説明

光学用フィルムおよび偏光板

【課題】 耐熱性を有し、しかもフィルムとしての機械的強度、とりわけ耐折り曲げ性に優れ、さらにはカッターカット性にも優れた光学用フィルムを提供することである。
【解決手段】(A)成分としてガラス転移温度が120℃以上であり、屈折率が1.50以上であるアクリル系樹脂、(B)成分としてエポキシ基含有オレフィン系共重合体としたときに、(A)成分を99.5〜70重量%、(B)成分を0.5〜30重量%含有する樹脂組成物からなる光学用フィルムにより上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる光学用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無水グルタル酸構造や、グルタルイミド構造単位などを有するアクリル樹脂は、透明性、耐熱性、耐候性に優れるとともに、光弾性係数が小さいことから、光学材料としての適用が検討されている。アクリル系樹脂として、例えば、特許文献1には、グルタルイミドアクリル樹脂からなる光学フィルムが開示されている。また、特許文献2には、グルタルイミドアクリル樹脂からなる位相差板が開示されている。ところが、グルタルイミドアクリル樹脂フィルムは、ポリエステル系樹脂フィルムなどと比較すると、しなやかさに欠けるため、ポリエステル系樹脂フィルムなどに比べて取り扱いが難しく、カッターカット性にも改善の余地があった。ここで、カッターカット性とは、カッターでの切れ易さの指標である。カッターカット性が悪いと、工業的規模での生産の際、フィルムのトリミング等を行う場合、トリミング部位にクラックが発生しやすくなるため好ましくない。また、アクリル系樹脂は、機械的強度についても必ずしも十分はなくさらに改善の余地があった。
【0003】
一方、特許文献3には、エポキシ基含有オレフィン樹脂を用いる事により、グルタルイミドアクリル樹脂の耐衝撃性の改善が開示されているが、光学フィルム特有の性質である透明性への影響、さらには、カッターカット性への影響については述べられておらず、エポキシ基含有オレフィンの添加により透明性を維持したまま、光学フィルムの機械的強度及びカッターカット性を改善することができるか否かは不明であった。
【特許文献1】特開平6−256537号公報
【特許文献2】特開平6−11615号公報
【特許文献3】特開昭60−202139号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、フィルムとしての耐熱性、透明性を有し、機械的強度、とりわけ耐折り曲げ性、引張破断伸びといった機械的強度を有し、さらにカッターカット性にも優れた光学用フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討を行った結果、高耐熱、高屈折率のアクリル系樹脂に対し、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を配合することにより、アクリル系樹脂の透明性、耐候性を維持したまま、耐折り曲げ性、引張破断伸びといった機械的強度が向上し、それだけでなく、さらに、フィルムを工業的に製造する際に重要な指標となるカッターカット性に優れた樹脂組成物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)以下の成分(A)、(B)を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする光学用フィルム。
(A)ガラス転移温度が120℃以上であり、屈折率が1.50以上であるアクリル系樹脂99.5〜70重量%、
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体0.5〜30重量%
(請求項1)。
【0007】
(2)アクリル系樹脂の屈折率が、1.52〜1.56であることを特徴とする請求項1に記載の光学用フィルム(請求項2)。
【0008】
(3)アクリル系樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位とを有するグルタルイミドアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の光学用フィルム。
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)(請求項3)
(4)アクリル系樹脂が下記一般式(3)で表される単位をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の光学用フィルム。
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、炭素数6〜10のアリール基である。)(請求項4)
(5)溶融押出法により得られるフィルムであることを特徴とする請求項1〜4に記載の光学用フィルム。(請求項5)
(6)延伸されたフィルムであることを特徴とする請求項5に記載の光学用フィルム。(請求項6)
(7) 面内位相差が10nm以下であり、かつ厚み方向位相差が50nm以下であることを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の光学用フィルム。(請求項7)
(8)請求項5〜7のいずれかに記載の光学用フィルムを用いた偏光子保護フィルム。(請求項8)
(9)請求項5または6のいずれかに記載の光学用フィルムを用いたことを特徴とする位相差フィルム。(請求項9)
(10)請求項8または9に記載されたフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。(請求項10)
(11)以下の成分(A)に成分(B)を混合する際に触媒を用いることを特徴とする光学用フィルムの製造方法。
(A)ガラス転移温度が120℃以上であり、屈折率が1.50以上であるアクリル系樹脂99.5〜70重量%、
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体0.5〜30重量%。(請求項11)
【発明の効果】
【0015】
本発明の樹脂組成物は、透明で耐熱性があり、とりわけフィルムの耐折曲げ性、破断伸びといった機械的強度ならびにカッターカット性が改良され、特に光学用フィルムとして有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の実施の一形態について説明すれば、以下の通りである。尚、本発明はこれに限定されるものではない。
【0017】
本発明の光学フィルムは、成分(A)、(B)を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする。
【0018】
本発明に用いられるアクリル系樹脂(A)は、ガラス転移温度が120℃以上であり、かつ屈折率が1.50以上であるアクリル系樹脂である。具体的には、グルタルイミド構造や無水グルタル酸構造、ラクトン構造を分子中の主要単位とするアクリル系樹脂が挙げられる。この中でも屈折率が1.52〜1.56であるものが好ましく、さらにグルタルイミド構造を有するアクリル系樹脂(以下グルタルイミドアクリル樹脂とする)が好適に用いられる。
【0019】
より具体的には、例えば下記一般式(1)
【0020】
【化4】

【0021】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「グルタルイミド単位」ともいう)と、
下記一般式(2)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
で表される単位(以下、「(メタ)アクリル酸エステル単位」ともいう)とを含むグルタルイミド樹脂を好適に用いることができる。
【0024】
また、上記グルタルイミド樹脂は、必要に応じて、下記一般式(3)
【0025】
【化6】

【0026】
(式中、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、炭素数6〜10のアリール基である。)
で表される単位(以下、「芳香族ビニル単位」ともいう)をさらに含んでいてもよい。
【0027】
上記一般式(1)において、RおよびRはそれぞれ独立して水素またはメチル基であり、Rは水素、メチル基、ブチル基、シクロヘキシル基であることが好ましく、Rはメチル基であり、Rは水素であり、Rはメチル基であることがより好ましい。
【0028】
上記グルタルイミド樹脂は、グルタルイミド単位として、単一の種類のみ含んでいてもよいし、上記一般式(1)におけるR、R、およびRが異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0029】
なお、グルタルイミド単位は、上記一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位をイミド化することにより形成することができる。
【0030】
また、無水マレイン酸等の酸無水物、またはこのような酸無水物と炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸等をイミド化することによっても、上記グルタルイミド単位を形成させることができる。
【0031】
上記一般式(2)において、RおよびRはそれぞれ独立して、水素またはメチル基であり、Rは水素またはメチル基であることが好ましく、Rは水素であり、Rはメチル基であり、Rはメチル基であることがより好ましい。
【0032】
上記グルタルイミドアクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、上記一般式(2)におけるR、RおよびRが異なる複数の種類を含んでいてもよい。
【0033】
上記グルタルイミド樹脂は、上記一般式(3)で表される芳香族ビニル単位として、スチレン、α−メチルスチレン等を含むことが好ましく、スチレンを含むことがより好ましい。
【0034】
また、上記グルタルイミドアクリル樹脂は、芳香族ビニル単位として、単一の種類のみを含んでいてもよいし、RおよびRが異なる複数の樹脂を含んでいてもよい。
【0035】
上記グルタルイミドアクリル樹脂において、一般式(1)で表されるグルタルイミド単位の含有量は、特に限定されるものではなく、例えば、Rの構造等に依存して変化させることが好ましい。
【0036】
一般的には、上記グルタルイミド単位の含有量は、グルタルイミドアクリル樹脂の20重量%以上とすることが好ましく、20重量%〜95重量%とすることがより好ましく、40重量%〜90重量%とすることがさらに好ましく、50重量%〜80重量%とすることが特に好ましい。
【0037】
グルタルイミド単位の含有量が上記範囲内であれば、得られるグルタルイミドアクリル樹脂の耐熱性および透明性が著しく低下したり、成形加工性、およびフィルムに加工したときの機械的強度が極端に低下したりすることがない。
【0038】
一方、グルタルイミド単位の含有量が上記範囲より少ないと、得られるグルタルイミド樹脂の耐熱性が不足したり、透明性が損なわれたりする傾向がある。また、上記範囲よりも多いと、不必要に耐熱性および溶融粘度が高くなり、成形加工性が悪くなったり、フィルム加工時の機械的強度が極端に低くなったり、透明性が損なわれたりする傾向がある。
【0039】
上記グルタルイミドアクリル樹脂において、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位の含有量は、特に限定されるものではないが、グルタルイミドアクリル樹脂の0〜50重量%とすることが好ましく、0〜20重量%とすることがさらに好ましく、0〜15重量%とすることが特に好ましい。芳香族ビニル単位の含有量が上記範囲より多いと、得られるグルタルイミドアクリル樹脂の耐熱性が不足する傾向がある。
【0040】
上記グルタルイミドアクリル樹脂には、必要に応じ、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位以外のその他の単位がさらに共重合されていてもよい。
【0041】
その他の単位としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸等の(メタ)アクリル酸単位、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド系単位、グルタル無水物単位、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のニトリル系単量体、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単位の重合体の構成単位を挙げることができる。
【0042】
これらのその他の単位は、上記グルタルイミド樹脂中に、直接共重合していてもよいし、グラフト共重合していてもよい。
【0043】
また、これらのその他の単位は、その単位を構成する単量体を、グルタルイミド樹脂及び/又はグルタルイミドアクリル樹脂を得る原料となる樹脂に対し、共重合成分として用いても良いし、前記のイミド化反応を行う際に、上記その他の単位が副生して存在してもよく、また、グルタルイミドアクリル樹脂に対し、その他の単位を含む単量体等を共重合させるなどして導入してもよい。
【0044】
上記グルタルイミドアクリル樹脂の重量平均分子量は特に限定されるものではないが、1×10〜5×10であることが好ましい。上記範囲内であれば、成形加工性が低下したり、フィルム加工時の機械的強度が不足したりすることがない。
【0045】
一方、重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、フィルムにした場合の機械的強度が不足する傾向がある。また、上記範囲よりも大きいと、溶融押出時の粘度が高く、成形加工性が低下し、成形品の生産性が低下する傾向がある。
【0046】
また、上記グルタルイミドアクリル樹脂のガラス転移温度は120℃以上であることが好ましく、130℃以上であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲よりも低いと、耐熱性が要求される用途においては適用範囲が制限される。
【0047】
上記グルタルイミドアクリル樹脂において、一般式(1)〜(3)で表される単位の含有量(換言すれば、割合)は、特に限定されるものではなく、グルタルイミドアクリル樹脂に要求される物性や、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物を成形してなるフィルムに要求される特性等に応じて決定すればよい。
【0048】
ここで、上記グルタルイミド樹脂の製造方法の一実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
まず、(メタ)アクリル酸エステルを重合させることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体を製造する。なお、上記グルタルイミド樹脂が芳香族ビニル単位を含む場合には、(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルとを共重合させ、(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体を製造する。
【0050】
この工程において、上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルを用いることが好ましく、メタクリル酸メチルを用いることがより好ましい。
【0051】
これらの(メタ)アクリル酸エステルは、単一種を単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。複数種の(メタ)アクリル酸エステルを用いることにより、最終的に得られるグルタルイミド樹脂に複数種類の(メタ)アクリル酸エステル単位を与えることができる。
【0052】
また、上記グルタルイミド樹脂が芳香族ビニル単位を含む場合、(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニルとの重合割合を調整することにより、芳香族ビニル単位の割合を調整することができる。
【0053】
上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、および(メタ)アクリル酸エステル重合体の構造は、特に限定されるものではなく、イミド化反応が可能なものであればよい。具体的には、リニアー(線状)ポリマー、ブロックポリマー、コアシェルポリマー、分岐ポリマー、ラダーポリマー、および架橋ポリマー等のいずれであってもよい。
【0054】
ブロックポリマーの場合、A−B型、A−B−C型、A−B−A型、およびこれら以外のタイプのブロックポリマーのいずれであってもよい。コアシェルポリマーの場合、ただ一層のコアおよびただ一層のシェルのみからなるものであってもよいし、それぞれが多層からなるものであってもよい。
【0055】
次に、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体または(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体に、一級アミン(すなわち、イミド化剤)を添加し、イミド化を行う。これにより、上記グルタルイミド樹脂を製造することができる。
【0056】
上記一級アミン、すなわち、イミド化剤は、特に限定されるものではなく、上記一般式(1)で表されるグルタルイミド単位を生成できるものであればよい。具体的には、例えば、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミン、n−ブチルアミン、i−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン等の脂肪族炭化水素基含有アミン、アニリン、ベンジルアミン、トルイジン、トリクロロアニリン等の芳香族炭化水素基含有アミン、シクロヘキシルアミン等などの脂環式炭化水素基含有アミンを挙げることができる。
【0057】
また、尿素、1,3−ジメチル尿素、1,3−ジエチル尿素、1,3−ジプロピル尿素のように、加熱により、上記例示したアミンを発生する尿素系化合物を用いることもできる。
【0058】
上記例示したイミド化剤のうち、コスト、物性の面からメチルアミン、アンモニア、シクロヘキシルアミンを用いることが好ましく、メチルアミンを用いることが特に好ましい。
【0059】
なお、このイミド化の工程においては、上記一級アミンに加えて、必要に応じて、閉環促進剤を添加してもよい。
【0060】
このイミド化の工程において、上記一級アミンの添加割合を調整することにより、得られるグルタルイミド樹脂におけるグルタルイミド単位および(メタ)アクリル酸エステル単位の割合を調整することができる。
【0061】
また、イミド化の程度を調整することにより、得られるグルタルイミド樹脂の物性や、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物を成形してなる光学用フィルムの光学特性等を調整することができる。
【0062】
上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体をイミド化する方法は、特に限定されなく、従来公知のあらゆる方法を用いることができる。例えば、押出機や、バッチ式反応槽(圧力容器)等を用いる方法により、上記(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体をイミド化することができる。
【0063】
上記グルタルイミド樹脂を押出機を用いて製造する場合、用いる押出機は特に限定されるものではなく、各種押出機を用いることができる。具体的には、例えば、単軸押出機、二軸押出機または多軸押出機等を用いることができる。
【0064】
中でも、二軸押出機を用いることが好ましい。二軸押出機によれば、原料ポリマー(すなわち、(メタ)アクリル酸エステル−芳香族ビニル共重合体、または(メタ)アクリル酸エステル重合体)に対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を促進することができる。
【0065】
二軸押出機としては、非噛合い型同方向回転式、噛合い型同方向回転式、非噛合い型異方向回転式、および噛合い型異方向回転式等を挙げることができる。中でも、噛合い型同方向回転式を用いることが好ましい。噛合い型同方向回転式の二軸押出機は、高速回転可能であるため、原料ポリマーに対するイミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)の混合を、より一層促進することができる。
【0066】
上記例示した押出機は単独で用いてもよいし、複数を直列につないで用いてもよい。
【0067】
また、押出機には、大気圧以下に減圧可能なベント口を装着することが好ましい。このような構成によれば、未反応のイミド化剤、もしくはメタノール等の副生物やモノマー類を除去することができる。
【0068】
また、上記グルタルイミド樹脂の製造には、押出機に代えて、例えば住友重機械(株)製のバイボラックのような横型二軸反応装置やスーパーブレンドのような竪型二軸攪拌槽などの高粘度対応の反応装置も好適に用いることができる。
【0069】
上記グルタルイミド樹脂を、バッチ式反応槽(圧力容器)を用いて製造する場合、そのバッチ式反応槽(圧力容器)の構造は特に限定されるものでない。
【0070】
具体的には、原料ポリマーを加熱により溶融させ、攪拌することができ、イミド化剤(閉環促進剤を用いる場合は、イミド化剤と閉環促進剤)を添加することができる構造を有していればよいが、攪拌効率が良好な構造を有するものであることが好ましい。
【0071】
このようなバッチ式反応槽(圧力容器)によれば、反応の進行によりポリマー粘度が上昇し、撹拌が不十分となることを防止することができる。このような構造を有するバッチ式反応槽(圧力容器)としては、例えば、住友重機械(株)製の攪拌槽マックスブレンド等を挙げることができる。
【0072】
上説したような方法によれば、グルタルイミド単位、(メタ)アクリル酸エステル単位、および芳香族ビニル単位の比率が所望に制御されたグルタルイミド樹脂を容易に製造することができる。
【0073】
次に、本発明に用いる(B)成分である、エポキシ基含有オレフィン系共重合体とは、エポキシ基を有するエチレン性α、β不飽和単量体単位とその他のエチレン性α、β不飽和単量体単位とからなる共重合体である。
【0074】
エポキシ基含有オレフィン系共重合体の組成比に特に制限はないが、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体単位は0.01〜30重量%、好ましくは0.02〜20重量%であることが好ましい。
【0075】
エポキシ基を有するエチレン性α,β不飽和単量体としては、例えば、不飽和グリシジルエステル類、不飽和グリシジルエーテル類が挙げられる。具体的には、グリシジル(メタ)アクリレート、イタコン酸グリシジルエステル類、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−pグリシジルエーテル等が例示される。
【0076】
その他のエチレン性α、β不飽和単量体としてはオレフィン類、炭素数2〜6の脂肪族カルボン酸のビニルエステル類、(メタ)アクリル酸エステル類及びマレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、ハロゲン化ビニル類、スチレン類、ニトリル類、ビニルエーテル類及びアクリルアミド類等が挙げられる。具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン−1、イソブテン、オクテン−1、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジエチル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン、アクリロニトリル、イソブチルビニルエーテル及びアクリルアミド等が例示される。なかでもガラス転移点を低くして低温での耐衝撃特性を改良する場合には、エチレン−酢酸ビニル、エチレン−アクリル酸メチル等2成分以上を組合せるのが適している。
【0077】
エポキシ基含有オレフィン系共重合体の代表例としては、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-アクリル酸メチル-グリシジルメタクリレート共重合体、などが挙げられる。
【0078】
エポキシ基含有オレフィン系共重合体は、周知の種々の方法で得ることができる。例えば、エポキシ基を有するエチレン性α,β不飽和単量体と、その他のエチレン性α、β不飽和単量体を、塊状重合または、不活性な有機溶媒中でラジカル重合させ、ランダム共重合体を得る方法;その他のエチレン性α、β不飽和単量体の重合体にエポキシ基を有するエチレン性α、β不飽和単量体を含浸させ、ラジカル重合を行わしめ、グラフト共重合体とする方法がある。
【0079】
上記エポキシ基含有オレフィン系共重合体は市販されているものを用いることもできる。例えば、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体はボンドファースト2C、E(いずれも住友化学工業(株)製、以下同じ)、エチレン-酢酸ビニル-グリシジルメタクリレート共重合体の具体例としてはボンドファースト2B、7B、エチレン-アクリル酸メチル-グリシジルメタクリレート共重合体の具体例としてはボンドファースト7L、7Mを挙げることができる。
【0080】
本発明で得られる光学フィルムにおける樹脂組成物中の(A)成分と(B)成分の混合方法は、特に限定されず、公知の方法を適用することができる。例えば、上記各成分および所望により用いられる添加剤成分を加熱混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー、高せん断型ミキサーなどを用いて溶融混練することによって、容易に製造することができる。
【0081】
本反応の際、(A)成分と(B)成分の反応を促進させるため、触媒を用いてもよい。触媒としては、特に限定されず、たとえばカルボン酸金属塩類、イミダゾール類、3級アミン類、有機ホスフィン化合物などがあげられ、なかでもテトラ−n−ブチルホスホニウムブロミドなどが好ましい。触媒を用いる場合、その量としては、適宜決定すればよいが、成分(B)に対して0.001部〜10部が好ましく、0.01部〜5部がさらに好ましい。10部以上であると反応促進効果があるものの不経済となったり、0.001部以下であると反応促進に与える効果が小さくなるため好ましくない。
【0082】
本発明のフィルムを構成する(A)成分と(B)成分を含有する樹脂組成物における(A)成分の割合は、(A)成分と(B)成分の合計を100重量%とすると上限は99.5重量%が好ましく99重量%がさらに好ましい。下限は、70重量%が好ましく、80重量%がさらに好ましく85重量%が特に好ましい。
【0083】
(A)成分の割合が99.5重量%を上回ると、(B)成分の添加による耐折り曲げ性、破断伸び、カッターカット性などの機械的特性の改善効果が十分ではなく、70重量%を下回ると、耐熱性が低下したり、透明性が低下したりすることがあるので好ましくない。
【0084】
なお、本発明の樹脂組成物に対し、必要に応じて滑剤、可塑剤、紫外線吸収剤、安定剤やフィラー等の公知の添加剤や、ゴム状重合体にビニル基含有化合物をグラフト重合させて得られたグラフト共重合体やその他の樹脂を含有しても良い。
【0085】
本発明における光学用フィルムは、上説した樹脂組成物を成形してなるものであればよいが、延伸されたフィルム、すなわち、延伸フィルムであることが好ましい。なお、延伸フィルムの場合、一軸延伸した一軸延伸フィルムであってもよいし、さらに延伸工程を組み合わせて行って得られる二軸延伸フィルムであってもよい。
【0086】
本発明の樹脂組成物からなる成形体を成形する方法としては、従来公知の任意の方法が可能である、例えば射出成形、溶融押出フィルム成形、インフレーション成形、ブロー成形、圧縮成形、紡糸成形等が挙げられる。また、本発明の樹脂組成物を溶融可能な溶剤に溶解させた後、成形させる溶液流延法やスピンコート法も可能である。その何れをも採用することができるが、溶剤を使用しない溶融押出フィルム成形法が、製造コストや溶剤による地球環境や作業環境等の影響の観点から好ましい。
【0087】
本発明にかかる光学用フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、10μm〜200μmであることが好ましく、15μm〜150μmであることがより好ましく、20μm〜100μmであることがさらに好ましい。
【0088】
フィルムの厚みが上記範囲内であれば、光学特性が均一で、ヘーズが良好な光学用フィルムとすることができる。
【0089】
一方、フィルムの厚みが上記範囲を越えると、フィルムの冷却が不均一になり、光学的特性が不均一になる傾向がある。また、フィルムの厚みが上記範囲を下回ると、フィルムの取扱が困難になることがある。
【0090】
本発明にかかる光学用フィルムは、ヘーズが3%以下であることが好ましく、2.5%以下であることがより好ましく、2%以下が特に好ましい。
【0091】
本発明にかかる光学フィルムのヘーズが上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる光学用フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0092】
本発明にかかる光学用フィルムは、全光線透過率が85%以上であることが好ましく、88%以上であることがより好ましい。
【0093】
全光線透過率が、上記範囲内であれば、フィルムの透明性を高いものとすることができる。それゆえ、本発明にかかる光学用フィルムを、透明性が要求される用途に好適に用いることができる。
【0094】
本発明で得られる光学用フィルムの機械強度はその値に特に制限はないが、好ましくは引っ張り破断伸びを10%以上、さらに好ましくは15%以上にすることによってカッターカット性によりすぐれた光学用フィルムを得ることができる。
【0095】
また、本発明にかかる光学用フィルムは、偏光子保護フィルムに使用する場合、光学異方性が小さいことが好ましい。特に、フィルムの面内方向(長さ方向、幅方向)の光学異方性だけでなく、厚み方向の光学異方性についても小さいことが好ましい。換言すれば、面内位相差および厚み方向位相差がともに小さいことが好ましい。
【0096】
より具体的には、面内位相差は10nm以下であることが好ましく、6nm以下であることがより好ましく、5nm以下であることがさらに好ましい。
【0097】
また、厚み方向位相差は50nm以下であることが好ましく、20nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましい。
【0098】
このような光学特性を有する構成とすれば、本発明にかかる光学用フィルムを、液晶表示装置の偏光板に備える偏光子保護フィルムとして用いることができる。
【0099】
一方、フィルムの面内位相差が10nmを超えたり、厚み方向位相差が50nmを超えたりすると、本発明にかかる光学用フィルムを用いた偏光子保護フィルムを、液晶表示装置の偏光板として用いる場合、液晶表示装置においてコントラストが低下するなどの問題が発生する場合がある。
【0100】
なお、面内位相差(Re)および厚み方向位相差(Rth)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。つまり、3次元方向について完全光学等方である理想的なフィルムでは、面内位相差Re、厚み方向位相差Rthともに0となる。
【0101】
Re=(nx−ny)×d
Rth=|(nx+ny)/2−nz|×d
なお、上記式中において、nx、ny、およびnzは、それぞれ、面内屈折率が最大となる方向をX軸、X軸に垂直な方向をY軸、フィルムの厚さ方向をZ軸とし、それぞれの軸方向の屈折率を表す。また、dはフィルムの厚さ、||は絶対値を表す。
【0102】
また、本発明にかかる光学用フィルムは、配向複屈折の値が、0〜0.1×10−3であることが好ましく、0〜0.01×10−3であることがより好ましい。
【0103】
配向複屈折が上記範囲内であれば、環境の変化に対しても、成形加工時に複屈折が生じることなく、安定した光学的特性を得ることができる。
【0104】
なお、本明細書において、特にことわりのない限り、「配向複屈折」とは、熱可塑性樹脂のガラス転移温度より5℃高い温度で、100%延伸した場合に発現する複屈折が意図される。配向複屈折(△n)は、前述のnx、nyを用いて説明すると、△n=nx−ny=Re/dで定義され、位相差計により測定することができる。
【0105】
本発明にかかる光学用フィルムは、光弾性係数の絶対値が、20×10−12/N以下であることが好ましく、10×10−12/N以下であることがより好ましく、5×10−12/N以下であることがさらに好ましい。
【0106】
光弾性係数が上記範囲内であれば、本発明にかかる光学用フィルムを液晶表示装置に用いても、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生したりすることがない。
【0107】
一方、光弾性係数の絶対値が20×10−12/Nより大きいと、本発明にかかる光学用フィルムを液晶表示装置に用いた場合、位相差ムラが発生したり、表示画面周辺部のコントラストが低下したり、光漏れが発生しやすくなったりする傾向がある。この傾向は、高温多湿環境下において、特に顕著となる。
【0108】
なお、等方性の固体に外力を加えて応力(△F)を発生させると、一時的に光学異方性を呈し、複屈折(△n)を示すようになるが、本明細書において、「光弾性係数」とは、その応力と複屈折との比が意図される。すなわち、光弾性係数(c)は、以下の式により算出される。
【0109】
c=△n/△F
ただし、本発明において、光弾性係数はセナルモン法により、波長515nmにて、23℃、50%RHにおいて測定した値である。
【0110】
本発明にかかる光学用フィルムは、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。具体的には、例えば、本発明にかかる光学用フィルムを、表面にコーティング加工等の表面加工を施したり、表面に別のフィルムをラミネートしたりして用いる場合、本発明にかかる光学用フィルムに表面処理を施すことが好ましい。
【0111】
このような表面処理を施すことにより、本発明にかかる光学用フィルムと、コーティングまたはラミネートされる別のフィルムとの間の相互の密着性を向上させることができる。
【0112】
なお、本発明にかかる光学用フィルムに対する表面処理の目的は、作用効果を目的とするものに限定されるものではない。つまり、本発明にかかる光学用フィルムは、その用途に関係なく、表面処理が施されていてもよい。
【0113】
上記表面処理は、特に限定されるものではないが、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線照射およびアルカリ処理等を挙げることができる。中でも、コロナ処理であることが好ましい。
【0114】
また、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物によれば、上記一般式(1)〜(3)で表される構造単位の組成比を変更することにより、位相差の大きなフィルムを製造することができる。つまり、本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、位相差フィルム等の光学補償フィルムの製造に好適に用いることができる。
【0115】
本発明にかかる光学用フィルムは、上説したような特性を有するため、そのまま最終製品として各種用途に用いることができる。また、上説したような各種加工を施すことにより、用途の幅を広げることができる。
【0116】
本発明にかかる光学用フィルムの用途は特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、カメラやVTR、プロジェクター用の撮影レンズやファインダー、フィルター、プリズム、フレネルレンズなどの映像分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用ピックアップレンズなどのレンズ分野、CDプレイヤーやDVDプレイヤー、MDプレイヤーなどの光ディスク用の光記録分野、液晶用導光板、偏光子保護フィルムや位相差フィルムなどの液晶ディスプレイ用フィルム、表面保護フィルムなどの情報機器分野、光ファイバ、光スイッチ、光コネクターなどの光通信分野、自動車ヘッドライトやテールランプレンズ、インナーレンズ、計器カバー、サンルーフなどの車両分野、眼鏡やコンタクトレンズ、内視境用レンズ、滅菌処理の必要な医療用品などの医療機器分野、道路透光板、ペアガラス用レンズ、採光窓やカーポート、照明用レンズや照明カバー、建材用サイジングなどの建築・建材分野、電子レンジ調理容器(食器)等に好適に用いることができる。
【0117】
本発明にかかる光学用フィルムは、上説したように、光学的均質性、透明性等の光学特性に優れている。そのため、これらの光学特性を利用して、光学的等方フィルム、偏光子保護フィルムや透明導電フィルム等液晶表示装置周辺等の公知の光学的用途に特に好適に用いることができる。
【0118】
また、本発明の光学用フィルムは、偏光子に貼り合わせて、偏光板として用いることができる。すなわち、本発明にかかる光学用フィルムは、偏光板の偏光子保護フィルムとして用いることができる。上記偏光子は、特に限定されるものではなく、従来公知の任意の偏光子を用いることができる。具体的には、例えば、延伸されたポリビニルアルコールにヨウ素を含有させて得た偏光子等を挙げることができる。
【実施例】
【0119】
以下、本発明を実施例にて具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、各成分の合成例の記載における部は重量部を示す。
【0120】
イミド化率の算出は、IRを用いて下記の通り行った。すなわち、生成物のペレットを塩化メチレンに溶解し、その溶液をSensIR Tecnologies社製TravelIRを用いて、室温にてIRスペクトルを測定した。得られたIRスペクトルより、1720cm-1のエステルカルボニル基に帰属される吸収強度(Absester)と、1660cm-1のイミドカルボニル基に帰属される吸収強度(Absimide)との比からイミド化率(Im%(IR))を求めた。なお、ここで、「イミド化率」とは全カルボニル基中のイミドカルボニル基の占める割合をいう。
【0121】
各組成物のガラス転移温度は、(株)島津製作所 示差走査熱量計DSC−50型を用い、窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで測定し、中点法により決定した。
【0122】
各組成物の屈折率は、それぞれの組成物をシート状に加工し、(株)アタゴ 精密アッベ屈折計を用いて測定した。
【0123】
フィルムのヘーズならびに全光線透過率は、(株)日本電色工業 NDH−300Aを用い、JIS K7105に記載の方法にて測定した。
【0124】
フィルムの延伸は、(株)柴山科学器械製作所 二軸延伸装置 SS−70を用い、140℃にて行った。
【0125】
フィルムの耐折り曲げ性は、(株)東洋精機製作所 MIT耐折疲労試験機を用い、JIS C5016の方法に従って行った。測定条件は、R=0.38、荷重200gとし、フィルムが破断するまでの折り曲げ回数を採用した。
【0126】
フィルムの機械強度は、JIS K7162に記載の方法に準用して、(株)島津製作所製のオートグラフAG−2000A形を用いて測定した。測定はn=3にて行ない、試験片が破断したときの強度(MPa)及び伸び(%)、並びに、弾性率(GPa)の値の平均値を採用した。試験片は1号形の形状にて、厚さが約40μm厚のものを用いた。試験は23℃にて50mm/秒の試験速度で行なった。
【0127】
フィルムのカッターカット性は、実施例及び比較例で得られた二軸延伸フィルムを25℃、65%RHの雰囲気下で、フィルムをカッターナイフで切った時のカッターカット性を評価した。スムーズにカットが可能な状態を○、カット後に断面に微細なクラックが生じる状態を×として評価した。
【0128】
(1)グルタルイミドアクリル樹脂(A−1)の合成
原料の樹脂としてメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(スチレン量11モル%)、イミド化剤としてモノメチルアミンを用いて、イミド化樹脂を製造した。
【0129】
使用した押出機は口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機である。押出機の各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数は150rpmとした。メタクリル酸メチル−スチレン共重合体(以下、「MS樹脂」ともいう)を2kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して25重量部のモノメチルアミン(三菱ガス化学株式会社製)を注入した。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰のメチルアミンをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、イミド化MS樹脂(1)を得た。
【0130】
次いで、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機にて、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpmとした。ホッパーから得られたイミド化MS樹脂(1)を1kg/hrで供給し、ニーディングブロックによって樹脂を溶融、充満させた後、ノズルから樹脂に対して8重量部の炭酸ジメチルと2重量部のトリエチルアミンの混合液を注入し樹脂中のカルボキシル基の低減を行った。反応ゾーンの末端にはリバースフライトを入れて樹脂を充満させた。反応後の副生成物および過剰の炭酸ジメチルをベント口の圧力を−0.092MPaに減圧して除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化し、酸価を低減したイミド化MS樹脂(2)を得た。
【0131】
さらに、イミド化MS樹脂(2)を、口径15mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機に、押出機各温調ゾーンの設定温度を230℃、スクリュー回転数150rpm、供給量1kg/hrの条件で投入した。ベント口の圧力を−0.095MPaに減圧して再び未反応の副原料などの揮発分を除去した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた脱揮したイミド樹脂を、水槽で冷却した後、ペレタイザでペレット化することにより、グルタルイミドアクリル樹脂A−1を得た。
【0132】
なお、得られたグルタルイミドアクリル樹脂A−1は、上説の実施形態に記載した一般式(1)で表されるグルタミルイミド単位と、一般式(2)で表される(メタ)アクリル酸エステル単位と、一般式(3)で表される芳香族ビニル単位とが共重合したグルタルイミドアクリル樹脂に相当する。
【0133】
グルタルイミドアクリル樹脂A−1について、上記の方法に従って、イミド化率、ガラス転移温度、屈折率を測定した。その結果、イミド化率は70モル%、ガラス転移温度は140℃、屈折率は1.53であった。
【0134】
(2)実施例及び比較例
口径30mmの噛合い型同方向回転式二軸押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を240℃、スクリュー回転数250rpmとし、グルタルイミドアクリル樹脂(A−1)およびボンドファースト7L(住友化学株式会社製)および触媒テトラ−n−ブチルホスホニウムブロミドを、10kg/hrの割合で供給した。押出機出口に設けられたダイスからストランドとして出てきた樹脂を水槽で冷却し、ペレタイザでペレット化した。
【0135】
得られたペレットを、出口にTダイを接続した溶融押出機を用い、押出機の温度調整ゾーンの設定温度を280℃、スクリュー回転数130rpm、樹脂ペレットの供給量を10kg/hrの割合で供給し、溶融押出することにより厚み約130μmのフィルムを得た。
【0136】
上記のフィルムを145℃にて二軸延伸を実施し、延伸フィルムを得た。
【0137】
各実施例および比較例における各成分の配合比と、得られた延伸フィルムのヘーズおよび全光線透過率、ならびに耐折り曲げ性、引張破断伸び、カッターカット性を表1に示す。
【0138】
【表1】

【0139】
このように、ガラス転移温度が120℃以上のアクリル系樹脂に対し、エポキシ基含有オレフィン系共重合体を含有する事で、透明でかつ引張破断伸びや耐折り曲げ性と言った機械的強度、およびカッターカット性に優れた樹脂組成物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、(B)を含有する樹脂組成物からなることを特徴とする光学用フィルム。
(A)ガラス転移温度が120℃以上であり、屈折率が1.50以上であるアクリル系樹脂99.5〜70重量%、
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体0.5〜30重量%。
【請求項2】
アクリル系樹脂の屈折率が、1.52〜1.56であることを特徴とする請求項1に記載の光学用フィルム。
【請求項3】
アクリル系樹脂(A)が、下記一般式(1)で表される単位と、下記一般式(2)で表される単位とを有するグルタルイミドアクリル樹脂であることを特徴とする請求項1あるいは2に記載の光学用フィルム。
【化1】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
【化2】

(式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水素または炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、または炭素数5〜15の芳香環を含む置換基である。)
【請求項4】
アクリル系樹脂が下記一般式(3)で表される単位をさらに含むことを特徴とする請求項3に記載の光学用フィルム。
【化3】

(式中、Rは、水素又は炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、炭素数6〜10のアリール基である。)
【請求項5】
溶融押出法により得られるフィルムであることを特徴とする請求項1〜4に記載の光学用フィルム。
【請求項6】
延伸されたフィルムであることを特徴とする請求項5に記載の光学用フィルム。
【請求項7】
面内位相差が10nm以下であり、かつ厚み方向位相差が50nm以下であることを特徴とする請求項5または6のいずれかに記載の光学用フィルム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の光学用フィルムを用いた偏光子保護フィルム。
【請求項9】
請求項5または6のいずれかに記載の光学用フィルムを用いたことを特徴とする位相差フィルム。
【請求項10】
請求項8または9に記載されたフィルムを用いたことを特徴とする偏光板。
【請求項11】
以下の成分(A)に成分(B)を混合する際に触媒を用いることを特徴とする光学用フィルムの製造方法。
(A)ガラス転移温度が120℃以上であり、屈折率が1.50以上であるアクリル系樹脂99.5〜70重量%、
(B)エポキシ基含有オレフィン系共重合体0.5〜30重量%。

【公開番号】特開2009−280750(P2009−280750A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136357(P2008−136357)
【出願日】平成20年5月26日(2008.5.26)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】