説明

光学異方性化合物及びこれを含む樹脂組成物

本発明は、光学異方性が大きく、高分子樹脂との相溶性に優れた化1で表されるシリコン含有化合物に関する。また、本発明は、前記化合物及び高分子樹脂を含む樹脂組成物及び前記樹脂組成物を含む光学部材に関する。本発明の化1で表されるシリコン含有化合物は、高分子樹脂との相溶性に優れ、かつ光学異方性に優れている。従って、化1で表されるシリコン含有化合物を含む高分子樹脂組成物を用いて光学部材を製造することにより、相分離現象がなく、少量で目的の光特性を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子樹脂との相溶性に優れ、かつ高い光学異方性を有するシリコン含有化合物に関する。また、本発明は、前記化合物を含む樹脂組成物及び前記樹脂組成物を含む光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電子産業が発達するに従い、光学用高分子樹脂の使用が急増している。例えば、ストレージ媒体として使用される光ディスク基板、光学用レンズ、光通信に使用される光ファイバー、映写スクリーン用フレネルレンズ及び液晶ディスプレイに使用されるプリズムシート、偏光板保護フィルム、補償フィルムなど種々の光学用高分子に対する需要が急増している。
【0003】
このような光学用高分子樹脂は、通常光学的に等方性が要求されているが、高分子樹脂の構造または加工中の応力によって最終生産品の高分子樹脂が異方性を持つことがあり得る。また、光学樹脂が多層構造に挿入されている場合は、各層間での熱膨張/収縮などによって光学的に異方性を持つことがあり得る。
【0004】
このような光学異方性を持つフィルム、レンズなどが光路中に存在する場合、相変化を起こして信号読取りに悪影響を与えるおそれがあるため、異方性をできるだけ抑制した光学樹脂で構成される光学部材を使用することが好ましい。
【0005】
一方、人為的に光学的複屈折性を付与する場合もある。例えば、液晶ディスプレイでは、液晶と偏光フィルムに起因した光学的複屈折性によって、斜め方向から見た場合は、コントラストが低下するという問題点がある。この問題を改善するため、特定方向の光学的異方性を付与した高分子樹脂を用いて液晶と偏光フィルムに起因した複屈折性を補償することで、視野角を改善する方法もある。このように、光学的目的として使用される高分子樹脂においては、希望の方向に光特性を制御する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−129211号
【特許文献2】特開2000−44614号
【特許文献3】特開2004−35347号
【特許文献4】特開平8−110402号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高分子の光特性を制御する従来の技術としては、特開平2−129211及び特開2000−44614のように高分子樹脂の構造を調節して複屈折性を制御する方法が知られている。しかし、この方法は、複屈折性を制御するために共重合体のモノマー組成を変えるなどの煩わしさがあり、モノマーの組成変化による高分子樹脂の他の物性が変化するという問題点がある。
【0008】
また、高分子樹脂の複屈折性を制御する方法として、異方性物質を添加する方法が知られている。特開2004−35347号では、光特性を調節するため、異方性物質として針状の無機粒子を導入している。しかし、無機微粒子は、溶媒に対する溶解度が低く、密度が高いため、溶媒への均一な分散が難しく、安定性が落ちて凝集が起こり易くなり、高分子樹脂の透明性を害するおそれがある。また、特開平8−110402では、低分子有機化合物を添加して高分子樹脂の光特性を調節する方法が開示されている。しかし、通常、大きな異方性を持つ化合物は、結晶化度が高く、溶媒に対する溶解度が低くかつ高分子樹脂との相溶性が低いため、混合後、結晶化して析出されるという問題点があり、しかも、溶媒に溶解されないことがあるが、この問題に対する具体的な解決策は提示されていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、本発明の目的は、光学異方性が高く、少量使用で効果的に高分子樹脂の光学特性を制御することができると共に、溶媒に対する溶解度が優れており、高分子樹脂との相溶性に優れた、析出などの問題点がない光学異方性化合物を提供することにある。
【0010】
また、本発明の目的は、前記光学異方性物質及び高分子樹脂を含む樹脂組成物を提供することにある。
【0011】
本発明は、下記の化1で表されるシリコン含有化合物を提供する。
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、
【0014】
【化2】

【0015】
は、
【0016】
【化3】

【0017】
または
【0018】
【化4】

【0019】
を示し、
【0020】
【化5】

【0021】
は、
【0022】
【化6】

【0023】
または
【0024】
【化7】

【0025】
を示し、
【0026】
【化8】

【0027】
は、
【0028】
【化9】

【0029】
または
【0030】
【化10】

【0031】
を示し、
【0032】
【化11】

【0033】
は、
【0034】
【化12】

【0035】
または
【0036】
【化13】

【0037】
を示し、
乃至Q12は、それぞれ独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−CF、−OCF、−R、−OR、−NHR、−NRまたは−C(=O)Rを示し、
Zは、CまたはNを示し(ZがNの場合、対応するQ乃至Q12との結合は存在しない)、
l、m及びnは、それぞれ独立に、0〜2の整数を示し(l+m+nは、1以上の整数である)、
Y、G及びGは、それぞれ独立に、−(CHSiW(CH−、−O−、−NR−、−S−、−SO−、−SO−、−(CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−C(=O)O(CH−、−OC(=O)(CH−、−(CHC(=O)O−、−(CHOC(=O)−、−C(=O)(CH−、−(CHC(=O)−、−C(=O)NR−、−NRC(=O)−、−C(=O)S−または−SC(=O)−を示し(qは、0〜5の整数、r及びsは、それぞれ独立に0〜2の整数である)、
Eは、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−NCO、−NCS、−SiW、−R、−N(R、−OR、−CFまたは−OCFを示し、
乃至Xは、それぞれ独立に、−SiW−、−O−、−NR−、−S−、−SO−、−SO−、−(CH−、−C(=O)NR−、−NRC(=O)−、−NRC(=O)NR−、−C(=O)O−、−OC(=O)−または−OC(=O)O−を示し(pは、0〜2の整数である)、
は、−R、−OR、−NHRまたは−N(Rを示し、
は、−R、−OR、−NHRまたは−N(Rを示し、
乃至Rは、それぞれ独立に、−H、C〜C20のアルキル、C〜C20のフルオロアルキル、C〜C20のアルケニル、C〜C20のフルオロアルケニル、C〜C20のアルキニル、C〜C20のフルオロアルキニル、−(CHCHO)CH、−(CHCHCHO)CHまたは−(CHCHCHO)CHを示し(tは、1〜5の整数である)、
前記Y、G、G、E及びX乃至Xの少なくとも1つは、Si含有置換基を示す(前記Si含有置換基は、Y、G及びGの場合は、−(CHSiW(CH−、Eの場合は、−SiW、X乃至Xの場合は、−SiW−である))
【0038】
また、本発明は、高分子樹脂及び前記化1で表されるシリコン含有化合物を含む樹脂組成物を提供する。
【0039】
さらに、本発明は、前記樹脂組成物を含む光学部材を提供する。
【発明の効果】
【0040】
本発明の化1で表されるシリコン含有化合物は、高分子樹脂との相溶性に優れ、かつ光学異方性に優れた化合物である。従って、化1で表されるシリコン含有化合物を含む高分子樹脂組成物を用いて光学部材を製造することにより、相分離現象がなく、少量で目的の光特性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1及び図2は、それぞれ実施例3及び実施例4に係る相溶性評価の結果を示す光学顕微鏡写真(x5)である。
【図2】図3及び図4は、それぞれ比較例1及び比較例2に係る相溶性評価の結果を示す光学顕微鏡写真(x5)である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0043】
本発明の前記化1で表される化合物は、屈折率異方性が0.2以上の光学異方性化合物であって、必ず少なくとも1つのシリコン基を持つ化合物である。具体的には、前記化1において、前記Y、G、G、E及びX乃至Xの少なくとも1つは、Si含有置換基であり、前記Si含有置換基は、Y、G及びGの場合は、−(CHSiW(CH−、Eの場合は、−SiW、X乃至Xの場合は、−SiW−である。
【0044】
本発明の化1において、R乃至RのC〜C20アルキルとしては、例えば、−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CH(CH、−CHCHCHCH、−CH(CH)CHCH、−CHCH(CHなどの線状または分岐状アルキルが挙げられるが、これらに限定されない。なお、化1において、R乃至RのC〜C20のフルオロアルキルは、前述のように定義されたアルキル基に少なくとも1つのフルオロ基が水素の代わりに置換されたものであることができる。
【0045】
また、化1において、R乃至RのC〜C20のアルケニルとしては、例えば、−CH=CH、−CH=CHCH、−CCH=CH、−CHCH=CH、−CH=CHCHCH、−CH=C(CH、−CCH=CHCH、−CHCH=CHCH、−CHCCH=CH、−CHCHCH=CH、−CHCHCH=CHなどの線状または分岐状アルケニルが挙げられるが、これらに限定されない。なお、化1において、R乃至RのC〜C20のフルオロアルケニルは、前述のように定義されたアルケニル基に少なくとも1つのフルオロ基が水素の代わりに置換されたものであることができる。
【0046】
さらに、化1において、R乃至RのC〜C20のアルキニルとしては、例えば、−C≡CH、−CHC≡CH、−C≡CCH、−CHCHC≡CH、−CHCHC≡CH、−CHC≡CCH、−C≡CCHCHなどの線状または分岐状アルキニルが挙げられるが、これらに限定されない。なお、 R乃至RのC〜C20のフルオロアルキニルは、前述のように定義されたアルキニル基に少なくとも1つのフルオロ基が水素の代わりに置換されたものであることができる。
【0047】
また、前記化1において、l+m+nは、1以上の整数であり、好ましくは、1〜4の整数、より好ましくは、1〜3の整数である。
【0048】
本発明の化1で表される化合物は、種々の高分子樹脂との混合が容易で、低温でも溶解度が高く、液晶表示装置が通常使用される条件下で、物理的及び化学的に安定しており、かつ熱及び光に対しても安定している。
【0049】
これによって、前記化1で表される化合物は、種々の高分子樹脂と混合して高分子樹脂の光特性制御に使用されることができる。
【0050】
前記化1で表される化合物は、より詳しくは、下記の化合物の通りであるが、本発明に係る化合物は、これらに限定されない。
【0051】
【化14】

【0052】
前記化1で表される化合物の製造方法は、次の通りである。但し、下記の反応式は、例示に過ぎず、本発明に係る化合物の製造方法は、これらの反応式に限定されない。
【0053】
前記化1で表される化合物は、下記の反応式1で製造されることができる。
【0054】
[反応式1]
【0055】
【化15】

【0056】
(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、G、G及びEは、化1で定義した通りであり、L及びLは、それぞれ独立に、ハライド、メシラート、トシラートまたはトリフラートなどの脱離基を示す)
【0057】
反応式1において、トリメチルシリルアセチレンなどのアセチレン類とPd触媒を用いて上記のトラン化合物を製造することができる。
【0058】
また、前記化1で表される化合物は、下記の反応式2で製造されることができる。
【0059】
[反応式2]
【0060】
【化16】

【0061】
(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、W、W、r、s、G、G及びEは、化1で定義した通りであり、L及びLは、反応式1で定義した通りであり、LiまたはMgは、アニオンを形成し得る金属であって、Li、n−BuLi、Mgなどを意味する)
【0062】
また、前記化1で表される化合物は、下記の反応式3で製造されることができる。
【0063】
[反応式3]
【0064】
【化17】

【0065】
(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、G、G、R及びEは、化1で定義した通りであり、Lは、反応式1で定義した通りである)
【0066】
また、前記化1で表される化合物は、下記の反応式4で製造されることができる。
【0067】
[反応式4]
【0068】
【化18】

【0069】
(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、G、G及びEは、化1で定義した通りである)
【0070】
反応式3及び4において、アリール置換反応を用いてY=NR、O、Sなどのある化合物を合成することができ、酸化反応によりSO及びSOを導入することができる。
【0071】
また、前記化1で表される化合物は、下記の反応式5で製造されることができる。
【0072】
[反応式5]
【0073】
【化19】

【0074】
(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、q、G、G及びEは、化1で定義した通りであり、L及びLは、反応式1で定義した通りであり、LiまたはMgは、アニオンを形成し得る金属であって、Li、n−BuLi、Mgなどを意味する)
【0075】
反応式5のように、親核置換反応を通じてY=(CH、CH=CH、COの化合物を作ることができる。
【0076】
また、前記化1で表される化合物は、下記の反応式6で製造されることができる。
【0077】
[反応式6]
【化20】

【0078】
(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、q、G、G、R及びEは、化1で定義した通りであり、Lは、反応式1で定義した通りであり、LiまたはMgは、アニオンを形成し得る金属であって、Li、n−BuLi、Mgなどを意味する)
【0079】
また、前記化1で表される化合物は、下記の反応式7で製造されることができる。
【0080】
[反応式7]
【0081】
【化21】

【0082】
(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、q、G、G、R及びEは、化1で定義した通りであり、Lは、反応式1で定義した通りであり、LiまたはMgは、アニオンを形成し得る金属であって、Li、n−BuLi、Mgなどを意味し、Pは、保護基を示す)
【0083】
反応式6及び7によれば、COガスをバブリングしてCOH基を作ることができ、(MeSiO)を用いてOH基を導入することができる。ここに、SOCl、COCl、MsCl、TsCl、EDC、DCCなどを用いてエステル化合物を作ることができ、または、ディーン・スタークを用いてエステル化反応を行うことができる。
【0084】
本発明に係る化1で表される化合物の製造方法は、前記反応式1乃至7で使用した反応物と同一または類似した効果を奏する反応物を使用することができ、または、前記反応式1乃至7と類似したスキームで製造する方法をも含む。
【0085】
本発明に係る樹脂組成物は、高分子樹脂と本発明の化1で表されるシリコン含有化合物を含むものである。なお、前記化1で表されるシリコン含有化合物は、高分子樹脂の光学特性を制御する役割を果たすことができる。
【0086】
このような目的として使用する場合、前記化1で表されるシリコン含有化合物は、1種または2種以上を混合して使用することもできる。また、樹脂組成物内において高分子樹脂及び化1で表される化合物の使用量は、重量比で高分子樹脂:化1で表される異方性化合物=50:50〜99:1、好ましくは、70:30〜99:1、より好ましくは、80:20〜99:1であることができる。
【0087】
前記化1で表される化合物と混合可能な前記高分子樹脂は、特に制限されず、通常光学的目的として使用される高分子樹脂を使用することができる。例えば、前記高分子樹脂としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリケトンスルフィド、ポリエーテルスルホン、シクロオレフィンポリマー、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアクリレート、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール、ポリプロピレン、セルロース、トリアセチルセルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などが挙げられるが、これらに制限されない。なお、これらの高分子樹脂は、単独または2種以上を混合して使用することができ、使用量は、特に限定されない。
【0088】
また、本発明の樹脂組成物は、高分子樹脂と異方性化合物に加え、必要によっては有機溶媒を含むことができる。有機溶媒を含むことで、本発明の樹脂組成物を使用して基材上に塗布(コーティング)することが容易になる。
【0089】
前記有機溶媒としては、特に限定されず、当該技術分野で公知のものを使用することができる。例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ブチルベンゼンなどの炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ガンマ−ブチロラクトンなどのエステル類;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン類;t−ブチルアルコール、ジアセトンアルコール、グリセリン、モノアセチン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類;フェノール、パラクロロフェノールなどのフェノール類;メトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル類などが挙げられるが、これらに制限されない。また、これらの有機溶媒は、単独または2種以上を混合して使用することができ、使用量は、特に限定されない。
【0090】
また、本発明の樹脂組成物は、必要によって界面活性剤を含むことができる。界面活性剤は、基材上への塗布を容易にするため使用することができる。前記界面活性剤としては、特に限定されず、当該技術分野で公知のものを使用することができ、その添加量は、界面活性剤の種類、混合物の構成成分の組成比、溶媒の種類、基材の種類によって異なる。
【0091】
また、本発明の樹脂組成物は、他の添加剤として応力緩和剤、平滑化剤などを含むことができる。
【0092】
本発明に係る光学部材は、本発明の樹脂組成物を含む。
【0093】
なお、本発明の樹脂組成物を用いてフィルム状の光学部材を製造する場合、前記化1で表される化合物を含む樹脂固形分が、溶媒を含む全体樹脂組成物に対して、通常0.1〜90重量%、好ましくは、1〜50重量%、より好ましくは、5〜40重量%になるようにする。樹脂組成物の濃度が上記の範囲を下回る場合は、フィルムの厚さを確保し難くなり、上記の範囲を上回る場合は、溶液の粘度が大きすぎて均一な厚さのフィルムを得ることが難しい。
【0094】
また、本発明の樹脂組成物を使用して製造される前記フィルムは、一軸延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムであることができ、前記高分子フィルムは、親水性処理や疎水性処理などの表面処理が施されたものであることができ、積層フィルムまたはガラスであることができる。
【0095】
また、前記フィルムは、本発明の樹脂組成物を使用して、溶融成形法または溶剤キャスト法などで透明フィルムとすることができる。溶剤キャスト法による透明フィルムの製造では、前記樹脂組成物を、金属ドラム、スチールベルト、ポリエステルフィルム、テフロン(登録商標)などの支持体上に塗布し、ローラーを用いて乾燥炉で溶媒を乾燥させた後、支持体からフィルムを剥離して製造することができる。透明フィルム中の残留溶媒量は、通常10重量%以下、好ましくは、5重量%以下、より好ましくは、1重量%以下である。残留溶媒量が上記の上限を上回る場合は、フィルムの耐熱性が低くなる傾向を示す。なお、製造された透明フィルムは、一軸延伸または二軸延伸によって高分子樹脂の光特性を制御することもできる。
【実施例】
【0096】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。但し、これらの実施例は、本発明の例示に過ぎず、本発明はこれらに限定されない。
【0097】
(実施例1)
【0098】
【化22】

【0099】
1,4−ジブロモベンゼンを無水THF溶媒に溶かし、−78℃で1.0当量のn−BuLiを徐々に加えた。低温で2時間程度攪拌してアニオンを生成した後、1.05当量の化合物1を滴加した。滴加完了後、徐々に昇温し、常温で2時間程度攪拌を行った。反応終了後、ヘキサンと水で増量し、シリカゲルで精製することで、95%の収率で化合物2を得た。
【0100】
化合物2を無水THF溶媒に溶かし、−78℃で1.05当量のn−BuLiを徐々に加えた。低温で2時間程度攪拌してアニオンを生成した後、過量のCOをバブリングした。反応終了後、10%HClでpHを約3程度に調節し、エーテルと水で増量し、シリカゲルで精製することで、80%の収率で化合物3を得た。
【0101】
化合物3と4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルをCHClに溶解させ、ここに1.1当量のEDCと0.1当量のDMAPを入れ、常温で10時間程度攪拌を行った。反応終了後、CHClで増量し、ヘキセンで再結晶することで、85%以上の収率で最終化合物4を得た。この化合物4のHNMRは、下記の通りである。
1HNMR (400MHz, CDCl3): δ 0.30 (s, 6H), 0.69-0.81 (m, 2H), 0.85-0.93 (m, 3H), 1.20-1.39 (m, 8H), 7.62 (d, 2H), 7.35 (d, 2H), 7.67 (d, 2H), 7.70 (d, 2H), 7.74 (d, 2H), 8.17 (d, 2H).
【0102】
(実施例2)
【0103】
【化23】

【0104】
1,4−ジヨードベンゼンを無水THF溶媒に溶かし、−78℃で1.0当量のn−BuLiを徐々に加えた。低温で2時間程度攪拌してアニオンを生成した後、1.05当量の化合物5を滴加した。滴加完了後、徐々に昇温し、常温で2時間程度攪拌を行った。反応終了後、ヘキサンと水で増量し、シリカゲルで精製することで、92%の収率で化合物6を得た。
【0105】
化合物6をベンゼンに溶かし、0.1当量のCuI、0.03当量のPdCl(PPh、5.0当量のDBU、0.5当量のトリメチルシリルアセチレン及び0.4当量のHOを入れ、60℃で10時間程度攪拌を行った。反応終了後、10%HClとエーテルで増量し、シリカゲルで精製することで、83%の収率で最終化合物7を製造した。この化合物7のHNMRは、下記の通りである。
1HNMR (400MHz, CDCl3): δ 0.31 (s, 12H), 0.69-0.80 (m, 4H), 0.86-0.92 (m, 6H), 1.62-1.71 (m, 4H), 7.45-7.54 (m, 8H).
【0106】
(実施例3)相溶性の評価
【0107】
汎用のアクリレート高分子樹脂(Mw=100,000)90重量部と実施例1で合成した化合物10重量部をエチルアセテート400重量部(濃度=20wt%)に溶解させ、ガラス上に塗布した後、110℃で3分間焼いた。24時間常温で保管した後、表面から固体が析出されるか否かを光学顕微鏡または肉眼で確認し、その結果を図1に示した。相溶性評価の結果、24時間後も異方性化合物は析出されなかった。
【0108】
(実施例4)相溶性の評価
【0109】
実施例1で合成した化合物の代わりに、実施例2で合成した化合物を10重量部使用した以外は、実施例3と同様にして相溶性を評価し、その結果を図2に示した。相溶性評価の結果、24時間後も異方性化合物は析出されなかった。
【0110】
(比較例1)相溶性の評価
【0111】
【化24】

【0112】
p−ヒドロキシ安息香酸をエタノール:水=7:3の混合溶媒に溶かした後、1.0当量のブロモヘキサンと2.2当量のKOHを入れ、90℃で10時間程度攪拌を行った。エタノールを減圧蒸留した後、10%HCl(aq)を徐々に加えてpHを1〜3に調節した。生成した固体をろ過及び乾燥処理した後、1.0当量の4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニルと共にCHClに溶解させた。ここに1.1当量のEDCと0.1当量のDMAPを入れ、常温で10時間程度攪拌を行った。反応終了後、CHClで増量し、シリカゲルで精製することで、最終化合物8を製造した。
【0113】
実施例1で合成した化合物の代わりに化合物8を10重量部使用した以外は、実施例3と同様にして相溶性を評価し、その結果を図3に示した。相溶性評価の結果、フィルム製造後、常温で化合物8がフィルムの表面から析出した。
【0114】
(比較例2)相溶性の評価
【0115】
【化25】

【0116】
p−ヨードフェノールと同当量のブロモプロパンを1,4−ジオキサンに溶解させ、KCOベースでアルキル化反応を行った後、実施例2のPdカップリング反応から化合物9を得た。
【0117】
実施例1で合成した化合物の代わりに化合物9を10重量部使用した以外は、実施例3と同様にして相溶性を評価し、その結果を図4に示した。相溶性評価の結果、フィルム製造後、常温で化合物9がフィルムの表面から析出した。
【0118】
実施例3〜4及び比較例1〜2の結果から、化1で表される異方性シリコン化合物は、高分子樹脂との相溶性に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1で表されるシリコン含有化合物。
【化1】

(式中、
【化2】

は、
【化3】

または
【化4】

を示し、
【化5】

は、
【化6】

または
【化7】

を示し、
【化8】

は、
【化9】

または
【化10】

を示し、
【化11】

は、
【化12】

または
【化13】

を示し、
乃至Q12は、それぞれ独立に、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−CF、−OCF、−R、−OR、−NHR、−NRまたは−C(=O)Rを示し、
Zは、CまたはNを示し(ZがNの場合、対応するQ乃至Q12との結合は存在しない)、
l、m及びnは、それぞれ独立に、0〜2の整数を示し(l+m+nは、1以上の整数である)、
Y、G及びGは、それぞれ独立に、−(CHSiW(CH−、−O−、−NR−、−S−、−SO−、−SO−、−(CH−、−CH=CH−、−C≡C−、−C(=O)O(CH−、−OC(=O)(CH−、−(CHC(=O)O−、−(CHOC(=O)−、−C(=O)(CH−、−(CHC(=O)−、−C(=O)NR−、−NRC(=O)−、−C(=O)S−または−SC(=O)−を示し(qは、0〜5の整数、r及びsは、それぞれ独立に0〜2の整数である)、
Eは、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−NCO、−NCS、−SiW、−R、−N(R、−OR、−CFまたは−OCFを示し、
乃至Xは、それぞれ独立に、−SiW−、−O−、−NR−、−S−、−SO−、−SO−、−(CH−、−C(=O)NR−、−NRC(=O)−、−NRC(=O)NR−、−C(=O)O−、−OC(=O)−または−OC(=O)O−を示し(pは、0〜2の整数である)、
は、−R、−OR、−NHRまたは−N(Rを示し、
は、−R、−OR、−NHRまたは−N(Rを示し、
乃至Rは、それぞれ独立に、−H、C〜C20のアルキル、C〜C20のフルオロアルキル、C〜C20のアルケニル、C〜C20のフルオロアルケニル、C〜C20のアルキニル、C〜C20のフルオロアルキニル、−(CHCHO)CH、−(CHCHCHO)CHまたは−(CHCHCHO)CHを示し(tは、1〜5の整数である)、
前記Y、G、G、E及びX乃至Xの少なくとも1つは、Si含有置換基を示す(前記Si含有置換基は、Y、G及びGの場合は、−(CHSiW(CH−、Eの場合は、−SiW、X乃至Xの場合は、−SiW−である))
【請求項2】
前記l+m+nは、1〜3の整数であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン含有化合物。
【請求項3】
屈折率異方性が0.2以上であることを特徴とする請求項1に記載のシリコン含有化合物。
【請求項4】
下記の反応式1で製造されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
[反応式1]
【化14】

(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、G、G及びEは、請求項1で定義した通りであり、L及びLは、それぞれ独立に、ハライド、メシラート、トシラートまたはトリフラートを示す)
【請求項5】
下記の反応式2で製造されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
[反応式2]
【化15】

(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、W、W、r、s、G、G及びEは、請求項1で定義した通りであり、L及びLは、それぞれ独立に、ハライド、メシラート、トシラートまたはトリフラートを示す)
【請求項6】
下記の反応式3で製造されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
[反応式3]
【化16】

(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、G、G、R及びEは、請求項1で定義した通りであり、Lは、ハライド、メシラート、トシラートまたはトリフラートを示す)
【請求項7】
下記の反応式4で製造されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
[反応式4]
【化17】

(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、G、G及びEは、請求項1で定義した通りである)
【請求項8】
下記の反応式5で製造されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
[反応式5]
【化18】

(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、q、G、G及びEは、請求項1で定義した通りであり、L及びLは、それぞれ独立に、ハライド、メシラート、トシラートまたはトリフラートを示す)
【請求項9】
下記の反応式6で製造されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
[反応式6]
【化19】

(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、q、G、G、R及びEは、請求項1で定義した通りであり、Lは、ハライド、メシラート、トシラートまたはトリフラートを示す)
【請求項10】
下記の反応式7で製造されることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
[反応式7]
【化20】

(式中、環A、環B、環C、環D、l、m、n、q、G、G、R及びEは、請求項1で定義した通りであり、Lは、ハライド、メシラート、トシラートまたはトリフラートを示し、Pは、保護基を示す)
【請求項11】
高分子樹脂と請求項1乃至10のいずれか1つに記載のシリコン含有化合物を含む樹脂組成物。
【請求項12】
前記高分子樹脂:化1で表されるシリコン含有化合物の重量比は、50:50〜99:1であることを特徴とする請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
請求項11に記載の樹脂組成物を含む光学部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−528110(P2010−528110A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510233(P2010−510233)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003127
【国際公開番号】WO2008/150099
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】