説明

光学測定用セル及び光学分析計

【課題】熱膨張による光導入面及び光導出面の間の拡縮を防止する。
【解決手段】被測定液が流れる流路5が内部に形成されたセルブロック6と、流路5に設けられてセルブロック6の外部からの光を流路に導入する光導入面7と、流路5において光導入面7に対向して設けられて流路5を通過した光をセルブロック6の外部に導出する光導出面8と、セルブロック6を対向方向から押圧する押圧機構16と、光導入面7及び光導出面8の間に設けられたスペーサ17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば吸光分析法等の光学測定に用いられる光学測定用セル及びこれを用いた光学分析計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置等に用いられるオゾン(O)を含む純水(以下、被測定液)中のオゾン濃度を測定するものとして、特許文献1や特許文献2に示すように、被測定液が流れる流路を有するセルブロックと、当該セルブロックの側壁に設けられて外部からの光を流路内に導入する光導入窓と、流路を通過した光を外部に導出するための光導出窓を備えた光学測定用セルを用いたものがある。そして、前記セルブロックは、被測定液に対する耐腐食性に優れた例えばフッ素系樹脂等の樹脂により形成されている。
【0003】
しかしながら、この光学測定セルを用いたものでは、流路を流れる被測定液が高温の場合又は周囲温度が高温の場合などに、セルブロックが加熱されてしまい熱膨張してしまう。そうすると、セルブロックに設けられた光導入窓及び光導出窓の距離(セル長)が拡大してしまい、測定誤差を招くという問題がある。また、流路を流れる被測定液が低温の場合又は周囲温度が低温の場合などに、セルブロックが冷却されてしまい熱収縮してしまう。そうすると、セルブロックに設けられた光導入窓及び光導出窓の距離(セル長)が縮小してしまい、測定誤差を招くという問題がある。このように、従来の光学測定セルでは、被測定液の温度変化又は周囲温度の温度変化などに伴ってセル長が変化してしまい、測定誤差を招くという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−243630号公報
【特許文献2】特開2001−108610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、光学測定用セルの熱膨張又は熱収縮によるセル長の拡縮を防止することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る光学測定用セルは、被測定液が流れる流路が内部に形成されたセルブロックと、前記セルブロックに設けられ、前記セルブロックの外部からの光を前記流路に導入する光導入面と、前記セルブロックにおいて前記光導入面に対向して設けられ、前記流路を通過した光を前記セルブロックの外部に導出する光導出面と、前記セルブロックを前記光導入面及び前記光導出面の対向方向から押圧する押圧機構と、前記光導入面及び前記光導出面の間に設けられたスペーサとを有することを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、セルブロックを押圧機構により対向方向から押圧しているので、セルブロックが被測定液の温度又は周囲温度などによって加熱された場合でも、セルブロックの対向方向への熱膨張を防ぐことができる。これにより、光導入面及び光導出面の距離(セル長)が拡大することを防止できる。一方、光導入面及び光導出面の間にスペーサを設けているので、セルブロックが被測定液の温度又は周囲温度などによって冷却された場合でも、セルブロックの対向方向への熱収縮に伴って光導入面及び光導出面の距離(セル長)が縮小することを防止できる。なお、スペーサ自体が熱収縮しても、セルブロック全体の熱収縮に比べて小さいことから、光導入面及び光導出面の距離(セル長)の縮小を小さくすることができる。したがって、本発明によれば、温度が変化する被測定液や光学測定用セルの設置場所等によって温度が異なる被測定液を精度良く測定することができる。
【0008】
また本発明によれば、セルブロックを押圧機構により対向方向から押圧しているので、流路内部が加圧状態になった場合であっても、光導入面及び光導出面の距離(セル長)が拡大することを防止できる。一方、光導入面及び光導出面の間にスペーサを設けているので、流路内部が負圧状態になった場合であっても、光導入面及び光導出面の距離(セル長)が縮小することを防止できる。
【0009】
前記セルブロックにおいて、前記光導入面及び前記光導出面の対向方向に互いに向き合う一対の側面に設けられた一対の固定部材を備え、前記押圧機構が、前記一対の固定部材により前記対向方向から押圧するものであることが望ましい。これならば、押圧機構からの押圧力を固定部材を介してセルブロックの一対の側面に作用させることができ、セルブロックの対向方向への熱膨張をより一層防ぐことができる。また、流路内部が加圧状態になった場合における光導入面及び光導出面の距離(セル長)の拡大をより一層防止できる。
【0010】
一対の固定部材を対向方向から押圧する具体的な構成としては、前記押圧機構が、一端が一方の固定部材に作用し他端が他方の固定部材に作用して、前記一対の固定部材を前記対向方向に締め付けるねじ部材を有しており、前記ねじ部材の熱膨張係数が、前記セルブロックの熱膨張係数よりも小さいことが望ましい。ここでねじ部材が固定部材に作用するとは、ねじ部材の頭部が固定部材に接触して作用することのほか、固定部材に形成しためねじ部にねじ部材のおねじ部が螺合して作用すること、又は、ねじ部材のおねじ部に螺合するナット部材を介して固定部材に作用することを含む。このようにねじ部材を用いることで押圧機構の構成を簡単にすることができる。また、ねじ部材の熱膨張係数をセルブロックの熱膨張係数よりも小さくしていることから、セルブロックの熱膨張量よりもねじ部材の熱膨張量を小さくでき、セルブロックの熱膨張を抑えることができる。
【0011】
前記流路が、大流路部とこれに連続して並んで設けられた小流路部とを有し、前記光導入面及び前記光導出面が、前記小流路部又は前記大流路部と前記小経路部との間において対向して設けられていることが望ましい。この光学測定用セルは、例えば半導体製造装置の配管に設けられてインライン測定に用いられることから、当該光学測定用セルを設けることによる圧力損失は出来るだけ避けなければならない。ここでセルブロックの流路を大流路部と小流路部とに分けることで、配管を流れる被測定液の大部分を大流路部に流す構成とすることで、被測定液が流れやすくなり、圧力損失を防ぐことができる。また、小流路部にスペーサを設けるとともに、光導入面及び光導出面を小流路部又は大流路部と小流路部との間に設けることで、大流路部を確保しながらも、スペーサの加工容易性及び加工精度を向上することができる。
【0012】
前記光導入面を有する光導入部材と、前記光導出面を有する光導出部材とを有し、前記光導入部材及び前記光導出部材が、前記セルブロックに設けられた固定孔に挿入されるとともに、前記固定部材に設けられた押さえ部材により位置決めされることが望ましい。これならば、光導入部材及び光導出部材が、固定部材に設けられた押さえ部材により位置決めされているので、セルブロックの熱膨張及び熱収縮に伴う光導入部材及び光導出部材の位置ずれを防止することができる。このとき、前記固定部材の熱膨張係数が、前記セルブロックの熱膨張係数よりも小さいことが望ましい。これにより光導入部材及び光導出部材を前記押さえ部材により位置決めすることによる位置ずれ防止の効果をより一層顕著にすることができる。
【0013】
前記光導入面が先端面に形成された光導入部材と、前記光導出面が先端面に形成された光導出部材とを有し、前記光導入部材及び前記光導出部材が、前記セルブロックに設けられた固定孔に挿入されて、前記光導入面及び前記光導出面が前記スペーサに接触することで位置決めされることが望ましい。これならば、セルブロックを例えばフッ素系樹脂等の耐腐食性に優れた材料を用いることができ、光導入部材及び光導出部材を例えば紫外線の光透過率に優れた石英ガラス等の光透過率に優れた材料を用いることができる。また、光導入部材及び光導出部材を光導入面及び光導出面で位置決めしているので、セルブロックの位置決め構造を不要にすることができる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成した本発明によれば、光学測定用セルに押圧機構とスペーサとを設けることで、光学測定用セルの熱膨張又は熱収縮によるセル長の拡縮を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る枚葉式洗浄システムの模式的構成図。
【図2】同実施形態のオゾン濃度モニタの模式的構成図。
【図3】同実施形態の光学測定用セルの一部断面を示す斜視図。
【図4】同実施形態の光学測定用セルの流路直交方向の断面図。
【図5】同実施形態の光学測定用セルの流路方向の断面図。
【図6】同実施形態のスペーサ部分を主として示す一部断面斜視図。
【図7】同実施形態のスペーサ部分を主として示す流路方向の拡大断面図及び拡大平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明に係る光学測定用セルの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係る光学測定用セル2は、例えば半導体製造プロセスにおける洗浄や酸化膜形成等に使用されるオゾン水中のオゾン濃度を測定するオゾン濃度モニタ100に用いられるものである。
【0018】
このオゾン濃度モニタ100は、図1に示すように、例えば枚葉式洗浄装置に用いられるものであり、オゾン水発生装置の内部又は直後に設けられて当該オゾン水発生装置で製造されるオゾン水中のオゾン濃度や、オゾン水を例えば70℃程度に加熱するヒータユニット(熱交換器)と処理チャンバとの間に設けられて、ヒータユニットを通過してウエハに噴き付けられる直前の高温オゾン水中のオゾン濃度を、例えばインライン測定するものである。このように本実施形態のオゾン濃度モニタ100は、低温の被測定液及び高温の被測定液の両方のオゾン濃度が測定可能なものである。
【0019】
そして、オゾン濃度モニタ100は、例えば紫外線吸収法(UV吸収法)によりオゾン水中のオゾン濃度を測定するものであり、図2に示すように、配管H上に設けられて被測定液であるオゾン水が流れる光学測定用セル2と、当該光学測定用セル2に波長254nm又は波長313nmの検査光を照射する例えば低圧水銀灯等の光源3と、前記光学測定用セル2を通過した透過光を検出する例えばシリコンフォトセル等の受光素子を有する光検出器4とを備える。なお、波長313nmの光源3を用いた場合には、波長313nmはオゾンへの吸収が少ない領域であるため、オゾン濃度変化に伴う透過光量の変化幅を抑制している。これにより、高濃度のオゾンを測定する用途において測定レンジを大きくとることができる。
【0020】
具体的に光学測定用セル2は、図2〜図5に示すように、被測定液が流れる流路5が内部に形成されたセルブロック6と、流路5の内部に設けられて光源3からの光を流路5に導入する光導入面7と、流路5の内部において光導入面7に対向して設けられて流路5を通過した光を光検出器4に導出する光導出面8とを有する。
【0021】
セルブロック6は、特に図3〜図5に示すように、概略直方体形状をなすものであり、前後方向に対向する2つの側面を直線状に貫通するように流路5が形成されている。このセルブロック6は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂といった耐腐食性に優れた樹脂から形成されている。なお、図4中の符号18は、流路を流れる被測定液の温度を測定する温度センサを流路内に導入するためのガイド部材である。
【0022】
流路5は、大流路部51とこれに連続して並んで設けられた小流路部52とを有する。大流路部51は、セルブロック6に接続される配管Hの内径と略同一径を有する概略円形であり、配管Hを流れてきた被測定液の大部分をこの大流路部51に流す構成としている。これにより、光学測定用セル2の流路5を被測定液が流れやすくして圧力損失を防いでいる。また小流路部52には、後述するように光導入面7及び光導出面8が対向して設けられている。
【0023】
光導入面7は、光導入部材9の先端面により形成された平面である。この光導入部材9は、石英ガラス(熱膨張係数:約10−7/K)からなる概略円柱形状をなすものであり、具体的に等断面円形状をなすものである。また、光導入部材9の後端面は、光源3からの検査光を受光する受光面となる。そして、光導入部材9は、セルブロック6の側壁(図3等において上壁)に設けられた固定孔6Aに挿入されることにより、セルブロック6に固定される。これにより、光導入部材9の光導入面7が流路5内に位置することになる。なお、固定孔6Aは小流路部52に連通して開口している。
【0024】
また、光導入部材9の後端側とセルブロック6との間には、円環状のシール部材10が設けられている。このシール部材10は、固定孔6Aの内側周面に設けられた凹溝6A1に設けられており、光導入部材9が固定孔6Aに挿入された状態で、固定リング11が螺合されることによってシール部材10が押圧される。凹溝6A1の下面はテーパ面とされていて固定リング部材11が螺合することによってシール部材10が光導入部材側に押圧されるように構成されている。固定リング部材11は、固定部材15mに螺合するとともにシール部材10に接触する第1リング部材111と、当該第1リング部材111に螺合して、光導入部材9の後端面に接触して光導入部材9をセルブロック6に位置決め固定する押さえ部材112を有する。この押さえ部材112を、第1リング部材111に螺合してその位置を調節することによって光導入部材9の上下方向の位置決めを行う。
【0025】
光導出面8は、光導出部材12の先端面により形成された平面である。この光導出部材12は、前記光導入部材9と同様に、石英ガラスからなる円柱形状をなすものであり、具体的に等断面円形状をなすものである。また、光導出部材12の御端面は、光検出器4に向かって透過光を発する発光面となる。そして、光導出部材12は、セルブロック6の側壁(光導入部材9が設けられた上壁に対向する下壁)に設けられた固定孔6Bに挿入されることにより、セルブロック6に固定される。これにより、光導出部材12の光導出面8が流路5内において光導入面7に対向して位置することになる。なお、固定孔6Bは小流路部52に連通して開口している。
【0026】
また、光導出部材12の後端側とセルブロック6との間には、円環状のシール部材13が設けられている。このシール部材13は、固定孔6Bの内側周面に設けられた凹溝6B1に設けられており、光導出部材12が固定孔6Bに挿入された状態で、固定リング14が螺合されることによってシール部材13が押圧される。凹溝6B1の上面はテーパ面とされていて固定リング部材14が螺合されることによってシール部材13が光導出部材側に押圧されるように構成されている。固定リング部材14は、固定部材15nに螺合するとともにシール部材13に接触する第1リング部材141と、当該第1リング部材141に螺合して、光導出部材12の後端面に接触して光導出部材12をセルブロック6に位置決め固定する押さえ部材142を有する。この押さえ部材142を、第1リング部材141に螺合してその位置を調節することによって光導出部材12の上下方向の位置決めを行う。
【0027】
そして本実施形態の光学測定用セル2は、図3〜図5に示すように、セルブロック6における光導入面7及び光導出面8の対向方向に対向する一対の側面6m、6nそれぞれに設けられた一対の固定部材15m、15nと、一対の固定部材15m、15nによりセルブロック6を対向方向から押圧する押圧機構16とを備えている。本実施形態の光導入面7及び光導出面8の対向方向は、図4等に示すように上下方向であり、セルブロック6の上下方向に対向する面、つまり上面6m及び下面6nにそれぞれ固定部材15m、15nが設けられている。なお、上面6m及び下面6nには固定部材15m、15nを収容する凹部が形成されている。
【0028】
一対の固定部材15m、15nは、例えばステンレス鋼などの金属製からなる平板である。これら固定部材15m、15nには、ねじ部材161が挿入される貫通孔151が形成されている。セルブロック6の上面6mの固定部材15mは、光導入部材9(光導入面7)を覆うように設けられ、セルブロック6の下面6nの固定部材15nは、光導出部材12(光導出面8)を覆うように、上面6mの固定部材15mに対向して設けられる。
【0029】
押圧機構16は、特に図3に示すように、一端が一方の固定部材15mに作用し他端が他方の固定部材15nに作用して、一対の固定部材15m、15nを対向方向に締め付けるねじ部材161を有するものである。本実施形態では、セルブロック6の上面6mの固定部材15mにねじ部材161の頭部161aが接触して押圧力を作用するとともに、セルブロック6の下面6nの固定部材15nの貫通孔151内面に形成されためねじ部151aにねじ部材161のおねじ部161bが螺合して押圧力を作用する構成としている。なお、上面6mの固定部材においてねじ部材161の頭部161aに対応する部分には座ぐりが形成されている。
【0030】
この押圧機構16は、4つのねじ部材161により一対の固定部材15m、15nを押圧固定することで、セルブロック6を上下方向から押圧する構成としている。なお、4つのねじ部材161は、概略矩形状をなす固定部材15m、15nの四隅に設けられて、上面視において光導入面7及び光導出面8を中心に同心円状となるように設けられている。これにより、セルブロック6において少なくとも光導入面7及び光導出面8を含む部分を均一に押圧するようにしている。
【0031】
そして、ねじ部材161は、セルブロック6の材質の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数を有する材質から形成されている。本実施形態のセルブロック6の材質はPTFEであり、その熱膨張係数は、約10×10−5/Kである。一方、本実施形態のねじ部材161の材質は、チタン又はチタン合金であり、その熱膨張係数は、約8〜9×10−6/Kである。このようにチタンの熱膨張係数はPFTEの熱膨張係数の1/10である。その他、セルブロック6の材質の熱膨張係数よりも小さい熱膨張係数であれば、ねじ部材161の材質はチタン又はチタン合金に限られない。例えばセルブロック6がPTFE等のフッ素系樹脂であれば、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属を用いることができる。なお、押圧機構16として単一のねじ部材161を用いた場合には、当該ねじ部材161の熱膨張係数の設定、管理がしやすい。
【0032】
また光学測定用セル2は、光導入面7及び光導出面8の間に設けられたスペーサ17を有する。このスペーサ17は、図4及び図5に示すように、小流路部52を形成する内壁において大流路部51とは反対側の内壁に形成されている。本実施形態では、図6及び図7に示すように、セルブロック6の上壁及び下壁に固定孔6A、6Bを形成する際に、当該固定孔6A、6Bが小流路部52に連通するとともに、小流路部52を形成する内壁において大流路部51とは反対側の内壁の一部を削って所定厚みを残すことによって形成されている。つまり、平面視において固定孔6A、6Bの一部が小流路部52から大流路部51とは反対側にはみ出すように形成されることでスペーサ17が形成される。
【0033】
そして、このスペーサ17の対向する上下面にそれぞれ光導入面7の周端部の一部及び光導出面8の周端部の一部が接触して設けられる。つまり、光導入部材9は、その先端面である光導入面7がスペーサ17の上面に接触することでセルブロック6内に位置決めされる。一方、光導出部材12は、その先端面である光導出面8がスペーサ17の下面に接触することでセルブロック6内に位置決めされる。このように本実施形態では、光導入部材9及び光導出部材12は、スペーサ17により対向方向に位置決めが行われる。このスペーサ17の上下の厚みは、光導入面7及び光導出面8の距離つまりセル長を決定するものであり、本実施形態では0.6mmとしている。
【0034】
上記のように固定孔6A、6B及びスペーサ17を設けることで、光導入面7及び光導出面8が小流路部52の内部において対向するように設けられている。このように光導入面7及び光導出面8を小流路部52に設けることで、大流路部51には被測定液の流れを邪魔する構造を設けないようにし、大流路部51において被測定液を流れやすくしている。なお、配管Hは、図4に示すように、大流路部51及び小流路部52を含む流路全体の中心部分に配管Hの中心部分が略一致するように接続されている。
【0035】
このように構成した光学測定用セル2によれば、セルブロック6を一対の固定部材15m、15nにより対向方向から押圧しているので、セルブロック6が被測定液の温度又は周囲温度などによって加熱された場合でも、セルブロック6の対向方向への熱膨張を防ぐことができる。これにより、光導入面7及び光導出面8の距離(セル長)が拡大することを防止できる。また、光導入面7及び光導出面8の間にスペーサ17を設けているので、セルブロック6が被測定液の温度又は周囲温度などによって冷却された場合でも、セルブロック6の対向方向への熱収縮に伴って光導入面7及び光導出面8の距離(セル長)が縮小することを防止できる。なお、スペーサ17自体が熱収縮しても、セルブロック6全体の熱収縮に比べて小さいことから、光導入面7及び光導出面8の距離(セル長)の縮小を小さくすることができる。したがって、この光学測定用セル2を用いたオゾン濃度モニタ100によれば、温度が変化する被測定液や光学測定用セル2の設置場所等によって温度が異なる被測定液を精度良く測定することができる。
【0036】
また本実施形態の光学測定用セル2によれば、セルブロック6を一対の固定部材15m、15nにより対向方向から押圧しているので、流路5の内部が加圧状態になった場合であっても、光導入面7及び光導出面8の距離(セル長)が拡大することを防止できる。一方、光導入面7及び光導出面8の間にスペーサ17を設けているので、流路5の内部が負圧状態になった場合であっても、光導入面7及び光導出面8の距離(セル長)が縮小することを防止できる。
【0037】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。例えば、前記実施形態では、セルブロックとは別体の光導入部材及び光導出部材により光導入面及び光導出面を形成しているが、光導入面及び光導出面をセルブロックの側壁に一体に形成したものであっても良い。
【0038】
また、押圧機構の構成は前記実施形態の他に、固定部材の貫通孔にめねじ部を形成することなくナット部材を螺合させる構成としても良いし、ねじ部材の両端部に設けたおねじ部それぞれにナット部材を螺合させることで押圧するように構成しても良い。なお、前記押圧機構をねじ部材を用いて構成するものの他、セルブロックを対向方向から押圧するものであれば、その他の構成であっても良い。例えば、蝶番やパチン錠を用いて一対の固定部材を締め付けるように構成しても良い。
【0039】
また、前記実施形態では、光導入部材及び光導出部材の位置決めを押さえ部材及びスペーサにより行っているが、光導入面及び光導出面とスペーサを非接触として押さえ部材のみにより位置決めするように構成しても良い。このときは、押さえ部材の位置決めは、光導入面及び光導出面の間に位置決め用スペーサ部材を挿入し、押さえ部材を螺合して光導入面及び光導出面を位置決め用スペーサに接触させ、その後位置決め用スペーサを取り除くことによって行う。
【0040】
さらに、前記実施形態では、加工容易性及び加工精度の観点からスペーサを小流路部の内壁を削ることにより形成しているが、小流路部の内周面から大流路部側に突出して形成しても良い。また、光導入面又は光導出面に一体に形成しても良い。あるいは、別体として形成したスペーサを光導入面又は光導出面に接合して構成しても良い。
【0041】
その上、光導入面及び光導出面を、大流路部及び小経路部の間において対向して設けられても良い。このように構成することで、流路全体を見たときに、光導入面及び光導出面を流路の中央部側に寄せて設けることができ、光導入面及び光導出面の間の液の置換効率を向上させることが期待できる。
【0042】
加えて、圧力損失等の不具合を無視できる用途等においては、流路が大流路部及び小流路部を有するものでなくても良く、断面円形や矩形の流路に光導入面及び光導出面を設けるようにしても良い。
【0043】
また、前記実施形態では、一対の固定部材を介して押圧機構による押圧力をセルブロックに作用させているが、固定部材を介することなく、直接押圧機構による押圧力をセルブロックに作用させるように構成しても良い。
【0044】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0045】
100・・・オゾン濃度モニタ(光学分析計)
H・・・配管
2・・・光学測定用セル
3・・・光源
4・・・光検出器
5・・・流路
51・・・大流路部
52・・・小流路部
6・・・セルブロック
6m、6n・・・一対の側面
6A、6B・・・固定孔
7・・・光導入面
8・・・光導出面
9・・・光導入部材
12・・・光導出部材
15m、15n・・・一対の固定部材
16・・・押圧機構
161・・・ねじ部材
17・・・スペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定液が流れる流路が内部に形成されたセルブロックと、
前記セルブロックに設けられ、前記セルブロックの外部からの光を前記流路に導入する光導入面と、
前記セルブロックにおいて前記光導入面に対向して設けられ、前記流路を通過した光を前記セルブロックの外部に導出する光導出面と、
前記セルブロックを前記光導入面及び前記光導出面の対向方向から押圧する押圧機構と、
前記光導入面及び前記光導出面の間に設けられたスペーサとを有する光学測定用セル。
【請求項2】
前記セルブロックにおいて、前記光導入面及び前記光導出面の対向方向に互いに向き合う一対の側面に設けられた一対の固定部材を備え、
前記押圧機構が、前記一対の固定部材により前記対向方向から押圧するものである請求項1記載の光学測定用セル。
【請求項3】
前記押圧機構が、一端が一方の固定部材に作用し他端が他方の固定部材に作用して、前記一対の固定部材を前記対向方向に締め付けるねじ部材を有しており、
前記ねじ部材の熱膨張係数が、前記セルブロックの熱膨張係数よりも小さい請求項2記載の光学測定用セル。
【請求項4】
前記光導入面を有する光導入部材と、前記光導出面を有する光導出部材とを有し、
前記光導入部材及び前記光導出部材が、前記セルブロックに設けられた固定孔に挿入されるとともに、前記固定部材に設けられた押さえ部材により位置決めされる請求項2又は3記載の光学測定用セル。
【請求項5】
前記流路が、大流路部とこれに連続して並んで設けられた小流路部とを有し、
前記光導入面及び前記光導出面が、前記小流路部又は前記大流路部と前記小経路部との間において対向して設けられている請求項1又は2記載の光学測定用セル。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の光学測定用セルと、
前記光学測定用セルに対して光を照射する光源と、
前記光学測定用セルを透過した光を検出する光検出器とを有する光学分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−24780(P2013−24780A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161357(P2011−161357)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(592187534)株式会社 堀場アドバンスドテクノ (26)
【Fターム(参考)】