説明

光学用両面粘着シート、光学部材、タッチパネル、画像表示装置、及び剥離方法

【課題】リワーク性、段差吸収性及び耐発泡剥がれ性に優れた光学用両面粘着シートを提供する。
【解決手段】本発明の光学用両面粘着シートは、アクリル系ポリマー(X)を含有するアクリル系粘着剤層を有し、前記アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量(100重量%)中の、炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が50〜100重量%、かつ極性基含有モノマーの含有量が0〜15.0重量%であり、前記アクリル系粘着剤層のゲル分率が20〜74重量%であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用両面粘着シートに関する。詳細には、光学部材の貼り合わせや光学製品の製造等に好ましく用いることができる光学用両面粘着シートに関する。また、上記光学用両面粘着シートを含む光学部材、タッチパネル及び画像表示装置に関する。さらに、上記光学用両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの光学部材の剥離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で、液晶ディスプレイ(LCD)などの表示装置や、タッチパネルなどの上記表示装置と組み合わせて用いられる入力装置が広く用いられるようになってきた。これらの表示装置や入力装置の製造等においては、光学部材を貼り合わせる用途に透明な粘着シートが使用されている。例えば、タッチパネルやレンズなどと液晶表示装置(LCD等)との貼付に、透明な粘着シートが使用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−238915号公報
【特許文献2】特開2003−342542号公報
【特許文献3】特開2004−231723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記用途に使用される粘着シートについては、近年、光学部材同士を貼り合わせた後、貼り直し等が必要となった場合に、再剥離(リワーク)させたいとの要求が高まってきている。しかしながら、上記の従来の粘着シートでは、特にガラスなどの高剛性の光学部材同士を貼り合わせた場合にはリワークが困難となり、上記要求を十分に満足することができなかった。
【0005】
また、表示装置や入力装置の用途拡大に伴い、上記粘着シートには、多様な環境下において十分な粘着シート特性を発揮することが要求されるようになってきており、例えば、高温環境下や高温高湿環境下において発泡や剥がれを生じない性質(耐発泡剥がれ性)が求められている。
【0006】
さらに、光学部材の中には、印刷段差等の段差を有する部材を含むものが増えてきている。例えば、液晶表示装置上に枠状の印刷が施されたレンズ部材を両面粘着シートを介して貼り合わせる場合などがある。このような用途においては、粘着シートには、印刷段差等の段差を埋める性能、即ち、優れた段差吸収性(「段差追従性」とも称する)が要求される。
【0007】
従って、本発明の目的は、リワーク性、段差吸収性及び耐発泡剥がれ性に優れた光学用両面粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討した結果、特定のモノマー成分から形成されたアクリル系ポリマーを含有する特定のゲル分率のアクリル系粘着剤層を設けることで、リワーク性、段差吸収性及び耐発泡剥がれ性に優れた光学用両面粘着シートが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、アクリル系ポリマー(X)を含有するアクリル系粘着剤層を有し、上記アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量(100重量%)中の、炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が50〜100重量%、かつ極性基含有モノマーの含有量が0〜15.0重量%であり、上記アクリル系粘着剤層のゲル分率が20〜74重量%であることを特徴とする光学用両面粘着シートを提供する。
【0010】
上記極性基含有モノマーは、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー及び窒素原子含有モノマーからなる群より選ばれたモノマーであることが好ましい。
【0011】
上記アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量(100重量%)中の、脂環式モノマーの含有量は0.5重量%以上、10重量%未満であることが好ましい。
【0012】
上記アクリル系ポリマー(X)は、活性エネルギー線重合により形成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0013】
上記光学用両面粘着シートは、上記アクリル系粘着剤層のみからなる、基材を有しない両面粘着シートであることが好ましい。
【0014】
上記光学用両面粘着シートは、全光線透過率が87%以上、ヘーズが3.0%以下であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、下記再剥離試験において、被着体Aと被着体Bとを剥離することが可能であり、剥離後に、被着体Aと被着体Bのいずれにも粘着剤が残存することを特徴とする光学用両面粘着シートを提供する。上記再剥離試験は、光学用両面粘着シート(サイズ:長さ100mm×幅50mm)の一方の粘着面を下記被着体Aの偏光フィルム表面に貼り付け、他方の粘着面を下記被着体Bの表面に貼り付けて、スライドガラス/偏光フィルム/光学用両面粘着シート/スライドガラスの構成を有する試験片(サイズ:長さ100mm×幅50mm)を作製し、該試験片を、23℃、50%RHの環境下に1時間放置した後、上記被着体Aを固定し上記被着体Bを上記光学用両面粘着シートの厚さ方向と直交する平面内にて回転させることにより、被着体Aと被着体Bを剥離させる試験である。上記被着体Aは、スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm、サイズ:長さ100mm×幅50mm)と偏光フィルム(日東電工(株)製、商品名「TEG1465DUHC」、長さ100mm×幅50mm)の積層体(サイズ:長さ100mm×幅50mm)である。また、上記被着体Bは、スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm、サイズ:長さ100mm×幅50mm)である。
【0016】
また、本発明は、上記光学用両面粘着シートを含む光学部材を提供する。
【0017】
また、本発明は、上記光学用両面粘着シートを含むタッチパネルを提供する。
【0018】
また、本発明は、上記光学用両面粘着シートを含む画像表示装置を提供する。
【0019】
また、本発明は、上記光学用両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの光学部材を剥離することを特徴とする剥離方法を提供する。
【0020】
上記剥離方法は、上記2つの光学部材を相対的に平行移動させることで、上記光学用両面粘着シートに破断に至るせん断応力を生じせしめる剥離方法であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の光学用両面粘着シートは、上記構成上の特徴を有することにより、本発明の光学用両面粘着シートを介して貼り合わせた被着体(光学部材等)同士を剥離する際には、該両面粘着シートのアクリル系粘着剤層の凝集破壊が生じ易く、それにより被着体同士を容易に剥離することができ、リワーク性(再剥離性)に優れる。特に、高剛性の被着体同士を貼り合わせた場合にもリワーク性に優れる。なおかつ、段差吸収性及び耐発泡剥がれ性にも優れる。このため、本発明の光学用両面粘着シートは、光学部材の貼り合わせや、光学部材、光学製品の製造等に用いられる光学用両面粘着シートとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、再剥離試験における、試験片の固定状態及び試験片とステンレス板の貼り付け状態を模式的に示した説明図(平面図)である。
【図2】図2は、再剥離試験において、ステンレス板を移動させている状態を模式的に示した説明図(平面図)である。
【図3】図3は、段差吸収性の評価に用いた、印刷段差付きガラス板を示す概略図(平面図)である。
【図4】図4は、段差吸収性の評価に用いた、印刷段差付きガラス板を示す概略図(図3におけるA−A’線切断部端面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0024】
本発明の光学用両面粘着シートは、下記アクリル系ポリマー(X)を含有する、ゲル分率が20〜74重量%であるアクリル系粘着剤層を少なくとも1層有する両面粘着シートである。なお、本明細書では、上記「アクリル系ポリマー(X)を含有する、ゲル分率が20〜74重量%であるアクリル系粘着剤層」を「本発明のアクリル系粘着剤層」又は「本発明の粘着剤層」と称する場合がある。また、本発明の光学用両面粘着シートを、単に「本発明の両面粘着シート」又は「本発明の粘着シート」と称する場合がある。
【0025】
本発明の両面粘着シートは、該シートの両面が粘着面(粘着剤層表面)となっている両面粘着シートである。これにより、特に2つの光学部材同士を貼り合わせる用途に好ましく用いることができる。なお、「両面粘着シート」には、「両面粘着テープ」の意味も含むものとする。即ち、本発明の両面粘着シートは、テープ状の形態を有する両面粘着テープであってもよい。
【0026】
本発明の両面粘着シートは、基材(基材層)を有しない両面粘着シート、いわゆる「基材レスタイプ」の両面粘着シート(「基材レス両面粘着シート」と称する場合がある)であってもよいし、基材を有する両面粘着シートであってもよい。上記基材レス両面粘着シートとしては、例えば、本発明のアクリル系粘着剤層のみからなる両面粘着シートや、本発明のアクリル系粘着剤層と本発明のアクリル系粘着剤層以外の粘着剤層(「他の粘着剤層」と称する場合がある)からなる両面粘着シート等が挙げられる。上記基材を有する両面粘着シートは、基材の少なくとも片面側に本発明のアクリル系粘着剤層を有する両面粘着シートである。上記基材を有する両面粘着シートとしては、例えば、基材の両面側に本発明のアクリル系粘着剤層を有する両面粘着シートや、基材の一方の片面側に本発明のアクリル系粘着剤層を有し、他方の片面側に他の粘着剤層を有する両面粘着シート等が挙げられる。上記の中でも、透明性などの光学物性向上の観点から、基材レス両面粘着シートが好ましく、より好ましくは、本発明のアクリル系粘着剤層のみからなる、基材を有しない両面粘着シート(基材レス両面粘着シート)である。なお、上記の「基材(基材層)」には、両面粘着シートの使用(貼付)時に剥離されるセパレータ(剥離ライナー)は含まない。
【0027】
[本発明のアクリル系粘着剤層]
本発明のアクリル系粘着剤層は、アクリル系ポリマー(X)を少なくとも含有する。特に限定されないが、アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有することが好ましい。なお、本明細書において、「アクリル系ポリマー(X)を主成分として含有する」とは、本発明のアクリル系粘着剤層(100重量%)中の、アクリル系ポリマー(X)の含有量が50重量%以上であることを意味する。本発明のアクリル系粘着剤層は、アクリル系ポリマー(X)の他に、シランカップリング剤を含有することが好ましく、必要に応じて、その他の添加剤を含有していてもよい。上記の各成分(アクリル系ポリマー(X)、シランカップリング剤、その他の添加剤)は、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0028】
本発明のアクリル系粘着剤層は、アクリル系粘着剤組成物より形成された粘着剤層である。上記アクリル系粘着剤組成物は、粘着剤層の形成方法によっても異なり、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマー(X)を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー(単量体)成分の混合物(「モノマー混合物」と称する場合がある)又はその部分重合物を必須成分とするアクリル系粘着剤組成物などが挙げられる。特に限定されないが、前者としては、例えば、いわゆる溶剤型の粘着剤組成物などが挙げられ、後者としては、例えば、いわゆる活性エネルギー線硬化型の粘着剤組成物などが挙げられる。上記アクリル系粘着剤組成物は、必須成分(アクリル系ポリマー(X)、あるいは、モノマー混合物又はその部分重合物)の他に、シランカップリング剤を含有することが好ましく、必要に応じて、その他の添加剤を含有していてもよい。
【0029】
上記「アクリル系粘着剤組成物」には「アクリル系粘着剤層を形成するための組成物」という意味も含むものとする。また、上記「モノマー混合物」とは、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分のみからなる混合物を意味する。また、上記「部分重合物」とは、上記モノマー混合物の構成成分のうち1又は2以上の成分が部分的に重合している組成物を意味する。
【0030】
上記アクリル系ポリマー(X)は、炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルを必須のモノマー成分として形成(構成)されたアクリル系ポリマーである。上記アクリル系ポリマー(X)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。なお、本明細書においては、上記「炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル」を、「(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル」と称する場合がある。また、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び/又は「メタクリル」(「アクリル」及び「メタクリル」のうち一方又は両方)を意味し、以下も同様である。
【0031】
上記アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分としては、上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステルの他に、任意のモノマー成分(共重合モノマー成分)として、極性基含有モノマー、脂環式モノマー、多官能モノマーが用いられていてもよい。さらに、その他のモノマーが用いられていてもよい。中でも、アクリル系ポリマー(X)は、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル及び極性基含有モノマーを必須のモノマー成分として形成されたアクリル系ポリマーであることが好ましく、より好ましくは、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル、極性基含有モノマー及び脂環式モノマーを必須のモノマー成分として形成されたアクリル系ポリマーであり、さらに好ましくは、(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル、極性基含有モノマー、脂環式モノマー及び多官能モノマーを必須のモノマー成分として形成されたアクリル系ポリマーである。
【0032】
上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステルとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシルが挙げられる。中でも、炭素数が4〜12である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸C4-12アルキルエステル)が好ましく、より好ましくは炭素数が4〜10である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸C4-10アルキルエステル)、さらに好ましくは炭素数が4〜10である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル(アクリル酸C4-10アルキルエステル)、特に好ましくはアクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)、アクリル酸n−ブチル(BA)である。上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステルは、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0033】
アクリル系ポリマー(X)を形成する全モノマー成分中の、上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステルの含有量は、本発明のアクリル系粘着剤層の接着性の観点から、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、50〜100重量%(50重量%以上、100重量%以下)であり、好ましくは55〜99.9重量%、より好ましくは60〜99.5重量%、さらに好ましくは65〜99重量%、さらに好ましくは65〜98.5重量%、最も好ましくは70〜95重量%である。
【0034】
上記極性基含有モノマーは、分子内に極性基を有するモノマー(特に、エチレン性不飽和モノマー)であり、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー又はその無水物(例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物基含有モノマー等);(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル、ビニルアルコール、アリルアルコールなどのヒドロキシル基(水酸基)含有モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有モノマー;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有モノマー;アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどのシアノ基含有モノマー;N−ビニル−2−ピロリドン、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾールなどの複素環含有ビニル系モノマー;ビニルスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェートなどのリン酸基含有モノマー;シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミドなどのイミド基含有モノマー;2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有モノマーなどが挙げられる。上記極性基含有モノマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0035】
上記極性基含有モノマーは、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー及び窒素原子含有モノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。なお、上記カルボキシル基含有モノマーには、カルボキシル基含有モノマーの酸無水物も含まれるものとする。また、上記窒素原子含有モノマーは、分子内に少なくとも1個の窒素原子を有するモノマーである。上記窒素原子含有モノマーとしては、例えば、上記アミド基含有モノマーや上記複素環含有ビニル系モノマーのうち窒素原子を含有するものなどが挙げられ、中でも、N−ビニル−2−ピロリドン(NVP)が好ましい。上記極性基含有モノマーとしては、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマーが特に好ましく、最も好ましくはアクリル酸(AA)、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)である。上記カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、窒素原子含有モノマーは、それぞれ、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0036】
アクリル系ポリマー(X)を形成する全モノマー成分中の、上記極性基含有モノマーの含有量は、リワーク性の観点から、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0〜15.0重量%であり、0〜11.0重量%が好ましく、0〜5.0重量%がより好ましい。また、0重量%以上、2.0重量%未満が更に好ましく、より好ましくは0〜1.8重量%(0重量%以上、1.8重量%以下)、より好ましくは0重量%を超え1.0重量%未満、さらに好ましくは0.1〜0.8重量%、最も好ましくは0.3〜0.8重量%である。上記含有量を2.0重量%未満とすることにより、粘着力が高くなりすぎることを抑制し、優れたリワーク性を得ることができる。アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分として極性基含有モノマーは用いられなくてもよいが、極性基含有モノマーをある程度用いることにより、光学部材との粘着力が向上するため好ましい。なお、アクリル系ポリマー(X)を形成する全モノマー成分中の、カルボキシル基含有モノマーの含有量、ヒドロキシル基含有モノマーの含有量及び窒素原子含有モノマーの含有量の合計量(合計含有量)が上記の範囲を満たすことがより好ましい。
また、耐加湿白濁性の観点からは、上記極性基含有モノマーの含有量は、1重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましい。
【0037】
上記脂環式モノマーは、脂環式化合物であるモノマーであり、即ち、分子内に非芳香族性環を有するモノマーである。上記非芳香族性環としては、非芳香族性脂環式環(シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環などのシクロアルカン環;シクロヘキセン環などのシクロアルケン環など)、非芳香族性橋かけ環(例えば、ピナン、ピネン、ボルナン、ノルボルナン、ノルボルネンなどにおける二環式炭化水素環;アダマンタンなどにおける三環式炭化水素環の他、四環式炭化水素環などの橋かけ式炭化水素環など)などが挙げられる。
【0038】
上記脂環式モノマーとしては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘプチル、(メタ)アクリル酸シクロオクチルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの二環式炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステル;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロペンタニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、2−エチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレートなどの三環以上の炭化水素環を有する(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。上記脂環式モノマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0039】
上記脂環式モノマーとしては、アクリル酸シクロヘキシル(CHA)(ホモポリマーのTg:15℃)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)(ホモポリマーのTg:66℃)、アクリル酸イソボルニル(IBXA)(ホモポリマーのTg:97℃)、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)(ホモポリマーのTg:173℃)が好ましい。
【0040】
上記脂環式モノマーの、ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されないが、アクリル系ポリマー(X)のガラス転移温度を高くして、本発明の両面粘着シートの加工性を向上させる観点から、60〜190℃が好ましく、より好ましくは60〜150℃、さらに好ましくは60〜120℃である。なお、上記「ホモポリマーを形成した際のガラス転移温度(Tg)」を、「ホモポリマーのTg」と称する場合がある。
【0041】
上記のアクリル酸シクロヘキシル(CHA)、メタクリル酸シクロヘキシル(CHMA)、アクリル酸イソボルニル(IBXA)、メタクリル酸イソボルニル(IBXMA)以外のモノマーのホモポリマーのTgについては、「Polymer Handbook」(第3版、John Wiley & Sons,Inc、1989年)に記載の数値を採用できる。さらに、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル以外のモノマーであって、且つ上記文献に記載されていないモノマーのホモポリマーのTgは、例えば、以下の測定方法により得られる値(特開2011−099078号公報参照)を採用できる。
(測定方法)
温度計、撹拌機、窒素導入管及び還流冷却管を備えた反応器に、モノマー100重量部、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.2重量部及び重合溶媒として酢酸エチル200重量部を投入し、窒素ガスを導入しながら1時間撹拌する。このようにして重合系内の酸素を除去した後、63℃に昇温し10時間反応させる。次いで、室温まで冷却し、固形分濃度33重量%のホモポリマー溶液を得る。次いで、このホモポリマー溶液をセパレータ上に流延塗布し、乾燥して厚さ約2mmの試験サンプル(シート状のホモポリマー)を作製する。そして、この試験サンプルを直径7.9mmの円盤状に打ち抜き、パラレルプレートで挟み込み、粘弾性試験機(ARES、レオメトリックス社製)を用いて周波数1Hzのせん断歪みを与えながら、温度領域−70〜150℃、5℃/分の昇温速度でせん断モードにより粘弾性を測定し、tanδのピークトップ温度をホモポリマーのTgとする。
【0042】
アクリル系ポリマー(X)を形成する全モノマー成分中の、上記脂環式モノマーの含有量は、本発明の両面粘着シートの加工性の観点から、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.5重量%以上、10重量%未満が好ましく、より好ましくは1〜8重量%である。脂環式モノマーを用いることにより、アクリル系ポリマー(X)のガラス転移温度を高くして、本発明のアクリル系粘着剤層の強度を向上させ、本発明の両面粘着シートの加工性を向上させることができるため好ましい。上記含有量を0.5重量%以上とすることにより、特に加工性向上の効果が得られやすいため好ましい。また、上記含有量を10重量%未満とすることにより、本発明のアクリル系粘着剤層が硬くなりすぎることを抑制し、リワーク性を向上させることができるため好ましい。
【0043】
上記多官能モノマー(多官能性モノマー)としては、例えば、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなどが挙げられる。中でも、段差吸収性の観点から、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)が好ましい。上記多官能モノマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0044】
アクリル系ポリマー(X)を形成する全モノマー成分中の、上記多官能モノマーの含有量は、特に限定されないが、本発明のアクリル系粘着剤層のゲル分率を好ましい範囲に制御する観点から、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量(100重量%)に対して、0.001〜0.3重量%が好ましく、より好ましくは0.005〜0.2重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%である。上記含有量を0.3重量%以下とすることにより、本発明のアクリル系粘着剤層のゲル分率が高くなりすぎることを抑制し、リワーク性を向上させやすくなるため好ましい。また、上記含有量を0.001重量%以上とすることにより、本発明のアクリル系粘着剤層のゲル分率が低くなりすぎることを抑制し、耐発泡剥がれ性、加工性を向上させやすくなるため好ましい。なお、架橋剤を用いる場合には上記多官能モノマーを用いなくてもよいが、架橋剤を用いない場合には、特に、多官能モノマーを上記の含有量の範囲で使用することが好ましい。
【0045】
上記アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分としては、上記(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル、極性基含有モノマー、脂環式モノマー、多官能モノマー以外のモノマー(その他のモノマー)が用いられていてもよい。その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸ノナデシル、(メタ)アクリル酸エイコシル等の炭素数が15〜20である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル((メタ)アクリル酸C15-20アルキルエステル);フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル系モノマーなどの前述の(メタ)アクリル酸C1-14アルキルエステル、極性基含有モノマー、脂環式モノマー及び多官能モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニル化合物;エチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどのオレフィン類又はジエン類;ビニルアルキルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニルなどが挙げられる。上記その他のモノマーは単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0046】
上記アクリル系ポリマー(X)は、上記モノマー成分を公知慣用の重合方法により重合して調製することができる。アクリル系ポリマー(X)の重合方法としては、例えば、溶液重合方法、乳化重合方法、塊状重合方法や活性エネルギー線照射による重合方法(活性エネルギー線重合方法)などが挙げられるが、透明性、耐水性、コストなどの点で、溶液重合方法、活性エネルギー線重合方法が好ましい。さらに、比較的厚みの厚いアクリル系粘着剤層を形成しやすい観点から、活性エネルギー線重合方法が特に好ましい。即ち、上記アクリル系ポリマー(X)は、活性エネルギー線重合により形成されたアクリル系ポリマーであることが好ましい。
【0047】
上記活性エネルギー線重合(光重合)に際して照射される活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、中性子線、電子線などの電離性放射線や、紫外線などが挙げられ、特に紫外線が好ましい。また、活性エネルギー線の照射エネルギー、照射時間、照射方法などは特に限定されず、光重合開始剤を活性化させて、モノマー成分の反応を生じさせることができればよい。
【0048】
上記の溶液重合に際しては、各種の一般的な溶剤を用いることができる。このような溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル類;トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類などの有機溶剤が挙げられる。上記溶剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0049】
上記アクリル系ポリマー(X)の調製に際しては、重合反応の種類に応じて、光重合開始剤(光開始剤)や熱重合開始剤などの重合開始剤を用いることができる。上記重合開始剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0050】
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α−ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤が挙げられる。光重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜0.5重量部である。
【0051】
上記ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテルなどが挙げられる。上記アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノンなどが挙げられる。上記α−ケトール系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−[4−(2−ヒドロキシエチル)フェニル]−2−メチルプロパン−1−オンなどが挙げられる。上記芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライドなどが挙げられる。上記光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシムなどが挙げられる。上記ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインなどが挙げられる。上記ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルなどが挙げられる。上記ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。上記ケタール系光重合開始剤としては、例えば、ベンジルジメチルケタールなどが挙げられる。上記チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントンなどが挙げられる。
【0052】
上記アクリル系ポリマー(X)を溶液重合により重合させる際に用いられる重合開始剤としては、例えばアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルマレエートなど)、レドックス系重合開始剤などが挙げられる。中でも、特開2002−69411号公報に開示されたアゾ系重合開始剤が好ましい。上記アゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以下、AIBNと称する場合がある)、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル(以下、AMBNと称する場合がある)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリアン酸などが挙げられる。上記アゾ系重合開始剤の使用量は、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.05〜0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。
【0053】
本発明のアクリル系粘着剤層中のアクリル系ポリマー(X)の含有量は、粘着特性等の観点から、本発明のアクリル系粘着剤層100重量%に対して、50重量%以上(50〜100重量%)が好ましく、より好ましくは65〜100重量%、さらに好ましくは70〜99.9重量%である。
【0054】
本発明のアクリル系粘着剤層は、粘着力(特にガラスへの粘着力)向上の観点から、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤としては、特に限定されないが、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。中でも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。上記シランカップリング剤としては、例えば、商品名「KBM−403」(信越化学工業株式会社製)などの市販品が用いられてもよい。上記シランカップリング剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0055】
本発明のアクリル系粘着剤層中の上記シランカップリング剤の含有量は、特に限定されないが、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.01〜2重量部が好ましく、より好ましくは0.03〜1重量部、さらに好ましくは0.03〜0.5重量部である。シランカップリング剤を含有することにより、経時で粘着力(特にガラスとの粘着力)が向上する。このため、例えば、本発明の両面粘着シートを介して光学部材を貼り合わせた直後(即ち、製品の製造直後)には比較的粘着力が小さくリワークしやすく、貼り合わせた製品が完成した後、長時間が経過した後には粘着力が高くなり、接着信頼性(十分な粘着力、耐発泡剥がれ性を有する特性)が向上する。このため、リワーク性と接着信頼性を両立できるため好ましい。上記含有量が0.01重量部以上であることにより、上記の接着信頼性の効果が得られやすくなるため好ましい。また、2重量部以下であることによりリワーク性が向上するため好ましい。なお、特に限定されないが、上記シランカップリング剤を用いない場合には、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分として、極性基含有モノマーを用いることによって、粘着力がより向上する。
【0056】
本発明のアクリル系粘着剤層は、必要に応じて、架橋剤、架橋促進剤、粘着付与樹脂(ロジン誘導体、ポリテルペン樹脂、石油樹脂、油溶性フェノールなど)、老化防止剤、充填剤、着色剤(顔料や染料など)、紫外線吸収剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、可塑剤、軟化剤、界面活性剤、帯電防止剤などの公知の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で含有してもよい。
【0057】
上記架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、過酸化物系架橋剤、尿素系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、アミン系架橋剤などが挙げられる。中でも、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤が好ましい。上記架橋剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0058】
上記イソシアネート系架橋剤(多官能イソシアネート化合物)としては、例えば、1,2−エチレンジイソシアネート、1,4−ブチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートなどの低級脂肪族ポリイソシアネート類;シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート類;2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどの芳香族ポリイソシアネート類などが挙げられ、その他、トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートL」]、トリメチロールプロパン/ヘキサメチレンジイソシアネート付加物[日本ポリウレタン工業(株)製、商品名「コロネートHL」]なども用いられる。
【0059】
上記エポキシ系架橋剤(多官能エポキシ化合物)としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、ジグリシジルアニリン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、トリグリシジル−トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、レゾルシンジグリシジルエーテル、ビスフェノール−S−ジグリシジルエーテルの他、分子内にエポキシ基を2つ以上有するエポキシ系樹脂などが挙げられる。市販品としては、例えば、三菱ガス化学(株)製、商品名「テトラッドC」を用いることができる。
【0060】
上記架橋剤を使用する場合には、本発明のアクリル系粘着剤層中の上記架橋剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、本発明のアクリル系粘着剤層のゲル分率を好ましい範囲内に制御する観点から、アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量100重量部に対して、0.01〜1重量部が好ましく、より好ましくは0.01〜0.8重量部である。
【0061】
本発明のアクリル系粘着剤層のゲル分率は、20〜74重量%であり、好ましくは40〜74重量%、より好ましくは50〜74重量%、さらに好ましくは50〜73.5重量%である。上記ゲル分率を74重量%以下とすることにより、本発明のアクリル系粘着剤層の凝集力がある程度小さくなり、本発明のアクリル系粘着剤層が軟らかくなるため、被着体の剥離時に本発明のアクリル系粘着剤層がせん断応力による凝集破壊を起こしやすくなる。このため、被着体同士を剥離しやすくなり、リワーク性が向上する。また、段差部分に本発明のアクリル系粘着剤層が追従しやすくなり、段差吸収性が向上する。一方、上記ゲル分率を20重量%以上とすることにより、本発明のアクリル系粘着剤層が軟らかくなりすぎることを防ぎ、加工性および耐発泡剥がれ性を向上させることができる。上記ゲル分率が20重量%未満では、アクリル系粘着剤層が軟らかくなりすぎるため、両面粘着シートの加工性が低下する。例えば、両面粘着シートの切断加工時に粘着剤が刃に付着したり、被着体に貼付した場合に粘着剤層が変形して被着体の端部からはみ出す、いわゆる「糊はみ出し」が生じたりする。また、高温環境下や高温高湿環境下において浮きが生じやすく、耐発泡剥がれ性が低下する。上記ゲル分率は、多官能モノマー及び/又は架橋剤の種類や含有量(使用量)などにより制御することができる。
【0062】
上記ゲル分率(溶剤不溶分の割合)は、酢酸エチル不溶分として求めることができる。具体的には、本発明のアクリル系粘着剤層を、酢酸エチル中に室温(23℃)で7日間浸漬した後の不溶分の浸漬前の試料(本発明のアクリル系粘着剤層)に対する重量分率(単位:重量%)として求められる。より具体的には、上記ゲル分率とは、以下の「ゲル分率の測定方法」により算出される値である。
(ゲル分率の測定方法)
本発明の両面粘着シートから本発明のアクリル系粘着剤層:約0.1gを採取し、平均孔径0.2μmの多孔質テトラフルオロエチレンシート(商品名「NTF1122」、日東電工株式会社製)に包んだ後、凧糸で縛り、その際の重量を測定し、該重量を浸漬前重量とする。なお、該浸漬前重量は、本発明のアクリル系粘着剤層(上記で採取した本発明のアクリル系粘着剤層)と、テトラフルオロエチレンシートと、凧糸との総重量である。また、テトラフルオロエチレンシートと凧糸の合計重量も測定しておき、該重量を包袋重量とする。
次に、本発明のアクリル系粘着剤層をテトラフルオロエチレンシートで包み、凧糸で縛ったもの(「サンプル」と称する)を、酢酸エチルで満たした50ml容器に入れ、23℃にて1週間(7日間)静置する。その後、容器からサンプル(酢酸エチル処理後)を取り出して、アルミニウム製カップに移し、130℃で2時間、乾燥機中で乾燥して酢酸エチルを除去した後、重量を測定し、該重量を浸漬後重量とする。
そして、下記の式からゲル分率を算出する。
ゲル分率(重量%)=(A−B)/(C−B)×100
(上記式において、Aは浸漬後重量であり、Bは包袋重量であり、Cは浸漬前重量である。)
【0063】
本発明のアクリル系粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、10μm〜1mmが好ましく、より好ましくは100〜500μm、さらに好ましくは150〜350μmである。上記厚さが10μm以上であることにより、剥離時に本発明のアクリル系粘着剤層がせん断応力による凝集破壊を起こしやすくなる。このため、被着体同士を剥離しやすくなり、リワーク性が向上する。また、段差部分に本発明のアクリル系粘着剤層が追従しやすくなり、段差吸収性が向上する。
【0064】
本発明のアクリル系粘着剤層の形成方法は、公知乃至慣用の粘着剤層の形成方法を用いることができる。本発明のアクリル系粘着剤層の形成方法は、アクリル系ポリマー(X)の重合方法などによっても異なり、特に限定されないが、例えば、以下の(1)〜(3)などの方法が挙げられる。(1)アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分の混合物(モノマー混合物)又はその部分重合物、光重合開始剤、並びに、必要に応じてシランカップリング剤、各種添加剤を含むアクリル系粘着剤組成物を、基材又はセパレータ上に塗布(塗工)し、活性エネルギー線(特に、紫外線が好ましい)を照射して(即ち、活性エネルギー線硬化して)、本発明のアクリル系粘着剤層を形成する。(2)アクリル系ポリマー(X)、溶剤、並びに、必要に応じてシランカップリング剤、架橋剤、各種添加剤を含むアクリル系粘着剤組成物(溶液)を、基材又はセパレータ上に塗布(塗工)し、乾燥及び/又は硬化して本発明のアクリル系粘着剤層を形成する。(3)上記(1)で形成した本発明のアクリル系粘着剤層をさらに乾燥させる。
【0065】
なお、上記の本発明のアクリル系粘着剤層の形成方法における塗布(塗工)には、公知のコーティング法を用いることが可能であり、慣用のコーター、例えば、グラビヤロールコーター、リバースロールコーター、キスロールコーター、ディップロールコーター、バーコーター、ナイフコーター、スプレーコーター、コンマコーター、ダイレクトコーターなどを用いることができる。
【0066】
上記アクリル系粘着剤組成物中の、光重合開始剤、シランカップリング剤や架橋剤の含有量は、前述の本発明のアクリル系粘着剤層中の各成分の含有量(アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量100重量部に対する含有量)として記載した範囲とすることが好ましい。
【0067】
上記の、本発明のアクリル系粘着剤層の形成方法における溶剤は、各種の一般的な溶剤を用いることができる。上記溶剤としては、特に限定されず、前述のアクリル系ポリマー(X)の溶液重合に際して用いられる溶剤として例示されたものなどを用いることができる。上記溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0068】
[本発明の光学用両面粘着シート]
本発明の両面粘着シートは、本発明のアクリル系粘着剤層を少なくとも1層有する。本発明の両面粘着シートは、1層の本発明のアクリル系粘着剤層を有していてもよいし、2層以上の本発明のアクリル系粘着剤層を有していてもよい。本発明の両面粘着シートは、本発明のアクリル系粘着剤層以外にも、基材、本発明のアクリル系粘着剤層以外の粘着剤層(他の粘着剤層)、その他の層(例えば、中間層、下塗り層など)などを、本発明の効果を損なわない範囲で有していてもよい。
【0069】
本発明の両面粘着シートの層構成としては、特に限定されないが、例えば、本発明のアクリル系粘着剤層;本発明のアクリル系粘着剤層/他の粘着剤層;本発明のアクリル系粘着剤層/基材/本発明のアクリル系粘着剤層;本発明のアクリル系粘着剤層/基材/他の粘着剤層などが挙げられる。中でも、本発明のアクリル系粘着剤層のみの層構成、又は、本発明のアクリル系粘着剤層/基材/本発明のアクリル系粘着剤層の層構成(積層構成)が好ましく、より好ましくは、本発明のアクリル系粘着剤層のみの層構成(即ち、本発明のアクリル系粘着剤層のみからなる、基材を有しない両面粘着シート)である。
【0070】
本発明の両面粘着シートが基材を有する両面粘着シートである場合には、特に限定されないが、リワーク性の観点から、基材の両面側に、それぞれ、本発明のアクリル系粘着剤層を有する両面粘着シートであることが好ましい。
【0071】
上記基材としては、特に限定されないが、プラスチックフィルム、反射防止(AR)フィルム、偏光板、位相差板などの各種光学フィルムが挙げられる。上記プラスチックフィルムなどの素材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル系樹脂、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリサルフォン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、商品名「アートン(環状オレフィン系ポリマー;JSR製)」、商品名「ゼオノア(環状オレフィン系ポリマー;日本ゼオン製)」等の環状オレフィン系ポリマーなどのプラスチック材料が挙げられる。上記プラスチック材料は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。また、上記の「基材」とは、本発明の両面粘着シートを被着体(光学部材等)に使用(貼付)する際には、粘着剤層とともに被着体に貼付される部分である。本発明の両面粘着シートの使用時(貼付時)に剥離されるセパレータ(剥離ライナー)は「基材」には含まない。
【0072】
上記の中でも、基材としては、透明基材が好ましい。上記「透明基材」とは、例えば、可視光波長領域における全光線透過率(JIS K 7361−1に準じる)が85%以上である基材が好ましく、さらに好ましくは88%以上である基材をいう。また、基材のヘーズ(JIS K 7136に準じる)は、例えば、1.5%以下が好ましく、より好ましくは1.0%以下である。上記透明基材としては、PETフィルムや、商品名「アートン」、商品名「ゼオノア」などの無配向フィルムなどが挙げられる。
【0073】
上記基材の厚さは、特に限定されないが、例えば、12〜75μmが好ましい。なお、上記基材は単層および複層のいずれの形態を有していてもよい。また、上記基材の表面には、例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理等の物理的処理、下塗り処理等の化学的処理などの公知慣用の表面処理が適宜施されていてもよい。
【0074】
上記他の粘着剤層(本発明のアクリル系粘着剤層以外の粘着剤層)としては、特に限定されないが、例えば、ウレタン系粘着剤、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリアミド系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤、フッ素系粘着剤などの公知の粘着剤から形成された公知慣用の粘着剤層が挙げられる。上記粘着剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0075】
本発明の両面粘着シートの粘着剤層表面(粘着面)は、使用時まではセパレータ(剥離ライナー)により保護されていてもよい。なお、本発明の両面粘着シートの、各粘着面は、2枚のセパレータによりそれぞれ保護されていてもよいし、両面が剥離面となっているセパレータ1枚により、ロール状に巻回される形態で保護されていてもよい。セパレータは粘着剤層の保護材として用いられており、本発明の両面粘着シートを被着体に貼付する際に剥がされる。また、セパレータは粘着剤層の支持体の役割も担う。なお、セパレータは必ずしも設けられていなくてもよい。
【0076】
上記セパレータとしては、慣用の剥離紙などを使用でき、特に限定されないが、例えば、剥離剤層を有する基材、フッ素ポリマーからなる低接着性基材や無極性ポリマーからなる低接着性基材などが挙げられる。上記剥離剤層を有する基材としては、例えば、シリコーン系剥離剤、長鎖アルキル系剥離剤、フッ素系剥離剤、硫化モリブデン系剥離剤等の剥離剤により表面処理されたプラスチックフィルムや紙等が挙げられる。上記フッ素系ポリマーとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、クロロフルオロエチレン−フッ化ビニリデン共重合体等が挙げられる。また、上記無極性ポリマーとしては、例えば、オレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)等が挙げられる。なお、セパレータは公知乃至慣用の方法により形成することができる。また、セパレータの厚さ等も特に限定されない。
【0077】
本発明の両面粘着シートの厚さ(総厚さ)は、特に限定されないが、10μm〜1mmが好ましく、より好ましくは100〜500μm、さらに好ましくは150〜350μmである。上記厚さが10μm以上であることにより、本発明のアクリル系粘着剤層が比較的厚くなり被着体の剥離時にせん断応力による凝集破壊を起こしやすくなる。このため、リワーク性が向上する。また、段差部分に本発明のアクリル系粘着剤層が追従しやすくなり、段差吸収性が向上する。なお、本発明の両面粘着シートの厚さは、本発明の両面粘着シートの一方の粘着面から他方の粘着面までの厚さである。上記本発明の両面粘着シートの厚さには、セパレータの厚さは含まれない。
【0078】
本発明の両面粘着シートは高い透明性を有していることが好ましい。本発明の両面粘着シートのヘーズ(JIS K 7136に準じる)は、例えば、3.0%以下が好ましく、より好ましくは、1.5%以下である。上記ヘーズが3.0%以下であることにより、貼付した光学製品や光学部材の透明性や外観が良好となる。また、本発明の両面粘着シートの全光線透過率(可視光波長領域における全光線透過率)(JIS K 7361−1に準じる)は、特に限定されないが、87%以上が好ましく、より好ましくは、89%以上である。上記全光線透過率が87%以上であることにより、貼付した光学製品や光学部材の透明性や外観が良好となる。上記ヘーズ及び上記全光線透過率は、例えば、スライドガラス(例えば、全光線透過率92%、ヘーズ0.2%のもの)に本発明の両面粘着シートを貼り合わせ、ヘーズメータ((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM−150」)を用いて測定することができる。なお、本発明のアクリル系粘着剤層のヘーズ及び全光線透過率も、それぞれ、上記の範囲を満たすことが好ましい。
【0079】
本発明の両面粘着シートは優れたリワーク性を有する。本発明の両面粘着シートは、特に限定されないが、再剥離が可能な両面粘着シート(再剥離型両面粘着シート)として好ましく用いることができる。本発明におけるリワーク性は、特に限定されないが、例えば、下記再剥離試験により評価することができる。下記再剥離試験において、被着体Aと被着体Bとを剥離すること(特に、被着体A及び被着体Bを破損することなく剥離すること)が可能であることが好ましい。なおかつ、剥離後に、被着体Aと被着体Bのいずれにも粘着剤が残存するように剥離することが好ましい。これは、両面粘着シートを介して貼り合わせた積層体(貼り合わせ体)にせん断応力を加えることにより、両面粘着シートの粘着剤層が凝集破壊を起こして、被着体を破損することなく容易に剥離できることを表す。
【0080】
(再剥離試験)
両面粘着シート(サイズ:長さ100mm×幅50mm)の一方の粘着面を下記被着体Aの偏光フィルム表面に貼り付け、他方の粘着面を下記被着体Bの表面に貼り付けて、スライドガラス/偏光フィルム/両面粘着シート/スライドガラスの構成を有する試験片(サイズ:長さ100mm×幅50mm)を作製し、該試験片を23℃、50%RHの環境下に1時間放置した後、以下の試験を行う。
上記試験片における被着体Aを固定し、被着体Bを両面粘着シートの厚さ方向と直交する平面内にて回転させることにより、被着体Aと被着体Bを剥離させる。被着体Bの回転角度は、10°以上が好ましく、より好ましくは15〜45°である。上記「両面粘着シートの厚さ方向と直交する平面」とは、両面粘着シート、被着体A及び被着体Bの、長さ100mm、幅50mmである表面と平行な平面である。
上記被着体Aは、スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm、サイズ:長さ100mm×幅50mm)と偏光フィルム(日東電工(株)製、商品名「TEG1465DUHC」、長さ100mm×幅50mm)の積層体(サイズ:長さ100mm×幅50mm)である。また、上記被着体Bは、スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm、サイズ:長さ100mm×幅50mm)である。
【0081】
上記再剥離試験においては、被着体Aに対して、被着体Bをねじるように回転させる。即ち、被着体Aと被着体Bを貼り合わせている両面粘着シートにせん断応力(特に、回転せん断応力)が加わる。なお、上記再剥離試験は、より具体的には、後述の「(2)リワーク性(再剥離試験)」に従って実施することができる。
【0082】
従来より、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)と導電性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどの光学部材同士の貼り合わせ用の両面粘着シートの分野においては、製造時の貼り直しなどの際のリワーク性を向上させることが検討されていた。上記のように、貼り合わせる部材の一方がPETフィルムのように柔軟な部材の場合には、柔軟な部材側を引き剥がす(ピールする)形態で剥離を行うことが一般的であった。このため、両面粘着シートの一方の粘着面の粘着力を小さくすることにより、リワーク性を向上させることが一般的に行われており、例えば、粘着剤の架橋構造を密にするなどの方法が用いられていた。しかしながら、上記のようにしてリワーク性を持たせた両面粘着シートでは、高剛性の硬い部材同士(例えば、LCDとガラスセンサーなど)を貼り合わせた場合には、ピールによる剥離ができず、十分なリワーク性を得ることができなかった。
【0083】
これに対して、本発明は、両面粘着シートにおける必須の粘着剤層(アクリル系粘着剤層)のゲル分率を比較的低くすることにより、該粘着剤層の凝集力を低下させ、該粘着剤層の凝集破壊がある程度起こりやすくなるように設計した。これにより、高剛性の部材同士を貼り合わせた場合であっても、両面粘着シートにせん断応力(特に回転せん断応力)を加わえることにより、上記粘着剤層が凝集破壊して、貼り合わせた部材同士を破損することなく剥離することを可能とし、リワーク性を向上させた。また、粘着剤層を柔軟とすることにより段差吸収性も向上させた。さらに、アクリル系粘着剤層に用いられるアクリル系ポリマーの極性基含有モノマーの含有量を低く抑えることにより、被着体と粘着剤層の界面剥離もある程度起こりやすくし、前述の凝集破壊による剥離との相乗効果でより一層リワーク性を向上させた。一方、ゲル分率の下限値を制御することにより、十分な耐発泡剥がれ性を両立させた。
【0084】
上記に加えて、本発明のアクリル系粘着剤層に用いられるアクリル系ポリマーが脂環式モノマーを構成モノマー成分として含有する場合には、Tgが向上する効果により、本発明のアクリル系粘着剤層の強度が向上し加工性が向上するため好ましい。また、本発明のアクリル系粘着剤層がシランカップリング剤を含有する場合には、経時で粘着力が向上するため、リワークが必要となる場合の多い、貼り合わせ直後には比較的粘着力を小さく、リワーク性を高くし、製品が完成した後には高い接着信頼性を発揮するようにできるため好ましい。
【0085】
本発明の両面粘着シートは、光学用途に用いられる光学用両面粘着シートである。より具体的には、例えば、光学部材を貼り合わせる用途(光学部材貼り合わせ用)や、光学部材が用いられた製品(光学製品)の製造用途などに用いられる光学用両面粘着シートである。本発明の両面粘着シートは、リワーク性に優れ、被着体同士を一旦貼り合わせた後に、再度剥離(再剥離)した場合でも、剥離した被着体を再利用することができる(再剥離型両面粘着シートである)。また、耐発泡剥がれ性に優れ、本発明の両面粘着シートを介して光学部材同士貼り合わせて作製した積層体(光学製品等)を高温環境下や高温高湿環境下に晒した場合であっても、発泡や剥がれの外観不良を生じない。さらに、段差吸収性にも優れ、印刷段差等の段差を有する光学部材を貼り合わせる場合にも、段差における浮きなどの外観不良が生じない。このため、本発明の両面粘着シートは、光学用両面粘着シートとして特に優れた特性を発揮できる。
【0086】
上記光学部材とは、光学的特性(例えば、偏光性、光屈折性、光散乱性、光反射性、光透過性、光吸収性、光回折性、旋光性、視認性など)を有する部材をいう。光学部材としては、光学的特性を有する部材であれば、特に限定されないが、例えば、表示装置(画像表示装置)や入力装置等の光学製品を構成する部材又はこれらの機器(光学製品)に用いられる部材が挙げられ、例えば、偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、導光板、反射フィルム、反射防止フィルム、透明導電フィルム(ITOフィルムなど)、意匠フィルム、装飾フィルム、表面保護板、プリズム、レンズ、カラーフィルター、透明基板や、さらにはこれらが積層されている部材(これらを総称して「機能性フィルム」と称する場合がある)が挙げられる。なお、上記の「板」及び「フィルム」は、それぞれ板状、フィルム状、シート状等の形態を含むものとし、たとえば、「偏光フィルム」は、「偏光板」、「偏光シート」も含むものとする。また、「機能性フィルム」は「機能性板」、「機能性シート」を含むものとする。
【0087】
上記表示装置(画像表示装置)としては、例えば、液晶表示装置、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置、PDP(プラズマディスプレイパネル)、電子ペーパーなどが挙げられる。また、上記入力装置としては、タッチパネルなどが挙げられる。
【0088】
上記光学部材としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、アクリル系樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、金属薄膜などからなる部材(例えば、シート状やフィルム状、板状の部材など)などが挙げられる。なお、本発明における「光学部材」には、上記の通り、被着体である表示装置や入力装置の視認性を保ちながら加飾や保護の役割を担う部材(意匠フィルム、装飾フィルムや表面保護板等)も含むものとする。
【0089】
本発明の両面粘着シートは、中でも、高剛性の光学部材に用いられることが好ましく、特に好ましくはガラスからなる光学部材である。即ち、本発明の両面粘着シートは、ガラスからなる光学部材の貼り合わせ用両面粘着シートであることが好ましい。ガラスからなる光学部材としては、例えば、ガラスセンサー、ガラス製表示パネル、タッチパネルの透明電極付きガラス板等が挙げられる。
【0090】
また、本発明の両面粘着シートを各種の機能性フィルムの少なくとも片面に貼付、積層することにより、機能性フィルムの少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着型機能性フィルムを得ることができる。上記粘着型機能性フィルムに用いられる本発明の両面粘着シートは、基材レス両面粘着シートであってもよいし、基材を有する両面粘着シートであってもよい。
【0091】
本発明の両面粘着シートを用いることにより、本発明の両面粘着シートを含む光学部材、本発明の両面粘着シートを含むタッチパネル、本発明の両面粘着シートを含む画像表示装置などを得ることができる。
【0092】
なお、光学部材の表面(少なくとも片面)に、本発明の両面粘着シートを、貼付、積層することにより、光学部材の少なくとも片面に粘着剤層を有する粘着型光学部材を得ることができる。
【0093】
[剥離方法]
本発明の両面粘着シートは、本発明のアクリル系粘着剤層がせん断応力により凝集破壊を起こしやすい。このため、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた部材(特に光学部材)同士を剥離する際には、本発明の両面粘着シートにせん断応力を生じさせるようにして剥離することが好ましい。以下に、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた2つ(2枚)の部材の剥離方法を説明する。なお、以下では、代表的に2つの光学部材の剥離方法として説明するが、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの部材のうちの少なくとも一方が光学部材であればよく、例えば、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた光学部材と光学部材以外の部材の剥離方法も同様に行うことができる。なお、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの部材の剥離方法を、「本発明の剥離方法」と称する場合がある。
【0094】
本発明の剥離方法は、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの光学部材を剥離する方法であって、上記2つの光学部材を相対的に平行移動させることで、本発明の両面粘着シートに破断に至るせん断応力を生じせしめることを特徴とする剥離方法が好ましい。本発明の剥離方法において、本発明の両面粘着シートの破断に至る部位は、特に限定されないが、主に本発明のアクリル系粘着剤層である。なお、「2つの光学部材を相対的に平行移動させる」とは、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの光学部材の対向する面の離間距離を実質的に一定に保ったまま、2つの光学部材の少なくとも一方を移動させることである。例えば、2つの光学部材が平板状の部材である場合には、2つの光学部材(平板)が平行関係を保ったまま、2つの光学部材の少なくとも一方を移動させることである。
【0095】
さらに、本発明の剥離方法においては、本発明の両面粘着シートにおける一方の光学部材への接着面内と他方の光学部材への接着面内に特定した互い平行な仮想直線がねじれ位置の関係となるように、2つの光学部材の少なくとも一方を移動させることが好ましい。即ち、本発明の両面粘着シートの一方の粘着面側と他方の粘着面側がねじれるように、2つの光学部材の少なくとも一方を移動させることが好ましい。これにより、容易に本発明の両面粘着シートに破断せん断応力が発生して、本発明の両面粘着シートがその厚み方向において2つに分断し、2つの光学部材が剥離されるため好ましい。
【0096】
本発明の剥離方法の好ましい具体的一例としては、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの光学部材のいずれか一方の光学部材を固定し、他方の光学部材の外面に操作板の一部を固着させ、該操作板の固着部付近を軸として該操作板とともに上記他方の光学部材を本発明の両面粘着シートの厚み方向と直交する平面内にて回転移動させることにより、本発明の両面粘着シートを破断せしめる方法が挙げられる。上記操作板としては、特に限定されないが、例えば、ステンレス板、アルミニウム板が挙げられる。
【0097】
本発明の剥離方法の好ましい他の具体的一例としては、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの光学部材をそれぞれ可動可能に保持し、少なくとも一方の光学部材を本発明の両面粘着シートの厚み方向と直交する平面内にて回転移動させることにより、本発明の両面粘着シートを破断せしめる方法が挙げられる。
【0098】
本発明の剥離方法によれば、本発明の両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの光学部材を、その2つの光学部材の少なくとも一方が薄厚で柔軟性に乏しい部材であっても、該光学部材に破損や割れに至る大きな歪み(変形)が生じるような力(負荷)が実質的に加わることなく、剥離することができる。本発明の剥離方法は、例えば、フラットパネルディスプレイの表示面側に配設される、表示パネルと保護透明板、表示パネルとタッチパネルの透明電極付きガラス板、タッチパネルの透明電極付きガラス板と保護透明板等の剥離に好ましく用いられる。
【0099】
なお、上記の剥離方法は、特開2010−121134号公報に記載の剥離方法において、粘着シートとして本発明の両面粘着シートを用い、板として光学部材を用いたものである。本発明の両面粘着シートは、特開2010−121134号公報に記載の剥離方法に特に好ましく用いることができる。本発明の両面粘着シートは、上記の本発明の剥離方法に用いられる両面粘着シートであることが好ましい。
【実施例】
【0100】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。実施例及び比較例における、プレポリマー組成物及びアクリル系粘着剤組成物の配合組成(用いたモノマー成分、光重合開始剤およびシランカップリング剤の種類と配合量)を表1に示した。なお、表1における各成分(モノマー、多官能モノマー、シランカップリング剤、及び光重合開始剤)の配合量は、モノマー成分全量(プレポリマー組成物に用いたモノマーと多官能モノマーの合計量)100重量部に対する重量部で表した。
【0101】
実施例1
アクリル酸2−エチルヘキシル(2EHA)99.4重量部、アクリル酸(AA)0.5重量部が混合された混合物に、光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」0.05重量部及びチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」0.05重量部を配合した後、粘度(BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が約20Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を作製した。
上記で得られたプレポリマー組成物に対して、ヘキサンジオールジアクリレート(多官能モノマー)0.1重量部、シランカップリング剤(信越化学工業(株)製、商品名「KBM−403」)0.3重量部、追加の光重合開始剤として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア184」0.1重量部及びチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」0.1重量部を添加し、アクリル系粘着剤組成物を得た。
【0102】
上記アクリル系粘着剤組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(三菱樹脂(株)製、「MRF75」)上に最終的な厚み(アクリル系粘着剤層厚み)が175μmとなるように塗布し、塗布層を形成した。次いで、上記塗布層上に、PETセパレータ(三菱樹脂(株)製、「MRF38」)を設け、塗布層を被覆して酸素を遮断した。その後、このMRF75/塗布層/MRF38の積層体の上面(MRF38側)からブラックライト(東芝製)にて、照度5mW/cm2の紫外線を300秒間照射した。さらに130℃の乾燥機で2分間乾燥処理を行い、残存モノマーを揮発させて、アクリル系粘着剤層を形成し、厚さ175μmの両面粘着シート(アクリル系粘着剤層のみからなる基材レス両面粘着シート)を得た。
【0103】
実施例2〜5、比較例1〜3
表1に示すように、モノマーの種類及び/又は配合量を変更して、実施例1と同様にして、プレポリマー組成物を作製した。
次いで、得られたプレポリマー組成物を用いて、実施例1と同様にして、アクリル系粘着剤組成物および厚さ175μmの両面粘着シート(アクリル系粘着剤層のみからなる基材レス両面粘着シート)を得た。
【0104】
(評価)
上記の実施例および比較例で得られた両面粘着シート(アクリル系粘着剤層)について、180°引き剥がし粘着力、アクリル系粘着剤層のゲル分率、リワーク性、耐発泡剥がれ性、段差吸収性及び透明性(全光線透過率、ヘーズ)を評価した。評価方法を以下に示す。なお、アクリル系粘着剤層のゲル分率については、前述の「(ゲル分率の測定方法)」に従い評価を行った。
評価結果は表1に示した。
【0105】
(1)180°引き剥がし粘着力(対ガラス、対偏光フィルム)
両面粘着シートから、長さ100mm×幅20mmのシート片を切り出し、セパレータを剥離して、一方の粘着面(測定面と反対面)にPETフィルム(東レ(株)製、「ルミラー S−10」、厚さ25μm)を貼付(裏打ち)して、短冊状のシート片を作製した。
次いで、上記短冊状のシート片からセパレータを剥離して、もう一方の粘着面(測定面)を試験板に2kgローラーを用いて片道1回で圧着し、測定サンプルを作製した。
上記測定サンプルを、23℃、50%RHの雰囲気中で30分間放置した後、引張試験機を用いて、JIS Z 0237に準拠して180°剥離試験を行い、試験板に対する180°ピール引き剥がし強度(180°引き剥がし粘着力)(N/20mm)を測定した。測定は、23℃、50%RHの雰囲気下、剥離角度180°、引張速度300mm/分の条件で行った。試験回数(n数)は3回とした。
試験板として、スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm)を用いた場合の180°ピール引き剥がし強度を、表1の「180°引き剥がし粘着力 ガラス」の欄に記載した。
また、試験板として、偏光フィルム(日東電工(株)製、商品名「TEG1465DUHC」、ハードコート面)を用いた場合の180°ピール引き剥がし強度を、表1の「180°引き剥がし粘着力 偏光フィルム」の欄に記載した。
【0106】
(2−1)リワーク性(再剥離試験)
(試験片の作製)
スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm、サイズ:長さ100mm×幅50mm)と偏光フィルム(日東電工(株)製、商品名「TEG1465DUHC」、長さ100mm×幅50mm)を貼り合わせて積層体(サイズ:長さ100mm×幅50mm)とし、被着体Aとした。また、スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm、サイズ:長さ100mm×幅50mm)を被着体Bとした。
両面粘着シートから、長さ100mm×幅50mmの短冊状のシート片を切り出し、一方のセパレータを剥離して、一方の粘着面を、被着体Bの表面に、ハンドローラー(2kgローラー)を用いて、1往復の条件で貼り付けた。次に、他方のセパレータを剥離して、他方の粘着面を被着体Aの偏光フィルム表面に下記条件で貼り付けて、スライドガラス/偏光フィルム/両面粘着シート/スライドガラスの構成を有する試験片(サイズ:長さ100mm×幅50mm)を作製した。
(貼り合わせ条件)
面圧:0.4MPa
真空度:30Pa
貼り付け時間:2秒
次に、上記試験片をオートクレーブに投入し、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で15分間、オートクレーブ処理した。
さらに、上記試験片は、23℃、50%RHの環境下に1時間静置した後、下記再剥離試験に用いた。
(再剥離試験)
上記試験片の被着体A側の表面に、両面接着テープ(日東電工(株)製、商品名「No.5000NS」、サイズ:長さ100mm×幅50mm)の一方の面を貼り付けた後、該両面接着テープの他方の面をPMMA(ポリメタクリル酸メチル)製の固定台に貼り付けた。
次に、このようにして固定台上に固定された試験片の被着体B側の表面に、両面接着テープ(日東電工(株)製、商品名「No.5000NS」、サイズ:長さ100mm×幅50mm)の一方の面を貼り付けた後、該両面接着テープの他方の面に、図1に示すように、縦250mm、横70mm、厚さ1.0mmのステンレス板の長手方向の一端側を貼り付けた後、図2に示すように、ステンレス板を回転角度が10°以上となるように移動させて、被着体Aと被着体Bを剥離させた。なお、上記ステンレス板は、試験片の厚さ方向(即ち、両面粘着シート、被着体B、及びステンレス板の厚さ方向である)と直交する平面内で回転するように移動させた。
そして、剥離された被着体A及び被着体Bの表面をイソプロピルアルコールで洗浄して残存付着していた粘着剤を除去し、洗浄後の表面をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、商品名「VHF−100F」)で観察した。被着体A及び被着体Bのいずれにも、割れ、破損やキズが発生していなかった場合にはリワーク性良好(○)と評価し、被着体A及び被着体Bの少なくとも一方に割れ、破損やキズが発生していた場合にはリワーク性不良(×)と評価した。
なお、図1は、試験片の固定状態及び試験片とステンレス板の貼り付け状態を模式的に示した説明図(平面図)である。図2は、ステンレス板を移動させている状態を模式的に示した説明図(平面図)である。図1及び図2における、1は試験片、2はステンレス板、3は固定台である。
【0107】
(2−2)リワーク性(リワーク装置による試験)
(試験片の作製)
ガラス板A(松浪硝子工業(株)製、厚さ1.35mm、サイズ:長さ83mm×幅55mm)と、ガラス板B(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm、サイズ:長さ120mm×幅60mm)を用意した。実施例及び比較例で得られた両面粘着シートを長さ83mm×幅55mmのサイズにカットし、一方の粘着面を、ガラス板Aの表面に、ハンドローラーを用いて貼り付けた。次に、他方の粘着面をガラス板Bの表面に下記条件で貼り付けて、試験片を作製した。
(貼り合わせ条件)
面圧:0.25MPa、真空度:100Pa、貼り付け時間:5秒
次に、上記試験片をオートクレーブに投入し、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で15分間、オートクレーブ処理した。さらに、上記試験片は、23℃、50%RHの環境下に1時間静置した後、下記再剥離試験に用いた。
【0108】
(板の分離)
ガラス板Aを第1の治具に、ガラス板Bを第2の治具に固着し、第1の治具を回転させ、定速度回転速度:1度/sec、回転角度:10度の条件にて、ガラス板A、Bを相対回転させた。なお、相対回転の回転軸はガラス板A、Bの重心とした。その後、第1の治具を300mm/秒の速度で直線的に移動させ(ガラス板Aをガラス板Bに対して直線的に平行移動させ)、ガラス板A、Bの間に介在する両面粘着シートを分断し、ガラス板A、Bを分離した。
試験中の試験片の温度は23℃に設定した。
【0109】
分離後のガラス板A、Bの表面を洗浄して粘着剤を除去し、洗浄後の表面をデジタルマイクロスコープ((株)キーエンス製、商品名「VHF−100F」)で観察した。表1中の○はガラス板A、Bともに割れ、破損及びキズのいずれも観察されなかったことを意味し、×はガラス板A、Bの少なくとも一方に割れ、破損またはキズが観察されたことを意味する。
【0110】
(3−1)耐発泡剥がれ性(85℃)
上記「(2−1)リワーク性(再剥離試験)」と同様にして、スライドガラス/偏光フィルム/両面粘着シート/スライドガラスの構成を有する試験片(サイズ:長さ100mm×幅50mm)を作製した。上記試験片は、23℃、50%RHの環境下に1時間静置した後、下記評価に用いた。
次に、上記試験片をオートクレーブに投入し、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で15分間、オートクレーブ処理した。オートクレーブ処理後、試験片をオートクレーブから取り出し、取り出した試験片を、温度85℃に設定した乾燥機に投入し、24時間放置した。
その後、乾燥機から上記試験片を取り出し、30分間室温(23℃)で放置した。そして、マイクロスコープにより、上記試験片における発泡(異物起因の発泡を含む発泡)の有無を観察した。発泡がない場合には耐発泡剥がれ性良好(○)と評価し、発泡がある場合は耐発泡剥がれ性不良(×)と評価した。上記評価結果を、表1の「耐発泡剥がれ性 85℃」の欄に記載した。
【0111】
(3−2)耐発泡剥がれ性(60℃/95%RH)
上記「(2−1)リワーク性(再剥離試験)」と同様にして、スライドガラス/偏光フィルム/両面粘着シート/スライドガラスの構成を有する試験片(サイズ:長さ100mm×幅50mm)を作製した。上記試験片は、23℃、50%RHの環境下に1時間静置した後、下記評価に用いた。
次に、上記試験片をオートクレーブに投入し、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で15分間、オートクレーブ処理した。オートクレーブ処理後、試験片をオートクレーブから取り出し、取り出した試験片を、温度60℃、湿度95%RHに設定した恒温恒湿槽に投入し、24時間放置した。
その後、恒温恒湿槽から上記試験片を取り出し、30分間室温(23℃)で放置した。そして、マイクロスコープにより、上記試験片における発泡(異物起因の発泡を含む発泡)の有無を観察した。発泡がない場合には耐発泡剥がれ性良好(○)と評価し、発泡がある場合は耐発泡剥がれ性不良(×)と評価した。上記評価結果を、表1の「耐発泡剥がれ性 60℃/95%RH」の欄に記載した。
【0112】
(4)段差吸収性
両面粘着シートから、長さ100mm×幅50mmのシート片を切り出した。
次に、上記で得られたシート片から一方のセパレータを剥離し、ハンドローラー(2kgローラー)を用いて、1往復の条件で、スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、長さ100mm×幅50mm、厚み0.7mm)に貼り合わせた。
次に、スライドガラスに貼り合わせた上記シート片から他方のセパレータを剥離し、印刷段差付きガラス板を、印刷段差の施された面とシート片の粘着面とが接するように、下記の貼り合わせ条件で貼り合わせ、評価用サンプルを得た。
(貼り合わせ条件)
面圧:0.4MPa
真空度:30Pa
貼り付け時間:2秒
なお、上記印刷段差付きガラス板は、スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、長さ100mm×幅50mm、厚み0.7mm)の一方の面に枠状の印刷が施されたガラス板である。上記印刷段差付きガラス板において、印刷部分の厚み(印刷段差の高さ)は10〜13μmである。上記印刷段差付きガラス板の概略図を、図3(平面図)及び図4(図3におけるA−A’線切断部端面図)に示す。図3及び図4における、11は印刷段差付ガラス板、12はスライドガラス、13は印刷部分である。
次に、上記評価用サンプルをオートクレーブに投入し、温度50℃、圧力0.5MPaの条件で15分間、オートクレーブ処理した。
オートクレーブ処理後、上記評価用サンプルを取り出し、目視で気泡の有無を観察した。気泡がない場合には段差吸収性良好(○)と評価し、気泡がある場合には段差吸収性不良(×)と評価した。
【0113】
(5)加湿白濁性
実施例、比較例で得られた両面粘着シートからセパレータを剥離し、該両面粘着シートの一方の粘着面をスライドガラス(松浪硝子工業(株)製、商品名「MICRO SLIDE GLASS」、品番「S」、厚さ1.3mm、ヘーズ0.1%、水縁磨)に貼り付け、他方の粘着面をPETフィルム(東洋紡績(株)製、商品名「A4100」、厚さ100μm、ヘーズ0.6%)に貼り付けて、「スライドガラス/アクリル系粘着剤層/PETフィルム」の構成を有する試験片を作製した。
該試験片を60℃、95%RHの環境下に120時間保存し、23℃、50%RHの環境下に取り出した直後(0時間後)の試験片(「スライドガラス/アクリル系粘着剤層/PETフィルム」の構成を有する)の外観を目視で確認した。目視で白濁が認められなかった場合を○、白濁が認められた場合を×と評価した。
【0114】
(6)透明性(全光線透過率、ヘーズ)
両面粘着シートから一方のセパレータを剥離して、該両面粘着シートをスライドガラス(松浪硝子工業(株)製、「白研磨 No.1」、厚さ0.8〜1.0mm、全光線透過率92%、ヘーズ0.2%)に貼り合わせ、さらに他方のセパレータを剥離して、両面粘着シート(アクリル系粘着剤層)/スライドガラスの層構成を有する試験片を作製した。
上記試験片の可視光領域における全光線透過率及びヘーズを、ヘーズメータ((株)村上色彩技術研究所製、装置名「HM−150」)を用いて測定した。
【0115】
【表1】

【0116】
表1中の略語は以下の通りである。
(モノマー成分)
2EHA:アクリル酸2−エチルヘキシル
AA:アクリル酸
HEA:アクリル酸2−ヒドロキシエチル
IBXA:アクリル酸イソボルニル
NVP:N−ビニル−2−ピロリドン
HDDA:ヘキサンジオールジアクリレート
(光重合開始剤)
Irg.184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、
商品名「イルガキュア184」
Irg.651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、
商品名「イルガキュア651」
(シランカップリング剤)
KBM403:信越化学工業(株)製、商品名「KBM−403」
【0117】
表1の結果から明らかなように、本発明の両面粘着シート(実施例1〜5)は、リワーク性、耐発泡剥がれ性及び段差吸収性に優れていた。なお、再剥離試験では被着体A及び被着体Bのいずれにも粘着剤が残存するように剥離していた。
一方、ゲル分率が高いアクリル系粘着剤層のみを有する両面粘着シート(比較例1、2)及びモノマー成分中の極性基含有モノマーの含有量の多いアクリル系ポリマーを用いたアクリル系粘着剤層のみを有する両面粘着シート(比較例3)は、リワーク性、段差吸収性に劣っていた。
また、本発明の両面粘着シート(実施例6及び7)は、耐発泡剥がれ性、段差吸収性及び加湿白濁性防止に優れており、リワーク性についても、比較例1〜3の両面粘着シートに比べ、遜色は無かった。
さらに、本発明の両面粘着シート(実施例)は、両面粘着シート製造時において、切断加工の際に刃への粘着剤の付着がなく、加工性が良好であった。中でも、モノマー成分としてイソボルニルアクリレートを用いた場合(実施例2、3)は、特に加工性が優れていた。
【符号の説明】
【0118】
1 試験片
2 ステンレス板
3 固定台
11 印刷段差付きガラス板
12 スライドガラス
13 印刷部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマー(X)を含有するアクリル系粘着剤層を有し、
前記アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量(100重量%)中の、炭素数が1〜14である直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有量が50〜100重量%、かつ極性基含有モノマーの含有量が0〜15.0重量%であり、
前記アクリル系粘着剤層のゲル分率が20〜74重量%であることを特徴とする光学用両面粘着シート。
【請求項2】
前記極性基含有モノマーが、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー及び窒素原子含有モノマーからなる群より選ばれたモノマーである請求項1に記載の光学用両面粘着シート。
【請求項3】
前記アクリル系ポリマー(X)を形成するモノマー成分全量(100重量%)中の、脂環式モノマーの含有量が0.5重量%以上、10重量%未満である請求項1又は2に記載の光学用両面粘着シート。
【請求項4】
前記アクリル系ポリマー(X)が、活性エネルギー線重合により形成されたアクリル系ポリマーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学用両面粘着シート。
【請求項5】
前記アクリル系粘着剤層のみからなる、基材を有しない両面粘着シートである請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学用両面粘着シート。
【請求項6】
全光線透過率が87%以上、ヘーズが3.0%以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学用両面粘着シート。
【請求項7】
下記再剥離試験において、被着体Aと被着体Bとを剥離することが可能であり、剥離後に、被着体Aと被着体Bのいずれにも粘着剤が残存することを特徴とする光学用両面粘着シート。
再剥離試験:光学用両面粘着シート(サイズ:長さ100mm×幅50mm)の一方の粘着面を下記被着体Aの偏光フィルム表面に貼り付け、他方の粘着面を下記被着体Bの表面に貼り付けて、スライドガラス/偏光フィルム/光学用両面粘着シート/スライドガラスの構成を有する試験片(サイズ:長さ100mm×幅50mm)を作製し、該試験片を、23℃、50%RHの環境下に1時間放置した後、前記被着体Aを固定し前記被着体Bを前記光学用両面粘着シートの厚さ方向と直交する平面内にて回転させることにより、被着体Aと被着体Bを剥離させる試験
被着体A:スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm、サイズ:長さ100mm×幅50mm)と偏光フィルム(日東電工(株)製、商品名「TEG1465DUHC」、長さ100mm×幅50mm)の積層体(サイズ:長さ100mm×幅50mm)
被着体B:スライドガラス(松浪硝子工業(株)製、厚さ0.7mm、サイズ:長さ100mm×幅50mm)
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学用両面粘着シートを含む光学部材。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学用両面粘着シートを含むタッチパネル。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学用両面粘着シートを含む画像表示装置。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学用両面粘着シートを介して貼り合わされた2つの光学部材を剥離することを特徴とする剥離方法。
【請求項12】
前記2つの光学部材を相対的に平行移動させることで、前記光学用両面粘着シートに破断に至るせん断応力を生じせしめる請求項11に記載の剥離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−32483(P2013−32483A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30973(P2012−30973)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】