説明

光学特性測定装置及び光学特性測定方法

【課題】任意の受光開き角での測定を可能とし、且つ装置の互換性を保つことを可能とする。
【解決手段】光学特性測定装置を、被測定物を照明する照明部と、前記照明部による照明状態下で前記被測定物により反射される反射光を受光する受光部と、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での前記反射光を前記受光部に受光させる受光制御部と、前記受光部により得られた前記各受光角における測光値に対して、所定の重み付け演算を行うとともに所定の加減演算を行う演算部とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明方向や観察方向によって異なる色彩を有するメタリック塗装やパール塗装などの特殊効果塗膜の光学特性の測定に用いられる光学特性測定装置及び光学特性測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車のボディ塗装などに用いられるメタリック塗料やパールカラー塗料には、薄片状のアルミニウムやマイカなどからなる光輝材が含まれており、この光輝材の向きに起因する反射光のばらつきにより、光輝材からの反射光強度が見る方向によって異なり、これによってメタリック効果やパール効果が得られる。このような性質を有するメタリック塗装やパールカラー塗装などの素材の光学特性を測定する場合は、1つの角度から見た反射光のみで測定を行っても光輝材のばらつきによる光学特性の違いを評価することができないことから、通常、複数の角度の反射光を測定することで前記光学特性の違いを評価する。ここで、複数の角度の反射光を測定できる光学特性測定装置として、多方向照明1方向受光、或いは1方向照明多方向受光方式によるマルチアングル測色計が用いられてきた。
【0003】
前記塗膜の特性として、入射角に応じて分光反射率が変化するので、姿勢差などの影響により測定再現性が悪いという問題がある。これを解決するべく例えば特許文献1には、補正の基礎となる姿勢誤差量を、45°方向の照明に対する反射特性の方向依存性を関数近似して姿勢誤差を推定し、この推定値に基づいて誤差補正を行う技術が開示されている。また、例えば特許文献2には、照明光学系とは別系統の測定系で構成された姿勢誤差検出用照明系(検出専用光源)を備え、姿勢誤差検出用照明系により、測定面に向けて、測定面と直交する面内の略法線角方向から照明光を照明し、その反射光強度に基づいて姿勢誤差を検出する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2001−50817号公報
【特許文献2】特開2006−10508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より高度(高精度)な測色を行うためには、測光するポイント(角度)を増やし、且つ受光光学系の角度純度を高める(受光角分布特性を狭める)必要があるが、そうすると、以前の測定で用いた装置(マルチアングル測色計;同じ測色計或いは別の測色計)の受光光学系の角度純度と異なる角度純度となってしまい、受光開き角が変化するという問題が生じる。受光開き角が変化すると、得られる光学特性(受光角分布特性)値も異なるものとなり、装置(装置間)の互換性が保てなくなる。
【0005】
また、装置の互換性に関して問題となるのは、受光角分布特性が波長依存性を有する場合である。すなわち、或る波長で受光角分布特性が同じとなるように受光光学系を設計したとしても、波長が変わると、得られる光学特性値も異なるものとなり、結局、装置の互換性が保てなくなる。
【0006】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、受光開き角を可変とすることができるすなわち任意の受光開き角での測定が可能であるとともに、受光角分布特性が波長依存性を有する場合であっても(波長依存性を有さない場合も含む)、他の装置による測定値或いは同じ装置による以前の測定値との互換性を保つ(装置の互換性を保つ)ことが可能な光学特性測定装置及び光学特性測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光学特性測定装置は、被測定物を照明する照明部と、前記照明部による照明状態下で前記被測定物により反射される反射光を受光する受光部と、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での前記反射光を前記受光部に受光させる受光制御部と、前記受光部により得られた前記各受光角における測光値に対して、所定の重み付け演算を行うとともに所定の加減演算を行う演算部とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、照明部によって被測定物が照明され、照明部による照明状態下で被測定物により反射される反射光が受光部によって受光される。そして、受光制御部によって、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光が受光部により受光され、演算部によって、受光部により得られた各受光角における測光値に対して、所定の重み付け演算が行われるとともに所定の加減演算が行われる。
【0009】
また、本発明に係る光学特性測定方法は、被測定物を照明し、前記照明状態下で前記被測定物により反射される反射光であって、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光を受光し、前記受光により得られた前記各受光角における測光値に対して、所定の重み付け演算を行うとともに所定の加減演算を行うことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、被測定物が照明され、この照明状態下で被測定物により反射される反射光であって、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光が受光され、この受光により得られた各受光角における測光値に対して、所定の重み付け演算が行われるとともに所定の加減演算が行われる。
【0011】
これらのように、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光が受光部により受光され、この受光により得られた各測光値に対して、所定の重み付け演算が行われるとともに所定の加減演算が行われるので、各測光値から所望の(目標とする)測光値を求めることができる、すなわち、受光部における或る受光開き角(受光角度範囲;角度範囲)での測光値から、任意の(別の)測光値つまり別の受光開き角を求めることができる、すなわち、受光開き角を可変とすることができる。したがって、任意の受光開き角での測定が可能となる。また、当該或る測光値に基づいて任意の測光値を求めることが可能となることで、他の装置による測定値或いは同じ装置による以前の測定値との互換性を保つ(装置の互換性を保つ)ことが可能となる。また、測光値(受光角分布特性)が波長依存性を有する場合であっても、波長毎に重み付けして或る測光値から任意の測光値を求めるようにすることで、前記装置の互換性を保つことが可能となる。
【0012】
また、上記構成において、前記受光制御部は、前記角度範囲内の所定角度ピッチ位置における前記複数の受光角での反射光を前記受光部に受光させることが好ましい。
【0013】
これによれば、受光制御部によって、設定受光角を含む所定の角度範囲内の所定角度ピッチ位置における複数の受光角での反射光が受光部により受光されるので、当該所定角度ピッチ位置における複数の測光値(第1の受光角分布特性)から、目標とする(所望の)任意の測光値(第2の受光角分布特性)を容易に求めることができる。なお、この角度ピッチをより小さくして受光位置(測光値)を多くすることで、より精度良く且つ任意な目標測光値を求めることが可能となる。
【0014】
また、上記構成において、前記受光部は、前記被測定物に入射する入射光の光軸と前記被測定物による反射光の光軸とを含むジオメトリー平面に直交し、且つ前記入射光の光軸と前記反射光の光軸との交点を通る軸を回転軸として回転可能に構成されており、前記受光制御部は、前記受光部を回転させることで前記設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光を該受光部に受光させるようにしてもよい。
【0015】
これによれば、受光部が、被測定物に入射する入射光の光軸と被測定物による反射光の光軸とを含むジオメトリー平面に直交し、且つ入射光の光軸と反射光の光軸との交点を通る軸を回転軸として回転可能に構成され、受光制御部によって、受光部が回転されることで設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光が該受光部に受光されるので、当該複数の受光角での反射光が受光部により受光される構成をシンプルな構成で実現することができる。
【0016】
また、上記構成において、前記受光部は、前記被測定物の測定面に接する中心軸に対して回転対称な反射面を有するトロイダル鏡と、前記中心軸と一致する回転軸を中心として回転可能に構成され、前記トロイダル鏡の反射面で反射された反射光のうち、回転角度に対応する反射光を反射する回転光学系と、前記回転光学系により導かれた光を受光する受光センサとを備え、前記受光制御部は、前記回転光学系を回転させることで前記設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光を該受光部に受光させるようにしてもよい。
【0017】
これによれば、受光部が、被測定物の測定面に接する中心軸に対して回転対称な反射面を有するトロイダル鏡と、中心軸と一致する回転軸を中心として回転可能に構成され、トロイダル鏡の反射面で反射された反射光のうち、回転角度に対応する反射光を反射する回転光学系と、回転光学系により導かれた光を受光する受光センサとを備えたものとされ、受光制御部によって、回転光学系が回転されることで設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光が該受光部に受光されるので、当該複数の受光角での反射光が受光部により受光される構成をコンパクトな構成で実現することができる(装置の小型化を図ることができる)。
【0018】
また、上記構成において、前記重み付け演算における重み値は、前記受光部の受光開き角における前記測光値の特性である既知の第1の受光角分布特性と、該第1の受光角分布特性に基づいて算出する受光角分布特性であって、前記光学特性測定装置又は該装置と異なる別の光学特性測定装置における既知の第2の受光角分布特性との関係から求められる値であることが好ましい。
【0019】
これによれば、重み付け演算における重み値が、受光部の受光開き角における測光値の特性である既知の第1の受光角分布特性と、該第1の受光角分布特性に基づいて算出する受光角分布特性であって、光学特性測定装置又は該装置と異なる別の光学特性測定装置における既知の第2の受光角分布特性との関係から求められる値であるので、当該重み値を用いて、精度良く且つ容易に、受光部により得られた各受光角における測光値(第1の受光角分布特性)から所望の(目標とする)測光値(第2の受光角分布特性)を求めることが可能となる。
【0020】
また、上記構成において、前記第1の受光角分布特性と第2の受光角分布特性との関係は前記角度範囲及び角度ピッチを固定した場合における、以下の(1)式であることが好ましい。
Σ(第1の受光角分布特性×重み値)=第2の受光角分布特性 ・・・(1)
但し、記号「Σ」は、前記所定角度ピッチ位置での測光により求めた各第1の受光角分布特性での和を求めることを示し、記号「×」は乗算を示す。
【0021】
これによれば、第1の受光角分布特性と第2の受光角分布特性との関係が、角度範囲及び角度ピッチを固定した場合における、上記(1)式であるので、当該(1)式という簡易な式を用いて容易に重み値を求めることができる。換言すれば、重み値を用いて、受光部により得られた各受光角における測光値(第1の受光角分布特性)から所望の測光値(第2の受光角分布特性)を容易に求めることができる。
【0022】
また、上記構成において、前記重み値は、前記受光部に受光される光の波長毎に前記(1)式を満たす重み値として算出される値であることが好ましい。
【0023】
これによれば、重み値が、受光部に受光される光の波長毎に(1)式を満たす重み値として算出される値であるので、測光値が波長依存性を有するものであっても、当該測光値(第1の受光角分布特性)から所望の測光値(第2の受光角分布特性)を求めることができ、ひいては、より一層、装置間(測光値間、受光角分布特性間)の互換性を保つことが可能となる。
【0024】
また、上記構成において、前記演算部は、前記測光値に所定の重み付け演算及び所定の加減演算を施してなる被演算測光値に対して、さらに反射特性算出用の所定値を用いた演算を施すことにより前記被測定物の反射特性値を算出することが好ましい。
【0025】
これによれば、演算部によって、測光値に所定の重み付け演算及び所定の加減演算を施してなる被演算測光値に対して、さらに反射特性算出用の所定値を用いた演算が施されることにより被測定物の反射特性値が算出されるので、受光部により得られた各受光角における測光値に基づいて、容易に反射特性値を算出することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光が受光部により受光され、この受光により得られた各測光値に対して、所定の重み付け演算が行われるとともに所定の加減演算が行われるので、各測光値から所望の(目標とする)測光値を求めることができる、すなわち、受光部における或る受光開き角(受光角度範囲;角度範囲)での測光値から、任意の(別の)測光値つまり別の受光開き角を求めることができる、すなわち、受光開き角を可変とすることができる。したがって、任意の受光開き角での測定が可能となる。また、当該或る測光値に基づいて任意の測光値を求めることが可能となることで、他の装置による測定値或いは同じ装置による以前の測定値との互換性を保つ(装置の互換性を保つ)ことが可能となる。また、測光値(受光角分布特性)が波長依存性を有する場合であっても、波長毎に重み付けして或る測光値から任意の測光値を求めるようにすることで、前記装置の互換性を保つことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
図1は、本発明の一実施形態に係る光学特性測定装置の一例であるマルチアングル測色計の外観例を示す図である。図1に示すように、マルチアングル測色計1は、作業者により保持される保持部1aと、該保持部1aの一端側に設けられた操作表示部1bと、前記保持部1aの他端側に設けられた当接部1cとを備えて構成されており、持ち運び可能なポータブル構造(ハンディタイプ)となっている。
【0028】
保持部1aには、被測定物に対する測定動作の開始を指示する入力を行うための測定トリガボタン1a−1が備えられている。測定トリガボタン1a−1は、前記測定動作の開始指示入力の操作性を考慮して、例えば保持部1aを測定者が把持した際に親指が当接する位置に設置されている。操作表示部1bは、測定結果を表示する表示部1b−1と、電源のオンオフを切り替えるための電源ボタン、表示部1b−1による表示動作のオンオフを切り替えるための表示切替ボタン等からなる操作部1b−2とを備える。当接部1cは、被測定物の測定面に接触させる底面1c−1を備えた部位であり、該底面1c−1には測定開口3が穿設されている。
【0029】
図2は、測定開口3近傍の構成を示す断面図である。図2に示すように、当接部1cの底面1c−1は平面をなし、測定開口3は、この平面内で例えば楕円形状を有して形成されている。以下、この平面を開口平面Xといい、また、測定開口3の中心を開口中心O、前記開口平面Xに直交し、開口中心Oを通る直線を法線Gというものとする。なお、図2では、開口平面Xを示すため、当接部1cの底面1c−1と被測定物Sの測定面とを離間して図示しているが、被測定物Sの測定面が均一な平面の場合には、当接部1cの底面1c−1と被測定物Sの測定面と密着する。
【0030】
図3は、前記マルチアングル測色計1の内部構成の一例(第1の実施形態)を示す図である。図4は、マルチアングル測色計1の制御系を示すブロック図である。図3および図4に示すように、マルチアングル測色計1は、照明部10と、受光部20と、制御部30とを備えている。照明部10は、ハロゲンランプやキセノンフラッシュランプ等からなる光源11と、光源11を駆動する発光回路12と、光源11から出力される光束を規制する光束規制板13と、コリメートレンズ14とを備えて構成されている。光源は、法線Gに対して所定角度(例えば45°)を有する位置に設置されている。光束規制板13は、その開口13aがコリメートレンズ14の焦点位置に一致するように配置されており、光束規制板13の開口13aを通過した光源11からの光束は、コリメートレンズ14によってコリメート(集光)されて平行光束となって被測定物Sの測定面に導かれる。
【0031】
受光部20は、被測定物Sから反射された平行光束を集束する受光光学系21と、この受光光学系21の結像位置に配設され、受光光学系21を透過した光を制限する後述の入射スリット22a及び入射光束を波長ごとに分離する後述の回折格子22a(図5参照)を備えた分光部22と、光強度に応じた分光データを出力する受光センサ23とを備えて構成されており、受光光学系21を透過して入射スリット22aに入射した光束の分光強度を測定するものである。図5は、分光部22の一例を示す構成図である。
【0032】
図5に示すように、分光部22は、前記入射スリット22aが適所に形成されたケース22d内に、レンズ22bと回折格子22cとを備えて構成されている。レンズ22bは、入射スリット22aを通過した被測定光を平行光にして回折格子22cへ導くとともに、回折格子22cによって分散された入射スリット22aの分散像を受光センサ23の受光面に結像させる。回折格子22cは、入射した測定光を波長に応じて反射・分散させる機能を有し、受光センサ23上に前記入射スリット22aの分散像を結像させるものである。受光センサ23は、所定の間隔で配列された複数の受光チャンネル(画素)を備えてなり、例えばシリコンフォトダイオードが一方向に1列に配列されたシリコンフォトダイオードアレイにより構成される。受光センサ23の各受光チャンネルに入射した分散光(入射スリット分散像)は、各々のフォトダイオードの光電変換作用により電流に変換される。
【0033】
図3、図4に戻り、受光センサ23の各受光チャンネルから出力されるアナログ受光信号は、図略の増幅回路により増幅処理とA/D変換部24によりA/D変換処理とが行われた後、制御部30により取り込まれ、制御部30において、被測定光の分光強度及び該分光強度に基づく反射特性値が算出される。
【0034】
分光部22は、モータ25からの駆動力を受ける駆動力伝達部材の一例としてのアーム26が接続されている。また、分光部22と受光センサ23とは一体化されている。そして、アーム26がモータ25から駆動力を受けると、分光部22及び受光センサ23は、前記被測定物Sに入射される入射光の光軸L1と前記被測定物Sによる反射光の光軸L2とを含む平面R(図1の紙面:以下、ジオメトリー平面という)に直交し、且つ、前記入射光の光軸と前記反射光の光軸との交点(開口中心O)を通る軸を回転軸として、図1に示す矢印Qの方向に回転する。この構成により、受光部20は反射光の受光位置を変えることができ、複数の受光位置で反射光を受光することができる。なお、前記受光位置は、受光角で規定されるものであり、該受光角とは、本実施形態では、法線Gと受光部20(受光光学系21)の光軸とのなす角をいう。
【0035】
制御部30は、例えばCPU(Central Processing Unit:中央演算処理部)や、そのCPUの動作を規定するプログラムを格納するROM(Read Only Memory)、及び一時的にデータを保管するRAM等の記憶部などを備えて構成されており、マルチアングル測色計1の全体の動作を制御するものである。制御部30は、機能的に、光源11の発光動作を制御する照明制御部31と、受光センサ23の受光動作を制御する受光制御部32と、受光センサ23からの出力信号に基づいて被測定物Sの反射特性値等を求める演算処理部33と、モータ25の駆動を制御する駆動制御部34とを備える。
【0036】
ここで、マルチアングル測色計(以降、適宜、測定器という)の受光角分布特性について説明する。一般的に、受光における受光開き角或いは受光角分布特性は、ある幅を持ち、その特性は、測定器毎に(或いは同じ測定器であっても、例えば前回の測定と今回の測定とで)異なるものとなる。図6(a)は、或る光学特性測定装置(マルチアングル測色計)の受光角分布特性の一例を模式的に示した図であり、横軸は受光角度(受光角;例えば後述の或るアスペキュラー角)、縦軸は受光の相対感度を示す。図6(b)は、図6(a)の光学特性測定装置と互換性をもたせようとする謂わば目標となる光学特性測定装置(マルチアングル測色計)の受光角分布特性の一例を模式的に示した図である。ここでは、図6(b)の受光角分布特性が、図6(a)の受光角分布特性と比べて謂わば広い受光角分布特性となっている場合を考える。
【0037】
図7(a)、(b)は、受光角分布特性の違いにより測定値(測光値)が異なることを説明するための模式図であり、図7(a)は前記図6(a)の受光角分布特性が得られる場合に、図7(b)は前記図6(b)の受光角分布特性が得られる場合に対応している。ただし、図7においては、照明系(光源11)により被測定物Sの測定面を照明したときに該測定面で反射される反射光の強度分布つまり角度毎の反射強度Mを開口中心Oからの距離の大小で示している。この反射強度Mにおいて突出した部分(ピーク位置)は正反射光(正反射光成分)を示し、他の部分は拡散光(拡散光成分)を示す。
【0038】
具体的には図7(a)、(b)は、それぞれ45°照明下における、或る被測定物Sの反射強度M(反射特性)と、符号Aで示す正反射光の位置からアスペキュラー角+15°だけ移動した符号Bで示す測定位置での受光の様子を示している。ただし、図中、符号Jで示す角度すなわち被測定物Sの測定面に対する法線Gからの角度が前記受光角(受光角J)であり、符号K又は符号K’で示す角度が、当該測定位置Bでの受光系(受光部20、具体的には受光光学系21)に対する受光開き角(受光開き角K’、K;この受光開き角のことを「受光開き角」とも表現する)である。同図に示すように、受光開き角K’の方が受光開き角Kよりも大きく、当該受光開き角が大きい方が反射強度Mにおける斜線部の面積(測光値)が大きくなる、すなわち受光開き角Kであるときの受光角分布特性(図6(a))が得られる場合と、受光開き角K’であるときの受光角分布特性(図6(b))が得られる場合とでは、換言すれば、受光角分布特性が狭い測定器の場合と受光角分布特性が広い測定器とでは、測定結果が異なることが分かる。なお、測光値には、光輝材からの様々な反射光成分が含まれていることからも、測光値が違う値になるということは、単に光量が違うのではなく謂わば「色み」が変わることを示している。
【0039】
ところで、受光角分布特性は波長によっても異なる。図8(a)は、波長の違いに応じて、ここでは例えば波長400nm、500nm及び600nmの違いに応じて、受光角分布特性のピーク位置が異なる場合の一例を示している。図6と同様、横軸は受光角、縦軸は相対感度である。このような特性は、例えば測定器の受光光学系の所謂ミキシング性が悪く、受光角毎に入射スリット面(入射スリット22a)への集光特性が変わってしまう場合に現れる。また、図8(b)は、波長の違いに応じて、ここでも同様に例えば波長400nm、500nm及び600nmの違いに応じて、受光角分布特性の広がり方(相対感度が低い部分、或いは受光角分布特性グラフの裾部における広がり)が異なる場合の一例を示している。このような特性は、例えば測定器の受光光学系に光ファイバーを用いた場合に、該光ファイバーが波長によりそのNAが変化することに起因して起こる。
【0040】
このように受光角分布特性は、測定器の違いに応じて、また波長の違いに応じて異なるものとなる。本実施形態では、謂わばこのような受光角分布特性の差違を補間するべく、目標とするつまり所望の受光角分布特性(任意の受光角分布特性)の測光値を、実際に測定して得た受光角分布特性の測定値(測光値)に対して所定の演算を施すことによって求めることを主な特徴点とする。
【0041】
図9(a)、(b)は、測定器で測定して得た受光角分布特性に対して、所定の演算を施す、具体的には所定のウエイト(重み)を掛ける演算を行った後にさらに加減演算を行い、目標となる受光角分布特性(目標受光角分布特性という)の測光値を得ることが可能であることを例示する模式図である。横軸及び縦軸は前記と同様に受光角及び相対感度である。
【0042】
図9(a)は、測定器の受光角分布特性の広がり方を変える場合を想定し、元の受光角分布特性(前記測定器で測定して得た受光角分布特性のことを「元の受光角分布特性」と表現している)よりも広がった受光角分布特性を作り出せることを示すものである。ここでは、図中、点線(破線)で示す各受光角での所謂小さな複数の受光角分布特性を合成して1つの受光角分布特性H(謂わば擬似的な受光角分布特性)を求める。具体的には、点線に示す離散的な受光角の各感度(受光角分布特性は或る受光角における相対感度であることから受光角分布特性を「感度」と表現している。この意味において前記元の受光角分布特性のことを「元感度」とも表現する)に、例えば中心(複数の元感度を全体として見たときに定める所定の中心位置)を境として左右対称なウエイトを掛けて足し合わせることにより、裾が広がった受光角分布特性H(前記元感度を合成してなる「合成感度H」とも表現する)を得ることができる。したがって、さらには、波長毎に角度範囲(受光角の範囲)及びピッチ(例えば後述する受光部20の移動角度ピッチ;0.4°ピッチ)並びにウエイトを適切なものに設定すれば、所望の受光角分布特性(感度)を得ることができる。
【0043】
図9(b)は、測定器の受光角分布特性のピーク位置をシフトさせた受光角分布特性を作り出せることを示すものである。この場合も、点線で示す各受光角での所謂小さな複数の受光角分布特性を合成して1つの受光角分布特性I(擬似的な受光角分布特性)を求める。すなわち、点線に示す離散的な受光角の各感度(元感度、元の受光角分布特性)に中心を境として左右非対称なウエイトを掛けて足し合わせることにより、ピーク位置をシフトさせた受光角分布特性I(合成感度I)を得ることができる。この場合も、波長毎に、角度範囲及びピッチ並びにウエイトを適切なものに設定すれば、所望の受光角分布特性(感度)を得ることができる。
【0044】
一般的に、例えば同じような構造的配置であったとしても、受光光学系の特性などによって受光角分布特性(測光値)が違ってきてしまうので、測定器間の互換性をとることができない。しかしながら、前記のように或る元の受光角分布特性から合成受光角分布特性を作り出すことができるようになれば、測定器間の互換性を保つ、すなわち受光角分布特性(の測光値)が異なる測定器(同じ測定器の場合も含む)であっても、互換性を保つことができるようになる。
【0045】
ところで、前記“ウエイト”は、予め調べて求めておいた自身の測定器における受光角分布特性(受光角分布特性st1)と、予め調べて求めておいた目標となる測定器(自身の測定器でもよいし、別の測定器でもよい)の受光角分布特性(受光角分布特性st2)とから、謂わば逆算して求めたものである。つまり、既知である自身の受光角分布特性を用いて、既知である所望の受光角分布特性を擬似的に作り出せる(これら2つの受光角分布特性の測定値の合わせ込みが行える)ような重み値である。制御部30(例えば演算処理部33)は、この予め求めておいたウエイトデータが記憶されている。ただし、このウエイト値だけを記憶しておいてそのままこの値を用いてもよいし、前記それぞれ既知の受光角分布特性データを記憶しておき、必要に応じて(測定の都度)これらから所要のウエイトを算出するようにしてもよい。
【0046】
また、自身の測定器における受光角分布特性に対するウエイトとは、同じ測定器において或る受光角分布特性を任意な受光角分布特性に変換したいような場合、例えば、或る規格測定位置における角度範囲±5°での受光角分布特性を、同規格測定位置における角度範囲±10°での受光角分布特性に変換したい場合に、この前者の受光角分布特性に対して用いる重み値である。自身の測定器(同じ測定器)における後述の波長毎の受光角分布特性に対しても同様にこのウエイトを用いる方法は適用できる。
【0047】
ウエイトの具体的な算出方法としては、当該ウエイトを「Wt」とすると、
Σ(受光角分布特性st1×Wt)=受光角分布特性st2
の式を満たすウエイトWtを求めるとよい。ただし、Σ(受光角分布特性st1×Wt)は、角度範囲(例えば±1°)及び角度ピッチ(例えば0.4°)の値を固定した状態で求めるものとする。所望の精度が出ない場合には、この角度範囲や角度ピッチを変えることで最適解を求めるようにすればよい。
【0048】
また、前記式からウエイトWtを求めることを、波長毎に行うことで、受光角分布特性が波長依存性を有する場合にも対応することができる。通常、受光角分布特性には波長依存性まで考慮しないが(そこまで考慮して測定器を設計しないが)、本実施形態のように波長毎のウエイト(1つの波長に対するウエイト)を用いる構成とすることで、波長の違いによる受光角分布特性の違いにも対応することができ、つまり或る波長での受光角分布特性から、目標とする別の波長での受光角分布特性を作り出すことが可能となり、同じ測定器或いは異なる測定器間における、測定精度及び測定自由度が高くなり、互換性が高くなる。なお、当該「波長」とは、分光部22による分光後の波長域、例えば反射色での400nm〜700nmの可視域における例えば10nmピッチ毎の波長を示している。
【0049】
なお、前記受光角分布特性st1からの前記受光角分布特性st2の作成は、実際には、本実施形態の測定器と、例えば業界標準の測定器とを用意し、同じ測定試料を測定してその測定結果が一致するように当該ウエイトを掛けていくようにして行う。原理的には、上式のように受光角分布特性st1に対してウエイトを掛けると受光角分布特性st2が得られる。
【0050】
また、上述では受光角分布特性H、Iが対称形(左右対称)となる例を示したが、非対称となってもよい。実際には被測定物Sに対して受光部20が回転方向に傾いた状態で測光することからも一般的には当該非対称となる。また、各受光角分布特性を謂わば変換して所望の受光角分布特性を求めるべく、前記ウエイトを掛けたり加減演算を行うことを「受光角分布特性変換演算」と表現する。
【0051】
また、前記図9(a)、(b)の各場合において、ウエイトを掛ける代わりに、測定時における受光センサ23の露光時間(露光量)を変えてもよい。この場合、全波長一律のウエイトを掛けたことに相当するので、波長毎にウエイトを変える(異なる値のウエイトを用いる)必要がない場合であれば、余計な演算を省略することができ(演算時間を短縮することができ)、ひいてはマルチアングル測色計1による測定効率を向上させることができる。
【0052】
このように所望の受光角分布特性を得ることに関し、本実施形態では、制御部30における各機能部31〜33が以下のような処理を行う。図10は、制御部30による一連の処理を示すフローチャートである。図10に示すように、制御部30は、先ずダーク測光を行う(ステップS1)。このダーク測光とは、受光センサ23や受光部20に備えられる各種回路のオフセット値(受光センサ23に光が略完全に入射されない状態で得られる出力値)をキャンセルするべく、光源11を消灯させた状態で受光センサ23の受光動作を行わせて出力値を得る動作である。前記出力値(オフセット値)は、制御部30内のRAMやROM等の記憶部に格納される。ただし、電気的に安定している場合はこのダーク測光を省略してもよい。
【0053】
次に、制御部30は、光源11を点灯させ(ステップS2)、受光部20を測定位置近傍、具体的には測定位置をゼロとすると、この測定位置から所定角度例えば−1°ずれた位置まで移動させる(ステップS3)。ところで、ここでいう「測定位置」とは、例えばDIN(ドイツ工業標準規格)の規格では、メタリック塗装の測色を行う場合、正反射光の位置から法線G側へ向けて+15°、+25°、+45°、+75°、+110°の各角度(以下、アスペキュラー角という)だけ移動した位置が測定位置として設定されるが、このうちのいずれかの角度の測定位置、このステップS3では例えば+15°の測定位置を示している。したがって、ステップS3では、この+15°よりも−1°移動した位置つまりアスペキュラー角+14°の位置まで受光部20(の光軸位置)が移動することになる。
【0054】
制御部30は、移動したこの測定位置で受光部20に測光動作を行わせる。このとき、受光部20による測光回数をカウントするカウンタ(図示省略)を動作させてそのカウント値NをN=0に設定する(ステップS4)。次に、受光部20を、予め定められた比較的微小な角度ピッチ(例えば0.4°)だけ図1に示す矢印Q方向における法線G側に回転移動させ(ステップS5)、その位置で受光部20に次の測光動作を行わせる(ステップS6)。このとき測光回数の現在のカウント値Nに+1(カウントアップ)する(N=N+1)(ステップS7)。制御部30は、カウント値Nが予め定められた値(Ntとする)例えば「5」に達したか(N=Nt)否かを判定し、「5」に達していない場合には(ステップS8のNO)、ステップS5に戻り、「5」に達するまでステップS5〜S7の動作を繰り返し実行する。これにより、前記微小角度ピッチ0.4°の回転移動が順に5回実施され、各位置での測光動作が合計6回行われる。なお、このN=0〜N=5までの回転移動により、+15°を中心とした前記−1°から+1°の範囲(15°の±1°の角度範囲;0.4°×5=2°の範囲)を移動することになる。
【0055】
カウント値が「5」に達するとすなわち前記15°の±1°の角度範囲における0.4°ピッチの全ての位置での測定動作が完了すると(ステップS8のYES)、制御部30は、前記+15°、+25°、+45°、+75°、+110°の全ての角度位置での測定が完了したか否かを判別し、完了していない場合には(ステップS9のNO)、ステップS3に戻って、次の測定位置つまり+25°の位置、具体的には前記と同様、+25°よりも−1°移動した位置(+24°の位置)まで受光部20を回転移動させ、同様に0.4°ずつ回転移動して測定を行い、以下同様に各測定位置+45°±1°、+75°±1°、+110°±1°においてステップS4〜S8の動作を繰り返し実行する。なお、このことは、測定毎に設定受光角とその近傍の複数の受光角を細かく測光すると言える。当該全ての位置での測定が完了すると(ステップS9のYES)、制御部30は、光源11を消灯させるとともに(ステップS10)、受光部20を所定の初期位置例えば正反射光の位置に移動させる(ステップS11)。
【0056】
そして、制御部30(演算処理部33)は、前記DIN規格による+15°、・・・+110°の各測定位置(規格測定位置と表現する)における0.4°毎の各測定位置(ピッチ測定位置と表現する)での測光動作により受光センサ23から得られた各出力値に基づいて、目標とする受光角分布特性の測光値を算出する。具体的には、この各出力値から、前記ステップS1で格納しておいたオフセット値を差し引いた後、受光角分布特性変換演算を行うつまりこの各出力値に対して所定のウエイトを掛けたり(重み付けを行う)加減演算を行うことにより、所望の受光角分布特性相当の測光値を求める(ステップS12)。さらに制御部30(演算処理部33)は、ステップS12で求めた測光値や、その他反射特性値算出演算に必要な校正係数を用いて(乗じて)、当該各規格測定位置での反射特性値を算出する(ステップS13)。この反射特性値を算出するための演算を「反射特性値算出演算」と表現する。
【0057】
なお、前記角度範囲は±1°に限らず、例えば±5°など任意の角度範囲でよい。移動角度ピッチも前記0.4°に限らず、0.1°や0.2°或いは1°など任意のピッチでよい。この場合、例えば0.2°ピッチで±1°の範囲、或いはこれよりも所謂粗い測定を行う場合の例えば1°ピッチで±5°の範囲などとしてもよい。また、前記規格測定位置は、+15°、・・・+110°以外の角度であってもよいし、DIN規格による測定位置を採用せずともよい。要は任意に設定した角度位置で評価してよい。
【0058】
本件は、前記各実施形態に代えて、或いは前記各実施形態に加えて次の変形形態も採用可能である。
[1]被測定物Sから反射される反射光を受光する受光角を変える構成は、前記実施形態のように一体化された分光部22及び受光センサ23をモータ25により図1に示す矢印Qの方向に駆動する構成に限らず、次のような構成も採用可能である。図11は、マルチアングル測色計の内部構成の他の例を示す断面図、図12は、図11の法線Gにおける側断面図、図13は、図11に示す光源の位置における側断面図、図14は、マルチアングル測色計の内部構成を立体的に示した斜視図である。
【0059】
図11〜図14に示すように、本実施形態のマルチアングル測色計100は、測定面Saに接する中心軸Z(図12〜図14参照)に対して回転対称の反射面を有するトロイダル鏡110と、前記測定面Saに対して照明光を照射する照明部120と、前記測定面Saからの反射光を受光する受光部130と、制御部30とを備えている。なお、制御部30は、前記第1の実施形態における制御部30と同様である。
【0060】
トロイダル鏡110は、互いに直交する面内で異なる断面を有する凹面鏡である。本実施形態で例示しているトロイダル鏡110は、中心軸Zを有し、この中心軸Zに直交する面内の断面形状は図11に示すように比較的大きな円弧111とされ、中心軸Zを含む面内の断面形状は図12に示すように比較的小さい円弧112とされた、半円環状の光学部材である。すなわち、測定面Saの中心Pにおける法線Gを含む面を測定平面R(図11参照)とすると、トロイダル鏡110は、前記測定平面Rに直交し且つ前記測定面Saに接する中心軸Zを有する。また、トロイダル鏡110は、前記中心軸Zに直交する面内では、中心軸Zを中心とする大きな円弧状の断面(円弧111)を有し、前記中心軸Zを含む面内では、放物線状の断面(円弧112)を有している。但し、前記円弧112(放物線)は、前記測定平面Rに平行で所定距離だけ離れた面内の中心軸Zを中心とし、前記円弧111のおよそ1/2の半径を有する焦点円周111f上に焦点Fを有し、前記焦点Fから中心軸Zに降ろした垂線hを対称軸とする放物線である。
【0061】
このようなトロイダル鏡110を具備させることで、測定面Saからの反射光のうち、前記中心軸Zに垂直な測定平面Rに平行で、且つ前記中心軸Z上で反射された反射光がトロイダル鏡110により反射される。そして、当該トロイダル鏡110の焦点円周111f上の、前記測定面Saで反射される前記反射光の反射方向に応じた位置に光束が収束されるようになる。
【0062】
照明部120は、トロイダル鏡110の焦点円周111f上であって、法線Gに対して45°傾いた位置に配置された光源121を有している。光源121から出力される照明光束は、直接測定面Saへ照射されるのではなく、図11、図13に示すように、一旦トロイダル鏡110で反射されることで平行光束に変換された上で測定面Saに照射される。このような構成とすることで、測定面Saの周囲に光源121と前記第1の実施形態のようなコリメートレンズ14(図3参照)とを設置する構成に比べて、照明部120を大幅に小型化できるようになる。
【0063】
受光部130は、回転光学系として機能する平面鏡131と、リレー光学系としてのリレーレンズ132とを有する受光光学系と、前記実施形態と略同様の分光部22及び受光センサ23とを備える。なお、リレーレンズ132は、回転しない固定光学系である。分光部22及び受光センサ23は、前記実施形態と略同様であるからその説明を省略し、前記実施形態と同一の番号を付している。
【0064】
平面鏡131は、楕円形(図14参照)を有する高反射率の反射面を有する光学部品であって、前記トロイダル鏡110の中心軸Zと一致する回転軸131x(図12参照)を有している。具体的には、平面鏡131は、回転軸131xに対して所定角度だけ傾斜して設置されており、制御部30により、回転軸131x周り(図11、図14に示す矢印cの方向)に回転駆動されるようになっている。平面鏡131の回転範囲は、トロイダル鏡110における前記円弧111の全範囲に対向できるよう、回転軸131x周りに180°程度回転するように設定されている。
【0065】
すなわち、平面鏡131は、トロイダル鏡110で反射され焦点円周111f上に収束した全ての光束が入射可能な位置に、且つ、中心軸Z(回転軸131x)の方向に前記光束を反射させることが可能な所定の傾斜角度で回転自在に配置される。そして、平面鏡131の回転角度により、前記焦点円周111f上における光束の収束位置が選択され、特定方向の光束のみが分光部22の入射スリット22a(入射開口)へ導かれる。このように、平面鏡131の回転により、前記被測定物Sから反射される反射光のうち、受光する反射光を変えることができ、ひいては複数の受光角で反射光を受光することができる。なお、本実施形態における受光角とは、測定面Saで反射されトロイダル鏡110に入射される光束(後述する反射光束121c)の光軸と法線Gとのなす角をいう。
【0066】
図15は、平面鏡131の機能を説明するための図であって、図14に示した平面鏡131の反射面と中心軸Zとの交点Tを通り、中心軸Zに直交する面における断面を模式的に示す図である。図15の実線で示すように、平面鏡131の断面の稜線が測定面Saに平行な場合、測定面Saからの反射光のうち、前記法線Gに一致する半径RP1に平行な成分が、トロイダル鏡110における前記測定面Saと正対する反射面部分A1で反射され、焦点円周111f上の点F1に収束された後、入射スリット22aへ選択的に再収束される。
【0067】
一方、図15の点線で示すように、平面鏡131の断面の稜線が測定面Saに平行な状態から所定角度θだけ回転した場合、前記法線Gから角度θだけ回転した半径RP2に平行な成分が、トロイダル鏡110における前記測定面Saと正対する反射面部分A2で反射され、焦点円周111f上の点F2に収束された後、入射スリット22aへ選択的に再収束される。このように平面鏡131は、その回転角度に応じて反射光の方向を選択し、入射スリット22aへ入射させることができる。すなわち、平面鏡131は、照明方向に対する受光方向の角度が、該平面鏡131の回転角度に応じて可変とされるものである。リレーレンズ132は、正の光学的パワーを有する光学レンズからなり、平面鏡131で反射された中心軸Z(回転軸131x)方向の反射光を、入射スリット22aに収束させるものである。これにより、平面鏡131の回転角度に応じて選択された焦点円周111f上の所定位置に収束した光束が入射スリット22aに入射することとなる。
【0068】
以上のように構成されたマルチアングル測色計100の動作(光路)を、図11、図12、図14を参照しつつ説明する。法線Gに対して45度傾いた位置に配置された光源121から、トロイダル鏡110に向けて出力された光束121aは、トロイダル鏡110により反射され、測定平面Rに平行であって対法線角45度の方向の平行光束121bとなって測定面Saに照射される。前記平行光束121bは、この測定面Saにより当該測定面Saの反射特性に応じて反射される。
【0069】
この反射光のうち、前記測定平面Rに平行な成分である反射光の光束121c(図11、図12では、法線G方向の光束のみを示している)が、トロイダル鏡110にて反射される。そして、この反射光束121dは、トロイダル鏡110の円弧112が前記垂線hを対象軸とする放物線とされていることから、焦点円周111f上の、前記測定面Saで反射される前記反射光の反射方向に応じた位置(トロイダル鏡110での反射方向に依存する点)に収束される。
【0070】
焦点円周111f上の各点は、前記平面鏡131とリレーレンズ132とによって、分光部22の入射スリット22aと結像関係を有する。また、平面鏡131の回転によって、前記焦点円周111f上の各点に収束した光束が選択される。したがって、平面鏡131の回転角に応じて、トロイダル鏡110から入射スリット22aへ至る光路が形成される。すなわち、平面鏡131で選択された焦点Fからの拡散光束121eは、平面鏡131にて中心軸Z(回転軸131x)方向へ反射され、リレーレンズ132へ入射する。そして、該リレーレンズ132により収束された光束121fとされて入射スリット22aへ入射する。
【0071】
このとき、受光センサ23により計測される分光強度は、平面鏡131の回転角度で決定する方向の反射光の分光強度となる。図11の例では、平面鏡131の回転角度が、法線G方向の反射光が選択される回転角度とされているので、前記照明光に対する対法線角0度方向の反射光の分光強度が測定されることとなる。
【0072】
本変形形態[1]でも上記実施形態(図10のフローチャートでの測定動作)と同様に、制御部30によって、順に例えば+15°、+25°、+45°、+75°、+110°の各規格測定位置における±1°の角度範囲での0.4°毎のピッチ測定位置で測光動作を行い、この測光動作により受光センサ23から得られた各出力値に基づいて、目標とする受光角分布特性の測光値を算出する(受光角分布特性変換演算を行う)とともに、当該算出した測光値や、その他反射特性値算出演算に必要な校正係数を用いて当該各規格測定位置での反射特性値を算出する(反射特性値算出演算を行う)。前記実施形態では、受光センサ23(受光部20)を回転移動させることで、任意の受光角から受光する構成であったが、変形形態[1]では、受光センサ23は固定しておいて、平面鏡131を回転させてトロイダル鏡110の各方向からの反射光を受光センサ23に入射させることで任意の受光角から受光する構成としている。換言すれば、測定位置(規格測定位置、ピッチ測定位置)の移動を、平面鏡131を回転させて該回転角度に応じて受光方向の角度を変化させることで実現している。この測定動作(演算方法)は、以下の変形形態[2]でも同様である。
【0073】
[2]前記変形形態[1]を実用化するに際しては、次の(1)〜(3)の点を解決することが望ましい。
(1)平面鏡131の回転軸131x、リレーレンズ132の光軸及び分光部22の入射スリット22aが、測定面Saに接するトロイダル鏡110の中心軸Zに一致する構成であることから、平面鏡131、リレーレンズ132及び分光部22の一部が、測定面Saよりも下側に配置され(図12参照)、測定面Saとマルチアングル測色計100の一部とが干渉することから大きな被測定物を測定対象とすることができない。
(2)トロイダル鏡110で反射された光束は、焦点円周111f上の各点に収束した後、再び拡散して平面鏡131、リレーレンズ132に入射するため、大きな有効径を有する平面鏡131やリレーレンズ132を必要とし、マルチアングル測色計100が大型化する懸念がある。
(3)光源11の変動をモニタする参照光学系を組み込む必要がある。
【0074】
図16は、前記(1)〜(3)の点を考慮したマルチアングル測色計200の構成を示す正面図であり、図17は、図16の側断面図である。このマルチアングル測色計200が、先に説明した変形形態[1]のマルチアングル測色計100と相違する点は、トロイダル鏡110と被測定物Sとの間に、トロイダル鏡110の実際の中心軸Zと所定の角度をなして前述の測定平面R(図11、図12参照)を折り曲げる反射鏡201を備えている点である。これにより、前記(1)の問題を解消することができ、自動車ボティのような大きなサイズの測定面Saの光学特性の測定を行うことができる。また、リレー光学系として平面鏡131と焦点円周111fとの間に第2リレーレンズ202を配置した点、及び参照光学系250を具備させた点においてもマルチアングル測色計100と相違する。これにより、前記(2)、(3)の問題を解消している。以下、これら相違点を中心に説明する。なお、前記変形形態[1]と同様の機能を有する部材については、その説明を省略し、前記変形形態[1]と同一の番号を付するものとする。
【0075】
反射鏡201は、細長い矩形状を有する平面ミラーからなり、トロイダル鏡110の中心軸Zとトロイダル鏡110の反射面との間に、測定平面Rを90°折り曲げる傾斜角度で固定して配置されている(図17参照)。なお、測定面Saの位置は、反射鏡201で光路が折り曲げられるものの、実質的にはトロイダル鏡110の中心軸Zに接する位置と等価な位置である。このように、トロイダル鏡110と測定面Saとの関係については、先のマルチアングル測色計100のようにトロイダル鏡110の中心軸Zに実際に接するように測定面Saを配置しても、このマルチアングル測色計200のように反射鏡201を介在させることで、実際には中心軸Zに接していないが接している態様と等価な態様で測定面Saを配置することができる。
【0076】
リレー光学系は、平面鏡131と入射スリット22aとの間に配置された第1リレーレンズ132に加えて、平面鏡131と焦点円周111fとの間に配置された第2リレーレンズ202とを備えて構成されている。第2リレーレンズ202は、図示を簡略化しているが、平面鏡131が回転駆動されると、該平面鏡131と一体的に回転する。第2リレーレンズ202を加えることで、焦点円周111f上の各点に収束した光束の拡散を抑えることができ、これにより平面鏡131及び第1リレーレンズ132に入射する光束が絞られることから、平面鏡131並びに第1リレーレンズ132の有効径を抑えることが可能となる。従って、マルチアングル測色計100のコンパクト化が図れる。
【0077】
参照光学系250は、拡散板251と参照用ファイバ252とを具備してなり、トロイダル鏡110の中心軸Z方向に延設された延長部110xで反射された参照光束260r(光源11から出力される光束の一部)が入射する位置に設置されている。拡散板251は、参照光学系250の入射面を構成するものであって、入射光を拡散透過させる性質を有する光学部材からなり、トロイダル鏡110の中心軸Z上に配置される。なお、拡散板251は、図17に示すように、反射鏡201と干渉しない位置に設置されている。また、参照用ファイバ252は、前記拡散板251の裏面側にその入射端252aが配置され、拡散板251に入射しこの拡散板251を拡散透過した参照光束260rの一部の光束251rが参照用ファイバ252の入射端252aに参照光として入射する。
【0078】
なお、前記拡散板251を設置せず、参照用ファイバ252の入射端252aを、トロイダル鏡110の中心軸Z上に直接配置して参照光を取り入れるようにしても良い。しかしながら、この実施形態のように、拡散板251を介して参照用ファイバ252の入射端252aに参照光を取り入れる構成としておけば、拡散板251によって拡散された参照光束260rの一部が入射端252aに入射することから、例えば焦点円周111f上に複数の光源を配置したような場合であっても、各方向の光源についての参照光を参照用ファイバ252の入射端252aに取り入れることができるという利点がある。
【0079】
本実施形態の分光部22には、リレー光学系を経由する反射光が入射する前述の入射スリット22aと、参照光を入射させるための参照光スリット22eとの2つの入射スリットを備えるデュアルチャンネル型の構成を有する。入射スリット22aは、中心軸Zの延長線上に配置され、また、参照光スリット22eには、前記参照用ファイバ252の出射端252bが接続される。
【0080】
平面鏡131を回転駆動させる機構として、本実施形態では、パルスモータ及びパルスモータ駆動回路を備えるモータ部253を用いる例を示している(図17参照)。前記パルスモータの出力軸は、平面鏡131の回転軸253aに直結されており、パルスモータ駆動回路から所定の駆動パルスがパルスモータに与えられることで、平面鏡131が回転軸253a周りに回転駆動されるように構成されている。モータ駆動回路の動作は、制御部30により制御される。
【0081】
このように構成されたマルチアングル測色計200の動作(光路)を、図16及び図17を参照しつつ説明する。法線Gに対して45度傾いた位置に配置された光源11から出力された光束121aは、トロイダル鏡110にて反射され、対法線角45度の方向の平行光束121bとなって反射鏡201に入射され、該反射鏡201で反射された平行光束121cが測定面Saに照射される。この測定面Saにて、当該測定面Saの反射特性に応じて前記平行光束121cが反射され、その反射光束121dが再び反射鏡201に入射して、反射される。
【0082】
この反射光のうち、中心軸Zに垂直な測定平面Rに平行な成分である反射光の光束121eがトロイダル鏡110にて反射される。そして、この反射光束121fは、トロイダル鏡110の円弧112が前記垂線hを対象軸とする放物線とされていることから、焦点円周111f上の、前記測定面Saで反射される前記反射光の反射方向に応じた位置121gに収束される。この収束位置121gは、前述の通り平面鏡131の回転角に応じて選択される。その後、平面鏡131で選択された収束位置121gからの拡散光束121hは、第2リレーレンズ202により絞られた上で、この透過光束121iが平面鏡131にて中心軸Z方向へ反射され、リレーレンズ132へ入射する。そして、該リレーレンズ132により収束され、その光束121jが入射スリット22aへ入射する。
【0083】
一方、参照光については、光源121から出力される光束の一部であってトロイダル鏡110の延長部110xで反射された参照光束260rが拡散板251に照射され、拡散板251を拡散透過した光の一部が参照光として参照用ファイバ252の入射端252aに入射する。そして、参照用ファイバ252により前記参照光が伝送されて、参照光スリット22eへ入射する。
【0084】
[3]前記変形形態[1]、[2]では、光源121を、焦点円周111f上に配置する例について例示したが、この形態に代えて、図18に示すような構成を有する照明部120’を設置しても良い。なお、図18は、前記変形形態[2]の構成に、本実施形態の構成を適用した図を示している。図18に示すように、照明部120’は、光源121、光源反射鏡122及び集光レンズ123を備えて構成されている。光源反射鏡122は、トロイダル鏡110の焦点円周111f上において所定の角度で配置され、光源121から出力された、集光レンズ123で収束された光束124aを反射し、トロイダル鏡110の反射面に拡散光束124bとして射出する。この拡散光束124bは、トロイダル鏡110で反射されることで平行光束124cとされ、測定面Saに(前記変形形態[1]の場合は直接測定面Saに、また、前記変形形態[2]の場合は反射鏡201を介して測定面Saに)照射される。なお、トロイダル鏡110の延長部110xで反射された光束124aは、参照光束260rとして拡散板251(図17参照)上に照射される。
【0085】
[4]変形形態[1]〜[3]のようなトロイダル鏡110を製造する場合に、トロイダル鏡110全体を一体成型で製造する方法を採用すると、均一で高い反射率を曲面の内面全域で確保することが難しい。そこで、トロイダル鏡110を、分割した複数の部品から構成されるようにし、これら各部品を繋ぎ合わせて(結合して)トロイダル鏡110を構成するようにするとよい。ただし、この場合、製造上の誤差により図19の矢印Wで示すような各部品の繋ぎ目部分の表面には凹部や凸部が生じ、トロイダル鏡110の反射面の曲面連続性が損なわれる。このような繋ぎ目部分では、図20に示すように、光の反射が乱れて光の反射率にロスが生じる。そして、この繋ぎ目部分が、被測定物Sの測定面Saから受光センサ23により受光されるまでの光路上に位置するときには、受光センサ23によりスキャンを行ったときに平面鏡131の回転角度に応じて損失量が変化し、その損失量の変化が誤差となって現れる。そこで、前記繋ぎ目部分が、照明に使うエリアに位置すれば、すなわち光源121から被測定物Sの測定面Saまでの光路上に位置するように各部品の設計を行えば、平面鏡131の回転角度が変化しても損失量は略一定となるので、前述のような誤差は殆ど発生しない(予め校正しておけばこの誤差をキャンセルできる)。
【0086】
以上のように、本実施形態における光学特性測定装置(マルチアングル測色計1、100、200)によれば、照明部(照明部10、120)によって被測定物(被測定物S)が照明され、照明部による照明状態下で被測定物により反射される反射光が受光部(受光部20、130)によって受光される。そして、受光制御部(制御部30)によって、予め設定された設定受光角(規格測定位置)を含む所定の角度範囲内(設定受光角の近傍)における複数の受光角(角度ピッチ位置)での反射光が受光部により受光され、演算部(制御部30、演算処理部33)によって、受光部により得られた各受光角における測光値(元感度、元の受光角分布特性)に対して、所定の重み付け演算が行われるとともに所定の加減演算が行われる。
【0087】
また、本実施形態における光学特性測定方法によれば、被測定物が照明され、この照明状態下で被測定物により反射される反射光であって、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内(設定受光角の近傍)における複数の受光角での反射光が受光され、この受光により得られた各受光角における測光値に対して、所定の重み付け演算が行われるとともに所定の加減演算が行われる。
【0088】
これらのように、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光が受光部により受光され、この受光により得られた各測光値に対して、所定の重み付け演算が行われるとともに所定の加減演算が行われるので、各測光値から所望の(目標とする)測光値を求めることができる、すなわち、受光部における或る受光開き角(受光角度範囲;角度範囲)での測光値(元感度、元の受光角分布特性)から、任意の(別の)測光値つまり別の受光開き角(合成受光角分布特性、受光角分布特性H、I、合成感度H、I)を求めることができる、すなわち、受光開き角を可変とすることができる。したがって、任意の受光開き角での測定が可能となる。また、当該或る測光値に基づいて任意の測光値を求めることが可能となることで、他の装置による測定値或いは同じ装置による以前の測定値との互換性を保つ(装置の互換性を保つ)ことが可能となる。また、測光値(受光角分布特性)が波長依存性を有する場合であっても、波長毎に重み付けして或る測光値から任意の測光値を求めるようにすることで、前記装置の互換性を保つことが可能となる。
【0089】
また、上記構成において、受光制御部によって、設定受光角を含む所定の角度範囲(例えば±1°)内の所定角度ピッチ位置(例えば0.4°ピッチ毎の位置)における複数の受光角での反射光が受光部により受光されるので、当該所定角度ピッチ位置における複数の測光値(第1の受光角分布特性)から、目標とする(所望の)任意の測光値(第2の受光角分布特性)を容易に求めることができる。なお、この角度ピッチをより小さくして受光位置(測光値)を多くすることで、より精度良く且つ任意な目標測光値を求めることが可能となる。
【0090】
また、上記構成において、受光部が、被測定物に入射する入射光の光軸と被測定物による反射光の光軸とを含むジオメトリー平面に直交し、且つ入射光の光軸と反射光の光軸との交点を通る軸を回転軸として回転可能に構成され、受光制御部によって、受光部が回転されることで設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光が該受光部に受光されるので、当該複数の受光角での反射光が受光部により受光される構成をシンプルな構成で実現することができる。
【0091】
また、上記構成において、受光部が、被測定物の測定面に接する中心軸に対して回転対称な反射面を有するトロイダル鏡(トロイダル鏡110)と、中心軸と一致する回転軸を中心として回転可能に構成され、トロイダル鏡の反射面で反射された反射光のうち、回転角度に対応する反射光を反射する回転光学系(平面鏡131)と、回転光学系により導かれた光を受光する受光センサ(受光センサ23)とを備えたものとされ、受光制御部によって、回転光学系が回転されることで設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光が該受光部に受光されるので、当該複数の受光角での反射光が受光部により受光される構成をコンパクトな構成で実現することができる(装置の小型化を図ることができる)。
【0092】
また、上記構成において、重み付け演算における重み値(ウエイト、Wt)が、受光部の受光開き角における測光値の特性である既知の第1の受光角分布特性と、該第1の受光角分布特性に基づいて算出する受光角分布特性であって、光学特性測定装置又は該装置と異なる別の光学特性測定装置における既知の第2の受光角分布特性との関係から求められる値であるので、当該重み値を用いて、精度良く且つ容易に、受光部により得られた各受光角における測光値(第1の受光角分布特性)から所望の(目標とする)測光値(第2の受光角分布特性)を求めることが可能となる。
【0093】
また、上記構成において、第1の受光角分布特性と第2の受光角分布特性との関係が、角度範囲及び角度ピッチを固定した場合における、以下の(1)式であるので、当該(1)式という簡易な式を用いて容易に重み値を求めることができる。換言すれば、重み値を用いて、受光部により得られた各受光角における測光値(第1の受光角分布特性)から所望の測光値(第2の受光角分布特性)を容易に求めることができる。
Σ(第1の受光角分布特性×重み値)=第2の受光角分布特性 ・・・(1)
但し、記号「Σ」は、前記所定角度ピッチ位置での測光により求めた各第1の受光角分布特性での和を求めることを示し、記号「×」は乗算を示す。ただし、この(1)式は、上述のΣ(受光角分布特性st1×Wt)=受光角分布特性st2の式を示すものである。
【0094】
また、上記構成において、重み値が、受光部に受光される光の波長毎に(1)式を満たす重み値として算出される値であるので、測光値が波長依存性を有するものであっても、当該測光値(第1の受光角分布特性)から所望の測光値(第2の受光角分布特性)を求めることができ、ひいては、より一層、装置間(測光値間、受光角分布特性間)の互換性を保つことが可能となる。
【0095】
さらに、上記構成において、演算部によって、測光値に所定の重み付け演算及び所定の加減演算を施してなる被演算測光値に対して、さらに反射特性算出用の所定値を用いた演算が施されることにより被測定物の反射特性値が算出されるので、受光部により得られた各受光角における測光値に基づいて、容易に反射特性値を算出する(反射特性を求める)ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の一実施形態に係る光学特性測定装置の一例であるマルチアングル測色計の外観例を示す図である。
【図2】測定開口近傍の構成を示す断面図である。
【図3】上記マルチアングル測色計の内部構成の一例(第1の実施形態)を示す図である。
【図4】上記マルチアングル測色計の制御系を示すブロック図である。
【図5】上記マルチアングル測色計の分光部の一例を示す構成図である。
【図6】(a)は、或る光学特性測定装置(マルチアングル測色計)の受光角分布特性の一例を模式的に示した図である。(b)は、(a)の光学特性測定装置と互換性をもたせようとする目標となる光学特性測定装置(マルチアングル測色計)の受光角分布特性の一例を模式的に示した図である。
【図7】受光角分布特性の違いにより測定値(測光値)が異なることを説明するための模式図であり、(a)は上記図6(a)の受光角分布特性が得られる場合に、図7(b)は上記図6(b)の受光角分布特性が得られる場合に対応する図である。
【図8】(a)は、波長の違いに応じて受光角分布特性のピーク位置が異なる場合の一例を示す図である。(b)は、波長の違いに応じて、受光角分布特性の広がり方が異なる場合の一例を示す図である。
【図9】(a)、(b)は、測定器で測定して得た受光角分布特性に対して、所定の演算を施す、具体的には所定のウエイト(重み)を掛ける演算を行った後にさらに加減演算を行い、目標となる受光角分布特性(目標受光角分布特性という)の測光値を得ることが可能であることを例示する模式図である。
【図10】制御部による一連の処理を示すフローチャートである。
【図11】マルチアングル測色計の内部構成の他の例を示す断面図である。
【図12】図11の法線Gにおける側断面図である。
【図13】図11に示す光源の位置における側断面図である。
【図14】マルチアングル測色計の内部構成を立体的に示した斜視図である。
【図15】平面鏡の機能を説明するための図である。
【図16】マルチアングル測色計の他の構成を示す正面図である。
【図17】図16の側断面図である。
【図18】照明部の変形形態を示す図である。
【図19】トロイダル鏡を複数の部品で構成した場合を示す図である。
【図20】繋ぎ目部分における光の反射について説明するための図である。
【符号の説明】
【0097】
1、100、200 マルチアングル測色計
3 測定開口
10、120 照明部
11、121 光源
20、130 受光部
23 受光センサ
25 モータ
26 アーム
30 制御部
31 照明制御部
32 受光制御部
33 演算処理部
34 駆動制御部
110 トロイダル鏡
131 平面鏡
131x 回転軸
201 反射鏡
253 モータ部
253a 回転軸
A 開口中心
F 焦点
G 法線
H、I 受光角分布特性、合成感度
J 受光角
K、K’ 受光開き角
M 反射強度
R 測定平面、ジオメトリ平面
Sa 測定面
X 開口平面
Z 中心軸
S 被測定物
Sf 光輝材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物を照明する照明部と、
前記照明部による照明状態下で前記被測定物により反射される反射光を受光する受光部と、
予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での前記反射光を前記受光部に受光させる受光制御部と、
前記受光部により得られた前記各受光角における測光値に対して、所定の重み付け演算を行うとともに所定の加減演算を行う演算部と
を備えることを特徴とする光学特性測定装置。
【請求項2】
前記受光制御部は、
前記角度範囲内の所定角度ピッチ位置における前記複数の受光角での反射光を前記受光部に受光させることを特徴とする請求項1に記載の光学特性測定装置。
【請求項3】
前記受光部は、
前記被測定物に入射する入射光の光軸と前記被測定物による反射光の光軸とを含むジオメトリー平面に直交し、且つ前記入射光の光軸と前記反射光の光軸との交点を通る軸を回転軸として回転可能に構成されており、
前記受光制御部は、
前記受光部を回転させることで前記設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光を該受光部に受光させることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学特性測定装置。
【請求項4】
前記受光部は、
前記被測定物の測定面に接する中心軸に対して回転対称な反射面を有するトロイダル鏡と、
前記中心軸と一致する回転軸を中心として回転可能に構成され、前記トロイダル鏡の反射面で反射された反射光のうち、回転角度に対応する反射光を反射する回転光学系と、
前記回転光学系により導かれた光を受光する受光センサとを備え、
前記受光制御部は、
前記回転光学系を回転させることで前記設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光を該受光部に受光させることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学特性測定装置。
【請求項5】
前記重み付け演算における重み値は、
前記受光部の受光開き角における前記測光値の特性である既知の第1の受光角分布特性と、該第1の受光角分布特性に基づいて算出する受光角分布特性であって、前記光学特性測定装置又は該装置と異なる別の光学特性測定装置における既知の第2の受光角分布特性との関係から求められる値であることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の光学特性測定装置。
【請求項6】
前記第1の受光角分布特性と第2の受光角分布特性との関係は、
前記角度範囲及び角度ピッチを固定した場合における、以下の(1)式であることを特徴とする請求項5に記載の光学特性測定装置。
Σ(第1の受光角分布特性×重み値)=第2の受光角分布特性 ・・・(1)
但し、記号「Σ」は、前記所定角度ピッチ位置での測光により求めた各第1の受光角分布特性での和を求めることを示し、記号「×」は乗算を示す。
【請求項7】
前記重み値は、
前記受光部に受光される光の波長毎に前記(1)式を満たす重み値として算出される値であることを特徴とする請求項6に記載の光学特性測定装置。
【請求項8】
前記演算部は、
前記測光値に所定の重み付け演算及び所定の加減演算を施してなる被演算測光値に対して、さらに反射特性算出用の所定値を用いた演算を施すことにより前記被測定物の反射特性値を算出することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光学特性測定装置。
【請求項9】
被測定物を照明し、
前記照明状態下で前記被測定物により反射される反射光であって、予め設定された設定受光角を含む所定の角度範囲内における複数の受光角での反射光を受光し、
前記受光により得られた前記各受光角における測光値に対して、所定の重み付け演算を行うとともに所定の加減演算を行う
ことを特徴とする光学特性測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−85600(P2009−85600A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251696(P2007−251696)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(303050160)コニカミノルタセンシング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】