハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が挙げられる。好ましくは、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素である。
【0170】
ハロゲン化水素の量は、化合物(3)に対して過剰量用いられ、通常1.0〜100当量であるが、これに限定されるものではない。
【0171】
本工程で使用するホルムアルデヒド等価体としては、具体的には、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,3,5−トリオキサンが例示される。
【0172】
本工程に使用する溶媒としては、例えば、水;トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール溶媒等を使用することが出来る。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。好ましくは水である。
【0173】
反応液中の基質濃度は、1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。
【0174】
反応温度としては、−40℃から160℃が好ましく、より好ましくは−20℃から100℃である。特に好ましくは0℃〜80℃である。
【0175】
また、反応時間としては、おおよそ0.5時間以上であり、好ましくは5時間以上である。
【0176】
反応終了後、一般的な後処理を行うことにより生成物を単離することができる。後処理の方法としては、例えば、工程(a)に記載の方法等が挙げられる。
【0177】
(8)工程(h)
上記のようにして得られた化合物(16)は、亜硝酸化合物と反応させた後、更にシアン化合物と反応させることにより、下記式(17):
【0178】
【化18】

【0179】
で表される化合物とすることができる。
【0180】
前記式(17)において、X6は前記に同じである。
【0181】
本工程は工程(b)と同様に行えばよい。
【0182】
上記のようにして得られた化合物(17)は、前記工程(c)と同様にして、加水分解を行ってもよい。
【0183】
(9)工程(i)
上記のようにして得られた化合物(9)および化合物(17)(その加水分解物も含む)は、光学活性な相間移動触媒及び塩基存在下、下記式(13):
【0184】
【化19】

【0185】
で表される化合物(以下、化合物(13))と反応させて、下記式(14):
【0186】
【化20】

【0187】
で表される化合物(以下、化合物(14))とした後、化合物(14)を適宜加水分解、N保護を行うことにより、化合物(12)へと誘導することができる。
【0188】
式(14)中、R1は前記に同じである。
【0189】
式(13)および(14)中、R4、R5は、互いに同一でも異なっていても良く、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基をあらわす。具体的には、水素原子、フェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−フェニルフェニル基、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、ベンジル基、メチルシクロプロピル基などが例示できる。好ましくは、フェニル基、水素原子である。
【0190】
6は炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基をあらわす。具体的には、フェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、4−ブロモフェニル基、3−ブロモフェニル基、2−ブロモフェニル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、3−トリフルオロメチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、3−エチルフェニル基、2−エチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−フェニルフェニル基、メチル基、エチル基、1−プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロブチル基、ペンチル基、2−ペンチル基、3−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル基、3−ヘキシル基、シクロヘキシル基、アリル基、2−メチル−2−プロペニル基、2−ブテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、2−ペンテニル基、1−メチル−2−ペンテニル基、2−メチル−2−ペンテニル基、3−メチル−2−ペンテニル基、4−メチル−2−ペンテニル基、2−シクロペンテニル基、2−ヘキセニル基、2−シクロヘキセニル基、エテニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−エチル−1−エテニル基、1−ペンテニル基、1−プロピル−1−エテニル基、1−エチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−ヘキセニル基、1−ブチル−1−エテニル基、1−プロピル−1−プロペニル基、1−エチル−1−ブテニル基、1−シクロヘキセニル基、ベンジル基、ジフェニルメチル基、トリチル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−アントラセニルメチル基、2−アントラセニルメチル基、5−アントラセニルメチル基などが挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、ブチル基、tert−ブチル基である。
【0191】
本反応に使用する光学活性な相間移動触媒としては特に制限はないが、例えば、四級アンモニウム塩や四級ホスホニウム塩が挙げられる。
【0192】
四級アンモニウム塩としては、例えば、β−ナフチル置換型光学活性相間移動触媒(丸岡触媒)やシンコナアルカロイド由来の四級アンモニウム塩が挙げられる。具体的には、CAS NO.887938−70−7や851942−69−7で示される化合物、N−ベンジルシンコニニウムクロリド、N−ベンジルシンコニニウムブロミド、N−ベンジルシンコニニウムヨージド、N−アントラセニルメチルシンコニニウムクロリド、N−アントラセニルメチルシンコニニウムブロミド、N−アントラセニルメチルシンコニニウムヨージド、N−(1−ナフチルメチル)シンコニニウムクロリド、N−(1−ナフチルメチル)シンコニニウムブロミド、N−(1−ナフチルメチル)シンコニニウムヨージド、N−(2−ナフチルメチル)シンコニニウムクロリド、N−(2−ナフチルメチル)シンコニニウムブロミド、N−(2−ナフチルメチル)シンコニニウムヨージド、N−ベンジルシンコニジウムクロリド、N−ベンジルシンコニジウムブロミド、N−ベンジルシンコニジウムヨージド、N−アントラセニルメチルシンコニジウムクロリド、N−アントラセニルメチルシンコニジウムブロミド、N−アントラセニルメチルシンコニジウムヨージド、N−(1−ナフチルメチル)シンコニジウムクロリド、N−(1−ナフチルメチル)シンコニジウムブロミド、N−(1−ナフチルメチル)シンコニジウムヨージド、N−(2−ナフチルメチル)シンコニジウムクロリド、N−(2−ナフチルメチル)シンコニジウムブロミド、N−(2−ナフチルメチル)シンコニジウムヨージド、N−ベンジルキニニウムクロリド、N−ベンジルキニニウムブロミド、N−ベンジルキニニウムヨージド、N−アントラセニルメチルキニニウムクロリド、N−アントラセニルメチルキニニウムブロミド、N−アントラセニルメチルキニニウムヨージド、N−(1−ナフチルメチル)キニニウムクロリド、N−(1−ナフチルメチル)キニニウムブロミド、N−(1−ナフチルメチル)キニニウムヨージド、N−(2−ナフチルメチル)キニニウムクロリド、N−(2−ナフチルメチル)キニニウムブロミド、N−(2−ナフチルメチル)キニニウムヨージド、N−ベンジルキニジウムクロリド、N−ベンジルキニジウムブロミド、N−ベンジルキニジウムヨージド、N−アントラセニルメチルキニジウムクロリド、N−アントラセニルメチルキニジウムブロミド、N−アントラセニルメチルキニジウムヨージド、N−(1−ナフチルメチル)キニジウムクロリド、N−(1−ナフチルメチル)キニジウムブロミド、N−(1−ナフチルメチル)キニジウムヨージド、N−(2−ナフチルメチル)キニジウムクロリド、N−(2−ナフチルメチル)キニジウムブロミド、N−(2−ナフチルメチル)キニジウムヨージドなどが例示される。好ましくは、CAS NO.887938−70−7や851942−69−7で示される化合物、N−(1−ナフチルメチル)シンコニニウムブロミド、N−(1−ナフチルメチル)シンコニジウムブロミド、N−(1−ナフチルメチル)キニニウムブロミド、N−(1−ナフチルメチル)キニジウムブロミドである。
【0193】
光学活性相間移動触媒の使用量は特に制限はないが、化合物(9)に対して、通常0.001〜1.0当量であり、好ましくは0.005〜0.10当量、より好ましくは0.005〜0.2当量である。
【0194】
本反応で使用する塩基としては特に制限はなく、無機塩基、有機塩基のいずれを用いてもよい。
【0195】
無機塩基としては例えば、炭酸セシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩、酢酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸リチウムなどの酢酸塩、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウムなどの炭酸水素塩、硫酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸リチウムなどの硫酸塩、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素リチウムなどの硫酸水素塩、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウムなどのリン酸塩、tert−ブトキシカリウム、tert−ブトキシナトリウム、tert−ブトキシリチウムなどのtert−ブトキシ塩、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム塩などが挙げられる。
【0196】
有機塩基としては、例えば、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、トリシクロヘキシルアミン、ピリジンを挙げることができる。好ましい塩基は無機塩基であり、さらに好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムである。
【0197】
塩基の使用量に特に制限はないが、化合物(9)に対して、通常0.5〜5.0当量であり、好ましくは1.0〜3.0当量、より好ましくは1.0〜2.0当量である。
【0198】
本工程に使用する溶媒に特に制限はなく、例えば水、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルt−ブチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;アセトニトリル、アセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等の含窒素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノール等のアルコール溶媒等を使用することが出来る。これらは単独で用いても良く、2種類以上を併用してもよい。好ましくはトルエンと水の混合溶媒、トルエン単独溶媒である。
【0199】
反応液中の基質濃度は1〜50%(W/V)が好ましく、より好ましくは、5〜20%(W/V)である。反応温度としては、−40℃から160℃が好ましく、より好ましくは−20℃から60℃である。特に好ましくは−20℃〜40℃である。また、反応時間としては、おおよそ0.5時間以上であり、好ましくは5時間以上である。
【0200】
反応終了後、一般的な後処理を行うことにより生成物を単離することができる。後処理の方法としては、工程(a)に記載の方法等が挙げられる。
【0201】
上記のようにして得られた化合物(14)は、適宜、加水分解、更にN保護を行うことにより、化合物(12)とすることができる。具体的には、例えば、R4が水素原子、R5がフェニル、R6がエチル、R1がシアノの場合には、塩酸を用いて窒素原子上の保護基を除去した後、二炭酸ジt−ブチルを用いて窒素原子を保護する方法が挙げられる。
【0202】
上記のようにして得られた化合物(12)は、前記工程(a)と同様、晶析工程や、クロマトグラフィー等に付し、精製を行ってもよい。

以上のような方法により、目的とする化合物(12)が得られる。なお、化合物(3)から化合物(12)およびその誘導体を得る限りにおいては、本願発明に含まれるものであって、必ずしも上記方法に従って化合物(12)を得る必要はない。
【実施例】
【0203】
以下に例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0204】
実施例1)4−ブロモ−3,5−ジメチルベンゾニトリルの製造
28gの水に濃塩酸8.9gを添加した後、4−ブロモ−3,5−ジメチルアニリン5gを加え、氷冷下にて反応液が均一なスラリー状になるまで攪拌を行った。そのスラリー溶液に対して、亜硝酸ナトリウム1.9g、水5.5gを加え氷冷下にて3時間攪拌した。その後、得られた水溶液を、別途調整したシアン化ナトリウム3.1g、シアン化銅2.7g、および炭酸水素ナトリウム5.8gの水溶液(水28g使用)に対して内温70度で添加し、19.5時間攪拌を行った。得られた反応液に、トルエン83gを添加して、10分攪拌した後、セライトを用いてろ過を行った。その後、トルエン40gを添加して濾液の抽出を行い、得られた有機層に水を添加して水洗を行った。得られた有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過によって硫酸マグネシウムを濾別した後、溶媒濃縮を行った。その後、シリカゲルカラムを用いて精製し表題化合物を収率90%で取得した。
1H NMR(CDCl3):δ7.35(s、2H)、2.45(s、1H)
【0205】
実施例2)4−ブロモ−3,5−ジメチルベンゾニトリルの製造
3.3gの水に濃硫酸1gを添加した後、4−ブロモ−3,5−ジメチルアニリンを1g加え、氷冷下にて反応液が均一なスラリー液になるまで攪拌を行った。そのスラリー溶液に対して、亜硝酸ナトリウム0.38gと水0.83g加え2.5時間攪拌した。その後、反応溶液に1.8gのトルエンを加え、15分攪拌した後、有機層を分液により除いた。得られた水溶液を、別途調整したシアン化ナトリウム0.39g、シアン化銅1.5g、炭酸水素ナトリウム1.2gの水溶液(水4.6g使用)に対して内温80度で添加し、20時間攪拌を行った。得られた反応液にトルエン17gを添加して、10分攪拌した後、セライトを用いてろ過を行った。その後、トルエン17gを添加して濾液の抽出を行い、得られた有機層に水を添加して水洗を行った。水洗後の有機層は硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過によって硫酸マグネシウムを濾別した後、溶媒濃縮を行った。その後、シリカゲルカラムを用いて精製し表題化合物を収率79%で取得した。
【0206】
実施例3)3,5−ジメチル−4−ホルミルベンゾニトリルの製造
4−ブロモ−3,5−ジメチルベンゾニトリル3.7gをTHF60gに溶解し、−78度まで冷却した後、n−BuLiのTHF溶液(12.2mL)を滴下した。その後、−78度にて1時間攪拌を行い、続いてジメチルホルムアミド1.4gをTHF7.8gに溶解した溶液を滴下し−78度に保持した状態で2時間攪拌した。反応液を室温まで昇温し、水100gとトルエン86gを添加し、抽出を行った。得られた有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥し、硫酸マグネシウムを濾別した溶液を減圧濃縮することで表題化合物を取得した。
1H NMR(CDCl3):δ10.6(s、1H)、7.40(s、2H)、2.62(s、6H)
【0207】
実施例4)3,5−ジメチル−4−ヒドロキシメチルベンゾニトリルの製造
氷冷下、3,5−ジメチル−4−ホルミルベンゾニトリル2.9gをエタノール30gに溶解し、水素化ホウ素ナトリウム1.1gを分割添加した後、室温で1時間攪拌した。その後、エタノールを減圧留去し、飽和塩化アンモニウム水溶液15g、水15gおよび酢酸エチル30gを添加して抽出を行った。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、硫酸ナトリウムを濾別し、得られた溶液を減圧濃縮することで表題化合物を収率97%で取得した。
1H NMR(CDCl3):δ7.33(s、2H)、4.76(s、2H)、2.46(s、6H)
【0208】
実施例5)3,5−ジメチル−4−ブロモメチルベンゾニトリルの製造
氷冷下、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシメチルベンゾニトリル2.9gをジクロロメタン29gに溶解し、三臭化リン5.8gを滴下し6時間室温で攪拌した。得られた反応液に、氷冷下でチオ硫酸ナトリウム水溶液を10mL添加し、続けて水20gとジクロロメタン5gを加えて抽出を行った。得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、硫酸ナトリウムを濾別し、得られた溶液を濃縮することで表題化合物を収率77%で取得した。
1H NMR(CDCl3):δ7.32(s、2H)、4.50(s、2H)、2.44(s、6H)
【0209】
実施例6)3,5−ジメチル−4−ヨードメチルベンゾニトリルの製造
3,5−ジメチル−4−ブロモメチルベンゾニトリル550mgをアセトン5.5gに溶解した後、ヨウ化ナトリウム736mgを添加し17.5時間攪拌した。得られた反応液に、酢酸エチル5gと水5gを添加して抽出を行い、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。その後、硫酸ナトリウムを濾別し、得られた溶液を減圧濃縮して表題化合物を収率98%で取得した。
1H NMR(CDCl3):δ7.29(s、2H)、4.39(s、2H)、2.36(s、6H)
【0210】
実施例7)エチル−3−(4−シアノ−2,6−ジメチルフェニル)−2−[(フェニルメチリデン)アミノ]プロパネートの製造
N−ベンジリデン−グリシンエチルエステル94mgをトルエン3.5gに溶解し、得られた溶液に3,5−ジメチル−4−ブロモメチルベンゾニトリル100mg、N−(9−ナフチルメチル)−シンコニジウムクロライド21mg、炭酸セシウム172mgを添加し、室温で5時間攪拌することで、光学純度47%eeで表題化合物が生成した。
1H NMR(CDCl3):δ7.68(s、1H)、7.63−7.60(m、2H)、7.44−7.33(m、3H)、7.19(s、2H)、4.31−4.19(m、2H)、4.09−4.05(m、1H)、3.45−3.32(m、2H)、2.35(s1H)、1.29(t、J=7.0Hz、3H)
【0211】
実施例8)エチル−3−(4−シアノ−2,6−ジメチルフェニル)−2−[(フェニルメチリデン)アミノ]プロパネートの製造
N−ベンジリデン−グリシンエチルエステル94mgをトルエン3.5gに溶解し、3,5−ジメチル−4−ブロモメチルベンゾニトリル100mg、N−(9−ベンジル)−シンコニジウムクロライド19mg、炭酸セシウム172mgを添加し、室温で5時間攪拌したところ、光学純度32%eeで表題化合物が生成した。
【0212】
実施例9)エチル−3−(4−シアノ−2,6−ジメチルフェニル)−2−[(フェニルメチリデン)アミノ]プロパネートの製造
N−ベンジリデン−グリシンエチルエステル78mgをトルエン3.5gに溶解し、3,5−ジメチル−4−ヨードメチルベンゾニトリル100mg、N−(9−ナフチルメチル)−シンコニジウムクロライド17mg、炭酸セシウム142mgを添加し、室温で5時間攪拌したところ、光学純度57%eeで表題化合物が生成した。
【0213】
実施例10)4−ブロモ−3,5−ジメチルベンゾニトリルの製造
84gの水に濃塩酸15gを添加した後、4−ブロモ−3,5−ジメチルアニリン15gを加え、氷冷下にて反応液が均一なスラリー状になるまで攪拌を行った。そのスラリー溶液に対して、亜硝酸ナトリウム5.7g、水17gを加え氷冷下にて3時間攪拌した。得られた水溶液を別途調整したシアン化ナトリウム9.2g、シアン化銅8.1g、炭酸水素ナトリウム17gの水溶液(水83g使用)に対して内温70度で添加し5日間攪拌を行った。得られた反応液にトルエン80gを添加し、10分攪拌後、セライトによりろ過を行った。その後、濾液にトルエン20gを加えて、抽出を行った。抽出操作により得られた有機層に水を添加し、水洗を行った。水洗後の有機層に無水硫酸マグネシウムを添加し、濾過によって硫酸マグネシウムを濾別した後、溶媒の濃縮乾固を行った。乾燥重量の1.6倍重量の酢酸エチルを添加し、70度にて均一溶液とした後、溶液温度を室温まで下げた。その後、乾燥重量に対し0.63倍重量のヘキサンを添加し、0.5時間撹拌を行った。析出した固体をろ別し、減圧乾燥することにより表題化合物を収率41%で取得した。
【0214】
実施例11)4−ブロモ−3,5−ジメチルアニリンの製造
5.0gの3,5−ジメチルアニリンをアセトニトリル40mLに溶解し、氷冷下、N−ブロモスクシンイミド7.4gのアセトニトリル40mLを30分かけて滴下した。滴下終了後、反応液を25℃に昇温し、10時間攪拌した。反応液を濃縮してアセトニトリルを留去した後、トルエン50mL、水30mLを加え、30%NaOH水溶液で水層のpHを9に調整した後、分液した。得られた有機層を水洗した後、濃縮することにより、収率90%で表題化合物を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記式(3):
【化1】

で表される化合物を位置選択的にハロゲン化して、下記式(1):
【化2】

(式中、X1はハロゲンを表す)で表される化合物とする工程、および、
b)前記式(1)で表される化合物を亜硝酸化合物と反応させた後、更にシアン化合物と反応させて下記式(2):
【化3】

(式中、X1は前記に同じ)で表されるシアノベンゼン誘導体とする工程
を含むことを特徴とする下記式(12):
【化4】

(R1はCNまたはCONH2を表す。R2は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基を表す。P1はアミノ基の保護基を表す。*は不斉炭素を表す)で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
c)前記式(2)で表される化合物を加水分解して下記式(4):
【化5】

(X1は前記に同じ)とする工程
を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
更に、
d)前記式(2)または前記式(4)で表される化合物と、下記式(15):
【化6】

(X5はハロゲンを表す。M2は金属原子を表す。P1、R2は前記に同じ)で表される化合物とを金属触媒存在下で反応させる工程を含む請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
1がtert-ブトキシカルボニル基、R1がCONH2である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
2がHである請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
e)前記式(2)または前記式(4)で表される化合物に対し、下記式(6):
【化7】

(R3は炭素数1〜20のアルキル基を表す。M1はMgCl,MgBr,MgI,Liを表す)で表される有機金属化合物を反応させて、下記式(7):
【化8】

(R1,M1は前記に同じ)で表される化合物とした後、当該化合物に炭素求電子剤を反応させ、必要に応じて還元剤と反応させて、下記式(8):
【化9】

(R1は前記に同じ)で表される化合物とする工程、および、
f)前記式(8)のヒドロキシル基をハロゲン化して下記式(9):
【化10】

(R1は前記に同じ,X3はハロゲンを表す)とする工程
を含む、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項7】
3がBrまたはIである請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記式(9)においてR1がシアノ基の場合、更に加水分解してアミド化する工程を含む、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
g)下記式(3):
【化11】

で表される化合物を、ハロゲン化水素存在下、ホルムアルデヒド等価体と反応させることで位置選択的にハロメチル化を行い、下記式(16):
【化12】

(X6はハロゲンを表す)で表される化合物とする工程、および、
h)前記式(16)で表される化合物を亜硝酸化合物と反応させた後、更にシアン化合物と反応させて下記式(17):
【化13】

(X6は前記に同じ)とする工程
を含むことを特徴とする下記式(12):
【化14】

(R1はCNまたはCONH2を表す。R2は水素原子、炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基を表す。P1はアミノ基の保護基を表す。*は不斉炭素を表す)で表される化合物の製造法。
【請求項10】
i)前記式(9)または前記式(17)で表される化合物と、下記式(13):
【化15】

(式中、R4、R5は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基をあらわす。R6は炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基をあらわす。)で表される化合物を、光学活性な相間移動触媒および塩基の存在下で反応させ、下記式(14):
【化16】

(式中、R1はCNまたはCONH2を表す。R4、R5は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基をあらわす。R6は炭素数1〜20のアルキル基または炭素数6〜14のアリール基をあらわす。)で表される光学活性アミノ酸誘導体を製造する工程を含む、請求項6〜9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記式(14)で表される化合物を酸または塩基存在下で加水分解する工程を含む、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
5がエチル基である請求項10または11に記載の製造方法。
【請求項13】
3がフェニル基またはp−クロロフェニル基であり、R4が水素原子である請求項10〜12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項14】
3がIである請求項10〜13のいずれかに記載の製造方法。
【請求項15】
光学活性な相間移動触媒として、光学活性四級アンモニウム塩を使用することを特徴とする請求項10〜14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
光学活性な相間移動触媒として、シンコナアルカロイド由来の光学活性四級アンモニウム塩を使用することを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
下記式(9):
【化17】

(R1はCNまたはCONH2を表す。X3はハロゲンを表す。)で表される4置換ベンゼン誘導体。

【公開番号】特開2012−250943(P2012−250943A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125744(P2011−125744)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】