説明

光学測定装置及び微粒子解析装置

【課題】測定精度が高く、高効率な光学測定装置とすること。
【解決手段】微小粒子Sを導入可能な流路Xが配設された基板11と、前記微小粒子Sに対して測定光L12を照射する光源12と、前記測定光L12の照射により生じる検出対象光Lを検出する検出部13と、を少なくとも備え、前記検出対象光を流路表面で反射又は屈折の少なくともいずれかにより所定方向に出射させるよう前記基板11の流路表面を処理した光学測定装置1とすること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学測定装置及び微粒子解析装置に関する。より詳しくは、微小粒子が導入可能な流路を有する基板において光学測定を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザー等の指向性光は、波長が同じで位相が揃っているため、これをレンズなどで集束させた場合、光を小さい点に集めることができ、その照射点のエネルギー密度が高いという特性を有している。そのため、レーザー等の指向性光は分光測定等に幅広く使用されている。
【0003】
レーザー分光に関しては、線型レーザー分光や非線形レーザー分光等に分類できる。吸収スペクトルや励起スペクトルを測定する線型レーザー分光も在来の光源を用いる分光に比して高感度かつ高分解能である。非線型レーザー分光は、更に高感度かつ高分解能の分光が可能となる。このようなものとして、例えば、レーザー誘起蛍光分光、レーザー・ラマン分光法、CARS(Coherent anti-Stokes Raman Scattering)、偏光分光、共鳴イオン化分光、光音響分光等が挙げられる。特に、時間分解能が高いものは、ピコ秒分光やフェムト秒分光とも呼ばれている。
【0004】
例えば、レーザー照射技術はフローサイトメトリーにも用いられている(非特許文献1)。フローサイトメトリーとは、測定対象である細胞を生きたまま分取(ソーティング)して細胞の機能等を解析する測定手法である。細胞をラミナフロー中に流し込み、フローセルを通過する細胞にレーザーを照射する。これによって発生した蛍光や散乱光を測定する。また、パルス検出系では、細胞がレーザーを横切るときに生じた蛍光や散乱光を電気パルスとして検出し、パルス高やパルス幅やパルス面積等を分析することで解析を行う。これによって、細胞1個1個から発せられる散乱光や蛍光を検出することで、各細胞の特性を生きたまま分析することができる。
【0005】
このような分光測定は、例えば、流路を備えた基板上で行われている。図6は、従来の光学測定装置の一例を説明するための概略図である。図6の符号Aは光学測定装置を示している。該光学測定装置Aは、基板A1に流路Xが設けられている。そして、流路X内には試料として微小粒子Sが存在している。例えば、流路Xには微小粒子Sと共に媒体として液体等を流しながら測定を行う。この微小粒子Sに対して、光源A2から測定光L2を照射する。これにより生じる蛍光や散乱光等を検出対象光L3,L4として検出器A3,A4で夫々検出する。
【0006】
【非特許文献1】中内啓光著、「細胞工学別冊 実験プロトコルシリーズ フローサイトメトリー自由自在」、秀潤社、p12〜p13、第2版、2006年8月31日発行。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、平面状の流路で測定を行う場合には検出対象光は前方や側方に散乱するため、集光効率が低くなるといった問題がある。そこで、本発明は、測定精度が高く、高効率な光学測定装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
まず、本発明は、微小粒子を導入可能な流路が配設された基板と、前記微小粒子に対して測定光を照射する光源と、前記測定光の照射により生じる検出対象光を検出する検出部と、を少なくとも備え、前記検出対象光を流路表面で反射又は屈折の少なくともいずれかにより所定方向に出射させるように前記基板の流路表面を処理した光学測定装置を提供する。散乱が起こりうる検出対象光を所定方向に出射させることで、検出部において効率よく受光できる。その結果、簡易な装置構造でありながら、集光効率を向上でき、更には光学測定の測定精度を向上できる。
次に、本発明は、前記所定方向は、前記測定光の照射の入射方向と同軸方向である光学測定装置を提供する。測定光の入射方向と同軸方向に前記検出対象光を出射させることで、前方散乱光のみならず側方散乱光も効率よく集光できる。
続いて、本発明は、前記流路に、所定波長の光を透過する波長選択膜が少なくとも形成した光学測定装置を提供する。所定波長の光を透過する波長選択膜を設けることで、検出すべき検出対象光を効率よく集光できる。
そして、本発明は、前記流路の断面視、前記測定光の入射方向に対する前記流路表面の角度が略45度である領域を少なくとも備えた光学測定装置を提供する。これにより、微小粒子の側方に散乱する光を効率よく反射させて所定方向に出射させることができる。
更に、前記基板を、流路層を支持層に積層させた構造とすることで、基板の反り返りや変形等を防止できる。
また、本発明は、流路を前記支持層にも配設した光学測定装置を提供する。支持層にも流路を設けることで、基板の両面で光学測定を行うことができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定精度が高く、高効率の光学測定を基板上で行うことができる光学測定装置とできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係る光学測定装置及び微粒子解析装置の好適な実施形態について説明する。なお、添付図面に示された各実施形態は、本発明の例示であり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0011】
図1は、本発明に係る光学測定装置の第1実施形態の側面概略図である。
【0012】
図1の符号1は、光学測定装置1を示している。該光学測定装置1は、基板11と光源12と検出部13とを備えている。以下、符号Sは照射対象である微小粒子を示している。
【0013】
微小粒子Sに対して、光源12から測定光L12を照射し、得られる検出対象光L131,L132,L133を検出部13(符号131,132,133参照)にて検出することで、光学測定を行うものである。
【0014】
検出対象光の種類は限定されず、微小粒子Sの種類や測定条件等を考慮して必要とする光を適宜選択できる。検出対象光としては、微小粒子Sから発せられる蛍光や散乱光が挙げられる。検出対象光の検出は、例えば、あらかじめ微小粒子Sを特定の蛍光物質でラベリングしておき、光源12から測定光L12として励起光を照射する。これにより発する蛍光を検出対象光として検出することが挙げられる。
【0015】
蛍光色素を用いる場合は、例えば、測定光L12を指向性光とし、この波長(例えば、レーザーの波長)に対応した蛍光色素を用いることができる。
【0016】
例えば、Arイオンレーザー(488nm)の場合には、FITC(fluorescein isothiocyanate)やPE(phycoerythrin)やPerCP(peridinin chlorophyll protein)等の蛍光色素を用いることができる。また、He−Neレーザー(633nm)の場合には、APC(allophycocyanin)やAPC−Cy7等の蛍光色素を用いることができる。ダイレーザー(598nm)の場合には、TR(Texas Red)等の蛍光色素を用いることができる。Crレーザー(407nm)レーザーや半導体レーザーの場合には、Cascade Blue等の蛍光色素を用いることができる。
【0017】
検出対象光の検出は、ラベリング等を行わずに微小粒子Sからの散乱光を検出してもよい。例えば、微小粒子Sに測定光L22を照射することで発生する散乱光を検出してもよい。この場合にも、例えば、光L22を指向性光とすることで、より高精度の位置情報の検出ができる。散乱光としては、前方散乱光(符号L131参照)や側方散乱光(符号L132,L133参照)が挙げられる。
【0018】
本発明は、流路層11の流路表面に設けられた反射膜1111,1111,1111によって検出対象光L131,L132,L133を反射あるいは干渉させること等により、所定方向に出射させるものである。このように、所定方向に出射させることで、効率よく検出対象光を集光し、これを検出部13で検出できる。特に、検出対象光L131,L132,L133を、夫々対応する検出器131,132,133の設置方向に向かって出射させることで、前記検出器131,132,133の検出精度を向上させることができる。
【0019】
そして、基板11の構造に関し、より好適には、流路Xの断面視、前記測定光L12の入射方向に対する前記流路表面の角度が略45度である領域を有することが望ましい(図1参照)。これにより、微小粒子Sの側方から出る側方散乱光や蛍光等を効率よく反射させて所定方向に出射させることができる(例えば、検出対象光L132,L133等参照)。従って、優れた光集光効率とすることができる。
【0020】
従って、本発明によれば、簡易な装置構造でありながら、測定精度を向上できる。前記所定方向は、装置構造等を考慮して適宜好適な方向となるように調整することができるが、好適には、前記測定光L12と同軸方向であることが望ましい。更には、測定光L12の入射方向が流路表面に対して略垂直に面する方向であることが望ましい。これにより、四周に散乱する側方散乱光等を効率よく集光できる。
【0021】
以下、光学測定装置1の各構成についてより詳細に説明する。
【0022】
基板11は、微小粒子Sを導入可能な流路Xを備えた構造である。この流路Xは、流路層111と流路保護層112を積層することで形成されている。流路層111の流路表面は反射膜1111によって形成されている。なお、図1では流路X内の構造は簡略化して表しているが、流路X内に媒体を流すことで微小粒子Sが流路X内を移動することができる。なお、図1では、微小粒子Sは紙面の垂直方向に移動している状態を示しており、流路Xの流路幅を正面視した状態である。
【0023】
本発明において流路X内に存在する微小粒子Sの種類は限定されない。例えば、微小粒子Sは種々の生体細胞やビーズ等の微小構造体であってもよい。また、流路X内の媒体は流体であればよく、種々の溶液や気体等を用いることができる。微小粒子Sや照射条件等を考慮して好適な媒体を選択することができる。
【0024】
流路層111の流路表面は、検出対象光L131,L132,L133が流路表面で反射又は屈折の少なくともいずれかを行い得るように処理されていればよく、その処理手法について限定するものではない。処理手法としては、例えば、流路表面の所定の一面若しくは複数面に、反射膜1111を設けることが挙げられる。
【0025】
また、流路表面に、反射光強度を強めることができる干渉膜を設けてもよい。これにより検出対象光L131,L132,L133の光強度を増幅できるため、測定精度をより向上できる点で望ましい。このような干渉膜として用いるものは限定されないが、例えば、多層膜干渉を利用した誘電体多層膜フィルタ(干渉膜フィルタ)等が挙げられる。また、流路表面に薄膜干渉を利用した表面処理を行うことで、任意の透過率や反射率となるように流路表面を設計できる。
【0026】
更に好適には、所定波長の光を透過させる波長選択膜を設けることが望ましい。特に、流路表面への測定光L12の入射方向に対して、略垂直に面するように波長選択膜を形成することが望ましい。これに関する形態例については後述する。
【0027】
光源12の種類は特に限定されないが、好適には、レーザーやLED(Light Emission Diode;発光ダイオード)等の指向性光の光源であることが望ましい。測定光L12としてレーザーを用いる場合、その媒体としては、例えば、半導体レーザーや液体レーザーや気体レーザーや固体レーザー等が挙げられる。
【0028】
半導体レーザーとしては、GaAsレーザーやInGaAsPレーザー等が挙げられる。ガスレーザーとしては、He−Neレーザー(赤色)、Arレーザー(可視、青色又は緑色)、COレーザー(赤外線)、エキシマーレーザー(紫色等)等が挙げられる。液体レーザーとしては、色素レーザー等が挙げられる。固体レーザーとしては、ルビーレーザーやYAGレーザーやガラスレーザー等が挙げられる。また、レーザーダイオード(LD)でNd:YAG等の固体媒体を励起して発振させるDPSS(ダイオード励起固体レーザー)等も用いることができる。
【0029】
また、図示はしないが、測定光L12の走査手段を別途設けることができる。本発明に係る光学測定装置1としては、流路Xの流路幅よりも小さい照射スポットである測定光L12を照射する光源12と、前記測定光L12を流路幅方向に走査させる走査手段を更に備えた光学測定装置とすることが望ましい。これにより、微小粒子Sに対して十分かつ正確な光照射を行うことができる。従って、照射後の光集光効率だけでなく、照射時の照射効率も優れた光学測定装置とできる。これにより更に高精度の測定結果を得ることができる。特に、測定光L12がレーザー等の指向性光である場合に好適である。
【0030】
測定光L12を流路幅方向に走査させながら照射することで、複数の照射スポットを流路Xの幅方向に渡って作り出すことができる。その結果、流路X内を移動する微小粒子Sに対して確実かつ十分に光照射ができる。流路X内を微小粒子Sが移動する場合、流路X内の微小粒子Sの位置が変化する。特に、微小粒子Sの大きさが流路Xの流路幅に比してかなり小さい場合には、流路X内で微小粒子Sが一定の自由度を有して移動する。そのため、大きな照射むらや照射位置ずれやフォーカス位置ずれ等が生じることがある。このようなことが測定光L12の照射効率の低下の一因となっていた。
【0031】
これに関して、ビームスポット径を大きくしたり、照射時間を長くしたりすることが行われている。しかし、ビームスポットのエネルギー密度を強くするために光源の出力パワーを上げなければならなかったり、照射時間の制限を受ける等といった光源に関する制約が生じる。一方、本発明では、ビームスポット径が小さい測定光L12を、流路幅方向に走査しながら照射する。これにより、ビームスポット径を大きくしたり、無駄に長時間照射することもなく、確実かつ十分に微小粒子Sに光照射できる。
【0032】
なお、この場合、測定光L12の走査角度や走査速度等を考慮して基板11の流路表面の表面処理を行うことが望ましい。例えば、測定光L12の入射角の範囲等を考慮して、検出対象光L131,132,133等が所定の出射方向に出射するように反射膜や干渉膜を設けること等が挙げられる。
【0033】
走査条件は特に限定されないが、下記式(1)を満たす条件で光照射することが望ましい。このような条件で走査することで、走査スポットが流路Xの流路幅を通過する時間内に、微小粒子Sがこの走査スポットを1回以上横切ることになる。その結果、流路X内に存在する微小粒子Sを必ず走査スポットで検出できる。
【0034】
【数1】

【0035】
走査手段は特に限定されないが、好適にはガルバノミラーや、電気光学素子や、ポリゴンミラーや、MEMS素子等によって測定光L12を走査させることが望ましい。特に、電気光学素子は可動部がないため、安定性や信頼性が高い点で好適である。また、これらの走査手段を複数用いてもよい。
【0036】
また、図示はしないが、微小粒子Sの流路X内の位置情報に基づいて測定光L12の照射制御を行なう照射制御手段等を更に設けてもよい。具体的には、別途の光源と、この光源から微小粒子Sの位置情報を得るための光を照射することで、流路X内における微小粒子Sの位置情報を得て、この位置情報に基づいて光源12の照射を制御する照射制御手段とを、更に設けた光学測定装置とすることが望ましい。
【0037】
別途、微小粒子Sの流路X内における位置情報(例えば、移動速度、流路X内の存在位置等)を得ておき、これに基づいて光照射を制御することで、より正確に測定光L12を微小粒子Sに照射できる。この位置情報とは、流路X内に存在する微小粒子Sの移動速度や、3次元の存在位置等に関する情報等をいい、流路X内における微小粒子Sのベクトルに関連するあらゆる情報を包含する。
【0038】
例えば、測定光L12の照射スポットとは別の位置に、位置情報を得るための光の照射スポットを流路X内に設ける。そして、この光を微小粒子Sに照射することで得られる蛍光や散乱光等を検出する。この検出結果を、微小粒子Sの位置情報として得ることができる。
【0039】
そして、この位置情報を、光源12の光照射のトリガタイミング等として光源12の光学系にフィードバックさせる。これによって、適切な照射タイミングで所望の照射位置に、測定光L12を照射できる。なお、光源12から照射する測定光L12も、微小粒子Sの位置情報等を得ることに用いてもよいことは勿論である。
【0040】
検出部13では、検出した検出対象光の測定データをアナログデジタルコンバーター(ADC)等によってデジタル信号に変換し、この信号をコンピューターにより演算処理することで、微小粒子Sの測定を行うことができる。
【0041】
検出部13としては、検出対象光の出射方向に対応した検出器131,132,133を設けることができる。集光する光の数は3本である必要はなく、検出器の数も3に限定するものではない。また、本発明では、検出対象光が所定方向に揃って出射させるため、この検出対象光L131,L132,L133を集光レンズ等により1本に集光することができる。これにより検出器の数を減らすこともできる。また、前方散乱光を検出する検出器と、側方散乱光を検出する検出器と、蛍光を検出する検出器を、夫々設けることもできる。
【0042】
本発明に係る光学測定装置は、流路が配設された基板上で微小粒子の測定等を行なうことができ、更には基板が装置本体から脱着可能であるため基板の使い捨てが可能である。このため、基板の繰り返しの使用における被測定物のコンタミネーションを抑制でき、生体細胞等を扱う場合は細胞の純度を上げたり、コンタミネーションを抑制することが可能となる。
【0043】
図2は、本発明に係る光学測定装置の第2実施形態の側面概略図である。
【0044】
図2の符号2は、光学測定装置を示している。該光学測定装置2は、流路表面に特定波長の光を透過する波長選択膜が少なくとも形成されていることを特徴の一としている。以下、第1実施形態との共通点は説明を割愛し、相違点を中心に説明する。
【0045】
前記光学測定装置2は、基板21の流路X中に存在する微小粒子Sに対して、光源22から測定光L22を照射する。これにより得られる検出対象光L231,L232,L233を、検出部23の検出器231,232,233で夫々検出するものである。基板21の流路表面には、反射膜2111,2111と、波長選択膜2112とが形成されている。
【0046】
基板21は流路層211と流路保護層212とから構成されている。そして、流路表面に、所定波長の光を透過させる波長選択膜2112を設けることで、検出する必要がない測定光L22をそのまま透過させることができる。その結果、検出対象光L231,L232,L233に測定光L22がさしこむことを防止できる。特に、前方散乱光(符号L231参照)を検出する際にはより測定精度を向上できるため好適である。従って、波長選択膜2112は、測定光L22が流路表面に入射する方向に対して、略垂直に面するように形成することが望ましい(図2参照)。
【0047】
波長選択膜の種類は限定されないが、例えば、窒化シリコン、窒化アルミニウム、酸化シリコン等の光学干渉膜を用いることができる。より好適には、流体による光学干渉膜の腐食防止等の観点から、これら光学干渉膜の多層構造や、腐食防止膜を積層した多層構造等を用いることが望ましい。
【0048】
図3は、本発明に係る光学測定装置の第3実施形態の側面概略図である。
【0049】
図3の符号3は、光学測定装置を示している。該光学測定装置3は、流路表面の形状を曲面に形成した点を特徴の一としている。以下、先に述べた各実施形態との共通点は説明を割愛し、相違点を中心に説明する。なお、図3は、流路構造についてのみ示しており、装置全体の構成は省略している。
【0050】
前記光学測定装置3は、基板31の流路X中に存在する微小粒子Sに対して、測定光L32を照射する。これにより得られる検出対象光L331,L332,L333,L334,L335を検出するものである。基板31は、流路層311と流路保護層312とから構成されている。そして、流路層311の流路表面には、反射膜3111が形成されているが、その形状は曲面である。
【0051】
流路Xの流路表面の形状については限定されないことは前述したが、より好ましくは、曲面形状とすることが望ましい。少なくとも、微小粒子Sから発する側方散乱光や蛍光等の検出対象光について、より多くの光を所定方向に集光・出射させることができる点で好適である。曲面の形状は、曲面構造により集光される光が、検出用光学レンズ等を用いて検出部(図示せず)に効率的に入射できるようにパラボリック形状等であることが好ましい。
【0052】
なお、図示はしないが、検出対象光L331,L332,L333,L334,L335を集光レンズ等を用いて集光した後に検出部(図示せず)で検出する装置構成としてもよい。
【0053】
図4は、本発明に係る光学測定装置の第4実施形態の側面概略図である。
【0054】
図4の符号4は、光学測定装置を示している。該光学測定装置4は、2枚の流路層を貼り合わせた基板を用いている点を特徴の一としている。以下、先に述べた各実施形態との共通点は説明を割愛し、相違点を中心に説明する。
【0055】
前記光学測定装置4は、基板41を備えており、該基板41では、流路層411と流路保護層412が積層されることで流路Xを形成している。そして、夫々の流路層411,411は貼り合わせ層413を介して貼り合わされている。これにより、基板41の両面(表裏面)で夫々測定を行うことができる。
【0056】
夫々の流路層411の流路Xで行なう光学測定について説明する。流路X内に存在する微小粒子Sに対して光源42から測定光L42を照射する。これにより得られる検出対象光L431,L432,L433を検出部43で検出する。検出部43は、各検出対象光に対応する検出器431,432,433を有している。
【0057】
流路層411単独からなる基板等であれば、温度や湿度等の影響によって変形する場合がある。その結果、光照射の焦点位置が変化してしまう場合がある。このような場合には、光学的なアライメントが別途必要となる。あるいは、測定に使用できる回数が限られてしまう場合もある。
【0058】
これに対して、少なくとも本発明によれば、少なくともいずれか一方の流路層411についてみれば、貼り合わせ層413を介して一方の流路層411により支持することができる。即ち、流路層411,411が互いを支持しあうことができる。その結果、前述のような反り返り現象を防止できる。
【0059】
そして、本発明では、2枚の流路層411,411を貼り合わせる基板構造に限定するものではない。例えば、少なくとも1枚の流路層411を単なる支持層に積層させる基板構造としてもよい。即ち、図4に示す1枚の流路層411をダミー層として用いることができる。この場合の支持層(ダミー層)には、基板41で行う処理条件や微小粒子情報(例えば、細胞名や化合物名等)等を記入しておくこともできる。
【0060】
また、従来の透過方式による散乱光検出や蛍光検出の場合には、基板の一方向からしか測定光を照射できない。これに対して、本発明によれば、検出対象光L431,L432,L433を流路表面で反射又は屈折させることで、所定方向(好適には、測定光L42と同軸方向)に出射させることができる。これにより、基板41の両面での測定が可能となる。その結果、流路X中に存在する微小粒子Sの解析処理スピードを改善することができ、かつ温度や湿度等による変形や反り返りも防止できる。
【0061】
流路層411の材料については限定されず、例えば、ポリカーボネートや各種プラスチック等を用いることができる。特に、支持層として用いる場合には、前記の反り返り防止の効果が高い材料として、シリコン基板やガラス基板等を用いることができる。また、流路層411,411の接合は圧着や加熱圧着によって行うことができ、貼り合わせ層413には、例えば、熱硬化性樹脂やUV硬化性樹脂等を用いることができる。
【0062】
流路保護層412の材料については限定されず、例えば、ポリカーボネートや各種プラスチック等を用いることができる。また、流路保護層412は、貼着可能なシーリング層として用いることもできる。このような流路保護層412を設けることで、流路Xに微小粒子Sを効率よく導入することもできる。
【0063】
そして、前記流路層411や、流路保護層412や、貼り合わせ層413の厚さについても限定されないが、好適には、略同じ厚さであることが望ましく、これにより温度や湿度による変形を相殺させることができる点で好適である。
【0064】
図5は、本発明に係る光学測定装置の第5実施形態の概念図である。
【0065】
図5の符号5は、光学測定装置を示している。該光学測定装置5は、基板51と、光源52と、検出部53と、反射ミラー54,55,56と、集光レンズ57を備えている。以下、先の述べた各実施形態との共通点は説明を割愛し、相違点を中心に説明する。なお、図5では、基板51の構造や流路内の微小粒子等は簡略化して示しており、今まで述べた基板の種々の構造を備えるように設計できることは勿論である。
【0066】
光源52から測定光L52が照射され、反射ミラー54を経て対物レンズ57で集光されて、基板51の流路内の微小粒子に照射される。そして、これにより生じる検出対象光L531,L532は、前記測定光L52と同軸方向に出射して、反射ミラー55,56を経由して、検出部53で検出される。検出部53では、検出器531で検出対象光L531を、検出器532で検出対象光L532を検出する。
【0067】
このように、本発明では、検出する検出対象光を透過させるのではなく、所定方向に反射させるため、検出部53の検出器531,532をまとめて設置することができる。これにより、装置構成の簡略化が可能となる点で望ましい。そして、入射光路と出射光路を同一光路とすることが望ましい。
【0068】
本発明に係る光学測定装置は、種々の技術分野に応用することができ、例えば、粒子径分布測定や流体画像解析や三次元測定やレーザー顕微鏡等をはじめとする指向性光を利用した計測装置・解析装置に応用できる。そのなかでも、流路中に存在する微小粒子に対して照射を行う微粒子解析装置等に好適に用いることができる。
【0069】
微粒子解析装置としては、フローサイトメーターやビーズアッセイ(フロービーズアッセイ)等の解析装置が挙げられる。即ち、微小粒子に対して光照射を行い、得られる蛍光や散乱光等の検出対象光を検出することで、微小粒子の分取等を行うものである。
【0070】
フローサイトメトリーには、微小粒子の大きさや構造等を測定することのみを目的とするものや、さらに測定された大きさや構造等に基づいて所望の微小粒子を分取できるように構成として用いるものがある。このうち、特に細胞の分取を行なうものをセルソータとして用いることができる。
【0071】
微小粒子をソーティングする際に、本発明の光学測定装置を光学的検出機構に用いることができる。即ち、流路中に存在する微小粒子(生体細胞等)に対して正確な位置に光照射できるため、生体細胞中にごくわずかに存在する幹細胞等であっても正確かつ効率よくソーティングすることができる。
【0072】
あるいは、流路X内で所定の化学反応を行なうマイクロリアクターとして用いる場合にも、本発明の光学測定装置を光学的検出機構として用いることができる。流路Xにおいて何らかの反応が進行し、その後の反応物(微小粒子S)に対して指向性光を照射して分光検出を行い、かつその結果に応じて分取(ソーティング)するといった用途に用いることができる。
【0073】
従って、今まで説明した光学測定装置を備えた微粒子解析装置とすることもでき、更に前記流路に存在する微小粒子Sを加工する加工部や、所定の処理を行う処理部や、所定の基準に従って分別する分別部等を別途設けることができる。
【0074】
具体的には、加工部は、微小粒子Sに対して何らかの手を加える操作を行うものを包含し、例えば、レーザー加工や表面加工等を行うものが挙げられる。処理部は、微小粒子Sに対して何らかの処理を行うものを包含し、例えば、化学的処理、物理的処理、活性化処理、加熱処理、洗浄処理等を行うものが挙げられる。分別部は、微小粒子Sを何らかの基準に基づいて分別・分離したり、更には分取(ソーティング)したりするものが挙げられる。
【0075】
このように光照射によって得られた微小粒子Sの反応結果や位置情報に基づいて、加工や処理や分別等を別途行うことができる。本発明の光照射により生じる検出対象光等の集光効率が優れているため、より高精度の光検出(分光測定等)が可能である。即ち、本発明では、光学測定装置にこれら加工部や処理部や分別部を単に組み合わせるだけでなく、光照射による検出結果をこれらの操作にフィードバックさせることができる。これにより、別途行う微小粒子Sへの加工や処理や分別等についても正確かつ効率よく行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明に係る光学測定装置及び微粒子解析装置によれば、測定精度が高い光学測定が可能であるため、バイオテクノロジー分野のみならず、各種光学測定機器や分析機器をはじめとする幅広い分野に応用できる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る光学測定装置の第1実施形態の側面概略図である。
【図2】本発明に係る光学測定装置の第2実施形態の側面概略図である。
【図3】本発明に係る光学測定装置の第3実施形態の側面概略図である。
【図4】本発明に係る光学測定装置の第4実施形態の側面概略図である。
【図5】本発明に係る光学測定装置の第5実施形態の概略図である。
【図6】従来の光学測定装置の一例を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0078】
1,2,3,4,5 光学測定装置
11,21,31,41,51 基板
12,22,42,52 光源
13,23,43,53 検出部
X 流路
S 微小粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小粒子を導入可能な流路が配設された基板と、
前記微小粒子に対して測定光を照射する光源と、
前記測定光の照射により生じる検出対象光を検出する検出部と、
を少なくとも備え、
前記検出対象光を流路表面で反射又は屈折の少なくともいずれかにより所定方向に出射させるように前記基板の流路表面が処理された光学測定装置。
【請求項2】
前記所定方向は、前記測定光の照射の入射方向と同軸方向であることを特徴とする請求項1記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記流路に、所定波長の光を透過する波長選択膜が少なくとも形成されたことを特徴とする請求項1記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記流路の断面視、前記測定光の入射方向に対する前記流路表面の角度が略45度である領域を少なくとも備えることを特徴とする請求項1記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記基板は、流路層が支持層に積層された構造であることを特徴とする請求項1記載の光学測定装置。
【請求項6】
流路が前記支持層にも配設されていることを特徴とする請求項5記載に光学測定装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光学測定装置を備えた微粒子解析装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−63462(P2009−63462A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232176(P2007−232176)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】