説明

光学活性4級アンモニウム担持ポリマーとその製造方法ならびに光学活性アミノ酸類の製造方法

【課題】本発明の課題は、十分な化学収率・鏡像異性体過剰率を発現しかつ再使用可能なポリマー担持型不斉相間移動触媒(光学活性アンモニウムカチオン担持ポリマー)及びその製造方法、を提供することである。
【解決手段】式(1)
【化1】



(式中のAは、光学活性4級アンモニウムカチオン残基を表す。Bは、置換基を有してもよいフェニレン等の2価基を表す。Zは、アルキレン等の2価基を表し、nは0〜10の整数を表す。Rは、水素原子等を表す。)
で表される繰り返し単位を、含有することを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒の回収・再利用を容易にする触媒を担持したポリマーに関し、不斉相間移動触媒として有用な光学活性4級アンモニウム塩を担持したポリマー及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆる不斉相間移動触媒として機能する様々な光学活性4級アンモニウム塩が開発され、相間移動反応による光学活性化合物の合成が可能になった。しかし、これらの光学活性アンモニウム塩は高価であり、その使用量も少なくなく、生成物との分離・回収・再使用は困難であり、実用化には課題があった。
【0003】
このため、反応後反応系からの分離を容易にし、場合によっては再利用するため、ポリマーに担持された不斉相間移動触媒が発明されている。
例えば、特許文献1には、ポリエチレングリコールリンカーを有するポリスチレン担持光学活性アンモニウム塩、その製造方法、それから成るポリマー担持型光学活性相間移動触媒(以下、何らかのポリマーに担持された不斉相間移動触媒をポリマー触媒と呼称する場合がある)及びその触媒を用いる化学反応方法についての発明が開示されている。この文献法では、ポリエチレングリコールリンカーの末端のクロロメチルフェニル基を(−)−シンコニジンのキヌクリジン骨格の窒素原子に反応させて、光学活性4級アンモニウム塩を生成させると同時に高分子担持を行って、ポリマー触媒を得ている。
【0004】
しかし、特許文献1記載のポリマー触媒では、生成物であるアミノ酸誘導体の鏡像異性体過剰率が十分でなく、ポリマー触媒が再使用可能であるとの記載もない。
【0005】
また、非特許文献1では、特許文献1と類似の方法によってクロロメチル基を有する樹脂にシンコニジンを担持させたポリマー触媒を調製している。
【0006】
しかし、非特許文献1記載のポリマー触媒は汎用性に乏しく(Table3.)、ポリマー触媒の再使用についてはこれに関する実験を化学収率・光学収率がいずれも中程度の実施例(Table2.Entry11〜13)を対象にして行っているため再使用可能であると明確な判断はできない。
【0007】
さらに、非特許文献2には、樹脂末端のクロロメチルフェニル基の塩素と光学活性4級アンモニウム塩であるN−9−アントラセニルメチルシンコニジニウムクロリドの水酸基を反応させて形成させたエーテル結合によって該光学活性4級アンモニウム塩を樹脂に担持させ、ポリマー触媒を得ている。
【0008】
非特許文献2記載のポリマー触媒は高い鏡像異性体過剰率(93〜94%ee)でアミノ酸誘導体を与えている。しかし、反応温度が低く(−40〜−50℃)、塩基には高価な水酸化セシウムを用いることから実用化には不利であり、またこのポリマー触媒が再使用可能であるとの記載もない。
【0009】
また、従来技術では触媒能を発揮する分子を共有結合によって高分子に担持させるため、修飾し易い官能基を有するシンコナアルカロイド起源の4級アンモニウム塩誘導体の担持は可能であったが、近年開発された単分子で高い触媒能を発現するように立体的にデザインされた不斉相間移動触媒をその立体構造に影響せずにポリマー担持することは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002−265526号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Tetrahedron Letters, 47(2006) 3239-3243
【非特許文献2】Synthesis, 2001, 1742-1746
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、十分な化学収率・鏡像異性体過剰率を発現し、かつ再使用可能なポリマー担持型不斉相間移動触媒である光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマー、その製造方法及びその使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、光学活性4級アンモニウム塩類を高分子化合物に効果的に担持させる方法を鋭意検討した結果、スルホネートを置換させた高分子化合物が光学活性4級アンモニウム塩類を安定に担持すること、及び、該高分子化合物は高い不斉誘起能を維持したまま再利用可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち本発明は、
1.式(1)
【化1】


(式中のAは、光学活性4級アンモニウムカチオン残基を表す。Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を表し、nは0〜10の整数を表し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。但し、Bと(Z)との結合及び(Z)とSOとの結合は、光学活性4級アンモニウムカチオンを用いる反応条件下においても開裂することがない化学的に許容される範囲の結合を表す。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)
で表される繰り返し単位を、含有することを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーや、
2.式(1)が、式(2)
【化2】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基又はC1〜C6アルコキシ基を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。A、R、Z及びnは、前記式(1)と同一のものを表す。)で表される繰り返し単位であることを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーや、
3.式(3)
【化3】


(Qは、水素原子、エステル、アミド又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表される繰り返し単位を、さらに含有することを特徴とする1.又は2.に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーや、
4.式(4)
【化4】


(Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表される単位を、さらに含有することを特徴とする3.に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーに関するものであり、
5.光学活性4級アンモニウムカチオン残基が、式(5)
(5)
(式中、R〜Rは有機基であって、いずれも窒素原子と結合する有機基を表す。R〜Rが全て同一である場合、R〜Rのうち2個は互いに結合し、少なくとも1個の軸不斉を有する。 R〜Rのうち、全てが同一でないか、2個又は3個が同一である場合は、R〜Rは互いに結合していてもよく、少なくとも1個の不斉炭素を有し、及び/又は、少なくとも1個の軸不斉を有する。)
で表される光学活性4級アンモニウムカチオン残基であることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーや、
6.光学活性4級アンモニウムカチオン残基が、シンコナアルカロイドのアンモニウム誘導体、スピロアンモニウム誘導体、ビススピロアンモニウム誘導体、アゼピンのジアルキルオニウム誘導体又は4,5−ジ(アミノメチル)−[1,3]ジオキソランのジアンモニウム誘導体であることを特徴とする5.に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーに関する。
【0015】
また、本発明は、
7.式(6)
【化5】

(式中のAは、光学活性4級アンモニウムカチオン残基を表す。Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を表し、nは0〜10の整数を表し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表される光学活性4級アンモニウムスルホネート塩エチレン誘導体の単量体(A)(以下、本明細書中で「エチレン誘導体単量体(A)」ということがある。)及び式(7)
【化6】


(Qは、水素原子、エステル、アミド又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表されるエチレン誘導体の単量体(B)(以下、本明細書中で「エチレン誘導体単量体(B)」ということがある。)とを、共重合させることを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法や、
8.式(6)が、式(8)
【化7】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基又はC1〜C6アルコキシ基を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。A、R、Z及びnは、前記式(7)と同一のものを表す。)であることを特徴とする7.に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法や、
9.式(9)
【化8】


(Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基、又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表されるジビニルベンゼン誘導体の単量体(C)(以下、本明細書中で「ジビニルベンゼン誘導体単量体(C)」ということがある。)をさらに含有させて、共重合させることを特徴とする7.又は8.に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法に関するものである。
【0016】
さらに、本発明は、
10.式(1’)
【化9】

(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属のイオンを表す。Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を表し、nは0〜10の整数を表し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、C1〜6アルキル基又はC2〜6アルケニル基を表す。)で表される繰り返し単位を含有するポリマーと、式(10)
(10)
(式中のAは、光学活性4級アンモニウムカチオンを表す。Xはハロゲン原子、有機酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、重炭酸又は炭酸のアニオンを表す。)で表される光学活性4級アンモニウム塩を、溶媒中で混合することを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法や、
11.式(1’)が、式(2’)
【化10】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1〜6アルキル基又はC1〜6アルコキシ基を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。M、R、Z及びnは、前記式(1’)と同一のものを表す。)であることを特徴とする10.に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法に関するものである。
【0017】
さらに本発明は、
12.光学活性4級アンモニウムカチオンが、式(5)
(5)
(式中、R〜Rは有機基であって、いずれも窒素原子と結合する有機基を表す。R〜Rが全て同一である場合、R〜Rのうち2個は互いに結合し、少なくとも1個の軸不斉を有する。R〜Rのうち、全てが同一でないか、2個又は3個が同一である場合は、R〜Rは互いに結合していてもよく、少なくとも1個の不斉炭素を有し、及び/又は、少なくとも1個の軸不斉を有する。)
で表される光学活性4級アンモニウムカチオンであることを特徴とする7.〜11.のいずれかに記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法や、
13.光学活性4級アンモニウムカチオンが、シンコナアルカロイドのアンモニウム誘導体、スピロアンモニウム誘導体、ビススピロアンモニウム誘導体、アゼピンのジアルキルオニウム誘導体、又は4,5−ジ(アミノメチル)−[1,3]ジオキソランのジアンモニウム誘導体であることを特徴とする12.に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法に関する。
【0018】
さらに本発明は、
14.1.〜6.に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーを含有してなることを特徴とする光学活性相間移動触媒、及び、
15.N−置換−グリシン誘導体と、式(Q)
L−Y (Q)
(式中、Lは有機基を、Yは脱離基を表す。)で表される化合物を、1.〜6.に記載のポリマーの存在下に処理することを特徴とする光学活性α−モノ置換−N−置換−グリシン誘導体の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーは、高い不斉誘起能を有する光学活性4級アンモニウムカチオンを安定かつ反応時の自由度を保持して担持するため、該4級アンモニウムカチオンの触媒活性を維持したまま、反応・回収・再使用が可能であり、不斉合成において極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】[実施例1]の単量体A−1のH−NMRチャートである。
【図2】[実施例1]のポリマーP−1のH−NMRチャートである。
【図3】[実施例2]の単量体A−2のH−NMRチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(1)ポリマー
本発明の第一は、式(1)
【化11】


(式中のAは、光学活性4級アンモニウムカチオン残基を表す。Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を表し、nは0〜10の整数を表し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。但し、Bと(Z)との結合及び(Z)とSOとの結合は、光学活性4級アンモニウムカチオンを用いる反応条件下においても開裂することがない化学的に許容される範囲の結合を表す。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)
で表される繰り返し単位を、含有することを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーである。
【0022】
本発明のポリマーは、上記式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマーであれば、ランダム共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重合体又はこれらの混合物のいずれでもよい。
【0023】
<繰り返し単位>
上記式(1)で表される繰り返し単位において、Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。
置換基を有してもよいフェニレンの置換基としては、同一又は異なって置換数1〜4のフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、2−メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等の直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C6アルキル基;
メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、2−メチルシクロプロポキシ、シクロプロピルメトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等の直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C6アルコキシ基を挙げることができる。
【0024】
Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を表し、nは0〜10の整数を表し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。
「アルキレン」としては、C1〜C3の直鎖アルキレンが挙げられ、具体的にはメチレン、エチレン、トリメチレンが挙げられる。
「オキシアルキレン」としては、上記のアルキレンとオキソ基との結合したオキシメチレン、オキシエチレン、オキシプロピレンが挙げられる。
【0025】
但し、Bと(Z)との結合及び(Z)とSOとの結合は、光学活性4級アンモニウムカチオンを用いる反応条件下においても開裂することがない化学的に許容される範囲の結合を表す。そのため具体的には、BとZとの結合は炭素原子と炭素原子、或いは炭素原子と酸素原子との結合が好ましく、ZとSOとの結合は炭素原子と硫黄原子との結合が好ましい。
【0026】
の「C1〜C6アルキル基」の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、2−メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチル等が挙げられる。
【0027】
の「C2〜C6アルケニル基」の例としては、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、イソプロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、1−メチル−2−ブテニル、1−メチル−3−ブテニル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、3−メチル−2−ブテニル、1−ヘキセニル、2−ヘキセニル、3−ヘキセニル、4−ヘキセニル、5−ヘキセニル、2−メチル−1−ペンテニル、3−メチル−1−ペンテニル、4−メチルー1−ペンテニル、2−メチル−2−ペンテニル、3−メチル−2−ペンテニル、2−エチル−1−ブテニル、3,3−ジメチル−1−ブテニル等が挙げられる。
【0028】
さらに、本発明は、好ましくは上記の式(1)で表される繰り返し単位が、式(2)
【化12】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基又はC1〜C6アルコキシ基を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。A、R、Z及びnは、前記式(1)と同一のものを表す。)であることを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーである。
【0029】
式(2)中において、Rの「C1〜C6アルコキシ基」の例としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロプロポキシ、シクロブトキシ、2−メチルシクロプロポキシ、シクロプロピルメトキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等を挙げることができる。
【0030】
また、本発明は、式(3)
【化13】


(Qは、水素原子、エステル、アミド又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表される繰り返し単位を、さらに含有することを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーである。
【0031】
式(3)中において、Qの「エステル」の例としては、メチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル等のC1〜C6アルキルエステルが挙げられる。
Qの「置換基を有してもよいフェニル基」の置換基としては、式(1)の置換基を有してもよいフェニレンの置換基と同様のものが挙げられる。
のC1〜C6アルキル基及びC2〜C6アルケニル基は、Rで例表したものと同様を表す。
【0032】
また、本発明は、式(4)
【化14】


(式中、Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表される単位を、さらに含有することを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーであることが好ましい。
【0033】
式(4)中において、RのC1〜C6アルキル基及びC2〜C6アルケニル基は、Rで例示したものと同様のものを表す。上記の式(4)で表される単位をさらに含有することで、分岐鎖を持つポリマーを形成する。
【0034】
<光学活性4級アンモニウムカチオン>
本発明において、式中のAは、光学活性4級アンモニウムカチオン又は光学活性4級アンモニウムカチオン残基であり、光学活性4級アンモニウムカチオンは、式(5)のように「N」で表すことができる。
【0035】
中、R〜Rは有機基であって、いずれも窒素原子と結合する有機基を表す。R〜Rが全て同一である場合、R〜Rのうち2個は互いに結合し、少なくとも1個の軸不斉を有する。R〜Rのうち、全てが同一でないか、2個又は3個が同一である場合は、R〜Rは互いに結合していてもよく、少なくとも1個の不斉炭素を有し、及び/又は、少なくとも1個の軸不斉を有する。
〜Rの有機基としては、窒素原子と結合できるものであれば特に制限されず、例えば炭化水素基が挙げられ、炭化水素基としてはR〜RのC1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基、C1〜C6アルコキシ基等の飽和又は不飽和鎖状脂肪族炭化水素基が挙げられるほか、環状脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの基の複合基等があり、複合基としては例えば、環状脂肪族炭化水素基と芳香族炭化水素基が複合した多環基が挙げられる。また、有機基は炭素及び水素以外の原子を有する基であってもよく、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含む基であってもよい。
さらに、有機基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、
フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;水酸基;チオール基;シアノ基;イソシアノ基;ニトロ基;イソシアナト基、イソチオシアナト基、シアナト基、チオシアナト基、アミノ基等が挙げられる。
【0036】
光学活性4級アンモニウムカチオン源となる光学活性4級アンモニウム塩としては、具体的には、不斉相間移動触媒として公知の光学活性4級アンモニウム塩化合物が挙げられ、不斉炭素を有するもの、軸不斉を有するものがある。
このうち、軸不斉を有するものとしては、ビナフチル化合物やビフェニル化合物の誘導体があり、例えば、ビナフチル化合物としては、一般式(10)
【化15】

【0037】
(式中、nは0〜6を表し、Rは互いに同一でも異なっていてもよい有機基を表す。R同士は互いに結合して、炭素環或いは複素環を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、有機酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、重炭酸又は炭酸のアニオンを表す。)で表されるものがある。
【0038】
具体的には、光学活性4級アンモニウムのなかで不斉相間移動触媒として高い機能を有するシンコナアルカロイド類のオニウム塩誘導体である下記に表す化合物とその誘導体ならびに関連化合物
【化16】

【0039】
又は下記に表す化合物とその誘導体ならびに関連化合物を挙げることができる。
【化17】

【0040】
またビナフチル化合物としては、一般式(11)
【化18】

【0041】
(式中、nは0〜6を表す。Rは互いに同一でも異なっていてもよい有機基を表す。R同士は互いに結合して、炭素環或いは複素環を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、有機酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、重炭酸又は炭酸のアニオンを表す。)で表されるものがある。
【0042】
具体的には、アゼピンのジアルキルオニウム塩誘導体である下記に表す化合物とその誘導体ならびに関連化合物を挙げることができる。
【化19】

【0043】
また、一般式(12)
【化20】

【0044】
(式中、nは0〜6を表し、n’は0〜4を表す。Rは互いに同一でも異なっていてもよい有機基を表す。R同士は互いに結合して、炭素環或いは複素環を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、有機酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、重炭酸又は炭酸のアニオンを表す。)で表されるものがある。
【0045】
具体的には、シンコナアルカロイド類のスピロアンモニウム塩誘導体である下記に表す化合物とその誘導体ならびに関連化合物を挙げることができる。
【化21】

【0046】
ビフェニル化合物としては、一般式(13)
【化22】

【0047】
(式中、n’は0〜4を表す。Rは互いに同一でも異なっていてもよい有機基を表す。R同士は互いに結合して、炭素環或いは複素環を形成していてもよい。Xは、ハロゲン原子、有機酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、重炭酸又は炭酸のアニオンを表す。)で表されるものがある。
【0048】
アゼピンのジアルキルオニウム塩誘導体としては、具体的には、下記に表す化合物とその誘導体ならびに関連化合物を挙げることができる。
【化23】

【0049】
また、アゼピンのアンモニウム塩誘導体としては、具体的には、下記に表す化合物とその誘導体ならびに関連化合物を挙げることができる。
【化24】

【0050】
さらに、分子内に複数のアンモニウムカチオンを有する化合物としては、具体的には、下記に表す化合物とその誘導体ならびに関連化合物を挙げることができる。
【化25】

【0051】
その他、光学活性4級アンモニウムの不斉相間移動触媒として、次のものを挙げることができる。
【0052】
シンコナアルカロイド類のアンモニウム塩誘導体としては、一般式(14)
【化26】

【0053】
(式中、n”は0〜4を表す。Rは互いに同一でも異なっていてもよく、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C6〜C14アリール基を表す。Xは、ハロゲン原子、有機酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、重炭酸又は炭酸のアニオンを表す。)で表されるものがある。
式(14)中のC1〜C6アルキル基、C2〜C6アルケニル基としては、R〜Rにおける例示と同じものが挙げられる。C6〜C14アリール基としては例えば、フェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、1−アントリル、2−アントリル、9−アントリル、1−フェナントリル、2−フェナントリル、3−フェナントリル、4−フェナントリル、9−フェナントリル、10−フェナントリル等を挙げることができる。
【0054】
具体的には、下記に表す化合物とその誘導体ならびに関連化合物を挙げることができる。
【化27】

【0055】
分子内に複数のアンモニウムカチオンを有する化合物である4,5−ジ(アミノメチル)−[1,3]ジオキソランのジアンモニウム塩誘導体としては、具体的には、
【化28】

【0056】
で表される化合物とその誘導体ならびに関連化合物を挙げることができる。
これらに例表した以外にも、4級アンモニウム塩構造を有し、光学活性であるなら、もちろんこれら以外の構造の化合物も同様に用いることができる。
【0057】
(2)光学活性4級アンモニウム担持ポリマーの製造方法1
本発明の第2は、光学活性4級アンモニウム担持ポリマーの製造方法に関するものである。
すなわち、式(6)
【化29】

(式中、Aは、光学活性4級アンモニウムカチオン残基を表す。Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を表し、nは0〜10の整数を表し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表される光学活性4級アンモニウムスルホネート塩エチレン誘導体の単量体(A)及び式(7)
【化30】


(Qは、水素原子、エステル、アミド又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表されるエチレン誘導体の単量体(B)を、共重合させることで、光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーを製造方法することができる。
【0058】
<エチレン誘導体単量体(A)>
上記式(6)で表されるエチレン誘導体単量体(A)において、Bは、−COO−、−CONH−又は置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。
式(6)における、Bの置換基を有してもよいフェニレンの置換基、Zのアルキレン、オキシアルキレン、RのC1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基の具体例としては、前記式(1)と同じものが挙げられる。
但し、Bと(Z)との結合及び(Z)とSOとの結合は、光学活性4級アンモニウムカチオンを用いる反応条件下においても開裂することがない化学的に許容される範囲の結合を表す。そのため、ZとSOとの結合は炭素原子と硫黄原子とで結合する。
【0059】
<エチレン誘導体単量体(B)>
上記式(7)で表されるエチレン誘導体単量体(B)において、Qのエステル、RのC1〜C6アルキル基及びC2〜C6アルケニル基の具体例としては、前記式(3)と同じものが挙げられる。
【0060】
エチレン誘導体単量体(B)の具体例としては、
α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ジビニルベンゼン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、p−イソプロピルスチレン、2,4,6−トリイソプロピルスチレン、p−tert−ブトキシスチレン、p−tert−ブトキシ−α−メチルスチレン、m−tert−ブトキシスチレン、p−(1−エトキシエトキシ)スチレン等のスチレン誘導体;
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル誘導体を挙げることができる。
【0061】
さらに、本発明は、好ましくは上記の式(6)で表されるエチレン誘導体単量体(A)が、式(8)
【化31】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基又はC1〜C6アルコキシ基を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。A、R、Z及びnは、前記式(7)と同一のものを表す。)であることを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法である。
【0062】
式(8)中において、RのC1〜C6アルコキシ基の例としては、前記式(2)と同じものが挙げられる。
【0063】
また、本発明の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法は、上記のエチレン誘導体単量体(A)及びエチレン誘導体単量体(B)の他に、式(9)
【化32】


(Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基、又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表されるジビニルベンゼン誘導体の単量体(C)をさらに含有させて、共重合させることがより好ましい。
【0064】
式(9)中において、RのC1〜C6アルキル基及びC2〜C6アルケニル基は、Rで例表したものと同様を表す。上記の式(9)で表されるジビニルベンゼン誘導体単量体(C)をさらに含有することで、分岐鎖を持つポリマーを形成することができる。
【0065】
<重合方法>
重合方法には特に限定はないが、ラジカル重合、懸濁重合が好ましい。使用する全単量体中のエチレン誘導体単量体(A)は0.1〜30モル%、単量体(B)は70〜99.9モル%であることが好ましい。これにさらに単量体(C)を含有させる場合には、単量体(C)は0.1〜20モル%が好ましい。より好ましくは、エチレン誘導体単量体(A)が0.5〜20モル%、単量体(B)が70〜98.5モル%、単量体(C)が1〜10モル%である。
【0066】
共重合させる方法としては、例えば、重合開始剤等の触媒の存在下、単量体を溶媒に溶解させて行うことができる。
【0067】
溶媒としては、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ジエチルエーテル、tert−BuOMe、CPME、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、DMF、NMP、DMI、DMSO、水等が挙げられ、これらを適宜混合して用いることもできる。これらの中ではDMF、NMP、DMI、DMSOが好ましい。溶媒の量は、特に限定されないが、通常、単量体混合物100重量部に対して、50〜5000重量部程度であることが好ましい。
【0068】
重合開始剤としては、ペルオキシピバル酸tert−ブチル、過酸化ベンゾイル、α, α'-アゾビスイソブチロニトリル、過硫酸カリウム等が挙げられる。重合開始剤の使用量は、通常、単量体混合物100重量部に対して、0.01〜50重量部が好ましい。
【0069】
反応温度は、通常、溶媒の融点〜溶媒の沸点の範囲であれば可能であるが、0℃〜80℃が好ましく、反応雰囲気は、大気であってもよいが、適宜に窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気で行うこともできる。
【0070】
反応の終了は、薄層クロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、H−NMR等により容易に確認することができる。反応終了後は、濾過、濃縮、抽出、精製等の公知の操作により、得られた光学活性4級アンモニウム担持ポリマーを単離することができる。
【0071】
(3)光学活性4級アンモニウム担持ポリマーの製造方法2
また、別の製造方法として、本発明の光学活性4級アンモニウム担持ポリマーは、金属スルホネート塩が置換した繰り返し単位を含有する金属スルホネート塩ポリマーと光学活性4級アンモニウム塩を溶媒中で混合して得ることもできる。
【0072】
すなわち、式(1’)
【化33】

(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属のイオンを表す。Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を表し、nは0〜10の整数を表し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、C1〜6アルキル基又はC2〜6アルケニル基を表す。)で表される繰り返し単位を含有するポリマー(「金属スルホネート塩ポリマー」ということがある。)と、式(10)
(10)
(式中のAは、光学活性4級アンモニウムカチオンを表す。Xはハロゲン原子、有機酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、重炭酸又は炭酸のアニオンを表す。)で表される光学活性4級アンモニウム塩を、溶媒中で混合することを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法である。
【0073】
<繰り返し単位>
上記式(1’)で表される繰り返し単位において、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属のイオンを表す。
アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウムを、アルカリ土類金属としては、マグネシウム、カルシウムを挙げることができる。
Bにおける置換基を有してもよいフェニレンにおける置換基、Zにおけるアルキレン及びオキシアルキレン、RにおけるC1〜6アルキル基又はC2〜6アルケニル基としては、式(1)と同様のものが挙げられる。但し、Bと(Z)との結合及び(Z)とSOとの結合も、式(1)と同様に、BとZとの結合は炭素原子と炭素原子、或いは炭素原子と酸素原子との結合が好ましく、ZとSOとの結合は炭素原子と硫黄原子との結合が好ましい。
【0074】
また、本発明は、式(1’)が、式(2’)
【化34】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1〜6アルキル基又はC1〜6アルコキシ基を表し、mは0〜4の整数を表し、mが2以上である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。M、R、Z及びnは、前記式(1’)と同一のものを表す。)であることを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法であることが好ましい。
【0075】
金属スルホネート塩ポリマーは、上記式(1’)もしくは式(2’)で表される繰り返し単位に対応するエチレン誘導体単量体(エチレン誘導体単量体(A’)ということがある)及び、前述の単量体(B)及び/又は単量体(C)と共重合されてポリマーとなっていてもよく、さらに別の単量体と共重合されてポリマーとなっていてもよい。
【0076】
単量体混合物中のエチレン誘導体単量体(A’)の量は0.1〜30モル%、単量体(B)は70〜99.9モル%が好ましく、これにさらに単量体(C)を含有させる場合には、単量体(C)は0.1〜20モル%が好ましい。より好ましくは、エチレン誘導体単量体(A’)、単量体(B)と単量体(C)の混合物中の、エチレン誘導体単量体(A’)が0.5〜20モル%、単量体(B)が70〜98.5モル%、単量体(C)が1〜10モル%である。
【0077】
共重合させる方法としては、例えば、重合開始剤等の触媒の存在下、単量体混合物を溶媒に溶解させて行うことができる。
【0078】
溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、DMF、NMP、DMI、DMSO、水、等が挙げられ、これらを適宜混合して用いることもできる。これらの中ではDMF、DMSO、水、あるいはこれらの混合溶媒が好ましい。溶媒の量は、特に限定されないが、通常、単量体混合物100重量部に対して、50〜5000重量部程度であることが好ましい。
【0079】
重合開始剤、反応温度、反応の終了の確認、生成物の単離の具体例としては、前記光学活性4級アンモニウム担持ポリマーの製造方法1と同じものが挙げられる。
【0080】
<アンモニウム塩置換反応>
続いて、前記の操作により得られた金属スルホネート塩ポリマーと、式(10)
(10)
(式中のAは、光学活性4級アンモニウムカチオンを表す。Xはハロゲン原子、有機酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、重炭酸又は炭酸のアニオンを表す。)で表された光学活性4級アンモニウム塩を溶媒中で混合することにより、本発明の光学活性4級アンモニウム担持ポリマーを製造することができる。
【0081】
本発明においては、式(10)で表された光学活性4級アンモニウム塩は、光学活性4級アンモニウムカチオン(A)が、式(5)
(5)
(式中、R〜Rは有機基であって、いずれも窒素原子と結合する有機基を表す。R〜Rが全て同一である場合、R〜Rのうち2個は互いに結合し、少なくとも1個の軸不斉を有する。R〜Rのうち、全てが同一でないか、2個又は3個が同一である場合は、R〜Rは互いに結合していてもよく、少なくとも1個の不斉炭素を有し、及び/又は、少なくとも1個の軸不斉を有する。)
で表される光学活性4級アンモニウムカチオンであることが好ましい。
【0082】
さらに、上記の光学活性4級アンモニウムカチオンは、シンコナアルカロイドのアンモニウム誘導体、スピロアンモニウム誘導体、ビススピロアンモニウム誘導体、アゼピンのジアルキルオニウム誘導体、又は4,5−ジ(アミノメチル)−[1,3]ジオキソランのジアンモニウム誘導体であることが好ましい。これらの具体例は、上述の<光学活性4級アンモニウムカチオン>で例表した化合物を挙げることができる。
【0083】
アンモニウム塩置換反応に用いる溶媒は、特に制限はなく使用でき、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジエチルエーテル、tert−BuOMe、CPME、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、DMF、NMP、DMI、DMSO、水等が挙げられ、これらを適宜混合して用いることもできる。操作性の観点から、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジエチルエーテル、tert−BuOMe、CPME等の非水溶性溶媒と水の混合溶媒が好ましい。溶媒の量は、特に限定されないが、通常、金属スルホネート塩ポリマー100重量部に対して、50〜5000重量部程度であることが好ましい。
【0084】
反応温度は、通常、溶媒の融点〜溶媒の沸点の範囲であれば可能であるが、0℃〜80℃が好ましく、反応雰囲気は、大気であってもよいが、適宜に窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気で行うこともできる。
【0085】
前記溶媒中で混合する際の、[金属スルホネート塩ポリマー]:[式(10)で表される光学活性4級アンモニウム塩]のモル比は、制限無く可能であるが、操作性の観点から1,000:1から1:10が好ましく、実用的には200:1から1:2が好ましい。
【0086】
本発明の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーは、前記のいずれの方法によっても製造でき、重合度(単量体A又は単量体A’を含む単量体の総数)は20〜100,000であることが好ましく、50〜50,000であることがより好ましい。アンモニウム塩化度(光学活性4級アンモニウムカチオン/単量体の総数)は0.001〜0.3であることが好ましく、0.005〜0.2であることがより好ましい。単量体(C)を含む場合には、架橋度(単量体(C)/モノマー総数)が0.001〜0.2であることが好ましく、0.01〜0.1であることがより好ましい。
前記以外の方法によって製造する場合も、これらの重合度、アンモニウム塩化度、架橋度を有していれば、本発明の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーとして使用することができる。
【0087】
(4)不斉触媒反応
本発明の第3は、上記の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーを含有してなることを特徴とする光学活性相間移動触媒である。本発明の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーは、光学活性相間移動触媒として用いることで、各種の光学活性相間移動触媒反応を行うことができる。光学活性相間移動触媒反応としては、アルキル化、シクロプロパン化、マイケル付加、エポキシ化、酸化、還元、アルドール等の各不斉反応を挙げることができる。一般的に不斉アルキル化が好結果を与える場合が多い。
不斉アルキル化反応の具体例としては、本発明の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの存在下に、グリシン誘導体にハロアルキルに代表される各種求電子試薬を作用させ光学活性アミノ酸類の前駆体として有用な光学活性α−モノ置換−N−置換−グリシン誘導体がある。
【0088】
<光学活性α−モノ置換−N−置換−グリシン誘導体の製造方法>
光学活性α−モノ置換−N−置換−グリシン誘導体の製造方法としては、具体的には、N−置換−グリシン誘導体と、式(Q)
L−Y (Q)
(式中、Lは有機基を、Yは脱離基を表す。)で表される化合物を、上記の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの存在下に処理する方法である。
【0089】
N−置換−グリシン誘導体としては、N−(ジアリルメチレン)グリシンアルキルエステル、N−(ジアリルメチレン)グリシンアラルキルエステル等を挙げることができ、具体的には、N−(ジフェニルメチレン)グリシンtert−ブチルエステルを例表することができる。
【0090】
式(Q)においてLの有機基としては、グリシンに置換できる有機基であれば特に制限されないが、例えば炭化水素基や複素環基が挙げられ、炭化水素基としては例えば、置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C6アルキル基、置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基、置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基等を挙げることができ、複素環基としては置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリ−ル基等を挙げることができ、前記の有していてもよい置換基はR〜Rのものと同様の置換基から選ぶことができる。
【0091】
Yの脱離基としては、本発明の不斉アルキル化反応において脱離する基であれば特に制限されないが、例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲン原子を表す。
【0092】
置換基を有していてもよい直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C6アルキル基の直鎖、分岐もしくは環状のC1〜C6アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、シクロプロピル、シクロブチル、2−メチルシクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる。
【0093】
置換基を有していてもよいC6〜C14アリール基のC6〜C14アリール基の例としては、式(14)中のRのC6〜C14アリール基と同じものを挙げることができる。
【0094】
置換基を有していてもよいC3〜C8ヘテロアリ−ル基のC3〜C8ヘテロアリ−ル基としては、同一又は異なってN、O、S各原子の1〜4個を含む単環、多環又は縮合環である基が挙げられ、具体的例としては、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル、2−キノニル、3−キノニル、4−キノニル、5−キノニル、6−キノニル、7−キノニル、8−キノニル、2−インドリル、3−インドリル、4−インドリル、5−インドリル、6−インドリル、7−インドリル、2−フリル、3−フリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピロリジル、3−ピロリジル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル、5−イミダゾリル、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル、5−オキサゾリル、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル等を挙げることができる。
【0095】
置換基を有していてもよいC7〜C16アラルキル基のC7〜C16アラルキル基としては例えば、ベンジル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−メチル1−フェニルエチル、1−ナフチルメチル、2−ナフチルメチル等を挙げることができる。
【0096】
この反応は、溶媒にグリシン誘導体と式(Q)で表される化合物及び本発明の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーを添加して行う。
【0097】
溶媒には特に制限は無いが、トルエン、キシレン、メシチレン、クメン、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、ジエチルエーテル、tert−BuOMe、CPME、水等を単独あるいは混合して使用される。溶媒量にも特に限定はないが、通常、式(Q)の化合物及びポリマーの合計重量100重量部に対して、50〜5000重量部程度であることが好ましい。
【0098】
また、本反応系に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等のアルカリ性物質の1種類或いは2種類以上を添加して行うこともできる。アルカリ性物質の添加量は式(Q)の化合物に対して0.5倍mol〜50倍mol、好ましくは、1.0倍mol〜10倍molである。また、これらのアルカリ性物質は結晶のまま加えるか、水で適宜に希釈して加えることができる。水で希釈して加える場合の濃度は10%から70%(w/w)の過飽和状態まで、好ましくは30%から飽和濃度である。
【0099】
反応温度は、−20℃〜溶媒の沸点の範囲で行うことができるが、好ましくは、−10℃〜80℃程度である。一般に反応は2相系で行うため、ポリマーの破損による回収困難を招かない範囲の攪拌を与えることが好ましい。反応終了後は、通常の後処理により、目的物質を分離精製することができる。
【実施例】
【0100】
次に、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれの実施例により限定されるものではない。なお化合物の分析には次の機器を使用した。
NMR:varian INOVA−400(溶媒 CDCl
IR :日本電子 JIR−7000(試料調整 KBr)
【0101】
[実施例1]
1)単量体A−1(p−ビニルフェニルスルホン酸 N−9−アントラセニルメチルシンコニジニウム塩)の合成
【化35】

N−9−アントラセニルメチルシンコニジニウム クロリド(416.9mg、0.800mmol)とp−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウム(185.6mg、0.900mmol)を塩化メチレンと水の混合溶媒(3ml+2ml)に溶解させ、室温で10時間攪拌した。その後、反応溶液を分液し塩化メチレン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮し、p−ビニルフェニルスルホン酸 N−9−アントラセニルメチルシンコニジニウム塩(A−1)を得た(476.2mg、0.712mmol:収率89%)。
【0102】
2)ポリマー触媒P−1(スルホン酸塩型ポリスチレン固定化型シンコニジニウム塩)の合成
【化36】

重合用アンプル管にp−ビニルフェニルスルホン酸 N−9−アントラセニルメチルシンコニジニウム塩(A−1:268.0mg、0.40mmol)、スチレン(366.0mg、3.50mmol)、ジビニルベンゼン(10.4mg、0.08mmol)、AIBN(13.2mg、0.08mmol)を加え、DMF620mgに溶解させた。これを液体窒素に浸して内部の混合液を凍結させ、真空ポンプにより約15分間減圧した後、管を水中に浸して解凍させることにより系を脱気した。この操作を3回繰り返した後、封管し、60℃のオイルバス中で24時間加熱攪拌した。反応終了後、これを濾過し、得られたゲルを塩化メチレン及びメタノールで洗浄した後、40℃で10時間真空乾燥させてポリマー触媒P−1を得た(419mg:収率65%)。キラル第4級アンモニウム塩の導入率を10.1% と見積もった(0.62mmolNR/ポリマーg)。
ここにおいて、「mmolNR/ポリマーg」とは、ポリマー1g当りの4級アンモニウム塩を有する単量体部分のミリモル数を意味する。
【0103】
3)ポリマー触媒P−1による不斉アルキル化反応:光学活性N−(ジフェニルメチレン)フェニルアラニン tert−ブチルエステルの製造
【化37】

トルエン2mlに、ポリマー触媒P−1(54.6mg、0.034mmol)、N−(ジフェニルメチレン)グリシン tert−ブチルエステル(100mg、0.34mmol)、50%水酸化カリウム水溶液0.5mlを加え、0℃で15分間攪拌させた。その後、臭化ベンジル(70mg、0.41mmol)を加えて、同温でさらに10時間攪拌した。反応終了後、飽和塩化ナトリウム水溶液を加えグラスフィルターを用いてろ過し、ポリマー触媒(P−1)をジクロロメタンで洗浄した。集めたろ液を分液し、水層をジクロロメタンで抽出した。分液した有機相と抽出ジクロロメタンを合わせて硫酸マグネシウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ether/hexane=1:10)で精製し、84%収率で光学活性N−(ジフェニルメチレン)フェニルアラニンtert−ブチルエステルを得た。HPLC測定(Chiralcel OD)により、エナンチオマー過剰率は94%eeであった。
【0104】
4)ポリマー触媒P−1の回収・再使用実験
上記3)の反応後にグラスフィルター上から回収したポリマー触媒P−1を用いて、上記3)と同様の反応をさらに2回繰り返した。結果を表1に表した。
【表1】

【0105】
[実施例2]
1)単量体A−2(p−ビニルフェニルスルホン酸 (S,S)−3,4,5−トリフロロフェニル−NAS塩)の合成
【化38】

(S,S)−3,4,5−トリフロロフェニル−NAS ブロミド(416.9mg、0.800mmol)とp−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウム(185.6mg、0.900mmol)を塩化メチレンと水の混合溶媒(3ml+2ml)に溶解させ、室温で10時間攪拌した。その後、反応溶液を分液し塩化メチレン層を硫酸マグネシウムで乾燥後、ろ過・濃縮し、p−ビニルフェニルスルホン酸 (S,S)−3,4,5−トリフロロフェニル−NAS塩(A−2)を得た(476.2mg、0.712mmol:収率89%)。
【0106】
2)ポリマー触媒P−2(スルホン酸塩型ポリスチレン固定化型NAS塩)の合成
【化39】

重合用アンプル管にp−ビニルフェニルスルホン酸 (S,S)−3,4,5−トリフロロフェニル−NAS塩(A−2:407mg、0.40mmol)、スチレン(366.0mg、3.50mmol)、ジビニルベンゼン(10.4mg、0.08mmol)、AIBN(13.2mg、0.08mmol)を加え、DMF620mgに溶解させた。これを液体窒素に浸して内部の混合液を凍結させ、真空ポンプにより約15分間減圧した後、管を水中に浸して解凍させることにより系を脱気した。この操作を3回繰り返した後、封管し、60℃のオイルバス中で24時間加熱攪拌した。反応終了後、反応溶液を濾過し、得られたゲルを塩化メチレン及びメタノールで洗浄した後、40℃で10時間真空乾燥させてポリマー触媒P−2を得た(682mg:収率87%)。ポリマー触媒P−2のキラル4級アンモニウム塩導入率は10.1%と見積もった(0.51mmolNR/ポリマーg)。
元素分析:C, 82.71; H, 5.92; N, 0.68(元素分析から見積もら
れるキラル4級アンモニウム塩の導入率:9.4%)
【0107】
3)ポリマー触媒P−2による不斉アルキル化反応:光学活性N−(ジフェニルメチレン)フェニルアラニン tert−ブチルエステルの製造
実施例1のポリマー触媒P−1をポリマー触媒P−2(66.7mg、0.034mmol)に代えて、実施例1と同様に反応を行った。その結果、収率80%収で光学活性N−(ジフェニルメチレン)フェニルアラニン tert−ブチルエステルを得た。HPLC測定(Chiralcel OD)により、エナンチオマー過剰率は99%ee以上であった。
【0108】
[実施例3]
1)ナトリウムスルホネート基が置換した残基を有するスチレン単位を含有するポリマーB−1の合成
【化40】

DMSO(0.45g)にp−スチレンスルホン酸ナトリウム(82.5mg,0.4mmol)、スチレン(0.366g,3.52mmol)、ジビニルベンゼン(10.4mg,0.08mmol)及びAIBN(13.2mg,0.08mmol)を溶解させて重合用のアンプル管に導入した後、液体窒素に浸して管内の溶液を凍結させた。凍結状態を保ったまま真空ポンプで減圧下、約15分間保った後、液体窒素から取り出し、水中に浸し、融解させた。この操作を3回繰り返して系内を充分脱気した後、アンプル管を封管し、60℃で攪拌した。数時間後に架橋反応によるゲル化が観察され、全体がゲル状になった。その後も60℃を保ち41時間後にアンプル管を開管した。得られたゲルをガラスフィルター上に取り出し、水とメタノールで十分に洗浄して真空乾燥させることにより白色固体のナトリウムスルホネート基が置換した残基を有するスチレン単位を含有するポリマーB−1を得た(0.43g,95%)。ナトリウムスルホネート基の導入率を10.1% と見積もった(0.112mmolSONa/ポリマーg)。
ここにおいて、「mmolSONa/ポリマーg」とは、ポリマー1g当りのナトリウムスルホネート基を有する単量体部分のミリモル数を意味する。
【0109】
2)ポリマー触媒P−3(スルホン酸塩型ポリスチレン固定化型4級アンモニウム塩)の合成
【化41】

ナトリウムスルホネート基が置換した残基を有するスチレン単位を含有するポリマーB−1(0.128 g)と(S)−4,4−ジブチル−2,6−ビス(3,4,5−トリフルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−3H−ジナフト[2,1−c:1’,2’−e]アゼピニウムブロミド(0.100g,0.134mmol)を水/塩化メチレン(2ml/5ml)中、室温で22時間撹拌した。反応溶液を濾過して回収した固形物を塩化メチレン、水及びメタノールで十分に洗浄した後、真空乾燥させることによりポリマー触媒P−3を得た(0.166g:収率53%)。キラル4級アンモニウム塩の導入率は5.3%と見積もった (0.355mmolNR/ポリマーg)。
元素分析:C;82.55,H;6.70,N;0.52(元素分析から見積もられるキラル4級アンモニウム塩の導入率:5.6%)
【0110】
3)ポリマー触媒P−3による不斉アルキル化反応:光学活性N−(ジフェニルメチレン)フェニルアラニンtert−ブチルエステルの製造
【化42】

トルエン(10ml)にN−(ジフェニルメチレン)グリシンtert−ブチルエステル(0.53g,1.78mmol)、ポリマー触媒P−3(0.05g,0.0178mmol)及び水酸化カリウム(50wt%水溶液2.5ml)を加えて0℃で10分間攪拌し、さらに臭化ベンジル(0.27g,2.14mmol)を滴下し、0℃で21時間攪拌した。反応溶液の一部をサンプリングし、H−NMRを測定し、原料の消失と4級アンモニウムが溶出していないことを確認した。その後、反応混合液に水と塩化メチレンを加え、ガラスフィルターを用いて減圧濾過することによりポリマー触媒P−3を回収した。ろ液の有機相に硫酸マグネシウムを加えて脱水乾燥させ、これを濾別した。このろ液の溶媒を減圧除去して無色透明の液体を得た。H−NMRにより収率を、HPLCによりee%を算出した。
【0111】
4)ポリマー触媒P−3の回収・再使用実験
上記3)の反応後にグラスフィルター上から回収したポリマー触媒P−3を水、塩化メチレン、メタノールを用いて十分に洗浄し、減圧乾燥させた後、上記3)と同様の反応を繰り返した。結果を表2に表す。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
【化1】


(式中、Aは、光学活性4級アンモニウムカチオン残基を表す。Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を表し、nは0〜10の整数を表し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。但し、Bと(Z)との結合及び(Z)とSOとの結合は、光学活性4級アンモニウムカチオンを用いる反応条件下においても開裂することがない化学的に許容される範囲の結合を表す。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)
で表される繰り返し単位を、含有することを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマー。
【請求項2】
式(1)が、式(2)
【化2】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基又はC1〜C6アルコキシ基を示し、mは0〜4の整数を示し、mが2以上である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。A、R、Z及びnは、前記式(1)と同一のものを表す。)で表される繰り返し単位であることを特徴とする請求項1に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマー。
【請求項3】
式(3)
【化3】


(式中、Qは、水素原子、エステル、アミド又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表される繰り返し単位を、さらに含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマー。
【請求項4】
式(4)
【化4】


(式中、Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表される単位を、さらに含有することを特徴とする請求項3に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマー。
【請求項5】
光学活性4級アンモニウムカチオン残基が、式(5)
(5)
(式中、R〜Rは有機基であって、いずれも窒素原子と結合する有機基を表す。R〜Rが全て同一である場合、R〜Rのうち2個は互いに結合し、少なくとも1個の軸不斉を有する。R〜Rのうち、全てが同一でないか、2個又は3個が同一である場合は、R〜Rは互いに結合していてもよく、少なくとも1個の不斉炭素を有し、及び/又は、少なくとも1個の軸不斉を有する。)
で表される光学活性4級アンモニウムカチオン残基であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマー。
【請求項6】
光学活性4級アンモニウムカチオン残基が、シンコナアルカロイドのアンモニウム誘導体、スピロアンモニウム誘導体、ビススピロアンモニウム誘導体、アゼピンのジアルキルオニウム誘導体又は4,5−ジ(アミノメチル)−[1,3]ジオキソランのジアンモニウム誘導体であることを特徴とする請求項5に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマー。
【請求項7】
式(6)
【化5】

(式中、Aは、光学活性4級アンモニウムカチオン残基を表す。Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を示し、nは0〜10の整数を示し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表される光学活性4級アンモニウムスルホネート塩エチレン誘導体の単量体(A)及び式(7)
【化6】


(Qは、水素原子、エステル、アミド又は置換基を有してもよいフェニル基を表す。Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表されるエチレン誘導体の単量体(B)を、共重合させることを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法。
【請求項8】
式(6)が、式(8)
【化7】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1〜C6アルキル基又はC1〜C6アルコキシ基を示し、mは0〜4の整数を示し、mが2以上である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。A、R、Z及びnは、前記式(7)と同一のものを表す。)であることを特徴とする請求項7に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法。
【請求項9】
式(9)
【化8】


(Rは、水素原子、C1〜C6アルキル基、又はC2〜C6アルケニル基を表す。)で表されるジビニルベンゼン誘導体の単量体(C)をさらに含有させて、共重合させることを特徴とする請求項7又は8に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法。
【請求項10】
式(1’)
【化9】

(式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属のイオンを表す。Bは、−COO−、−CONH−及び置換基を有してもよいフェニレンから選択される2価基を表す。Zは、アルキレン、フェニレン、オキシアルキレン及びオキシフェニレンから選択される2価基を示し、nは0〜10の整数を示し、nが2以上である場合、Zは互いに同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、C1〜6アルキル基又はC2〜6アルケニル基を表す。)で表される繰り返し単位を含有するポリマーと、式(10)
(10)
(式中のAは、光学活性4級アンモニウムカチオンを表す。Xはハロゲン原子、有機酸、リン酸、亜リン酸、硝酸、重炭酸又は炭酸のアニオンを表す。)で表される光学活性4級アンモニウム塩を、溶媒中で混合することを特徴とする光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法。
【請求項11】
式(1’)が、式(2’)
【化10】

(式中、Rは、ハロゲン原子、C1〜6アルキル基又はC1〜6アルコキシ基を示し、mは0〜4の整数を示し、mが2以上である場合、Rは互いに同一でも異なっていてもよい。M、R、Z及びnは、前記式(1’)と同一のものを表す。)であることを特徴とする請求項10に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法。
【請求項12】
光学活性4級アンモニウムカチオンが、式(5)
(5)
(式中、R〜Rは有機基であって、いずれも窒素原子と結合する有機基を表す。R〜Rが全て同一である場合、R〜Rのうち2個は互いに結合し、少なくとも1個の軸不斉を有する。R〜Rのうち、全てが同一でないか、2個又は3個が同一である場合は、R〜Rは互いに結合していてもよく、少なくとも1個の不斉炭素を有し、及び/又は、少なくとも1個の軸不斉を有する。)
で表される光学活性4級アンモニウムカチオンであることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法。
【請求項13】
光学活性4級アンモニウムカチオンが、シンコナアルカロイドのアンモニウム誘導体、スピロアンモニウム誘導体、ビススピロアンモニウム誘導体、アゼピンのジアルキルオニウム誘導体、又は4,5−ジ(アミノメチル)−[1,3]ジオキソランのジアンモニウム誘導体であることを特徴とする請求項12に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜6に記載の光学活性4級アンモニウムカチオン担持ポリマーを含有してなることを特徴とする光学活性相間移動触媒。
【請求項15】
N−置換−グリシン誘導体と、式(Q)
L−Y (Q)
(式中、Lは有機基を、Yは脱離基を表す。)で表される化合物を、請求項1〜6に記載のポリマーの存在下に処理することを特徴とする光学活性α−モノ置換−N−置換−グリシン誘導体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−235393(P2009−235393A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45792(P2009−45792)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】