説明

光学発汗計

【課題】 皮膚から蒸散する多量な発汗水分をサブシートに吸着させ、サブシートに水分子吸収波長光を照射・受光し、吸光度の相違から発汗量を測定する光学発汗計を提供する。
【解決手段】 被測定皮膚2の表面に出現した発汗を吸収したサブシート4の湿水分を水分子吸収波長の光を発光素子5から照射し、反射光を受光素子7により電気信号に変換して皮膚2から蒸散する発汗量を測定する。さらに、直流化回路13の出力をエアーポンプ駆動回路18に供給し、エアーポンプ11を駆動し、サブシート4の含有水分量が一定になる制御系を構成し、多量な発汗量を高応答で測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面から蒸散する発汗量を計測する光学発汗計に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、波長が異なる2種の単色光を測定部材に照射して水分率を求める水分測定方法としては、様々な装置や方法が提案されている。たとえば、被測定物に水分測定赤外線と参照赤外線とを照射し、被測定物から反射する2種の光量から吸光度を求め、該吸光度に基づいて被測定物の水分値を求める赤外線水分測定装置も提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、カプセルを皮膚面に着接した状態で、自然空気がカプセル内部空間に供給されて皮膚面からの汗と混合された後大気中に排気され、前記内部空間に供給前の自然空気の湿分とカプセル内部空間経由後の汗を混合した自然空気の湿分を2つ絶対湿度センサによりそれぞれ測定し、2つの絶対湿度センサの出力差分を演算して皮膚表面から蒸散する発汗量を計測する発汗計がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開平08−159960号
【特許文献2】特開2001−61791号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1に係る赤外線水分測定装置は、顕在する水分に光照射すると乱反射により正確に水分計測できないこと、様々な光反射面の光反射雑音除去のために参照光を必要とするという問題点がある。また、特許文献2の換気カプセル方式発汗計は、カプセル内部空間に供給される自然空気と皮膚蒸散水分を混合後、湿分検出センサに供給する方式のため、多量な発汗が惹起された場合、自然空気と発汗水分が十分混合されない状態で湿分検出センサに送風される恐れがあること、また、湿分検出センサのダイナミックレンジが狭く、装置出力が飽和するという制約がある。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、多量な発汗量を光学的に測定可能とする光学発汗計を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
皮膚に装着するプローブにあって皮膚に密着する部分にサブシートを設置して発汗水分をシートに吸収させ、水分子吸収波長の単色光源と単色光の受光手段をプローブの内部空間の天井面に設置し、皮膚に密着したサブシート面方向に単色光を照射し、サブシート面からの反射光を受光した受光手段から得られた電気信号により発汗量が計測できることを特徴とする。また、前記受光手段から出力される電気信号により制御される空気供給手段により前記内部空間に空気を供給し、内部空間流入空気がサブシートから蒸散する湿分を前記内部空間において混合・飛散させ、サブシートの含有水分量が一定になるように空気供給手段を制御できることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
上述した光学発汗計を用いれば、皮膚面に密着するプローブ開口面にサブシートを備え、発汗水分が吸収されたシートの含有水分を光学的に測定するので、光照射・反射面は物理的に一定状況であり、参照光を用いずにサブシート吸収水分量・発汗量を測定できる。また、サブシートの含有水分量が一定になるようなさサーボ系を構成しているため、多量な発汗量の変化分を高応答で測定できる。
この光学発汗計は、人の身体のプローブ装着部位を適宜選ぶことにより心身のコンディション等を多面的に知ることができる。また、ウソ発見器などとしても応用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る光学発汗計の最良の実施形態について添付図面とともに詳細に説明する。本実施形態は、多量に出現する発汗量を好適に測定できる。以下では、一例として皮膚表面の発汗量を測定する光学発汗計について説明する。しかし、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0009】
先ず、図1を参照して光学発汗計の概略構成について説明する。
図1において、1は光学発汗計である。光学発汗計1は被測定皮膚2の表面から蒸散する発汗量を検出する。計測器本体3には皮膚2の表面から蒸散する汗を吸収したサブシート4の水分吸収波長の光を照射する発光素子5を駆動する発光素子駆動回路6及びサブシート4からの反射光を受光する受光素子7からの電気信号を増幅する受光増幅回路8が設けられている。さらに、プローブ9の内部空間10に空気を送風するためのエアーポンプ11が設置されている。
【0010】
図1において、発光素子5は発振器12から出力する方形波信号が発光素子駆動回路6を駆動して点灯するようになっている。
【0011】
図1において受光素子7は皮膚2の表面から蒸散する汗を吸収したサブシート4からの反射光を受光して光電変換する。光電変換された電気信号は、受光増幅回路8において所定の増幅度で増幅された後に直流化回路13により直流変換されて演算部を構成しているマイクロコンピュータ14に供給される。マイクロコンピュータ14は直流変換された電気信号を発汗量の単位に変換して表示部15に発汗量を表示する。更にはマイクロコンピュータ14の発汗量データは計測信号としてアナログ出力され、ペンレコーダ等にリアルタイムで記録できるようにしてもよい。あるいは、外部パーソナルコンピュータに転送して解析表示することも可能である。
【0012】
図1においてエアーポンプ11は、エアーポンプ駆動回路18により駆動される。エアーポンプ駆動回路18には、エアーポンプ11を定常的に駆動するための直流電源19とサブシートの含有水分量に対応した直流的信号を獲得するための直流化回路13の出力信号が加算されて供給される。
【0013】
次に、図2を参照して皮膚面2に密着させて発汗量を検出するプローブ9の構成について説明する。プローブ9の開口部にはサブシート4が着脱可能に設置されている。プローブ9の天井面には発光素子5及び受光素子7が設置されている。サブシート4の水分飽和を避けるため、内部空間10にはフレキシブルパイプ16を介してエアーポンプ11から空気が送風されて対向する小穴17から排気される。
【0014】
図3は図2に示したプローブのA−A矢視断面図である。
【0015】
図4は着脱可能な吸水シート4の構成図である。(a)図は下面図、(b)は断面図である。サブシート4はプローブ9の開口部内側に着脱可能なように固定される。吸水シート4はサブシート固定用外リング4aと内リング4bに挟まれて固定される。
【0016】
サブシート4が着脱可能に設けられていると、発汗量測定被検者ごとに交換可能で衛生上も好ましく、被験者に嫌悪感を抱かせないことや、測定毎に新しいシートを用いれば常に光照射・受光の初期条件を一致させた測定が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】光学発汗計の全体的な構成を示した系統図である。
【図2】プローブの断面図である。
【図3】図2に示したプローブのA−A矢視断面図である。
【図4】サブシートの構成図である。
【符号の説明】
【0018】
1 光学発汗計
2 被測定皮膚
3 計測器本体
4 サブシート
4a サブシート固定用外リング
4b サブシート固定用内リング
5 発光素子
6 発光素子駆動回路
7 受光素子
8 受光増幅回路
9 プローブ
10 内部空間
11 エアーポンプ
12 発振器
13 直流化回路
14 マイクロコンピュータ
15 表示部
16 フレキシブルパイプ
17 小穴
18 エアーポンプ駆動回路
19 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の皮膚から蒸散する発汗量を局所的に測定するための発汗計であって、被験者の皮膚に密着されたプローブの皮膚側開口部に設置可能な吸・蒸発性に富む布あるいは用紙で形成されたサブシートを備えている光学発汗計。
【請求項2】
空気供給手段から可変流量で供給される空気供給通路を形成し、自然空気と被験者の皮膚に密着されたプローブの開口部に設置したサブシートに汗を吸収して蒸散する湿分とを混合・飛散させるための内部空間を形成した前記プローブにおいて、内部空間で前記空気供給手段から供給された空気と前記サブシートから蒸散する湿分とが混合・飛散された気湿を内部空間の外に排気させる排気通路を前記プローブに形成したことを特徴とする請求項1の光学発汗計。
【請求項3】
被験者の皮膚に密着されたプローブに配設されてサブシートの含有水分に吸収される波長の光を前記サブシート方向に照射する発光手段と、前記波長の光が前記サブシートに照射された場合の反射光を受光する受光手段と、前記受光手段から出力された電気信号に基づいて皮膚蒸散量を計測する演算手段を備えたことを特徴とする請求項1の光学発汗計。
【請求項4】
被験者の皮膚に密着されたプローブの開口部に設置したサブシートの含水分量が一定になるように内部空間に供給する空気流量を可変できる空気供給手段と電気回路を備えたことを特徴とする請求項1の光学発汗計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−296816(P2006−296816A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−124462(P2005−124462)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【出願人】(504237050)独立行政法人国立高等専門学校機構 (656)
【Fターム(参考)】