説明

光学的に純粋なアミノ酸を得る方法

本発明は、光学的分割および光学的変換を含んで、光学的に純粋なアミノ酸を得る方法に関する。本発明の方法は、光学変換時間が画期的に短縮され、キラル選択的受容体を含む有機溶液を反復的に使用することが可能なので、光学的に純粋なアミノ酸を簡単な方法によって非常に効率よく得ることができ、非常に経済的に量産することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的分割および光学的変換(optical conversion)を含む抽出法を用いて、光学的に純粋なアミノ酸を得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学的に純粋なアミノ酸は、不斉触媒(asymmetric catalyst)のリガンドとして使用されるか、或いは各種の医薬品および生理活性物質の合成に必要な出発物質または中間体として広範囲に使用されるので、産業的に非常に重要な化合物である(非特許文献1)。
【0003】
安くて経済的にアミノ酸を得る方法は発酵方法である。ところが、発酵によって得られるアミノ酸は天然アミノ酸のうちL−アミノ酸に局限されている。光学的に純粋なD−アミノ酸および非天然アミノ酸は、酵素法、光学分割法によって生産されているが、高い製造コストがかかるため、発酵により製造される天然L−アミノ酸に比べて単価が5〜10倍近く高く形成されており、量産化の実現に困難さがある(非特許文献2)。
【0004】
本発明者は、アルデヒド基を有する下記化学式のビナフトール誘導体を用いてイミン結合によってキラルアミノアルコールおよびアミノ酸のキラル性を認識し、L−アミノ酸をD−アミノ酸に変換させる方法を開発したことがある(非特許文献3、4)。
【0005】
【化1】

【0006】
前記ビナフトール誘導体は、アミノ酸とキラル選択的にイミンを形成し、DMSOなどの有機溶媒でアミノ酸のL−D光学変換を成し遂げることができる。既存の特許および論文(非特許文献5)に開示されたL−D光学変換方法は、DMSOで光学変換を成した後、溶液全体を水と有機溶媒を用いて抽出するのである。この方法において、アミノ酸は水層、ビナフトール誘導体は有機層に分離され、有機層のビナフトール誘導体は濃縮によって回収して再使用される。この方法でL−D光学変換を行う場合、光学変換にかかる時間が一般に24〜48時間であり、抽出の際にDMSO溶媒が水層と有機層に全て混込するので、DMSO溶媒を回収することができない。さらに、ビナフトール誘導体を回収するためにはDMSOを有機層から完全に除去しなければならないが、そのためには多量の水を使用しなければならず、ワーキングボリューム(working volume)が大きくなって生産性が低下する。また、DMSOの代わりに、水に混じらない他の溶媒を使用すると、L−D光学変換時間がさらに長くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Helmchen, G.; Pfaltz, A. Acc. Chem. Res. 2000, 33, 336-345
【非特許文献2】Maruoka, K.; Ooi, T. Chem. Rev. 2003, 103, 3013.
【非特許文献3】Park, H.;Kim, K. M.; Lee, A.; Ham, S.; Nam, W.; Chin, J. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 1518-1519.
【非特許文献4】Kim, K. M.; Park, H.; Kim, H.; Chin, J.; Nam, W. Org. Lett. 2005, 7, 3525-3527.
【非特許文献5】Park, H.;Kim, K. M.; Lee, A.; Ham, S.; Nam, W.; Chin, J. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 1518-1519.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来の技術のかかる問題を解決するためのもので、その目的は、光学変換時間が画期的に短縮され、使用された有機溶媒に対する濃縮工程なしで、キラル選択的受容体を含む有機溶液を反復的に使用することが可能であり、非常に効率的且つ経済的に、光学的に純粋なアミノ酸を得る方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、光学的分割または光学的変換のためのアミノ酸を含む塩基性水溶液;D型またはL型のアミノ酸とキラル選択的に反応してイミンを形成するキラル選択的受容体を含む有機溶液;および酸性水溶液を使用し、前記塩基性水溶液と前記有機溶液とを混合して攪拌し、塩基性水溶液層と有機溶液層を分離する第1段階と、前記第1段階で分離された有機溶液を前記酸性水溶液と混合して攪拌し、酸性水溶液層と有機溶液層を分離する第2段階と、前記第2段階で分離された酸性水溶液からD型またはL型のアミノ酸を収得する第3段階とを含んでなることを特徴とする、光学的に純粋なアミノ酸を得る方法を提供する。
【0010】
前記方法は、前記第3段階を行う前に、前記第1段階で分離された塩基性水溶液と、第2段階で分離された有機溶液および酸性水溶液を用いて、前記第1段階および第2段階の工程を少なくとも1回繰り返し行う段階をさらに含んでもよい。
【0011】
前記方法において、前記塩基性水溶液に含まれるアミノ酸はLi+、Na+またはK+塩の形態であってもよい。
【0012】
前記方法において、前記塩基性水溶液はアミノ酸のラセミ化のためにラセミ化触媒をさらに含んでもよい。また、ラセミ化を促進するためにラセミ化触媒が含まれた前記塩基性水溶液を50〜100℃に加熱した後、第1段階を行ってもよい。
【0013】
前記方法において、前記有機溶液に含まれる有機溶媒は、水と全く混じらない有機溶媒と、極性の高い作用基を含む有機溶媒との混合溶媒であってもよい。
前記方法において、前記有機溶液はPTC(Phase Transfer Catalyst)をさらに含んでもよい。
【0014】
前記方法において、前記アミノ酸はα−アミノ酸またはβ−アミノ酸であってもよい。
【0015】
また、本発明は、アミノ酸のラセミ化において、アミノ酸を含む塩基性水溶液にラセミ化触媒を入れ、前記水溶液を50〜100℃に加熱することを特徴とする、ラセミ化促進方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法は、光学変換時間が画期的に短縮され、使用された有機溶媒に対する濃縮工程なしで、キラル選択的受容体を含む有機溶液を反復的に使用することが可能である。よって、光学的に純粋なアミノ酸を簡単な方法によって非常に効率よく得ることができ、非常に経済的に量産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は本発明の方法の実施過程を例示的に図式化して示す。
【図2】図2は本発明の実施例5でアミノ酸とキラル選択的受容体との結合によって形成されたイミンのキラル選択性を確認するために実施したH NMRグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、光学的分割または光学的変換のためのアミノ酸を含む塩基性水溶液;D型またはL型のアミノ酸とキラル選択的に反応してイミンを形成するキラル選択的受容体を含む有機溶液;および酸性水溶液を使用し、前記塩基性水溶液と前記有機溶液とを混合して攪拌し、塩基性水溶液層と有機溶液層を分離する第1段階と、前記第1段階で分離された有機溶液を前記酸性水溶液と混合して攪拌し、酸性水溶液層と有機溶液層を分離する第2段階と、前記第2段階で分離された酸性水溶液からD型またはL型のアミノ酸を収得する第3段階とを含んでなることを特徴とする、光学的に純粋なアミノ酸を得る方法に関する。
【0019】
前記方法は、前記第3段階を行う前に、前記第1段階で分離された塩基性水溶液と、第2段階で分離された有機溶液および酸性水溶液を用いて、前記第1段階および第2段階の工程を少なくとも1回繰り返し行う段階をさらに含むことができる。
【0020】
本発明の方法において、光学的分割とは、D型とL型が混じっているアミノ酸をD型とL型に分割することを意味し、光学的変換とは、L型アミノ酸をD型アミノ酸に変換させるか或いはD型アミノ酸をL型アミノ酸に変換させ、光学的に純粋なアミノ酸化合物を得ることを意味する。
【0021】
本発明の理解を助けるために、前記光学的に純粋なアミノ酸を得る方法を図1に例示的に図式化して示した。図1に示すように、本発明における有機溶液は塩基性水溶液と酸性水溶液を往復しながら、塩基性水溶液にあるラセミアミノ酸(DL−アミノ酸)の中からD−アミノ酸を選択的に酸性水溶液に送る。この場合、塩基性水溶液におけるラセミ化が行われると、塩基性水溶液に含まれたアミノ酸はいずれもD−アミノ酸に変換されて酸性水溶液に移動することになる。勿論、前記塩基性水溶液においてラセミ化が行われない場合、塩基性水溶液に含まれたD−アミノ酸のみ酸性水溶液に移動してL−アミノ酸とD−アミノ酸の分割が起こる。
【0022】
以下、本発明の方法を構成要素別に詳細に説明する。
【0023】
〔1.塩基性水溶液〕
本発明において、塩基性水溶液は、光学的分割または光学的変換のためのアミノ酸を供給し、有機溶液に含まれたキラル選択的受容体と前記アミノ酸とがイミン結合をよく行えるように塩基性を帯びるように製造される。前記塩基性水溶液は、一般な蒸留水にアミノ酸のLi+、Na+またはK+塩を溶解させて製造することができる。前記アミノ酸のLi+、Na+またはK+塩は一般なアミノ酸にNaOHまたはKOHを入れて作ることができる。この際、NaOHまたはKOHの量はアミノ酸と同じモル数にまたはそれよりやや多く或いは少なくしてもよい。この量はアミノ酸の安定性、ラセミ化の度合い、キラル選択性などに応じて調節できる。しかも、前記塩基性水溶液にはアミノ酸のラセミ化のためにラセミ化触媒がさらに含まれてもよい。
【0024】
本発明において、ラミセル化触媒としては、水によく溶け且つ有機溶媒には溶けないラセミ化触媒を使用することが好ましい。
【0025】
前記ラセミ化触媒としてはサリチルアルデヒド誘導体が使用できる。このようなサリチルアルデヒド誘導体は−OH基とアルデヒド基(−CHO)とが隣接してアミノ酸と安定なイミン結合(−CH=N−)を形成することにより、アミノ酸のラセミ化を誘導する。前記サリチルアルデヒド誘導体としてはPLP(pyridoxal-5’-phosphate)やピリドキサール(pyridoxal)などを挙げることができ、これらは1種単独で或いは2種以上が共に使用できる。特に、前記ラセミ化触媒としてはPLP(pyridoxal-5’-phosphate)が好ましく使用できる。
【0026】
前記ラセミ化触媒の使用量は、アミノ酸モル数の5%が最適であるが、アミノ酸の種類に応じて変化を与えることができる。
【0027】
〔2.有機溶液〕
本発明において、有機溶液にはキラル選択的受容体が溶解される。前記キラル選択的受容体はアミノ酸とキラル選択的にイミンを形成する化合物を意味する。例えば、前記キラル選択的受容体がS型の場合にはD型アミノ酸に対してキラル選択的であってもよく、キラル選択的受容体がR型の場合にはL型アミノ酸に対してキラル選択的であってもよい。ところが、このようなキラル選択性は化合物の種類によって異なる。
【0028】
本発明において、例えば、有機溶液層にS型キラル選択的受容体が溶けていると、塩基性水溶液層にラセミとして存在するアミノ酸のうち、D型アミノ酸が選択的にS型キラル選択的受容体とイミンを形成しながら、有機溶液層へ移動する。
【0029】
本発明において、キラル選択的受容体としては、アミノ酸とキラル選択的に反応してイミンを形成し、アミノ酸を水溶液層から有機溶液層へ移動させることができるものであれば制限なく使用できる。特に、アミノ酸とイミンを形成することが可能なサリチルアルデヒド基を含む全ての誘導体は、キラル選択性のみあれば、本発明の方法に使用できる。サリチルアルデヒド基のない化合物であっても、アミノ酸に対するキラル選択性をもって前述の条件のみを満足すれば、いずれも本発明で使用できる。
【0030】
前記キラル選択的受容体としては、水には溶けず、有機溶媒にはよく溶けるものを選択することが好ましい。
【0031】
本発明で使用できるキラル選択的受容体としては、例えば、下記化学式1の化合物および化学式2の化合物を挙げることができる。
【0032】
【化2】

【0033】
【化3】

【0034】
前記化学式1および2において、
Xはそれぞれ独立に水素;ハロゲン;アミノ;ニトロ;シアノ;ホルミル;カルボキシル;ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、およびC6〜C10のアリールよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;C1〜C10のアルキルカルボニル;C6〜C10のアリール;およびC1〜C10のアルコキシよりなる群から選ばれ;
Yはそれぞれ独立に水素;ハロゲン;アミノ;ニトロ;シアノ;ホルミル;カルボキシル;ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、およびC6〜C10のアリールよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;C1〜C10のアルキルカルボニル;C6〜C10のアリール;およびC1〜C10のアルコキシよりなる群から選ばれ;
Zはそれぞれ独立に水素;ハロゲン;アミノ;ニトロ;シアノ;ホルミル;カルボキシル;ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、およびC6〜C10のアリールよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたかまたは置換されていないC1〜C10のアルキル;C1〜C10のアルキルカルボニル;C6〜C10のアリール;およびC1〜C10のアルコキシよりなる群から選ばれ;
Lは0〜5の整数であり、Mは0〜5の整数であり、Nは0〜3の整数であり;
R1は水素;トシル;CHSO−;CHCO−;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルキル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルケニル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルキニル;またはハロゲン、OHおよびC1〜C5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC6〜C12のアリールであり;
R2は−NHCX’R3、−NHS(=O)R3、下記式で示される官能基または−NHC(NHR5)R4であり、前記において、X’は酸素または硫黄であり、aは1または2であり、R3およびR4はそれぞれ独立に水素;ハロゲンで置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;−NR6R7;またはOR8であり、R5〜R8はそれぞれ独立に水素;ハロゲンで置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;またはハロゲン、ニトロ、C1〜C5のアルキル基、C1〜C5のアルコキシおよびC1〜C5のパーフルオロアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC6〜C12のアリールであり、前記R5とR6は結合して環を形成することができ、前記R2が−NHC(NH)NHまたは−NHCHNHのとき、相対イオンはハロゲンイオンまたはR9COO−であり、R9はC1〜C10のアルキルまたはC1〜C5のアルキルで置換されたか或いは置換されていないC6〜C12のアリールであり;
【0035】
【化4】

【0036】
R10は水素;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも1一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルキル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルケニル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルキニル;またはハロゲン、OH、C1〜C5のアルキル、C1〜C5のアルコキシよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC6〜C12のアリールであり;
前記において、アルキル基は直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味する。
【0037】
前記化学式2の化合物において、R10が結合する炭素はR型またはS型であってもよい。
【0038】
前記化学式1および化学式2の化合物の具体的な例を挙げると、次のとおりである。
【0039】
【化5】

【0040】
前記化合物3、4および5は共通にビナフトール−3−ホルミル−2−ヒドロキシ基を持っており、化合物6はサリチル化合物の誘導体である。化合物3、4,5および6は既に発表された論文および特許に開示された方法によって製造できる((a) Nandhakumar, R.; Ryu, J.; Park, H.; Tang, L.; Choi, S.; Kim, K.M. Tetrahedron 2008, 64, 7704.;(b) Kim, K.M.; Nam, W.; Park, H.; Chin, J. US Patent 7,268,252 B2;(c) Kim, K. M.; Tang, L. US 2009/0023931 A1)。前記化合物以外に、前記論文および特許に開示された他の化合物も本発明に使用できる。
【0041】
また、前記有機溶液には塩基性水溶液のアミノ酸が容易に有機溶液層へ移動し得るようにPTC(Phase transfer catalyst)が添加できる。
【0042】
前記PTCの例としては、広く使用されている4級アンモニウム塩(quaternary ammonium salt)やホスホニウム塩(phosphonium salt)などを挙げることができ、特に水溶液層に溶解しないPCTとしてのAliquat336(Tricaprylylmethylammonium chloride)が本発明で好ましく使用できる。PTCの量はキラル選択的受容体と同一のモル数に該当する量を入れることが良いが、キラル選択性とイミン形成への所要時間を考慮して若干の量をさらに入れるか或いはより少なく入れることがよい。
【0043】
前記有機溶液を製造するために使用される有機溶媒としては、水に殆ど混じらない溶媒を使用する。このような溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチレン(methylenechloride、MC)、酢酸エチル(ethylacetate、EA)、トルエン、2−ペンタノン(2-pentanone)、ブチロニトリル(butyronitrile)、トルエンニトリル、メチルイソブチルケトン(methylisobutylketone)またはこれらの混合溶媒などを挙げることができる。特に、キラル選択性を増加させるために、極性の高いニトリル(nitrile)、カルボニル(carbonyl)、スルホキシド(sulfoxide)基などが存在する有機溶媒と、水に全く混じらない有機溶媒とを混合して使用することが好ましい。なぜなら、極性の高いニトリル、カルボニル、スルホキシド基などが存在する有機溶媒を単独で使用すると、キラル選択性が高くなるが、これらの溶媒は水に一部混じってもよいため、これらと水に全く混じらない溶媒とを共に使用すると、選択性も高めながら水との混合を防止することも可能だからである。前記水と全く混じらない有機溶媒と極性の高い作用基を含む有機溶媒との混合比は体積比で1:9〜9:1とすることができる。
【0044】
前記混合溶媒の例としては、塩化メチレンとブチロニトリルとの混合溶媒、クロロホルムとトルエンニトリルとの混合溶媒などを挙げることができる。
【0045】
〔3.酸性水溶液〕
前記酸性水溶液は、有機溶液に含まれたキラル選択的受容体とアミノ酸との反応により形成されたイミンからアミノ酸を取り外すために酸性を帯びるように製造される。前記酸性水溶液は、多様な酸を添加して製造することができ、例えば、HClを添加して酸性に作ることができる。適当な濃度は、アミノ酸の種類、アミン結合の解除にかかる時間などを考慮して決定する。
【0046】
〔4.本発明の方法の原理〕
アミノ酸を供給する塩基性水溶液と有機溶液とは互いに混じらないので、この2層を通常の方法によって共に攪拌すると、塩基性水溶液のアミノ酸のうち、有機溶液に含まれたキラル選択的受容体(S型またはR型)と結合を形成することが可能なタイプ(D型またはL型)のみ選択的にキラル選択的受容体とイミンを形成する。例えば、キラル選択的受容体がS型の場合、D−アミノ酸が選択的にイミンを形成する。このようなキラル選択的イミン形成が終わると、前記有機溶液層は分離されてアミノ酸を受け入れる酸性水溶液と共に攪拌される。この際、酸性水溶液は酸性であるから、有機溶液層のイミンが破れながらアミノ酸が水溶液層へ移動する。前記有機溶液層には元来のキラル選択的受容体が残っているので、この有機溶液をそのまま使用して、前記の過程を繰り返し行うことができる。この際、塩基性水溶液においてアミノ酸が引き続きラセミ化される場合、結果的に全てのDL−アミノ酸がD−アミノ酸に変換されて酸性水溶液へ移動する。初めに塩基性水溶液へDL−アミノ酸の代わりにL−アミノ酸を入れて開始をしても直ちにラセミ化されるので、結果としてDL−アミノ酸を入れたのと同様になる。本発明の方法では、塩基性水溶液層から有機溶液層へアミノ酸がキラル選択的に移動するのにかかる時間が2〜3時間であり、塩基性水溶液におけるアミノ酸ラセミ化は適切な触媒を用いてやはり短時間内に済ませることができるので、全体的にアミノ酸のL−D光学変換が短時間内に完了できる。既に公開された特許の方法とおりDMSOで光学変換を行うと、反応と回収過程を含んで少なくとも多数の日にちがかかるので、これに比べれば、本発明の方法は非常に画期的であるといえる。それだけでなく、本発明では、キラル選択的受容体が入っている有機溶液層を別の回収過程なしでそのままさらに使用することができるので、非常に経済的である。
【0047】
〔5.塩基性水溶液におけるアミノ酸のラセミ化〕
アミノ酸を供給する塩基性水溶液には、アミノ酸のラセミ化を助けるためのラセミ化触媒として、例えば、PLP(pyridoxal phosphate)が添加できる。塩基性水溶液において、PLPはアミノ酸とイミンを形成し、アミノ酸をラセミ化させる。PLPの量はアミノ酸モル数の5%が最適であるが、アミノ酸の種類に応じて変化を与えることができる。PLP5%におけるアミノ酸のラセミ化は常温で徐々に進んで1週に30%程度行われる。これは、例えば、フェニルアラニンのNa+塩を、DOでPLP5%を入れてアルファ水素の重水素化(deuteration)の度合いを観察して確認することができる。アルファ水素の重水素化の度合いは直ちにアミノ酸のラセミ化を意味するためである。PLPの量を20%まで増加させるとしても、アミノ酸のラセミ化は速くならない。ところが、本発明で水溶液の温度を50〜100℃に上げると、アミノ酸のラセミ化が1時間以内の短時間内に行われ得ることを見出した。よって、アミノ酸を供給する塩基性水溶液におけるラセミ化を速く進行させるためには、塩基性水溶液の温度を前記範囲に上げることが好ましい。前記水溶液の温度を50℃未満に加熱すると、ラセミ化促進効果が微々であり、水溶液であるため、100℃以上には加熱されない。前記塩基性水溶液層のアミノ酸が有機溶液層へ移動すると、アミノ酸を引き続き添加して光学変換を行い続けることができる。
【0048】
〔6.キラル選択性の原理、キラル変換の原理および本発明の適用範囲〕
本発明におけるキラーセル選択性はイミンの構造的安定性に起因するが、これについての詳細な原理は既に発表された多数の論文に出ている。既に発表された論文(JACS 2007; Che. Eur. J 2008; Tetrahedron 2008)には、ビナフトールアルデヒドまたは他の誘導体を用いてDMSO溶媒におけるアミノ酸のキラル変換を成す方法が説明されている。本発明の方法で使用される有機溶媒では、一般に、アミノ酸のキラル変換が容易に起こらない。ところが、本発明の方法は全てのDL−アミノ酸のキラル変換を可能にする方法を提供する。このような方法が可能な理由は塩基性水溶液におけるアミノ酸のラセミ化が行われるためである。すなわち、塩基性水溶液におけるラセミ化と塩基性水溶液層から有機溶液層へのキラル選択的なアミノ酸の移動とが結合して全てのDL−アミノ酸のキラル変換が可能となる。これは一般な光学分割が最大50%の収率のみを得ることができるのと比較して相当顕著な結果であるといえる。
【0049】
本発明の方法において、キラル変換は、原理的にみて、水溶液におけるラセミ化が可能な全てのα−アミノ酸に適用できる。また、本発明の方法は一般なβ−アミノ酸のキラル分離にも有効に適用できる。同一の原理として、本発明の方法はキラル選択的受容体とイミンを形成することが可能な全てのアミン類の化合物に適用できる。
【0050】
また、本発明は、アミノ酸のラセミ化において、
アミノ酸を含む塩基性水溶液にラセミ化触媒を入れ、前記水溶液を50〜100℃に加熱することを特徴とするラセミ化促進方法に関する。
【0051】
前述したように、アミノ酸のラセミ化において、ラセミ化触媒の量を20%まで増加させるとしても、アミノ酸のラセミ化速度は速くならない。ところが、本発明において、ラセミ化触媒を入れ、水溶液の温度を50〜100℃に加熱すると、アミノ酸のラセミ化が1時間以内の短時間に行われ得る。よって、アミノ酸を供給する水溶液におけるラセミ化を速く行わせるためには水溶液の温度を前記範囲となるように加熱することが好ましい。
【0052】
前記ラセミ化触媒としてはサリチルアルデヒド誘導体が使用できる。前記サリチルアルデヒド誘導体は−OH基とアルデヒド基(−CHO)とが隣接してアミノ酸と安定なイミン結合(−CH=N−)を形成することにより、アミノ酸のラセミ化を誘導する。前記サリチルアルデヒド誘導体としてはPLP(pyridoxal phosphate)やピリドキサール(pyridoxal)などを挙げることができる。これらは1種単独で或いは2種以上が共に使用できる。特に、前記ラセミ化触媒としてはPLP(pyridoxal-5’-phosphate)が好ましく使用できる。
【0053】
前記塩基性水溶液は、pH7超過14以下であり、好ましくはpH10〜12である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。ところが、下記実施例は本発明をさらに具体的に説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。下記実施例は本発明の範囲内において当業者によって適切に修正、変更できる。
【0055】
実施例1:キラル選択的受容体の製造
【0056】
【化6】

【0057】
前記化合物3は、既に発表された論文(Park, H.; Nandhakumar, R.; Hong, J.; Ham, S.; Chin, J. Kim, K. M. Chem. Eur. J. 2008, 14, 9935)に記述された化合物1の合成方法によって合成された。但し、前記化合物3を合成するときは、前記論文における化合物1の合成時に使用したフェニルイソシアネート(phenylisocyanate)の代わりに4−メチルフェニルイソシアネート(4-methylphenylisocyanate)を使用した。
【0058】
化合物3のH NMR(CDC13、250MHz):δ(ppm)=10.5(s、1H)、10.2(s、1H)、8.3(s、1H)、6.5〜8.1(m、20H)、5.1(dd、2H)、2.3(s、3H)。
【0059】
実施例2:有機溶液の製造
CDCl(50mL)とトルエン−4−ニトリル(50mL)の1:1混合溶媒に、キラル選択的受容体として前記化合物3(10.0g、18mmol、S型光学異性体)、PTC(Phase Transfer Catalyst)としてAliquat336(10.0g、18mmol)を溶解させて有機溶液を準備した。
【0060】
実施例3:塩基性水溶液の製造
フェニルアラニン(ラセミ型、30g、180mmol)を水(100ml)に入れ、1.0当量のNaOHを加えて全て溶解させ、PLP1.5gを添加して塩基性水溶液を準備した。
【0061】
実施例4:酸性水溶液の製造
濃塩酸(10g)を10倍に薄めて100mLの酸性水溶液を作った。
【0062】
実施例5:フェニルアラニンの光学選択的移動
前記で製造された有機溶液と塩基性水溶液を2Lの丸底フラスコに入れて2時間30分間攪拌した。有機溶液層を一部採取してH NMRでイミン形成を確認した(図2参照)。その結果、全ての化合物3がアミノ酸とキラル選択的にイミンを形成したことが分かる。キラル選択性は化合物3のuryl−NH signalを積分(integration)して確認した。その結果、キラル選択性はL:D=1:12程度と確認された。図2における、Lで表示された小さいピークはL−フェニルアラニンと作られたイミンのNHに対するものであり、Dで表示されたピークはD−フェニルアラニンと作られたイミンのNHに対するものである。
【0063】
このようなキラル選択性は、DMSOでL−フェニルアラニンをD−フェニルアラニンに光学変換したときのキラル選択性と同一であった(Park, H.; Kim, K. M.; Lee, A.; Ham, S.; Nam, W.; Chin, J. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 1518-1519)。有機溶液層を分液漏斗(separatory funnel)を用いて水溶液層から分離した後、酸性水溶液と共に1時間攪拌させた。その後、H NMRで確認したところ、全てのアミノ酸が化合物3から分離され、有機溶液層には化合物3とAliquat336が光学変換を始める前と同一の状態に存在することを確認した。また、有機溶液層から分離移動したD−フェニルアラニンが酸性水溶液層に存在することを確認した。
【0064】
前記1回の光学選択的移動を済ませた塩基性水溶液、有機溶液および酸性水溶液を用いて、前述したのと同一の過程を2回さらに繰り返し行った。反復実験を行う度に、塩基性水溶液には2.97g(18mmol)のラセミフェニルアラニンおよび同モル数のNaOHを添加して塩基性水溶液に一定のモル数のフェニルアラニンが存在するようにした。2回および3回の反復実験におけるキラル選択性は、1回に比べて若干減少したが、これは前記光学選択的移動によって塩基性水溶液にL−フェニルアラニンの比率が若干増加したことから原因を探すことができる。
【0065】
塩基性水溶液のフェニルアラニンにおいてL型の比率が増加したので、水溶液層を90℃に1時間加熱攪拌してラセミ化し、その後、前述したのと同一の実験を繰り返し行った。このようにラセミ化された塩基性水溶液から有機溶液へ移動するフェニルアラニンのキラル選択性は1回の実験結果と同一であった。
【0066】
その後、前述したのと同一の方式で実験を反復して合計30回を行った。この反復実験における酸性水溶液は常にpH値が1〜2を維持するように濃塩酸を添加した。また、塩基性水溶液は酸性水溶液からHClが有機溶液層を介して乗り越えてくることを考慮し、NaOHの添加量を調節してpHを12.0に固定した。30回全てに対してH NMRを測定し、その結果、毎回キラル選択性は差異がないことを確認した。30回反復実験が終わった後、酸性水溶液層からフェニルアラニンを分離し、回収された有機溶液層のH NMR状態も最初と同一であった。
【0067】
実施例6:酸性水溶液からのフェニルアラニンの回収
実施例5で30回反復実験を行った後、酸性水溶液層にNaOHを添加してpHを7.0に調整した。フェニルアラニンが沈澱し、これを回収して水で3回洗い流した後、50℃で減圧乾燥させた。乾燥したフェニルアラニンは84gの重量を有し、総回収率は94%であった。乾燥したフェニルアラニンをHPLCで分析した結果、D型が92%であり、残りはL型であった。
【0068】
実施例7:フェニルアラニンの光学純度増加実験
実施例6で得たフェニルアラニン(D型92%)10g(50mmol)を水100mLに溶かし、NaOH4.0g(100mmol)をゆっくり添加してフェニルアラニン塩を作った。この水溶液と、R型光学異性体としての前記化合物3(3g、5.4mmol)およびAliquat(3g、5.4mmol)が溶けているCDCl/トルエン−4−ニトリル(体積比1:1)の混合溶液とを混合し、5時間攪拌した。有機溶液層のH NMRを確認した結果、L型フェニルアラニンが化学式3の化合物とイミンを形成したことを確認することができた。有機溶液層を分離してHCl水溶液と1時間攪拌し、有機溶液層のL型フェニルアラニンをHCl水溶液層へ移動させた。HCl水溶液層は実施例4と同様の条件で作られた。HCl水溶液層から分離された有機溶液層をさらにD型フェニルアラニンの濃縮された塩基性水溶液層へ移動させて同一の実験をもう1回行った。2回同一の実験を行った後、有機溶液層のR型光学異性体である化合物3の量を1/2に減らし、しかる後に、同一の実験を4回繰り返し行った。D型フェニルアラニンが濃縮された塩基性水溶液層にHClを添加してpHを7.0にした。沈澱した中性のフェニルアラニンを濾取し、水で3回洗った後、50℃で減圧乾燥させた。乾燥したフェニルアラニンのD型は、HPLC確認結果、99.7%であり、6.2gの重量を有する。
【0069】
実施例8:アミノ酸水溶液におけるラセミ化
O(5mL)にDL−フェニルアラニン(1.0g)とPLP(50mg)を入れた後、攪拌しながらNaOH水溶液を加えて全体を溶解させた。常温でH NMRを観察した結果、フェニルアラニンのアルファ水素がDで置換されることが分かった。ところが、置換速度が遅くて1週後に約30%のみがDで置換された。PLPの量を変化させてみたが、むしろPLPの量が多くなると、Dで置換される速度が遅くなった。PLPの量が5%以下になる場合でも、置換速度が遅くなった。PLPがない場合には、1週が経ってもDで置換されたものが殆ど見られなかった。同一条件のDO溶液の温度を摂氏70℃以上に昇温させた結果、顕著に速い速度でD置換が行われた。80℃以上になると、30分以内にD置換が完了した。D置換は直ちにアミノ酸のラセミ化を意味するので、この実験結果は直ちにラセミ化に対する実験結果を意味する。
【0070】
他のアミノ酸、すなわちセリン、メチオニン、バリン、ロイシン、トリプトファン、チロシンに対する同一の実験で同じ結果を得た。但し、バリンの場合、他のアミノ酸に比べてラセミ化される速度が2〜3倍以上長くかかった。
【0071】
実施例9:他のアミノ酸に対する光学選択的移動
DL−セリン、DL−アラニン、DL−バリン、DL−ロイシン、D−トリプトファンなどのα−アミノ酸と、DL−アミノ酪酸、β−フェニルアラニン、β−ロイシン、β−ホモフェニルアラニン、β−ホモロイシン、3−アミノイソ酪酸などのβ−アミノ酸に対する光学選択的移動実験も、前記実施例5で記述したのと同様の方法で実施した。H NMRピークの面積計算によって水溶液層から有機溶液層へ移動するアミノ酸のキラル選択性を確認し、結果を下記表1に示した。
【0072】
【表1】

【0073】
前記表1の結果より、注目すべき事実中の一つは本発明の方法がα−アミノ酸としてのバリンに対しても高いキラル選択性を示すことが分かる。バリンも水溶液層でラセミ化できるので、このような結果より、本発明の方法はバリンなどのアミノ酸のキラル変換にも有効に適用できることを確認することができる。以前に発表された論文(JACS 2007; Che. Eur. J 2008)に開示されているように、DMSO溶媒を用いてキラル変換を行う場合、バリンに対してはキラル変換を成し遂げることができなかった。本発明の方法では、バリンに対しても成功的なキラル変換を達成したため、このような結果は当該分野における大きい発展として認められる。
【0074】
また、表1に示すように、本発明の方法は、β−アミノ酸の中でも、特にβ−フェニルアラニン、β−ロイシン、β−ホモフェニルアラニン、β−ホモロイシンに対して比較的高いキラル選択性を示した。このような結果は、本発明の方法がこれらのβ−アミノ酸の光学的分割に有用に使用できることを立証する。但し、β−アミノ酸の場合に水溶液層でラセミ化が起こらないので、本発明の方法はβ−アミノ酸に対してはキラル変換ではなくキラル異性体の分離に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的分割または光学的変換のためのアミノ酸を含む塩基性水溶液と、
D型またはL型のアミノ酸とキラル選択的に反応してイミンを形成するキラル選択的受容体を含む有機溶液と、
酸性水溶液とを使用し、
前記塩基性水溶液と前記有機溶液とを混合して攪拌し、塩基性水溶液層と有機溶液層を分離する第1段階と、
前記第1段階で分離された有機溶液を前記酸性水溶液と混合して攪拌し、酸性水溶液層と有機溶液層を分離する第2段階と、
前記第2段階で分離された酸性水溶液からD型またはL型のアミノ酸を収得する第3段階とを含んでなることを特徴とする、光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項2】
前記第3段階を行う前に、
前記第1段階で分離された塩基性水溶液と、第2段階で分離された有機溶液および酸性水溶液を用いて、前記第1段階および第2段階の工程を少なくとも1回繰り返し行う段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項3】
前記塩基性水溶液に含まれるアミノ酸がLi+、Na+またはK+塩の形態であることを特徴とする、請求項1に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項4】
前記塩基性水溶液がアミノ酸のラセミ化触媒をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項5】
前記ラセミ化触媒がサリチルアルデヒド誘導体であることを特徴とする、請求項4に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項6】
前記サリチルアルデヒド誘導体が、PLP(pyridoxal phosphate)およびピリドキサール(pyridoxal)よりなる群から選ばれる少なくとも一つのものであることを特徴とする、請求項5に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項7】
前記アミノ酸のラセミ化を促進するために、前記塩基性水溶液を50〜100℃に加熱した後、第1段階を行うことを特徴とする、請求項4に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項8】
前記有機溶液に含まれる有機溶媒が、水と全く混じらない有機溶媒と極性の高い作用基を含む有機溶媒との混合溶媒であることを特徴とする、請求項1に記載の 光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項9】
前記混合溶媒が、塩化メチレンとブチロニトリルの混合溶媒、またはクロロホルムとトルエンニトリルの混合溶媒であることを特徴とする、請求項8に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項10】
前記有機溶液がPTC(Phase Transfer Catalyst)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項11】
前記酸性水溶液がHCl水溶液であることを特徴とする、請求項1に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項12】
前記アミノ酸がα−アミノ酸またはβ−アミノ酸であることを特徴とする、請求項1に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項13】
前記キラル選択的受容体が、サリチルアルデヒド基を含む化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【請求項14】
前記キラル選択的受容体が下記化学式1の化合物または化学式2の化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法:
【化1】

【化2】

前記化学式1および2において、
Xはそれぞれ独立に水素;ハロゲン;アミノ;ニトロ;シアノ;ホルミル;カルボキシル;ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、およびC6〜C10のアリールよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;C1〜C10のアルキルカルボニル;C6〜C10のアリール;およびC1〜C10のアルコキシよりなる群から選ばれ;
Yはそれぞれ独立に水素;ハロゲン;アミノ;ニトロ;シアノ;ホルミル;カルボキシル;ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、およびC6〜C10のアリールよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;C1〜C10のアルキルカルボニル;C6〜C10のアリール;およびC1〜C10のアルコキシよりなる群から選ばれ;
Zはそれぞれ独立に水素;ハロゲン;アミノ;ニトロ;シアノ;ホルミル;カルボキシル;ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、シアノ、ニトロ、およびC6〜C10のアリールよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたかまたは置換されていないC1〜C10のアルキル;C1〜C10のアルキルカルボニル;C6〜C10のアリール;およびC1〜C10のアルコキシよりなる群から選ばれ;
Lは0〜5の整数であり、Mは0〜5の整数であり、Nは0〜3の整数であり;
R1は水素;トシル;CHSO−;CHCO−;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルキル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルケニル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルキニル;またはハロゲン、OHおよびC1〜C5のアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC6〜C12のアリールであり;
R2は−NHCX’R3、−NHS(=O)R3、下記式で示される官能基または−NHC(NHR5)R4であり、前記において、X’は酸素または硫黄であり、aは1または2であり、前記R3およびR4はそれぞれ独立に水素;ハロゲンで置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;−NR6R7;またはOR8であり、R5〜R8はそれぞれ独立に水素;ハロゲンで置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;またはハロゲン、ニトロ、C1〜C5のアルキル基、C1〜C5のアルコキシおよびC1〜C5のパーフルオロアルキル基よりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC6〜C12のアリールであり、前記R5とR6は結合して環を形成することができ、前記R2が−NHC(NH)NHまたは−NHCHNHのとき、相対イオンはハロゲンイオンまたはR9COO−であり、R9はC1〜C10のアルキルまたはC1〜C5のアルキルで置換されたか或いは置換されていないC6〜C12のアリールであり;
【化3】

R10は水素;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも1一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC1〜C10のアルキル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルキル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルケニル;ハロゲンおよびOHよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC4〜C10のシクロアルキニル;またはハロゲン、OH、C1〜C5のアルキル、C1〜C5のアルコキシよりなる群から選ばれる少なくとも一つの置換基で置換されたか或いは置換されていないC6〜C12のアリールであり;
前記において、アルキル基は直鎖または分岐鎖のアルキル基を意味し、
前記化学式2の化合物において、R10が結合する炭素はR型またはS型である。
【請求項15】
前記キラル選択的受容体が下記化学式3の化合物〜化学式6の化合物の中から選ばれることを特徴とする、請求項14に記載の光学的に純粋なアミノ酸を得る方法。
【化4】

【請求項16】
アミノ酸のラセミ化において、
アミノ酸を含む塩基性水溶液にラセミ化触媒を入れ、前記水溶液を50〜100℃に加熱することを特徴とする、ラセミ化促進方法。
【請求項17】
前記ラセミ化触媒がサリチルアルデヒド誘導体であることを特徴とする、請求項16に記載のラセミ化促進方法。
【請求項18】
前記サリチルアルデヒド誘導体が、PLP(pyridoxal phosphate)およびピリドキサール(pyridoxal)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のものであることを特徴とする、請求項16に記載のラセミ化促進方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−521415(P2012−521415A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501927(P2012−501927)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【国際出願番号】PCT/KR2010/001707
【国際公開番号】WO2010/110555
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511230613)アミノラックス,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】