説明

光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物及びその積層体

【課題】耐候性を有し、格段に優れた耐熱性や耐湿熱性を発揮できるとともに、基材に塗装後の乾燥性にも優れ、塗膜の生産性を充分に向上することができる光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を用いた積層体を提供する。
【解決手段】2,4−ジフェニル−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジンなど特定のトリアジン型紫外線吸収性単量体と、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体とを必須とする単量体混合物を重合した重合体を含有する光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物及びこれを用いた積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物及びその積層体に関する。より詳しくは、液晶表示装置やプラズマディスプレイ等の薄型ディスプレイの他、種々の用途に用いられる光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を用いた積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車や土木・建築等各種の分野においては、紫外線(UV)等による劣化を防ぐために紫外線吸収剤や光安定剤等の添加剤が広く用いられており、例えば、これらの添加剤を含有する層をポリカーボネート等の樹脂基材上に形成することにより劣化を防ぐ対策が採られている。また、近年では、液晶表示装置やプラズマディスプレイ等の薄型ディスプレイにおいて、紫外線吸収剤(UVA)を用いることにより、基材劣化等を防止するための技術が種々検討されている。特に最近では、液晶表示の大型化、高輝度化により、液晶のバックライト(冷極陰管)からは以前にも増してUVや熱が発生しやすくなっていることから、このような光学分野において、より優れた紫外線遮断能を発揮することができる技術が要望されている。
【0003】
従来の紫外線遮断(UVカット)技術に関し、反応性ベンゾトリアゾールやベンゾフェノン型UVAを使用したUVカットポリマーが、液晶表示装置において白色反射フィルム基材のUVカットコーティング剤として基材劣化防止と輝度低下防止のために有用であることが開示されている(例えば、特許文献1、2参照。)。しかしながら、このような反応性ベンゾトリアゾールやベンゾフェノン型UVAを使用したUVカットポリマーからなる塗膜では、長期の耐熱性試験や高い温度での耐熱性試験後のUVカット機能が低下し、基材のUV劣化や塗膜自身が黄変するために輝度の低下を起こしやすいことから、優れた耐熱性を発揮できるようにするための工夫の余地があった。また将来、現在の冷極陰管のバックライトから発光ダイオード(LED)にとってかわる検討もされており、LEDとなると更に反射フィルム基材の高熱化が促進されるため、従来の反応性ベンゾトリアゾールやベンゾフェノン型UVAを使用したUVカットポリマーでは、高度な耐熱性の発現に限界がある。更に、このような高度の耐熱性の課題は、液晶ディスプレイに限らず、プラズマディスプレイにおいても同様に課題となる。
【0004】
また通常、光学用のUVカットフィルムは、PET等のプラスチックフィルム基材にUVカットコーティング剤が乾燥膜厚30ミクロン以下の薄膜で塗工された後、80〜130℃で数秒〜数十秒で乾燥され、ロール状に巻き取られて生産される。しかしながら、従来の反応性ベンゾトリアゾールやベンゾフェノン型UVAを使用したUVカットポリマーを含むコーティング組成物からなる塗膜は、熱乾燥後の乾燥性が充分ではなく、塗膜にタックがあるためにロール状に巻き取る前に充分に乾燥時間を長くする必要があることから、生産性を向上させてコストを充分に低減するための工夫の余地があった。また、乾燥温度を高くすると、ポリカーボネート等の耐熱性の低い基材では熱変形するため、乾燥温度を上げることができない。したがって、基材に塗装後の乾燥性にも優れ、乾燥温度を更に高温にせずとも充分に乾燥させることを可能とするための工夫の余地があった。
【0005】
従来のUVカット技術としてはまた、特定のトリアジン型の重合性紫外線安定性単量体を0.01〜10重量%含有する単量体成分を共重合して得られる共重合体を、溶媒に溶解等してなるメタクリル系ラッカー組成物(例えば、特許文献3参照。)や、特定のトリアジン型の重合性紫外線安定性単量体を0.01〜20重量%含む単量体成分を乳化重合して得られる乳化重合体を用いてなるエマルジョン型塗料用組成物(例えば、特許文献4参照。)、特定構造のトリアジン化合物等の紫外線吸収性単量体5〜50重量%を用いた紫外線吸収性重合体(例えば、特許文献5参照。)が開示されている。また、特定のトリアジン系モノマーと、炭素数4以上のアルキル基を有するモノマー及び/又は紫外線安定性基を有するモノマーとを含むモノマー混合物(I)から合成されるポリマーを含有する紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物から形成される色素増感型太陽電池(例えば、特許文献6参照。)や、UV吸収剤として、特定のトリアジン化合物が開示されている(例えば、特許文献7参照。)。しかしながら、これらの組成物等においては、耐候性のみならず耐熱性や塗装後の乾燥性等にも更に優れたものとすることにより、薄型ディスプレイ等の光学用途において特に好適に用いることができるようにするための工夫の余地があった。
【特許文献1】特開2001−166295号公報(第2、3頁)
【特許文献2】特開2002−182211号公報(第2、3頁)
【特許文献3】特許第3404160号公報(第1、2頁)
【特許文献4】特開平8−193180号公報(第2頁)
【特許文献5】特開2003−128730号公報(第2頁)
【特許文献6】特開2003−217690号公報(第2〜4頁)
【特許文献7】特開平8−259545号公報(第3、4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、耐候性を有し、格段に優れた耐熱性や耐湿熱性を発揮できるとともに、基材に塗装後の乾燥性にも優れ、塗工フィルムの生産性を充分に向上することができる光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を用いた積層体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、光学フィルムやシート等の光学用面状成型体に好適に用いられる紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物について種々検討したところ、トリアジン型UVAがベンゾトリアゾールやベンゾフェノン型よりも短波長の光を吸収する性質を有することに着目し、また、反応性のトリアジン型UVAはブリードアウトしにくいため、紫外線吸収能を充分に持続することができることに着目した。そして、トリアジン型紫外線吸収性単量体と炭素数4以上のアルキル基を含む単量体とを必須とする単量体混合物を重合してなる重合体を含有する樹脂組成物とすると、このような樹脂組成物により形成される塗膜が、格段に優れた耐熱性や耐湿熱性を発揮でき、また、基材に塗装後の乾燥性にも優れることを見いだし、液晶表示装置やプラズマディスプレイ等の薄型ディスプレイに代表される光学分野において特に好適に適用することができることを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到した。このような樹脂組成物において、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体としては、環状アルキル基を有する単量体であることが特に好ましく、これにより、本発明の作用効果をより充分に発揮することが可能となることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち本発明は、光学用面状成型体に用いられる紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物であって、上記樹脂組成物は、下記一般式(1);
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基若しくはアルコキシ基を表す。Xは、水素原子又はメチル基を表す。Aは、−(CHCHO)−、−CHCH(OH)−CHO−、−(CH−O−、−CHCH(CHOR)−O−、−CHCH(R)−O−、又は、−CH(CHCOO−B−O−を表す。Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Bは、メチレン基、エチレン基、又は、−CHCH(OH)CH−を表す。nは、1〜20の整数を表す。pは、0又は1を表す。)で表されるトリアジン型紫外線吸収性単量体と、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体とを必須とする単量体混合物を重合してなる重合体を含有する光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明の光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」又は「紫外線吸収性樹脂組成物」ともいう。)は、特に光学用面状成型体に好適に使用されるものであって、紫外線遮蔽層を形成するために用いられるものである。このような樹脂組成物は、トリアジン型紫外線吸収性単量体と、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体とを必須とする単量体混合物を重合してなる重合体(ポリマー)を含有するものである。
【0012】
上記樹脂組成物においては、トリアジン型紫外線吸収性単量体を共重合成分として使用することにより、得られる重合体に紫外線吸収能が付与されることとなる。すなわち、このような重合体を用いて得られる塗膜に紫外線が照射されても、遮蔽層で紫外線が吸収されるため、遮断層の下部に位置する基材や内容物等の劣化を充分に防止することが可能となる。また、このように上記単量体を共重合成分として使用することによって、紫外線吸収性基(UVA官能基)としてのトリアジン型骨格が、得られる重合体中に組み込まれることとなり、添加型紫外線吸収剤を用いる場合に比べて紫外線吸収剤のブリードアウトがほとんど生じないため、紫外線遮蔽能の持続性を高めることができる。更に、上記単量体を用いて得られる重合体においては、アルカリ金属イオンと塩を形成しないため、塗膜が着色せず、UVカット機能が低減しない、すなわち耐金属イオン性を発揮することが可能となる。
上記樹脂組成物においてはまた、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体を使用することにより、UVA官能基が熱分解しずらく、塗膜の熱黄変が少ない、すなわち優れた耐熱性や耐湿熱性を発揮することができる。
【0013】
まず、上記単量体混合物に含まれる単量体について更に説明する。
上記トリアジン型紫外線吸収性単量体としては、上記一般式(1)で表される単量体であれば特に限定されず、1種又は2種以上を使用することができる。具体例としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−メトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−エチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2−エトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエトキシフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジエチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)〕−s−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(11−メタクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル〕4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(11−アクリロイルオキシ−ウンデシルオキシ)フェニル〕4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(11−メタクロイルオキシウンデシルオキシ)フェニル〕−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクロイルオキシエトキシ)フェニル〕−1,3,5−トリアジン等を挙げることができる。中でも、下記一般式(2)〜(4)の化合物を用いることが好適である。
【0014】
【化2】

【0015】
上記トリアジン型紫外線吸収性単量体の使用量としては、単量体混合物の総量100質量%に対して、下限は20質量%、上限は80質量%であることが好ましい。20質量%未満であると、紫外線遮断能をより充分に発揮することができないおそれがあり、80質量%を超えると、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体が相対的に減少することとなり、充分な耐熱性や耐湿熱性を有することができないおそれがある。より好ましい下限は25質量%、上限は70質量%である。
【0016】
上記炭素数4以上のアルキル基を有する単量体としては特に限定されないが、例えば、下記一般式(5);
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R10は、水素原子又はメチル基を表す。Yは、炭素数が4以上の炭化水素基を表す。)で表される(メタ)アクリレート系単量体を用いることが好適である。
上記一般式(5)において、Yで表される炭化水素基としては、例えば、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロドデシル基等の炭素数4以上の脂環式炭化水素基;ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等の炭素数4以上の直鎖状又は分枝鎖状のアルキル基;ボルニル基、イソボルニル基等の炭素数4以上の多環式炭化水素基等が挙げられる。中でも、脂環式炭化水素基、分枝鎖状アルキル基又は多環式炭化水素基が好ましい。より好ましくは、脂環式炭化水素基又は多環式炭化水素基である。このように上記炭素数4以上のアルキル基を有する単量体が脂環式炭化水素基及び/又は多環式炭化水素基を有する単量体である形態は、本発明の好適な形態の1つである。
【0019】
上記一般式(5)で表される単量体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、特開2002−69130号公報で開示されているような(メタ)アクリル酸のシクロヘキシルアルキルエステル、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、トリシクロ[5,2,1,02.6]デカ−8−イル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。中でも、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートを用いることが好適である。
【0020】
上記炭素数4以上のアルキル基を有する単量体の使用量としては、単量体混合物の総量100質量%に対して、下限は5質量%、上限は70質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、耐熱性や耐湿熱性に優れた重合体が得られないおそれがあり、70質量%を超えると、トリアジン型紫外線吸収性単量体が相対的に減少することとなり、紫外線遮断能をより充分に発揮することができないおそれがある。また、塗膜の折り曲げ性が低下する。より好ましい下限は10質量%、上限は50質量%である。
【0021】
上記単量体混合物としては、更に、紫外線安定性基を有する単量体(紫外線安定性単量体)を含むことができる。この場合には、得られる樹脂組成物から形成される紫外線遮断層に紫外線安定性が付与されるとともに、上述した紫外線吸収性基の熱分解抑制効果を更に充分に発揮することが可能となり、紫外線遮断能の持続性をより一層向上することができる。なお、上記単量体混合物が、トリアジン型紫外線吸収性単量体、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体及び紫外線安定性基を有する単量体を必須とする形態は、本発明の好適な形態の1つである。
上記紫外線安定性基を有する単量体としては、分子中にラジカル重合性二重結合と紫外線安定性基とを共に有するものであれば特に限定されないが、例えば、下記一般式(6);
【0022】
【化4】

【0023】
(式中、R11は、水素原子又はシアノ基を表す。R12及びR13は、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。R14は、水素原子、炭化水素基又は−O−R15を表す。R15は炭化水素基を表す。Zは、酸素原子又はイミノ基を表す。)で表される単量体を用いることが好適である。
上記一般式(6)で表される単量体としては、例えば、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−シアノ−4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−クロトノイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0024】
上記紫外線安定性基を有する単量体の使用量としては特に限定されず、用途、種類、組み合わせ、所望する物性等により適宜設定すればよいが、例えば、単量体混合物の総量100質量%に対して、下限は0.1質量%、上限は20質量%であることが好ましい。このような範囲内に設定することにより、更に優れた耐熱性や耐湿熱性を発揮することが可能となる。より好ましい下限は0.5質量%、上限は5質量%である。
【0025】
上記単量体混合物としてはまた、塗膜の物性を用途に応じて設計変更するために、炭素数3以下のアルキル基を有する単量体を含むことができ、例えば、メチル(メタ)アクリレートやエチル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。これらの(メタ)アクリレートは、上述したトリアジン型紫外線吸収性単量体、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体及び紫外線安定性基を有する単量体との共重合性に優れ、硬く、機械的強度に優れた遮蔽層を形成する役割を担うことができるうえ、安価なため使いやすい。中でも、紫外線遮蔽層を有する積層体を形成するときの基材として、ポリカーボネート系樹脂やアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用する場合には、基材との密着性に優れた塗膜を形成できることから、メチルメタクリレートが特に好ましい。
上記炭素数3以下のアルキル基を有する単量体の使用量としては特に限定されず、用途、種類、組み合わせ、所望する物性等により適宜設定すればよいが、メチルメタクリレートを用いる場合には、トリアジン型紫外線吸収性単量体と炭素数4以上のアルキル基を有する単量体との合計質量と同量以下で使用することが好ましく、これにより、トリアジン型紫外線吸収性単量体の分解抑制効果をより充分に発揮させることが可能となる。
【0026】
上記単量体混合物としてはまた、塗膜物性の調整の目的で、架橋性官能基を有する単量体を含むことができ、この場合には、架橋性官能基を有する単量体を用いて重合体を合成し、別途硬化剤(架橋剤)を配合することによって、紫外線遮蔽層を架橋させることができる。
上記架橋性官能基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート等の酸性リン酸エステル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、脂環式エポキシ基含有(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製;商品名「CYCLOMER M−100」)等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、水酸基末端可撓性(メタ)アクリレート(例えば、ダイセル化学工業社製;商品名「プラクセルFM」)等の活性水素(ヒドロキシル)基を有する単量体、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有単量体等の1種又は2種以上を使用することができる。これらの中でも、ヒドロキシル基含有単量体を用いると共に、紫外線遮蔽層用樹脂組成物に硬化剤としてポリイソシアネートを含有させて、ヒドロキシル基とイソシアネート基との反応によって紫外線遮蔽層を架橋させることが好ましい。なお、上記架橋性官能基を有する単量体の使用量としては特に限定されず、用途、種類、組み合わせ、所望する物性等により適宜設定すればよい。
【0027】
上記単量体混合物としては更に、塗膜物性の調整の目的で、(メタ)アクリルアミド、イミド(メタ)アクリレート、シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等の含窒素単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2個の重合性二重結合を有する単量体;塩化ビニル等のハロゲン含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族系単量体;ビニルエーテル;3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン等の反応性シリル基含有単量体、パーフロロオクチルエチルアクリレート等の含フッ素単量体等の1種又は2種以上を使用することができる。なお、これらの単量体の使用量としては特に限定されず、用途、種類、組み合わせ、所望する物性等により適宜設定すればよい。
【0028】
本発明の樹脂組成物の製造方法においては、まず、樹脂組成物の主成分となる重合体を、上述した単量体混合物を重合することで製造することが好適である。
上記重合方法としては特に限定されず、例えば、溶液重合法、分散重合法、懸濁重合法、乳化重合法等の通常用いられる方法を使用することができる。中でも、溶液重合法が好ましく、この方法によると、得られた反応生成物をそのまま又は希釈するだけで、本発明の樹脂組成物を得ることが可能となる。溶液重合の際に用いる溶媒としては特に限定されず、例えば、トルエン、キシレン、その他の芳香族系溶媒;n−ブチルアルコール、プロピレングリコールメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、エチルセロソルブ等のアルコール系溶媒;酢酸ブチル、酢酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド等の1種又は2種以上を使用することができる。溶媒の使用量は、単量体濃度、重合体の所望の分子量、重合体溶液濃度等を考慮し適宜定めればよい。
【0029】
上記重合においては、重合開始剤を使用することができ、例えば、2,2’−アゾビス−(2−メチルブチロニトリル)、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド等の通常用いられるラジカル重合開始剤を使用することができる。重合開始剤の使用量は、重合体の要求特性等に応じて適宜決定すればよく、特に限定されないが、単量体混合物の総量100質量%に対して、下限は0.01質量%、上限は50質量%以下であることが好ましい。より好ましい下限は0.05質量%、上限は20質量%である。また、必要に応じて、例えば、n−ドデシルメルカプタン等の連鎖移動剤を1種以上添加し、重合体の分子量を調整してもよい。
【0030】
上記重合において、重合反応の温度としては特に限定されないが、例えば、室温〜200℃の範囲が好ましい。より好ましくは、40〜140℃である。また、反応時間は、用いる単量体混合物の組成や重合開始剤の種類等に応じて、重合反応が効率的に完結し得るように適宜設定すればよい。
【0031】
上記重合反応により得られる重合体(本発明の樹脂組成物の主成分となる重合体)において、分子量としては特に限定されないが、例えば、重量平均分子量(Mw)の下限が3000、上限が50万であることが好ましい。3000よりも小さい場合は、基材との耐湿熱試験後の密着性が充分とはならないおそれがあり、50万を超える場合は、塗装作業性が充分とはならず、プラスチック基材との耐湿熱試験後の密着性を優れたものとすることができないおそれがある。より好ましい下限は5000、上限は30万であり、更に好ましい下限は1万、上限は20万である。なお、上記重量平均分子量とは、東ソー社製の測定装置HLC8120、カラムはTSK−GEL GMHXL−Lを用いたときのポリスチレン換算の分子量を意味する。
【0032】
上記重合体としては、ガラス転移温度が−50℃以上、90℃以下であることが好適である。−50℃よりも低い場合は、基材との耐湿熱試験後の密着性が充分とはならないおそれがあり、90℃より高くなる場合は、塗装作業性を向上することができず、プラスチック基材との耐湿熱試験後の密着性や塗膜の折り曲げ性を充分なものとすることができないおそれがある。より好ましくは、−30℃以上であり、また、85℃以下である。
なお、ガラス転移温度としては、例えば、下記のようにして測定することができる。
(ガラス転移温度の測定方法)
重合後に得られたポリマー溶液を過剰のn−ヘキサンに投入して再沈殿を行い、取り出した沈殿物を真空乾燥(133Pa、80℃、6時間)することにより、揮発成分を除去した。次に得られた固形状の樹脂をメノウ鉢で粉砕し、50メッシュ金網で粒度を揃えたものを試料として以下の方法でガラス転移温度を測定する。
測定条件
装置;DSC220(セイコー電子工業社製)
試料量;5mg±0.5mg
昇温速度;10℃/分
雰囲気;窒素ガス、30ml/分
方法;DDSC(mW/min)の極大値をガラス転移温度とすることができる。
【0033】
本発明の樹脂組成物は、上記単量体混合物の重合により得られる重合体を含有するものであるが、塗工時の作業性等の観点からは、溶媒に該重合体を溶解させた溶液状態であることが好ましい。溶媒としては、上記溶液重合の際に例示した溶媒がいずれも使用可能である。溶液重合以外の方法で重合体を製造した場合は、重合後に、重合体を分取して溶媒に溶解させればよい。
【0034】
上記樹脂組成物としては、必要に応じて硬化剤や紫外線安定剤、その他種々の添加剤(材)を含むことができる。
上記単量体混合物において、上述した架橋性官能基を有する単量体を用いた場合には、該単量体の官能基と反応し得る官能基を有する硬化剤(架橋剤)を樹脂組成物に添加して、塗膜化の際に架橋反応を行わせることが好ましく、これにより、紫外線遮蔽層の各種特性が更に向上することとなる。硬化剤としては、用いられる単量体の官能基に応じて通常使用される各種硬化剤が使用可能である。中でも、上記架橋性官能基を有する単量体としてヒドロキシル基含有単量体を用いた場合には、硬化剤として、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物又はその変性物やアミノプラスト樹脂を使用することが好ましく、この場合には、速やかな架橋硬化反応が起こることとなる。
【0035】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等のジイソシアネート化合物;「スミジュールN」(住化バイエルウレタン社製)等のビュレットポリイソシアネート化合物;「デスモジュールIL」、「デスモジュールHL」(いずれもバイエルA.G.社製)、「コロネートEH」(日本ポリウレタン工業社製)等として知られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物;「スミジュールL」(住化バイエルウレタン社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物;「コロネートL」及び「コロネートL−55E」(いずれも日本ポリウレタン社製)等のアダクトポリイソシアネート化合物等の1種又は2種以上を使用することができる。また、これらの化合物のイソシアネート基を活性水素を有するマスク剤と反応させて不活性化した、いわゆるブロックイソシアネートも使用可能である。
上記アミノプラスト樹脂としては、例えば、メチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化メラミン樹脂、ブチルエーテル化ベンゾグアナミン系樹脂、ブチルエーテル化シクロヘキシルベンゾグアナミン系樹脂等及びこれらの水溶化物等が挙げられる。
なお、上記硬化剤の使用量は特に限定されず、用いられる単量体の量(重合体中の官能基量)に応じて、適宜増減すればよい。
【0036】
上記単量体混合物において、上記紫外線安定性基を有する単量体を用いずに重合体を製造した場合には、添加型の紫外線安定剤を用いることもできる。なお、紫外線安定性基を有する単量体を用いて重合体を製造し、かつ添加型の紫外線安定剤を併用することとしてもよい。添加型の紫外線安定剤としては、立体障害ピペリジン化合物を用いることが好ましく、例えば、市販品として、「チヌビン123」、「チヌビン144」、「チヌビン765」(いずれもチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)等が挙げられる。また、これらの比較的低分子量の紫外線安定剤はブリードアウトの可能性があるため、上記紫外線安定性基を有する単量体から別途重合体型の紫外線安定剤を合成し、これを添加してもよい。
上記紫外線安定剤の配合量は特に限定されないが、例えば、重合体100質量%に対して、下限が0.1質量%、上限が10質量%であることが好ましい。このような範囲内に設定することにより、紫外線遮蔽能をより長期的に維持できるとともに、耐熱性や耐湿熱性を充分なものとすることができる。
【0037】
上記樹脂組成物には、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、その他の樹脂を一部共存させることができる。このような樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂や樹脂自身の作用又は硬化剤(架橋剤)によって架橋硬化する熱硬化性樹脂が挙げられ、具体的には、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等の熱可塑性樹脂;ウレタン系樹脂、アミノプラスト系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂等の単独硬化型の熱・紫外線・電子線硬化性樹脂;ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化剤によって硬化する熱硬化性樹脂を挙げることができる。なお、これらの樹脂の種類や使用量は、用途や要求特性等に応じて適宜決定すればよい。
【0038】
上記樹脂組成物にはまた、塗料等の層形成用組成物に一般に使用されるレベリング剤、酸化防止剤、タルク等の充填剤、防錆剤、蛍光性増白剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、染料、増粘剤、コロイダルシリカ、アルミナゾル等の無機微粒子やポリメチルメタクリレート系のアクリル系微粒子等を添加してもよい。また、特開平7−178335号公報や特開平9−302257号公報に記載されているような無機微粒子の表面に有機重合体が固定された複合無機微粒子を添加することもできる。更に、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、インドール系等の有機系紫外線吸収剤や酸化亜鉛等の無機系紫外線吸収剤を一部含んでもよい。
【0039】
本発明の樹脂組成物としては、光学用面状成型体に用いられるものであるが、本願の面状の形態としては、フィルム状やシート状が好ましい。なお、フィルム状の成型体とシート状の成型体とを定義上で区別するため、膜厚が350μm未満のものをフィルム状の光学用面状成型体、膜厚が350μm以上のものをシート状の面状成型体と定義する。より好ましい用途としては、液晶やプラズマディスプレイ等の薄型ディスプレイに使用される光学フィルム又はシートであり、例えば、液晶用反射フィルムとして、PET/紫外線遮断層の構成フィルムに用いることができ、この場合には、ランプから発生する熱、紫外線による反射フィルム基材の劣化を防止してディスプレイの輝度低下を充分に防ぐことができる。液晶用反射フィルムとして具体的には、液晶表示装置バックライト用白色反射シート等が挙げられる。また、無機建材用コート剤に用いることも好ましく、この場合には、本発明の樹脂組成物が、無機建材に含まれるアルカリ金属イオンとの塩を形成しないので塗膜が着色しづらく、紫外線遮断能が低減しない。更に、自動車のヘッドライト、各種照明器具の反射材、光学ミラー等にも好適に用いることができる。
【0040】
本発明はまた、上記光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物から形成された紫外線遮蔽層を基材上に積層してなる積層体でもある。
上記積層体において、上記樹脂組成物は、基材の表面に紫外線遮蔽層を形成することとなるが、この際、基材の表面に直接又は必要に応じて帯電防止層、防眩(ノングレア)層、光触媒層や特開平7−178335号公報で開示されているような有機ポリマー複合微粒子を含む硬化性樹脂などの防汚層、反射防止層、シリコン系や多官能アクリル系樹脂等のハードコート層、電磁波遮断層、接着改善層(プライマー層等)、印刷層、熱線遮蔽層、粘着層、(半)透明無機蒸着膜等のガスバリア層等の種々の機能性コーティング層を各々積層塗工したり、本発明の紫外線遮断性積層体に紫外線遮断性積層体以外の機能性コーティング層が塗工された積層体を粘着剤や接着剤を介した積層体であっても良い。尚、各層の積層順序は特に限定はされるものでなく、積層方法も特に限定はされるものでない。上記樹脂組成物から得られる乾燥塗膜(紫外線遮蔽層)100質量%中には、上述した単量体混合物を重合して得られる重合体が50質量%以上含まれるように、上述した各種添加剤の量を調整することが好ましい。上記重合体が50質量%未満であると、塗膜の紫外線カット能力、耐熱性、耐湿熱性、乾燥性を充分なものとすることができないおそれがある。より好ましくは、80質量%以上である。
【0041】
上記積層体において、基材としては、プラスチック(樹脂)基材(基体)を用いることが好適であり、具体例には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、セロファン、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンテレフタレート(PPE)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルアミド(PEI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリテトラフルオロエチレン等の各種樹脂フィルム、石英ガラス、ソーダガラス等のガラス基体等を好適に使用することができる。また、O−PET(商品名、鐘紡社製)、ARTON(商品名、日本合成ゴム社製)、ZEONOX(商品名、日本ゼオン社製)、OPTOREZ(商品名、日立化成社製)も使用できる。更に下記一般式(7);
【0042】
【化5】

【0043】
(式中、R16、R17及びR18は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の有機残基を表す。尚、有機残基は酸素原子を含んでも良い。)で表されるラクトン構造を有する重合体からなるフィルムやシートを使用できる。なお、炭素数1〜20の有機残基としては、炭素数1〜20のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキレン基、芳香族基などを挙げることができる。
【0044】
上記プラスチック基材の形状や製法としては特に限定されないが、汎用性の高いものは、平板状や曲板状、波板状等の板状又はフィルム状のものである。また、木目印刷等の印刷を施した意匠性のある樹脂基材を使用することも可能である。またその他の添加剤を含んだプラスチック基材でも使用できる。例えば、ガラス繊維等の補強剤、無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤、有機系や無機系の充填剤、帯電防止剤、難燃性等が挙げられる。更に、ガラス等の無機質透明基材で作られた容器等の内容物を紫外線から守る目的で、無機質透明基材の表側に紫外線遮蔽層を設けることもできる。
上記樹脂組成物を基材に塗布する方法としては、例えば、浸漬、吹き付け、刷毛塗り、カーテンフローコート、グラビアコート、ロールコート、スピンコート、バーコート、静電塗装等の通常使用される塗工方法がいずれも採用可能である。
【0045】
上記樹脂組成物により形成される紫外線遮蔽層(UV吸収性塗膜)の厚さは、Lambert−Beerの法則により、重合体に導入されている紫外線吸収性基の量、すなわち重合の際のトリアジン型紫外線吸収性単量体の使用量に依存する。したがって、重合体中の紫外線吸収性基の量や、積層体に要求される耐候性や紫外線遮蔽性能を勘案して、層の厚さを決定すればよく、例えば、0.3μm以上、30μm未満であることが好ましい。0.3μmよりも薄い場合は、基材との耐湿熱試験後の密着性やUVカット能力が充分とはならないおそれがあり、30μm以上の場合は、塗膜の乾燥性を向上することができないおそれがある。より好ましくは、0.5μm以上、25μm未満であり、更に好ましくは、0.8μm以上、20μm未満である。
なお、上記樹脂組成物を基材に薄膜状に塗布して紫外線遮蔽層を形成するときの乾燥温度は、樹脂組成物に硬化剤(架橋剤)が配合されているか否かで適宜変更すればよく、一般的には室温〜200℃で乾燥させることが好ましい。
【0046】
本発明の積層体としては、基材と紫外線遮蔽層(基材と紫外線遮蔽層との間に上述した他の層があっても構わない)との積層構造であっても、紫外線遮蔽層が耐熱性、耐湿熱性、強度、耐候性等の種々の特性に優れるものであるため、このまま種々の用途に活用することができる。例えば、上述したように、液晶やプラズマディスプレイ等の薄型ディスプレイに使用される光学フィルムやシート等の光学用面状成型体に用いることが好適であり、具体的には、液晶用反射フィルムとして、PET/紫外線遮断層の構成フィルムに用いることができる。また、無機建材用コート剤や、自動車のヘッドライト、各種照明器具の反射材、光学ミラー等にも好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明の光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物は、上述のような構成であるので、耐候性を有し、格段に優れた耐熱性、耐湿熱性を発揮できるとともに、基材に塗装後の乾燥性にも優れ、塗膜の生産性を充分に向上することができることから、自動車のヘッドライト;液晶表示装置バックライト用白色反射シート等の反射フィルム;各種照明器具の反射材;光学ミラーの他、無機建材用コート剤等の種々の用途に好適に用いられるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
以下の合成例において、重量平均分子量は、東ソー社製の測定装置HLC8120、カラムはTSK−GEL GMHXL−Lを使用してポリスチレン換算の分子量として求めた。
なお、ガラス転移温度は、上述した方法にて測定した。
【0049】
合成例1
攪拌機、滴下口、温度計、冷却管及び窒素ガス導入口を備えた500mlフラスコにUVA−1(上記一般式(2)で示される化合物)を20部、シクロヘキシルメタクリレート35部、メチルメタクリレート38.5部、2−エチルヘキシルアクリレート5部、メタクリル酸0.5部、紫外線安定性モノマー「アデカスタブLA82」(商品名、旭電化工業社製)を1部、酢酸エチル100部の混合物を仕込んで窒素ガスを流入して攪拌しながら還流温度まで昇温した。一方、滴下槽に酢酸エチル20部と2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)を0.1部の混合物を仕込み1時間かけて滴下させた。滴下後も還流反応させ滴下を開始してから6時間後に冷却し、不揮発物が40%溶液となるように酢酸エチルで希釈した。重量平均分子量が282300、ガラス転移温度は81℃であるポリマー1を得た。
【0050】
合成例2〜9
原材料を表1に示すようにした以外は、合成例1と同様な方法でポリマー2〜9を得た。
【0051】
【表1】

【0052】
表1中の記載は、以下のとおりである。
UVA−1:上記一般式(2)で表される化合物
UVA−2:上記一般式(3)で表される化合物
UVA−3:上記一般式(4)で表される化合物
UVA−4:2−ヒドロキシ−4−(2−アクロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン(大阪有機化学工業社製;商品名「BP−1A」)
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
TBMA:tert−ブチルメタクリレート
IBX:イソボルニルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシメタクリレート
MAA:メタクリル酸
LA82:旭電化工業社製;商品名「アデカスタブLA82」
【0053】
実施例1
合成例1のポリマー1を100部とトルエン100gを配合して紫外線吸収性樹脂組成物を調製した。これを基材として片面が易接着処理された厚さ100ミクロンのPETフィルム(東洋紡社製「A−4100」)に塗装して100℃で2分間乾燥させて乾燥膜厚が10μmの塗膜を形成させた。以上の方法で作成した塗膜の乾燥性、折り曲げ性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性を評価した。結果を表2に示す。
【0054】
実施例2、実施例8、比較例1
乾燥膜厚以外は実施例1と同様な方法で塗工フィルムを作成し、塗膜の乾燥性、折り曲げ性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性を評価した。結果を表2に示す。
【0055】
実施例3
合成例3のポリマー3を100部、イソシアネート硬化剤「デスモジュールN3200」(商品名、住化バイエルウレタン社製)を9部、トルエン136gを配合して紫外線吸収性樹脂組成物を調製した。これを基材として片面が易接着処理された厚さ100ミクロンのPETフィルム(東洋紡社製「A−4100」)に塗装して100℃で2分間乾燥させて膜厚15μmの塗膜を形成させた。以上の方法で作成した塗膜の乾燥性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性を評価した。結果を表2に示す。
【0056】
実施例4〜7、実施例9、比較例2
乾燥膜厚以外は実施例3と同様な方法で塗工フィルムを作成し、塗膜の乾燥性、折り曲げ性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性を評価した。結果を表2に示す。
【0057】
なお、乾燥性、折り曲げ性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性は、以下の方法にて評価した。
〔乾燥性〕
100℃で2分間乾燥後の塗膜面に日本薬局方ガーゼを5枚重ねておき、100g(直径1cm)の分銅をのせた後、塗膜面にガーゼ跡がつかなくなるまでの時間を測定した。
〇(良好);30分未満
△(やや良好);30分以上1時間未満
×(劣る);1時間以上
〔折り曲げ性〕
塗工フィルムにおいてJIS K5600 5.1(2004年版)に基づいた屈曲試験を行い、塗膜の屈曲部にクラック、剥がれなどの異常が生じた時の心棒の直径を測定し、下記の評価基準で評価した。心棒の直径が小さいほど塗膜の折り曲げ性は優れることを意味する。
〇(良好);心棒が直径が6mm以下
△(やや良好);心棒の直径が8mm以上10mm以下
×(劣る);心棒の直径が12mm以上
【0058】
〔耐熱性〕
150℃の高温雰囲気中に塗工フィルムを1000時間、2000時間、3000時間放置し、試験前後の300nmでの透過率を分光光度計(島津製作所社製、「UV−3100」)で測定し、下記の計算式で300nmでの紫外線カット率の保持率を求め下記の基準で評価した。また塗膜の黄変度は、JIS K 7105(2004年版)に基づき色差計(日本電色社製、「SE−2000」)で試験前後のb値を測定し、b値の差(Δb=試験後のb値−試験前のb値)を求め、下記の評価基準で評価した。下記の基準で試験前後の黄変度の差で評価した。
(300nmでの紫外線カット率の保持率)
300nmでの紫外線カット率の保持率(%)={[100−試験後の300nmの透過率(%)]/[100−試験前の300nmの透過率(%)]}×100
〇(良好);95%以上
△(やや良好);90%以上95%未満
×(劣る);90%未満
(塗膜の黄変性)
〇(良好);Δbが0.5未満
△(やや良好);Δbが0.5以上1.0未満
×(劣る);Δbが1.0以上
【0059】
〔耐湿熱性〕
80℃で相対湿度95%RHの高温高湿雰囲気中に1000時間、2000時間、3000時間放置し、試験前後の300nmでの透過率を分光光度計(島津製作所社製、「UV−3100」)で測定し、下記の計算式で300nmでの紫外線カット率の保持率を求め下記の基準で評価した。また塗膜の黄変度は、JIS K 7105(2004年版)に基づき色差計(日本電色社製、「SE−2000」)で前記と同様に測定し、下記の評価基準で評価した。また、塗工フィルムをJIS K 5600−5−6(2004年版)に基づいた密着性試験を行い、下記の評価基準により評価した。
(300nmでの紫外線カット率の保持率)
300nmでの紫外線カット率の保持率={[100−試験後の300nmの透過率(%)]/[100−試験前の300nmの透過率(%)]}×100
〇(良好);95%以上
△(やや良好);90%以上95%未満
×(劣る);90%未満
(塗膜の黄変性)
〇(良好);Δbが0.5未満
△(やや良好);Δbが0.5以上1.0未満
×(劣る);Δbが1.0以上
(密着性)
〇(良好);異常なし
×(劣る);基材から界面剥離
【0060】
〔耐候性〕
塗工フィルムの紫外線吸収性塗膜面を紫外線オートフェードメーター(スガ試験機社製、商品名「FAL−AU−B」)の光源に向けて80℃の雰囲気下で960時間放置した。試験前後の300nmでの透過率を分光光度計(島津製作所社製、「UV−3100」)で測定し、下記の計算式で300nmでの紫外線カット率の保持率を求め、下記の基準で評価した。
(300nmでの紫外線カット率の保持率)
300nmでの紫外線カット率の保持率(%)={[100−試験後の300nmの透過率(%)]/[100−試験前の300nmの透過率(%)]}×100
〇(良好);95%以上
△(やや良好);90%以上95%未満
×(劣る);90%未満
【0061】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学用面状成型体に用いられる紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物であって、
該樹脂組成物は、下記一般式(1);
【化1】

(式中、R、R、R、R、R、R、R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子、又は、炭素数1〜10のアルキル基、アルケニル基若しくはアルコキシ基を表す。Xは、水素原子又はメチル基を表す。Aは、−(CHCHO)−、−CHCH(OH)−CHO−、−(CH−O−、−CHCH(CHOR)−O−、−CHCH(R)−O−、又は、−CH(CHCOO−B−O−を表す。Rは、炭素数1〜10のアルキル基を表す。Bは、メチレン基、エチレン基、又は、−CHCH(OH)CH−を表す。nは、1〜20の整数を表す。pは、0又は1を表す。)で表されるトリアジン型紫外線吸収性単量体と、炭素数4以上のアルキル基を有する単量体とを必須とする単量体混合物を重合してなる重合体を含有することを特徴とする光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物。
【請求項2】
前記炭素数4以上のアルキル基を有する単量体は、脂環式炭化水素基及び/又は多環式炭化水素基を有する単量体であることを特徴とする請求項1に記載の光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光学用面状成型体用紫外線遮蔽層形成用樹脂組成物から形成された紫外線遮蔽層を基材上に積層してなることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2006−89535(P2006−89535A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273986(P2004−273986)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】