説明

光学用粘着剤及び光学用粘着シート

【課題】 本発明は、加熱処理後も、粘着特性の変化がなく、また光学部材の剥離の際、再剥離性を有する光学用粘着剤及び光学用粘着シートを提供する。
【解決手段】 アクリル重合体を主成分とする光学用粘着剤であって、
光学用粘着剤のカルボン酸量が40mgKOH/g以上であり、かつ粘着力が10〜30mN/25mmであることを特徴とする光学用粘着剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材の貼り合わせに用いられる光学用粘着剤及び光学用粘着シートに関するものである。さらには前記粘着剤付光学部材を用いたタッチパネル、液晶表示装置、有機EL表示装置、プラズマディスプレイパネル等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等に用いる導電膜のITO電極の保護フィルムとして、通常光学用粘着剤及び光学用粘着シートが用いられる。ITO電極は、通常エージング処理を行うため、150℃以上の加熱処理が行われる。このためタッチパネルのITO電極の保護フィルムに使用される光学用粘着剤及び光学用粘着シートは加熱条件下でも粘着物性が変化しない耐久性が要求される。
【0003】
また、ITO電極のエージング処理後は、更に後工程で加工が行われ、この際には光学部材は剥がされる。このような光学部材を剥離する際には容易に剥離できる再剥離性が必要とされる。
【0004】
しかしながら、単に耐久性を重視した粘着剤を設計すると、再剥離性の劣るものとなり、耐久性と再剥離性を両立するのは困難である。
【0005】
さらに、一般に粘着剤のカルボン酸量が高い粘着剤は、金属腐食性が高いためITO電極の保護フィルム等の光学用に用いることが困難であると考えられていた。
【0006】
これまでに、上述した問題点を改善する試みとして、特許文献1及び3では、偏向板側の粘着剤層のゲル分率が他方の粘着剤層のゲル分率よりも低いものとした偏光板が知られている。また、特許文献2では、粘着剤層の表面エネルギー差が1〜30dyne/cmである偏光板、粘着力の異なる2層の粘着層を設けた粘着剤転写テープ等が開示されているが、いずれも効果は不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7-294731号公報
【特許文献2】特開平8-43626号公報
【特許文献3】特開2003-177241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情を鑑みてなされたものであり、加熱処理後も、粘着特性の変化がなく、また光学部材の再剥離性を有する光学用粘着剤及び光学用粘着シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
【0010】
[1] アクリル重合体を主成分とする光学用粘着剤であって、
光学用粘着剤のカルボン酸量が40mgKOH/g以上であり、かつ粘着力が10〜30mN/25mmであることを特徴とする光学用粘着剤である。
[2] 光学用粘着剤のガラス転移温度が−30℃〜−10℃の範囲内である[1]記載の光学用粘着剤である。
[3] [1]〜[2]のいずれかに記載の光学用粘着剤から形成された粘着剤層を備えることを特徴とする光学用粘着シートである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の光学用粘着剤及び光学用粘着シートは、加熱処理後の粘着特性及び光学部材との再剥離性を併せ持っている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の透明積層体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[光学用粘着剤]
本発明の光学用粘着剤(以下、粘着剤と略す。)は、アクリル重合体を主成分とするものであり、光学用粘着剤のカルボン酸量が40mgKOH/g以上であり、かつ粘着力が10〜30mN/25mmである。ここで、カルボン酸量とは、水酸化カリウムとの中和量により求める。
粘着剤層のアクリル系粘着剤のカルボン酸量が、40mgKOH/g以上にすることで加熱処理後の粘着物性の変化が少なく、耐久性に優れたものとなる。
さらに好ましくは、電極の腐食防止の点で、40〜50mgKOH/gである。
上記光学用粘着剤が耐久性を発現する理由の詳細は定かではないが、カルボン酸量を40mgKOH/g以上にすることで架橋点が増加し、加熱後の粘着剤のアクリルモノマーの増加が抑えられるためであると推測する。
また架橋点が増加させることで、凝集力が増加し、粘着力を10mN/25mm〜30mN/25mmにすることが可能となる。
一般にカルボン酸量が増加すると金属腐食が起こりやすくなるが、カルボキシル基と反応する架橋剤及び架橋剤量を最適化することにより金属腐食を抑えることが可能となったと考えられる。
【0014】
また、アクリル系粘着剤のガラス転移温度を−30℃〜−10℃にすることが好ましい。これは粘着物性のバランスが取りやすくなるためである。またガラス転移温度が−10℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく、ITO電極への濡れが不十分となり、ITO電極と粘着剤との間にフクレが発生する原因となる可能性がある。
【0015】
[アクリル重合体]
本発明におけるアクリル重合体は、官能基を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステルとカルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体との共重合体である。カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体は架橋剤を用いる場合の反応点なり、架橋により粘着力や凝集力や耐熱性の制御が可能となるためである。カルボン酸量は、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体を増やすことにより増加する。
なお、本発明における「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタリル酸の総称である。
【0016】
アクリル重合体を構成する官能基を持たない(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体が挙げられるが、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
【0017】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル酸系単量体としては(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、無水フマル酸等が挙げられる。
【0018】
本発明はカルボキシル基含有単量体を含有することが特徴であるが、発明の効果を損なわない限り、カルボキシル基以外の官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体を使用することができる。
【0019】
カルボキシル基以外の官能基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルの単量体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、モルホリルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−tert−ブチルアミノエチルアクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基などが挙げられ、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
【0020】
粘着剤を重合する際には、例えば、溶液重合法を適用することができる。
溶液重合法としては、イオン重合法やラジカル重合法など挙げられる。その際に使用される溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
また、溶液重合法以外の方法、具体的には、塊状重合法、懸濁重合法、乳化重合法で重合しても構わない。
【0021】
本発明の粘着剤が前記官能基を有する単量体を用いた共重合体の場合は、架橋剤を配合することにより架橋処理を施すことができる。
架橋剤としては、例えば、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、アジリジン化合物、金属キレート化合物、ブチル化メラミン化合物などが挙げられ、これらは必要に応じ2種類以上を併用しても良い。
これら架橋剤の中でも、アクリル重合体を容易に架橋できることから、イソシアネート化合物、エポキシ化合物が好ましい。さらに好ましくは、金属腐食防止の点でエポキシ化合物が良い。
イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラグリシジルキシレンジアミン、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
架橋剤の含有量は、所望とする粘着物性に応じて適宜選択することができ、金属腐食防止の点で1〜10質量部が好ましく、さらに再剥離性および粘着特性の変化が少ない4〜8質量部が好ましい。
【0022】
[その他添加剤]
粘着剤には、必要に応じて、粘着付与剤、シランカップリング剤、金属腐食防止剤などの他の添加剤が含まれてもよい。
粘着付与剤として、例えば、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂、クマロンインデン系樹脂、スチレン系樹脂、キシレン系樹脂、フェノール系樹脂、石油樹脂などが挙げられる。
シランカップリング剤としては、例えば、メルカプトアルコキシシラン化合物(例えば、メルカプト基置換アルコキシオリゴマー等)などが挙げられる。
金属腐食防止剤としては金属と錯体を形成し金属表面に皮膜を作ることにより腐食を防止するタイプが好ましく、特にベンゾトリアゾール系金属腐食防止剤が好ましい。
【0023】
(光学用粘着シート)
本発明の光学用粘着シートは、上述した粘着剤から形成された粘着剤層を備えるものである。
粘着シートは、粘着剤層の他に、例えば、表面基材、剥離シートなどを備えても良い。
表面基材としては、例えば、透明樹脂製フィルムなどが挙げられる。透明樹脂製フィルムを構成する樹脂としては、例えば、ポリスチレン、スチレンーアクリル共重合体、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETという。)、ポリカーボネート、ポリエーテルケトン、トリアセチルセルロースなどが挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れることから、PETが好ましい。ここで、透明とは、可視光に対して透明であることを意味する。
剥離シートとしては、例えば、各種プラスチックフィルムにシリコーン等の剥離剤を塗布して剥離剤層を形成したもの、ポリプロピレンフィルム単体などが挙げられる。
【0024】
本発明の粘着剤層を介して2枚の剥離シートで挟んだ両面粘着シートの構成にする場合は、剥離力の軽い側の剥離シート(以下、軽剥離セパレータという)の剥離速度300mm/分、剥離角度180度における剥離力(以下、単に剥離力という場合は、剥離速度300mm/分、剥離角度180度における剥離力のことをいう。)と剥離力の重い側の剥離シート(以下、重剥離セパレータという)の剥離力は、重剥離セパレータの剥離力が軽剥離セパレータの剥離力の1.2〜10倍、好ましくは1.5〜5倍となるような組み合わせで軽剥離セパレータと重剥離セパレータを選択することが好ましい。
【0025】
粘着シートの製造方法としては、例えば、剥離シートの剥離剤層上に上述した粘着剤を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後、粘着剤層に表面基材を貼合する方法、表面基材の片面に上述した粘着剤を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後、粘着剤層に剥離シートを貼合する方法、剥離シートの剥離剤層上に上述した粘着剤を塗布し、乾燥して粘着剤層を形成した後、粘着剤層に剥離シートを貼合して両面粘着シートを得る方法などが挙げられる。中でも、両面粘着シートを製造する場合は、通常重剥離セパレータ側へ塗布乾燥した後に軽剥離セパレータと貼合することが好ましい。重剥離セパレータにポリプロピレンフィルム単体などの熱収縮の大きいフィルムを用いる場合は、軽剥離セパレータ側へ塗布しても良い。
粘着剤の塗布方法としては、例えば、メイヤーバーコータ、ロールコータ、ナイフコータ、グラビアコータ、リップコータ、カーテンコータ、ダイコータ等を用いた塗布方法が挙げられる。
【0026】
粘着剤の塗布量は厚さ10〜100μmであり、より好ましくは15〜50μmであることが好ましい。粘着剤の塗布量が厚さ10μm以上であれば、充分な粘着力を確保でき、長時間使用しても浮きや剥がれが生じにくくなる。一方、粘着剤の塗布量が100μm以下であれば、ディスプレイの大きさに粘着シートをカットする際にカット刃などに粘着剤が付着して不良率が上がるなどのトラブルが生じない。
【0027】
粘着力が10〜30mN/25mmとすることにより、光学部材の貼り合わせ時に、容易に再剥離することが可能である。粘着力が10mN/25mm以下では粘着力が低すぎるため、ITO電極に貼り付けた際に剥がれが生じる。また粘着力が30mN/25mm以上では粘着力が高いため、再剥離時にITO電極を損傷したり、ITO電極に糊残りが発生する虞れがある。好ましくは、バランスの点で15〜25mN/25mmである。
【0028】
<透明積層体>
次に、本発明の透明積層体の一実施形態について説明する。本実施形態の透明積層体1は、第1の透明基材40と第2の透明基材50とが、上記両面粘着シートの粘着剤層10によって接着されたものである(図1参照)。
【0029】
第1の透明基材40は両面粘着シート10側の面40aに凹凸が形成されたものである
。本実施形態では、第1の透明基材40は、タッチパネルに使用される位置入力装置用の
導電性シートであって、絶縁性基材41の片面に導電層42が設けられたものである。位
置入力装置としては、抵抗膜式、静電容量式等があるが、いずれの形式においても導電性
シートの両面粘着シート10側の面には電極43が設けられ、凹凸が形成されている。
導電性シートを構成する絶縁性基材41としては、例えば、ガラス板、ポリエチレンテ
レフタレートフィルム等が挙げられる。
【0030】
第2の透明基材50は、ポリカーボネート単層シート、ポリメチルメタクリレート単層
シート、ポリカーボネート・ポリメチルメタクリレート積層シート、トリアセチルセルロ
ースシート、シクロオレフィンポリマーシートのいずれかである。ポリカーボネート単層
シート、ポリメチルメタクリレート単層シート、ポリカーボネート・ポリメチルメタクリ
レート積層シート、シクロオレフィンポリマーシートは、加熱時にガスを発生することが
あるガス発生性基材である。また、トリアセチルセルロースシートは、環境の湿度に応じ
て水分を放出する水分放出性基材である。
第2の透明基材50が、ポリカーボネート単層シート、ポリメチルメタクリレート単層
シート、ポリカーボネート・ポリメチルメタクリレート積層シートのいずれかである場合
、保護機能を有する前面板として使用される。前面板として使用される第2の透明基材5
0の厚さは 0.1〜3mmであることが好ましい。第2の透明基材50厚さが前記下限
値以上であれば、充分な剛性および硬度を有し、前記上限値以下であれば、透明性がより
高くなる。
第2の透明基材50がトリアセチルセルロースシート、シクロオレフィンポリマーシー
トである場合には、偏光板の一部を構成する。
【0031】
第2の透明基材50の片面又は両面には、傷防止のためにアクリル系樹脂などからなる
ハードコート層が設けてられてもよい。また、第2の透明基材50は、両面粘着シート1
0側の面50aに印刷のインクなどにより凹凸が設けられていてもよい。また、モアレ防
止のために、面50aの全面に微細な凹凸が設けられてもよい。第2の透明基材50の両
面粘着シート10側の面に設けられた凹凸に対しても、両面粘着シート10は凹凸追従性
に優れる。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0033】
(実施例1)
<粘着剤の調整>
攪拌機、温度計、還流冷却機、滴下装置、窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを封入後、溶媒である酢酸エチルを添加した。次いで、反応装置内に、アクリル単量体であるブチルアクリレート65質量部、メチルアクリレート30質量部、アクリル酸5部と、重合開始剤である2,2´−アゾイソブチロニトリル0.1質量部を添加し、攪拌しながら窒素ガス気流中、溶媒の還流温度で8時間重合した。反応終了後、トルエンを添加してアクリル重合体溶液を得た。このアクリル重合体のカルボン酸量は45mgKOH/g、ガラス転移温度は−25℃であった。
次いで、該粘着剤主剤固形分100質量部に対して、架橋剤であるトリレンジイソシアネート(品名:コロネートL、日本ポリウレタン社製)1部、を混合して粘着剤溶液を得た。
【0034】
<粘着シートの作製>
上記粘着剤を、ナイフコータにより、厚さ38μmのPET剥離フィルム(品名:RL07(2)#38、王子特殊紙社製)に、乾燥後の塗工量が25μm/mになるように塗工し、100℃で2分間乾燥させて、粘着剤層を得た。次いで、該粘着剤層の表面に厚さ100μmの透明フィルム(品名:コスモシャインA4300、東洋紡社製)に貼合して、PET透明フィルム/粘着剤層/PET剥離フィルムの構成を備える粘着シートを得た。
【0035】
(実施例2)
実施例1の<粘着剤の調整>において、アクリル単量体であるブチルアクリレート65質量部、メチルアクリレート25質量部、アクリル酸10部に変更したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤溶液を得た。このアクリル重合体のカルボン酸量は50mgKOH/g、ガラス転移温度は−15℃であった。そして、この粘着剤溶液を用い、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0036】
(実施例3)
実施例1の<粘着剤の調整>において、アクリル単量体であるブチルアクリレート60質量部、メチルアクリレート20質量部、アクリル酸20部に変更したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤溶液を得た。このアクリル重合体のカルボン酸量は55mgKOH/g、ガラス転移温度は−5℃であった。そして、この粘着剤溶液を用い、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0037】
(実施例4)
実施例1の<粘着剤の調整>において、架橋剤であるトリレンジイソシアネート 1部の代わりに、エポキシ系架橋剤(品名:デナコールEX−50、ナガセケムテックス社製)
1部を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0038】
(実施例5)
実施例1の<粘着剤の調整>において、架橋剤であるトリレンジイソシアネート 1部の代わりに、エポキシ系架橋剤(品名:デナコールEX−50、ナガセケムテックス社製)
6部を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0039】
(実施例6)
実施例1の<粘着剤の調整>において、架橋剤であるトリレンジイソシアネート 1部の代わりに、エポキシ系架橋剤(品名:デナコールEX−50、ナガセケムテックス社製)
10部を用いた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0040】
(比較例1)
実施例1の<粘着剤の調整>において、アクリル単量体であるブチルアクリレート65質量部、メチルアクリレート33質量部、アクリル酸2部に変更したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤溶液を得た。このアクリル重合体のカルボン酸量は10mgKOH/g、ガラス転移温度は−40℃であった。そして、この粘着剤溶液を用い、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0041】
(比較例2)
実施例1の<粘着剤の調整>において、アクリル酸を添加しないこと以外は実施例1と同様にして粘着剤溶液を得た。このアクリル重合体のカルボン酸量は0mgKOH/g、ガラス転移温度は−80℃であった。そして、この粘着剤溶液を用い、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0042】
(比較例3)
実施例1の<粘着剤の調整>において、アクリル単量体であるブチルアクリレート65質量部、メチルアクリレート28質量部、アクリル酸7部に変更したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤溶液を得た。このアクリル重合体のカルボン酸量は35mgKOH/g、ガラス転移温度は−20℃であった。そして、この粘着剤溶液を用い、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0043】
(比較例4)
実施例1の<粘着剤の調整>において、アクリル単量体であるブチルアクリレート60質量部、メチルアクリレート15質量部、アクリル酸25部に変更したこと以外は実施例1と同様にして粘着剤溶液を得た。このアクリル重合体のカルボン酸量は65mgKOH/g、ガラス転移温度は−2℃であった。そして、この粘着剤溶液を用い、実施例1と同様にして粘着シートを得た。
【0044】
(評価方法)
各実施例および各比較例の粘着シートについて、23℃50%の環境下に7日間放置して養生した。こうして得られた粘着シートについて粘着力、再剥離性、耐久性及び金属腐食を以下の方法により測定した。それらの結果を表1に示す。
【0045】
<粘着力>
各粘着シートを25mm×60mmに裁断後、軽剥離セパレータを剥がしてガラス板に2kg荷重ロールで圧着し、常温で30分間放置した。その後、引張試験機(型式:オートグラフAGS−J、島津製作所社製)を用い、
JIS−Z0237に準じて引張速度300mm/分で180度剥離した際の剥離強度を測定し、その剥離強度を粘着力とした。
結果を表1に示した。
【0046】
<再剥離性>
各粘着シートを25mm×60mmに裁断後、軽剥離セパレータを剥がしてガラス板に2kg荷重ロールで圧着し、常温で30分間放置した。その後、粘着シートを手はがしして、ガラス板の糊残りを目視にて確認した。
○:粘着シートを剥がす際にガラス板の糊残りがまったくない。
△:粘着シートを剥がす際にガラス板の一部で糊残りが発生する。
×:粘着シートを剥がす際にシートの透明PETから糊が完全にはがれガラス板上に糊が転写する。
【0047】
<耐久性>
各粘着シートを25mm×60mmに裁断後、軽剥離セパレータを剥がしてガラス板に2kg荷重ロールで圧着し、150℃で30分間放置した。その後、引張試験機(型式:オートグラフAGS−J、島津製作所社製)を用い、
JIS−Z0237に準じて引張速度300mm/分で180度剥離した際の剥離強度を測定し、その剥離強度を粘着力とした。
結果を表1に示した。
【0048】
<金属腐食評価>
各粘着シートを25mm×60mmに裁断後、軽剥離セパレータを剥がしてITO基板に2kg荷重ロールで圧着し、40℃、90%RHで1週間放置した。その後、変色の状態を観察した。
◎:変色なし
○:一部変色した。
△:少し変色した。
×:実用上問題になるレベル。
【0049】
【表1】

【0050】
表1から明らかなように、粘着力が10mN/25mm〜30mN/25mmであり、該粘着剤層のアクリル系粘着剤のカルボン酸量が40mgKOH/g以上であり、ガラス転移温度が−30℃〜−10℃の実施例1、2の粘着シートでは、添加量が4.0質量部であっても紫外線透過率が2%以下であり、十分な紫外線吸収性能があった。
また、ガラス転移温度が−5℃の実施例3の粘着シートでも粘着力が11N/25mm以上であり使用上十分な粘着力を保有し、再剥離性、耐久性も問題ないものであった。
また、実施例4〜6の粘着シートでは、さらに金属腐食に優れた粘着シートが得られた。
【0051】
一方、これに対し、粘着力が30mN/25mm以上でありであり、該粘着剤層のアクリル系粘着剤のカルボン酸量が40mgKOH/g以下の比較例1および比較例2、比較例3では、再剥離性がなく、150℃、30分処理後の粘着力が処理前に比べて2倍以上に増加しており耐久性の劣る粘着シートであった。
また、粘着力が5mN/25mm以上でありであり、該粘着剤層のアクリル系粘着剤のカルボン酸量が65mgKOH/gの比較例4では粘着力が低すぎるため、貼り付けた際に剥がれが生じた。
【符号の説明】
【0052】
1 透明積層体
10 粘着剤層
40 第1の透明基材
41 絶縁性基材
42 導電層
43、43´ 電極
50 第2の透明基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル重合体を主成分とする光学用粘着剤であって、
光学用粘着剤のカルボン酸量が40mgKOH/g以上であり、かつ粘着力が10〜30mN/25mmであることを特徴とする光学用粘着剤。
【請求項2】
光学用粘着剤のガラス転移温度が−30℃〜−10℃の範囲内である請求項1記載の光学用粘着剤。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれかに記載の光学用粘着剤から形成された粘着剤層を備えることを特徴とする光学用粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−126783(P2012−126783A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−277936(P2010−277936)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000122298)王子製紙株式会社 (2,055)
【Fターム(参考)】