説明

光学的に情報を担持可能な手帳

【課題】光ファイバを用いることなく、光導波路および非光導波路が形成された情報担持層を備えた預金通帳などの手帳を提案すること。
【解決手段】預金通帳100の裏表紙112の内側面112bには、その全面に亘って光学的に情報を担持可能な情報担持層1が形成されている。情報担持層1は、コア層部分2Aが低屈折率の裏面層2Bおよび表面層2Cで挟まれた構成の本体シート層2の裏面2aにV溝5および遮光用のV溝7を形成し、紫外線硬化型レジン3を介して、通帳の裏表紙112に積層接着されている。V溝5で仕切られている各区画部6(n)のうち、遮光用の溝7のない区画部が光導波路として機能し、溝7が形成されている区画部が非光導波路として機能する。光ファイバを用いることなく、光導波路、非光導波路の組み合わせパターンにより情報を担持可能な情報担持層1を備えた預金通帳1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路および非光導波路の組み合わせにより光学的に情報を担持可能な手帳に関し、特に、預金通帳やパスポートなどの身分証明用の手帳として用いるのに適した光学的に情報を担持可能な手帳に関するものである。
【背景技術】
【0002】
預金通帳や身分証明書には一般に磁気ストライプが貼り付けられ、そこに各種の情報が磁気的に記録されている。また、所定波長の光によってのみ目視可能になる特殊塗料により隠し模様、文字などが印刷される場合もある。しかしながら、近年においては、このような情報が簡単に読み取られて、変造、改竄され、あるいは、偽造されることが多くなってきている。
【0003】
ここで、下記の特許文献1、2には、カード本体に多数本の光ファイバを平面状に配列した状態で埋め込み、これらの幾つかを切断あるいは押し潰しておくことにより、光の透過および遮断の組み合わせからなる光学式記憶領域を形成した構成のメモリカードが提案されている(特許文献1、2)。光ファイバは一旦切断あるいは押し潰されると、その部分を修復して元の光透過特性を得ることが実質的に不可能である。したがって、変造、改竄が困難である。
【特許文献1】特許第2682542号公報
【特許文献2】特許第2737841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献では、光ファイバを用いて光の透過および遮断の組み合わせからなる光学式記憶領域が形成されているので次のような問題点がある。まず、30〜200本程度の多数本の光ファイバを、一枚のカード内においてその平面方向に等ピッチで精度良く整列させた状態で接着固定することは、困難な作業である。また、光ファイバ同士の接合強度は接着剤強度に依存するので、光ファイバの接合強度が実用上不十分になる可能性が高い。さらに、光ファイバは一般に高価であり、これを多数本用いて構成される光学式記憶領域は磁気ストラプなどに比べて高価になり、実用的でない。
【0005】
そこで、本願人等は、これらの問題点を解消するために、PCT/JP03/15496において、光ファイバを用いることなく光学式記憶領域が形成された光シート体およびその製造方法と、かかる新しい光シート体を用いた光カードおよび複合メモリカードを提案している。
【0006】
本発明の課題は、上記提案の光シート体の構造を利用して、各種の情報を光学的に担持可能な預金通帳やパスポートなどの手帳を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の光学的に情報を担持可能な手帳は、少なくとも表紙および裏表紙を備えた手帳本体と、前記表紙および/または裏表紙における少なくとも一方の面に形成された情報担持層とを有し、前記情報担持層は、所定厚さのプラスチック製の本体シート層と、前記本体シート層の裏面に形成されている複数本の第1の溝と、
前記第1の溝に充填された状態で前記本体シート層の裏面を覆っている所定厚さの裏面保護層とを備え、前記本体シート層は、所定厚さの透明なコア層部分と、当該コア層部分の表面に形成されている表面側クラッド層部分とを備え、前記第1の溝の深さ寸法は前記本体シート層の厚さ寸法よりも小さく、隣接する前記第1の溝の間に形成された前記コア層部分の区画部がそれぞれ光導波路として機能することを特徴としている。
【0008】
ここで、前記表紙および裏表紙の間に少なくとも1枚の頁が綴じられている場合には、前記表紙および前記裏表紙の代わりに、当該頁における少なくとも一方の面に前記情報担持層を形成してもよい。
【0009】
また、手帳はその綴じ方向に直交する方向には曲がり易い。よって、前記光導波路は前記手帳本体の綴じ方向(縦方向)に沿って延びるように形成しておけば、折り曲げによる悪影響を受けないので好ましい。
【0010】
さらに、前記第1の溝の深さ寸法は、前記本体シート層の厚さ寸法の70〜80%としておけばよい。
【0011】
本発明の手帳の情報担持層では、表面側クラッド層部分が一体形成されているコア層部分を備えた本体シート層に、複数本の第1の溝を形成することにより、これらの第1の溝の間にそれぞれ区画部が形成されている。第1の溝の深さは本体シート層の厚さよりも浅いので、表面側クラッド層部分の表面側の部分は連続した状態のまま残る。したがって、各区画部は、裏面側クラッド層部分として機能する裏面保護層と表面側クラッド層部分によって外周が覆われており、その一端から入射した光を他端に導く光導波路として機能する。よって、光ファイバを用いることなく光学的に情報を担持可能な情報担持層を形成できる。
【0012】
ここで、本体シート層の裏面に積層した裏面保護層は裏面側クラッド層として機能するので、前記光導波路に通す使用光に対する屈折率が前記コア層とは異なるようにすると共に、光の漏洩を防止するために、当該使用光を吸収可能な光学特性を備えたものとすることが望ましい。
【0013】
また、前記裏面保護層は、接着剤あるいは着色塗料、または、接着剤および着色塗料の混合材料から形成することができる。
【0014】
次に、本体シート層としては接着性に優れたポリエチレンテレフタレート系の樹脂(PET樹脂)を用いることが望ましい。
【0015】
この構成の手帳の情報担持層において、光を通さない非光導波路を形成するためには、前記区画部に、実質的に前記第1の溝に対応する深さの遮光用の第2の溝を、隣接する前記第1の溝の間に架け渡すように形成すればよい。当該区画部の一方の端面から入射した光は、遮光用の第2の溝によって遮断され、他方の端面に導かれることがない。よって、光導波路および非光導波路の組み合わせにより所定の情報を光学的に担持可能である。
【0016】
次に、本発明の情報担持層では、第1の溝が本体シート層の厚さよりも浅く、その本体シート層の表面側の部分が連続したまま残っている。したがって、区画部には、ここを通って隣接する区画部に光が漏洩することを確実に防止することが望ましい。また、情報担持層の表面から不要光が各区画部に侵入することを確実に防止することが望ましい。
【0017】
このような光の漏洩あるいは侵入を防止するためには、前記本体シート層の表面側から不要光遮断用の第3の溝を形成することが望ましい。この場合、本体シート層の側方から見た場合に、前記第1の溝の底部分に当該第3の溝の底部分が重なるように、当該第3の溝の深さを設定すれば、光の漏洩を確実に阻止できる。
【0018】
特に、隣接した区画部に光が漏洩することを防止するためには、前記第3の溝を、各第1の溝の両側あるいは片側位置において当該第1の溝に平行に形成すればよい。
【0019】
また、本体シート層の表面側から不要光が各区画部に侵入することを防止するためには、前記第3の溝を、各第1の溝に交差する方向に複数本形成すればよい。
【0020】
さらに、非光導波路を形成している前記第2の溝が形成された非光導波路においても、これら第2の溝の下側に残っている本体シート層の連続部分を通って光が通ってしまう可能性がある。これを確実に防止するためには、前記第3の溝を、前記第2の溝の両側あるいは片側位置において当該第2の溝に平行に形成しておけばよい。
【0021】
ここで、第3の溝が形成されている本体シート層の表面には接着剤を塗布して、第3の溝に接着剤を充填すればよい。接着剤としては使用光を吸収可能で、本体シート層のコア層部分とは屈折率が異なる光学特性を備えたものを用いればよい。
【0022】
次に、前記第1、第2および第3の溝としてはそれぞれV溝を採用することができる。また、一般には、前記第1溝を所定間隔で平行に延びる直線状の溝として形成して、各溝によって区画された一定幅の直線状の光導波路および非光導波路を形成すればよい。さらに、手帳は一般に矩形の輪郭形状であるので、その上下の端に、光導波路および非光導波路の両端が露出するようにすればよい。
【0023】
一方、本発明の手帳は、情報担持層と共に、ICメモリチップを備えた構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の光学的に情報を担持可能な手帳では、PET樹脂などの本体シート層に、その裏面から溝を形成し、溝の間の区画部を光導波路として利用している。また、各区画部に選択的に遮光溝を形成して非光導波路を形成している。したがって、高価な光ファイバを平面方向に整列して接着固定することにより光導波路および非光導波路を形成する従来の構造に比べて、光学的に情報を担持可能な耐久性の高い情報担持層を、廉価に、しかも精度良く製造できる。よって、曲げ変形などを受け易い預金通帳やパスポートなどにおける情報担持部として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
(光学的に情報を記憶可能な預金通帳)
図1は、本発明を適用した預金通帳を示す斜視図である。本例の預金通帳100は一般的な長方形の冊子状の通帳本体110を備え、この通帳本体110は、紙製の表紙111および裏表紙112と、これらの間に閉じられている複数の頁113とを備えている。また、表紙111の外側面111aには磁気ストライプ114が貼り付けられており、ここに、各種の情報が担持されている。さらに、裏表紙112の内側面112bには全面に亘って情報担持層1が形成されている。この情報担持層1は光学的に情報を担持可能な層であり、ここにも光学的に各種の情報が担持されている。
【0027】
(情報担持層を備えた裏表紙)
図2(a)および(b)は、情報担持層1が形成された裏表紙112を示す斜視図および内部構造を示す説明図であり、図3は情報担持層1の本体シート層に形成された溝を示す説明図である。
【0028】
情報担持層1は、一定厚さの本体シート層2と、本体シート層2の裏面2aに形成した一定厚さの接着剤層3(裏面保護層)とを備え、この接着剤層3を介して、預金通帳の裏表紙112の内側面112bに積層接着されている。本体シート層2は、一定厚さのコア層部分2Aと、コア層部分2Aの裏面側に一体形成されている(コア層部分の屈折率よりも低い屈折率を備えた)低屈折率の裏面層部分2Bと、コア層部分2Aの表面側に一体形成されている同じく低屈折率の表面層部分2Cとからなるプラスチック製の可撓性のシート層である。
【0029】
本体シート層2の裏面2aには、一定の間隔でシート長辺方向、すなわち預金通帳100の上下方向に平行に延びる多数本の第1のV溝5が形成されている。各第1のV溝5の両端5a、5bはそれぞれ本体シート層2の上下のシート層端面2c、2dに露出している。各第1のV溝5の深さ寸法は、本体シート層2の厚さの約70〜80%の範囲内の値とされている。したがって、本体シート層2の裏面層部分2Bは各第1のV溝5によって完全に分断されているが、表面層部分2Cの一部は、第1のV溝5によって分断されずに連続状態のまま残っている。
【0030】
第1のV溝5の深さ寸法は、本体シート層2の曲げ強度などを所定以上に保持でき、また、連続した部分を介しての光の漏れ量が実用上、支障を来たすことのない範囲とする必要がある。一般的には、本体シート層2の厚さの70〜80%の範囲内とすればよいが、本体シート層2の素材の特性(光学特性や機械的特性など)に応じて、65%程度あるいは90%程度でも良い場合もある。
【0031】
各第1のV溝5の間に形成された本体シート層2の区画部6(1)、6(2)、6(3)・・・・6(n)(n:正の整数)のうち、例えば、区画部6(1)、6(3)・・・には、隣接する第1のV溝5の間に架け渡されるように、これらの第1のV溝5に直交する方向に第2のV溝(遮光溝)7が形成されている。
【0032】
各区画部6(n)は、その表面側が、本体シート層2の裏面層部分2Bと、この裏面に積層されていると共に溝5に充填されている接着剤層3によって覆われている。また、それらの表面側は、分断されずに連続した状態で残っている本体シート2の表面層部分2Cの部分によって覆われている。換言すると、裏面層部分2Bおよび接着剤層3は区画部6(n)の裏面側を覆う裏面側クラッド層として機能し、連続状態で残っている表面層部分2Cの部分は表面側クラッド層として機能する。
【0033】
よって、遮光用の第2のV溝7が形成されていない区画部6(2)、6(4)・・・は光導波路として機能し、一方のシート端面2cから入射した光を他方のシート端面2dに導く。これに対して、遮光用の第2のV溝7が形成されている区画部6(1)、6(3)・・・は非光導波路として機能し、一方のシート端面2cから入射した光は、遮光用の第2のV溝7によって通過が遮られ、他方のシート端面2dまで導かれることがない。
【0034】
したがって、光導波路および非光導波路を所定の配列パターンに従って形成しておき、検出光をシート端面2cから各区画部分6(1)〜6(n)に入射し、他方のシート端面2dの側に設置した光検出器によって各区画部分6(1)〜6(n)からの射出光の有無を検出すれば、光カード1に形成されている配列パターン(記憶情報あるいは担持情報)を読み取ることができる。
【0035】
本例では、本体シート層2はPET樹脂からなるシート層であり、その表面部分および裏面部分には熱処理が施されて、中心部分とは光学特性が異なっている。例えば、東洋紡株式会社製のものを用いることができる。接着剤層3としては、クラッド層として機能するようにPETシート層の中心部分とは屈折率が異なり、また、使用光を吸収可能な特性を備えた紫外線硬化型レジンを用いている。さらに、第1のV溝5は1mmピッチで形成されており、両側の傾斜面のなす角度が約60度であり、その深さは先に述べたように本体シート2の厚さの70〜80%とされている。第1のV溝5が浅すぎると、その下側の連続している部分を介して、隣接する区画部分6(n)の間で光の漏洩が発生するので好ましくない。第1のV溝5が深すぎると、本体シート層2の曲げ強度が低下してしまうので好ましくない。
【0036】
第1のV溝5に直交している第2のV溝7も同一寸法であり、非光導波路として機能する各区画部6(1)、6(3)・・・において、通帳下側のシート端面2cの側に2mmピッチで5本形成され、通帳上側のシート端面2dの側に同じく2mmピッチで5本形成されている。このように各区画部分6(1)、6(3)・・・における両端側に複数本の第2のV溝7を形成しておくと、入射光を完全に遮断可能な非光導波路を形成できる。すなわち、シート端面2cから入射した光は最初の5本の第2のV溝7で拡散して殆ど減衰し、次の5本の第2のV溝7によって完全に遮断される。
【0037】
このように、本例の預金通帳100では、その裏表紙112の内側面112bに、高価な光ファイバを用いることなく、光導波路および非光導波路が形成された情報担持層1を備えている。よって、光学的に情報を担持可能な情報担持層1と、磁気ストライプ114との組み合わせにより、偽造などの困難な安全性の高い預金通帳を作成できる。
【0038】
(情報担持層の他の実施の形態)
上記構成の情報担持層1は、第1の溝5が本体シート層2の厚さよりも浅く、その本体シート層2の表面側の部分が連続したまま残っている。この部分を通って不要な光が隣接する区画部6(n)に漏れることを確実に防止するためには、図4に示すように、情報担持層1の表面側に不要光遮断用の溝を形成することが望ましい。
【0039】
図4に示す情報担持層1Aにおいては、その本体シート層2の表面2bにおいて、裏面側の第1の溝5の隣接位置において溝5に平行に延びる第3のV溝8が形成されている。第3のV溝8の底が第1のV溝5の底よりも裏面側に位置するように、当該第3のV溝8の深さが設定されている。すなわち、本体シート層2の側方から見た場合に、双方の溝の底部分が重なる状態に形成されている。また、第3のV溝8には接着剤8aが充填されている。接着剤8aは、使用光を吸収可能であり、しかも、本体シート層2のコア層部分2Aとは異なる屈折率を備えた光学特性のものである。接着剤8aの代わりに、情報担持層1Aの仕上げ工程において本体シート層2の表面2bに所定の印刷を行うために用いるインクを用いて、第3の溝8を充填してもよい。この場合においても、使用するインクとしては、使用光を吸収可能であると共に、コア層部分2Aとは異なる屈折率を備えた光学特性のものを用いればよい。
【0040】
ここで、図4(b)において実線のV溝8および想像線のV溝8Aで示すように、第1のV溝5の両側に第3のV溝を形成してもよい。なお、第2のV溝7と第3のV溝8は交差して、交差部分においては本体シート層2に貫通部分が形成される。この貫通部分は接着剤層3が充填されて封止されることになる。これ以外の構成は図2に示す情報担持層1と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0041】
次に、情報担持層において、その表面側から不要光が光導波路に侵入することを確実に防止するためには、図5に示すように、情報担持層1の表面に、第1の溝5に交差する状態に1本、好ましくは複数本の溝を形成することが望ましい。すなわち、図5の情報担持層1Bでは、その本体シート層2の表面2bにおいて、その短辺側の端面2c、2dの側に、それぞれ3本ずつの第3のV溝9を形成してある。この場合においても、第3のV溝9の底が第1のV溝5の底よりも表面側に位置するように、当該第3のV溝9の深さを設定する。また、第3の溝9には接着剤9aが充填される。接着剤9aの光学特性は上記の接着剤8aと同様であり、接着剤9aの代わりに表面仕上げ用のインクを用いても良い。第1のV溝5と第3のV溝9の交差部分では、本体シート層2に貫通部分が形成されるが、この貫通部分には接着剤層3あるいは表面側から充填した接着剤9aが充填されて封鎖される。これらのV溝9を形成しておくことにより、表面2bからの不要光の侵入を確実に阻止することが可能である。なお、これ以外の情報担持層1Bの構成は図2の情報担持層1と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0042】
一方、情報担持層1における本体シート層2では、区画部を非光導波路6(1)、6(3)・・・とするために形成した第2のV溝7の下側部分も繋がっている。この部分を光が通ってしまうことを確実に防止するためには、図6に示すように、本体シート層2の表面2bの側に、第2の溝7の隣接位置に第3の溝10を形成しておくことが望ましい。この場合においても、第3のV溝10の底が第1のV溝5の底よりも裏面側に位置するように、当該第3のV溝10の深さを設定する。また、図6(c)に示すように、各第3のV溝10は、隣接するV溝5の間に形成する。溝10には接着剤10aが充填される。接着剤10の光学特性は上記の接着剤8a、9aと同様であり、接着剤10aの代わりに、表面仕上げ用のインクを充填してもよい。これらのV溝10を形成しておくことにより、第2のV溝7の下側を光が通過してしまうことを確実に阻止することが可能である。第3のV溝10を、各第2のV溝7の両側に形成してもよい。なお、これ以外の情報担持層1Cの構成は図2の情報担持層1と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0043】
ここで、上記の図4、図5および図6の構成の2つ、あるいは全てを組み合わせた構成を採用して、不要光の侵入を防止するようにしてもよいことは勿論である。
【0044】
(多層情報担持層の例)
図7は、図5に示す構成の情報担持層1Bの本体シート層2を3層に積層した構成を示してある。この多層本体シート層50は、図5の本体シート層2を接着層51を挟み積層接着したものである。この多層本体シート50の裏面52は、裏面保護層(図示せず)を介して、預金通帳の裏表紙112の内側面112bが積層接着されて、多層情報担持層が得られる。
【0045】
情報担持層を多層構成とすることにより、多段の光導波路および非光導波路を備えた、記憶容量が大きくセキュリティの高い預金通帳が得られる。
【0046】
(その他の実施の形態)
なお、上記の例は本発明の一例を示すものであり、本発明の光学的に情報を担持可能な手帳は、上記の各例の形状、構造、素材に限定されるものではない。例えば、本発明を、パスポートなどの身分証明用の手帳に適用することができる。また、情報担持層は、手帳の表紙、裏表紙の他、これらの間に綴じられている頁の表面に形成してもよい。
【0047】
さらに、上記の通帳では、磁気ストライプと情報担持部を用いて情報を記憶するようにしているが、ICメモリチップと情報担持部の組み合わせを用いることも勿論可能である。ICメモリチップは、例えば、手帳の表紙、裏表紙、あるいは、これらの間に閉じられている頁などに埋め込めばよい。また、ICメモリチップとしては接触型、非接触型のものが知られており、いずれも用いることが可能である。
【0048】
一方、手帳の輪郭形状としては、長方形輪郭ではなく、多角形輪郭などの別の輪郭形状であってもよい。また、V溝の代わりに、U溝などの異なる断面形状の溝を用いることもできる。さらに、接着剤層として、紫外線硬化型接着剤以外の接着剤を用いることも可能である。さらにまた、本体シート層の素材としてPET以外の樹脂を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を適用した預金通帳を示す斜視図である。
【図2】(a)および(b)は、図1の通帳の裏表紙に形成した情報担持層を示す斜視図および内部構造を示す説明図である。
【図3】図2の情報担持層の本体シート層を示す平面図である。
【図4】第3のV溝を備えた情報担持層の例を示す内部構造を示す説明図および部分断面図である。
【図5】第3のV溝を備えた情報担持層の例を示す内部構造を示す説明図および裏面図である。
【図6】第3のV溝を備えた情報担持層の例を示す内部構造を示す説明図、そのb−b線で切断した部分を示す部分断面図、およびc−c線で切断した部分を示す部分断面図である。
【図7】本発明を適用した多層情報担持部の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1、1A、1B、1C 情報担持層
2 本体シート層
2a 本体シートの裏面
2b 本体シートの表面
2c、2d 本体シートの上下の端面
2A コア層部分
2B 裏面層部分
2C 表面層部分
3 接着剤層
5 第1のV溝
7 第2のV溝
8、9、10 第3のV溝
8a、9a、10a 接着剤
5a、5b V溝の端
6(n) 区画部
100 預金通帳
110 通帳本体
111 表紙
112 裏表紙
113 頁
114 磁気ストライプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも表紙および裏表紙を備えた手帳本体と、
前記表紙および/または裏表紙における少なくとも一方の面に形成された情報担持層とを有し、
前記情報担持層は、
所定厚さのプラスチック製の本体シート層と、
前記本体シート層の裏面に形成されている複数本の第1の溝と、
前記第1の溝に充填された状態で前記本体シート層の裏面を覆っている所定厚さの裏面保護層とを備え、
前記本体シート層は、所定厚さの透明なコア層部分と、当該コア層部分の表面に形成されている表面側クラッド層部分とを備え、
前記第1の溝の深さ寸法は前記本体シート層の厚さ寸法よりも小さく、
隣接する前記第1の溝の間に形成された前記コア層部分の区画部がそれぞれ光導波路として機能することを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項2】
請求項1において、
前記表紙および裏表紙の間に少なくとも1枚の頁が綴じられており、前記表紙および前記裏表紙の代わりに、当該頁における少なくとも一方の面に前記情報担持層が形成されていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記光導波路は前記手帳本体の縦方向に延びていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項4】
請求項1、2または3において、
前記第1の溝の深さ寸法は、前記本体シート層の厚さ寸法の70〜80%であることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項5】
請求項4において、
前記裏面保護層は、前記光導波路に通す使用光を吸収可能であると共に、当該使用光に対する屈折率が前記コア層部分とは異なっていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項6】
請求項5において、
前記裏面保護層は、接着剤あるいは着色塗料、または、接着剤および着色塗料の混合材料から形成されていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項7】
請求項6において、
前記裏面保護層は少なくとも接着剤から形成されていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項において、
前記本体シート層はポリエチレンテレフタレート系の樹脂からなる光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項9】
請求項1ないし8のうちのいずれかの項において、
少なくとも一つの前記区画部に形成された少なくとも一本の遮光用の第2の溝を有し、
前記第2の溝の深さは、実質的に前記光導波路を規定している前記第1の溝の深さに対応する深さであり、
当該第2の溝は、隣接する前記第1の溝の間に架け渡されており、
当該第2の溝が形成された前記区画部が非光導波路となっている光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項10】
請求項1ないし9のうちのいずれかの項において、
前記本体シート層の表面に形成した不要光遮断用の第3の溝と、
前記本体シート層の表面において、少なくとも前記第3の溝に充填されている表面保護層とを有し、
前記本体シート層の側方から見た場合に、前記第1の溝の底部分に前記第3の溝の底部分が重なるように、前記第3の溝の深さが設定されていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項11】
請求項10において、
前記第3の溝は、各第1の溝の両側あるいは片側位置において当該第1の溝に平行に延びていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項12】
請求項11において、
前記第3の溝は、各第1の溝に交差する方向に延びる複数本の溝であることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項13】
請求項1ないし9のうちのいずれかにおいて、
前記本体シート層の表面に形成した不要光遮断用の第3の溝と、
前記本体シート層の表面において、少なくとも前記第3の溝に充填されている表面保護層とを有し、
前記本体シート層の側方から見た場合に、前記第1の溝の底部分に前記第3の溝の底部分が重なるように、前記第3の溝の深さが設定されており、
当該第3の溝は、前記第2の溝の両側あるいは片側位置において当該第2の溝に平行に延びていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項14】
請求項10ないし13のうちのいずれかの項において、
前記表面保護層は、前記光導波路に通す使用光を吸収可能であると共に、当該使用光に対する屈折率が前記コア層とは異なっていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項15】
請求項14において、
前記表面保護層は、接着剤あるいは着色塗料、または、接着剤および着色塗料の混合材料から形成されていることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項16】
請求項1ないし15のうちのいずれかの項において、
前記第1、第2および第3の溝はそれぞれV溝であることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項17】
請求項16において、
前記第1の溝は所定間隔で直線状に平行に延びる溝であることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項18】
請求項1ないし17のうちのいずれかの項において、
前記手帳本体は矩形形状のものであることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項19】
請求項18において、
前記光導波路および前記非光導波路の両端が、前記手帳本体の上下の端面に露出していることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項20】
請求項1ないし19のうちのいずれかの項において、
前記手帳本体は、預金通帳、または、パスポートなどの身分証明用の手帳であることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。
【請求項21】
請求項1ないし20のうちのいずれかの項において、
ICメモリチップを有していることを特徴とする光学的に情報を担持可能な手帳。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−159529(P2006−159529A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352166(P2004−352166)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(591236172)株式会社ハタ研削 (20)
【Fターム(参考)】