説明

光学用プラスチックス基板

【課題】過酷な条件下でのACF圧着接続を行うことが可能になるようにした光学用プラスチックス基板を提供することを目的とする。
【解決手段】多層構造のプラスチックス基板であって、その基板(1) が、層状化合物を含んでなる層(A) を少なくとも1層含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶表示素子の液晶セルの電極基板をはじめとする種々の光学用途に適した多層構造の光学用プラスチックス基板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】パソコンや携帯用情報端末の普及につれ液晶表示素子の使用は年々拡大している。なかでも液晶セルの電極基板としては従来ガラス基板が用いられてきたが、素子の軽量化、衝撃への耐性、柔軟性などの観点から、携帯用情報端末などには光学用プラスチックス基板が用いられることが多い。光学用プラスチックス基板として、特開平9−29881号公報には、基材フィルムの少なくとも片面に、有機の耐透気性層Xおよび無機の耐透気性層Yからなる2種の耐透気性層のうちの一方の耐透気性層が設けられ、さらにその一方の耐透気性層上に他方の耐透気性層が設けられた構成を有し、隣接する層間にはアンカーコーティング層が設けられていてもよい光学用積層シートが示されている。具体的な層構成は、「耐熱耐溶剤性樹脂層/無機の耐透気性層/有機の耐透気性層/基材フィルム/有機の耐透気性層/無機の耐透気性層/耐熱耐溶剤性樹脂層」、「耐熱耐溶剤性樹脂層/硬化性樹脂硬化物層/無機の耐透気性層/有機の耐透気性層/基材フィルム/有機の耐透気性層/無機の耐透気性層/硬化性樹脂硬化物層/耐熱耐溶剤性樹脂層」などである。
【0003】特開平9−96803号公報には、「外部側耐熱耐溶剤性層/耐透気性樹脂層/内部側硬化性樹脂硬化物層/活性エネルギー線硬化型樹脂硬化物層/内部側硬化性樹脂硬化物層/耐透気性樹脂層/外部側耐熱耐溶剤性層」などの層構成を有する光学用積層シートが示されている。
【0004】特開平9−254332号公報、特開平9−254333号公報、特開平9−254334号公報には、両外層が硬化型樹脂硬化物層で構成され、これら両外層で挟まれた内部側に少なくとも1層の耐透気性層が存在する構造のプラスチックス基板が示されている。内部側には、耐透気性層の外に基材フィルムやさらなる硬化型樹脂硬化物層が存在してもよい。
【0005】特開平10−67064号公報には、「防湿耐アルカリ性層/無機質薄層/硬化性樹脂硬化物層/芯材樹脂層/硬化性樹脂硬化物層/無機質薄層/防湿耐アルカリ性層」などの層構成を有する光学用積層シートであって、特に芯材樹脂層が「耐透気性樹脂層/基材フィルム層/耐透気性樹脂層」であるものが示されている。
【0006】特開平10−82983号公報には、「硬化性樹脂硬化物層/有機防湿層/有機防気層/光等方性基材シート層/有機防気層/有機防湿層/硬化性樹脂硬化物層」などの層構成を有する光学用積層シートであって、有機防湿層が撥水性単位を含むポリマーの層からなるものが示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】液晶表示素子の液晶セルの電極基板にあっては、ガラス基板に代るプラスチックス基板の重要性は益々高くなっている。プラスチックス基板には、防気性、耐溶剤性、耐液晶性などの諸性質が要求されるが、プラスチックス基板はガラス基板に比すれば、どうしても耐熱性や表面硬度などの特性が不足することを免かれない。
【0008】しかるに、耐熱性や表面硬度が不足すると、その基板に透明電極を設けて電極基板として用いるときに、そのパターン電極と制御用IC(TCPやFPC)のアウターリードとの間の一括接続を両者間に異方性導電シート(ACF)を介在させた状態で熱圧着することにより行うときに、基板を構成するフィルム・シートの変形や反り、電極パターンにクラックが発生することによる断線などのトラブルを起こすようになる。なお、TCPとはTape Carrier Package、FPCとはFlexible Printed Circuitの略である。
【0009】上に列挙した各公報の中には、このACF圧着接続性の改良を目的としたものもいくつかあり、ある程度の成果が得られているが、現在では接続部の端子の線巾は0.2mmから0.1mmにまで狭まると共に端子数は20本/inchを越えており、特にカラーの場合にはR、G、Bの3本で1本の役割を果たすので、端子が極端に細密化しており、また接続のための熱圧着条件も、従来のヒートシール法における(120〜150)℃×(15〜60)秒×(10〜50)kg/cm2から、たとえば160℃以上×(10〜60)秒×20kg/cm2以上というようなACFによる圧着接続が要求されるようになっているという事情がある。このように高度化する要求の前には、さらに耐熱性および表面硬度を一段と高めて、ACF圧着接続性の改良を図ることが強く求められている。
【0010】本発明者らの研究によれば、ACF圧着接続性は、電極基板の表面側の層の耐熱性や表面硬度を高めるだけでは限界があることが判明した。本発明者らの検討によれば、これは内部の層である有機の耐透気性層(防気層)の耐熱性および硬度が不足するため(言わば足場が柔らかいため)であると思われる。上に列挙した各公報(特開平8−248400号公報、特開平9−29881号公報など)の発明においては、有機の防気層として、たとえばポリビニルアルコールグラフト共重合体に架橋剤を配合して製膜した層を用いているが、ACF圧着接続性の高度化に対処するためには、有機の防気層についてもさらに根本的な改良を図る必要がある。
【0011】本発明は、このような背景下において、過酷な条件下でのACF圧着接続を行うことが可能になるようにした光学用プラスチックス基板を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の光学用プラスチックッス基板は、多層構造のプラスチックス基板であって、該基板(1)が、層状化合物を含んでなる層(A)を少なくとも1層含んでいることを特徴とするものである。
【0013】
【発明の実施の形態】〈層状化合物を含んでなる層(A)〉層状化合物を含んでなる層(A)は、層状化合物(a)を含んでなり、層状化合物(a)からなっていてもよいし、層状化合物(a)に加えて、さらに樹脂(b)および/またはその他の成分(c)を含んでいてもよい。
【0014】層状化合物(a)としては、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有している化合物である。なかでも無機の層状化合物(以下、無機層状化合物と称する)が好ましくかかる無機層状化合物は、通常、劈開性を有しており、劈開した状態においては、粒径が10μm以下、アスペクト比が10〜10,000の範囲内のものが好ましい。また、後述するように、無機層状化合物の粒径が3μm以下であれば該層(層状化合物を含んでなる層(A))の透明性がより良好となるので好ましく、さらに粒径が1μm以下であればより好ましい。なお上記アスペクト比は、特開平6−93133号公報に記載の方法により求めることができる。アスペクト比が大きいほど、層(A)の耐熱性、耐透気性が高くなり、好ましいことが多い。かかる観点からアスペクト比としては30〜5000が好ましく、200〜3000がより好ましい。
【0015】上記無機層状化合物の具体例としては、例えば、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物等)、カルコゲン化物、粘土鉱物、ハイドロタルサイト類化合物およびその類似化合物を挙げることができる。上記カルコゲン化物とは、周期率表のIV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)およびVI族(Mo,W)のジカルコゲン化物であって、化学式MX2(但し、式中、Mは上記IV族ないしVI族の元素を表し、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を表す)で示される化合物である。
【0016】無機層状化合物は、一種類のみを用いてもよく、適宜二種類以上を混合して用いてもよい。無機層状化合物のなかでも、後述するような無機層状化合物を含有するコーティング液を基材の表面に塗布し、層(A)を形成させる場合Iは、コーティング液に用いられる分散媒中で膨潤または劈開する性質を有する無機層状化合物、すなわち膨潤性無機層状化合物が好ましく、分散媒中で劈開する性質(溶媒により膨潤し、かつ劈開する性質)を有するものがより好ましい。
【0017】上記無機層状化合物のうち、分散媒中で膨潤または劈開する無機層状化合物としては、膨潤性および/または劈開性を有する粘土鉱物やハイドロタルサイト類化合物およびその類似化合物が特に好ましく用いられる。膨潤性、劈開性を有する粘土鉱物(以下、膨潤・劈開性粘土鉱物と称する場合もある)は、一般に、(1)シリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を有する2層構造を有するタイプと、(2)シリカの四面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属とした八面体層を両側から狭んでなる3層構造を有するタイプに分類される。前者(1)の2層構造タイプとしては、カオリナイト族およびアンチゴライト族等の粘土鉱物が挙げられる。後者(2)の3層構造タイプとしては、層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、およびマイカ族等の粘土鉱物が挙げられる。
【0018】これら粘土鉱物としては、より具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等が挙げられる。また、これら粘土鉱物を有機物で処理したもの(朝倉書店、「粘土の事典」参照;以下、有機修飾粘土鉱物と称する場合もある)も用いることができる。
【0019】膨潤・劈開性粘土鉱物の中でも、より膨潤または劈開しやすいという観点から、スメクタイト族、バーミキュライト族、およびマイカ族の粘土鉱物が好ましく、スメクタイト族がより好ましい。上記スメクタイト族の粘土鉱物としては、具体的には、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ソーコナイト、スチブンサイト、ヘクトライトが挙げられる。
【0020】ハイドロタルサイト類化合物およびその類似化合物とは、粘土鉱物の層間イオンがかカチオンであるのに対してアニオンであるところが特徴的であり、具体的には、例えば、下記式で表されるものが例示できる。まず、ハイドロタルサイト類化合物としては、下記式(I):M2+1-xAl3+x(OH-2(A1n-x/n・mH2O (I)(式中、M2+は2価金属イオンであり、A1n-はn価のアニオンであり、x、mおよびnは、0<x<0.5、0≦m≦2、1≦nという条件を満たす。)で示される化合物が挙げられる。M2+としては、Mg2+、Ca2+、Zn2+などが例示される。n価の陰イオンは特に限定されず、例えばCl-、Br-、I-、NO3-、ClO4-、SO42-、CO32-、SiO32-、HPO43-、HBO43-、PO43-、Fe(CN)63-、Fe(CN)64-、CH3COO-、C64(OH)COO-、(COO)22-、テレフタル酸イオン、ナフタレンスルホン酸イオン等の陰イオンや、特開平8−217912に記載のポリ珪酸イオンやポリ燐酸イオン等が挙げられる。具体的には、例えば、天然ハイドロタルサイトやアルカマイザー DHT−4A(商品名、協和化学工業製)のような合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
【0021】ハイドロタルサイト類似化合物としては、例えば、特開平5−179052号公報に開示された下記式(II):Li+(Al3+2(OH-6・(A2n-1/n・mH2O (II)
(式中、A2n-はn価の陰イオンであり、mおよびnは、0≦m≦3、1≦nという条件を満たす)で示される化合物が挙げられる。n価の陰イオンは、特に限定されないが、例えば、上記式(I)の化合物におけるA1n-と同様の陰イオンが挙げられる。
【0022】また、WO97/00828に開示された下記式(III):[(Li+(1-x)2+x)(Al3+)2(OH-)6]2(Siy(2y+1)2-)(1+x)・mH2O (III)
(式中、M2+は2価の金属イオンであり、m、xおよびyは、0≦m<5、0≦x<1、2≦y≦4という条件を満たす)で表わされる化合物、さらには特開平8−217912号公報に開示された下記式(IV):[(Li+(1-x)2+x)(Al3+2(OH-62(A3n-2(1+x)/n・mH2O (IV)
(式中、M2+は2価の金属イオンであり、A3n-はn価の陰イオンであり、m、xおよびnは、0≦m<5、0.01≦x<1、1≦nという条件を満たす)で表わされる化合物等も例示できる。なお、式(III)および(IV)におけるM2+としては、Mg2+、Ca2+、Zn2+などが例示される。上記式(III)および(IV)で表される化合物はハイドロタルサイト類似化合物の中でもより好ましい。
【0023】樹脂(b)としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミド系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、セルロース系樹脂、ハロゲン含有樹脂、水素結合性樹脂、液晶樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、また、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0024】上記樹脂の中でも耐熱性、硬度、耐透気性の観点から、架橋性官能基として水素結合性基またはイオン性基を有する高水素結合性樹脂(後述)が好ましい。該高水素結合性樹脂中の水素結合性基またはイオン性基の含有量(両者を含む場合には両者の合計量)は、通常、20モル%〜60モル%の範囲内であり、好ましくは30モル%〜50モル%の範囲内である。これら水素結合性基およびイオン性基の含有量は、例えば、核磁気共鳴(例えば、1H−NMR、13C−NMR等)によって測定することができる。
【0025】上記高水素結合性樹脂が有する水素結合性基とは、具体的には、水酸基、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、燐酸基等が挙げられる。また、イオン性基としては、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、燐酸イオン基、アンモニウム基、ホスホニウム基等のイオン性基が挙げられる。これら水素結合性基およびイオン性基のなかでも特に好ましい官能基としては、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、スルホン酸基、カルボキシレート基、スルホン酸イオン基、アンモニウム基が挙げられる。
【0026】かかる高水素結合性樹脂の具体例としては、例えば、ポリビニルアルコール、多糖類、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアクリル酸およびそのエステル類、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリスチレンスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミンおよびその4級アンモニウム塩、ポリビニルチオール、ポリグリセリン等が挙げられる。
【0027】上記のポリビニルアルコール(PVA)は通常、ビニルエステル重合体等のエステル部分の加水分解またはエステル交換またはビニルエーテル重合体のエーテル部分を加水分解して得られるケン化物であり、例えば、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分をケン化して得られるポリマー;トリフルオロ酢酸ビニル重合体、ギ酸ビニル重合体、ピバリン酸ビニル重合体、t−ブチルビニルエーテル重合体、トリメチルシリルビニルエーテル重合体等をケン化して得られるポリマー等が挙げられる。(PVAの詳細については、例えば、ポバール会編の「PVAの世界」(1992年、(株)高分子刊行会);「ポバール」(1981年、(株)高分子刊行会、長野等著)等を参照)
【0028】上記PVAのケン化率は、70モル%以上であることが好ましく、85モル%以上であることがより好ましく、98モル%以上であることが特に好ましく、完全ケン化物であることが最も好ましい。また、上記PVAの重合度は、100〜20000の範囲内であることが好ましく、200〜5000、さらには200〜3000の範囲内であることがより好ましい。上記PVAとしては、本発明の効果が阻害されない限り、後述するような少量の共重合モノマーで変性された変性体であってもよい。
【0029】多糖類は、種々の単糖類の縮重合によって合成される高分子であり、該高分子に化学修飾を施したものであってもよい。多糖類としては、具体的には、例えば、セルロース;ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;アミロース;アミロペクチン;プルラン;カードラン;ザンタン;キチン;キトサンが挙げられる。
【0030】また、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)としては、ビニルアルコール分率が40モル%〜80モル%の範囲内のものが好ましく、ビニルアルコール分率が45モル%〜75モル%の範囲内のものが特に好ましい。該EVOHのメルトインデックス(MI)は、特に限定されるものではないが、温度190℃、荷重2160gの条件下で、0.1g/10分〜50g/10分であることが好ましい。上記のEVOHは、本発明の効果が阻害されない限り、後述するような少量の共重合モノマーで変性された変性体であってもよい。
【0031】高水素結合性樹脂のなかでも、PVAおよびその変性体、EVOHおよびその変性体、および多糖類が特に好適である。
【0032】PVAの変性体およびEVOHの変性体とは、それぞれ、PVAおよびEVOHの製造過程においてビニルエステルとして例えば酢酸ビニル単量体を用いた場合、酢酸ビニル単量体と、これと共重合可能な他の不飽和単量体、例えばエチレン、プロピレン、α−ヘキセン、α−オクテン等のオレフィン類や、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和酸、およびそのアルキルエステルやアルカリ塩類、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸含有単量体およびそのアルカリ塩類、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートや、トリメチル−2−(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルエチル)アンモニウムクロリド、トリメチル−3−(1−(メタ)アクリルアミドプロピル)アンモニウムクロリド、1−ビニル−2−エチルイミダゾール、その他4級化可能なカチオン性単量体、スチレン、アルキルビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド等の単量体との共重合体が挙げられる。
【0033】これら共重合成分の比率は特に限定されるものではないが、PVAまたはEVOH変性体中のビニルアルコール単位に対し、50モル%以下が好ましく、30モル%以下がより好ましく、その共重合の形態はランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等、任意の形態が可能である。
【0034】これら変性体のうち、カルボン酸単位が連続して重合したポリカルボン酸成分を共重合中に含むいわゆるブロック共重合体が特に好適に用いられ、該カルボン酸成分がメタクリル酸であるものが特に好ましい。さらに、かかるブロック共重合体は、変性体中のポリビニルアルコール鎖の片末端にポリアクリル酸鎖が延長されたようなA−B型ブロック共重合体である場合が特に好ましく、ポリビニルアルコールブロック成分(a)とポリアクリル酸ブロック成分(b)の重量比(a)/(b)が50/50〜95/5である場合が好ましく、60/40〜90/10である場合において特に好ましい。また、分子内にシリル基を有する化合物の少なくとも一種で変性されたビニルエステル系重合体ケン化物も好ましい。
【0035】PVAやEVOH等のビニルアルコール系重合体のシリル基変性体を得る方法としては、分子内にシリル基を有する化合物を常法によって得られたビニルアルコール系重合体(またはその変性体)に反応させてシリル基を重合体に導入する方法、ビニルアルコール系重合体(またはその変性体)の末端を活性化し、分子内にシリル基を有する不飽和単量体を重合体末端に導入する方法、分子内にシリル基を有する不飽和単量体をビニルアルコール系重合体(またはその変性体)にグラフト共重合せしめる方法等、ビニルアルコール系重合体(またはその変性体)の変性による方法;ビニルエステル系単量体と分子内にシリル基を有する不飽和単量体とから共重合体を得、これをケン化する方法;シリル基を有するメルカプタン等の存在下でビニルエステルを重合し、これをケン化して末端にシリル基を導入する方法などが有効に用いられる。
【0036】これらの方法で得られるシリル基変性体としては、結果的にその分子内にシリル基を有するものであればよいが、分子内に含有されるシリル基にアルコキシル基あるいはアシロキシル基およびこれらの加水分解物であるシラノール基またはその塩等の反応性置換基を有しているものが好ましく、中でもシラノール基である場合が特に好ましい。
【0037】これらのシリル基変性体を得るために用いられる分子内にシリル基を有する化合物としては、例えば、トリメチルクロルシラン、ジメチルクロルシラン、メチルトリクロルシラン、ビニルトリクロルシラン、ジフェニルジクロルシラン、トリエチルフルオロシラン等のオルガノハロシラン、トリメチルアセトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン等のオルガノシリコンエステル、トリメチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン、トリメチルシラノール、ジエチルシランジオール等のオルガノシラノール、N−アミエチルトリメトキシシラン等のアミノアルキルシラン、トリメチルシリコンイソジシアネート等のオルガノシリコンイソシアネートが挙げられる。これらシリル基を有する化合物による変性度は用いられるシリル基を有する化合物の種類、量、その他反応条件等によって任意に調節することができる。
【0038】また、ビニルエステル系単量体と分子内にシリル基を有する不飽和単量体とからの共重合体をケン化する方法において用いられる該不飽和単量体としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等に代表されるようなビニルアルコキシシランやビニルメチルジメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン等に代表されるようなビニルアルコキシシランのアルキルあるいはアリル置換体等のビニルシラン系化合物、これらのアルコキシ基の一部または全部をポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール置換したポリアルキレングリコール化ビニルシラン等が挙げられる。さらには、3−(メタ)アクリルアミノ−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン等に代表されるような(メタ)アクリルアミド−アルキルシラン等も好ましく用いることができる。
【0039】一方、シリル基を有するメルカプタン等の存在下でビニルエステルを重合した後、ケン化して末端にシリル基を導入する方法において、シリル基を有するメルカプタンとしては3−(トリメトキシシリル)−プロピルメルカプタン等のアルコキシシリルアルキルメルカプタンが好ましく用いられる。
【0040】本発明において上記シリル基変性体を用いる場合、そのシリル基変性体における変性度、すなわち、シリル基の含有量、ケン化度等はその適性範囲は種々異なるが、シリル基の含有量(シリル化率)は、通常、重合体中のビニルアルコール単位に対しシリル基を含む単量体として30モル%以下であり、10モル%以下が好ましく、5モル%以下である場合がより好ましく、2モル%以下が特に好ましく用いられる。下限は特に限定されないが、耐熱性、耐透気性の観点から通常、0.1モル%以上である。
【0041】尚、上記シリル化率は、シリル化前のポリビニルアルコール系樹脂に含まれていた水酸基の量に対する、シリル化後の導入されたシリル基の割合を示すものである。
【0042】上記のシリル基変性体は、導入されたシリル基の存在によってアルコール、またはアルコール/水の混合溶媒等のアルコール系溶媒に溶解する。したがって、層(A)の形成に用いるコーティング液については、コーティング液の取り扱いの観点から、その分散媒としてアルコール系溶媒が好ましい。また、シリル基変性体を溶媒に溶解すると、導入されたシリル基の一部が脱アルコール反応または脱水反応により反応して架橋するため、層(A)の強度をより高めることができる。シリル基変性体を用いコーティングにより層(A)を形成する場合は、コーティング液の分散媒としてはアルコール/水の混合溶媒を用いることがより好ましい。
【0043】上記PVAまたはその変性体、EVOHまたはその変性体は、それ単独で用いてもよいが、本発明の効果を阻害しない限り、さらに共重合可能な他の単量体との共重合体としてもよいし、他の樹脂を併用した混合物として用いてもよい。他の樹脂としては、たとえばポリアクリル酸またはそのエステル類、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の樹脂を挙げることができる。
【0044】本発明の層(A)に用いられる樹脂組成物中の層状化合物(a)と樹脂(b)の配合比率は、(層状化合物/樹脂)の重量比は1/100〜100/1が好ましく、5/100〜100/5がさらに好ましい。さらに、耐熱性、硬度、耐透気性の観点から、上記重量比は10/100〜100/20がより好ましい。1/100よりも小さい場合には、耐熱性、硬度、耐透気性の改良が不十分であり、100/1を超える場合には、層(A)が脆くなったり、透明性が低下する傾向がある。
【0045】層(A)にはその他の成分(c)として、種々 の添加剤などを用いてもよい。中でも、含有させる樹脂が高水素結合性樹脂である場合、耐熱性、硬度の更なる向上の目的で上記高水素結合性樹脂と架橋反応し得る架橋剤を用い、層(A)に架橋構造を導入することがより好ましい。
【0046】かかる架橋剤としては、高水素結合性樹脂と、配位結合、水素結合、イオン結合等により架橋反応し得る化合物であり、例えば、ホルムアルデヒド、グリオギサールなどアルデヒド系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、金属有機化合物などが挙げられる。上記高水素結合性樹脂との架橋反応性が高く、例えば無機系の金属塩と比較して架橋効率を向上することができるという観点から、金属有機化合物が好ましい。
【0047】上記金属有機化合物の好適な例としては、チタン有機化合物、ジルコニウム有機化合物、アルミニウム有機化合物、および珪素有機化合物が挙げられる。なかでも、キレート化合物、例えばアセチルアセトナートのようなキレート性の配位子を有し、上記高水素結合性樹脂と配位結合する金属有機化合物が、架橋反応性が適度であることから好ましい。
【0048】〈プラスチックス基板(1)〉プラスチックス基板(1)は、基材フィルム層(11)、芯材層(12)、硬化型樹脂硬化物層(13)、防気層(14)、防気防湿層(15)のうちの少なくとも1層を含む多層構造の基板であって、そのうちの少なくとも1層が、層状化合物を含んでなる層(A) で構成されている構造とする。
【0049】基材フィルム層(11)としては、たとえば、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、アモルファスポリオレフィン(ビシクロオレフィン系ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂)フィルム、ポリアミドイミド系樹脂フィルム、ポリイミド系樹脂フィルム、シリコーン系樹脂フィルム、さらには上記の層状化合物を含んでなる層(A)を少なくとも1層含むフィルムなどをはじめとする単層または複層のフィルムがあげられる。基材フィルム層(11)の厚みは、10〜1000μm またはそれ以上とすることが多い。基材フィルム層(11)上に他の層を積層するときは、予め基材フィルム層(11)にコロナ放電処理、プラズマ処理、溶剤処理などの密着性向上処理を施しておいてもよい、アンカーコーティング層(ac)を形成しておいてもよい。
【0050】基材フィルムの製膜方法は、均一で欠陥が少ないフィルムが得られる方法であれば、特に限定されないが、光学的均一性やゲルなどの欠点が少ないなどの点で溶剤キャスト法が好ましく用いられる。また、溶剤キャスト法を用いるのに適当な溶剤がない樹脂については、残留応力を小さくできる精密押出法を用いることで均一性に優れたフィルムを作製することもできる。また、必要に応じてロール間縦一軸延伸やテンター横延伸による一軸延伸、これらの組合せによる二軸延伸を行ったフィルムを用いることもできる。
【0051】芯材層(12)としては、上記の層状化合物を含んでなる層(A)のほか、たとえば、次に述べる硬化型樹脂硬化物層(13)のうちの活性エネルギー線硬化型樹脂の層が挙げられる。芯材層(12)は基材フィルム層(11)と同一であってもよいが、たとえば2枚の単層または複層フィルムの間に硬化型樹脂を介在させて硬化させて芯材とするような場合は、基材フィルム層(11)とは言いがたいことがあるので、芯材層(12)と称することにする。芯材層(12)の厚みに特に限定はないが、5〜1000μmまたはそれ以上とすることが多い。
【0052】硬化型樹脂硬化物層(13)としては、シリコーンアクリレート、エポキシアクリレート、エステルアクリレート、ウレタンアクリレートをはじめとするノンソルベントタイプの種々の活性エネルギー線硬化型樹脂の層、耐熱性を有する熱硬化性樹脂の硬化物の層、ポリアミドイミド系樹脂やアモルファスポリオレフィンに内的架橋手段(架橋剤の配合)または外的架橋手段(活性エネルギー線照射)を講じた層などが好適に用いられる。硬化型樹脂硬化物層(13)は上記の層状化合物を含んでなる層(A)であってもよい。この硬化型樹脂硬化物層(13)は、単層のみならず複層とすることもできる。硬化型樹脂硬化物層(13)の厚みに特に限定はないが、1層当り1〜300μm またはそれ以上、殊に2〜100μm 、さらには3〜50μm とすることが多い。なおノンソルベントタイプとは、名目的な量のソルベントを含む場合まで排除するものではない。
【0053】防気層(14)は、上記の層状化合物を含んでなる層(A)で構成されることが望ましいが、そのほか、ポリビニルアルコールまたはその共重合変性物・グラフト物・ポリマーアロイやエチレン含量15〜50モル%のエチレン−ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール系樹脂層、塩化ビニリデン系樹脂層、高アクリロニトリル系樹脂層などの有機高分子からなる層も用いられ、ビニルアルコール系樹脂層またはそれに架橋剤や水溶性天然高分子を配合した樹脂組成物の層も好ましい。防気層(14)の層厚は、1層当り2〜30μm 程度(好ましくは5〜15μm 程度)とすることが多い。この防気層(14)は、通常は流延法により形成される。
【0054】防気防湿層(15)としては、層状化合物を含んでなる層(A)が用いられる。また好ましくは無機薄膜、たとえば、SiOx(ただし、1≦x≦2、好ましくは1.5≦x<2)、MgO、Al23、InO2、SnO2、ZnOなどの単独や、これらの2種以上の混合物の層も好ましい。酸化物だけでなく、窒化物、炭化物、ホウ化物などを用いることもできる。この防気防湿層(15)は、特に無機薄膜の場合、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、常圧プラズマ法、ゾル−ゲル方式のコーティング法など、殊にスパッタリング法により形成される。防気防湿層(15)の層厚は、透明性が確保できる限りにおいて任意であるが、通常は1層当り30〜2000オングストローム程度(好ましくは50〜500オングストローム程度)が適当である。ただし、コーティング法によりヒートレスガラスを得るようなときには、10μm程度まで許容される。これら防気防湿層(15)は、防気層、防湿層、耐熱性を有する層、透明電極形成のためのアンダー層などとしての役割も果たす。
【0055】上記各層は透明かつ光等方性を有することが要求されるのが常であるが、用途によっては、たとえば偏光板兼用の電極基板や位相板兼用の電極基板などの場合には、光等方性でない層を含んでいてもよい。
【0056】隣接する層間には、必要に応じ、接着剤層(ad)を介在させたり、アンカーコーティング層(ac)を介在させたりすることができる。
【0057】プラスチックス基板(1) の層構成は多種多様とすることができ、また対称型であっても非対称型であってもよい。対称型の層構成のうちのいくつかの例は、下記の如くである。ここで符号の意味は、(11)は基材フィルム層、(12)は芯材層、(13)は硬化型樹脂硬化物層、(14)は防気層、(15)は防気防湿層、(ad)は接着剤層である。
【0058】
(13)/(14)/(11)/(14)/(13)(13)/(14)/(ad)/(14)/(13)(13)/(15)/(14)/(11)/(14)/(15)/(13)(13)/(15)/(14)/(12)/(14)/(15)/(13)(15)/(13)/(14)/(11)/(14)/(13)/(15)(13)/(15)/(12)/(15)/(13)(15)/(13)/(12)/(13)/(15)(13)/(15)/(14)/(15)/(13)(15)/(13)/(14)/(13)/(15)(13)/(14)/(12)/(14)/(13)(15)/(14)/(15)(15)/(14)/(14)/(15)(15)/(12)/(15)(15)/(14)/(11)/(14)/(15)(15)/(14)/(11)/(ad)/(11)/(14)/(15)
【0059】先に述べたように、本発明においては、(11)〜(15)のうち少なくとも1層が、層状化合物を含んでなる層(A)で構成されている構造とする。特に、(14)および/または(15)が層(A)で構成されている構造が好ましい。
【0060】かかる構成の光学用プラスチック基板は、通常透明性および光学的等方性に優れることが求められる。本発明の光学用プラスチック基板がもつ透明性としては、可視光領域での平均透過率が好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上である。また、光学的等方性としては、基板の面内のレターデーション値が50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。液晶セルの電極基板として用いる場合においても、通常は光学的等方性が求められるが、必要に応じてレターデーション値を付与したものを用いることもできる。また、偏光板の保護フィルム兼用の電極基板や位相差板兼用の電極基板として用いる場合にも、レターデーション値を付与したものを用いることもできる。レターデーション値は、適用する液晶表示装置の方式にもよるが、通常基板面内のレターデーション値は50nm〜2000nmである。
【0061】〈プラスチックス基板(1)上に設ける層〉上述のプラスチックス基板(1)上には、ITOに代表される透明電極(3)を形成することができる。この場合、透明電極(3)の密着性向上のためあるいは透明電極(3)のパターン化工程や水洗工程におけるカール防止や信頼性の向上のために、透明電極(3)の形成に先立ち金属酸化物などによるアンダーコート層(2)を形成しておくことが好ましい。このアンダーコート層(2)は、上述の防気防湿層(15)(とりわけ無機薄膜)と同系統のものを用いることが多い。
【0062】本発明の光学用プラスチックス基板は、液晶表示素子を構成する液晶セルの電極基板として特に有用である。そのほか、偏光板兼用の電極基板、位相板兼用の電極基板、タッチパネル用の透明電極付きフィルム(偏光板の上だけでなく偏光板の下に積層して用いるものを含む)、CRT用電磁波シールド板、プラズマディスプレイパネル(PDP)、バックライト、導光板、カラーフィルター、光カード、光テープ、光ディスク、太陽電池のカバー、EL基板、アクティブ素子などの用途にも用いることができる。
【0063】
【発明の効果】本発明の光学用プラスチックス基板にあっては、該基板(1) に含まれる層状化合物を含んでなる層(A)が、従来より提案または使用されているビニルアルコール系樹脂等からなる防気層に比し、耐熱性、硬度、防湿性が顕著にすぐれている。そのため、表面層として耐熱性および硬度がすぐれているものを選択すれば、内部の足場である防気層の耐熱性および硬度がすぐれているため、従来のプラスチックス基板では到達できなかったような過酷な条件下でのACF圧着接続にも耐えることができる。
【0064】
【実施例】以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。各種物性の測定方法を以下に記す。
【0065】〔粒径測定〕レーザー回折・散乱式粒度分布測定装置(LA910、堀場製作所(株)製)を使用し、媒体の樹脂マトリックス中に存在する層状化合物とみられる粒子の体積基準のメジアン径を粒径Lとして測定した。尚、層状化合物の分散液はフローセル法にて光路長4mmで測定した。
【0066】〔アスペクト比計算:樹脂使用の場合〕X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、層状化合物単独と樹脂を含む組成物の粉末法による回折測定を行った。これにより層状化合物の単位厚さaを求め、さらに樹脂を含む組成物の回折測定から、層状化合物の面間隔dが広がっている部分があることを確認した。上述の方法で求めた粒径Lを用いて、アスペクト比(Z)を、Z=L/aの式により算出した。
【0067】(実施例1)攪拌機付分散釜(商品名:デスパMH−L、浅田鉄工(株)製)に、イオン交換水(比電気伝導率1μs/cm以下)1000gと、樹脂としてのポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)100gとを仕込み、低速撹拌下(1,500rpm、周速度約4m/秒)で95℃に昇温し、1時間撹拌して溶解させて溶液(A)を得た。溶液(A)を撹拌したまま65℃まで温度を下げた後、イオン交換水400gとイソプロパノール94gを事前に混合したアルコール水溶液をゆっくり滴下した。滴下終了後65℃でさらに層状化合物としての高純度天然モンモリロナイト(商品名:クニピアF;クニミネ工業(株)製)を粉末のまま50g添加した。続いて、攪拌条件を高速攪拌(3000rpm、周速度約8m/秒)に切替え90分間分散し、混合液(B)を得た。
【0068】次に、高圧分散装置(商品名:超高圧ホモジナイザーM110−E/H、Microfluidics Corporation製)に、上記の混合液(B)を通し、1,750kgf/cm2で1回処理することで、分散性が良好で均一な分散液(C)を得た。分散液(C)の固形分濃度は約7.6重量%であった。該PVAとモンモリロナイトからなる分散液を乾燥固化後粉砕して、粉末X線解析を行い、膨潤・劈開した上記天然モンモリロナイト(クニピアF)の面間隔dを測定した。上記天然モンモリロナイト(クニピアF)は充分に劈開されていた。このときの上記天然モンモリロナイト(クニピアF)のアスペクト比は200以上であった。分散液(C)をポリエステルフィルム上に流延し、60℃で乾燥し、層状化合物と樹脂からなるフィルム(厚み約5μm)を得た。本フィルムにつき、酸素透過率(測定装置:モダンコントロール社製 OXTRAN10/50A;測定条件:23℃、50%RH;単位:cc/m2・24hr)を測定したところ、0.1未満と防気性に優れたものであった。さらに耐熱性の指標として180℃で30分熱処理したところ、フィルムは平面性を保ち、耐熱性に優れたものであった。
【0069】(実施例2)ポリビニルアルコール(PVA117H;(株)クラレ製,ケン化度;99.6%、重合度1,700)25g、層状化合物としての高純度天然モンモリロナイト(商品名:クニピアG;クニミネ工業(株)製)を粉末のまま50gとした以外は実施例1と同様にして層状化合物と樹脂からなるフィルム(厚み約5μm)を得た。本フィルムにつき、酸素透過率(測定装置:モダンコントロール社製OXTRAN10/50A;測定条件:23℃、50%RH;単位:cc/m2・24hr)を測定したところ、0.1未満と防気性に優れたものであった。さらに耐熱性の指標として180℃で30分熱処理したところ、フィルムは平面性を保ち、耐熱性に優れたものであった。
【0070】(比較例1)層状化合物を用いない以外は、実施例1と同様にしてフィルム(厚み約5μm)を得た。本フィルムにつき、酸素透過率(測定装置:モダンコントロール社製OXTRAN10/50A;測定条件:30℃、50%RH;単位:cc/m2・24hr)を測定したところ、0.4と防気性に劣り、さらに耐熱性の指標として180℃で30分熱処理したところ、フィルムは著しく収縮変形し、耐熱性に劣ったものであった。
【0071】そこでこのような基礎特性を有する層を含むプラスチックス基板(1)の例を以下に示した。
(参考例1)図1は本発明の光学用プラスチックス基板の一例を示した説明図である。図2は図1の光学用プラスチックス基板の使用形態の一例を示した説明図である。以下に示すように、特開2000−6259で開示されている方法に従って、光学用プラスチックス基板ならびにそれを用いた液晶セルを得ることができる。
【0072】ポリアミドイミド系樹脂にフェノールノボラック系エポキシ樹脂を樹脂分比で10:1の割合で混合した樹脂組成物の溶剤溶液を流延し、熱風乾燥し、ついで温度120℃、さらに温度150〜180℃で熱処理することにより、厚み40μm、レターデーション値の極めて小さいポリアミドイミド系樹脂フィルムを得ることができる。
【0073】このポリアミドイミド系樹脂フィルムを光等方性の基材フィルム層(11)として用い、そのフィルムの片面に、固形分5重量%の水溶性ポリエステルウレタン系アンカーコーティング剤を流延して乾燥、キュアすることにより、厚み1μm のアンカーコーティング層(ac)を形成させることができる。
【0074】続いてそのアンカーコーティング層(ac)の上から、上記実施例1の分散液(C)を流延し、70〜90℃で乾燥して、厚み8μm の防気層(14)を、同様にして、基材フィルム層(11)の他の面にも厚み1μm のアンカーコーティング層(ac)および厚み8μm の防気層(14)を形成させることができる。これにより、(14)/(ac)/(11)/(ac)/(14)の層構成を有する積層フィルム1が得られる。
【0075】ノンソルベントタイプのシリコーンアクリレート系紫外線硬化型樹脂液にポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業株式会社製の「コロネートHK」)を重量比で100:30の割合で混合し、ノンソルベントタイプの活性エネルギー線硬化型組成物が調製できる。
【0076】わずかに間隙をあけて並行に配置した1対のロールのうちの一方のロールに上記の積層フィルム1を供給し、また他方のロールに厚み100μm の二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる鋳型フィルム(S)を供給し、続いてこれら両ロールの間隙に向けて上記の活性エネルギー線硬化型組成物を吐出すると共に、両ロールを互いに喰い込む方向に回転させて、積層フィルム1と鋳型フィルム(S)との間に上記の組成物が挟持されるようにし、ついでその挟持された状態で、出力120W/cm、1灯、ランプ距離150mm、積算光量1000mJ/cm2の条件で紫外線照射を行って組成物を硬化させることにより、厚み15μm の硬化型樹脂硬化物層(13)となし、さらに温度130℃で10分間熱処理を行うことにより、積層フィルム1/硬化型樹脂硬化物層(13)/鋳型フィルム(S) の層構成を有する積層フィルム2が得られる。今度はこの積層フィルム2と別の鋳型フィルム(S) とを用いて、上記の操作を繰り返す。これにより、鋳型フィルム(S)/硬化型樹脂硬化物層(13)/積層フィルム1/硬化型樹脂硬化物層(13)/鋳型フィルム(S)の層構成を有する対称型の鋳型フィルム(S)、(S)付き光学用積層シートが得られる。
【0077】その後の適当な段階で鋳型フィルム(S)、(S)を剥離除去することにより得られるプラスチックス基板(1)の層構成は(13)/(14)#/(ac)/(11)/(ac)/(14)#/(13)であり(図1参照)、#印を付した防気層(14)#、(14)#が、層状化合物を含んでなる層(A)で構成されている。
【0078】次に、上記で得たプラスチックス基板(1)の片面に、SiOxを主体とする金属酸化物からなる厚み50オングストロームのアンダーコート層(2)(防気防湿層(15)でもある)をスパッタリング法により形成してから、厚み500オングストロームのITO層からなる透明電極(3) を形成させ、(1)/(2)/(3)の構成となす(図2参照)。ついで常法に従い、レジスト形成、露光、現像、エッチング、硬化レジストの除去を行い、パターン電極とすることができる。
【0079】このパターン電極付きの光学用積層シートからなる基板を用いて液晶セルを作製することができ、その際パターン電極と制御用ICのアウタリード(TCPやFPC)との間の一括接続を、両者間に異方性導電シート(ACF)を介在させた状態で180℃×20秒×20kg/cm2という過酷な条件でも良好に熱圧着でき得るものとなる。
【0080】このようにして得ることができる光学用プラスチックス基板は従来のガラス基板に近いガラス様の性質を有しており、液晶表示素子の液晶セルの電極基板などとして極めて有用である。
【0081】(参考例2)図3は本発明の光学用プラスチックス基板の他の一例を示した説明図である。参考例1に準じて、下記の層を用い、(13)/(15)/(12)#/(15)/(13)の層構成のプラスチックス基板(1)を製造できる。#印の芯材層(12)が、層状化合物を含んでなる層(A)で構成される。
【0082】(参考例3)図4は本発明の光学用プラスチックス基板のさらに他の一例を示した説明図である。参考例1に準じて、下記の層を用い、(15)/(13)/(12)#/(13)/(15)の層構成のプラスチックス基板(1)を製造できる。#印の芯材層(12)が、層状化合物を含んでなる層(A)で構成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学用プラスチックス基板の一例を示した説明図である。
【図2】図1の光学用プラスチックス基板の使用形態の一例を示した説明図である。
【図3】本発明の光学用プラスチックス基板の他の一例を示した説明図である。
【図4】本発明の光学用プラスチックス基板のさらに他の一例を示した説明図である。
【符号の説明】
1 プラスチックス基板
11 基材フィルム層
12 芯材層
13 硬化型樹脂硬化物層
14 有機の防気層
15 無機の防気防湿層
ac アンカーコーティング層
ad 接着剤層
2 アンダーコート層
3 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】多層構造のプラスチックス基板であって、該基板(1)が、層状化合物を含んでなる層(A)を少なくとも1層含むことを特徴とする光学用プラスチックス基板。
【請求項2】層状化合物を含んでなる層(A)が、層状化合物(a)と樹脂(b)からなり、かつ(層状化合物/樹脂)の重量比が1/100〜100/1の範囲である樹脂組成物を主成分とすることを特徴とする請求項1記載の光学用プラスチックス基板。
【請求項3】層状化合物が無機層状化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学用プラスチックス基板。
【請求項4】層状化合物が粘土鉱物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光学用プラスチックス基板。
【請求項5】請求項1〜4のいずれかに記載の光学用プラスチックス基板を用いてなる液晶表示装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【公開番号】特開2001−205743(P2001−205743A)
【公開日】平成13年7月31日(2001.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−19969(P2000−19969)
【出願日】平成12年1月28日(2000.1.28)
【出願人】(000002093)住友化学工業株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】