説明

光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロール

【課題】光学用部材として用いたときに表示欠点になることとない外観上均一の品質を備えた光学用フィルムロールを提供すること。
【解決手段】二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその少なくとも一方の面に設けられた厚み50〜150nmの易接着塗膜からなり、フィルムの配向角の最小値が30°以上50°以下である光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロールであって、易接着塗膜において塗膜厚みの15%以上の深さの亀裂がないことを特徴とする光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロールに関する。
【背景技術】
【0002】
光学用フィルムは、タッチパネルの基材や保護フィルムなど、表示装置の表面に配置される部材として用いられる場合が多い。このため、光学用フィルムは、傷が付くこと防止するためにハードコート層を設けた構成とすることが多い。ハードコート層は一般的に未硬化のハードコート層塗設用の塗液をフィルムに塗布してこれを硬化させるハードコート加工を施すことで設けられる。このハードコート加工の際に、ハードコートに亀裂が発生しやすく、この亀裂は、タッチパネルや保護フィルムとして表示装置として用いたときに、表示品質を低下させることになる。
【0003】
ポリエステルフィルムにハードコート加工を施す際、ポリエステルフィルムの表面には、下地層としての易接着塗膜を予め設ける必要があり、この塗膜がなければハードコート層とポリエステルフィルムとの密着性を得ることができない。この易接着塗膜は、主にポリエステルで構成される。この層をポリエステルフィルムに設けるためには、ポリエステルをエマルションとして水中に分散させ、これをフィルムに塗布する方法が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−92226号公報
【特許文献2】特開2005−329720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ポリエステル樹脂のエマルジョンをポリエステルフィルムに塗布し、逐次二軸延伸したのでは、塗布後の乾燥工程および逐次二軸延伸工程において易接着塗膜に亀裂が入り、光学用ポリエステルフィルムとしての外観が悪くなる。
【0006】
本発明は、ハードコート塗設のための易接着塗膜の亀裂を低減した、光学用部材として用いたときに表示欠点になることのない、外観上均一の品質を備える光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその少なくとも一方の面に設けられた厚み50〜150nmの易接着塗膜からなり、フィルムの配向角の最小値が30°以上50°以下である光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロールであって、易接着塗膜において塗膜厚みの15%以上の深さの亀裂がないことを特徴とする光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロールである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハードコート塗設のための易接着塗膜の亀裂を低減した、光学用部材として用いたときに表示欠点になることのない、外観上均一の品質を備える光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
[二軸延伸ポリエステルフィルム]
本発明における二軸延伸ポリエステルフィルムは、二軸延伸された熱可塑性飽和ポリエステルフィルムである。熱可塑性ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。本発明におけるポリエチレンテレフタレートは、エチレンテレフタレート単位を、全繰返し単位を基準に95%以上、好ましくは98%以上の繰り返し単位としてなるポリエステルである。これは、ホモポリマーであってもよく、共重合ポリマーであってもよい。共重合ポリマーである場合、共重合成分として、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジエチレングリコールを用いることができる。ポリエチレンテレフタレートとして最も好ましいものは、ポリエチレンテレフタレートホモポリマーである。
光学用フィルムとしての機械的特性を得るために、二軸延伸ポリエステルフィルムの厚みは、好ましくは30〜250μm、さらに好ましくは70〜225μmである。
【0011】
[易接着塗膜]
本発明における光学用フィルムは、二軸延伸ポリエステルフィルムの片面または両面に易接着塗膜を備える。
この易接着塗膜は、そのうえにハードコート層を設けるときに下地層として機能する層である。易接着塗膜の厚みは50〜150nm、好ましくは75〜125nmである。易接着塗膜の厚みがこの範囲にあることで、光学用フィルムのうえにハードコート層を設けたときに良好な密着性を、干渉斑を発生させることなく得ることができる。
易接着塗膜は、水溶性樹脂からなり、好ましくは水溶性樹脂および架橋剤からなる。
【0012】
[水溶性樹脂]
易接着塗膜の水溶性樹脂は、易接着塗膜の上にハードコート層を設ける場合にハードコート層との良好な接着性を得る観点から、ポリエステル樹脂およびオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂の混合物であることが好ましい。
この水溶性樹脂は、水に可溶性または分散性のものであり、多少の有機溶剤を含有してもよい。水溶性樹脂の成分であるポリエステル樹脂のガラス転移点は、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜80℃である。この範囲であれば、優れた接着性、耐傷性、耐ブロッキング性および塗布外観を得ることができる。
【0013】
水溶性樹脂の成分であるポリエステル樹脂は、水溶性樹脂の合計重量を基準として、好ましくは70〜97重量%、さらに好ましくは75〜95重量%含有される。水溶性樹脂の成分のオキサゾリン基とポリアルキレンオキシド鎖とを有するアクリル樹脂は、水溶性樹脂の合計重量を基準として好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜25重量%含有される。水溶性樹脂がこの組成であることで、ハードコート層を設けたときに、ポリエステルフィルムとハードコート層との良好な接着性を得ることができる。
【0014】
[架橋剤]
易接着塗膜は、架橋剤を含有することが好ましく、架橋剤が含有される場合、易接着塗膜の固形分重量を基準に、好ましくは0.1〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%の量が含有される。この範囲で含有されることで、易接着塗膜の凝集力と接着性を得ることができる。
易接着塗膜に架橋剤を用いる場合、架橋剤としては、エポキシ、オキサゾリン、メラミン、イソシアネートのいずれか一種または二種以上を用いる。
【0015】
エポキシ架橋剤は、ポリエポキシ化合物、ジエポキシ化合物、モノエポキシ化合物、グリシジルアミン化合物等が挙げられ、ポリエポキシ化合物としては、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリス(2−グリシジルオキシエチル)シアヌレート、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジエポキシ化合物としては、例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、モノエポキシ化合物としては、例えば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルアミン化合物としては、例えばN,N,N’,N’,−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノ)シクロヘキサンが挙げられる。
【0016】
オキサゾリン架橋剤は、オキサゾリン基を含有する重合体が好ましい。付加重合性オキサゾリン基含有モノマー単独もしくは他のモノマーとの重合によって作成できる。付加重合性オキサゾリン基含有モノマーは、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−ビニル−5−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−4−メチル−2−オキサゾリン、2−イソプロペニル−5−エチル−2−オキサゾリン等を挙げることができ、これらの1種または2種以上の混合物を使用することができる。これらの中でも2−イソプロペニル−2−オキサゾリンが工業的にも入手しやすく好適である。他のモノマーは、付加重合性オキサゾリン基含有モノマーと共重合可能なモノマーであればよく、例えばアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2ーエチルヘキシル基、シクロヘキシル基)等のア(メタ)クリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等)等の不飽和カルボン酸類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N、N−ジアルキルアクリルアミド、N、N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸のエステル部にポリアルキレンオキシドを付加させたもの等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル等の含ハロゲンα、β−不飽和モノマー類;スチレン、α−メチルスチレン、等のα、β−不飽和芳香族モノマー等を挙げることができ、これらの1種または2種以上のモノマーを使用することができる。
【0017】
メラミン架橋剤は、メラミンとホルムアルデヒドを縮合して得られるメチロールメラミン誘導体に低級アルコールとしてメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等を反応させてエーテル化した化合物およびそれらの混合物が好ましい。メチロールメラミン誘導体としては、例えば、モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等が挙げられる。
【0018】
イソシアネート架橋剤は、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとヘキサントリオールの付加物、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ポリオール変性ジフェニルメタン−4、4´−ジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、3,3´−ビトリレン−4,4´ジイソシアネート、3,3´ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート等が挙げられる。
架橋剤として、オキサゾリン架橋剤が取り扱いやすさや塗布液のポットライフの点から好ましい。
【0019】
[易接着塗膜の亀裂]
本発明の光学用フィルムロールは、易接着塗膜において塗膜厚みの15%以上の深さの亀裂がない。塗膜において塗膜厚みの15%以上の深さの亀裂があると、光学用フィルムとしての外観が悪くなり、表示品質が低下する。
【0020】
[配向角の最小値]
本発明の光学用フィルムロールは、フィルムの配向角の最小値が30〜50°である。この配向角は、製膜されたフィルムをロール状に巻き取ったフィルムロールにおいて、フィルムの巾方向を基準線0°としたときに、フィルムの配向が基準線となす角である。すなわち、本発明ではフィルムの巾方向における配向角の最小値が30〜50°である。
【0021】
本発明の光学用フィルムを製造するためには、光学用途に適するようにキズをつけることなく製造することが必要であり、同時二軸延伸法で延伸する必要がある。同時二軸延伸法で得られる二軸延伸フィルムは、逐次二軸延伸法で得られる二軸延伸フィルムに比べて配向角が高く、フィルムの巾方向における配向角の最大値が30〜50°を示す。
【0022】
[製造方法]
ポリエステルフィルムを製造するには、縦延伸倍率と横延伸倍率の差を低くして延伸する必要があり、この延伸を同時二軸延伸法で行う。ポリエチレンテレフタレートフィルムを例に説明すると、ポリエチレンテレフタレートを溶融し、シート状に押出し、冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、該未延伸フィルムに易接着塗膜の成分を含有する塗液をロールコーターで塗布し、同時二軸延伸機で延伸した後に、熱固定・熱弛緩処理することにより、易接着塗膜を硬化させて得ることができる。
【0023】
具体的には、ポリエチレンテレフタレートを、Tm+10℃ないしTm+30℃(ただし、Tmはポリエチレンテレフタレートの融点)の温度で溶融し、押出して未延伸フィルムとし、該未延伸フィルムに易接着塗膜を配向結晶化後に厚みが好ましくは50〜150nm、さらに好ましくは75〜125nmとなるように塗布し、好ましくは100℃〜130℃の温度の熱風を15〜25m/minの風速で30秒乾燥させた。易接着塗膜付の未延伸フィルムを同時に二軸方向にTgないしTg+10℃の温度(ただし、Tgはポリエチレンテレフタレートのガラス転移温度)で縦方向に3.0〜4.0倍、横方向に3.0〜4.0倍で延伸することで二軸延伸フィルムとするのが好ましい。その後さらに、得られたフィルムを(Tg+60)〜Tmの温度で熱固定する。例えば、ポリエチレンテレフタレートフイルムについては210〜240℃の範囲内の温度で、1〜60秒の時間熱固定処理するのが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
フィルムの評価は以下の方法で行った。易接着塗膜成分の調製は以下の方法で行った。
【0025】
(1)易接着塗膜の厚み
フィルムを小さく切り出し、エポキシ樹脂で包埋させ、ミクロトームで50nm厚みにフィルム断面を薄切りした。これを2%オスミウム酸で60℃、2時間かけて染色した。染色されたフィルムの断面を透過電子顕微鏡((株)トプコン製LEM−2000型)30000倍で観察し、塗膜厚みを測定した。
【0026】
(2)易接着塗膜の亀裂の有無
横1m縦20mの大きさのサンプルフィルムに暗室にてハロゲンライトの光を照射して反射させ目視にて易接着塗膜の亀裂の有無を判定した。亀裂がある場合は亀裂部分を含む縦5mm横2mmのフィルムサンプルを切り出し、エポキシ樹脂で包埋させ、ミクロトームで50nm厚みにフィルム断面を薄切りした。これを2%オスミウム酸で60℃、2時間かけて染色した。染色されたフィルムの断面を透過電子顕微鏡((株)トプコン製LEM−2000型)で30000倍で観察して亀裂の深さを測定した。亀裂の深さが塗膜厚みの15%以上の亀裂である場合を亀裂ありと評価した。
【0027】
(3)フィルムの厚み
電子マイクロメータ(アンリツ(株)製K−312A型)を用いて針圧30gにてフィルム厚みを測定した。
【0028】
(4)フィルムの配向角
フィルムを幅方向のセンターから50mmピッチでエッジ方向にサンプリングした後、全サンプルについて偏光顕微鏡を用いてTD方向を角度0度としてサンプルを時計周り並びに反時計周りの方向に回転させて、各方向にて初めに消光する角度を測定した。その測定角度のうち小さい角度を配向角とした。
【0029】
(5)反射率振幅
ハードコート層を形成したポリエステルフィルムの反対面を黒色マジックで塗りつぶし、反対面の反射光を無くし、分光光度計(島津製作所製UV−3101PC)を用いて、分光反射率を測定した。波長500nm〜600での反射率を測定し、その反射率の振幅を下記の基準で評価した。なお、測定された反射率の振幅が大きいほど干渉斑が発生し、ディスプレイとしての視認性が低下する。
◎: 反射率振幅≦0.5% …… 極めて良好
○:0.5%<反射率振幅≦1.0% …… 良好
×:1.0%<反射率振幅 …… 不良
【0030】
(6)塗液の成分の用意
易接着塗膜を形成するために用いる塗液の成分として、下記の成分の用意した。
【0031】
(あ)水溶性ポリエステル1の調製
水溶性ポリエステル1は、酸成分がテレフタル酸95モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=72℃、平均分子量16000)。なお、水溶性ポリエステル1は下記の通りに製造した。テレフタル酸ジメチル56部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル5部、エチレングリコール36部、ジエチレングリコール3部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで攪拌器のモータートルクの高い重合釜で反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、固有粘度が0.57の水溶性ポリエステル1を得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去した。水溶性ポリエステル1の水分散体を得た。
【0032】
(い)水溶性ポリエステル2の調製
水溶性ポリエステル2は、酸成分が2,6−ナフタレンジカルボン酸75モル%/イソフタル酸20モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%で構成されている(Tg=80℃、平均分子量15000)。なお、水溶性ポリエステル2は、下記の通り製造した。すなわち、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル51部、イソフタル酸ジメチル11部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジメチル4部、エチレングリコール31部、ジエチレングリコール2部を反応器に仕込み、これにテトラブトキシチタン0.05部を添加して窒素雰囲気下で温度を230℃にコントロールして加熱し、生成するメタノールを留去させてエステル交換反応を行った。次いで攪拌器のモータートルクの高い重合釜で反応系の温度を徐々に255℃まで上昇させ系内を1mmHgの減圧にして重縮合反応を行い、固有粘度が0.56の水溶性ポリエステル2を得た。このポリエステル25部をテトラヒドロフラン75部に溶解させ、得られた溶液に10000回転/分の高速攪拌下で水75部を滴下して乳白色の分散体を得、次いでこの分散体を20mmHgの減圧下で蒸留し、テトラヒドロフランを留去した。水溶性ポリエステル2の水分散体を得た。
【0033】
(う)架橋剤の調製
この架橋剤は、メチルメタクリレート30モル%/2−イソプロペニル−2−オキサゾリン30モル%/ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリレート10モル%/アクリルアミド30モル%で構成されている(Tg=50℃)。なお、特開昭63−37167号公報の製造例1〜3に記載の方法に準じて下記の通り製造した。すなわち、四つ口フラスコに、イオン交換水302部を仕込んで窒素気流中で60℃まで昇温させ、次いで重合開始剤として過硫酸アンモニウム0.5部、亜硝酸水素ナトリウム0.2部を添加し、さらにモノマー類である、メタクリル酸メチル23.3部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン22.6部、ポリエチレンオキシド(n=10)メタクリル酸40.7部、アクリルアミド13.3部の混合物を3時間にわたり、液温が60〜70℃になるよう調整しながら滴下した。滴下終了後も同温度範囲に2時間保持しつつ、撹拌下に反応を継続させ、次いで冷却して固形分が25%の水分散体を得た。
【0034】
(え)微粒子
シリカフィラー(平均粒径80nm)(触媒化成工業社製 商品名カタロイドSI−80P)
【0035】
(お)界面活性剤
ライオン社製ノニオン界面活性剤ライオノールL−950
【0036】
[実施例1〜4 比較例1〜8]
溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.63dl/g、Tg=78℃)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いでその両面に表1に示す組成からなる塗剤の濃度10%の水性塗液をロールコーターで均一に塗布した。
次いで、この塗布フィルムを引き続いて表1に示す温度で20m/minの風速で20秒乾燥し、同時二軸延伸機において120℃で縦方向において3.2倍、横方向において3.7倍で縦横方向を同時に延伸し、220℃で熱固定し、140〜190℃の冷却区間で製膜速度を1.3%遅くして縦方向に熱弛緩し、同時に横方向のレール巾を1.7%狭くして、1.7%横方向に弛緩することにより、厚さ125μm、巾5m、長さ2200mの光学用ポリエステルフィルムマスターロールを得た。このマスターロールを巾1mかつ4分割でスリット加工し、巾1m、長さ2000mの光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロールを得た。
得られた光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロールに、以下の組成からなるUV硬化組成物をロールコーターを用いて、硬化後の膜厚が5μmとなるように均一に塗布した。その後、80W/cmの強度を有する高圧水銀灯で30秒間紫外線を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。
【0037】
[UV硬化組成物]
ペンタエリスリトールアクリレート :45重量%
N−メチロールアクリルアミド :40重量%
N−ビニルピロリドン :10重量%
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン: 5重量%
【0038】
【表1】

【0039】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の光学用フィルムロールは、易接着塗膜のうえにハードコート層を設け、必要に応じて透明導電層や粘着層を設け製品サイズに裁断することで、タッチパネルの基材フィルムや保護フィルムとして用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二軸延伸ポリエステルフィルムおよびその少なくとも一方の面に設けられた厚み50〜150nmの易接着塗膜からなり、フィルムの配向角の最小値が30°以上50°以下である光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロールであって、易接着塗膜において塗膜厚みの15%以上の深さの亀裂がないことを特徴とする光学用二軸延伸ポリエステルフィルムロール。

【公開番号】特開2011−189623(P2011−189623A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57629(P2010−57629)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】