説明

光学的に透明なポリカーボネート・ポリエステル組成物

光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物は、本質的に、1種以上の置換もしくは非置換ポリカーボネートから誘導された構造単位、30重量%以上の置換もしくは非置換ポリエステル、変性ポリカーボネート、屈折率が約1.51〜約1.56の範囲にある耐衝撃性改良剤及び添加剤からなる。本組成物は良好な光学的特性、流れ、安定性及び機械的特性を有する。本組成物を製造する方法及びそれから形成した物品も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物、該組成物の合成方法及び該組成物から形成した物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート(PC)は、透明性、高靱性、そして場合によっては良好な耐熱性を必要とする部品に有用なエンジニアリングプラスチックである。しかし、ポリカーボネートにはいくつかの重大な欠点もあり、具体的には耐薬品性及び応力亀裂抵抗に乏しく、γ線による滅菌処理に弱く、加工性に劣る。ポリエステルとポリカーボネートとのブレンドがもたらす熱可塑性樹脂組成物は、各々の樹脂いずれか単独の組成物より優れた特性を有する。さらに、このようなブレンドは大抵の場合ポリカーボネート単独より経済性に優れる。PCとポリエステルとが混和性であれば、ブレンドに必要な透明性が得られるが、これは(セミ)脂肪族ポリエステル、例えばポリ(シクロヘキサンジメタノールシクロヘキサンジカルボキシレート)(PCCD)又はグリコール化コポリエステル、例えばポリエチレングリコールシクロヘキサンジメタノールテレフタレート(PETG)に限られる。
【0003】
米国特許第4188314号、第4125572号、第4391954号、第4786692号、第4897453号及び第5478896号は、芳香族ポリカーボネートとポリシクロヘキサンジメタノールフタレートとのブレンドに関する。米国特許第4125572号は、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)及び脂肪族/脂環式イソ/テレフタレート樹脂のブレンドに関する。米国特許第6281299号に、ビスフェノールAを重合してポリカーボネートとした後ポリエステルを反応器に供給する、透明なポリエステル/ポリカーボネート組成物の製造方法が開示されている。国際公開第2004/076541号には、平均ドメイン寸法が20〜45nm又は20〜40nmの範囲にある半透明なポリシロキサンドメインが埋設されたポリカーボネートポリマーを主成分とする熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
【0004】
ポリシロキサンブロックとポリカーボネートブロックを有する縮合コポリマーが知られている。このようなポリマーの代表的なものとして、米国特許第4681922号、第3189662号、第3419635号及び第3832419号に開示されたポリマーは、エラストマーの性質を持ち、接着剤、コーティング、シーラント、屋根材、耐衝撃性改良剤などとして有用である。米国特許第4794141号に、ポリジオルガノシロキサン/ポリカーボネートブロックコポリマー及びエラストマー状ポリマーを含有する成形組成物が開示され、そのエラストマー状ポリマーはビニル芳香族モノマーと共役ジエンとのブロックコポリマーの水素添加物と記載されている。
【0005】
ポリアルキレンテレフタレート、オルガノポリシロキサン−ポリカーボネートブロックコポリマー及びハロゲン化コポリカーボネートを含有し、優れた耐衝撃性、加熱変形性及び難燃性を有するポリマーブレンドが、米国特許第4155898号に記載されている。米国特許第4161498号、第4155898号及び第4161469号に、耐衝撃性及び加熱変形性を有するポリアルキレンテレフタレート樹脂及びオルガノポリシロキサン−ポリカーボネートブロックコポリマーが記載されている。米国特許第4994532号に、官能化ポリジメチルシロキサン流体を溶融状態のポリカーボネートと反応させてポリジメチルシロキサン/ポリカーボネートブロックコポリマーを形成することが記載されている。得られたコポリマーは、透明で、流動性を示すとされている。米国特許第5026791号は、ポリマーの主鎖中にシロキサン単位を有する芳香族カーボネートポリマーに関する。米国特許出願第10/882529号は、1〜30重量%の脂環式ポリエステル及び40重量%以上のポリオルガノシロキサン/ポリカーボネートブロックコポリマーを含有する透明又は半透明な組成物を開示し、米国特許出願第10/373547号は、ポリエステル及び耐衝撃性改良剤を含有する同様の組成物を開示している。しかし、これらの組成物では、流動性及び耐衝撃性の向上のために低温延性が犠牲になり、また耐衝撃性改良剤の使用が透明性の低下につながる。ポリカーボネートのシロキサンとのポリマーは、有用ではあるが、流動性が所望より低く、加工時に高いトルク又は高い成形圧力を必要とする。シロキサン−カーボネートポリマーは、低温での衝撃強さが十分でなく、耐変形性が十分でないことも知られている。
【特許文献1】米国特許第2465319号明細書
【特許文献2】米国特許第2991273号明細書
【特許文献3】米国特許第2999835号明細書
【特許文献4】米国特許第3028365号明細書
【特許文献5】米国特許第3148172号明細書
【特許文献6】米国特許第3153008号明細書
【特許文献7】米国特許第3169121号明細書
【特許文献8】米国特許第3189662号明細書
【特許文献9】米国特許第3271368号明細書
【特許文献10】米国特許第3271367号明細書
【特許文献11】米国特許第3419635号明細書
【特許文献12】米国特許第3832419号明細書
【特許文献13】米国特許第4125572号明細書
【特許文献14】米国特許第4155898号明細書
【特許文献15】米国特許第4161498号明細書
【特許文献16】米国特許第4161469号明細書
【特許文献17】米国特許第4188314号明細書
【特許文献18】米国特許第4217438号明細書
【特許文献19】米国特許第4391954号明細書
【特許文献20】米国特許第4487896号明細書
【特許文献21】米国特許第4681922号明細書
【特許文献22】米国特許第4786692号明細書
【特許文献23】米国特許第4794141号明細書
【特許文献24】米国特許第4897453号明細書
【特許文献25】米国特許第4994532号明細書
【特許文献26】米国特許第5026791号明細書
【特許文献27】米国特許第5367011号明細書
【特許文献28】米国特許第5411999号明細書
【特許文献29】米国特許第5478896号明細書
【特許文献30】米国特許第6281299号明細書
【特許文献31】国際公開第2004076541号パンフレット
【特許文献32】欧州特許出願公開第0347599号明細書
【特許文献33】欧州特許出願公開第0269324号明細書
【特許文献34】欧州特許出願公開第0224805号明細書
【特許文献35】欧州特許出願公開第0709432号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
加工の容易性の点から、熱可塑性樹脂の溶融流れ特性が良好であることが望ましい。光学的特性、加工性、耐溶剤性並びに良好な機械的及び熱的特性を良好なバランスで合わせもつポリカーボネート・ポリエステルブレンドが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1実施形態では、本発明は、本質的に、1種以上の置換もしくは非置換ポリカーボネートから誘導された構造単位、30重量%以上の置換もしくは非置換ポリエステル、変性ポリカーボネート、屈折率が約1.51〜約1.56の範囲にある耐衝撃性改良剤及び添加剤からなる、光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物を提供する。本組成物は良好な光学的特性、流動性及び機械的特性を有する。本発明の光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物を製造する方法及びこの組成物から作成された物品も提供される。
【0008】
本発明の種々の他の特徴、観点及び利点は、以下の説明、実施例及び添付の特許請求の範囲を参照することで一層明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を一層よく理解できるように、以下に本発明の好適な実施形態及び本発明の範囲に含まれる実施例を詳しく説明する。本明細書及び添付の特許請求の範囲において、多数の用語に言及するが、これらの用語は以下の意味をもつと定義される。
【0010】
単数表現は、文脈上明らかにそうでない場合以外は、複数も含む。
【0011】
「任意の」又は「所望に応じて」は、後述する事象や状況が起こっても起こらなくてもよいことを意味し、関連する説明は事象が起こった場合と事象が起こらなかった場合両方を包含する。
【0012】
ここで用いる用語「ポリカーボネート」は、1つ以上のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導された構造単位を組み込んだポリカーボネートを示し、コポリカーボネート及びポリエステルを包含する。
【0013】
ここで用いる用語「PCCD」はポリ(シクロヘキサン−1,4−ジメチレンシクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート)と定義される。
【0014】
ここで用いる用語「BPA」はビスフェノールAを指す。
【0015】
ここで用いる用語「脂肪族基」は、環状でない原子の直鎖状又は枝分れ状配列を含む、1価以上の基をいう。その配列はヘテロ原子例えば窒素、硫黄、ケイ素、セレン及び酸素を含んでも、炭素と水素だけで構成されてもよい。脂肪族基は「置換」でも「非置換」でもよい。置換脂肪族基は1つ以上の置換基を含む脂肪族基と定義する。置換脂肪族基は脂肪族基の置換可能な位置と同数の置換基を含んでもよい。脂肪族基に存在できる置換基には、ハロゲン原子例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素があるが、これらに限らない。置換脂肪族基としては、トリフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモエチル、ブロモトリメチレン(例えば−CHCHBrCH−)などが挙げられる。便宜上、用語「非置換脂肪族基」は、非置換脂肪族基を含む「環状でない原子の直鎖状又は枝分れ状配列」の一部として、様々な官能基を包含すると本明細書では定義する。非置換脂肪族基の例としては、アリル、アミノカルボニル(即ち−CONH2)、カルボニル、ジシアノイソプロピリデン(即ち−CH2C(CN)2CH2−)、メチル(即ち−CH3)、メチレン(即ち−CH2−)、エチル、エチレン、ホルミル、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(即ち−CH2OH)、メルカプトメチル(即ち−CH2SH)、メチルチオ(即ち−SCH3)、メチルチオメチル(即ち−CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル、ニトロメチル(即ち−CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、トリメトキシシリルプロピル、ビニル、ビニリデンなどが挙げられる。脂肪族基は1つ以上の炭素原子を含むと定義する。C1−C10脂肪族基には、炭素原子数が1以上10以下の置換脂肪族基及び非置換脂肪族基がある。
【0016】
ここで用いる用語「芳香族基」は、1つ以上の芳香族部を含む、1価以上の原子の配列をいう。1つ以上の芳香族部を含む1価以上の原子の配列は、ヘテロ原子例えば窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素を含んでも、炭素と水素だけで構成されてもよい。ここで用いる用語「芳香族基」は、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン及びビフェニル基を含むが、これらに限らない。上述のように、芳香族基は1つ以上の芳香族部を含む。芳香族部は、常に4n+2個の「非局在化」電子を有する環状構造(nは1以上の整数を示す)であり、例えばフェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などがある。芳香族基は、非芳香族成分を含んでもよい。例えば、ベンジル基は、フェニル環(芳香族部)及びメチレン基(非芳香族成分)を含む芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、芳香族部(C)が非芳香族成分−(CH−に結合した芳香族基である。芳香族基は「置換」でも「非置換」でもよい。置換芳香族基は1つ以上の置換基を含む芳香族基と定義する。置換芳香族基は芳香族基の置換可能な位置と同数の置換基を含んでもよい。芳香族基に存在できる置換基には、ハロゲン原子例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素があるが、これらに限らない。置換芳香族基としては、トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−フェニルオキシ)(即ち−OPhC(CF3)2PhO−)、クロロメチルフェニル、3−トリフルオロビニル−2−チエニル、3−トリクロロメチルフェニル(即ち3−CCl3Ph−)、ブロモプロピルフェニル(即ちBrCH2CH2CH2Ph−)などが挙げられる。便宜上、用語「非置換芳香族基」は、「1つ以上の芳香族部を含む1価以上の原子の配列」の一部として、様々な官能基を包含すると本明細書では定義する。非置換芳香族基の例としては、4−アリルオキシフェノキシ、アミノフェニル(即ちH2NPh−)、アミノカルボニルフェニル(即ちNH2COPh−)、4−ベンゾイルフェニル、ジシアノイソプロピリデンビス(4−フェニルオキシ)(即ち−OPhC(CN)2PhO−)、3−メチルフェニル、メチレンビス(4−フェニルオキシ)(即ち−OPhCH2PhO−)、エチルフェニル、フェニルエテニル、3−ホルミル−2−チエニル、2−ヘキシル−5−フラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−フェニルオキシ)(即ち−OPh(CH2)6PhO−)、4−ヒドロキシメチルフェニル(即ち4−HOCH2Ph−)、4−メルカプトメチルフェニル(即ち4−HSCH2Ph−)、4−メチルチオフェニル(即ち4−CH3SPh−)、メトキシフェニル、メトキシカルボニルフェニルオキシ(例えばメチルサリチル)、ニトロメチルフェニル(即ち−PhCH2NO2)、トリメチルシリルフェニル、t−ブチルジメチルシリルフェニル、ビニルフェニル、ビニリデンビス(フェニル)などが挙げられる。用語「C3−C10芳香族基」は、炭素原子数が3以上10以下の置換芳香族基及び非置換芳香族基を含む。芳香族基1−イミダゾリル(C3H2N2−)はC3芳香族基の代表例である。ベンジル基(C7H8−)はC7芳香族基の代表例である。
【0017】
ここで用いる用語「脂環式基」は、環状であるが芳香族でない原子の配列を含む1価以上の基をいう。ここで定義する「脂環式基」は芳香族部を含まない。「脂環式基」は1つ以上の非環状成分を含んでもよい。例えば、シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2−)は、シクロヘキシル環(環状であるが芳香族でない原子の配列)及びメチレン基(非環状成分)を含む脂環式基である。脂環式基は、ヘテロ原子例えば窒素、硫黄、セレン、ケイ素及び酸素を含んでも、炭素と水素だけで構成されてもよい。脂環式基は「置換」でも「非置換」でもよい。置換脂環式基は1つ以上の置換基を含む脂環式基と定義する。置換脂環式基は脂環式基の置換可能な位置と同数の置換基を含んでもよい。脂環式基に存在できる置換基には、ハロゲン原子例えばフッ素、塩素、臭素及びヨウ素があるが、これらに限らない。置換脂環式基としては、トリフルオロメチルシクロヘキシル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルオキシ)(即ち−OC6H11C(CF3)2C6H11O−)、クロロメチルシクロヘキシル、3−トリフルオロビニル−2−シクロプロピル、3−トリクロロメチルシクロヘキシル(即ち3−CCl3C6H11−)、ブロモプロピルシクロヘキシル(即ちBrCH2CH2CH2C6H11−)などが挙げられる。便宜上、用語「非置換脂環式基」は様々な官能基を包含すると本明細書では定義する。非置換脂環式基の例としては、4−アリルオキシシクロヘキシル、アミノシクロヘキシル(即ちH2NC6H11−)、アミノカルボニルシクロペンチル(即ちNH2COC5H9−)、4−アセチルオキシシクロヘキシル、ジシアノイソプロピリデンビス(4−シクロヘキシルオキシ)(即ち−OC6H11C(CN)2C6H11O−)、3−メチルシクロヘキシル、メチレンビス(4−シクロヘキシルオキシ)(即ち−OC6H11CH2C6H11O−)、エチルシクロブチル、シクロプロピルエテニル、3−ホルミル−2−テトラヒドロフラニル、2−ヘキシル−5−テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン−1,6−ビス(4−シクロヘキシルオキシ)(即ち−OC6H11(CH2)6C6H11O−)、4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル(即ち4−HOCH2C6H11−)、4−メルカプトメチルシクロヘキシル(即ち4−HSCH2C6H11−)、4−メチルチオシクロヘキシル(即ち4−CH3SC6H11−)、4−メトキシシクロヘキシル、2−メトキシカルボニルシクロヘキシルオキシ(2−CH3OCOC6H11O−)、ニトロメチルシクロヘキシル(即ちNO2CH2C6H10−)、トリメチルシリルシクロヘキシル、t−ブチルジメチルシリルシクロペンチル、4−トリメトキシシリルエチルシクロヘキシル(例えば(CH3O)3SiCH2CH2C6H10−)、ビニルシクロヘキセニル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などが挙げられる。用語「C3−C10脂環式基」は、炭素原子数が3以上10以下の置換脂環式基及び非置換脂環式基を含む。脂環式基2−テトラヒドロフラニル(C4H7O−)はC4脂環式基の代表例である。シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2−)はC7脂環式基の代表例である。
【0018】
本発明の組成物の1成分は、芳香族ポリカーボネートである。本発明に用いるのに適当な芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート樹脂の製造方法、及びポリカーボネート樹脂の熱可塑性樹脂成形コンパウンドへの使用は、当業界で周知である。例えば、各々本発明の先行技術として援用する、米国特許第3169121号、第4487896号及び第5411999号参照。
【0019】
本発明に有用なポリカーボネートは、次式Iの繰返し単位を有する。
【0020】
【化1】

上式中のRは式HO−D−OHのジヒドロキシ芳香族化合物から誘導された二価芳香族基であり、Dは次式IIの構造を有する。
【0021】
【化2】

式中のAは芳香族基を示し、限定されないが、フェニレン、ビフェニレン、ナフチレンなどがある。Eは、1実施形態では、アルキレン又はアルキリデン基を示し、限定されないが、メチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン、イソアミリデンなどがある。Eがアルキレン又はアルキリデン基である別の実施形態では、Eが2つ以上のアルキレン又はアルキリデン基をアルキレン又はアルキリデンとは異なる部分により連結したものであってもよく、そのような連結部分は、限定されないが、芳香族結合、三級窒素結合、エーテル結合、カルボニル結合、ケイ素含有結合、シラン、シロキシ、硫黄含有結合(限定されないが、スルフィド、スルホキシド、スルホンなど)、リン含有結合(限定されないが、ホスフィニル、ホスホニルなど)がある。別の実施形態では、Eは脂環式基、例えば、限定されないが、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、2−[2.2.1]−ビシクロへプチリデン、ネオペンチリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンなど、硫黄含有結合、例えば、限定されないが、スルフィド、スルホキシドもしくはスルホン、リン含有結合、例えば、限定されないが、ホスフィニルもしくはホスホニル、エーテル結合、カルボニル基、三級窒素基、又はケイ素含有結合、例えば、限定されないが、シランもしくはシロキシであってもよい。
【0022】
は各々独立に一価炭化水素基を含み、例えば、限定されないが、アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルがある。種々の実施形態において、Rの一価炭化水素基は、例えばジクロロアルキリデン、特にgem−ジクロロアルキリデンのように、ハロゲン置換、特にフッ素もしくは塩素置換されていてもよい。
【0023】
は各々独立に無機原子、例えば、限定されないが、ハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)、2個以上の無機原子を含有する無機基、例えば、限定されないが、ニトロ基、有機基、例えば、限定されないが、一価炭化水素基、例えば、限定されないが、アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリールもしくはシクロアルキル、又はオキシ基、例えば、限定されないがOR(式中のRは一価炭化水素基、例えば、限定されないが、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリールもしくはシクロアルキル)であってもよい。Yがポリマーを製造する反応物質及び反応条件に対して不活性であるか、それらにより影響されないことが必要なだけである。特定の実施形態では、Yはハロ基又はC−Cアルキル基を含む。
【0024】
添字mは0から置換に供しうるA上の置換可能な水素原子の数までの整数を示し、添字pは0から置換に供しうるE上の置換可能な水素原子の数までの整数を示し、添字tは1以上の整数を示し、添字sは0又は1に等しい整数を示し、添字uは0を含む整数を示す。
【0025】
Dが式IIで表されるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素において、Y置換基が2つ以上存在する場合、それは同じでも異なってもよい。同じことがR置換基についても言える。式IIにおいてsが0であり、uが0でない場合、芳香族環同士が共有結合により直接接合され、アルキリデン基や他の橋架け基が介在しない。芳香族核残基A上のヒドロキシル基及びYの位置は、オルト、メタ又はパラ位置で変えることができ、そして炭化水素残基の2つ以上の環炭素原子がY及びヒドロキシル基で置換されている場合、それらの原子団はビシナル(vic)、不斉又は対称関係をとり得る。ある特定の実施形態において、パラメータt、s及びuの値が各々1であり、両A基が非置換フェニレン基であり、Eがアルキリデン基、例えばイソプロピリデンである。ある特定の実施形態においては、両A基がp−フェニレンであるが、両A基がo−もしくはm−フェニレンであっても、片方がo−もしくはm−フェニレンで、他方がp−フェニレンであってもよい。
【0026】
ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素のある実施形態では、Eは不飽和アルキリデン基であってもよい。このタイプの適当なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、次式IIIのものがある。
【0027】
【化3】

式中のRは各々独立に水素、塩素、臭素又はC−C30一価炭化水素又は炭化水素オキシ基であり、各Zは水素、塩素又は臭素である。但し、少なくとも1つのZは塩素又は臭素である。
【0028】
適当なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、次式IVのものもある。
【0029】
【化4】

式中のRは前記定義の通り、R及びRは各々独立に水素又はC−C30炭化水素基である。
【0030】
本発明の実施形態では、使用できるジヒドロキシ置換芳香族炭化水素としては、米国特許第2991273号、第2999835号、第3028365号、第3148172号、第3153008号、第3271367号、第3271368号及び第4217438号に化合物名又は一般式又は特定式で記載されているものがある。本発明の他の実施形態において、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、1,4−ジヒドロキシベンゼン、4,4’−オキシジフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4’−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、3,5,3’,5’−テトラクロロ−4,4’−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4’−ジヒドロキシフェニルスルホン、ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、C1−3アルキル置換レゾルシノール、メチルレゾルシノール、カテコール、1,4−ジヒドロキシ−3−メチルベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、3,3−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン及びビス(3,5−ジメチルフェニル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィドがある。特定の実施形態では、ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素はビスフェノールAを含む。
【0031】
ジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の実施形態において、Eがアルキレン又はアルキリデン基である場合、そのアルキレン又はアルキリデン基がヒドロキシ置換基を1つ有する1以上の芳香族基に結合した1以上の縮合環の一部であってもよい。このタイプの適当なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素としては、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オールである化合物の式Vで表されるような、また1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オールである化合物の式VIで表されるようなインダン構造単位を含有するものがある。
【0032】
【化5】

縮合環の一部として1以上のアルキレン又はアルキリデン基を含むタイプの適当なジヒドロキシ置換芳香族炭化水素には、次式VIIの2,2,2’,2’−テトラヒドロ−1,1’−スピロビ[1H−インデン]ジオールも含まれる。
【0033】
【化6】

式中のRは各々独立に一価炭化水素基及びハロゲン基から選択され、R、R、R及びR10は各々独立にC1−6アルキルであり、R11及びR12は各々独立にH又はC1−6アルキルであり、nは各々独立に0〜3の値を有する正の整数から選択される。特定の実施形態では、2,2,2’,2’−テトラヒドロ−1,1’−スピロビ[1H−インデン]ジオールは、2,2,2’,2’−テトラヒドロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビ[1H−インデン]−6,6’−ジオール(SBIと略称することもある)である。上述したジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の任意のものの混合物から誘導されたアルカリ金属塩の混合物も使用できる。
【0034】
本発明の種々の実施形態において用いる用語「アルキル」は、炭素及び水素原子を含有し、所望に応じて炭素及び水素に加えて原子、例えば周期律表の15、16及び17族から選択される原子を含有する直鎖状アルキル、分岐状アルキル、アラルキル、シクロアルキル、ビシクロアルキル、トリシクロアルキル及びポリシクロアルキル基を示す。用語「アルキル」はアルコキシド基のアルキル部分も包含する。種々の実施形態において、直鎖及び分岐状アルキル基は、炭素原子数1〜約32のもの、具体的な例を挙げると、限定されないが、所望に応じてC−C32アルキル、C−C15シクロアルキルもしくはアリールから選択される基1つ以上で置換されていてもよいC−C32アルキル、及び所望に応じてC−C32アルキルから選択される基1つ以上で置換されていてもよいC−C15シクロアルキルがある。特定の具体例を挙げると、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルがある。シクロアルキル及びビシクロアルキル基の具体例には、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル、シクロヘプチル、ビシクロヘプチル及びアダマンチルがあるが、これらに限らない。種々の実施形態において、アラルキル基は炭素原子数7〜約14のものであり、その例にはベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル及びフェニルエチルがあるが、これらに限らない。種々の実施形態において、本発明の種々の実施形態で使用されるアリール基は、環炭素原子数6〜18の置換又は非置換アリール基である。これらのアリール基の具体例には、所望に応じてC−C32アルキル、C−C15シクロアルキルもしくはアリールから選択される基1つ以上で置換されていてもよいC−C15アリールがあるが、これらに限らない。アリール基の特定の具体例には、置換又は非置換フェニル、ビフェニル、トルイル及びナフチルがある。
【0035】
2つ以上のヒドロキシ置換炭化水素の混合物も使用できる。特定の実施形態では、2つ以上のモノヒドロキシ置換アルキル炭化水素の混合物、又は1つ以上のモノヒドロキシ置換アルキル炭化水素と1つ以上のジヒドロキシ置換アルキル炭化水素との混合物、又は2つ以上のジヒドロキシ置換アルキル炭化水素の混合物、又は2つ以上のモノヒドロキシ置換芳香族炭化水素の混合物、又は2つ以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素の混合物、又は1つ以上のモノヒドロキシ置換芳香族炭化水素と1つ以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素との混合物、又は1つ以上のモノヒドロキシ置換アルキル炭化水素と1つ以上のジヒドロキシ置換芳香族炭化水素との混合物を使用してもよい。
【0036】
さらに他の実施形態では、ポリカーボネート樹脂はビスフェノールAとホスゲンから誘導される直鎖状ポリカーボネート樹脂である。別の実施形態では、ポリカーボネート樹脂は2つ以上のポリカーボネート樹脂のブレンドである。
【0037】
芳香族ポリカーボネートは、溶融状態で、溶液状態で或いは当業界で周知の界面重合法により製造することができる。例えば、芳香族ポリカーボネートは、ビスフェノールAをホスゲン、ジブチルカーボネート又はジフェニルカーボネートと反応させることにより製造できる。このような芳香族ポリカーボネートは市販もされている。1実施形態では、芳香族ポリカーボネート樹脂は、ゼネラル・エレクトリック社から入手でき、例えばLEXAN(登録商標)ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂である。
【0038】
好ましいポリカーボネートは、固有粘度が(塩化メチレン中25℃で測定して)約0.30〜約1.00dl/gの範囲にある高分子量芳香族カーボネートポリマーであるのが好ましい。ポリカーボネートは分岐状でも非分岐状でもよく、重量平均分子量がゲル浸透クロマトグラフィで測定して通常約10,000〜約200,000、好ましくは約20,000〜約100,000である。なお、ポリカーボネートが種々の既知の末端基を有してもよい。
【0039】
1実施形態において、光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物は、ポリエステルを含有する。ポリエステル樹脂の製造方法及びポリエステル樹脂の熱可塑性成形組成物への使用は当業界で周知である。慣例の重縮合法が以下の特許公報に記載されている。各々先行技術として援用する、米国特許第2465319号、第5367011号及び第5411999号参照。
【0040】
代表的には、ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂、例えば炭素原子数2〜約10の脂肪族もしくは脂環式ジオール又はその混合物及び1種以上の芳香族ジカルボン酸から誘導されるポリエステル樹脂を含む。好適なポリエステルは、脂肪族ジオールと芳香族ジカルボン酸から誘導され、構造式VIIIの繰返し単位を有する。
【0041】
【化7】

式中のR’は炭素原子数2〜約20の脂肪族もしくは脂環式ジオール又はその混合物から誘導される脱ヒドロキシル化残基を含むアルキル基である。Rは芳香族ジカルボン酸から誘導される脱カルボキシル化残基を含むアリール基である。本発明の1実施形態では、ポリエステルは、R’又はRの少なくとも一方がシクロアルキル含有基である脂肪族ポリエステルとすることができる。ポリエステルは、R’が炭素原子数6〜20のアリール、アルカンもしくはシクロアルカン含有ジオールの残基又はその化学的均等物であり、Rが炭素原子数6〜20のアリール、脂肪族もしくはシクロアルカン含有二酸から誘導される脱カルボキシル化残基又はその化学的均等物である縮合生成物である。ポリエステル樹脂は代表的には、ジオール又はジオール均等成分と二酸又は二酸均等成分との縮合又はエステル交換重合により得られる。
【0042】
R’及びRは下記構造式IXから各々独立に選択されるシクロアルキル基であるのが好ましい。
【0043】
【化8】

二酸は、各々本発明のポリエステル樹脂の製造に有用な2つのカルボキシル基を有するカルボン酸を包含し、脂肪族、芳香族又は脂環式であるのが好ましい。二酸の例には、シクロ又はビシクロ脂肪酸、例えばデカヒドロナフタレンジカルボン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロオクタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はその化学的均等物があり、中でもトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸又はその化学的均等物が特に好ましい。アジピン酸、アゼライン酸、ジカルボキシドデカン酸及びコハク酸のような直鎖状ジカルボン酸も有用である。これらの二酸の化学的均等物には、エステル、アルキルエステル、例えばジアルキルエステル、ジアリールエステル、無水物、塩、酸クロリド、酸ブロミドなどがある。脱カルボキシル化残基Rが誘導される元の芳香族ジカルボン酸の例には、1分子当たり単一の芳香環を含有する酸、例えばイソフタル酸又はテレフタル酸、1,2−ジ(p−カルボキシフェニル)エタン、4,4’−ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’−ビス安息香酸及びこれらの混合物、並びに縮合環を含有する酸、例えば1,4−もしくは1,5−ナフタレンジカルボン酸がある。好適な実施形態では、残基Rのジカルボン酸前駆体が、テレフタル酸であるか、あるいはテレフタル酸とイソフタル酸の混合物である。
【0044】
本発明のポリエステル樹脂の製造に有用なジオールは、直鎖状、分岐状又は脂環式アルカンジオールを含み、炭素原子数2〜12とすることができる。このようなジオールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、即ち1,2−及び1,3−プロピレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−及び1,5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジメタノールデカリン、ジメタノールビシクロオクタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び特にそのシス及びトランス異性体、トリエチレングリコール、1,10−デカンジオール、並びにこれらの任意の混合物があるが、これらに限らない。好ましくは、脂環式ジオール又はその化学的均等物、特に1,4−シクロヘキサンジメタノール又はその化学的均等物がジオール成分として用いられる。ジオールの化学的均等物は、エステル、例えばジアルキルエステル、ジアリールエステルなどを包含する。代表的にはポリエステル樹脂は、直鎖状ポリエステル樹脂、分岐状ポリエステル樹脂及び共重合ポリエステル樹脂から選択される1種以上の樹脂を含有することができる。
【0045】
好適な脂環式ポリエステルは、ポリ(1,4−シクロヘキサン−ジメタノール−1,4−ジカルボキシレート)、即ちPCCDと称されることもある、ポリ(シクロヘキサン−1,4−ジメチレン シクロヘキサン−1,4−ジカルボキシレート)であり、これは次式Xの繰返し単位を有する。
【0046】
【化9】

PCCDについての上記一般式に関連して、Rは1,4−シクロヘキサンジメタノールから誘導され、Rはシクロヘキサンジカルボキシレート又はその化学的均等物から誘導されたシクロヘキサン環である。好適なPCCDはシス/トランス式を有する。1実施形態では、Rは炭素原子数1〜6のアルキル又はいずれかのモノマーから誘導された残留末端基であり、nは約70超えである。ポリエステルは出発DMCDと出発CHDMとのエステル交換反応から誘導される。DMCDから誘導される繰返し単位のトランス/シス比は約8:1超えであるのが好ましく、CHDMから誘導される繰返し単位のトランス/シス比は約1:1超えであるのが好ましい。ポリエステル樹脂は代表的には、粘度約2500ポアズ、溶融温度216℃超え、そして酸価約10meq/kg未満、好ましくは約6meq/kg未満である。
【0047】
直鎖状PCCDポリエステルは、触媒の存在下でのCHDMとDMCDとの縮合反応により製造され、ここで出発DMCDのトランス/シス比が平衡トランス/シス比より大きい。こうして得られるPCCDポリエステルは、(得られるPCCDの結晶性を高めるための出発トランス/シス比にほぼ等しいトランス/シス比を有する)出発DMCDから誘導されるポリマー繰返し単位のトランス/シス比を有する。
【0048】
出発DMCDは代表的にはトランス/シス比が約6:1超え、好ましくは9:1超え、より好ましくは19:1超えである。得られるPCCDにおいて、PCCDを製造するCHDMとDMCDの反応中に出発トランスDMCDの約10%未満、より好ましくは出発トランスDMCDの約5%未満がシス異性体に転換されるのが好ましい。CHDMのトランス/シス比が1:1超えであるのが好ましく、約2:1超えであるのがより好ましい。
【0049】
得られる直鎖状PCCDポリマーは、枝分かれがないことで特徴付けられる。反応プロセス中に、ポリグリコールを添加するか、トリメリト酸もしくは無水物、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン又はトライマー酸などの枝分かれ剤を添加することにより枝分かれを導入することができる。このような枝分かれ剤の使用は本発明には望ましくない。
【0050】
触媒の存在量は約200ppm未満であるのが好ましい。代表的には、触媒が約20〜約300ppmの範囲で存在することができる。もっとも好ましい材料は、ポリエステルが脂環式二酸成分及び脂環式ジオール成分両方を有するブレンド、具体的には、ポリシクロヘキサンジメタノールシクロヘキシルジカルボキシレート(PCCD)である。
【0051】
1実施形態では、上記ポリエステルは、ポリマー状脂肪酸及び/又はポリマー状脂肪族ポリオールから誘導された単位を約1〜約50重量%含有してコポリエステルを形成する。脂肪族ポリオールには、グリコール類、例えばポリ(エチレングリコール)又はポリ(ブチレングリコール)がある。別の実施形態では、適当な共重合ポリエステル樹脂には、例えばポリエステルアミドコポリマー、シクロヘキサンジメタノール−テレフタル酸−イソフタル酸コポリマー及びシクロヘキサンジメタノール−テレフタル酸−エチレングリコール(PCTG)コポリマーがある。好適な実施形態では、適当な共重合ポリエステル樹脂には、例えばシクロヘキサンジメタノール−テレフタル酸−イソフタル酸コポリマー及びシクロヘキサンジメタノール−テレフタル酸−エチレングリコール(PCTG)コポリマーがある。ポリエステル成分は、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールを含み、1,4−シクロヘキサンジメタノールが1,4−シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールの合計モル数に基づいて50モル%より多いグリコール部分と、テレフタル酸又はイソフタル酸又は両方の酸の混合物を含む酸部分との反応生成物を含むが、これに限定されない。
【0052】
1実施形態では、本発明のコポリエステルは、シクロヘキサンジメタノール部分がエチレングリコールより優勢である、好ましくはエチレングリコールと1,4−シクロヘキサンジメタノールの合計モル数に基づいて55モル%より多いシクロヘキサンジメタノールを含有し、酸部分がテレフタル酸である、上記の通りのコポリエステルである。本発明の別の実施形態では、ポリエステルは、テレフタル酸と、シクロヘキサンジメタノールが1,4−シクロヘキサンジメタノールとエチレングリコールの合計モル数に基づいて約60モル%より多い、1,4−シクロヘキサンジメタノール及びエチレングリコールの混合物とから誘導された構造単位を含む。
【0053】
ポリエステルは、低分子量のポリエステルポリマーで、固有粘度が(塩化メチレン中25℃で測定して)約0.1〜約1.5dl/gの範囲にあるものが好ましい。ポリエステルは枝分かれしていても、していなくてもよく、通常重量平均分子量が、フェノール/テトラクロロエタン(60:40容量比)混合溶剤中での粘度測定により測定して、約5,000〜約100,000、好ましくは約8,000〜約50,000である。ポリエステルが種々の既知の末端基を有することも想定されている。
【0054】
ポリエステル成分は、当業者に周知の方法、例えば縮合反応により製造すればよい。縮合反応は、触媒を用いることで促進でき、触媒の選択は反応物質の性質によって決まる。ここで用いるのに適当な種々の触媒が当業界で周知であり、あまりに多すぎてここで個別に記述しない。しかし、一般に、ジカルボン酸化合物のアルキルエステルを使用する場合、エステル交換型触媒、例えばn−ブタノールに溶解したTi(OCが好ましい。
【0055】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は変性ポリカーボネートを含有する。1実施形態では、変性ポリカーボネートはシロキサン変性ポリカーボネートである。オルガノポリシロキサンは、オルガノキシシリル基が二価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合した、直鎖状、環状、網状構造又は部分的に枝分かれした直鎖状オルガノポリシロキサンとすることができる。オルガノキシシリル基が二価の炭化水素基を介してケイ素原子に結合したオルガノポリシロキサンの例に、一般式XIで表される直鎖状オルガノポリシロキサンがある。
【0056】
【化10】

式中のR13は一価炭化水素基であり、Aは一価炭化水素基又は一般式XII:
−R14SiR15(OR16(3−x) (XII)
(式中、R14は二価炭化水素基であり、R15及びR16は各々一価炭化水素基であり、xは0〜2の整数である)で表されるオルガノキシシリル基を有する一価炭化水素基であり、Aの少なくとも1つはオルガノキシシリル基を有する一価炭化水素基であり、mは1〜300の整数、nは0〜300の整数、m+nは1〜300の整数である。
【0057】
一般式XI中のR13で示される一価炭化水素基の例には、アルキル基、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など、アルケニル基、例えばビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基など、アリール基、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基など、アラルキル基、例えばベンジル基、フェネチル基など、及び置換アルキル基、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などがあるが、これらに限らない。Aで示される一価炭化水素基の例は上述したものと同じである。
【0058】
一般式XII中のR14で示される二価炭化水素基の例には、アルキレン基、例えばメチルメチレン基、エチレン基、メチルエチレン基、プロピレン基、ブチレン基などがあるが、これらに限らない。オルガノキシシリル基を有する一価炭化水素基の例には、トリメトキシシリルエチレン基、トリエトキシシリルエチレン基、ジメトキシフェノキシシリルプロピレン基、トリメトキシシリルプロピレン基、トリメトキシシリルブチレン基、メチルジメトキシシリルプロピレン基、ジメチルメトキシシリルプロピレン基などがある。
【0059】
1実施形態では、変性ポリカーボネートはポリシロキサン−ポリカーボネートコポリマーである。別の実施形態では、変性ポリカーボネートは式XIIIの繰返しポリシロキサンブロックからのポリシロキサンを含有する。
【0060】
【化11】

ポリカーボネートブロックは、式XIVの単位を含有し、或いは別の実施形態では、ポリカーボネートは前述した通りである。
【0061】
【化12】

好適なポリカーボネートブロックは、式XVの単位を含有する。
【0062】
【化13】

式中のR15、R17、R18、R19及びR20は脂肪族、芳香族及び脂環式基から選択される。Aは炭素原子数1〜15の二価炭化水素基、−S−、−SO−、−S(O)又は−O−である。Dが二価炭化水素基であるのが好ましい。Aが−C(R30−である場合、R30は水素、脂環式、アリール、一価炭化水素基、アリール及びアルカリールから選択される基であり、望ましくはR30はアルキル、好ましくはC−Cアルキル、より好ましくはメチルである。
【0063】
得られるオルガノポリシロキサン−ポリカーボネートブロックコポリマーは、一般式XVIの繰返し単位を有するオルガノポリシロキサン−ポリカーボネートブロックを含む。
【0064】
【化14】

式中、R17及びR18は脂肪族、芳香族又は脂環式基であり、Eは水素、低級アルキル、アルコキシ、アリール及びアルキルアリール、ハロゲン基及びこれらの混合物からなる群から選択される基であり、好ましくは水素又はアルコキシであり、アルコキシの場合、好ましくはメトキシであり、R17は二価炭化水素基、好ましくは炭素原子数1〜6のアルキレン基、特にCのものが好ましく、qは約10〜約120、好ましくは約40〜約60である。
【0065】
1実施形態では、変性ポリカーボネートは、ポリオルガノシロキサン/ポリカーボネートブロックコポリマーであり、このコポリマーが平均ドメイン寸法45nm以下のポリオルガノシロキサンドメインを含む。好適なポリシロキサン/ポリカーボネートコポリマーは下記の一般式XVIIのポリシロキサンブロックを含有する。
【0066】
【化15】

式中、R21はアルキル、アリール、アルコキシ又はアリーロキシ基であり、y及びzは約1〜1000の整数である。
【0067】
1実施形態では、オルガノポリシロキサン/ポリカーボネートブロックコポリマーは下記構造XVIIIのものである。
【0068】
【化16】

19及びR20で示される基には、アリール基及びハロゲン化アリール基、例えばフェニル、クロロフェニル、キシリル、トリルなど、アラルキル基、例えばフェニルエチル、ベンジルなど、脂肪族、ハロ脂肪族及び脂環式基、例えばアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、具体的にはメチル、エチル、プロピル、クロロブチル、シクロヘキシルなどがある。R19及びR20はすべて同じ基であっても、上記基の任意の2つ以上であってもよいが、好ましくはR19及びR20はメチルである。R17は、水素以外のR19及びR20に含まれるすべての基を含み、R17もすべて同じ基であっても、水素以外の上記R19及びR20に例示した基の任意の2つ以上であってもよいが、R17がメチルであるのが好ましい。R17は、水素以外のR19及びR20に含まれるすべての基のほかに、シアノアルキル基、例えばシアノエチル、シアノブチルなども含む。Eの定義に含まれる基は、水素、メチル、エチル、プロピル、クロロ、ブロモなど及びこれらの組合せであり、Eが水素であるのが好ましい。ポリオルガノシロキサン/ポリカーボネートブロックコポリマーは、平均で10シロキサン単位以上を有し、ブロックコポリマーの総重量に基づいて約0.5〜約80重量%のポリジメチルシロキサンを含有するポリオルガノシロキサンブロックを含有する。1実施形態では、変性ポリカーボネートはポリオルガノシロキサン/ビスフェノールAポリカーボネートである。
【0069】
1実施形態では、本発明の熱可塑性樹脂組成物は耐衝撃性改良剤を含有する。耐衝撃性改良剤は、1実施形態では、様々なゴム変性剤、例えばグラフト又はコア・シェルゴム又はこれらの変性剤の2種以上の組合せなどを含む。耐衝撃性改良剤の具体例には、アクリルゴム、ASAゴム、ジエンゴム、オルガノシロキサンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ゴム、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)ゴム、メタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)ゴム、スチレン−アクリロニトリル共重合体及びグリシジルエステル耐衝撃性改良剤がある。
【0070】
用語「アクリルゴム変性剤」は、架橋もしくは部分架橋した(メタ)アクリレートゴムコア相、例えばブチルアクリレートを有する多段コア・シェルインターポリマー変性剤を指してもよい。この架橋アクリルエステルコアと関連する外側シェルは、アクリル又はスチレン樹脂、好ましくはメチルメタクリレート又はスチレンからなり、これがゴムコア相に相互貫入している。少量の他のモノマー、例えばアクリロニトリル又は(メタ)アクリロニトリルを樹脂シェル中に導入することにより適当な耐衝撃性改良剤とする。予め重合し、架橋した(メタ)アクリレートゴム相の存在下で樹脂相を形成するモノマーを重合し、架橋すると、相互貫入網目構造が得られる。
【0071】
適当な耐衝撃性改良剤は、ポリアルキルアクリレート又はポリオレフィンにポリメチルメタクリレート(PMMA)又はスチレン−アクリロニトリル(SAN)をグラフトしてなる、Tgが0℃未満、好ましくは約−40℃〜−80℃である、ゴム成分を有するグラフト又はコア・シェル構造である。ゴム含量が特定すると10重量%以上、より特定すると30重量%超え、さらに特定すると約40〜75重量%である。1実施形態では、適当なゴムは、このタイプのブタジエンコア・シェルポリマーである。別の実施形態では、耐衝撃性改良剤は、ブタジエン系ゴムコアと、メチルメタクリレート単独もしくはスチレンとの組合せから重合した第2段とを有する2段ポリマーを含む。他の適当なゴムには、GE Specialty Chemicals社から入手できるABS型Blendex(登録商標)336及び415や、Rohm&Haas社から市販のParaloid(登録商標)EXL2600がある。上記は、耐衝撃性改良剤として適当なゴムの例であるが、これらに限定されない。1実施形態では、屈折率(RI)約1.51〜約1.56のあらゆるゴムが本発明に適当である。ゴムの数例を記載したが、ほかにも多数が市販されている。耐衝撃性改良剤が熱可塑性組成物の物性や美観に悪影響しないならば、耐衝撃性改良剤としてどのゴムを使用してもよい。
【0072】
本発明の1実施形態では、所望に応じて触媒を使用してもよい。使用する場合、触媒は、従来から慣用されている触媒、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム及び酸化亜鉛などのアルカリ土類金属酸化物、アルカリ及びアルカリ土類金属塩、錫又はチタン化合物などのルイス触媒、そしてテトラアルキルホスホニウム水酸化物又は酢酸塩のようなホスホニウム対応物のように用いられる、テトラアルキルアンモニウム水酸化物などの含窒素化合物のいずれでもよい。ルイス酸触媒と他の触媒を同時に使用することができる。
【0073】
無機化合物、例えばアルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム、セシウムなど)及びアルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム、バリウムなど)の水酸化物、水素化物、アミド、炭酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩などをアルカリ又はアルカリ土類金属化合物の例として挙げることができる。具体例には、ステアリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム又はオレイン酸カリウムがある。
【0074】
本発明の1実施形態では、加水分解安定性を向上させるべく、触媒をホスホニウム塩及びアンモニウム塩(金属イオンに基づかない)から選択する。本発明の1実施形態では、触媒を、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム及び酢酸テトラブチルホスホニウムから選択する。別の実施形態では、触媒を、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛、酢酸マグネシウム、酢酸マンガン、酢酸ランタン、アセチルアセトナトランタン、安息香酸ナトリウム、テトラフェニルホウ酸ナトリウム、ジブチル錫酸化物、三酸化アンチモン、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、PBTアイオノマー、チタンイソプロポキシド、テトラアンモニウム硫酸塩及びこれらの混合物から独立に選択する。
【0075】
本発明の熱可塑性樹脂の組成範囲は、約0〜約70重量%のポリカーボネート成分及び30重量%以上のポリエステル成分である。1実施形態では、本組成物はポリカーボネートを約10重量%〜約70重量%の範囲で含有し、ポリエステル成分が約31重量%〜約80重量%の範囲で存在する。
【0076】
代表的には、変性ポリカーボネートが熱可塑性樹脂の重量に基づいて約5〜約70重量%に相当する量存在する。別の実施形態では、変性ポリカーボネートが通常、熱可塑性樹脂の重量に基づいて約10〜約70重量%に相当する量存在する。他の実施形態では、変性ポリカーボネートが熱可塑性樹脂の重量に基づいて約10〜約65重量%に相当する量存在する。
【0077】
1実施形態では、耐衝撃性改良剤が熱可塑性樹脂の重量に基づいて約0.5〜約50重量%に相当する範囲で存在し、好ましくは耐衝撃性改良剤が熱可塑性樹脂の重量に基づいて約3〜約20重量%に相当する範囲で存在する。
【0078】
本発明の1実施形態では、熱可塑性樹脂組成物は所望に応じて安定剤を含有することもある。別の実施形態では、安定剤はクエンチャであり、これを用いてポリマー同士の重合反応を停止する。クエンチャは、樹脂中に存在しうる触媒の活性を抑制して熱可塑性樹脂の共重合及び崩壊の促進を防止する添加剤である。ある化合物が安定剤として用いるのに適当であるか、また安定剤としてどの程度の量を用いるべきかは、ポリエステル樹脂成分及びポリカーボネートの混合物を調製し、溶融粘度、ガス発生又は色安定性への影響や共重合体(インターポリマー)の形成を調べることにより、簡単に判定することができる。1実施形態では、クエンチャは例えば、含リン化合物、ホウ素含有酸、脂肪族もしくは芳香族カルボン酸、即ち分子が少なくとも1つのカルボキシ基を含有する有機化合物、無水物、ポリオール及びエポキシポリマーである。
【0079】
クエンチャの選択は、熱可塑性樹脂組成物の発色や失透を回避するのに必須である。本発明の1実施形態では、触媒クエンチャが含リン化合物であり、その例に二亜リン酸塩、ホスホン酸塩、メタリン酸;アリールホスフィン酸及びアリールホスホン酸;ポリオール;カルボン酸誘導体及びこれらの組合せがあるが、これらに限らない。熱可塑性樹脂組成物へのクエンチャの添加量は、熱可塑性樹脂組成物を安定化するのに有効な量である。1実施形態では、添加量は熱可塑性樹脂組成物の総量に基づいて約0.001重量%以上、好ましくは約0.01重量%以上である。つまり、クエンチャの使用量は、組成物を安定化するのに有効であるが、同組成物の有効な特性のほとんどに実質的な悪影響を与えない量である。
【0080】
本発明の組成物は、所望に応じて、前述した所望の特性を妨害せず、他の好ましい特性を高める添加剤として知られる追加の成分、例えば、酸化防止剤、難燃剤、強化材、着色剤、離型剤、充填剤、核生成剤、紫外線及び熱安定剤、滑剤などを含有することができる。そのほかに、酸化防止剤などの添加剤、タルク、粘土、マイカ、重晶石(バライト)、ウォラストナイトなどの鉱物質、ベンゾトリアゾールなどの紫外線安定剤を含む他の安定剤、フレーク状又はミルドガラスなどの補助強化充填剤、難燃剤、顔料又はこれらの組合せを本発明の組成物に添加することができる。
【0081】
難燃剤は、少なくともポリエステル樹脂の燃焼性を下げる、好ましくはUL94等級V−0まで下げるのに十分な量存在するのが望ましい。添加量は樹脂の性質や添加剤の効率により変わる。しかし、一般に、添加剤の量は樹脂の重量に基づいて2〜30重量%である。好適な範囲は約15〜20%である。
【0082】
代表的なハロゲン化芳香族難燃剤には、テトラブロモビスフェノールAポリカーボネートオリゴマー、ポリブロモフェニルエーテル、臭素化ポリスチレン、臭素化BPAポリエポキシド、臭素化イミド、臭素化ポリカーボネート、ポリ(ハロアリールアクリレート)、ポリ(ハロアリールメタクリレート)又はこれらの混合物がある。他の適当な難燃剤の例に、臭素化ポリスチレン、例えばポリジブロモスチレン及びポリトリブロモスチレン、デカブロモビフェニルエタン、テトラブロモビフェニル、臭素化α,ω−アルキレン−ビス−フタルイミド、例えばN,N’−エチレン−ビス−テトラブロモフタルイミド、及び所望に応じてフェノキシ基もしくは臭素化フェノキシ基で末端封止されているオリゴマー状臭素化カーボネート、特にテトラブロモビスフェノールA由来のカーボネート、又は臭素化エポキシ樹脂がある。
【0083】
難燃剤は代表的には相乗剤、特に無機アンチモン化合物と共に用いる。このような化合物は様々な供給元から入手でき、また既知の方法で製造できる。代表的な無機相乗化合物には、Sb、SbS、アンチモン酸ナトリウムなどがある。三酸化アンチモン(Sb)が特に好ましい。酸化アンチモンのような相乗剤を代表的には最終組成物中の樹脂の重量に基づいて約0.5〜15重量%の量使用する。また、最終組成物は、難燃性熱可塑性樹脂の滴下を抑制するために用いられるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)型樹脂又はコポリマーを含有してもよい。
【0084】
他の追加成分には、酸化防止剤及びUV吸収剤その他の安定剤がある。酸化防止剤には、i)アルキル化モノフェノール化合物、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−tert−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシメチルフェノール、ii)アルキル化ヒドロキノン化合物、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキノン、2,5−ジ−tert−アミル−ヒドロキノン、2,6−ジフェニル−4−オクタデシルオキシフェノール、iii)ヒドロキシル化チオジフェニルエーテル、iv)アルキリデン−ビスフェノール化合物、v)ベンジル化合物、例えば、1,3,5−トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、vi)アシルアミノフェノール化合物、例えば、4−ヒドロキシラウリン酸アニリド、vii)β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオン酸の一価又は多価アルコールとのエステル、viii)β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸の一価又は多価アルコールとのエステル、vii)β−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロピオン酸の一価又は多価アルコールとのエステルが挙げられ、上記一価又は多価アルコールの例には、メタノール、ジエチレングリコール、オクタデカノール、トリエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、トリス(ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、チオジエチレングリコール、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)シュウ酸ジアミドがある。代表的なUV吸収剤及び光安定剤には、i)2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール化合物、例えば5’−メチル−、3’,5’−ジ−tert−ブチル−、5’−tert−ブチル−、5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−、5−クロロ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−、5−クロロ−3’−tert−ブチル−5’−メチル−、3’−sec−ブチル−5’−tert−ブチル−、4’−オクトキシ、3’,5’−ジ−tert−アミル−3’,5’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)誘導体、ii)2−ヒドロキシ−ベンゾフェノン化合物、例えば、4−ヒドロキシ−4−メトキシ−、4−オクトキシ、4−デシルオキシ−、4−ドデシルオキシ−、4−ベンジルオキシ、4,2’,4’−トリヒドロキシ−及び2’−ヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ誘導体、及びiii)置換及び非置換安息香酸のエステル、例えば、サリチル酸フェニル、サリチル酸4−tert−ブチルフェニル、サリチル酸オクチルフェニル、ジベンゾイルレゾルシノール、ビス(4−tert−ブチルベンゾイル)レゾルシノール、ベンゾイルレゾルシノール、2,4−ジ−tert−ブチル−フェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート及びヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートが挙げられる。ホスファイト(亜リン酸塩)及びホスホナイト安定剤には、トリフェニルホスファイト、ジフェニルアルキルホスファイト、フェニルジアルキルホスファイト、トリス(ノニル−フェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリステアリルソルビトールトリホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトがある。
【0085】
染料又は顔料を用いて背景着色を施してもよい。染料は代表的には樹脂マトリックスに可溶性の有機材料であり、一方顔料は代表的には樹脂マトリックスに不溶性の有機錯体、又は無機化合物もしくは錯体とすることができる。このような有機染料及び顔料には、下記の群及び例、即ちファーネスカーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニンブルー又はグリーン、アントラキノン染料、スカーレット3bレーキ、アゾ化合物及び酸アゾ顔料、キナクリドン、クロモフタロシアニンピロール、ハロゲン化フタロシアニン、キノリン、複素環式染料、ペリノン染料、アントラセンジオン染料、チオキサンテン染料、パラゾロン染料、ポリメチン顔料などがある。
【0086】
代表的には、添加剤は通常樹脂の量に基づいて約0〜約1.5重量%の量存在する。別の実施形態では、添加剤は通常樹脂の量に基づいて約0.01〜約0.5重量%の量存在する。
[加工]
本組成物をブレンドする方法は、慣例の技法で実施できる。1つの好都合な方法では、ポリエステル又はポリカーボネートと他の成分を粉末又は顆粒の形態でブレンドし、ブレンドを押出し、細断してペレットその他適当な形状にする。諸成分は任意の普通のやり方で、例えばドライ混合するか、押出機、加熱ミル又は他のミキサにて溶融状態で混合することにより、配合する。着色剤は押出機にその供給口より下流で添加することができる。本発明の熱可塑性樹脂は、射出成形、吹込成形、シート、フィルム又は異形材への押出、圧縮成形など種々の技法で加工することができる。
【0087】
1実施形態では、ポリカーボネート、ポリエステル、耐衝撃性改良剤及び添加剤を含む本発明のブレンドは、約225〜350℃の範囲の温度で、単一Tgを有する組成物を生成するのに十分な時間押出すことにより重合される。本発明では、単軸もしくは二軸スクリュウ押出機を用いることができる。押出機は多数の供給点をもつ押出機として、触媒クエンチャを押出機の下流地点で添加できるようにする必要がある。
【0088】
1実施形態では、プロセスは、すべての成分を一緒に混合し、フィーダに添加する1回通過のプロセスである。別の実施形態では、プロセスは、触媒を上流の供給点から押出プロセスの開始点で添加し、クエンチャを下流の供給点から押出プロセスの後段部分で添加する、1回通過のプロセスである。クエンチャを反応の終了後に下流で添加するので、クエンチャの組成物のヘーズへの影響はほとんど又は全くない。
【0089】
1実施形態では、触媒を上流の供給点から押出プロセスの開始点で添加する。次いで、着色した透明な熱可塑性樹脂を押出機に再装填し、クエンチャを下流の供給点から第2回通過のブレンドに添加する。触媒クエンチャを反応の終了後に下流で添加するので、クエンチャの組成物のヘーズへの影響はほとんど又は全くない。滞留時間は約45〜90分以下とすることができる。
【0090】
溶融混合のために熱可塑性樹脂組成物の成分を押出機に供給する速度は、押出機のスクリュウ設計に依存する。本発明の1回通過及び2回通過押出プロセスの特徴的な滞留時間は、押出操作パラメータやスクリュウ設計に応じて変動する。
【0091】
光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物の溶融混合物は、例えば組成物をペレット化又は粉砕することにより、粒子形態に形成される。本発明の組成物は、有用な成形品を形成する種々の手段及び多数の異なるプロセス、例えば、射出、押出、回転、発泡成形、カレンダー成形、吹込成形並びに熱成形、圧縮成形、溶融紡糸などにより有用な物品に成形することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、良好な機械的特性、色安定性、耐酸化性、良好な難燃性、良好な加工性、即ち短い成形サイクル時間、良好な流れ、及び良好な絶縁性などの追加の特性を有する。本発明の組成物から形成された物品は、食品容器やボウルなどの家庭用品、家庭器具からフィルム、電気コネクタ、電気装置、コンピュータ、建築及び土木、屋外装置、トラック及び自動車まで、広い範囲で使用できる。
【実施例】
【0092】
これ以上説明しなくても、当業者であれば、本明細書の記載に基づいて本発明を十分に利用できると考えられる。以下の実施例は、当業者に本発明を実施する上でのさらなる指針を与えるために提示する。実施例は本発明の教示内容に寄与する実験の代表的なものに過ぎない。本発明のいくつかの特徴だけを具体的に記載しているが、当業者には種々の変更や改変が想起できるであろう。したがって、これらの実施例はいかなる意味でも、特許請求の範囲に規定された本発明を限定するものではない。
【0093】
以下の実施例において、黄色度指数(YI)は、ASTM E313に準じて分光光度計Color−Eye7000a(Gretag Macbeth)で測定した。透過率(%)及びヘーズ(%)は、ASTM D1003に準じてHaze−Gard Dual(BYK Gardner)で測定した。メルトボリュームレート(MVR)はISO標準1133に準じて、265℃、240秒、2.16Kg、0.0825インチオリフィスにて測定した。アイゾッド衝撃強さはISO 180/U標準法を用いて測定した。破壊衝撃(puncture impact)としても知られるフレックスプレート衝撃(FPI)は、ISO 6603標準法に準じて、Dynatup衝撃試験機にて、計器Zwick/Rel IIを速度4.4m/sで用いて測定した。B−Yスパンは、青対黄色スパンとして定義され、下記式:
B−Yスパン=(透過モードのYI)−(反射モードのYI)
に従って計算した。透過及び反射モード両方のYI(黄色度指数)の測定はB−Yスパンを定量するのに役立つ。反射モードのYIを測定するのに、サンプルを用いる同じ計器を反射モードにセットする。反射の場合の黄色度指数の値は通常負である。
【0094】
実施例1〜5
これらの実施例では、ゼネラル・エレクトリック社から登録商標Lexanポリカーボネート樹脂として入手できるポリカーボネートを、Eastman Chemicals社からのPCCDポリエステルとブレンドし、ゼネラル・エレクトリック社からのシロキサン変性ポリカーボネート及び耐衝撃性改良剤ABS415を種々のレベルで使用した。熱可塑性樹脂組成物をWP25mm同一方向回転二軸スクリュウ押出機にて270℃で混練し、ペレット状組成物を得た。混練は、供給速度約15kg/hr及びスクリュウ速度約300rpmで行った。得られたペレットを100℃で4時間以上乾燥した後、温度約280℃で運転する80トン/4オンス射出成形機で射出成形してASTM/ISO試験片を得た。ここで用いたシロキサン変性ポリカーボネートはシロキサン含量6%で、ABS415はゴム(ブタジエン)含量50%であった。実施例間で軟質相(シロキサン+ゴム)含量が同じようになるように、成分の量を選択した。組成物から成形したサンプルは、熱特性(HDT及びビカー軟化温度)、異なる温度での衝撃特性(ノッチ付きアイゾッド衝撃強さ及びフレックスプレート衝撃)、流動性(MVR)及び光学特性(透過率、ヘーズ及び黄色度指数)について試験した。組成、軟質相(シロキサン+ブタジエンゴム)の合計レベル及び種々の特性を表1及び2に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

表1には、本発明の範囲外の比較例を示す。比較例は、流れ、光学的及び衝撃特性の良好な組合せを示さない。シロキサン変性ポリカーボネート又は耐衝撃性改良剤いずれかの量が増加するにつれて、衝撃性能が増加するが、流れ、熱及び光学的性能の低下が見られる。比較例4〜6では、流れ及びB−Yスパンに関する光学的特性が向上するが、ポリエステルの量に基づいて熱的特性が低下する。衝撃性能が大幅に低下し、シロキサン変性ポリカーボネートがPCCDとのブレンド中でその衝撃作用を失うことが分かる。
【0097】
シロキサン変性ポリカーボネートの衝撃性能の喪失は、シロキサン変性ポリカーボネートとポリカーボネート、ポリエステル及び耐衝撃性改良剤とのブレンドでは認められない。その上、これらのブレンドの流れ、衝撃及び光学的特性がすべて有意に向上する。これらの結果からはっきり分かるように、シロキサン変性ポリカーボネート及び/又はポリカーボネートのポリエステル及び耐衝撃性改良剤とのブレンドは、良好な光学的、流れ及び衝撃性能及び耐熱性を有する熱可塑性樹脂組成物を与える。B−Yスパンも有意に減少する。さらに、低温衝撃特性も向上している。さらに低レベルの耐衝撃性改良剤、さらに高レベルのシロキサン変性ポリカーボネート及びポリエステルで、優れた光学的及び衝撃特性が認められる。
【0098】
変性ポリカーボネートを含有する本発明の熱可塑性樹脂組成物は、有益な特性、光学的特性のバランス、そして良好な流れを示し、また優れた衝撃特性を有する。
【0099】
以上、本発明を代表的な実施形態について例示し、説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の変更や置換が可能であり、本発明は上述した詳細に限定されるものではない。したがって、本発明のさらなる変更や均等物は、普通の実験のみで同業者が想起することができ、このような変更や均等物はすべて特許請求の範囲に規定された本発明の要旨に入るものとみなされる。上述した特許及び非特許文献はすべて本特許の先行技術として援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本質的に、1種以上の置換もしくは非置換ポリカーボネートから誘導された構造単位、30重量%以上の置換もしくは非置換ポリエステル、変性ポリカーボネート、屈折率が約1.51〜約1.56の範囲にある耐衝撃性改良剤及び添加剤からなる、光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリカーボネートは次式の繰返し単位を含み、
【化1】

上式中のRは式HO−D−OHのジヒドロキシ芳香族化合物から誘導された二価芳香族基であり、Dは次式:
【化2】

(式中のAは芳香族基を示し、Eは硫黄含有結合、スルフィド、スルホキシド、スルホン;リン含有結合、ホスフィニル、ホスホニル;エーテル結合;カルボニル基;三級窒素基;ケイ素含有結合、シラン、シロキシ;脂環式基、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、2−[2.2.1]−ビシクロへプチリデン、ネオペンチリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデン;ヒドロキシ置換基を1つ有する1以上の芳香族基に結合した1以上の縮合環の一部であってもよいアルキレン又はアルキリデン基;不飽和アルキリデン基;又は芳香族結合、三級窒素結合、エーテル結合、カルボニル結合、ケイ素含有結合、シラン、シロキシ、硫黄含有結合、スルフィド、スルホキシド、スルホン、リン含有結合、ホスフィニル、ホスホニルからなる群から選択される、アルキレン又はアルキリデンとは異なる部分で結合した2つ以上のアルキレン又はアルキリデン基を含み、
は各々独立に一価炭化水素基、アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール又はシクロアルキルを含み、
は各々独立に無機原子、ハロゲン;無機基、ニトロ基;有機基、一価炭化水素基、アルケニル、アリル、アルキル、アリール、アラルキル、アルカリール、シクロアルキル及びアルコキシ基からなる群から選択され、
添字mは0から置換に供しうるA上の置換可能な水素原子の数までの整数を示し、
添字pは0から置換に供しうるE上の置換可能な水素原子の数までの整数を示し、
添字tは1以上の整数を示し、
添字sは0又は1に等しい整数を示し、
添字uは0を含む整数を示す。)の構造を有する、
請求項1記載の組成物。
【請求項3】
Dが誘導される元のジヒドロキシ芳香族化合物がビスフェノールAである、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
前記ポリエステルが、1種以上の置換もしくは非置換脂肪族ジオール及び/又は置換もしくは非置換脂環式ジオールと、1種以上の置換もしくは非置換芳香族ジカルボン酸又は置換もしくは非置換脂肪族ジカルボン酸とを含む構造単位から誘導された、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記ポリエステルが、ポリ(アルキレンフタレート)、ポリ(シクロアルキレンフタレート)、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、エステルアミド共重合体、1種以上のアルキルジオール又は脂環式ジオールと1種以上の芳香族酸、脂肪族酸及び脂環式酸とを含む構造単位から誘導されたコポリエステルからなる群から選択される1種以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリエステルが熱可塑性樹脂組成物の全重量に基づいて30重量%以上の量存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネートが熱可塑性樹脂組成物の全重量に基づいて約0〜約70重量%の範囲の量存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物は、約30〜95重量%のポリエステル及び0〜70重量%のポリカーボネートの範囲のポリエステル及びポリカーボネートから誘導された構造単位を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
前記変性ポリカーボネートがポリオルガノシロキサン/ポリカーボネートブロック共重合体であり、この共重合体が平均ドメイン寸法45nm以下のポリオルガノシロキサンドメインを含む、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
前記変性ポリカーボネートが下記構造XVIを有する、請求項1記載の組成物。
【化3】

[式中のR17及びR18は各々独立に脂肪族、芳香族又は脂環式基を示し、Eは水素、低級アルキル、アルコキシ基、アリール及びアルキルアリール、ハロゲン基及びこれらの混合物からなる群から選択される基を示し、Aは二価炭化水素基を示し、Dは二価炭化水素基を示し、qは1〜200の整数である。]
【請求項11】
前記変性ポリカーボネートが下記構造XVIIIを有する、請求項1記載の組成物。
【化4】

[式中のy及びzは1〜1000の整数である。]
【請求項12】
前記変性ポリカーボネートが熱可塑性樹脂組成物の全重量に基づいて約5〜約70重量%の範囲で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項13】
前記耐衝撃性改良剤が、グラフトもしくはコア・シェルアクリルゴム、ジエンゴム、オルガノシロキサンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、メタクリレート−ブタジエン−スチレンゴム、スチレン−アクリロニトリル共重合体又はグリシジルエステルからなる群から選択される1種以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
前記耐衝撃性改良剤がMBSコア・シェルポリマー及びABSゴムからなる群から選択される1種以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項15】
前記耐衝撃性改良剤が熱可塑性樹脂組成物の全重量に基づいて約0.5〜約50重量%の量存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項16】
前記添加剤が、酸化防止剤、難燃剤、強化材、着色剤、離型剤、充填剤、核生成剤、UV安定剤、熱安定剤及び滑剤からなる群から選択される1種以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項17】
前記添加剤が熱可塑性樹脂組成物の全重量に基づいて約0〜1.5重量%の範囲で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物のノッチ付きアイゾッド衝撃強さが、ISO180/1法を用いて23℃で測定して65kJ/m以上である、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物のノッチ付きアイゾッド衝撃強さが、ISO180/1法を用いて0℃で測定して55kJ/m以上である、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物の破壊衝撃強さが、ISO6603標準法を用いて−30℃で測定して100J以上である、請求項19記載の組成物。
【請求項21】
前記光学的に透明な樹脂組成物のメルトボリュームレートがISO1133標準法を用いて測定して11cm/10分以上である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
前記熱可塑性樹脂組成物の黄色度指数が約6未満である、請求項21記載の組成物。
【請求項23】
前記光学的に透明な樹脂組成物のヘーズ値が約3未満である、請求項22記載の組成物。
【請求項24】
前記光学的に透明な樹脂組成物のヘーズ値が約3未満である、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
前記光学的に透明な樹脂組成物の約250nm〜約300nmの領域の光の透過率が約85%超えである、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
請求項1記載の組成物を含む物品。
【請求項27】
本質的に、1種以上の置換もしくは非置換ポリカーボネートから誘導された構造単位、30重量%以上の置換もしくは非置換ポリエステル、変性ポリカーボネート、及び屈折率が約1.51〜約1.56の範囲にある耐衝撃性改良剤からなる、光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物。
【請求項28】
さらに添加剤を含有し、その添加剤が、酸化防止剤、難燃剤、強化材、着色剤、離型剤、充填剤、核生成剤、UV安定剤、熱安定剤及び滑剤からなる群から選択される1種以上である、請求項27記載の組成物。
【請求項29】
前記添加剤が熱可塑性樹脂の全重量に基づいて約0〜25重量%の範囲で存在する、請求項28記載の組成物。
【請求項30】
1種以上の置換もしくは非置換ポリカーボネートから誘導された構造単位、1種以上の置換もしくは非置換ポリエステル、変性ポリカーボネート、及び耐衝撃性改良剤を含有する光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物を製造するにあたり、
(a)前記ポリカーボネート、ポリエステル及び変性ポリカーボネートを含有するコンパウンドを溶融して溶融混合物を形成し、
(b)溶融混合物を押し出して押出物を形成し、
(c)押出物を成形する
工程を含む、光学的に透明な熱可塑性樹脂組成物の製造方法。

【公表番号】特表2008−524397(P2008−524397A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546921(P2007−546921)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045528
【国際公開番号】WO2006/073728
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】