説明

光学用フィルム

【課題】易接着層を設けるコーティングの際に発生する異物を低減した光学用フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムおよびその少なくとも片面に設けられた厚み10〜300nmの易接着層からなる光学用フィルムであって、易接着層は高分子バインダーおよび界面活性剤を含有し、易接着層における高分子バインダーと界面活性剤の含有量の比は、高分子バインダー100重量部に対して界面活性剤0.5〜10重量部であり、易接着層における界面活性剤の含有率は易接着層の重量を基準に0.5〜6重量%であり、界面活性剤は疎水基と親水基とからなり、疎水基は炭素数13〜15の直鎖炭化水素であり、親水基はオキシエチレンとオキシプロピレンの共重合体からなり、オキシエチレンの親水基における割合が30〜50モル%であり、界面活性剤の重量平均分子量が1200〜1600であることを特徴とする光学用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用フィルムに関する。詳しくは、表示装置のタッチパネル基材や保護フィルム等、光を透過する態様で用いる部材として使用される光学用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
光学用フィルムとして二軸延伸ポリエステルフィルムが一般的に用いられており、フィルムを製膜した後、ハードコート層や粘着剤層といった加工層が設けられる。
このため、二軸延伸ポリエステルフィルムと加工層との密着性をよくするために、フィルム表面には易接着層が設けられる。易接着層はポリエステルのエマルジョンをコーティングすることにより塗設されるが、コーティングの際に、ロールによるせん断応力でエマルションが凝集し、しばしば異物が発生する。そうなると、凝集異物を含む易接着層の上にハードコート層や粘着剤層を設けても異物が残ってしまい、その光学フィルムを用いた表示装置の表示品質を低下させることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−238221号公報
【特許文献2】特開2002−155157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、易接着層を設けるコーティングの際に発生する異物を低減した光学用フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち本発明は、ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムおよびその少なくとも片面に設けられた厚み10〜300nmの易接着層からなる光学用フィルムであって、易接着層は高分子バインダーおよび界面活性剤を含有し、易接着層における高分子バインダーと界面活性剤の含有量の比は、高分子バインダー100重量部に対して界面活性剤0.5〜10重量部であり、易接着層における界面活性剤の含有率は易接着層の重量を基準に0.5〜6重量%であり、界面活性剤は疎水基と親水基とからなり、疎水基は炭素数13〜15の直鎖炭化水素であり、親水基はオキシエチレンとオキシプロピレンの共重合体からなり、オキシエチレンの親水基における割合が30〜50モル%であり、界面活性剤の重量平均分子量が1200〜1600であることを特徴とする光学用フィルムである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、易接着層を設けるコーティングの際に発生する異物を低減した光学用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】
[ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルム]
本発明におけるポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムは、ポリエチレンテレフタレートからなる二軸延伸フィルムである。
本発明におけるポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレート単位を、全繰返し単位を基準に95%以上、好ましくは98%以上の繰り返し単位としてなるポリエステルである。これは、ホモポリマーであってもよく、共重合ポリマーであってもよい。共重合ポリマーである場合、共重合成分として、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコールを用いることができる。ポリエチレンテレフタレートとして最も好ましいものは、ポリエチレンテレフタレートホモポリマーである。
光学用フィルムとしての機械的特性を得るために二軸延伸フィルムの厚みは、好ましくは30〜250μm、さらに好ましくは70〜225μmである。
【0009】
[易接着層]
本発明の光学用フィルムは、ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムの片面または両面に易接着層を備える。易接着層の厚みは10〜300nm、好ましくは50〜120nmである。塗布層の厚みがこの範囲にないと、本発明の光学用フィルムのうえにハードコート層を設けたときに密着性が不足したり、干渉斑が生じたりするので、光学用フィルムとして不適である。
【0010】
[高分子バインダー]
易接着層の高分子バインダーは、易接着層の表面にハードコート層を設ける場合にハードコート層との良好な接着性を得る観点から、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の混合物であることが好ましい。この高分子バインダーは、水に可溶性または分散性のものが好ましいが、多少の有機溶剤を含有する水に可溶なものも好ましく用いることができる。高分子バインダーのポリエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。この範囲であれば、優れた接着性、耐傷性、耐ブロッキング性および塗布外観を得ることができる。
【0011】
この場合、高分子バインダーを構成するポリエステル樹脂の塗布層中での含有割合は、好ましくは5〜95重量%、さらに好ましくは50〜90重量%である。高分子バインダーを構成するオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の、塗布層中での含有割合は、好ましくは5〜95重量%、さらに好ましくは10〜50重量%である。高分子バインダーがこの範囲の組成であることで、ハードコート層との良好な接着性を得るとともに、フィルムへの特に良好な密着性を得ることができる。
【0012】
[界面活性剤]
本発明における界面活性剤は親水基と疎水基からなり、疎水基は炭素数が13〜15の直鎖炭化水素であり、かつ親水基はオキシエチレンとオキシプロピレンの共重合体からなり、オキシエチレンの親水基における割合が30〜50モル%である界面活性剤である。
易接着層における高分子バインダーと界面活性剤の含有量の比は、高分子バインダー100重量部に対して界面活性剤0.5〜10重量部、好ましくは1〜3重量部である。界面活性剤の量が0.5重量部未満であるとポリエステルバインダーの水分散性が悪化する。他方、10重量部を越えると余剰の界面活性剤自身が凝集を促進する作用を持つ。
易接着層における界面活性剤の含有率は易接着層の重量を基準に0.5〜6重量%である。0.5重量%未満であると、ポリエステルバインダーの水分散性が悪化する。他方、6重量%を超えるとロールコーターで塗布する時のロールとフィルムとのせん断応力によってポリエステルバインダーを凝集させてしまう。
【0013】
界面活性剤は疎水基と親水基とからなる。疎水基は炭素数13〜15の直鎖炭化水素である。疎水基の炭素数が13未満であると易接着層をコーティングするときに高分子バインダーが凝集する、15を超えると表面張力が下がりコーティングの斑になる。親水基はオキシエチレンとオキシプロピレンの共重合体からなる。オキシエチレンの親水基における割合が30〜50モル%である。30モル%未満であると水分散がうまくいかない、50モル%を超えるとコーティングするときに高分子バインダーが凝集する。
界面活性剤の分子量は1200〜1600である。界面活性剤の分子量がこの範囲から外れると、ポリエステルバインダーの水分散性が悪化する。また、ロールコーターで塗布する時のロールとフィルムとのせん断応力によってポリエステルバインダーを凝集させてしまう。
【0014】
[帯電防止剤]
易接着層は、加工時の剥離帯電による異物の付着を防止するために、帯電防止剤を含有していることが好ましい。易接着層が耐電防止剤を含有する場合、易接着層の重量を基準として、好ましくは2〜5重量%である。この範囲で含有することにより、接着性および密着性を損なうことなく、異物の付着を防止する帯電防止性を付与することができる。
【0015】
[異物]
本発明の光学用フィルムにおいては、易接着層における、凸部の大きさの最大径が20μm以上かつ凸部の高さが1μm以上の異物が3個以下/100mであることが好ましい。異物が3個/100mを超えると、光学用基材を製造する際の歩留まりが低下して好ましくない。
【0016】
[製造方法]
本発明に用いる界面活性剤は、テトラデカノールもしくはペンタデカノールに触媒として水酸化ナトリウムを加え、攪拌しながら150〜180℃まで加熱し、これにエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを加えることで製造することができる。
本発明の光学用フィルムを製造するためには、コーティング速度を遅くすることができる同時二軸延伸法にて延伸することが肝要である。以下、ポリエステルの融点をTm、ガラス転移温度をTgと略記する。
【0017】
本発明の光学用フィルムは、まず、ポリエステルを溶融し、シート状に押出し、冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、未延伸フィルムの少なくとも片面に易接着層の塗液を塗布したあと、二軸方向に同時に延伸し、熱固定し、熱弛緩処理することによって得ることができる。具体的には、ポリエステルを、(Tm+10℃)〜(Tm+30℃)の温度で溶融し、押出して未延伸フィルムとし、未延伸フィルムの少なくとも片面に易接着層をロールコーターで積層したあと、同時に二軸方向に、Tg〜(Tg+10℃)の温度で縦方向に3.0〜3.4倍、横方向に3.4〜4.0倍の倍率で延伸する。得られた延伸フィルムを、(Tg+60)〜Tmの温度で熱固定する。例えばポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートホモポリマーである場合、230〜240℃の温度で、1〜60秒の時間熱固定処理するのが好ましい。
【0018】
易接着層の塗布は、以下の方法で行うことができる。走行するフィルムの速度は10m/minとし、80線のグラビアロールを20m/minの回転速度で塗液を汲み上げ、ドクターブレードによってグラビアロール上の塗液を一定量となるように掻き落とし、フィルムに塗布する。もしくは、80線のグラビアロールを15m/minの回転速度で塗液を汲み上げ、ドクターブレードによってグラビアロール上の塗液を一定量となるように掻き落とし、25m/minで回転するゴムロールに転写させ、フィルムに塗布する。
【実施例】
【0019】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
フィルムの評価および実施例で用いた界面活性剤の合成は、以下の方法で行った。
【0020】
(1)異物の個数
以下に説明する光学欠点検出装置により、巾1m、長さ100mのフィルムロールについて、光学的に最大径が20μm以上の大きさと認識される光学欠点を異物として検出した。巻取り機の繰出し側と巻取り側の間に、パナソニック社製三波長形蛍光灯ラピッドスタータ形40Wの蛍光灯を巾10mmのスリットでマスキングした光源をフィルムの上方5cmの位置に設置し、フィルムロールをシワが入らないように、この巻取り機で巻き返し、この際に、繰出したフィルムへ光源と受光器とを結ぶ直線と測定対象のフィルム面の垂直方向とのなす角度が12度になるようにフィルムに光線を入射し、フィルムに光線があたる位置に光学欠点が存在すると受光器のCCDイメージセンサカメラで電気信号に変換し、光学欠点のある位置と無い位置での電機信号のシグナル強度変化により異物を認識し、異物のフィルム上での長手方向および横手方向の位置情報を記録した。この方法による異物の検出を、フィルムの繰出し速度5m毎分でフィルムの長手方向100mについて実施して、フィルムの100mあたりに存在する異物の個数と位置情報を検出した。
異物の高さ測定は、位置情報を基に異物を含む領域を適切な大きさにサンプリングし、オリンパス社製レーザー顕微鏡LEXT OLS4000で異物の高さを測定した。
最終的に、凸部の大きさの最大径が20μm以上かつ凸部の高さが1μm以上の異物の数を算出した。
【0021】
(2)界面活性剤の重量平均分子量
界面活性剤の重量平均分子量は、大塚電子社製DLS−8000で測定して求めた。
【0022】
(3)界面活性剤の疎水基の炭素数
疎水基の炭素数は、BRUKER社製核磁気共鳴装置AVANCEでH−NMRの測定チャートから読み取った。
【0023】
(4)易接着層の厚み
易接着層の膜厚は、フィルムサンプルの断面を日立社製電界放出形透過電子顕微鏡 HF−3300で観察し、実際の膜厚を測定した。
【0024】
(5)界面活性剤の合成
界面活性剤A〜Fを特許3187846号公報(特願平10−521226号)に記載の方法に準拠して、以下の方法にて作成した。「部」は重量部を意味する。
【0025】
界面活性剤A
エチレンオキサイド用とプロピレンオキサイド用の2つ計量槽の付いた5リットルの回転攪拌式オートクレーブ中に、テトラデカノールを143部、水酸化カリウムを3.0部仕込み、窒素置換を行った後110℃に昇温して、40TORRで1時間脱水を行った。次に150℃に昇温し、エチレンオキサイドを3.5kg/cmの圧力で288部オートクレーブ中に導入し、圧力が低下して一定になるまで反応させた後、120℃に冷却してプロピレンオキサイド569部をオートクレーブ中に3.5kg/cmの圧力で導入し、エチレンオキサイドの場合と同様に圧力が低下し一定になるまで反応させた。反応終了後、温度を低下させて合成したサンプルを抜き出し、約1000部の目的の界面活性剤Aを得た。
【0026】
界面活性剤B
エチレンオキサイド用とプロピレンオキサイド用の2つ計量槽の付いた5リットルの回転攪拌式オートクレーブ中に、トリデカノールを154部、水酸化カリウムを3.0部仕込み、窒素置換を行った後110℃に昇温して、40TORRで1時間脱水を行った。次に150℃に昇温し、エチレンオキサイドを3.5kg/cmの圧力で208部オートクレーブ中に導入し、圧力が低下して一定になるまで反応させた後、120℃に冷却してプロピレンオキサイド639部をオートクレーブ中に3.5kg/cmの圧力で導入し、エチレンオキサイドの場合と同様に圧力が低下し一定になるまで反応させた。反応終了後、温度を低下させて合成したサンプルを抜き出し、約1000部の目的の界面活性剤Bを得た。
【0027】
界面活性剤C
エチレンオキサイド用とプロピレンオキサイド用の2つ計量槽の付いた5リットルの回転攪拌式オートクレーブ中に、テトラデカノールを306部、水酸化カリウムを3.0部仕込み、窒素置換を行った後110℃に昇温して、40TORRで1時間脱水を行った。次に150℃に昇温し、エチレンオキサイドを3.5kg/cmの圧力で233部オートクレーブ中に導入し、圧力が低下して一定になるまで反応させた後、120℃に冷却してプロピレンオキサイド461部をオートクレーブ中に3.5kg/cmの圧力で導入し、エチレンオキサイドの場合と同様に圧力が低下し一定になるまで反応させた。反応終了後、温度を低下させて合成したサンプルを抜き出し、約1000部の目的の界面活性剤Cを得た。
【0028】
界面活性剤D
エチレンオキサイド用とプロピレンオキサイド用の2つ計量槽の付いた5リットルの回転攪拌式オートクレーブ中に、ヘプタノールを77部、水酸化カリウムを3.0部仕込み、窒素置換を行った後110℃に昇温して、40TORRで1時間脱水を行った。次に150℃に昇温し、エチレンオキサイドを3.5kg/cmの圧力で310部オートクレーブ中に導入し、圧力が低下して一定になるまで反応させた後、120℃に冷却してプロピレンオキサイド613部をオートクレーブ中に3.5kg/cmの圧力で導入し、エチレンオキサイドの場合と同様に圧力が低下し一定になるまで反応させた。反応終了後、温度を低下させて合成したサンプルを抜き出し、約1000部の目的の界面活性剤Dを得た。
【0029】
界面活性剤E
エチレンオキサイド用とプロピレンオキサイド用の2つ計量槽の付いた5リットルの回転攪拌式オートクレーブ中に、テトラデカノールを143部、水酸化カリウムを3.0部仕込み、窒素置換を行った後110℃に昇温して、40TORRで1時間脱水を行った。次に150℃に昇温し、エチレンオキサイドを3.5kg/cmの圧力で67部オートクレーブ中に導入し、圧力が低下して一定になるまで反応させた後、120℃に冷却してプロピレンオキサイド791部をオートクレーブ中に3.5kg/cmの圧力で導入し、エチレンオキサイドの場合と同様に圧力が低下し一定になるまで反応させた。反応終了後、温度を低下させて合成したサンプルを抜き出し、約1000部の目的の界面活性剤Eを得た。
【0030】
界面活性剤F
エチレンオキサイド用とプロピレンオキサイド用の2つ計量槽の付いた5リットルの回転攪拌式オートクレーブ中に、テトラデカノールを143部、水酸化カリウムを3.0部仕込み、窒素置換を行った後110℃に昇温して、40TORRで1時間脱水を行った。次に150℃に昇温し、エチレンオキサイドを3.5kg/cmの圧力で645部オートクレーブ中に導入し、圧力が低下して一定になるまで反応させた後、120℃に冷却してプロピレンオキサイド213部をオートクレーブ中に3.5kg/cmの圧力で導入し、エチレンオキサイドの場合と同様に圧力が低下し一定になるまで反応させた。反応終了後、温度を低下させて合成したサンプルを抜き出し、約1000部の目的の界面活性剤Fを得た。
得られた界面活性剤AからFの詳細を表1に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
[実施例1]
溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.63dl/g、Tg=78℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いでその両面に表1に示す塗剤組成1の濃度10重量%の水性塗液をロールコーターで均一に塗布して塗布フィルムを得た。この水性塗液における高分子バインダーと界面活性剤の含有量の比は、高分子バインダー100重量部に対して界面活性剤5重量部であり、塗布フィルムを、引き続いて95℃で乾燥し、120℃で縦方向に3.3倍、横方向に3.7倍の延伸倍率で縦横方向を同時に延伸し、240℃で熱固定し、厚さ100μmの光学用フィルムを得た。この光学用フィルムの易接着層における高分子バインダーと界面活性剤の含有量の比は、高分子バインダー100重量部に対して界面活性剤4重量部であり、易接着層における界面活性剤の含有率は易接着層の重量を基準に4重量%である。評価結果を表2に示す。
【0033】
[実施例2]
水性塗液を表2に示す塗剤組成2の濃度10重量%の水性塗液に変更すること以外は実施例1と同様にして厚さ100μmの光学用フィルムを得た。この光学用フィルムの易接着層における高分子バインダーと界面活性剤の含有量の比は、高分子バインダー100重量部に対して界面活性剤4重量部であり、易接着層における界面活性剤の含有率は易接着層の重量を基準に4重量%である。評価結果を表2に示す。
【0034】
[比較例1]
水性塗液を表2に示す塗剤組成3の濃度10重量%の水性塗液に変更すること以外は実施例1と同様にして厚さ100μmの光学用フィルムを得た。この光学用フィルムの易接着層における高分子バインダーと界面活性剤の含有量の比は、高分子バインダー100重量部に対して界面活性剤0.4重量部である。評価結果を表2に示す。
【0035】
[比較例2]
水性塗液を表2に示す塗剤組成4の濃度10重量%の水性塗液に変更すること以外は実施例1と同様にして厚さ100μmの光学用フィルムを得た。この光学用フィルムの易接着層における高分子バインダーと界面活性剤の含有量の比は、高分子バインダー100重量部に対して界面活性剤20重量部である。評価結果を表2に示す。
【0036】
[比較例3]
水性塗液を表2に示す塗剤組成5の濃度10重量%の水性塗液に変更すること以外は実施例1と同様にして厚さ100μmの光学用フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0037】
[比較例4]
水性塗液を表2に示す塗剤組成6の濃度10重量%の水性塗液に変更すること以外は実施例1と同様にして厚さ100μmの光学用フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0038】
[比較例5]
水性塗液を表2に示す塗剤組成7の濃度10重量%の水性塗液に変更すること以外は実施例1と同様にして厚さ100μmの光学用フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0039】
[比較例6]
水性塗液を表2に示す塗剤組成8の濃度10重量%の水性塗液に変更すること以外は実施例1と同様にして厚さ100μmの光学用フィルムを得た。評価結果を表2に示す。
【0040】
【表2】

【0041】
なお、表2の塗液組成の成分は次のとおりである。「部」は重量部を意味する。
【0042】
水分散性ポリエステル組成物1
水分散性ポリエステル組成物1は、水分散性ポリエステル1と界面活性剤Aとの混合物である。
水分散性ポリエステル1は、ジカルボン酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸75モル%/イソフタル酸20モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量15000)。なお、この水分散性ポリエステル1は、下記の方法で製造した。すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル51部、イソフタル酸ジメチル11部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール31部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで攪拌器のモータートルクの高い重合釜で反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、固有粘度が0.56の水分散性ポリエステル1を得た。この水分散性ポリエステル1の25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に界面活性剤Aを1部添加し、10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去した。
【0043】
水分散性ポリエステル組成物2
水分散性ポリエステル組成物2は、水分散性ポリエステル2と界面活性剤Bとの混合物である。
水分散性ポリエステル2は、ジカルボン酸成分がテレフタルジカルボン酸97モル%/イソフタル酸1モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸2モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量15000)。なお、この水分散性ポリエステル2は、下記の方法で製造した。すなわち、テレフタル酸ジメチル62部、イソフタル酸ジメチル1部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール31部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで攪拌器のモータートルクの高い重合釜で反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、固有粘度が0.56の水分散性ポリエステル2を得た。この水分散性ポリエステル2の25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に界面活性剤Bを1部添加し、10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去した。
【0044】
水分散性ポリエステル組成物3
水分散性ポリエステル組成物3は、水分散性ポリエステル1と界面活性剤Aとの混合物である。界面活性剤Aの添加量を0.1部に変更する以外は水分散性ポリエステル組成物1と同様にして、水分散性ポリエステル組成物3を得た。
【0045】
水分散性ポリエステル組成物4
水分散性ポリエステル組成物4は、水分散性ポリエステル1と界面活性剤Aとの混合物である。界面活性剤Aの添加量を5部に変更する以外は水分散性ポリエステル組成物1と同様にして、水分散性ポリエステル組成物4を得た。
【0046】
水分散性ポリエステル組成物5
水分散性ポリエステル組成物5は、水分散性ポリエステル1と界面活性剤Cとの混合物である。界面活性剤Aの代わりに界面活性剤Cを用いた以外は水分散性ポリエステル組成物1と同様にして、水分散性ポリエステル組成物5を得た。
【0047】
水分散性ポリエステル組成物6
水分散性ポリエステル組成物5は、水分散性ポリエステル1と界面活性剤Dとの混合物である。界面活性剤Aの代わりに界面活性剤Dを用いた以外は水分散性ポリエステル組成物1と同様にして、水分散性ポリエステル組成物6を得た。
【0048】
水分散性ポリエステル組成物7
水分散性ポリエステル組成物5は、水分散性ポリエステル1と界面活性剤Eとの混合物である。界面活性剤Aの代わりに界面活性剤Eを用いた以外は水分散性ポリエステル組成物1と同様にして、水分散性ポリエステル組成物7を得た。
【0049】
水分散性ポリエステル組成物8
水分散性ポリエステル組成物8は、水分散性ポリエステル1と界面活性剤Fとの混合物である。界面活性剤Aの代わりに界面活性剤Fを用いた以外は水分散性ポリエステル組成物1と同様にして、水分散性ポリエステル組成物8を得た。
【0050】
架橋剤
メチルメタクリレート10モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン70モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート5モル%/アクリルアミド15モル%で構成されている(Tg=100℃)。なお、架橋剤は、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硫酸水素ナトリウム0.2部を添加し、メタクリル酸メチル7.8部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン52.8部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸20.4部、アクリルアミド6.6部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が25%の架橋剤の水分散体を得た。
【0051】
添加剤
帯電防止剤(複合資材株式会社製 商品名エレカットL)
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の光学用フィルムは、タッチパネルの基材フィルムとして好適に用いることができる。また、液晶表示面に貼付ける表面保護フィルムとして好適に用いることができる。
本発明の光学用フィルムは、少なくとも片面にハードコート層を設ける加工を施したあと、透明導電層や粘着層を設ける加工を施し製品サイズに裁断することで、タッチパネルの基材フィルムや表面保護フィルム等の光学部材に加工することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート二軸延伸フィルムおよびその少なくとも片面に設けられた厚み10〜300nmの易接着層からなる光学用フィルムであって、易接着層は高分子バインダーおよび界面活性剤を含有し、易接着層における高分子バインダーと界面活性剤の含有量の比は、高分子バインダー100重量部に対して界面活性剤0.5〜10重量部であり、易接着層における界面活性剤の含有率は易接着層の重量を基準に0.5〜6重量%であり、界面活性剤は疎水基と親水基とからなり、疎水基は炭素数13〜15の直鎖炭化水素であり、親水基はオキシエチレンとオキシプロピレンの共重合体からなり、オキシエチレンの親水基における割合が30〜50モル%であり、界面活性剤の重量平均分子量が1200〜1600であることを特徴とする光学用フィルム。
【請求項2】
易接着層における、凸部の大きさの最大径が20μm以上かつ凸部の高さが1μm以上の異物が3個以下/100mである、請求項1記載の光学用フィルム。

【公開番号】特開2011−136539(P2011−136539A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63(P2010−63)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】