説明

光学活性4級アンモニウム塩、および光学活性化合物の製造方法

【課題】不斉反応による光学活性アミノ酸誘導体の合成に有用な不斉触媒、ならびに医薬、農薬、高機能材料などの分野において有用な光学活性アミノ酸誘導体を高収率かつ高光学純度で製造する方法の提供。
【解決手段】光学活性な4級アンモニウム塩を含んで成る特定のジベンゾアゼピン誘導体からなる不斉触媒。不斉触媒の存在下に、不斉アルドール反応、不斉マンニッヒ付加反応、不斉ハロゲン化反応、不斉アミノキシル化反応、不斉ヒドロキシアミノ化反応、不斉マイケル付加反応、不斉共役付加反応などの不斉反応を行うことを含む、光学活性アミノ酸誘導体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な光学活性4級アンモニウム塩、およびその塩を触媒に用いた光学活性アミノ酸誘導体などの光学活性化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品の研究開発においては、薬効と安全性を高める観点から、光学活性アミノ酸誘導体などの光学活性化合物が注目されている。光学活性化合物の合成方法として、光学分割法と不斉合成法とが知られている。光学分割法は、それまでの工程で合成してきた化合物の半分を捨てることになるので、必要な化合物の合成という観点から大きな無駄を生じる。
一方、不斉合成法は、不斉触媒を用いて、必要な化合物が優先的に生成するようにしたものである。不斉反応は、医薬品のみならず、農薬や高機能性材料(例えば、液晶、非線形光学材料、感光体など)などの分野でも応用が期待されている。ところが、不斉合成は技術的な困難を伴う場合が多い。そのため、特に工業スケールにおいて、目的とする光学活性化合物を高収率かつ高光学純度で合成できる不斉触媒の開発が重要となっている。
【0003】
光学活性アミノ酸誘導体の合成に用いられる不斉触媒として、種々の化合物が提案されている。
例えば、非特許文献1には、式(S−4)で表される光学活性4級アンモニウム塩が記載されている。該4級アンモニウム塩を触媒に用いてα,β−不飽和ケトンとグリシンエステルとの共役付加反応を経て光学活性なピロリジンを製造することができる。
【0004】
【化1】

(式(S−4)中、Arは、3,4,5−トリフルオロフェニル基などを示す。)
【0005】
特許文献1には、式(A)で表される光学活性4級アンモニウム塩、および該4級アンモニウム塩を触媒に用いて光学活性アミノ酸誘導体を製造する方法が記載されている。
【0006】
【化2】

(式(A)中、
1、R2、R1'、R2'、R3およびR3'は、それぞれ独立に水素原子、C1〜5アルコキシ基などを示す。
4およびR4'は、3,4,5−トリフルオロフェニル基などを示す。
7およびR8はそれぞれ独立にC1〜30アルキル基などを示す。X-は、アニオンなどを示す。)
【0007】
特許文献2には、式(B)で表される光学活性4級アンモニウム塩、および該4級アンモニウム塩を触媒に用いて光学活性アミノ酸誘導体を製造する方法が記載されている。
【0008】
【化3】

(式(B)中、
2およびR2'は、水素原子、アリール基などを示す。
3およびR3'は、C1〜5アルコキシ基などを示す。
4およびR4'は、アリール基などを示す。
7およびR8はそれぞれ独立にC1〜30アルキル基などを示す。
-は、アニオンなどを示す。)
【0009】
特許文献3には、式(C)で表される光学活性4級アンモニウム塩、および該4級アンモニウム塩を触媒に用いて光学活性アミノ酸誘導体を製造する方法が記載されている。
【0010】
【化4】

(式(C)中、
Rは、2価の有機基を示す。
1およびR2は、水素原子、ハロゲン原子などを示す。
3'およびR4'は、1価の有機基を示す。
Arは、1価の有機基を示す。
-は、カウンターアニオンを示す。*はビフェニル構造の結合軸が光学活性であることを示す。)
【0011】
上記先行技術文献に記載の光学活性4級アンモニウム塩は、下記に示すグリシンエステルのα炭素に不斉アルキル化または不斉共役付加を行う反応を触媒する。ところが、工業スケールでこれらの反応を実施した場合、基質によっては目的とする光学活性アミノ酸誘導体を高収率かつ高光学純度で合成できないことがある。
【0012】
【化5】

〔式中、Arは、無置換の若しくは置換基を有するアリール基を示す。Rは、無置換の若しくは置換基を有するアルキル基を示す。Raは、水素原子、無置換の若しくは置換基を有するアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基などを示す。Rbは、水素原子、無置換の若しくは置換基を有するアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するアリール基などを示す。*は、不斉炭素を示す。〕
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2006/104226
【特許文献2】WO2008/038578
【特許文献3】WO2009/125594
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Organic Letters Vol.11, No.9 2027-2029
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、新規な光学活性4級アンモニウム塩を提供することを課題とする。本発明は、不斉反応による光学活性化合物の合成に有用な不斉触媒を提供することを課題とする。さらに、本発明は、医薬、農薬、高機能材料などの分野において有用な光学活性アミノ酸誘導体を高収率かつ高光学純度で製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、式(I)または式(V)で表される光学活性4級アンモニウム塩を得るに至った。そして、この光学活性4級アンモニウム塩は、不斉反応において、優れた触媒効果を有することを見出した。本発明は、これらの知見に基づきさらに検討を重ねることによって完成するに至ったものである。
【0017】
すなわち、本発明は以下の態様を包含するものである。
【0018】
〔1〕 式(I)で表される光学活性な4級アンモニウム塩。
【0019】
【化6】


〔式(I)中、
1は、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
2は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。
nは、それぞれ独立に、R2の数を示し且つ0〜2のいずれかの整数である。nが2のとき、R2同士は互いに同一であってもよいし、相異なっていてもよい。

a3およびRb3は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。
a3とRb3は、一緒になって2価の有機基を形成してもよい。

4およびR5は、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基を示す。
4とR5は、一緒になって2価の有機基を形成してもよい。

*は、それが付された不斉軸が光学活性であることを示す。
-は、水酸化物イオン、ハロゲン原子系イオン、スルホン酸系イオン、リン酸系イオン、またはカルボン酸系イオンを示す。〕
【0020】
〔2〕 式(I)において、
a3とRb3は、それらが一緒になって形成する2価の有機基であり、
該2価の有機基が、C2〜6アルキレン基、−O−(CH2)m−O− (mは1〜6のいずれかの整数である。)、または −O−(CH2CH2O)p− (pは2〜3のいずれかの整数である。)である、前記〔1〕に記載の光学活性な4級アンモニウム塩。
【0021】
〔3〕 式(I)において、
4とR5は、それらが一緒になって形成する2価の有機基であり、
該2価の有機基が、C3〜6アルキレン基、または −(CH2)q−X−(CH2)q− (qは、それぞれ独立に、1〜6のいずれかの整数である。Xは、オキソ基、チオ基、またはイミノ基を示す。)である、前記〔1〕または〔2〕に記載の光学活性4級アンモニウム塩。
【0022】
〔4〕 式(V)で表される光学活性な4級アンモニウム塩。
【0023】
【化7】


〔式(V)中、
2は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。
nは、それぞれ独立に、R2の数を示し且つ0〜2のいずれかの整数である。nが2のとき、R2同士は互いに同一であってもよいし、相異なっていてもよい。
a3およびRb3は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。
a3とRb3は、一緒になって2価の有機基を形成してもよい。
6は、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基を示す。
kは、それぞれ独立に、R6の数を示し且つ2〜5のいずれかの整数である。kが2のとき、R6同士は互いに同一であってもよいし、相異なっていてもよい。
*は、それが付された不斉軸が光学活性であることを示す。
-は、水酸化物イオン、ハロゲン原子系イオン、スルホン酸系イオン、リン酸系イオン、またはカルボン酸系イオンを示す。〕
【0024】
〔5〕 式(V)において、
a3とRb3は、それらが一緒になって形成する2価の有機基であり、
該2価の有機基が、C2〜6アルキレン基、−O−(CH2)m−O− (mは1〜6のいずれかの整数である。)、または −O−(CH2CH2O)p− (pは2〜3のいずれかの整数である。)である、前記〔4〕に記載の光学活性な4級アンモニウム塩。
【0025】
〔6〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれかひとつに記載の光学活性4級アンモニウム塩を含んで成る不斉触媒。
【0026】
〔7〕 前記〔1〕〜〔5〕のいずれかひとつに記載の光学活性4級アンモニウム塩の存在下に、不斉反応を行うことを含む、光学活性化合物の製造方法。
【0027】
〔8〕 塩基を含有する溶媒中、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかひとつに記載の光学活性4級アンモニウム塩の存在下に、 式(III)で表されるα,β−不飽和アルデヒド誘導体と、 式(IV)で表されるグリシン誘導体とを反応させることを含む、 式(II)で表される光学活性アミノ酸誘導体の製造方法。
【0028】
【化8】


(式(III)中、Raは、2価の有機基を示す。)
【0029】
【化9】


(式(IV)中、
bは、水素原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
cは、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
Arは、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基を示す。)
【0030】
【化10】


(式(II)中、Ra、Rb、Rc、およびArは、前記と同じ意味を示す。
*は、それが付された不斉炭素が光学活性であることを示す。)
【0031】
〔9〕 塩基を含有する溶媒中、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかひとつに記載の光学活性な4級アンモニウム塩の存在下に、 式(III)で表されるα,β−不飽和アルデヒド誘導体と、 式(IV)で表されるグリシン誘導体とを反応させることを含む、式(II-1)または式(II-2)で表される光学活性アミノ酸誘導体の製造方法。
【0032】
【化11】


(式(III)中、Raは、2価の有機基を示す。)
【0033】
【化12】


(式(IV)中、
bは、水素原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
cは、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
Arは、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基を示す。)
【0034】
【化13】

【0035】
【化14】


(式(II-1)および(II-2)中の、Ra、Rb、およびRcは、前記と同じ意味を示す。破線と実線の二重線で表される結合は、単結合または二重結合を示す。)
【0036】
〔10〕 式(II-1)または式(II-2)で表される光学活性アミノ酸誘導体。
【0037】
【化15】

【0038】
【化16】


(式(II-1)および式(II-2)中、
aは、2価の有機基を示す。
bは、水素原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
cは、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
破線と実線の二重線で表される結合は、単結合または二重結合を示す。)
【発明の効果】
【0039】
本発明に係る光学活性4級アンモニウム塩は新規物質である。該光学活性4級アンモニウム塩は、不斉マイケル付加反応などの不斉反応において優れた触媒作用を示す。
該光学活性4級アンモニウム塩の存在下に、不斉マイケル付加反応などの不斉反応を行うと、医薬、農薬、高機能材料などの分野において有用な光学活性化合物を高収率かつ高光学純度で合成できる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
1)光学活性4級アンモニウム塩
本発明に係る光学活性4級アンモニウム塩は、式(I)で表される化合物(以下、化合物(I)と表記することがある。)または式(V)で表される化合物(以下、化合物(V)と表記することがある。)である。
【0041】
まず、式(I)または式(V)における、「無置換の」および「置換基を有する」の意味を説明する。
【0042】
「無置換の」の用語は、母核となる基のみであることを意味する。なお、本明細書において、「置換基を有する」との記載がなく母核となる基の名称のみで記載しているときは、別段の断りがない限り「無置換の」意味である。
一方、「置換基を有する」の用語は、母核となる基のいずれかの水素原子が、母核と同種又は異種の構造の基で置換されていることを意味する。従って、「置換基」は、母核となる基に結合した他の基である。置換基は1つであってもよいし、2つ以上であってもよい。2つ以上の置換基は同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
「C1〜6」などの用語は、母核となる基の炭素原子数が1〜6個などであることを表している。この炭素原子数には、置換基の中に在る炭素原子の数を含まない。例えば、置換基としてエトキシ基を有するブチル基は、C2アルコキシC4アルキル基に分類する。
【0043】
「置換基」は、化学的に許容され、本発明の効果を奏する限りにおいて特に制限されない。
「置換基」となり得る基としては、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などのC1〜6アルキル基;
シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などのC3〜8シクロアルキル基;
ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基などのC2〜6アルケニル基;
エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基などのC2〜6アルキニル基;
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1〜6アルコキシ基;
ビニルオキシ基、アリルオキシ基、プロペニルオキシ基、ブテニルオキシ基などのC2〜6アルケニルオキシ基;
エチニルオキシ基、プロパルギルオキシ基などのC2〜6アルキニルオキシ基;
フェニル基、ナフチル基などのC6〜10アリール基;
フェノキシ基、1−ナフトキシ基などのC6〜10アリールオキシ基;
ベンジル基、フェネチル基などのC7〜11アラルキル基;
ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基などのC7〜11アラルキルオキシ基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、シクロヘキシルカルボニル基などのC1〜7アシル基;
ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、シクロヘキシルカルボニルオキシ基などのC1〜7アシルオキシ基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などのC1〜6アルコキシカルボニル基;
カルボキシル基;
水酸基;
【0044】
クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2−ジクロロ−n−プロピル基、1−フルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基などのC1〜6ハロアルキル基;
2−クロロ−1−プロペニル基、2−フルオロ−1−ブテニル基などのC2〜6ハロアルケニル基;
4,4−ジクロロ−1−ブチニル基、4−フルオロ−1−ペンチニル基、5−ブロモ−2−ペンチニル基などのC2〜6ハロアルキニル基;
2−クロロ−n−プロポキシ基、2,3−ジクロロブトキシ基などのC1〜6ハロアルコキシ基;
2−クロロプロペニルオキシ基、3−ブロモブテニルオキシ基などのC2〜6ハロアルケニルオキシ基;
4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジクロロフェニル基などのC6〜10ハロアリール基;
4−フルオロフェニルオキシ基、4−クロロ−1−ナフトキシ基などのC6〜10ハロアリールオキシ基;
クロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、トリクロロアセチル基、4−クロロベンゾイル基などのハロゲン置換C1〜7アシル基;
【0045】
シアノ基;ニトロ基;アミノ基;
メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基などのC1〜6アルキルアミノ基;
アニリノ基、ナフチルアミノ基などのC6〜10アリールアミノ基;
ベンジルアミノ基、フェニルエチルアミノ基などのC7〜11アラルキルアミノ基;
ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、ブチリルアミノ基、i−プロピルカルボニルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などのC1〜7アシルアミノ基;
メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、n−プロポキシカルボニルアミノ基、i−プロポキシカルボニルアミノ基などのC1〜6アルコキシカルボニルアミノ基;
【0046】
アミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、N−フェニル−N−メチルアミノカルボニル基などの無置換若しくは置換基を有するアミノカルボニル基;
【0047】
ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基などの5員環のヘテロアリール基;
ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダニジル基、トリアジニル基などの6員環のヘテロアリール基;
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基などのトリC1〜6アルキル置換シリル基;
トリフェニルシリル基;
などを挙げることができる。
【0048】
また、これらの「置換基」はその中のいずれかの水素原子が、該「置換基」と同種または異種の構造の基で置換されていてもよい。
【0049】
〔 R1
式(I)中、R1は、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
【0050】
「C1〜6アルキル基」は、直鎖であってもよいし、分岐鎖であってもよい。C1〜6アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、i−ペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、2,2−ジメチルプロピル基、i−ヘキシル基などを挙げることができる。
【0051】
「C3〜8シクロアルキル基」としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などを挙げることができる。
【0052】
「C6〜10アリール基」は、単環、または環同士が結合した多環のいずれであってもよい。多環アリール基は、少なくとも一つの環が芳香環であれば、残りの環が飽和脂環、不飽和脂環または芳香環のいずれであってもよい。C6〜10アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アズレニル基、インデニル基、インダニル基、テトラリニル基などが挙げられる。これらのうち、R1としては、特にフェニル基が好ましい。
【0053】
「置換基を有するC6〜10アリール基」において、置換基となりうる好ましい基としては、 フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子のハロゲン原子;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などのC1〜6アルキル基;
クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2−ジクロロ−n−プロピル基、1−フルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基などのC1〜6ハロアルキル基;
などを挙げることができる。
【0054】
「ヘテロアリール基」は、環を構成する原子として炭素原子以外に窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれる1〜4個の複素原子を含む5〜10員のアリール基である。この場合、単環、または環同士が縮合した多環であってもよい。
【0055】
ヘテロアリール基として、具体的に、以下の基を挙げることができる。
ピロリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、トリアゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、テトラゾリル基などの5員環のヘテロアリール基;
ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピリダニジル基、トリアジニル基などの6員環のヘテロアリール基;
などを挙げることができる。
【0056】
〔 R2
式(I)または式(V)中、R2は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。
nは、それぞれ独立に、R2の数を示し且つ0〜2のいずれかの整数である。nが2のとき、R2同士は互いに同一であってもよいし、相異なっていてもよい。
【0057】
「ハロゲン原子」としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、を挙げることができる。
2における「C1〜6アルキル基」としては、前記R1において挙げた「C1〜6アルキル基」と同じものを挙げることができる。
【0058】
「C2〜6アルケニル基」としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−メチル−2−ブテニル基、2−メチル−2−ブテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−ヘキセニル基、5−ヘキセニル基などを挙げることができる。
【0059】
「C2〜6アルキニル基」としては、エチニル基、1−プロピニル基、2−プロピニル基、1−ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、1−メチル−2−プロピニル基、2−メチル−3−ブチニル基、1−ペンチニル基、2−ペンチニル基、3−ペンチニル基、4−ペンチニル基、1−メチル−2−ブチニル基、2−メチル−3−ペンチニル基、1−ヘキシニル基、1,1−ジメチル−2−ブチニル基などを挙げることができる。
【0060】
「C1〜6アルコキシ基」としては、メトキシ基、エトキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、i−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、i−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基などを挙げることができる。
【0061】
〔 Ra3 、Rb3
式(I)または式(V)中、Ra3およびRb3は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。Ra3とRb3は、一緒になって2価の有機基を形成してもよい。
【0062】
a3またはRb3における「C1〜6アルキル基」としては、R1において挙げた「C1〜6アルキル基」と同じものを挙げることができる。
a3またはRb3における「ハロゲン原子」、「C2〜6アルケニル基」、「C2〜6アルキニル基」、および「C1〜6アルコキシ基」としては、R2において挙げた「ハロゲン原子」、「C2〜6アルケニル基」、「C2〜6アルキニル基」、および「C1〜6アルコキシ基」と同じものを挙げることができる。
【0063】
〔 Ra3とRb3が一緒になって形成する2価の有機基 〕
a3とRb3が一緒になって形成する2価の有機基としては、下記のいずれかの式で表されるものを例示することができる。
【0064】
【化17】

【0065】
式中、X1は、それぞれ独立に、炭素原子、オキシ基、イミノ基、チオ基、カルボニル基、スルフィニル基、およびスルホニル基からなる群から適宜選ばれる原子または官能基を示す。これらの原子または官能基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。隣接するX1間の結合は、式の中で、単結合で示されているが、二重結合であってもよい。
【0066】
2価の有機基を構成する官能基中の炭素原子は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜8アリールカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルスルホニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリールスルホニル基が挙げられる。
1におけるイミノ基は、置換基を有していてもよい。好ましい置換基としては、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜8アリールカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルスルホニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリールスルホニル基が挙げられる。
【0067】
好ましい2価の有機基としては、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキレン基、−O−(CH2)m−O− (mは1〜6のいずれかの整数である。)で表される基、または −O−(CH2CH2O)p− (pは2〜3のいずれかの整数である。)で表される基を挙げることができる。
C2〜6アルキレン基としては、エチレン基(別名:エタン−1,2−ジイル基)、プロピレン基(別名:プロパン−1,2−ジイル基)、トリメチレン基(別名:プロパン−1,3−ジイル基)、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などを挙げることができる。
【0068】
製造法の観点から、好ましくは以下のいずれかの式で表される2価の有機基を例示することができる。
【0069】
【化18】

【0070】
式中、X2は、それぞれ独立に、炭素原子、オキシ基、イミノ基、チオ基、カルボニル基、スルフィニル基、およびスルホニル基からなる群から適宜選ばれる、原子または官能基を示す。これら原子または官能基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。隣接するX2間の結合は、式の中で単結合で示されているが、二重結合であってもよい。
【0071】
2価の有機基を構成する官能基中の炭素原子は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜8アリールカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルスルホニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリールスルホニル基が挙げられる。
2におけるイミノ基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜8アリールカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルスルホニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリールスルホニル基が挙げられる。
【0072】
〔 R4、R5
式(I)中、R4およびR5は、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基を示す。R4とR5は、一緒になって2価の有機基を形成してもよい。
【0073】
4またはR5における「C1〜6アルキル基」としては、R1において挙げた「C1〜6アルキル基」と同じものを挙げることができる。
4またはR5における「C2〜6アルケニル基」および「C2〜6アルキニル基」としては、R2において挙げた「C2〜6アルケニル基」および「C2〜6アルキニル基」と同じものを挙げることができる。
【0074】
〔 R4とR5が一緒になって形成する2価の有機基 〕
4とR5が一緒になって形成する2価の有機基としては、以下のいずれかの式で表されるものを例示することができる。
【0075】
【化19】

【0076】
式中、X1は、それぞれ独立に、炭素原子、オキシ基、イミノ基、チオ基、カルボニル基、スルフィニル基、およびスルホニル基からなる群から適宜選ばれる、原子または官能基を示す。これら原子または官能基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。隣接するX1間の結合は、式の中で、単結合で示されているが、二重結合であってもよい。
【0077】
好ましい2価の有機基としては、C3〜6アルキレン基、−(CH2)q−X−(CH2)q− (qは、それぞれ独立に1〜6のいずれかの整数である。Xは、オキソ基、イミノ基、またはチオ基を示す。)で表される基を、挙げることができる。
C3〜6アルキレン基としては、プロピレン基(別名:プロパン−1,2−ジイル基)、トリメチレン基(別名:プロパン−1,3−ジイル基)、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などを挙げることができる。
−(CH2)q−X−(CH2)q− で表される基としては、−(CH2)2−O−(CH2)2−、−(CH2)2−O−(CH2)3−、−(CH2)3−O−(CH2)3−、−(CH2)2−NH−(CH2)2−、−(CH2)2−NH−(CH2)3−、−(CH2)3−NH−(CH2)3−、−(CH2)2−S−(CH2)2−、−(CH2)2−S−(CH2)3−、−(CH2)3−S−(CH2)3− などを挙げることができる。
【0078】
製造法の観点から、好ましくは以下のいずれかの式で表される2価の有機基を例示することができる。
【0079】
【化20】

【0080】
式中、X3は、それぞれ独立に、炭素原子、オキシ基、イミノ基、チオ基、カルボニル基、スルフィニル基、およびスルホニル基からなる群から適宜選ばれる、原子または官能基を示す。これら原子または官能基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。隣接するX3間およびCとX3との間の結合は、式の中で、単結合で示されているが、二重結合であってもよい。
式中のCは、炭素原子を示す。この場合、sp炭素、sp2炭素、sp3炭素のいずれであってもよい。
2価の有機基を構成する官能基中の炭素原子は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜8アリールカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルスルホニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリールスルホニル基が挙げられる。
3におけるイミノ基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜8アリールカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルスルホニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリールスルホニル基が挙げられる。
【0081】
〔 R6
式(V)中、R6は、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基を示す。kは、それぞれ独立に、R6の数を示し且つ2〜5のいずれかの整数である。kが2のとき、R6同士は互いに同一であってもよいし、相異なっていてもよい。
6における「C6〜10アリール基」としては、前記R1において挙げた「C6〜10アリール基」と同じものを挙げることができる。
【0082】
〔 * 〕
式(I)または式(V)中、*は、それが付された不斉軸が光学活性であることを示す。なお、本発明において、光学活性とは、特定の光学異性体の存在率が50%より大きいことを意味する。本発明においては、特定の光学異性体の存在率は、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、98%以上であることが特に好ましい。
【0083】
〔 X-
式(I)または式(V)中、X-は、水酸化物イオン、ハロゲン原子系イオン、スルホン酸系イオン、リン酸系イオン、またはカルボン酸系イオンを示す。
-における、「ハロゲン原子系イオン」としては、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオンなどを挙げることができる。
-における、「スルホン酸系イオン」としては、硫酸イオン、硫酸エステルイオン、アリールスルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオンなどを挙げることができる。
-における、「リン酸系イオン」としては、リン酸イオン、リン酸エステルイオン、リン酸ジエステルイオンなどを挙げることができる。
-における、「カルボン酸系イオン」としては、炭酸イオン、脂肪酸イオン、アリールカルボン酸イオンなどを挙げることができる。
これらのうち、好ましいX-は、「ハロゲン原子系イオン」である。
【0084】
2)光学活性4級アンモニウム塩の製造方法
(式(I)で表される光学活性4級アンモニウム塩の製造方法)
式(I)で表される光学活性4級アンモニウム塩は、公知の合成法によって得ることができる。
ここでは、式(6)で表される光学活性4級アンモニウム塩(式(I)において、X-がブロモカチオンである化合物)の製法を一例として挙げ、本発明の光学活性4級アンモニウム塩の製造方法の理解に資することにする。なお、ここで説明する製造方法は、一実施態様であり、本発明に係る光学活性4級アンモニウム塩は他のいかなる製造方法で製造しても良い。
【0085】
本発明の光学活性4級アンモニウム塩は、例えば、以下に記載した各工程を含む方法により製造することができる。ここで、式(1)で表される化合物(化合物(1)ということがある。)、式(3)で表される化合物(化合物(3)ということがある。)、式(4)で表される化合物(化合物(4)ということがある。)、および式(6)で表される化合物(化合物(6)ということがある。)中のR2、n、Ra3、およびRb3は、式(I)におけるそれらと同じ意味を示す。また、式(2)で表される化合物(化合物(2)ということがある。)、化合物(3)、化合物(4)、および化合物(6)中のR1は、式(I)におけるR1と同じ意味を示す。式(5)で表される化合物(化合物(5)ということがある。)および化合物(6)中のR4およびR5は、式(I)におけるそれらと同じ意味を示す。
【0086】
【化21】

【0087】
化合物(1)は、光学活性ビフェニル化合物である。本発明の光学活性4級アンモニウム塩は、光学純度の高いものが好ましく、そのため出発原料となる化合物(1)は、光学純度の高い化合物であることが好ましい。化合物(1)は公知物質である。光学純度の高い化合物(1)は、国際公開パンフレットWO2009/087959および国際公開パンフレットWO2009/125594に記載の方法で合成することができる。
【0088】
〔工程1〕
先ず、化合物(1)に対してアルカリ金属試薬を作用させて、化合物(2)を反応させて、化合物(3)に誘導する。
アルカリ金属試薬としては、
リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属単体;
水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物;
メチルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、n−ブチルマグネシウムクロリド、ジエチル亜鉛、フェニルリチウム、フェニルナトリウム、シクロペンタジエニルナトリウム、シクロペンタジエニルカリウムなどのアルカリ金属有機金属化合物;
リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムグリコキシド、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシドなどのアルカリ金属アルコキシド;
リチウムアミド、ナトリウムアミド、リチウムジイソプロピルアミド(LDA)、リチウムヘキサメチルジシリルアミド(LHMDS)、ナトリウムヘキサメチルジシリルアミド(NaHMDS)などのアルカリ金属アミド;などが挙げられる。
【0089】
アルカリ金属試薬の使用量は、化合物(1) 1モルに対して、好ましくは2.0モル〜10.0モル、より好ましくは2.1モル〜5.0モルである。
工程1においては溶媒を使用することができる。好ましい溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶媒;エーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテル、CPMEなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
工程1において使用される溶媒の体積(L)は、化合物(1)の重量(kg)に対して、体積(L)/重量(kg)で、好ましくは1.0〜100L/kg、より好ましくは3〜30L/kgである。
工程1における反応は、好ましくは−80℃から溶媒の沸点までの適宜な温度で、より好ましくは−80℃〜0℃で行う。該反応は攪拌しながら行うことができる。反応時間は反応速度に応じて適宜に設定できるが、好ましくは1〜50時間、より好ましくは2〜10時間である。
【0090】
〔工程2〕
次に、化合物(3)にハロゲン化剤(必要に応じて反応開始剤)を作用させ、適宜な溶媒中において化合物(4)に誘導する。
ハロゲン化剤としては、塩素、N−クロロコハク酸イミド、臭素、N−ブロムコハク酸イミド(NBS)など、ヨウ素などが挙げられる。これらのうち、NBSが好適である。
ハロゲン化剤の使用量は、化合物(3) 1モルに対して、好ましくは2.0モル〜10.0モル、より好ましくは2.1モル〜3.0モルである。
反応開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、過酸化ベンゾイル(BPO)などのラジカル反応開始剤が挙げられる。反応開始剤の使用量は、化合物(3) 1モルに対して、好ましくは0.05モル〜1.0モル、より好ましくは0.1モル〜0.5モルである。
【0091】
工程2において使用される溶媒は、反応を阻害しなければ特に制限されない。例えば、ヘキサン、シクロへキサン、ベンゼンなどの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど塩素系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリジン−2−オン(NMP)、N,N'−ジメチルイミダゾリジン−2−オン(DMI)などのアミド系溶媒が挙げられる。
使用される溶媒の体積(L)は、化合物(3)の重量(kg)に対して、体積(L)/重量(kg)で、好ましくは1.0〜100L/kg、より好ましくは3〜30L/kgである。
工程2における反応は、好ましくは溶媒の融点から沸点までの適宜な温度で、より好ましくは0℃〜100℃で行われる。該反応は攪拌しながら行うことができる。反応時間は反応速度に応じて適宜に設定できるが、好ましくは1〜50時間、より好ましくは1〜24時間である。
【0092】
〔工程3〕
最後に、化合物(4)に対して化合物(5)を、必要に応じて塩基の存在下、適宜な溶媒中において作用させて化合物(6)を得る。
化合物(5)の量は、化合物(4) 1モルに対して、好ましく0.5モル〜10.0モル、より好ましくは1.0モル〜3.0モルである。
工程3においては、塩基を存在させなくてもよいが、塩基を存在させることが好ましい。好ましく用いられる塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化カリウム、炭酸カリウム、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムter−ブトキシド、水酸化セシウム、炭酸セシウムなどの無機塩基;ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ホスファゼン塩基類などの有機塩基が挙げられる。塩基の使用量は、化合物(4) 1モルに対して、好ましくは2モル〜30モル、より好ましくは3モル〜20モルである。
【0093】
工程3において使用される溶媒は、反応を阻害しなければ特に制限されない。例えば、ヘキサン、シクロへキサン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなど塩素系溶媒;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリジン−2−オン(NMP)、N,N'−ジメチルイミダゾリジン−2−オン(DMI)などのアミド系溶媒が挙げられる。使用される溶媒の体積(L)は、化合物(4)の重量(kg)に対して、体積(L)/重量(kg)で、好ましくは1.0〜100L/kg、より好ましくは3〜30L/kgである。
工程3における反応を相間移動反応条件下に行うこともできる。相間移動反応条件においては、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、18−クラウン−6−エーテル、15−クラウン−4−エーテルなどの一般的な相間移動触媒を使用することができる。当該相間移動触媒の使用量は、化合物(4) 1モルに対して、好ましくは0.005モル〜0.2モル、より好ましくは0.01〜0.05モルである。相間移動反応条件においては、前記の塩基を、水溶液若しくは固体のままで使用することができる。当該反応は攪拌しながら行うことができる。当該反応温度は、好ましくは溶媒の融点から沸点までの適宜な温度で、より好ましくは−20〜100℃である。反応時間は反応速度に応じて適宜に設定できるが、好ましくは1〜50時間、より好ましくは1〜24時間である。
【0094】
(式(V)で表される光学活性4級アンモニウム塩の製造方法)
一方、式(V)で表される光学活性4級アンモニウム塩は、上記の式(I)で表される光学活性4級アンモニウム塩の製法と類似の製造方法で、製造することができる。具体的には、上記の製造方法における工程1の反応を、次に示す反応に置き換えることで製造することができる。
【0095】
【化22】

【0096】
ここで、式(1')で表される化合物(化合物(1')ということがある。)、式(3')で表される化合物(化合物(3')ということがある。)中のR2、n、Ra3、およびRb3は、式(V)におけるそれらと同じ意味を示す。式(2')で表されるホウ素化合物(化合物(2')ということがある。)および化合物(3')中のArは、式(2'−1)で表される置換基を示し、式中の、R6およびkは、式(V)におけるそれらと同じ意味を示す。

(R6kPh (2'−1)
【0097】
すなわち、化合物(1')に対して化合物(2')を、パラジウム触媒と塩基の存在下、適宜な溶媒中において作用させて、化合物(3')を得る反応である。
化合物(2')は、化合物(1') 1モルに対して、2.0モル〜10.0モル、好ましくは2.1モル〜5.0モル、より好ましくは2.5モル〜3.5モルである。
パラジウム触媒は、ビス[1,2−(ジフェニルホスフィノ)エタン]パラジウム、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム、Pd(PPh34などの0価のパラジウム錯体が好適に使用できる。パラジウム触媒の使用量は、化合物(1')に対して、0.005当量〜0.2当量、好ましくは0.001当量〜0.1当量、より好ましくは0.01当量〜0.05当量である。
また、パラジウム触媒は、2価パラジウム化合物にホスフィンを作用させることによって、反応系中で調製し使用することもできる。2価パラジウムは、塩化パラジウム、臭化パラジウム等のハロゲン化パラジウム、酢酸パラジウム、アセト酢酸パラジウム等が挙げられ、好ましくは、酢酸パラジウムである。ホスフィンには特に制限は無いが、入手容易なトリアリールホスフィン類が好ましく使用でき、トリフェニルホスフィンがより好ましい。2価パラジウム化合物とホスフィンのモル比率は、1:1〜1:10、好ましくは1:2〜1:5である。
【0098】
塩基は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化カリウム、炭酸カリウム、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、水酸化セシウム、炭酸セシウム、水酸化タリウム、リン酸塩類すなわち、第二、第三リン酸ナトリウム、それらの水和物、第二、第三リン酸カリウム、それらの水和物、ピロリン酸ナトリウム、その水和物、ピロリン酸カリウム、その水和物等が適宜に使用でき、好ましくは、第三リン酸カリウム又はその水和物である。塩基の使用量は、化合物(1') 1モルに対して、2.0モル〜10.0モル、好ましくは2.1モル〜5.0モル、より好ましくは2.5モル〜3.5モルである。
溶媒は、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、エーテル、イソプロピルエーテル、THF、tert−ブチルメチルエーテル、CPME等のエーテル系溶媒、DMF、N−メチルピロリジン−2−オン(NMP)、N,N'−ジメチルイミダゾリジン−2−オン(DMI)等のアミド系溶媒が好ましく使用できる。使用される溶媒の体積(L)は、化合物(1')の重量(kg)に対して、体積(L)/重量(kg)で、好ましくは1.0〜100L/kg、より好ましくは3〜30L/kgである。
当該反応温度は、溶媒の融点から沸点までの適宜な温度で、好ましくは0℃〜120℃で、より好ましくは室温〜100℃である。
当該反応は攪拌しながら行うことができる。反応時間は反応速度に応じて適宜に設定できるが、好ましくは3〜50時間、より好ましくは6〜24時間である。
【0099】
3)不斉触媒
本発明に係る不斉触媒は、式(I)または式(V)で表わされる光学活性4級アンモニウム塩からなるものである。当該触媒は、不斉アルドール反応、不斉マンニッヒ付加反応、不斉ハロゲン化反応、不斉アミノキシル化反応、不斉ヒドロキシアミノ化反応、不斉マイケル付加反応、不斉共役付加反応などの不斉反応に用いられる。
本発明に係る不斉触媒は、安定した触媒活性を示す共に、S/C(基質/触媒〔モル比〕)が極めて高いという特長を有する。
【0100】
4)光学活性化合物の製造方法
本発明に係る光学活性化合物の製造方法は、式(I)または式(V)で表わされる光学活性4級アンモニウム塩の存在下に、不斉反応を行うことを含むものである。なお、本発明に係る光学活性化合物の製造方法では、溶媒を用いることができる。
基質を本発明に係る触媒に接触させることにより不斉反応が生起し、目的とする光学活性アミノ酸誘導体を高選択率で製造できる。ここで、基質は当該不斉反応の原料となる化合物である。基質はアキラルまたはプロキラルな化合物であってもよいし、不斉中心を有する光学活性化合物またはラセミ体などであってもよい。本発明において、基質はアキラルまたはプロキラルな化合物が好ましい。基質は単独の化合物でもよいし、2種以上の化合物の組み合わせであってもよい。
【0101】
本発明に係る光学活性化合物の製造方法は、光学活性アミノ酸誘導体の製造方法を包含する。該光学活性アミノ酸誘導体としては、例えば、式(II)で表される化合物を挙げることができる。
【0102】
【化23】

【0103】
<式(II)で表される光学活性アミノ酸誘導体>
<Ra
式(II)中、Raは、2価の有機基を示す。Raにおける2価の有機基としては、以下のいずれかの式で表される2価の有機基を例示することができる。例えば、Raがトリメチレン基(−CH2CH2CH2−)である場合にはRaを含む環は5員環を形成する。
【0104】
【化24】

【0105】
式中、X1は、それぞれ独立に、炭素原子、オキシ基、イミノ基、チオ基、カルボニル基、スルフィニル基、およびスルホニル基からなる群から適宜選ばれる、原子または官能基を示す。これら原子または官能基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。隣接するX1間の結合は、式の中で、単結合で示されているが、二重結合であってもよい。
【0106】
製造法の観点から、好ましくは以下のいずれかの式で表される2価の有機基を例示することができる。
【0107】
【化25】

【0108】
式中、X3は、それぞれ独立に、炭素原子、オキシ基、イミノ基、チオ基、カルボニル基、スルフィニル基、およびスルホニル基からなる群から適宜選ばれる、原子または官能基を示す。これら原子または官能基は、それぞれ独立に置換基を有していてもよい。隣接するX3間およびCとX3との間の結合は、式の中で、単結合で示されているが、二重結合であってもよい。
式中のCは、炭素原子を示す。この場合、sp炭素、sp2炭素、sp3炭素のいずれであってもよい。
2価の有機基を構成する官能基中の炭素原子は、置換基を有していてもよい。置換基としては、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜8アリールカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルスルホニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリールスルホニル基が挙げられる。
3におけるイミノ基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜8アリールカルボニル基、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキルスルホニル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリールスルホニル基が挙げられる。
【0109】
aにおける、好ましい2価の有機基としては、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキレン基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニレン基、−(CH2)q−X−(CH2)q− (qは、それぞれ独立に1〜6のいずれかの整数である。Xは、オキソ基、イミノ基、またはチオ基を示す。)で表される基を、挙げることができる。
【0110】
「C2〜6アルキレン基」としては、エチレン基(別名:エタン−1,2−ジイル基)、プロピレン基(別名:プロパン−1,2−ジイル基)、トリメチレン基(別名:プロパン−1,3−ジイル基)、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基などを挙げることができる。
「C2〜6アルケニレン基」としては、ビニレン基(別名:エテン−1,2−ジイル基)、プロペニレン基(別名:プロパ−1−エン−1,3−ジイル基)、2−ブテニレン基(別名:ブタ−2−エン−1,4−ジイル基)、1−メチル−1−ブテニレン基(別名:ペンタ−3−エン−1,4−ジイル基)などを挙げることができる。
置換基を有するアルキレン基または置換基を有するアルケニレン基において、置換基となり得る好ましい基としては、 フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子; メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基などのC1〜6アルキル基; シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのC3〜6シクロアルキル基; メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、t−ブトキシ基などのC1〜6アルコキシ基; 水酸基; クロロメチル基、クロロエチル基、トリフルオロメチル基、1,2−ジクロロ−n−プロピル基、1−フルオロ−n−ブチル基、パーフルオロ−n−ペンチル基などのC1〜6ハロアルキル基;などを挙げることができる。
【0111】
−(CH2)q−X−(CH2)q− で表される基の具体例としては、 −CH2−O−CH2−、−CH2−O−(CH2)2−、−(CH2)2−O−(CH2)2−、−CH2−O−(CH2)3−、−(CH2)2−O−(CH2)3−、−(CH2)3−O−(CH2)3−、−CH2−NH−CH2−、−CH2−NH−(CH2)2−、−(CH2)2−NH−(CH2)2−、−CH2−NH−(CH2)3−、−(CH2)2−NH−(CH2)3−、−(CH2)3−NH−(CH2)3−、−CH2−S−CH2−、−CH2−S−(CH2)2−、−(CH2)2−S−(CH2)2−、−CH2−S−(CH2)3−、−(CH2)2−S−(CH2)3−、−(CH2)3−S−(CH2)3− などを挙げることができる。
【0112】
<Rb
bは、水素原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
【0113】
bにおける「C1〜6アルキル基」、「C6〜10アリール基」、および「ヘテロアリール基」としては、R1において挙げた「C1〜6アルキル基」、「C6〜10アリール基」、および「ヘテロアリール基」と同じものを挙げることができる。
bにおける「C2〜6アルケニル基」および「C2〜6アルキニル基」としては、R2において挙げた「C2〜6アルケニル基」および「C2〜6アルキニル基」と同じものを挙げることができる。
bにおける「C7〜14アラルキル基」としては、ベンジル基、フェネチル基、3−フェニルプロピル基、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基などを挙げることができる。
【0114】
<Rc
cは、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
【0115】
cにおける「C1〜6アルキル基」、「C6〜10アリール基」、および「ヘテロアリール基」としては、R1において挙げた「C1〜6アルキル基」、「C6〜10アリール基」、および「ヘテロアリール基」と同じものを挙げることができる。
cにおける「C2〜6アルケニル基」および「C2〜6アルキニル基」としては、R2において挙げた「C2〜6アルケニル基」および「C2〜6アルキニル基」と同じものを挙げることができる。
cにおける「C7〜14アラルキル基」としては、Rbにおいて挙げた「C7〜14アラルキル基」と同じものを挙げることができる。
【0116】
Arは、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基を示す。
Arにおける「C6〜10アリール基」としては、R1において挙げた「C6〜10アリール基」と同じものを挙げることができる。
【0117】
式(II)中、*は、それが付された不斉炭素が光学活性であることを示す。本発明において、光学活性とは、特定の光学異性体の存在率が50%より大きいことを意味する。本発明においては、特定の光学異性体の存在率は、75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
【0118】
上記の式(II)で表される光学活性アミノ酸誘導体は、下記の式(III)で表されるα,β−不飽和アルデヒド誘導体と、下記の式(IV)で表されるグリシン誘導体とを、塩基を含有する溶媒中、本発明の光学活性4級アンモニウム塩の存在下にて反応を行うことで製造することができる。
【0119】
【化26】

(式(III)中、Raは、前記と同じ意味を示す。)
【0120】
【化27】

(式(IV)中、Ar、Rb、およびRcは、前記と同じ意味を示す。)
【0121】
本発明に係る光学活性アミノ酸誘導体の製造方法は、さらに、下記の式(II-1)で表される光学活性アミノ酸誘導体または式(II-2)で表される光学活性アミノ酸誘導体の製造方法を包含する。
【0122】
【化28】

(式(II-1)中、Ra、Rb、およびRcは、前記と同じ意味を示す。破線と実線の二重線で表される結合は、単結合または二重結合を示す。)
【0123】
【化29】

(式(II-2)中、Ra、Rb、およびRcは、前記と同じ意味を示す。破線と実線の二重線で表される結合は、単結合または二重結合を示す。)
【0124】
<式(II-1)および式(II-2)で表される光学活性アミノ酸誘導体>
式(II-1)または式(II-2)で表される光学活性アミノ酸誘導体は、上記の式(II)で表される光学活性アミノ酸誘導体中のN−ジフェニルメチレン基を脱保護後に、環化させることで製造できる。
グリシン誘導体のα位上で、不斉マイケル付加反応が進行すると、環構造上の連続する2箇所の立体も同時に制御される。立体が制御された結果、グリシン誘導体由来のアミノ基と、α,β−不飽和アルデヒド由来のカルボニル炭素が近接する位置に配置される。その結果、窒素上置換基の脱保護にともない環化反応が円滑に進行し、式(II-1)または式(II-2)で表される二環性の光学活性アミノ酸誘導体が、効率的に得られる。
【0125】
本反応は、有機溶媒と塩基水溶液との2溶液二相系若しくは有機溶媒に単体の塩基を分散・スラリー化させた1溶液二相系での相間移動反応条件下に行うことができる。
式(IV)で表されるグリシン誘導体(以下、グリシン誘導体(IV))/式(I)で表される光学活性4級アンモニウム塩(以下、不斉触媒(I))のモル比は、好ましくは20,000/1〜10/1、より好ましくは5,000/1〜20/1、さらに好ましくは2,000/1〜50/1である。
グリシン誘導体(IV)/式(III)のα,β−不飽和アルデヒド誘導体(以下、不飽和アルデヒド誘導体(III))のモル比は、好ましくは1/0.75〜1/10、より好ましくは1/1〜1/5、さらに好ましくは1/1.1〜1/3である。
また、グリシン誘導体(IV)/塩基のモル比は、好ましくは1/1〜1/100、より好ましくは1/1〜1/10、さらに好ましくは1/1.1〜1/5である。
【0126】
塩基としては、無機塩基または有機塩基を用いることができる。無機塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、水酸化カリウム、炭酸カリウム、カリウムメトキシド、カリウムエトキシド、カリウムter−ブトキシド、水酸化セシウム、炭酸セシウムなどを挙げることができる。有機塩基としては、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、ジアザビシクロノネン(DBN)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、ホスファゼン塩基類などを挙げることができる。これらの塩基は、一種単独で若しくは二種以上を混合して使用することができる。塩基を水溶液として使用する場合には、その濃度(w/w)は、5%から過飽和までの範囲で適宜に設定できるが、好ましくは10%〜飽和濃度である。
【0127】
溶媒としては、2溶液二相系で反応を行う場合には、ヘキサン、シクロへキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの炭化水素系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼンなどの塩素系溶媒の非水溶性溶媒などを挙げることができる。これらのうち、ヘキサン、シクロへキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの炭化水素系溶媒が好ましい。これらの溶媒は、一種単独で若しくは二種以上を混合して用いることができる。
【0128】
1溶液二相系で反応を行う場合には、前記の溶媒に加えて、アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリジン−2−オン(NMP)、N,N'−ジメチルイミダゾリジン−2−オン(DMI)などのアミド系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、アニソールなどのエーテル系溶媒を挙げることができる。使用される溶媒の体積(L)は、グリシン誘導体(IV)の重量(kg)に対して、体積(L)/重量(kg)で、好ましくは1.0〜100L/kg、より好ましくは5〜30L/kgである。なお、前記のいずれかの有機溶媒を使用することが一般的であるが、有機溶媒を使用せずに塩基水溶液だけで反応を行うことも可能である。当該反応は攪拌しながら行うことができる。反応温度は、好ましくは溶媒の融点から沸点までの適宜な温度、より好ましくは−20℃〜60℃である。反応時間は反応速度に応じて適宜に設定できるが、好ましくは1〜60時間、より好ましくは1〜24時間である。
【実施例】
【0129】
以下に、実施例を示して、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0130】
[実施例1]
光学活性4級アンモニウム塩(1−25)の合成
【0131】
【化30】

【0132】
工程1 化合物(2)の合成
公知の方法で合成できる化合物(1) 2.73g(6.40mmol)をテトラヒドロフラン30mLに溶解させた。この溶液をアルゴン気流下−78℃に冷却した。この溶液にt−ブチルリチウムの1.6Nのn−ペンタン溶液20mLを20分間かけて滴下した。その後、−78℃にて30分間撹拌した。この溶液を−3℃まで昇温させ10分間撹拌した。その後、−78℃に再び冷却した。これに、ベンゾフェノン2.33g(12.8mmol)をテトラヒドロフラン15mLに溶解させてなる溶液を30分間かけて加えた。この溶液を2時間かけて室温まで昇温した。反応溶液に水10mLを加えて反応を停止させた。次いでエバポレーターにてテトラヒドロフランを留去した。得られた濃縮溶液に水を加え、塩化メチレンを用いて抽出した。塩化メチレン相を硫酸マグネシウムにて乾燥させ、ろ過した。その後、濃縮して粗結晶を得た。該粗結晶を少量のジエチルエーテルによって洗浄して、化合物(2) 3.17g(収率78.3%)を白色結晶として得た。
得られた化合物のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ =7.33-7.19 (m, 20H), 6.59(dd, J = 8.7, 17.1 Hz, 4H), 4.32 (d, J = 11.1Hz, 2H), 3.85 (m, 2H), 1.95-1.49 (m, 4H), 1.71 (s, 6H).
【0133】
工程2 化合物(3)の合成
化合物(2) 632.8mg(1.00mmol)、NBS 392.0mg(2.20mmol)をベンゼン10mlに溶解させた。この溶液を80℃まで加熱して、撹拌した。この溶液に、AIBN 51.0mg(0.30mmol)をベンゼン2mLに溶解させてなる溶液を滴下し、滴下終了後、80℃にて2時間撹拌した。これにAIBN 17.0mg(0.10mmol)をベンゼン1mLに溶解させてなる溶液を滴下し、滴下終了後、80℃にて1時間撹拌した。その後、NBS 100.0mg(0.56mmol)を添加し、添加終了後、80℃にて1時間撹拌した。次いでエバポレーターにてベンゼンを留去した。その後、残渣にジエチルエーテルを加えた。スクシンイミドが析出した。当該スクシンイミドをろ過により除去し、ろ液を水に注ぎ入れ、塩化メチレンによって抽出を行った。塩化メチレン相を硫酸ナトリウムにて乾燥させ、ろ過した。その後、濃縮して粗生成物(3) 1.00g(定量的)を得た。
得られた化合物のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ =7.35-7.17 (m, 20H), 6.87 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.66 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 4.47 (d, J = 10.4 Hz, 2H), 4.38 (d, J = 12.4 Hz, 2H), 4.00 (t, J = 11.2 Hz, 2H), 3.79 (d, J = 10.4 Hz, 2H), 3.57 (s, 2H), 1.77-1.65 (m, 4H).
【0134】
工程3 化合物(1−25)の合成
化合物(3) 300.1mg(0.38mmol)をアセトニトリル15mLに溶解させた。この溶液にピペリジン161.6mg(1.90mmol)を加え、室温にて3時間撹拌した。エバポレーターにてアセトニトリルを留去した。その後、残渣を塩化メチレンに溶解させ、希臭化水素酸水溶液にて洗浄し、次いで飽和食塩水にて洗浄した。塩化メチレン相に硫酸ナトリウムを加えて水分を除去し、ろ過した。その後、濃縮して粗生成物を得た。その粗生成物を少量の塩化メチレンに溶かし、これにn−ヘキサンを加えた。結晶が析出した。この結晶を乾燥させることによって化合物(1−25)162.7mg(収率53.7%)を得た。
得られた化合物のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ =7.45 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 6.34 (t, J = 8.0 Hz, 4H), 7.29-7.18 (m, 8H), 7.13 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.79 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.25 (s, 2H), 4.99 (d, J = 13.2 Hz, 2H), 4.30-4.26 (m, 2H), 4.09-4.05 (m, 2H), 3.42-3.37 (m, 2H), 3.30 (d, J = 13.2 Hz, 2H), 2.73-2.69 (m, 2H), 1.92-1.25 (m, 10H).
【0135】
上記の合成手法と同様の方法にて得ることができる、式(Ia)で表わされる光学活性4級アンモニウム塩の具体例を表1に示す。表1中のR1、Ra3、Rb3、R4、R5、(Ra2n、(Rb2n、およびX-は、式(I)中のR1、Ra3、Rb3、R4、R5、(Ra2n、(Rb2n、およびX-である。Phはフェニル基、Meはメチル基、Etはメチル基、tBuはt−ブチル基、およびnBuはn−ブチル基、を示す略号である。
【0136】
【化31】

【0137】
【表1】

【0138】

【0139】
表1に示した化合物の一部について1H−NMR(CDCl3, δppm)分析を行った。その結果は以下のとおりであった。
【0140】
化合物1−11
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ = 7.50 (d, J = 7.2 Hz, 4H), 7.35-7.10(m, 10H), 7.13 (d, J = 7.2 Hz, 4H), 6.91 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 6.83 (d, J = 9.2 Hz, 2H), 5.11 (d, J = 14.0 Hz, 2H), 5.04 (s, 2H), 4.36-4.27 (m, 6H), 3.22(d, J = 14.0 Hz, 2H), 1.98-1.30 (m, 16H).
【0141】
化合物1−17
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ= 7.47 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 7.35 (t, J = 8.0 Hz, 4H), 7.29-7.23(m, 8H), 7.11 (d, J = 8.0 Hz, 4H), 6.88 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.79 (d, J = 8.8 Hz, 2H), 5.35 (s, 2H), 5.06 (d, J = 13.2 Hz, 2H), 4.28-4.24 (m, 4H), 4.00-3.80 (m, 4H), 3.47-3.40 (m, 2H), 3.37 (d, J = 13.2 Hz, 2H), 2.83-2.75 (m, 2H), 1.92-1.80 (m, 4H).
【0142】
化合物1−31
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ = 7.40 (d, J = 6.8 Hz, 4H), 7.31-7.19(m, 10H), 7.11 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 6.90(d, J = 8.8 Hz, 2H), 6.77(d, J = 8.8 Hz, 4H),5.37(s, 2H), 4.76 (d, J = 12.8 Hz, 2H), 4.28-4.15 (m, 6H), 3.34 (d, J = 12.8 Hz, 2H), 2.88 (m, 2H), 2.16 (m, 2H), 1.89-1.75 (m, 6H).
【0143】
化合物1−33
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ = 7.46 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 7.35-7.20(m, 10H), 7.11 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 6.84 (m, 4H), 5.57 (s, 2H), 4.91 (d, J = 13.6 Hz, 2H), 4.28-4.18 (m, 4H), 3.83-3.82 (m, 2H), 3.33 (d, J = 13.2 Hz, 2H), 3.10-2.90 (m, 4H), 2.39-2.37 (m, 2H), 1.90-1.80 (m, 4H).
【0144】
化合物1−34
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ= 7.46 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 7.35-7.20(m, 10H), 7.11 (d, J = 7.6 Hz, 4H), 6.84 (m, 4H), 5.57 (s, 2H), 4.91 (d, J = 13.6 Hz, 2H), 4.28-4.18 (m, 4H), 3.83-3.82 (m, 2H), 3.33 (d, J = 13.2 Hz, 2H), 3.10-2.90 (m, 4H), 2.39-2.37 (m, 2H), 1.90-1.80 (m, 4H).
【0145】
化合物1−35
1H NMR (400MHz, CDCl3):δ= 7.16-7.51 (m, 18H), 6.99-7.03 (m, 2H), 6.75-6.90 (m, 4H), 5.94 (br, 1H), 4.94 (br, 1H), 4.93 (d, 2H, J = 14.0 Hz), 4.80 (d, 2H, J = 13.6 Hz), 4.14-4.34 (m, 4H), 3.88 (d, 2H, J = 14.0 Hz), 3.76-3.90 (m, 1H), 2.80-2.90 (m, 1H), 2.73 (d, 2H, J = 13.6 Hz), 2.54-2.57 (m, 2H), 1.39-2.10 (m, 8H), 0.77 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 0.40-0.58 (m, 1H).
【0146】
[実施例2]
光学活性アミノ酸誘導体の合成例
【0147】
【化32】

【0148】
工程1 シクロペンタ−1−エンカルボアルデヒド〔cyclopent-1-enecarbaldehyde〕(5)の合成
過よう素酸ナトリウム14.2g(66.4mmol)を含む水溶液100mLにジエチルエーテル75mLを加えた。これに1,2−シクロヘキサンジオール(4) 6.0g(50.6mmol)を含む水溶液25mLを滴下した。これを30分間、室温にて撹拌した。その後、これに20%水酸化カリウム水溶液20mLを滴下した。その溶液を1時間室温にて撹拌し、次いで反応を停止させた。分液操作によりジエチルエーテル相を取り出した。水層を塩化メチレン50mLにて抽出した。ジエチルエーテル相と塩化メチレン相を混ぜ合わせ、それを硫酸マグネシウムにて乾燥させ、ろ過した。その後、濃縮して粗生成物を得た。この粗生成物を減圧蒸留(b.p.80℃/15mmHg)による精製を施すことによってシクロペンタ−1−エンカルボアルデヒド(5)3.21g(収率66%)を透明液体として得た。
【0149】
工程2 光学活性アミノ酸誘導体(7)および(8)の合成
グリシン誘導体(6)88.5mg(0.30mmol)と、炭酸セシウム117.6mg(0.36mmol)と、光学活性4級アンモニウム塩(1−25)を2mol%となるようにCPME4mLに溶解してなる溶液とを混ぜ合わせ。これをアルゴン気流下0℃に冷却した。これに、化合物(5)58.8mg(0.6mmol)をCPME2mLに溶解してなる溶液を添加した。0℃にて3時間撹拌した。その後、反応溶液をpH7のリン酸緩衝溶液に注ぎ入れ、次いでジエチルエーテルを用いて抽出した。ジエチルエーテル相を硫酸マグネシウムにて乾燥させ、ろ過した。その後、濃縮することによって粗生成物を得た。この粗生成物を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1:12)による精製を施すことによって光学活性アミノ酸誘導体(7)33.6mg(収率28.6 %、82.2%ee)を白色結晶として、また光学活性アミノ酸誘導体(8)39.7mg(収率63.2%、80.2%ee)を黄色オイルとして得た。
なお、光学活性アミノ酸誘導体(7)の光学純度はHPLC(Daicel Chiralpak AD-H, hexane/2-propanol =98.7/1.3, flow rate 0.5 mL/min, λ= 254 nm, retention time: 21.9 min (major) and 23.2min (minor))によって決定した。
得られた化合物(7)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ =9.66 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.62-7.60 (m, 2H), 7.47-7.43 (m, 3H), 7.38-7.30 (m, 3H), 7.20-7.18 (m, 2H), 3.90 (d, J = 6.3 Hz, 1H), 3.03-2.99 (m, 1H), 2.86-2.79 (m, 1H), 1.92-1.78 (m, 3H), 1.58-1.55 (m, 2H), 1.43 (m, 9H), 1.34-1.28 (m, 1H).
【0150】
光学活性アミノ酸誘導体(8)の光学純度は、化合物(9)に誘導後、ベンゾイル化した化合物(10)の光学純度をHPLCにより決定し、その光学純度から推定した。
得られた化合物(8)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ =7.48 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 4.30-4.28 (m, 1H), 3.42-3.39 (m, 1H), 2.80-2.78 (m, 1H), 1.75-1.44 (m, 5H), 1.48 (m, 9H), 1.28-1.24 (m, 1H).
【0151】
[参考例1]
化合物(10)の合成
工程1 化合物(9)の合成
化合物(8)39.7mg(0.19mmol)をエタノール3mLに溶解してなる溶液に、10%パラジウム炭素40.0mgを加えた。その後、反応系内を水素で置換した。室温にて3時間撹拌した。その後、ろ過によってパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を濃縮することによって化合物(9)45.1mg(定量的)を黄色オイルとして得た。
得られた化合物(9)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ =3.30 (dd, J = 10.7, 7.1 Hz, 1H), 3.18 (d, J = 5.1 Hz, 1H), 2.57-2.54 (m, 2H), 2.47 (dd, J = 10.7, 5.9 Hz, 1H), 1.94 (br, 1H), 1.74-1.53 (m, 7H), 1.47 (s, 9H).
【0152】
工程2 化合物(10)の合成
化合物(10)45.1mg(0.19mmol)をアセトニトリル2mLに溶解してなる溶液に、テトラメチルエチレンジアミン42.8μL、および1−メチルイミダゾール22.5μLを加え、アルゴン気流下で0℃に冷却した。この溶液に塩化ベンゾイル26.2μLを加え、0℃にて2時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、その残渣を少量の塩化メチレンに溶かし、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1:2)による精製を施すことによって化合物(10)33.6mg(収率56.2%、80.2%ee)を透明なオイルとして得た。
化合物(10)の光学純度はHPLC(Daicel Chiralpak AD-H, hexane/2-propanol =90/10, flow rate 0.8 mL/min, λ= 254 nm, retention time: 13.4 min (minor) and 16.2min (major))によって決定した。
得られた化合物(10)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400 MHz, d-DMSO(140℃)): δ =7.41 (m, 5H), 4.16 (m, 1H), 3.67 (dd, J = 11.5, 7.5 Hz, 1H), 3.35 (m, 1H), 2.80-2.67 (m, 2H), 2.80-1.59 (m, 6H), 1.41 (s, 9H).
【0153】
[実施例3]
光学活性アミノ酸誘導体の合成例
【0154】
【化33】

【0155】
グリシン誘導体(11)84.4mg(0.30mmol)、炭酸セシウム117.6mg(0.36mmol)と、光学活性4級アンモニウム塩(1−25)を2mol%となるようにCPME4mLに溶解してなる溶液を、アルゴン気流下で0℃に冷却した。これに、化合物(5)58.8mg(0.6mmol)をCPME2mLに溶解してなる溶液を添加した。これを0℃にて3時間撹拌した。その後、反応溶液を氷水に注ぎ、ジエチルエーテルを用いて抽出した。ジエチルエーテル相を硫酸ナトリウムにて乾燥させ、ろ過した。その後、濃縮することによって粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1:10)による精製を施すことによって光学活性アミノ酸誘導体(12)44.8mg(収率39.6%、77.1%ee)を透明なオイルとして、また光学活性アミノ酸誘導体(13)29.7mg(収率50.7%、77.7%ee)を白色結晶として得た。
なお、光学活性アミノ酸誘導体(12)の光学純度はHPLC(Daicel Chiralpak AD-H, hexane/2-propanol =90/10, flow rate 0.5 mL/min, λ= 254 nm, retention time: 12.0 min (major) and 14.8min (minor))によって決定した。
得られた化合物(12)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ =9.66 (d, J = 2.8 Hz, 1H), 7.62-7.60 (m, 2H), 7.46-7.43 (m, 3H), 7.38-7.30 (m, 3H), 7.20-7.18 (m, 2H), 4.98 (m, 1H), 3.97 (d, J = 6.4 Hz, 1H), 3.04-3.01 (m, 1H), 2.84 (m, 1H), 1.87-1.79 (m, 2H), 1.59-1.50 (m, 2H), 1.35-1.27 (m, 2H), 1.19(dd, J = 4.8, 6.4 Hz, 6H).
【0156】
光学活性アミノ酸誘導体(13)の光学純度は、化合物(14)に誘導後、ベンゾイル化した化合物(15)の光学純度をHPLCにより決定し、その光学純度から推定した。
得られた化合物(13)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ =7.50 (s, 1H), 5.04 (m, 1H), 4.37-4.34 (m, 1H), 3.43 (m, 1H), 2.81 (m, 1H), 1.74-1.50 (m, 6H), 1.26 (d, J = 6.8 Hz, 6H).
【0157】
[参考例2]
化合物(15)の合成
工程1 化合物(14)の合成
化合物(13)29.7mg(0.15mmol)をエタノール2mLに溶解してなる溶液に、10%パラジウム炭素29.7mgを加えた。次いで反応系内を水素で置換した。これを室温にて2時間撹拌した。その後、ろ過によってパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を濃縮することによって化合物(14)20.2mg(収率67.3%)を透明なオイルとして得た。
得られた化合物(14)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ =5.02 (m, 1H), 3.29 (dd, J = 7.2, 4.8 Hz, 1H), 3.22 (d, J = 5.6 Hz, 1H), 2.61-2.54 (m, 2H), 2.47 (dd, J = 5.6, 5.2 Hz, 1H), 2.10 (br, 1H), 1.75-1.41 (m, 6H), 1.24 (dd, J = 2.4, 3.2 Hz, 6H).
【0158】
工程2 化合物(15)の合成
化合物(14)20.2mg(0.10mmol)をアセトニトリル1mLに溶解してなる溶液に、テトラメチルエチレンジアミン17.8mg、および1−メチルイミダゾール12.8mgを加え、アルゴン気流下で0℃に冷却した。この溶液に塩化ベンゾイル17.3mgを加え、0℃にて2時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、その残渣を少量の塩化メチレンに溶かし、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1:2)による精製を施すことによって化合物(15)24.1mg(収率78.1%、77.7%ee)を黄色オイルとして得た。
化合物(15)の光学純度はHPLC(Daicel Chiralpak AD-H, hexane/Ethanol =80/20, flow rate 0.8 mL/min, λ= 254 nm, retention time: 9.3 min (major) and 10.1min (minor)).によって決定した。
得られた化合物(15)のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (500MHz, d-DMSO(140℃)): δ =7.42 (m, 5H), 4.92 (m, 1H), 4.26 (s, 1H), 3.70 (m, 1H), 3.37(m, 1H), 2.75-2.69 (m, 2H), 2.03-1.92 (m, 1H), 1.90-1.70 (m, 2H), 1.61-1.59 (m, 2H), 1.45-1.39 (m, 1H), 1.22 (t, 6H).
【0159】
[実施例4]
実施例3の工程1において用いた溶媒をアニソールに変更して、実施例3と同じ手順で反応を行った。
化合物(6)88.5mg(0.30mmol)と、炭酸セシウム117.6mg(0.36mmol)と、光学活性4級アンモニウム塩(1−25)を2mol%となるようにアニソール5mLに溶解してなる溶液とを混ぜ合わせ、アルゴン気流下で0℃に冷却した。これに、化合物(5)58.8mg(0.6mmol)をアニソール1mLに溶解してなる溶液を添加した。3℃〜8℃にて5.5時間撹拌した。次いで、反応溶液を氷水に注ぎ、ジエチルエーテルを用いて抽出した。ジエチルエーテル相を硫酸ナトリウムにて乾燥させ、ろ過した。その後、濃縮することによって粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1:12)による精製を施すことによって化合物(7)29.9mg(収率25.5%、80.6%ee)を白色結晶として、また化合物(8)40.2mg(収率64.0%、83.9%ee)を黄色オイルとして得た。
化合物(7)の光学純度は、HPLCにより決定した。
化合物(8)の光学純度は、実施例2と同じ手法で、化合物(10)の光学純度をHPLCにより決定し、その光学純度から推定した。
【0160】
[実施例5]
実施例3の工程1において、溶媒をジイソプロピルエーテルに変更して同様の反応を行った。
化合物(6)88.5mg(0.30mmol)と、炭酸セシウム117.6mg(0.36mmol)と、光学活性4級アンモニウム塩(1−25)を2mol%となるようにジイソプロピルエーテル5mLに溶解してなる溶液を混ぜ合わせ、アルゴン気流下で0℃に冷却した。これに、化合物(5)58.8mg(0.6mmol)をジイソプロピルエーテル1mLに溶解してなる溶液を添加した。0℃にて40.5時間撹拌した。次いで反応溶液を氷水に注ぎ、ジエチルエーテルを用いて抽出した。ジエチルエーテル相を硫酸ナトリウムにて乾燥させ、ろ過した。その後、濃縮することによって粗生成物を得た。この粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘキサン=1:12)による精製を施すことによって化合物(7)50.5mg(収率43.0%、82.7%ee)を白色結晶として、また化合物(8)24.5mg(収率39.0%、86.9%ee)を黄色オイルとして得た。
化合物(7)の光学純度は、HPLCにより決定した。
化合物(8)の光学純度は、実施例2と同じ手法で、化合物(10)の光学純度をHPLCにより決定し、その光学純度から推定した。
【0161】
これらの結果から、本発明に係る光学活性な4級アンモニウム塩を不斉触媒として用いると、目的とする光学活性アミノ酸誘導体を高収率且つ高光学純度で合成できることがわかる。
【0162】
[実施例6]
実施例4において、溶媒をトルエンに変更して同様の反応を行った。
化合物(8)を収率73%、89%eeで得た。
[実施例7]
実施例4において、溶媒をトリフルオロメチルベンゼンに変更して同様の反応を行った。
化合物(8)を収率58%、90%eeで得た。
[実施例8]
実施例4において、炭酸セシウムを水酸化バリウムに変更して同様の反応を行った。
化合物(8)を収率46%、84%eeで得た。
[実施例9]
実施例4において、光学活性4級アンモニウム塩を化合物1−35に変更して同様の反応を行った。
化合物(8)を収率58%、90%eeで得た。
【0163】
[実施例10]
光学活性4級アンモニウム塩(2−15)の合成
【0164】
【化34】

【0165】
【化35】

【0166】
公知の方法で合成できる化合物(16)300mg(0.55mmol)と化合物(1)105mg(0.25mol)を、酢酸パラジウム5.6mg(5mol%)および2-Dicyclohexylphosphino-2',6'-dimethoxybiphenyl 20.5mg(10mol%)からなる金属触媒存在下、リン酸三カリウム424mg(4当量)を塩基として用い、トルエン溶媒5mL中で90℃に加熱して2日間攪拌した。反応終了後、抽出・乾燥・濃縮操作を行った。更に粗生成物をカラムクロマトグラフィーにて精製し(ヘキサン:酢酸エチル=20:1)、化合物(17)300mgを得た(収率94%)。化合物(17)から目的とする光学活性4級アンモニウム塩(2−15)にいたる合成は、上記の光学活性4級アンモニウム塩(1−25)の合成方法と同様の方法を用いることで、目的とする光学活性4級アンモニウム塩(2−15)を合成した。
得られた化合物のNMRデータを以下に示す。
1H NMR (400MHz, CDCl3): δ =8.70 (br, 2H, ArH), 8.45 (br, 4H, ArH), 8.04 (br, 4H, ArH), 7.80-7.90 (m, 10H, ArH), 7.45-7.52 (m, 4H, ArH), 7.35 (br, 2H, ArH), 7.28 (s, 2H, ArH), 7.14-7.19 (m, 2H, ArH), 7.03 (d, 2H, J = 8.8 Hz, Ar-H), 6.41 (d, 2H, J = 8.4 Hz, Ar-H), 4.70-4.78 (m, 4H, ArCH2N), 4.43-4.56 (m, 4H, CH2O), 4.35 (d, 2H, J = 13.6 Hz, ArCH2N), 3.61 (d, 2H, J = 13.2 Hz, ArCH2N), 1.89-2.12 (m, 4H, CH2).
【0167】
上記の合成手法と同様の方法にて得ることができる、式(Va)で表わされる光学活性4級アンモニウム塩の具体例を表2に示す。表2中のRa3、Rb3、(Ra2n、(Rb2n、(Ra6)k、(Rb6)k、およびX-は、式(Va)中のRa3、Rb3、(Ra2n、(Rb2n、(Ra6)k、(Rb6)k、およびX-である。Phはフェニル基、Meはメチル基、Etはメチル基、tBuはt−ブチル基、およびnBuはn−ブチル基、を示す略号である。
【0168】
【化36】

【0169】
【表2】

【0170】
[実施例11]
実施例4において、溶媒をジイソプロピルエーテルに変更し、さらに光学活性4級アンモニウム塩を化合物(2−15)に変更して同様の反応を行った。
化合物(8)を収率56%、87%eeで得た。
【0171】
これらの結果から、本発明に係る光学活性な4級アンモニウム塩を不斉触媒として用いると、目的とする光学活性アミノ酸誘導体を高収率且つ高光学純度で合成できることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表される光学活性な4級アンモニウム塩。



〔式(I)中、
1は、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC3〜8シクロアルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。

2は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。
nは、それぞれ独立に、R2の数を示し且つ0〜2のいずれかの整数である。nが2のとき、R2同士は互いに同一であってもよいし、相異なっていてもよい。

a3およびRb3は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。
a3とRb3は、一緒になって2価の有機基を形成してもよい。

4およびR5は、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基を示す。
4とR5は、一緒になって2価の有機基を形成してもよい。

*は、それが付された不斉軸が光学活性であることを示す。
-は、水酸化物イオン、ハロゲン原子系イオン、スルホン酸系イオン、リン酸系イオン、またはカルボン酸系イオンを示す。〕
【請求項2】
式(I)において、
a3とRb3は、それらが一緒になって形成する2価の有機基であり、
該2価の有機基が、C2〜6アルキレン基、−O−(CH2)m−O− (mは1〜6のいずれかの整数である。)、または −O−(CH2CH2O)p− (pは2〜3のいずれかの整数である。)である、請求項1に記載の光学活性な4級アンモニウム塩。
【請求項3】
式(I)において、
4とR5は、それらが一緒になって形成する2価の有機基であり、
該2価の有機基が、C3〜6アルキレン基、または −(CH2)q−X−(CH2)q− (qは、それぞれ独立に、1〜6のいずれかの整数である。Xは、オキソ基、チオ基、またはイミノ基を示す。)である、請求項1または2に記載の光学活性4級アンモニウム塩。
【請求項4】
式(V)で表される光学活性な4級アンモニウム塩。



〔式(V)中、
2は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。
nは、それぞれ独立に、R2の数を示し且つ0〜2のいずれかの整数である。nが2のとき、R2同士は互いに同一であってもよいし、相異なっていてもよい。
a3およびRb3は、それぞれ独立に、水酸基、ハロゲン原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、または無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルコキシ基を示す。
a3とRb3は、一緒になって2価の有機基を形成してもよい。
6は、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基を示す。
kは、それぞれ独立に、R6の数を示し且つ2〜5のいずれかの整数である。kが2のとき、R6同士は互いに同一であってもよいし、相異なっていてもよい。
*は、それが付された不斉軸が光学活性であることを示す。
-は、水酸化物イオン、ハロゲン原子系イオン、スルホン酸系イオン、リン酸系イオン、またはカルボン酸系イオンを示す。〕
【請求項5】
式(V)において、
a3とRb3は、それらが一緒になって形成する2価の有機基であり、
該2価の有機基が、C2〜6アルキレン基、−O−(CH2)m−O− (mは1〜6のいずれかの整数である。)、または −O−(CH2CH2O)p− (pは2〜3のいずれかの整数である。)である、請求項4に記載の光学活性な4級アンモニウム塩。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかひとつに記載の光学活性4級アンモニウム塩を含んで成る不斉触媒。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかひとつに記載の光学活性4級アンモニウム塩の存在下に、不斉反応を行うことを含む、光学活性化合物の製造方法。
【請求項8】
塩基を含有する溶媒中、請求項1〜5のいずれかひとつに記載の光学活性4級アンモニウム塩の存在下に、 式(III)で表されるα,β−不飽和アルデヒド誘導体と、 式(IV)で表されるグリシン誘導体とを反応させることを含む、 式(II)で表される光学活性アミノ酸誘導体の製造方法。



(式(III)中、Raは、2価の有機基を示す。)



(式(IV)中、
bは、水素原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
cは、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
Arは、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基を示す。)



(式(II)中、Ra、Rb、Rc、およびArは、前記と同じ意味を示す。
*は、それが付された不斉炭素が光学活性であることを示す。)
【請求項9】
塩基を含有する溶媒中、請求項1〜5のいずれかひとつに記載の光学活性な4級アンモニウム塩の存在下に、 式(III)で表されるα,β−不飽和アルデヒド誘導体と、 式(IV)で表されるグリシン誘導体とを反応させることを含む、式(II-1)または式(II-2)で表される光学活性アミノ酸誘導体の製造方法。



(式(III)中、Raは、2価の有機基を示す。)



(式(IV)中、
bは、水素原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
cは、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
Arは、それぞれ独立に、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基を示す。)





(式(II-1)および(II-2)中の、Ra、Rb、およびRcは、前記と同じ意味を示す。破線と実線の二重線で表される結合は、単結合または二重結合を示す。)
【請求項10】
式(II-1)または式(II-2)で表される光学活性アミノ酸誘導体。





(式(II-1)および式(II-2)中、
aは、2価の有機基を示す。
bは、水素原子、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
cは、無置換の若しくは置換基を有するC1〜6アルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルケニル基、無置換の若しくは置換基を有するC2〜6アルキニル基、無置換の若しくは置換基を有するC7〜14アラルキル基、無置換の若しくは置換基を有するC6〜10アリール基、または無置換の若しくは置換基を有するヘテロアリール基を示す。
破線と実線の二重線で表される結合は、単結合または二重結合を示す。)

【公開番号】特開2013−63942(P2013−63942A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2627(P2012−2627)
【出願日】平成24年1月10日(2012.1.10)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】